説明

盤用冷却装置

【課題】脱着自在なカバーを有する盤用冷却装置を備える電気機器収納用箱であって、該カバーを取り付ける際、カバー上端のねじ止めが不要であって、かつ、機器本体とカバーを平行に保ったまま、容易に脱着できる構造を有する盤用冷却装置を提供すること。
【解決手段】冷却装置本体4を取り付けるベース部3と、該ベース部3に支持された冷却装置本体4を着脱自在に覆うカバー5を備え、該ベース部3の上部に、該カバー5と嵌合する傾斜部7を有する第一の案内部8を形成し、該カバー5の上部に、該第一の案内部8の傾斜部7に沿ってカバー5を嵌合位置までスライド移動させる傾斜辺9を有する第一の被案内部10を形成し、該ベース部3の下部とカバー5の下部には、該嵌合位置において、該ベース部3の下部とカバー5の下部を固定するネジ止め機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤用冷却装置におけるカバーの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電盤、分電盤、通信盤などの電気機器収納用箱には、内部機器の発熱による温度上昇を防止する手段として、従来から盤外空気との間で熱交換を行う盤用熱交換器が広く用いられている。例えば特許文献1には、盤内取付型の盤用熱交換器が記載され、この盤用熱交換器の外側を覆うカバーの取り付け構造として、熱交換器本体の上端に形成した突片に、カバー上端に形成した折曲片を引っ掛けて、カバー下部を機器本体の方向に回転させ、盤用熱交換器本体とカバー下端部に形成したネジを一致させて取り付ける構造が開示されている。
【0003】
当該構造を採用した場合、カバー上端のねじ止めが不要となる利点がある一方で、カバーの脱着作業は、熱交換器本体に対してカバーを所定角度傾けて行う必要があるため、カバー脱着作業のための余剰スペースが十分確保できない場合には、脱着作業が困難になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4349624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前記の問題を解決し、脱着自在なカバーを有する盤用冷却装置を備える電気機器収納用箱であって、該カバーを取り付ける際、カバー上端のねじ止めが不要であって、かつ、機器本体とカバーを平行に保ったまま、容易に脱着できる構造を有する電気機器収納用箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の盤用冷却装置は、冷却装置本体を取り付けるベース部と、該ベース部に支持された冷却装置本体を着脱自在に覆うカバーを備え、該ベース部の上部に、該カバーと嵌合する傾斜部を有する第一の案内部を形成し、該カバーの上部に、該第一の案内部の傾斜部に沿ってカバーを嵌合位置までスライド移動させる傾斜辺を有する第一の被案内部を形成し、該ベース部の下部とカバーの下部には、該嵌合位置において、該ベース部の下部とカバーの下部を固定するネジ止め機構を備えることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の盤用冷却装置において、該ベース部の下部に、該カバーと嵌合する傾斜部を有する第二の案内部を形成し、該カバーの下部に、該第二の案内部の傾斜部に沿って嵌合位置までカバーをスライド移動させる傾斜辺を有する第二の被案内部を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の盤用冷却装置において、該ネジ止め機構が、ベース部の下部の傾斜部およびカバーの下部の傾斜辺に形成したネジ孔部と、該ネジ孔部に挿入されるネジからなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の盤用冷却装置において、第二の被案内部が、コ字状カバーの下部水平辺と、該コ字状カバーの下端部を折り曲げて形成した傾斜辺とからなり、該下部水平辺には、該傾斜辺に形成したネジ孔部と対峙する開口孔部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る盤用冷却装置は、筐体外面に盤用冷却装置を備え、該盤用冷却装置は、該筐体に冷却装置本体を取り付けるベース部と、該ベース部に支持された冷却装置本体を着脱自在に覆うカバーを備えている。本発明では、該ベース部の上部に、該カバーと嵌合する傾斜部を有する第一の案内部を形成し、該カバーの上部に、該第一の案内部の傾斜部に沿ってカバーを嵌合位置までスライド移動させる傾斜辺を有する第一の被案内部を形成し、該ベース部の下部とカバーの下部には、該嵌合位置において、該ベース部の下部とカバーの下部を固定するネジ止め機構を備える構成により、該カバーを取り付ける際、カバー上端のねじ止めが不要であって、かつ、カバーを機器本体と平行に保ったまま斜め方向よりスライド移動させて、容易に脱着できる構造を有する電気機器収納用箱を実現可能としている。また、当該構造によれば、カバーを斜め方向から挿入して回転させながら固定する必要がないため、従来、カバーの回転を伴う着脱作業のために要していたスペースが不要となるという効果も得られる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、該ベース部の下部に、該カバーと嵌合する傾斜部を有する第二の案内部を形成し、該カバーの下部に、該第二の案内部の傾斜部に沿って嵌合位置までカバーをスライド移動させる傾斜辺を有する第二の被案内部を形成した構造により、カバーをベース部に嵌合させる作業を、上下2か所に形成した案内部・被案内部を利用して行えるようにして、作業性の向上を実現している。
【0012】
請求項3記載の発明のように、該ネジ止め機構を、ベース部の下部の傾斜部およびカバーの下部の傾斜辺に形成したネジ孔部と、該ネジ孔部に挿入されるネジからなる構成にすることにより、カバーの正面方向からは、ネジ孔部や該ネジ孔部に挿入されたネジを視認できないようにすることができ、美観に優れた電気機器収納用箱を提供することができる。
【0013】
請求項4記載の発明のように、第二の被案内部を、コ字状カバーの下部水平辺と、該コ字状カバーの下端部を折り曲げて形成した傾斜辺とからなり、該下部水平辺には、該傾斜辺に形成したネジ孔部と対峙する開口孔部を形成することにより、嵌合状態にあるベース部とカバーとを固定するネジ止め作業を、カバーの外部から簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電気機器収納用箱外面に盤用冷却装置を備えた全体図である。
【図2】図1の盤用冷却装置からカバーを外した状態図である。
【図3】盤用冷却装置の全体図である。
【図4】図3の盤用冷却装置からカバーを外し盤内側から見た状態図である。
【図5】図4を盤外側から見た状態図である。
【図6】ベース部を盤内側から見た全体斜視図である。
【図7】カバーを盤内側から見た全体斜視図である。
【図8】カバーとベース部の非係止状態における説明図である。
【図9】図8の上部について説明する図である。
【図10】カバーとベース部の係止状態における側面断面図である。
【図11】図10の上部について説明する図である。
【図12】他の実施形態を示す図である。
【図13】図11の左下部拡大図である。
【図14】図13の斜視説明図である。
【図15】他の実施形態を示す図である。
【図16】他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は、筐体外面に盤用冷却装置を備える電気機器収納用箱の全体図を示し、図2は、図1の盤用冷却装置からカバーを外した状態図、つまりベース部を電気機器収納用箱に取り付けた状態図を示している。
【0016】
図1に示すように、本発明の電気機器収納用箱1は、筐体外面に盤用冷却装置2を備えている。盤用冷却装置2は、筐体側面の他、扉・背面の板部に取り付ける構造としてもよい。
【0017】
図3は、盤用冷却装置の全体図、図4は、図3の盤用冷却装置からカバーを外しそれぞれ盤内側から見た状態図を示し、図5は、図4を盤外側から見た状態図を示している。また、図6にはベース部を盤内側から見た全体斜視図を示し、図7にはカバーを盤内側から見た全体斜視図を示し、図8にはカバーとベース部の非係止状態における説明図を示して、図9は、図8の上部について説明する図を示している。図10にはカバーとベース部の係止状態における側面断面図を示して、図11は図10の上部について説明する図を示している。
【0018】
図3〜5に示すように、本実施形態の盤用冷却装置2は、該筐体側面に制御部やペルチェモジュール100等からなる冷却装置本体4を取り付けるベース部3と、該ベース部に支持された冷却装置本体を着脱自在に覆うカバー5を備えている。なお、ベース部3には冷却装置取付部200を形成している。本実施形態の盤用冷却装置はペルチェ式盤用冷却装置であるが、その他、熱交換器などであってもよい。
【0019】
ペルチェモジュール100は、ペルチェ素子の両面にヒートシンクと呼ばれる熱交換部を設けたものである。冷却効果を高めるために、放熱側熱交換部は吸熱側熱交換部よりもやや大きくして放熱面積を大きくし、ベース部の開口部にねじ止めされている。
【0020】
図5、図6に示すように、ベース部3の上部には、吸熱側から放熱側に張り出した吸熱側張出空間部6が形成されている。本実施形態では、吸熱側張出空間部6は、底面、天井面、壁面とにより区画された直方体状のもので、この空間にペルチェモジュール等の電源部が配置されている。当該構造とすることにより、冷却装置全体を大きくすることなく、吸熱側の面積(体積)を増やすことを可能とし、冷却効率の向上を図っている。
【0021】
ベース部3は、図2に示すように電気機器収納用箱1の筐体側面に固定され、固定されたベース部3には、制御部、ペルチェモジュール等からなる冷却装置本体4が取り付けられる。一方、ベース部3に支持された冷却装置本体4を覆うカバー5は、ベース部3に着脱自在に取り付けられる構造を有している。カバー5は、図7に示すように、ベース部方向に開口した箱状構造を有している。
【0022】
ベース部3の上部には、図6に示すように、カバー5と嵌合する傾斜部7を有する第一の案内部8が形成されている。本実施形態においては、吸熱側張出空間部6上面の左右端部に第一の案内部8をそれぞれ形成しているが、その他の実施形態として、第一の案内部8をベース部3に直接立設形成したり、吸熱側張出空間部6の上面に渡って形成するものであっても良い。
【0023】
カバー5の天井面内側には、図7〜図11に示すように、第一の案内部8の傾斜部7に沿ってカバーを嵌合位置まで斜め方向よりスライド移動させる傾斜辺9を有する第一の被案内部10が形成されている。傾斜辺9は、カバー開口部に向かって斜め下側方向に突設した辺であって、カバー天面の左右方向に渡って形成されている。傾斜片9の上端部を折り曲げて形成した辺は、カバー5との固定に用いる取付辺11として使用される。一方、カバー天面の左右端部の傾斜辺9は、図9に示すように、下方に向けて延設され、その下端部には、該下端部を床面に対して水平に(ベース部に対しては垂直に)折り曲げた垂直辺12と、該垂直辺を更に床面に対して垂直に(ベース部に対しては平行に)折り曲げた水平辺13とが形成され、傾斜辺9に対する補強部としての機能を果たしている。該補強部を形成することにより、傾斜辺9をベース部3の第一の案内部8に沿ってスライド移動する際、傾斜辺9が変形することを効果的に防止している。傾斜辺9の変形を抑制することにより、ベース部3とカバー5の嵌合作業が安定して行え、作業性の向上を図ることができる。本実施形態における補強部は、傾斜片9の下端部をL字状に折り曲げて形成されているが、図12に示すように、傾斜片9の下端部を床面に対して垂直に(ベース部に対しては平行に)折り曲げた水平辺13のみからなるものであってもよい。
【0024】
上記構造によれば、カバー5の上部をネジ止めすることなくベース部3との嵌合位置にカバーを保持することができるため、カバー上端におけるネジ止機構を省略することが可能となる。更に、ベース部3とカバー5の脱着作業時に、カバー5を冷却装置本体4と平行に保ったまま斜め方向よりスライド移動させて、容易に脱着できるため、作業性の向上が図られるとともに、カバー5を斜め方向から挿入して回転させながら固定する必要がないため、従来、カバーの回転を伴う着脱作業のために要していたスペースが不要となるという効果も得られる。
【0025】
ベース部3の下部には、図11や図13に示すように、カバーと嵌合する傾斜部15を有する第二の案内部16を形成され、カバー5の下部には、第二の案内部16の傾斜部15に沿って嵌合位置までカバーをスライド移動させる傾斜辺17を有する第二の被案内部18が形成されている。本実施形態において、第二の案内部16はベース部の下部で左右に渡って形成され、第二の被案内部18はカバーの下部で左右に渡って形成されている。当該構造によれば、カバーをベース部に嵌合させる作業を、上下2か所に形成した案内部8、16および被案内部10、18を利用して行うことができるため、案内部8、被案内部10のみの構造より安定して嵌合させる位置まで案内させることができるので作業性の向上を図ることができる。
【0026】
ベースの下部とカバーの下部には、図11に示すように、ベース部とカバーの嵌合位置において、該ベースの下部とカバーの下部を固定するネジ止め機構を備えている。
【0027】
本実施形態におけるネジ止め機構は、図11または図13に示すようにベース部下部の傾斜部15に形成したネジ孔部20およびカバー下部の傾斜辺17に形成したネジ孔部19と、該ネジ孔部19,20に挿入されるネジ50から構成されている。ベース部下部の傾斜部15にネジ孔部20およびカバー下部の傾斜辺17にネジ孔部19を形成することにより、カバーの正面方向からは、該ネジ孔部19,20に挿入されたネジ50を視認できないようにすることができ、美観に優れた電気機器収納用箱を提供することができる。
【0028】
図13には、図11の左下部拡大図を示し、図14には、図13の斜視説明図を示し、図15および図16には、他の実施形態を示している。
本実施形態では、図13に示すように、第二の被案内部を、下部水平部21と、下部水平部21を折り曲げて形成した傾斜辺17とから構成し、下部水平部21には、図14に示すように、傾斜部15に形成したネジ孔部19と対峙する開口孔部23を形成し、開口孔部23からドライバーなどの工具を挿入しねじ止めを行える構造としているが、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、図15に示すように、下部水平部21を折り曲げて形成した傾斜辺17の端部を更に、床面に対して垂直に(ベース部に対しては平行に)折り曲げた水平辺24を形成し、該水平辺24にネジ孔部19を形成することもできる。この構造においては、下部水平面21方向から工具を差し込み出来ない状況では正面より工具を差し込みできるように形成されるものである。また、開口孔部23を形成する代わりに、図16に示すように、下部水平部21の端部を凸状に折り曲げて溝部を形成する構造を採用することもできる。この構造においては、図13に示したような開口孔部23を設けることなく工具を下部水平面21方向から工具を差しこみできるようにしたものである。図15及び図16いずれの構造においても第二の案内部16、第二の被案内部18を形成される構造となるのでカバー5を安定して嵌合位置に移動させることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 電気機器収納用箱
2 盤用冷却装置
3 ベース部
4 冷却装置本体
5 カバー
6 吸熱側張出空間部
7 傾斜部
8 第一の案内部
9 傾斜辺
10 第一の被案内部
11 取付辺
12 垂直辺
13 水平辺
15 傾斜部
16 第二の案内部
17 傾斜辺
18 第二の被案内部
19 ネジ孔部
20 ネジ孔部
21 下部水平部
23 開口孔部
24 水平辺
50 ネジ
100 ペルチェモジュール
200 冷却装置取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置本体を取り付けるベース部と、該ベース部に支持された冷却装置本体を着脱自在に覆うカバーを備え、
該ベース部の上部に、該カバーと嵌合する傾斜部を有する第一の案内部を形成し、
該カバーの上部に、該第一の案内部の傾斜部に沿ってカバーを嵌合位置までスライド移動させる傾斜辺を有する第一の被案内部を形成し、
該ベース部の下部とカバーの下部には、該嵌合位置において、該ベース部の下部とカバーの下部を固定するネジ止め機構を備える
ことを特徴とする盤用冷却装置。
【請求項2】
該ベース部の下部に、該カバーと嵌合する傾斜部を有する第二の案内部を形成し、
該カバーの下部に、該第二の案内部の傾斜部に沿って嵌合位置までカバーをスライド移動させる傾斜辺を有する第二の被案内部を形成した
ことを特徴とする請求項1記載の盤用冷却装置。
【請求項3】
該ネジ止め機構が、ベース部の下部の傾斜部およびカバーの下部の傾斜辺に形成したネジ孔部と、該ネジ孔部に挿入されるネジからなる
ことを特徴とする請求項2記載の盤用冷却装置。
【請求項4】
第二の被案内部が、コ字状カバーの下部水平辺と、該コ字状カバーの下端部を折り曲げて形成した傾斜辺とからなり、
該下部水平辺には、該傾斜辺に形成したネジ孔部と対峙する開口孔部を形成した
ことを特徴とする請求項3記載の盤用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図10】
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【図12】
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