説明

監視装置及び監視方法

【課題】住宅内の異常の有無を簡易な装置で精度よく判断する。
【解決手段】居住者の行為に起因する電力の変化を示す差分曲線を算出する。次に、この差分曲線に基づいて、生成されるデータ列を入力とするベイジアンネットワークから出力される確率に基づいて、電力データの変化が、電気機器51を居住者70が操作したことに起因すると考えられる確率と、電気機器51の自動運転に起因すると考えられる確率を算出する。これにより、精度良く当該確率を算出することができ、ひいては、居住者70の異常の有無を精度良く判断することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置及び監視方法に関し、更に詳しくは、住宅に居住する居住者を監視するための監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核家族世帯の増加やライフスタイルの多様化の進展にともない、1つの世帯を構成する個人の数は減少する傾向にある。また、経済のグローバル化にともない、労働人口に対する単身赴任者の割合も増加することが予測される。このため、遠方から、家族や近親者の健康状態を確認するためのシステムの研究開発が盛んに行われている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、住宅内で異常なく生活する居住者の電力使用パターンと、住宅内の電源系統を流れる電流値から特定される電力使用パターンを比較することにより、居住者の健康状態を推測する。
【0004】
また、特許文献2に記載の装置は、住宅内で消費される電力量を計測することにより、居住者の生活パターンを推定する。そして、推定した生活パターンと予想パラメータとを比較することにより、居住者に異常があるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−109663号公報
【特許文献2】特開2008−112267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置を用いる場合には、住宅内で分岐する電力系統すべてに、電流を計測するための計測装置を取り付ける必要がある。このため、装置の製造コストやランニングコストが増加するという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載された装置は、住宅内で消費される電力量の変化に基づいて居住者の生活パターンを推定する。このため、基幹ブレーカの近傍に電力量計を設置するだけで、異常事態の有無を遠方から判断することが可能となる。このため、装置の構造を簡素化することができ、製造コストやランニングコストを抑えることができる。
【0008】
しかしながら、上記装置が実行する方法では、例えば電気温水器や、空調装置等に代表される機器が自動的に動作すると、正しく異常の有無を判断することが困難になるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、住宅内の異常の有無を簡易な装置で精度よく判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の監視装置は、
住宅に供給される電力を計測する電力計測手段と、
前記電力の計測結果を時系列的に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記電力の推移を示す推移曲線の移動平均線を算出する移動平均線算出手段と、
前記移動平均線上の点と、前記推移曲線上の点との差分を算出する差分算出手段と、
前記差分の時間的な推移を示す差分曲線を算出する差分曲線算出手段と、
前記差分曲線から二値のデータからなるデータ列を生成するデータ列生成手段と、
前記データ列が入力されたときに、前記電力が計測されたときの前記住宅に居住する居住者の状態が、所定の状態である確率を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段の算出結果に基づいて、前記電力の推移が、前記居住者の行為に起因する確率を算出する第2算出手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、居住者の行為に起因する電力の変化を示す差分曲線が算出される。そして、この差分曲線に基づいて、電力の推移が居住者の行為に起因する確率が算出される。したがって、この確率に基づいて、住宅内の異常の有無を精度良く判断することが可能となる。また、本発明によれば、二値化されたデータを用いて、住宅内の異常の有無を判断することができる。このため、判断を行う際に取り扱うデータの量が少なくなり、装置を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る監視装置のブロック図である。
【図2】表示部に表示される画像を示す図である。
【図3】電力データを示す図である。
【図4】CPUが実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】移動平均線を算出する際の手順の一例を説明するための図である。
【図6】差分を表すベクトルを示す図である。
【図7】差分曲線の算出手順を説明するための図である。
【図8】差分曲線を示す図である。
【図9】データ列の生成手順を説明するための図である。
【図10】データ列を示す図である。
【図11】データ列を示す図である。
【図12】ベイジアンネットワークを示す図である。
【図13】CPUが実行する処理を示すフローチャートである。
【図14】データテーブルを示す図である。
【図15】電力データを示す図である。
【図16】差分曲線を示す図である。
【図17】監視装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る監視装置10の概略的な構成を示すブロック図である。監視装置10は、住宅50に設置された電気機器51の消費電力の推移から、居住者70の状態を監視する装置である。
【0014】
住宅50は、居住者70が生活する住居である。住宅50には、給湯器、電子レンジ、冷蔵庫、空調機等の電気機器51が設置されている。これらの電気機器51には、商用の電力系統に接続された引き込み線60を介して電力が供給される。
【0015】
監視装置10は、図1に示されるように、CPU(Central Processing Unit)21、主記憶部22、補助記憶部23、入力部24、表示部25、インタフェース部26、及び電力計測ユニット28を有している。
【0016】
CPU21は、補助記憶部23に記憶されたプログラムを読み出して実行する。CPU21の具体的な動作については後述する。
【0017】
主記憶部22は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを有している。主記憶部22は、CPU21の作業領域として用いられる。
【0018】
補助記憶部23は、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部23は、CPU21が実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。また、CPU21による処理結果などを含む情報を順次記憶する。
【0019】
入力部24は、タッチパネルや、入力キーを有している。監視装置10では、入力部24のタッチパネルと表示部25とからGUI(Graphical User Interface)が構成されている。そして、ユーザ(例えば居住者70)の指示は、入力部24を介して入力され、システムバス27を経由してCPU21に通知される。
【0020】
表示部25は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示ユニットを有している。図2は、表示部25に表示される画像IMを示す図である。監視装置10が起動されると、表示部25は、図2に示される画像IMを表示する。この画像IMは、例えば、学習モードと判定モードとを切り替えるための選択ボタン31,32と、居住者70の現在の状態を入力するための入力ボタン33,34,35から構成される。
【0021】
ユーザは、表示部25のタッチパネルの、選択ボタン31,32と重なる部分にタッチすることで、監視装置10のモードを切り替えることができる。また、入力ボタン33,34,35と重なる部分にタッチすることで、監視装置10へ、居住者70の現在の状態を入力することができる。
【0022】
以下、説明の便宜上、選択ボタン31,32と重なる部分へのタッチを、選択ボタン31,32の押下と表現し、入力ボタン33〜35と重なる部分へのタッチを、入力ボタン33〜35の押下と表現する。
【0023】
図1に戻り、インタフェース部26は、シリアルインタフェース、LAN(Local Area Network)インタフェース等を含んで構成されている。このインタフェース部26は、監視装置10をインターネットに接続する。そして、電力計測ユニット28を、システムバス27に接続する。
【0024】
電力計測ユニット28は、住宅50の分電盤等に設置されている。この電力計測ユニット28は、引き込み線60を介して供給される電力(消費電力)を所定の周期で計測する。そして、計測した結果を、計測した時刻と関連付けて電力データ(t,P(t))として出力する。図3は、電力データ(t,P(t))を示す図である。図3を参照するとわかるように、電力データを構成するtは計測時刻を示し、P(t)は住宅50へ供給された電力の瞬時値を示す。
【0025】
電力データ(t,P(t))は、インタフェース部26によって受信され、順次補助記憶部23に記憶される。
【0026】
次に、上述のように構成された監視装置10が実行する処理について説明する。監視装置10の処理は、居住者70の状態と消費電力の推移とを関連付けるための学習処理S1(学習モード)と、住宅50での消費電力の推移から、居住者70の状態を判断する監視処理S2(監視モード)に大別される。また、各処理S1,S2は、CPU21が、補助記憶部23に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0027】
図4のフローチャートは、CPU21によって実行されるプログラムの一連の処理アルゴリズムに対応している。以下、図4を参照しつつ、CPU21が実行する学習処理S1について説明する。図4のフローチャートに示される一連の処理は、表示部25に表示された選択ボタン31が押下されることを条件に実行される。
【0028】
最初のステップS101では、CPU21は、内蔵するカウンタ値nを初期化する。これにより、カウンタ値nは零にリセットされる。
【0029】
次のステップS102では、選択ボタン31の表示色を変更する。これにより、監視装置10が学習モードであることを確認することが可能となる。
【0030】
次のステップS103では、入力ボタン33〜35のいずれかが押下されたか否かを確認する。学習モードが選択された後に、入力ボタン33〜35のいずれかが押下されている場合には(ステップS103:Yes)、CPU21は、ステップS104へ移行する。
【0031】
次のステップS104では、CPU21は、所定時間(例えば2時間)経過するまでにサンプリングされる電力データ(t,P(t))を抽出する。これにより、例えば図3に示される電力データが抽出される。CPU21は、所定時間が経過し、サンプリングが終了すると次のステップS105へ移行する。
【0032】
次のステップS105では、CPU21は、カウンタ値nをインクリメントする。
【0033】
次のステップS106では、CPU21は、電力P(t)についての移動平均線P(t)を算出する。図5は、移動平均線を算出する際の手順の一例を説明するための図である。図5を参照するとわかるように、CPU21は、例えば、2つの値P(t)とP(tnー1)との平均値P(t)を算出する。そして、時刻tと平均値P(t)からなるデータ(t,P(t)によって規定される移動平均線P(t)を算出する。
【0034】
具体的には図5に示されるように、CPU21は、P(t)とP(t)の平均値P(t)、P(t)とP(t)の平均値P(t)、P(t)とP(t)の平均値P(t)、…、P(t)とP(tnー1)との平均値P(t)を順次算出する。そして、データ(t,P(t))、データ(t,P(t))、データ(t,P(t)、…、データ(t,P(t))によって規定される移動平均線P(t)を算出する。
【0035】
次のステップS107では、CPU21は、図6に示されるように、移動平均線を規定するデータ(t,P(t))、(t,P(t))、(t,P(t)、…、(t,P(t))に基づく点を始点とし、対応する電力データ(t,P(t))、(t,P(t))、(t,P(t)、…、(t,P(t))に基づく点を終点とするベクトルA〜Aを算出する。
【0036】
このベクトルA〜Aの大きさは、データ(t,P(t))と、電力データ(t,P(t))との差を示し、ベクトルA〜Aの向きは、データ(t,P(t))と比較したときの電力データ(t,P(t))の大小を示す。例えばベクトルAの大きさが100で、向きが下向きである場合には、P(t)は、P(t)よりも小さく、その差は100[W]であることを示す。
【0037】
次のステップS108では、CPU21は、差分曲線f(t)を算出する。例えばCPU21は、図7を参照するとわかるように、ベクトルA〜Aに基づいて、データ(t,P(t))と電力データ(t,P(t))との差分を示す点F〜Fをプロットする。そして、点F〜Fによって規定される差分曲線f(t)を算出する。この差分曲線f(t)を規定する点Fそれぞれの座標は、ベクトルAの大きさを|A|とすると、(t,+|A|)或いは(t,−|A|)と表される。電力P(t)と移動平均線P(t)とについて、上述の処理が行われることで、図8に示される差分曲線f(t)が算出される。
【0038】
次のステップS109では、CPU21は、差分曲線f(t)を二値化することにより、0と1の集合からなるデータ列D(n)を生成する。例えばCPU21は、図9に示されるように差分を6つのレベルLV1〜LV6に分割し、各レベルに対応する範囲に、差分曲線f(t)の一部が存在するか否か順に判定する。そして、レベルLV1〜LV6についての判定結果に基づいてデータ列D(n)を生成する。このデータ列D(n)は、6つの要素d(n),d(n),…d(n)から構成される。各要素d(n),d(n),…d(n)はそれぞれのレベルに、差分曲線f(t)が存在するか否かを示しており、差分曲線f(t)の一部が存在する場合には1、差分曲線f(t)が存在しない場合には0となる。
【0039】
例えば、図9に示される例では、レベルLV1及びレベルLV6に対応する範囲には、差分曲線f(t)が存在しないが、レベルLV2〜LV5には、差分曲線f(t)が存在する。したがって、データ列D(1)を構成する要素[d,d,d,d,d,d]それぞれの値は、[0,1,1,1,1,0]となる。
【0040】
次のステップS110では、CPU21は、カウンタ値nが基準値N以上であるか否かを判断する。カウンタ値nが基準値N以上でない場合には(ステップS110:No)、CPU21は、ステップS105に戻り、ステップS110での判断が肯定されるまで、移動平均線P(t)に対して、ステップS106〜S109の処理を繰り返し実行する。これにより、移動平均線P(t)に対する差分曲線fn+1(t)が順次算出され、N個のデータ列D(n)からなる、データ列Dt(k)が生成される。図10を参照するとわかるように、データ列Dt(k)は、N個のデータ列D(n)が直列的に集合したデータである。
【0041】
一方、カウンタ値nが基準値N以上である場合には(ステップS110:Yes)、CPU21は、ステップS111へ移行する。
【0042】
次のステップS111では、CPU21は、居住者70の状態をデータ列Dt(k)に関連付ける。居住者70の状態の関連付けは、データ列Dt(k)を構成する要素に対して行う。関連付けの対象となる要素の数は1つでも複数でもよいが、居住者70の状態が変化することで、値が変化する要素に行うのが好ましい。例えば、図10における要素d(1)の値が、居住者70の状態が調理中である場合は1で、それ以外のときに0となることが予めわかっている場合等には、この要素d(1)に対して、居住者70の状態を関連付ける。
【0043】
例えば、図10に示すテーブルTBは、要素d(1)に関連付けられ、データ列Dt(1)の基になる電力データがサンプリングされたときの居住者70の状態を示している。テーブルTBでは、項目が居住者70の状態を示し、値が対応する項目の状態と電力データとの関連の有無を示している。このTBからは、データ列Dt(t)の基になる電力データが、居住者70の状態が調理中であったときにサンプリングされたものであることがわかる。
【0044】
CPU21は、入力ボタン33〜35が押下されることで、居住者70の状況を認識して、テーブルTBを生成する。そして、テーブルTBを、データ列Dt(1)の所定の要素d(n)へ関連付ける。
【0045】
次のステップS112では、CPU21は、監視モードが選択されているか否かを確認する。監視モードが選択されていない場合には(ステップS112:No)、ステップS101へ戻り、以降、ステップS112での判断が肯定されるまで、ステップS101〜S111の処理を繰り返し実行する。これにより、図11に示されるように、所定の要素d(n)にテーブルTBが関連付けられた複数のDt(k)が生成される。
【0046】
一方、監視モードが選択されている場合には(ステップS112:Yes)、CPU21は、ステップS113へ移行する。
【0047】
ステップS113では、CPU21は、ベイジアンネットワークを構築する。例えば、図11には、Dt(k)と、Dt(k)の要素d(n)に関連付けられたテーブルが一例として示されている。テーブルTBが関連づけられた4つの要素d(n)と、テーブルTBの各項目の値から、要素d(n)の値が1であったときには、3/4の確率で、居住者の状態が調理中であり、1/4の確率で外出中であることがわかる。
【0048】
そこで、CPU21は、所定の要素d(n)の値と、当該要素に関連付けられたテーブルTBに基づいて、図12に示されるように、入力をデータ列Dt(k)とし、出力を確率Y1%,Y2%,Y3%とするベイジアンネットワークを構築する。確率Y1%は、当該データ列Dt(k)の基となる電力データがサンプリングされたときに、居住者70が外出中である確率である。また、確率Y2%は、調理中である確率であり、確率Y3%は、就寝中である確率である。CPU21は、ベイジアンネットワークの構築が終了すると、学習処理S1を終了する。
【0049】
次に、CPU21が実行する監視処理S2について説明する。図13のフローチャートに示される処理は、CPU21によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。以下、図13を参照しつつ、CPU21が実行する学習処理S1について説明する。図13のフローチャートに示される一連の処理は、表示部25に表示された選択ボタン32が押下されることを条件に実行される。
【0050】
最初のステップS201では、CPU21は、内蔵するカウンタ値nを初期化する。これにより、カウンタ値nは零にリセットされる。
【0051】
次のステップS202では、選択ボタン32の表示色を変更する。これにより、監視装置10が監視モードであることを確認することが可能となる。
【0052】
次のステップS203では、CPU21は、所定時間(例えば2時間)経過するまでにサンプリングされる電力データ(t,P(t))を抽出する。これにより、例えば図3に示される電力データが抽出される。CPU21は、所定時間が経過し、サンプリングが終了すると次のステップS204へ移行する。
【0053】
次のステップS204では、CPU21は、カウンタ値nをインクリメントする。
【0054】
次のステップS205では、CPU21は、電力P(t)についての移動平均線P(t)を算出する。移動平均線P(t)を算出は、上述したステップS106と同等の手順で行う。
【0055】
次のステップS206では、CPU21は、図6に示されるように、移動平均線を規定するデータ(t,P(t))に基づく点を始点とし、対応する電力データ(t,P(t))に基づく点を終点とするベクトルA〜Aを算出する。
【0056】
次のステップS207では、CPU21は、差分曲線f(t)を算出する。この差分曲線f(t)の算出は、上述したステップS108と同等の手順で行う。
【0057】
次のステップS208では、CPU21は、差分曲線f(t)を二値化することにより、0と1の集合からなるデータ列D(n)を生成する。このデータ列D(n)の生成は、上述したステップS109と同等の手順で行う。
【0058】
次のステップS209では、CPU21は、カウンタ値nが基準値N以上であるか否かを判断する。カウンタ値nが基準値N以上でない場合には(ステップS209:No)、CPU21は、ステップS204に戻り、ステップS209での判断が肯定されるまで、移動平均線P(t)に対して、ステップS205〜S208の処理を繰り返し実行する。これにより、移動平均線P(t)に対する差分曲線fn+1(t)が順次算出され、N個のデータ列D(n)からなる、データ列Dt(k)が生成される。
【0059】
一方、カウンタ値nが基準値N以上である場合には(ステップS209:Yes)、CPU21は、ステップS210へ移行する。
【0060】
ステップS210では、CPU21は、データ列Dt(k)の基礎となる電力データ(t,P(t))がサンプリングされたときの居住者70の状態が、外出中である確率Y1%、調理中である確率Y2%、就寝中である確率Y3%をそれぞれ算出する。
【0061】
図12を参照するとわかるように、確率Y1%,Y2%,Y3%は、学習処理S1を実行することによって生成されたベイジアンネットワークへ、データ列Dt(k)を入力することによって得られる。
【0062】
次のステップS211では、CPU21は、確率Y1%,Y2%,Y3%と、図14に示されるテーブルを用いて、電力データ(t,P(t))の変化が、電気機器51を居住者70が操作したことに起因すると考えられる確率Yr%と、電気機器51の自動運転に起因すると考えられる確率Ym%を算出する。具体的には、確率Yr%,Ym%はそれぞれ次の式(1)及び式(2)を用いて算出される。
【0063】
Yr%=3%・Y1%+70%・Y2%+5%・Y3% …(1)
Ym%=97%・Y1%+30%・Y2%+95%・Y3% …(2)
【0064】
例えば、居住者70が外出中である確率Y1%が80%であり、調理中である確率Y2%が10%であり、就寝中である確率Y3%が10%である場合には、確率Yr%は、9.9%となり、確率Ym%は、90.1%となる。
【0065】
次のステップS212では、CPU21は、インタフェース部26を介して、確率Yr%,Ym%に関する情報を、インターネット80へ出力する。これにより、例えばパソコン等の通信端末を用いて、遠方から確率Yr%,Ym%に関する情報を取得することができる。
【0066】
次のステップS213では、CPU21は、学習モードが選択されているか否かを確認する。学習モードが選択されていない場合には(ステップS213:No)、CPU21は、ステップS201へ戻り、以降、ステップS212での判断が肯定されるまで、ステップS201〜S212の処理を繰り返し実行する。一方、学習モードが選択されている場合には(ステップS213:Yes)、CPU21は、監視処理S2を終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、居住者の行為に起因する電力の変化を示す差分曲線f(t)が算出される。次に、この差分曲線f(t)に基づいて、データ列Dt(n)が生成される。そして、データ列Dt(n)を入力とするベイジアンネットワークから出力される確率Y1%,Y2%,Y3%に基づいて、電力データ(t,P(t))の変化が、電気機器51を居住者70が操作したことに起因すると考えられる確率Yr%と、電気機器51の自動運転に起因すると考えられる確率Ym%が算出される。
【0068】
差分曲線fn(t)には、居住者の行為による消費電力の変化が、電気機器の自動運転による消費電力の変化に比較して大きく現れる。例えば図15には、居住者70が就寝しているときにサンプリングされた電力の推移を示す曲線P(t)が示されている。この曲線において、ピークPe1は、居住者70の行為に起因するものであり、ピークPe2,Pe3,Pe4は、電気機器の自動運転に起因するものである。このピークPe1〜Pe4のレベルは、図15ではほぼ等しい。しかしながら、図16に示される差分曲線f(t)によって示されるピークPe1は、ピークPe2〜Pe4に比べてレベルが著しく高い。
【0069】
したがって、本実施形態のように、差分曲線f(t)を用いて、確率Yr%と、確率Ym%を算出することで、精度良く当該確率Yr%、Ym%を算出することができる。ひいては、居住者70の異常の有無を精度良く判断することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、二値のデータからなるデータ列Dt(k)が、ベイジアンネットワークに入力されることによって、確率Y1%,Y2%,Y3%が算出される。そして、当該確率Y1%,Y2%,Y3%に基づいて、電気機器51を居住者70が操作したことに起因すると考えられる確率Yr%と、電気機器51の自動運転に起因すると考えられる確率Ym%が算出される。このため、確率Yr%,Ym%の算出の際に取り扱うデータの量が少なくなり、装置の小型化を実現するとともに、迅速に確率Yr%,Ym%を算出することが可能となる。
【0071】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態によって限定されるものではない。
【0072】
例えば、上記実施形態では、監視装置10が、コンピュータと同様に、CPU21,主記憶部22,補助記憶部23を含み、プログラム等のソフトウエアが補助記憶部23に記憶されていることとした。これに限らず、監視装置10は、例えば、図17に示されるように、電力計測ユニット28、入力部24、表示部25、移動平均線算出部10a、差分算出部10b、差分曲線算出部10c,データ列生成部10d,第1算出部10e,第2算出部10f及び記憶部10gを有していてもよい。
【0073】
この場合、移動平均線算出部10aは、電力P(t)についての移動平均線P(t)を算出する。
【0074】
差分算出部10bは、図6に示されるように、移動平均線を規定するデータ(t,P(t))に基づく点を始点とし、対応する電力データ(t,P(t))に基づく点を終点とするベクトルAを算出する。
【0075】
差分曲線算出部10cは、ベクトルAに基づいて、差分曲線f(t)を算出する。
【0076】
データ列生成部10dは、差分曲線f(t)それぞれを二値化することにより、0と1の集合からなるデータ列Dt(n)を生成する。
【0077】
第1算出部10eは、ベイジアンネットワークへ、データ列Dt(k)を入力して、データ列Dt(k)の基礎となる電力データ(t,P(t))がサンプリングされたときの居住者70の状態が、外出中である確率Y1%、調理中である確率Y2%、就寝中である確率Y3%を算出する。
【0078】
第2算出部10fは、確率Y1%,Y2%,Y3%と、図14に示されるテーブルを用いて、電力データ(t,P(t))の変化が、電気機器51を居住者70が操作したことに起因すると考えられる確率Yr%と、電気機器51の自動運転に起因すると考えられる確率Ym%を算出する。そして、算出結果をインターネット80へ出力する。
【0079】
記憶部10gは、電力計測ユニット28、入力部24から入力されるデータ、表示部25に表示させるための画像情報、及び各部の処理結果を記憶する。
【0080】
本実施形態では、居住者70の状態が、外出中、調理中、就寝中の3つに区分される場合について説明したが、この区分は一例である。また、居住者70の状態は、4つ以上に区分されていてもよい。
【0081】
本実施形態では、算出結果をインターネット80へ出力することとしたが、これに限らず、電気機器51を居住者70が操作したことに起因すると考えられる確率Yr%が、一定期間(例えば2,3日)継続した場合に、インターネットを介して外部に居住者70の異常を通知するメール等を送信してもよい。また、住宅50の外部に音や光を用いて、警報を発令してもよい。
【0082】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の監視装置及び監視方法は、居住者の監視に適している。
【符号の説明】
【0084】
10 監視装置
10a 移動平均線算出部
10b 差分算出部
10c 差分曲線算出部
10d データ列生成部
10e 第1算出部
10f 第2算出部
10g 記憶部
20 監視装置
21 CPU
22 主記憶部
23 補助記憶部
23 順次補助記憶部
24 入力部
25 表示部
26 インタフェース部
27 システムバス
28 電力計測ユニット
31,32 選択ボタン
33〜35 入力ボタン
50 住宅
51 電気機器
60 線
70 居住者
80 インターネット
A ベクトル
D, Dt データ列
F 点

IM 画像
LV1〜LV6 レベル
Pe1〜Pe4 ピーク
TB テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅に供給される電力を計測する電力計測手段と、
前記電力の計測結果を時系列的に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記電力の推移を示す推移曲線の移動平均線を算出する移動平均線算出手段と、
前記移動平均線上の点と、前記推移曲線上の点との差分を算出する差分算出手段と、
前記差分の時間的な推移を示す差分曲線を算出する差分曲線算出手段と、
前記差分曲線から二値のデータからなるデータ列を生成するデータ列生成手段と、
前記データ列が入力されたときに、前記電力が計測されたときの前記住宅に居住する居住者の状態が、所定の状態である確率を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段の算出結果に基づいて、前記電力の推移が、前記居住者の行為に起因する確率を算出する第2算出手段と、
を備える監視装置。
【請求項2】
前記第1算出手段はベイジアンネットワークである請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記居住者の状態を入力するためのインタフェースと、
前記データ列が生成されるごとに、前記インタフェースから入力された前記居住者の状態と、前記データ列を構成する要素とを関連付けることにより、前記ベイジアンネットワークを生成するベイジアンネットワーク生成手段と、
を備える請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記データ列を構成する要素は、
前記差分について規定されたレベルと、前記差分曲線との関係に基づいて値が決定される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記第2算出手段によって算出される確率が閾値以下の場合に、警報を発令する警報発令手段を備える請求項1乃至4のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項6】
住宅に供給される電力を計測する工程と、
前記電力の計測結果を時系列的に記憶する工程と、
前記電力の推移を示す推移曲線の移動平均線を算出する工程と、
前記移動平均線上の点と、前記推移曲線上の点との差分を算出する工程と、
前記差分の時間的な推移を示す差分曲線を算出する工程と、
前記差分曲線から二値のデータからなるデータ列を生成する工程と、
前記データ列が入力されたときに、前記電力が計測されたときの前記住宅に居住する居住者の状態が、所定の状態である確率を算出する工程と、
前記確率に基づいて、前記電力の推移が、前記居住者の行為に起因する確率を算出する工程と、
を含む監視方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−159896(P2012−159896A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17510(P2011−17510)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】