説明

目地用耐火バックアップ材

【課題】シーリング材の下地として用いられるバックアップ材を利用して目地部を優れた防火性能の耐火構造に構成しながらも、目地に対する耐火バックアップ材の装填作業を能率良く容易に行なう。
【解決手段】熱膨張性耐火材を含む弾性変形可能なバックアップ体1に、該バックアップ体1の外周面3の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部2が形成され、この溝部2の形成領域以外のバックアップ体1の外周面が、前記溝部2の開口側とは反対側ほど先細りとなる輪郭形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面等における目地のシーリング工事に際してシーリング材の下地として用いられる目地用耐火バックアップ材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の目地用耐火バックアップ材としては、図10に示すように、目地幅よりも大きな直径で円筒状に形成された弾性変形可能な発泡プラスチック製のバックアップ体50に、それの内周面と外周面とにわたる状態で径方向に沿う切れ目51が切り込み形成されているとともに、前記バックアップ体50の中空部50Aには、熱膨張性耐火材で円柱状に構成された耐火発泡定形材52が、前記切れ目51を通して密着状態で装着されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−256620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の目地用耐火バックアップ材では、火災発生時に発泡プラスチック製のバックアップ体50が焼失しても、火災の熱で前記耐火発泡定形材52が発泡膨張して、耐熱性に優れた残渣で目地の閉塞状態を維持することができるから、バックアップ材50を利用して目地部を優れた防火性能の耐火構造に構成することができる。
【0005】
反面、前記耐火発泡定形材52がバックアップ体50の芯材として内装されているため、バックアップ体50自体の弾性変形量が減少し、特に、目地幅が設定目地幅よりも狭くなっている場合では、耐火バックアップ材の装填作業に手間取り易い。
【0006】
また、目地に耐火バックアップ材を装填する際、前記バックアップ体50の切れ目51が目地の開口に対面する状態で押し込むと、前記耐火発泡定形材52が切れ目51を通して外部に抜け出す可能性がある。
【0007】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、シーリング材の下地として用いられるバックアップ材を利用して目地部を優れた防火性能の耐火構造に構成しながらも、目地に対する装填作業を能率良く容易に行なうことのできる目地用耐火バックアップ材を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の特徴構成は、熱膨張性耐火材を含む弾性変形可能なバックアップ体に、該バックアップ体の外周面の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部が形成され、この溝部の形成領域以外のバックアップ体の外周面が、前記溝部の開口側とは反対側ほど先細りとなる輪郭形状に形成されている点にある。
【0009】
上記構成によれば、目地に耐火バックアップ材を装填する際、前記バックアップ体の先細り側を目地の開口に対面する状態で押し込み操作すると、バックアップ体が目地内にスムーズに移入し易くなり、しかも、目地幅が設定目地幅よりも狭い場合でも、その幅変動をバックアップ体に形成された溝部で吸収することができ、さらに、その押し込み操作面側に開口する溝部にヘラ等の押し込み操作具を装着することが可能で、この押し込み操作具を介してバックアップ体を目地内の所定装着位置に確実に押し込むことができる。
【0010】
また、火災発生時には、バックアップ体の熱膨張性耐火材が火災の熱で発泡膨張して、耐熱性に優れた残渣で目地の閉塞状態を維持することができる。
【0011】
従って、バックアップ材を利用して目地部を優れた防火性能の耐火構造に構成しながらも、目地に対する耐火バックアップ材の装填作業を能率良く容易に行なうことができる。
【0012】
本発明による第2の特徴構成は、前記溝部が、目地装着時においても空隙を維持できる大きさに構成されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、前記バックアップ体が目地内に入り込んだ状態でも、このバックアップ体に形成されている溝部が目地の開口側において開口されているため、ヘラ等の押し込み操作具の装着位置を自由に変更することができ、目地に対する耐火バックアップ材の装填作業の能率化を図ることができる。
【0014】
本発明による第3の特徴構成は、前記バックアップ体の外周面のうち、前記溝部の両開口縁に連続する状態で目地の開口に臨む外周面部分が、目地の開口側に充填されるシーリング材の受け面に構成されているとともに、前記両受け面が、目地装着時の圧縮弾性変形で前記目地の両開口縁を結ぶ開口平面と平行又は略平行となるように、自然状態では長手方向視において前記溝部の両開口縁側ほど高位となる傾斜姿勢に構成されている点にある。
【0015】
上記構成によれば、前記バックアップ体の弾性復元力を利用して目地内の所定位置に摩擦保持するこができるとともに、装填状態では、バックアップ体の両受け面が前記目地の両開口縁を結ぶ開口平面と平行又は略平行となるから、シーリング材の目地幅方向での充填量の均等化を図ることができる。
【0016】
本発明による第4の特徴構成は、前記バックアップ体が周方向で一定又は略一定の厚みに構成されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、前記溝部を形成しながらもバックアップ体自体の周方向での厚みが一定又は略一定に構成されているので、バックアップ体の弾性変形操作時の割れ等の損傷を抑制することができる。
【0018】
本発明による第5の特徴構成は、前記バックアップ体が熱膨張性ゴムからなる点にある。
【0019】
上記構成によれば、バックアップ体として熱膨張性ゴムを用いるので、熱膨張性ゴムの弾性を利用して目地内の所定装着位置に位置ずれのない状態で容易に装填することができるとともに、目地部における振動を効果的に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
図1〜図3は、建築物の壁パネルWの隣接間に形成される目地Sのシーリング工事に際してシーリング材6の下地として用いられる目地用耐火バックアップ材を示し、これは、熱膨張性耐火材を含む熱膨張性ゴムで成形された弾性変形可能なバックアップ体1に、該バックアップ体1の外周面3の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部2が形成され、この溝部2の形成領域以外のバックアップ体1の外周面3及び前記溝部2に臨む内周面4が、長手方向視(横断面視)において前記溝部2の開口側とは反対側ほど先細りとなる長手方向視略U字状又は略半円状の輪郭形状に形成されている。
【0021】
そのため、目地Sに耐火バックアップ材を装填する際、前記バックアップ体1の先細り側を目地Sの開口に対面する状態で押し込み操作すると、バックアップ体1が目地S内にスムーズに移入し易くなり、しかも、目地幅W2が設定目地幅よりも狭い場合でも、その幅変動をバックアップ体1に形成された溝部2及び該バックアップ体1の弾性変形で吸収することができ、さらに、その押し込み操作面側に開口する溝部2にヘラ等の押し込み操作具を装着することが可能であるため、この押し込み操作具を介してバックアップ体1を目地S内の所定装着位置に確実に押し込むことができる。
また、火災発生時には、バックアップ体1の熱膨張性耐火材が火災の熱で発泡膨張して、耐熱性に優れた残渣で目地Sの閉塞状態を維持することができる。
【0022】
前記バックアップ体1の外周面3のうち、前記溝部2の開口幅方向両側となる開口縁7に連続する状態で目地Sの開口に臨む外周面部分3aが、目地Sの開口側に充填されるシーリング材6を受け止め支持可能な平滑又は略平滑な受け面に構成されているとともに、前記両受け面3aが、目地装着時の圧縮弾性変形、つまり、目地Sへのバックアップ体1の装填に伴う圧縮弾性変形で前記目地Sの両開口縁5を結ぶ開口平面と平行又は略平行となるように、自然状態では長手方向視において前記溝部2の両開口縁7側ほど高位となる傾斜姿勢に構成されている。
【0023】
前記バックアップ体1の自然状態での最大幅W1、つまり、前記両受け面3aの外側端縁3b間となる最大幅W1は、前記目地Sの幅W2よりも大に構成されているとともに、前記溝部2が、目地装着時においてもヘラ等の押し込み操作具を挿入装着可能な幅の空隙を維持できる大きさに構成されている。換言すれば、目地装着時の溝部2の幅が押し込み操作具を挿入装着可能な幅に構成されている。
【0024】
前記バックアップ体1の外周面3のうち、前記両受け面3aを除外した領域の外周面部分3cと内周面4との間の厚みが自然状態において周方向で一定又は略一定に構成されている。
【0025】
前記バックアップ体1を構成する熱膨張性ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のゴム物質を主体とし、これにゴム軟化材、熱膨張性耐火材である熱膨張性無機物、無機充填材などを配合したものが使用される。
【0026】
前記熱膨張性無機物としては、グラファイト系、バーミキュライト、パーライト、熱膨張性黒鉛等を挙げることができ、また、前記無機充填材としてはシリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0027】
〔第2実施形態〕
図4、図5は目地用耐火バックアップ材の別実施形態を示し、これは、熱膨張性耐火材を含む熱膨張性ゴムで成形された弾性変形可能なバックアップ体1に、該バックアップ体1の外周面3の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部2が形成され、この溝部2の形成領域以外のバックアップ体1の外周面3及び前記溝部2に臨む内周面4が、長手方向視において前記溝部2の開口側とは反対側ほど先細りとなる長手方向視略V字状の輪郭形状に形成されている。
【0028】
前記バックアップ体1の外周面3のうち、前記溝部2の開口幅方向両側となる開口縁7に連続する状態で目地Sの開口に臨む外周面部分3aが、目地Sの開口側に充填されるシーリング材6を受け止め支持可能な平滑又は略平滑な受け面に構成されているとともに、前記両受け面3aが、目地装着時の圧縮弾性変形、つまり、目地Sへのバックアップ体1の装填に伴う圧縮弾性変形で前記目地Sの両開口縁5を結ぶ開口平面と平行又は略平行となるように、自然状態では長手方向視において溝部2の両開口縁7側ほど高位となる傾斜姿勢に構成されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0029】
〔第3実施形態〕
図6、図7は目地用耐火バックアップ材の別実施形態を示し、これは、熱膨張性耐火材を含む熱膨張性ゴムで成形された弾性変形可能なバックアップ体1に、該バックアップ体1の外周面3の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部2が形成され、この溝部2の形成領域以外のバックアップ体1の外周面3及び前記溝部2に臨む内周面4が、長手方向視において前記溝部2の開口側とは反対側ほど先細りとなる長手方向視略U字状又は略半円状の輪郭形状に形成されているとともに、前記バックアップ体1の外周面3の周方向中央部分3dが、前記溝部4の両開口縁7を結ぶ開口平面と平行又は略平行となる扁平面に構成されている。
【0030】
この第3実施形態の場合は、前記前記バックアップ体1の周方向中央部分での厚みが最も薄くなるから、バックアップ体1を目地S内の所定装着位置に確実に摩擦保持することができる状況で、目地Sに対するバックアップ体1の押し込み操作の容易化を図ることができる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0031】
〔第4実施形態〕
図8、図9は目地用耐火バックアップ材の別実施形態を示し、これは、熱膨張性耐火材を含む熱膨張性ゴムで成形された弾性変形可能なバックアップ体1に、該バックアップ体1の外周面3の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部2が形成され、この溝部2の形成領域以外のバックアップ体1の外周面3及び前記溝部2に臨む内周面4が、長手方向視において前記溝部2の開口側とは反対側ほど先細りとなる長手方向視略V字状の輪郭形状に形成されているとともに、前記バックアップ体1の外周面3の周方向中央部分3eが、前記溝部4の両開口縁7を結ぶ開口平面と平行又は略平行となる扁平面に構成されている。
【0032】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0033】
〔その他の実施形態〕
(1)前記バックアップ体1の外周面3の輪郭形状としては、前記溝部2の開口側とは反対側ほど先細りとなる形成であれば、上述の各実施形態以外の形状に構成してもよい。
【0034】
(2)上述の各実施形態では、前記溝部2を、目地装着時においてもヘラ等の押し込み操作具を挿入装着可能な幅の空隙を維持できる大きさに構成したが、バックアップ体1の弾性変形によって押し込み操作具を差込み可能であれば、目地装着時に前記溝部2に臨む内周面4が密着していてもよい。
【0035】
(3)上述の各実施形態では、前記バックアップ体1を熱膨張性耐火材を含む熱膨張性ゴム(発泡剤または発泡剤と発泡助剤により発泡させた発泡ゴムを含む)で成形したが、前記バックアップ体1を弾性変形可能な樹脂発泡体から構成し、この樹脂発泡体の外周面及び内部の空隙に塗料状に調整した熱膨張性耐火材を含浸させてもよい。
【0036】
(4)上述の各実施形態では、建築物の壁パネルWの隣接間に形成される目地S用の耐火バックアップ材について説明したが、トンネルセグメントの接合面間に形成される目地等の土木関係の目地にも本発明の耐火バックアップ材を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態の目地用耐火バックアップ材を示す横断面図
【図2】耐火バックアップ材を目地の所定位置に装填したときの横断面図
【図3】シーリング材を目地に充填したときの横断面図
【図4】本発明の第2実施形態の目地用耐火バックアップ材を示す横断面図
【図5】耐火バックアップ材を目地の所定位置に装填したときの横断面図
【図6】本発明の第3実施形態の目地用耐火バックアップ材を示す横断面図
【図7】耐火バックアップ材を目地の所定位置に装填したときの横断面図
【図8】本発明の第4実施形態の目地用耐火バックアップ材を示す横断面図
【図9】耐火バックアップ材を目地の所定位置に装填したときの横断面図
【図10】従来の目地用耐火バックアップ材を示す横断面図
【符号の説明】
【0038】
1 バックアップ体
2 溝部
3 外周面
3a 受け面
5 開口縁
6 シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性耐火材を含む弾性変形可能なバックアップ体に、該バックアップ体の外周面の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部が形成され、この溝部の形成領域以外のバックアップ体の外周面が、前記溝部の開口側とは反対側ほど先細りとなる輪郭形状に形成されている目地用耐火バックアップ材。
【請求項2】
前記溝部が、目地装着時においても空隙を維持できる大きさに構成されている請求項1記載の目地用耐火バックアップ材。
【請求項3】
前記バックアップ体の外周面のうち、前記溝部の両開口縁に連続する状態で目地の開口に臨む外周面部分が、目地の開口側に充填されるシーリング材の受け面に構成されているとともに、前記両受け面が、目地装着時の圧縮弾性変形で前記目地の両開口縁を結ぶ開口平面と平行又は略平行となるように、自然状態では長手方向視において前記溝部の両開口縁側ほど高位となる傾斜姿勢に構成されている請求項1又は請求項2記載の目地用耐火バックアップ材。
【請求項4】
前記バックアップ体が周方向で一定又は略一定の厚みに構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の目地用耐火バックアップ材。
【請求項5】
前記バックアップ体が熱膨張性ゴムからなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の目地用耐火バックアップ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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