説明

監視装置、通信装置および網監視方法

【課題】OAMフレームの伝送により通信状態を監視する場合に、異常検出のメッセージとして、通信装置の冗長化に則したメッセージを通知する。
【解決手段】通信システム100では、所定のMEGに属する複数の通信装置の一部が属するグループであり、かつ、冗長化された複数の通信装置を含むMEPグループが定義される。センタL2SW12は、MEPグループに属する各通信装置から、MEPグループのIDを含むOAMフレームを取得する。センタL2SW12は、そのOAMフレームの取得状況に応じて、MEPグループに属する各通信装置との接続状態を判定する。MEPグループに属するある通信装置との接続状態が異常となった場合、MEPグループに属する他の通信装置との接続状態に応じた態様でアラート情報をオペレータ端末16へ通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ通信技術に関し、特に、通信装置間の接続状態を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに対する品質要求の高まりを受けて、広域イーサネット(「イーサネット」は登録商標)において、レイヤ2通信でのエンド・ツウ・エンドの通信経路監視を実施可能なイーサネットOAM(Operations, Administration and Maintenance)技術が、ITU−T Y.1731で標準化されている。イーサネットOAMでは、通信状態を確認するためのMACフレームであるOAMフレームを用いてメンテナンスする1つの区間をME(Maintenance Entity)と定義する。また、MEの集合をMEG(Maintenance Entity Group)と定義し、OAMフレームを終端するMEGの端点をMEP(MEG End Point)と定義する。
【0003】
このMEP間では、主に以下の機能が使用される。
1.ETH−CC:CCM(Continuity Check Message 接続性確認メッセージ)によるMEP間の通路経路常時監視機能。
2.ETH−LB:LBM(LoopBack Message ループバックメッセージ)、LBR(LoopBack Reply ループバックリプライ)による指定MEP間の疎通確認機能。
3.ETH−LTM:LTM(Link Trace Message リンクトレースメッセージ)、LTR(Link Trace Reply リンクトレースリプライ)による指定MEPまでの通信経路確認機能。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レイヤ2スイッチ(以下、「L2SW」とも呼ぶ。)により構成される広域イーサネット網では、L2SW間でOAMフレーム(例えば上述のCCM)を送受することにより通信経路の常時監視が実現される。通信経路の異常が検出された場合は、その異常が網の保守担当者等へ通知される場合もある。ところで、広域イーサネット網は、網の信頼性を高めるため、L2SWが冗長化された構成となることがある。本発明者は、L2SWが冗長化されたレイヤ2網においてOAMフレームの伝送により通信経路を監視する場合に、異常検出のメッセージとして、L2SWの冗長化に則したメッセージを通知する発想やその具体的な方法はこれまで十分提案されてこなかったと考えた。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、OAMフレームの伝送により通信状態を監視する場合に、異常検出のメッセージとして、通信装置の冗長化に則したメッセージを通知するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の監視装置は、所定のMEGに属する複数の通信装置の一部が属するグループであり、かつ、冗長化された複数の通信装置を含むグループが定義されるとき、グループに属する各通信装置から、接続状態を確認するためのOAMフレームであって、グループのIDを含むOAMフレームを取得する取得部と、OAMフレームの取得状況に応じて、グループに属する各通信装置との接続状態を判定する判定部と、グループに属するある通信装置との接続状態が異常である場合、グループに属する他の通信装置との接続状態に応じた態様で当該異常を示す情報を外部へ通知する通知部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、通信装置である。この装置は、所定のMEGに属する複数の通信装置の一部が属するグループであり、かつ、冗長化された複数の通信装置を含むグループが定義されるとき、冗長化された複数の通信装置の1つであって、グループのIDを指定したOAMフレームを、グループに属する各通信装置との接続状態を判定すべき監視装置であって、グループに属するある通信装置との接続状態が異常である場合、グループに属する他の通信装置との接続状態に応じた態様で当該異常を示す情報を外部へ通知すべき監視装置へ送信する送信部を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、網監視方法である。この方法は、所定のMEGに属する複数の通信装置の一部が属するグループであり、かつ、冗長化された複数の通信装置を含むグループが定義されるとき、グループに属する各通信装置から、接続状態を確認するためのOAMフレームであって、グループのIDを含むOAMフレームを取得するステップと、OAMフレームの取得状況に応じて、グループに属する各通信装置との接続状態を判定するステップと、グループに属するある通信装置との接続状態が異常である場合、グループに属する他の通信装置との接続状態に応じた態様で当該異常を示す情報を外部へ通知するステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、OAMフレームの伝送により通信状態を監視する場合に、異常検出のメッセージとして、通信装置の冗長化に則したメッセージを通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態の通信システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態におけるOAMフレームの構成を示す図である。
【図3】図1のセンタL2SWの機能構成を示すブロック図である。
【図4】CC状況テーブルに格納されるデータ例を示す図である。
【図5】図1のセンタL2SWの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態の通信システムの構成を示す。通信システム100では、広域イーサネット網(以下、「広域イーサ網10」とも呼ぶ。)に、網監視のセンタ側に設置されたセンタL2SW12と、ユーザ拠点側に設置された現用L2SW20、予備L2SW22、他L2SW28、他L2SW30が接続される。センタL2SW12は、通信状態の監視に関する情報を送受するための監視網14とも接続され、監視網14を介して網監視のセンタのオペレータ端末16と接続される。後述するように、センタL2SW12は、網故障の情報を監視網14へ送出することにより、網故障を網監視オペレータへ通知する。
【0014】
現用L2SW20と予備L2SW22は、E/O変換およびO/E変換を実行するメディアコンバータ(以下、「MC24」と呼ぶ。)と接続され、MC24を介してユーザ拠点端末26と接続される。MC24は、PON(Passive Optical Network)のキャリア側に設置されるOLT(Optical Line Terminal)装置として実装されてもよい。
【0015】
現用L2SW20と予備L2SW22は冗長関係にあり、言い換えれば代替関係にある。すなわち、現用L2SW20が正常動作中の通常時は、ユーザ拠点端末26と広域イーサ網10間のフレーム伝送処理を現用L2SW20が実行する。現用L2SW20が故障した場合、そのフレーム伝送処理を予備L2SW22が引き継ぐ。本実施の形態では、MC24が現用L2SW20と非接続状態となったことを検出(例えば、リンクパルスの信号断を検出)し、以降、MACフレームを予備L2SW22と送受することとする。これにより、L2SW故障時の通信の継続性を向上でき、例えば、現用L2SW20が故障した場合でも、ユーザ拠点端末26への影響を最小限(例えば、フレーム伝送不可状態の継続時間を数秒から数十秒)に抑えることができる。
【0016】
なお、広域イーサ網10およびセンタL2SW12を、通信のバックボーン網の意味で、以下「コア網」とも呼ぶ。その一方、現用L2SW20、予備L2SW22、他L2SW28、他L2SW30、およびMC24は、個々のユーザに対してコア網への接続回線を提供する網の意味で、以下「アクセス網」とも呼ぶ。図1の各L2SWは、同一のMEGに属するMEPとして設定されている。個々のMEPのIDは、図1に示すとおりである。
【0017】
ここで、本発明者が認識した課題について説明する。
L2SWで構成される広域イーサ網10では、コア網およびアクセス網に設置されるL2SW間でETH−CCを使用しユーザ通信経路の正常性監視を常時実施することで網の信頼性を高めている。例えば、各L2SWにMEPを設定し、MEP間でCCM(以下、「OAMフレーム」とも呼ぶ。)を送受信することにより通信経路常時監視を実現している。各MEPにおいて他MEPからのCCMが受信されなくなると、LOC(Loss of continuity)状態を検出し、通信経路上で異常が発生したことを網監視オペレータへ通知する。
【0018】
ところで、広域イーサ網10では信頼性を高めるため、図1で示すように、そのアクセス網においてL2SWをノード冗長(現用L2SW20と予備L2SW22)している。センタL2SW12では、現用L2SW20からのCCMの受信状況と予備L2SW22からのCCMの受信状況を別個に(独立したものとして)管理するため、これまでは、現用L2SW20と予備L2SW22とがノード冗長構成であることは認識できなかった。その結果、センタL2SW12から網監視オペレータへ通知されるアラートも現用L2SW20と予備L2SW22とがノード冗長構成であることを加味しない内容となり、網監視オペレータにとってノード冗長構成を踏まえた対応判断を行うことは困難であった。
【0019】
しかしながら、アクセス網が非冗長構成である場合、1つのL2SWの故障でユーザ通信が断絶する(いわゆる単一障害点が存在する)一方、アクセス網が冗長構成である場合、1つのL2SWが故障してもユーザ通信は継続される。したがって、それぞれの場合に応じて網オペレータが行うべき対応は異なることが多い。したがって、センタL2SW12において、現用L2SW20と予備L2SW22がノード冗長構成か否かを認識し、網監視オペレータへ通知されるアラートも、現用L2SW20と予備L2SW22がノード冗長構成であるか否かを加味した内容となることが望ましい。
【0020】
そこで本実施の形態の通信システム100では、同じMEGに属する複数のL2SW(言い換えれば、MEPが設定された通信装置)の一部であり、互いに冗長化された複数のL2SWが属するMEPのグループを定義する。このグループは、MEG内のサブグループであり、以下「MEPグループ」と呼ぶこととする。図1においては、現用L2SW20と予備L2SW22が属するMEPグループが該当する。
【0021】
また、同一MEPグループ内の各MEPに対して優先度、すなわち冗長化されたL2SW間での優先度を予め付与する。本実施の形態では、現用L2SW20に対して相対的に高い優先度を示す「0」を割り当て、予備L2SW22に対して相対的に低い優先度を示す「1」を割り当てることとする。そして、現用L2SW20からセンタL2SW12へのCCM、および、予備L2SW22からセンタL2SW12へのCCMでは、MEPグループのIDおよびMEPグループ内での優先度を指定する。
【0022】
これにより、MEG内の各L2SWからCCMを受け付けるセンタL2SW12において、故障が発生したL2SWが冗長構成か否か、および、冗長構成における優先度を識別して、通信網の冗長構成に応じたアラートをオペレータへ通知できる。そして、オペレータによる通信網の冗長構成に応じた対応の実施を支援できる。
【0023】
図2は、実施の形態におけるOAMフレームの構成を示す。同図は、OAMフレームに含まれるMEG−IDフィールドの構成を示しており、縦にバイト、横に各バイトのビット列(左が上位ビット)を示している。一般的にMEG−IDフィールドでは、17バイト目以降のビット値には全て0が設定される。そこで、本実施の形態では、17バイトと18バイトの一部(12ビット)に予めMEPグループに割り当てられたIDを設定する。そして、18バイト目の下位4ビットにMEPグループにおける各MEPの優先度を設定する。なお、図2には不図示であるが、本実施の形態ではCCMとしてのOAMフレームに言及するため、「OpCode」フィールドには値「1」が設定される。
【0024】
例えば、図1のMEPグループに属しない他L2SW28から定期的にセンタL2SW12へ送信されるOAMフレーム(CCM)において、MEP−ID「40」およびMEG−ID「ABC」が指定されるとする。この場合、現用L2SW20から定期的にセンタL2SW12へのOAMフレーム(CCM)では、MEP−ID「20」およびMEG−ID「ABC」に加えて、MEPグループID「500」およびMEP優先度「0」が指定される。また、予備L2SW22が送信するOAMフレームでは、MEP−ID「20」およびMEG−ID「ABC」に加えて、MEPグループID「500」およびMEP優先度「1」が指定される。
【0025】
図3は、図1のセンタL2SW12の機能構成を示すブロック図である。センタL2SW12は、CC状況テーブル40と、イーサポート42と、OAM取得部44と、接続状態判定部46と、アラート設定部48と、アラート通知部50と、監視網ポート52を備える。
【0026】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリ、HDDをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ブロック図においては、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0027】
図3においては、L2SWの一般的な機能として、MACフレームの設定処理を実行するMAC処理部、入力データの流量制御・帯域制御を実行するイングレス処理部、出力データの流量制御・帯域制御を実行するイーグレス処理部、スイッチ処理(方路決定処理)のためのスイッチ処理部についての記載は省略している。また、アクセス網側の各L2SWに対してOAMフレームを送信する機能ブロックの記載も省略し、OAMフレームの受信機能に関連するブロックのみを描いている。
【0028】
CC状況テーブル40は、MEG内の各L2SWからのOAMフレーム(以下では「CCM」を意味する)の受信状況が保持される記憶領域である。図4は、CC状況テーブル40に格納されるデータ例を示す。CC状況テーブル40のMEP−IDフィールドおよびMEG−IDフィールドのデータは監視対象のL2SWの属性として予め設定される。MEPグループIDおよびMEP優先度は、後述の接続状態判定部46により、受信されたOAMフレーム(CCM)から抽出されてCC状況テーブル40へ反映される。このように、MEPグループIDおよびMEP優先度が動的にOAMフレームから抽出されることにより、例えば冗長化されたL2SW間で現用系と予備系の切替が発生した場合等、MEPに付与されたMEP優先度が変化した場合にも、各MEPとの接続性確認を継続できる。変形例として、MEPグループIDおよびMEP優先度フィールドのデータも監視対象のL2SWの属性として予め設定されてもよい。
【0029】
本実施の形態では図4で示すように、MEPグループに属する現用L2SW20(MEP−ID=20)と、予備L2SW22(MEP−ID=30)については、MEPグループIDおよびMEP優先度も保持される。CC状況テーブル40のCCM受信状況フィールドは、各L2SWからのOAMフレームの受信状況に応じて逐次更新される。
【0030】
図3に戻り、イーサポート42は、広域イーサ網10との間でMACフレームを送受信する通信ポートである。監視網ポート52は、監視網14との間でMACフレームを送受信する通信ポートである。OAM取得部44は、イーサポート42において受信されたMACフレーム内のイーサタイプおよびOpCodeにしたがってOAMフレームを特定し、OAMフレームを取得する。例えば、イーサタイプがOAMフレームを示す所定値であり、OpCodeがCCMを示す値(=1)である場合、受信状況確認対象のOAMフレームであると判定する。
【0031】
接続状態判定部46は、MEGのL2SWごとに、言い換えれば図4のCC状況テーブルのエントリ(レコード)ごとにOAMフレームの受付状況を管理する。具体的には、MEGのL2SWごとにOAMフレームの受付時刻を保持する。そして、あるL2SWからの新たなOAMフレームが、先のOAMフレームの受付時刻から所定時間内(例えば3秒以内)に受け付けられた場合、CC状況テーブル40における当該L2SWのレコード、すなわちOAMフレームが示すMEP−ID〜MEP優先度が設定されたレコードのCCM受信状況フィールドを「受信中」へ更新する。言い換えれば、当該L2SWのCCM受信状況として「受信中」を維持する。その一方、あるL2SWからの新たなOAMフレームが、先のOAMフレームの受付時刻から所定時間内(例えば3秒以内)に受け付けられない場合、所定のタイマのタイムアウト等によりLOCを検出する。そして、CC状況テーブル40における当該L2SWのCCM受信状況を「LOC状態」へ更新する。
【0032】
なお、OAMフレームで指定されたMEP−IDとMEG−IDの組み合わせを示すレコードがCC状況テーブル40に存在する一方で、MEP−ID〜MEP優先度の組み合わせを示すレコードがCC状況テーブル40に存在しない場合もあり得る。典型的には、あるMEPグループに属するMEPからの初回のOAMフレーム受け付け時である。この場合、接続状態判定部46は、そのOAMフレームで指定されたMEP−ID〜MEP優先度の組み合わせを示すレコードをCC状況テーブル40へ新規に設定する。
【0033】
アラート設定部48は、CC状況テーブル40の各エントリを監視し、少なくとも1つのエントリにおけるCCM受信状況が「LOC状態」となった場合、その旨を示すアラートメッセージを設定する。ここで、LOC状態となったエントリにMEPグループIDが設定されている場合は、同一MEPグループのエントリにおけるCCM受信状況に応じたメッセージを設定する。メッセージの詳細は後述する。アラート通知部50は、アラート設定部48において設定されたアラートメッセージを監視網ポート52〜監視網14を介して外部のSNMPサーバへTRAP通知する。SNMPサーバへTRAP通知されたアラートメッセージは、オペレータ端末16で参照されて、エンドユーザへの連絡等、所定の対応がオペレータによりなされる。なおアラート通知部50がオペレータ端末16へ直接アラートメッセージを送信してもよいことはもちろんである。
【0034】
以上の構成による動作を以下説明する。
まず、図1のアクセス網の各L2SWは、先のOAMフレームの送信から所定時間(例えば1秒)経過したことを検出すると、新たなOAMフレームをセンタL2SW12へ送信する。MEPグループに属するL2SW(図1の現用L2SW20および予備L2SW22)の場合、予め定められたMEPグループIDおよびMEP優先度を保持しており、そのMEPグループIDおよびMEP優先度を含むOAMフレームを送信する。
【0035】
図5は、図1のセンタL2SW12の動作を示すフローチャートである。まず、同図に示す第1故障情報から第3故障情報について説明する。
第1故障情報は、L2SWとの間でLOC(接続状態の異常)が発生したこと、および同一MEPグループでCCM受信中のL2SWが存在しないことを示す情報である。単一障害点における故障発生であることを示す情報であるとも言える。
第2故障情報は、MEPグループの複数のL2SWのうち、高優先度のL2SWとの間でLOCが発生したことを示す情報である。例えば、現在、フレーム転送処理を実行中の現用系のL2SWにおける故障発生を示す情報である。MEPグループにおいて現用系から予備系への切り替えが発生したことを示す情報であるとも言える。
第3故障情報は、MEPグループの複数のL2SWのうち、低優先度のL2SWとの間でLOCが発生したことを示す情報である。例えば、現在、フレーム転送処理を未実行で待機状態の予備系のL2SWにおける故障発生を示す情報である。
【0036】
広域イーサ網10を伝送されたMACフレームがセンタL2SW12において受信され(S10のY)、そのMACフレームがCCMのOAMフレームである場合(S12のY)、OAM取得部44はそのOAMフレームを取得する(S14)。接続状態判定部46は、OAM取得部44により取得されたOAMフレームに設定されたMEP−IDを参照して、CC状況テーブル40においてそのMEP−IDに対応づけられたCCM受信状況を「受信中」へ更新する(S16)。接続状態判定部46は、一定時間以上、OAMフレームを受け付けないL2SWについてはLOC状態として検出し、CC状況テーブル40のCCM受信状況を「LOC状態」へ更新する。センタL2SW12において受信されたMACフレームが非OAMフレームであれば(S12のN)、そのMACフレームに対して通常のフレーム転送処理(スイッチ処理)を実行する(S18)。MACフレームの受信がなければ(S10のN)、S12〜S18はスキップされる。
【0037】
アラート設定部48は、接続状態判定部46においてLOCが検出された場合、例えばCC状況テーブル40の受信状況にLOC状態が記録されたエントリを検出すると(S20のY)、以下の基準にしたがって第1〜第3故障情報を設定する。すなわち、LOCを検出したL2SWと同一MEPグループに属する1以上のL2SWについて、いずれからのOAMフレームについてもLOC状態であれば(S22のN)、第1故障情報を設定する(S24)。なお、LOCを検出したL2SWと同一MEPグループに属するL2SWが存在しない場合、もしくは、LOCを検出したL2SWがそもそもMEPグループに属していない場合も第1故障情報が設定される。
【0038】
同一MEPグループに属するいずれかのL2SWからOAMフレームを受信中であり(S22のY)、LOC状態となったL2SW(MEP)が、OAMフレームを継続して受信中のL2SW(MEP)よりも高優先度の場合(S26のN)、第2故障情報を設定する(S28)。OAMフレームを継続して受信中のL2SW(MEP)が、LOC状態となったL2SW(MEP)よりも高優先度であれば(S26のY)、第3故障情報を設定する(S30)。アラート通知部50は、アラート設定部48により設定された故障情報を外部のSNMPサーバに対してTRAP通知する(S32)。接続状態判定部46においてLOCが未検出、言い換えればCC状況テーブル40の受信状況が全て「受信中」であれば(S20のN)、S22からS32はスキップされる。
【0039】
本実施の形態の通信システム100によれば、MEG内の各L2SWからCCMを受け付けるセンタL2SW12において、故障が発生したL2SWが冗長構成か否か、および、冗長構成における優先度を識別して、通信網の冗長構成に応じたアラートをオペレータへ通知できる。そして、オペレータによる通信網の冗長構成に応じた対応の実施を支援できる。
【0040】
例えば、第1故障情報を通知することで、オペレータに、ユーザフレームの伝送処理が停止していることを認識させて最優先の故障対応を実施させることを支援できる。この場合、例えばオペレータは、故障の影響を受けるエンドユーザへ連絡してもよい。
【0041】
また、第2故障情報を通知することで、オペレータに、現用系のL2SWで故障が発生したものの、予備系のL2SWへ切り替わることによりユーザフレームの伝送処理が継続していることを認識させることができる。この場合、ユーザフレームの伝送処理は継続しているため早急に現用系のL2SWを復旧させることは不要である。ただし、現用系から予備系への切替時間(ユーザフレームの伝送停止時間)にSLA(Service Level Agreement)が設定してある場合は、その切替時間(ユーザフレームの伝送停止時間)をL2SWのログ等から計測し、エンドユーザへ報告する必要がある。
【0042】
また、第3故障情報を通知することで、オペレータに、予備系のL2SWで故障が発生したものの、現用系のL2SWは正常状態であることを認識させることができる。この場合、ユーザフレームの伝送処理は継続しているため早急に予備系のL2SWを復旧させることは不要である。しかも、ユーザフレームの伝送停止も発生していないため、エンドユーザとの契約上問題がなければエンドユーザへの通知も不要である。
【0043】
これまでの網監視装置(実施の形態のセンタL2SW12に対応する装置)では、アクセス網においてL2SWが冗長構成か非冗長構成かに関わらず、同様のアラートをオペレータへ通知し、オペレータも同様の対応を実施していた。例えば、予備系のL2SWが故障しただけで実際にはユーザフレームの伝送は継続していても、単一故障点のL2SWが故障してユーザフレームの伝送停止が発生した場合と同様の対応がなされてしまい、本来不要な混乱を招くことが考えられる。本実施の形態では、L2SWが冗長構成か否か、および、冗長化されたグループでの優先度に応じたアラートがオペレータへ通知されるため、オペレータによる適切な対応の実施を支援できる。
【0044】
広域イーサネットにおいてイーサネットOAM技術を用いた網監視は今後さらに拡大していくと予想され、また、長時間の通信障害を回避するためにアクセス網冗長構成を選択するユーザも増加していくと予想される。このような状況において、アクセス網のL2SW構成を装置側で認識可能にし、状況に応じたTRAP通知を実施することにより、オペレータによる状況把握および対応の迅速化を支援することができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0046】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0047】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0048】
10 広域イーサ網、 12 センタL2SW、 14 監視網、 16 オペレータ端末、 20 現用L2SW、 22 予備L2SW、 24 MC、 26 ユーザ拠点端末、 40 CC状況テーブル、 42 イーサポート、 44 OAM取得部、 46 接続状態判定部、 48 アラート設定部、 50 アラート通知部、 52 監視網ポート、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のMEG(Maintenance Entity Group)に属する複数の通信装置の一部が属するグループであり、かつ、冗長化された複数の通信装置を含むグループが定義されるとき、
前記グループに属する各通信装置から、接続状態を確認するためのOAM(Operations, Administration and Maintenance)フレームであって、前記グループのIDを含むOAMフレームを取得する取得部と、
前記OAMフレームの取得状況に応じて、前記グループに属する各通信装置との接続状態を判定する判定部と、
前記グループに属するある通信装置との接続状態が異常である場合、前記グループに属する他の通信装置との接続状態に応じた態様で当該異常を示す情報を外部へ通知する通知部と、
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記取得部により取得される前記グループのIDを含むOAMフレームは、CCM(Continuity Check Message)のフレームであることを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記取得部により取得されるOAMフレームは、前記グループに属する各通信装置の前記グループにおける優先度を示す情報をさらに含むものであり、
前記通知部は、本装置との接続状態が異常となった通信装置の優先度と、本装置との接続状態が正常である通信装置の優先度との大小関係に応じた態様で当該異常を示す情報を外部へ通知することを特徴とする請求項1または2に記載の監視装置。
【請求項4】
所定のMEGに属する複数の通信装置の一部が属するグループであり、かつ、冗長化された複数の通信装置を含むグループが定義されるとき、前記冗長化された複数の通信装置の1つであって、
前記グループのIDを指定したOAMフレームを、前記グループに属する各通信装置との接続状態を判定すべき監視装置であって、前記グループに属するある通信装置との接続状態が異常である場合、前記グループに属する他の通信装置との接続状態に応じた態様で当該異常を示す情報を外部へ通知すべき監視装置へ送信する送信部を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項5】
所定のMEGに属する複数の通信装置の一部が属するグループであり、かつ、冗長化された複数の通信装置を含むグループが定義されるとき、
前記グループに属する各通信装置から、接続状態を確認するためのOAMフレームであって、前記グループのIDを含むOAMフレームを取得するステップと、
前記OAMフレームの取得状況に応じて、前記グループに属する各通信装置との接続状態を判定するステップと、
前記グループに属するある通信装置との接続状態が異常である場合、前記グループに属する他の通信装置との接続状態に応じた態様で当該異常を示す情報を外部へ通知するステップと、
を備えることを特徴とする網監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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