説明

監視装置及びそれを用いた遠方監視システム

【課題】 電源や通信回線の完備していない工事現場等の監視場所でも容易にその周囲状況を監視できる遠方監視システムを提供する。
【解決手段】 所定の監視場所に設置されるとともに、その所定の監視場所の周囲状況を撮像することのできる監視装置1と、この監視装置1と通信回線2を介して接続されている所定の監視センタに設置されているモニタ装置3とからなる。監視装置1は、周囲の状況を撮像することのできるカメラ本体12と、このカメラ本体12で撮像した撮像データを所定の監視センタに送信する送信器と、カメラ本体12及び送信器を駆動する電源と、カメラ本体12を覆う透明材からなるカバー8と、カメラ本体12、送信器、電源を収納し、カバー8で覆った筐体7を支持するスタンド部材15とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠方に存在する例えば工事現場等の監視場所の状況を撮像し、周囲状況を遠隔地から監視できるようにするのに好適な監視装置及びその監視装置を用いた遠方監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遠方監視システムは、監視員の駐在している監視センタから遠く離れた監視箇所や監視区域の監視場所に電源ライン及び通信ラインを布設し、その布設された電源ライン及び通信ラインにモニタカメラ等の監視装置を接続して構成されている。そして、その接続された監視装置で撮像収集された画像データ等の情報は、通信ラインを介して監視センタに送信され、その監視センタに設置されているモニタ装置で監視できるように構成されている(特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2004−7374号公報
【特許文献1】特開2000−178946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の遠方監視システムは、監視場所に監視装置用の電源ライン及び通信ラインを設置しなければならないため設備費が嵩むという欠点があった。すなわち、従来の遠方監視システムは、予め電源及び通信回線のインフラが整備されているときには容易に採用することができるが、このようなインフラが十分には整備されていない工事現場等の日々変化する監視場所には、そのまま採用することができないという欠点があった。
【0004】
そこで、この発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、予め電源及び通信回線のインフラが整備されていない監視場所に容易に適用することができ、その監視場所の周囲状況を遠隔地から監視でき、またその周囲状況を撮影した映像をも記録しておくことができる監視装置及びその監視装置を用いた遠方監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る監視装置は、上記目的を達成するために、周囲の状況を撮像するカメラ本体12と、カメラ本体12で撮像した撮像データを所定の監視センタに送信する送信器(コネクタ23A、ルータ23B)と、カメラ本体12及び送信器(23A,23B)を駆動する電源(バッテリ18)と、カメラ本体12を覆う透明材からなるカバー8と、これらのカメラ本体12、送信器(22,23)、電源(18)を収納し、カバー8が施されている筐体7と、筐体7を支持するスタンド部材15とからなることで、監視装置1としたことを特徴としている。
このような構成からなる監視装置1において、周囲の状況を撮像することのできるカメラ本体12は、スタンド部材15により監視場所に設置される。そしてそのカメラ本体12で撮像した撮像データは、送信器(23A,23B)を介して監視センタ3に送信され、監視用に供される。
監視装置1におけるカバー8内には、そのカバー8内の空気を撹拌するファン13を設けたことを特徴としている。
監視装置1における送信器(23A,23B)は、無線又は有線にて通信可能としてあることを特徴としている。
監視装置1において、電源は、バッテリ18又は他の電源から供給されるものであることを特徴としている。
また、本発明に係る遠方監視システムは、上記目的を達成するために、所定の監視場所に設置されるとともに、その所定の監視場所の周囲状況を撮像することのできる監視装置1と、この監視装置1と通信回線2を介して接続され、所定の監視センタに設置されているモニタ装置3とからなる遠方監視システムであって、監視装置1は、周囲の状況を撮像するカメラ本体12と、そのカメラ本体12で撮像した撮像データを所定の監視センタに送信する送信器(23A,23B)と、カメラ本体12及び送信器(23A,23B)を駆動する電源(18)と、カメラ本体12を覆う透明材からなるカバー8と、これらのカメラ本体12、送信器(22,23)、電源(18)を収納し、カバー8が施されている筐体7と、筐体7を支持するスタンド部材15とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
この発明に係る監視装置1は、周囲の状況を撮像することのできるカメラ本体12を収納している筐体7がスタンド部材15で設置できる可搬形に構成されているので、必要とする監視場所に簡単に設置できる特長を有している。また、そのカメラ本体12で撮像した撮像データは、送信器(23A,23B)を介して監視センタのモニタ装置3に容易、確実、安定して送信することができる。
【0007】
監視装置1におけるカバー8内には、そのカバー8内の空気を撹拌するファン13を設けているので、カメラ本体12のカメラレンズ及びカバー8内面の結露を効果的に防止することができ、常時安定した撮影を可能にしている。
【0008】
監視装置1における送信器(23A,23B)は、無線又は有線により送信することができるので、電話回線の有無、携帯電話機システムにおける周波数帯域の相違その他にかかわらずカメラ本体12で撮像された撮像データを監視センタのモニタ装置3に確実に送信することができる。
【0009】
監視装置1において、電源は、バッテリ18又は他の電源から供給されるので、監視場所の電源の有無にかかわらずカメラ本体12及び送信器(23A,23B)を駆動することができる。
【0010】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項夫々において付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状にこの発明が限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。この発明に係る監視装置1を用いた遠方監視システムは、図1に示されるように、通信回線2を介して監視センタのモニタ装置3に接続されるように構成されている。この監視装置1は、例えば工事現場、災害現場、イベント会場あるいは工場の生産ライン等の所望の監視場所に設置されるように構成されている。
【0012】
一つの監視場所に設置される監視装置1の個数は、その監視場所における監視範囲によって1又は2以上とされる。図1の例では、説明を簡単にするために、3つの異なる監視場所にそれぞれ1個の監視装置1が設置されている場合を示す。そして、第1の監視現場に設置される監視装置1はNo.1のコード番号が付され、第2の監視現場に設置される監視装置1はNo.2のコード番号が付され、第3の監視現場に設置される監視装置1はNo.3のコード番号が付されている。各監視現場に設置される監視装置1の構成は同一であり、この監視装置1については後に詳述する。
【0013】
上述の監視装置1のうち、第1の監視現場に設置される監視装置1(No.1)は、第1の監視現場に電源ライン及び通信ラインが完備されていないために、例えば無線通信により通信回線2に接続されるように構成されている。すなわち、この第1の監視現場に設置される監視装置1は、この監視装置1に内蔵されている携帯電話機(PHS、FOMA(登録商標)も含む)システムの機能を利用して中継基地4を介して通信回線2に接続されている。
【0014】
第2の監視現場に設置される監視装置1(No.2)は、第2の監視現場に通信ラインが完備されていないために、例えば無線LANにより通信回線2に接続されるように構成されている。すなわち、この第2の監視現場に設置される監視装置1は、この監視装置1に内蔵されている無線LANの機能を利用して電話接続装置5及び無線LAN装置6を介して通信回線2に接続されている。
【0015】
そして、第3の監視現場に設置される監視装置1(No.3)は、第3の監視現場に電源ライン及び通信ラインが完備されているために、これらインフラを用いて通信回線2に接続されるように構成されている。
【0016】
通信回線2は、監視場所の監視装置1と各監視場所をモニターする遠隔地である所定の監視センタにおけるモニタ装置3とを接続する接続手段であって、公知の公衆回線網や専用回線等の所定のメタル線又は光ファイバーからなる通信回線2により構成されているとともに、インターネットをも含んで構成されている。したがって、この通信回線2には、図示しないが所定のプロバイダも存在しているが、ここでは省略されている。
【0017】
以下、図2を用いて監視装置1自体の構成について説明すると、この監視装置1は上部開口の筐体7及びこの筐体7の開口部を水密的に覆うドーム状のカバー8を有している。このカバー8は透明な合成樹脂製の掩体ドーム部材からなり、後述するカメラ本体12の撮像に障害とならないように工夫されている。
【0018】
監視装置1の筐体7内に設けられているフレーム9の上部には、CCDカメラ及びカメラレンズ等を含んで構成されている撮像部10と、チルト、スパンのために駆動するモータを含んで構成されている駆動部11とからなるカメラ本体12が取付られている。そして撮像部10は、駆動部11により水平方向に所定の角度(例えば200度)内で回動できるように構成されているとともに、垂直方向に所定の角度(例えば仰角で90度,俯角で2度)内で揺動できるように構成されている。さらにこの撮像部10は、赤外線照射機能を有していて、照明設備のない夜間においても撮像できる赤外線カメラ機能も有している。
【0019】
図2中、14は筐体7の側面に設けられた例えば揺動開閉式の開閉蓋であって、この開閉蓋14を開いて筐体7内に収納した後述するバッテリ18を交換できるように構成されている。この開閉蓋14は閉じられたときの水密性を保つために周囲が例えばゴムパッキン材を介在させてビス止めできるように構成されている。また、この開閉蓋14部位の筐体7内には、例えばFOMA用のルータ23Bも配置されており、携帯電話機システムによる無線通信による場合の周波数帯域に対応したそれぞれのルータ(図示せず)が各別に配置されるものとしてある。
【0020】
また図2中、15は三脚からなるスタンド部材であって、公知のカメラ用の三脚と同様に、3点支持により筐体7を安定して監視場所の地面等に設置できるように構成されているとともに、ハンドル16を回転して筐体7の高さを調節できるように構成されている。なお、この筐体7の側面には、図示しないが、監視装置1の駆動電源として商用電源等の外部電源から供給を受けるときの接続端子、通信回線を直接接続するための接続端子及び電源切替スイッチ等が設けられている。
【0021】
図2中、17はフレーム9に設けられている基板であって、図3に示される制御回路等が搭載されている。すなわちこの基板17には、ニッケル水素充電池からなるバッテリ(電池)18からの電源と外部からの電源とを択一的に切替える切替回路19と、この切替回路19の出力電流を調製するDC−DCコンバータ20と、このDC−DCコンバータ20からの出力の逆流を防止する逆流防止回路21とが搭載されている。そしてこの逆流防止回路21には、上述したカメラ本体12とファン13とが接続されていてカメラ本体12のチルト、スパン及びファン13の回転のための駆動電力が受けられるように構成されている。またこの逆流防止回路21には、CPUを中心に形成されるメモリー機能、制御機能を有するサーバ22と、通信機能を有するコネクタ23A、ルータ23Bとが接続されていて駆動電力が受けられるように構成されている。
【0022】
サーバ22は、画像圧縮技術である例えば「MPEG−4」を使った動画のリアルタイム・エンコーダ、動画や音声を記録蓄積できるようになっている。特に耐振動性、耐熱性が得られるように半導体メモリーを搭載しており、OSとしてUNIX(登録商標)互換NetBSDを採用することで常時安定した稼働を可能にしている。また、例えば64MBのメモリーとすることで動画、音声を約2時間程度蓄積できるようにし、カメラ本体12の破壊、回線の切断、ネットワーク上のトラブル発生その他のときにも確実に録画でき、またそれを蓄積できるように配慮してある。更には、アラームやメールを使った警報の設定、監視場所における画像領域に大きな変化があった際にその変化を検知して配信する機能を有し、音声を拾うマイク接続端子等の外部入出力用の各種インターフェースを搭載することもできるようにしてある。
【0023】
コネクタ23Aは、無線LANやPHS等の通信カードを挿入できる例えばコンパクト・フラッシュ型のスロットを備えており、ルータ23BはFOMA(登録商標)専用の接続装置のものとしてあって、100Base−TXのイーサネット(登録商標)コネクタを備えている。いずれにしても、コネクタ23A、ルータ23B等によって通信のための所定の周波数帯域をカバーすることで、外部との通信を無線又は有線により行えるように構成されている。
【0024】
図示にあって、サーバ22,コネクタ23Aは基板17、電源ユニット、配線等と共に、フレーム9内に配備され、ルータ23Bはバッテリー18と共にフレーム9外の開閉蓋14が開閉される筐体7内の所定部位に設けられているも、その配置の位置その他に特に限定されるものではない。
【0025】
図4に示される監視センタに設置されるモニタ装置3は、ROM24に格納されているシステムプログラムデータ及びRAM25に格納されているワーキングデータを用いて監視用の所定の演算処理を行うCPU26を有している。そしてこのCPU26は、I/Oユニット27を介してテンキー等からなる操作ユニット28と、表示画面29を駆動制御する表示ドライバ30と、通信回線2に接続するための通信制御部31とが接続されている。なお、このモニタ装置3は、通信機能を有する公知のパーソナルコンピュータ(パソコン)で構成することができる。
【0026】
以下、図5のフローチャートを用いて制御動作について説明する。今、図1における各監視場所に設置されている監視装置1の電源がONとされて駆動状態にあるときに、モニタ装置3の操作ユニット28を介して監視装置1のコード番号が入力されたとする(ステップ100肯定、ステップ102。以下、ステップをSとする。)。このコード番号が入力されると、そのコード番号に係る監視装置1のカメラ本体12の撮像した画像がモニタ装置3の表示画面29に表示される(S104)。
【0027】
例えば、操作ユニット28からNo.1のコード番号が入力されると、表示画面29には第1の監視場所の監視装置によってその周囲状況が表示される。そしてこの表示内容は、操作ユニット28を介して必要に応じて撮像角度・方向等の調整及び拡大・縮小等のズーム処理がなされる。なお、監視装置1の電源のON,OFFも操作ユニット28を介して行うようにすることもできる。さらに、撮像した画像データは、必要に応じてモニタ装置3のメモリ(RAM25)に記憶しておくことも可能である。また、監視装置1に集音装置(マイクロホン)を装備しているときは、その集音装置で捕集した音をモニタ装置3で聞くことも可能となり、録音することも可能となる。更に監視装置1にスピーカを設けておいて、モニタ場所からのモニタ監視者による音声を出力させるようにすることもできる。
【0028】
表示画面29の表示内容の変更は、操作ユニット28を介して新たなコード番号を入力することにより実行される(S106肯定、S108否定)。なお、上述の説明では、モニタ装置3の表示画面29には一つの監視装置1の撮像画面のみを表示したが、表示画面29を分割表示モードにして複数の監視装置1の撮像画面を同時に表示するようにしたり、必要に応じて一画面に切替えるようにしたりしてもよい。
【0029】
また、この発明に係る監視装置1、遠方監視システムは例えば大雨・台風時の水位・周辺の様子をリアルタイムに把握したり、不法投棄等がなされる場所を遠隔監視したり、工事現場における工事状況を把握し、進捗を管理し、またその作業を指示したり、無人駅・バス停踏切等、更には監視場所における不審者の早期発見・それへの威嚇等を行ったり、各種設備機器の状況及びそれらを遠隔制御したときのランプ・メーター等の数値等を監視したり等の各種の遠隔地の監視に使用する。このように遠隔地を監視することで、現地に足を運ぶ回数が減り、経費を削減でき、更には異常発生時の原因究明等を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る監視装置を用いた遠方監視システムの概略構成図である。
【図2】本発明に係る監視装置の一部を断面で示した正面図である。
【図3】本発明に係る監視装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】モニタ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る遠方監視システムの制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1…監視装置 2…通信回線
3…モニタ装置 4…中継基地
5…電話接続装置 6…無線LAN装置
7…筐体 8…カバー
9…フレーム 10…撮像部
11…駆動部 12…カメラ本体
13…ファン 14…開閉蓋
15…スタンド部材 16…ハンドル
17…基板 18…バッテリ
19…切替回路 20…DC−DCコンバータ
21…逆流防止回路 22…サーバ
23A…コネクタ 23B…ルータ
24…ROM 25…RAM
26…CPU 27…I/Oユニット
28…操作ユニット 29…表示画面
30…表示ドライバ 31…通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の状況を撮像するカメラ本体と、
カメラ本体で撮像した撮像データを所定の監視センタに送信する送信器と、
カメラ本体及び送信器を駆動する電源と、
カメラ本体を覆う透明材からなるカバーと、
これらのカメラ本体、送信器、電源を収納し、カバーが施されている筐体と、
筐体を支持するスタンド部材と、
からなることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置において、カバー内には、そのカバー内の空気を撹拌するファンを設けたことを特徴とする監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の監視装置において、送信器は、無線又は有線にて通信可能としてあることを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の監視装置において、電源は、バッテリ又は他の電源から供給されるものであることを特徴とする監視装置。
【請求項5】
所定の監視場所に設置されるとともに、その所定の監視場所の周囲状況を撮像することのできる監視装置と、この監視装置と通信回線を介して接続され、所定の監視センタに設置されているモニタ装置とからなる遠方監視システムであって、
監視装置は、周囲の状況を撮像するカメラ本体と、カメラ本体で撮像した撮像データを所定の監視センタに送信する送信器と、カメラ本体及び送信器を駆動する電源と、カメラ本体を覆う透明材からなるカバーと、これらのカメラ本体、送信器、電源を収納し、カバーが施されている筐体と、筐体を支持するスタンド部材とからなることを特徴とする遠方監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−74324(P2007−74324A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258658(P2005−258658)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000151184)株式会社土井製作所 (21)
【Fターム(参考)】