説明

目地装置

【課題】床用目地装置の床用目地プレートの先端部が地震で目地部が狭くなり、上方へ回動して、傾斜面になっても、壁用目地装置が損傷することなく、スムーズにスライド目地カバーおよび遮蔽板が移動し、安全に使用することができる目地装置を提供する。
【解決手段】床用目地装置4と、この床用目地装置4が設けられた部位の左右の建物3の壁面間の目地部2を覆う壁用目地装置5とを備える目地装置1において、壁用目地装置5は床用目地プレート9と隙間を有するように覆うコ字状の目地カバー17と、左右の建物3の目地部側壁面に取付けられた目地カバー支持具15と、目地カバー17の下端部に上下方向にスライド移動可能に取付けられ、先端部側が床用目地プレート9と当接しない切欠部18が形成されたスライド目地カバー19と、スライド目地カバー19の切欠部18を覆い、スライド目地カバー19に取付けられた遮蔽板20とで目地装置1を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して床面と壁面とを有する渡り通路等の部分で、地震で目地部が狭くなると床用目地プレートの先端部が床面上へ突出する床用目地装置を備えた目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような目地装置は左右の建物の目地部側の床躯体間に左右の建物が地震で左右方向に揺れ動いた場合に、床用目地プレートの中央部を目地部の中央部に位置した状態で左右の建物が左右方向に移動できる床用目地装置と、左右の建物の壁面間の目地部を覆う壁用目地装置の壁用目地カバーの上下部位に上下方向にスライド移動する移動目地カバーを設置し、左右の建物が地震で異なる上下方向に揺れ動いても、その揺れ動きを移動目地カバーの上下移動で吸収して、壁用目地カバー等を損傷することなく吸収することが考えられている。
【0003】
しかしながら、左右の建物が地震で異なる上下方向に揺れ動くと、床用目地プレートが傾斜状態となって移動目地カバーを押し圧するため、該押し圧時に移動目地カバーと壁用目地カバーとがかじり、スライド移動できなくなって損傷するという欠点があった。
【0004】
また、最近、床用目地プレートを地震で目地部が狭くなると先端部を上方へ回動できるようにして床面上へ突出させて、その揺れ動きを吸収する床用目地装置が多く用いられているため、該床用目地プレートで壁用目地装置の移動目地カバーを押し上げようとすると、移動目地カバーには床用目地プレートの傾斜による押し上げ力が加わり、移動目地カバーと壁用目地カバーとがかじり、移動目地カバーがスライド移動できなくなるという不具合が同じように生ずるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3191214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、床用目地装置の床用目地プレートの先端部が地震で目地部が狭くなり、上方へ回動して、傾斜面になっても、壁用目地装置が損傷することなく、スムーズにスライド目地カバーおよび遮蔽板が移動し、かつ壁用目地部が開口するのを阻止して、安全に使用することができる目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は目地部を介して設けられた左右の建物の目地部側の一方の床躯体に後端部が取付具によって取付けられ、先端部が目地部側の他方の床躯体に反目地部側が傾斜面の目地プレートスライド支持凹部に支持され、目地部が狭くなると先端部が他方の床躯体上へ突出する床用目地プレートを備える床用目地装置と、この床用目地装置が設けられた部位の左右の建物の壁面間の目地部を覆う壁用目地装置とを備える目地装置において、前記壁用目地装置は前記左右の建物の壁面間の目地部を前記床用目地プレートと隙間を有するように覆うコ字状あるいはリップミゾ形鋼形状の目地カバーと、この目地カバーを前記目地部が広くなったり狭くなったりしても損傷することなく覆えるように、前記左右の建物の目地部側壁面に取付けられた目地カバー支持具と、前記目地カバーの下端部に上下方向にスライド移動可能に取付けられ、中央部より前記床用目地プレートの後端部側が該床用目地プレートと当接し、先端部側が床用目地プレートと当接しない切欠部が形成されたスライド目地カバーと、このスライド目地カバーの切欠部を覆い、前記床用目地プレートの先端部が上方へ回動する、押し圧により該床用目地プレートの回動方向にスライド移動するように、該スライド目地カバーに取付けられた遮蔽板とで目地装置を構成している。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1により、地震で目地部が狭くなり、床用目地プレートの先端部が上方へ回動して傾斜面になっても、壁用目地装置のスライド目地カバーの切欠部を覆っている遮蔽板を床用目地プレートでスムーズに押し上げることができる。
したがって、目地部が狭くなる地震時の揺れ動きで、壁用目地装置が損傷するのを効率よく阻止できる。
(2)前記(1)によって、左右の建物の壁面間の目地部を目地カバー、スライド目地カバーおよび遮蔽板で覆うことができる。
したがって、目地部に開口する隙間が生じることなく、安全に使用することができる。
(3)前記(1)により、スライド目地カバーは下端部の中央部が床用目地プレートによって押し圧されるため、目地カバーに対し、上方へスムーズに押し圧され、スムーズにスライド移動させることができる。
(4)前記(1)により、スライド目地カバーに切欠部を形成するとともに、該切欠部を床用目地プレートの回動方向にスライド移動する遮蔽板をスライド目地カバーに取付けるだけでよいので、構造が簡単で容易に設置することができる。
(5)請求項2も前記(1)〜(4)と同様な効果が得られるとともに、遮蔽板のスライド目地カバーへの取付けを容易に行なうことができる。
(6)請求項3も前記(1)〜(4)と同様な効果が得られるとともに、スライド目地カバーに遮蔽板が外れないように取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施するための第1の形態の平面図。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図。
【図4】本発明を実施するための第1の形態の目地カバー支持具の説明図。
【図5】本発明を実施するための第1の形態の目地カバーの説明図。
【図6】本発明を実施するための第1の形態のスライド目地カバーの説明図。
【図7】本発明を実施するための第1の形態の遮蔽板の説明図。
【図8】本発明を実施するための第1の形態の地震で目地部が狭くなった動作説明図。
【図9】本発明を実施するための第1の形態の地震で目地部が非常に狭くなった動作説明図。
【図10】本発明を実施するための第1の形態の地震で目地部が広くなった動作説明図。
【図11】本発明を実施するための第2の形態の平面図。
【図12】図11の12−12線に沿う断面図。
【図13】本発明を実施するための第2の形態の遮蔽板が取付けられたスライド目地カバーの説明図。
【図14】本発明を実施するための第2の形態の地震で目地部が狭くなった動作説明図。
【図15】本発明を実施するための第3の形態の平面図。
【図16】図15の一部破断した16−16線に沿う断面図。
【図17】本発明を実施するための第3の形態の目地カバー支持具の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1ないし図10に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して設けられた左右の建物3、3の目地部を、地震の揺れ動きを吸収できるように覆うことができる本発明の目地装置で、この目地装置1は前記左右の建物3、3の床躯体3a、3a間を覆う床用目地装置4と、前記左右の建物3、3の壁面3b、3b間を覆う壁用目地装置5とで構成されている。
【0013】
前記床用目地装置4は前記左右の建物3、3の目地部側の一方の建物3の床躯体3aに形成された床用目地プレート支持凹部6と、前記左右の建物3、3の目地部側の他方の建物3の床躯体3aに反目地部側が傾斜面7に形成された、前記目地部2のほぼ半分の幅寸法の床用目地プレートスライド支持凹部8と、前記床用目地プレート支持凹部6に後端部が支持され、先端部が前記床用目地プレートスライド支持凹部8に支持された床用目地プレート9と、前記床用目地プレート支持凹部6に前記床用目地プレート9の先端部が上方へ回動できるように取付ける取付具としての、該床用目地プレート支持凹部6に固定された係止ピン10、10と、この係止ピン10、10と係合する前記床用目地プレート9の後部両側底面に形成された係止穴11、11とで構成されている。
【0014】
前記壁用目地装置5は目地部側の一方の建物3の壁面3bに一端部が枢支ピン12で枢支され、他端部が目地部側の他方の建物3の壁面3bに枢支ピン12で枢支され、中央部に中央枢支部13が形成された伸縮可能で、かつ所定間隔離間されて配置された少なくとも2個以上の中央維持リンク機構14、14を備える目地カバー支持具15と、この目地カバー支持具15に取付けられた前記目地部側の壁面3b、3bに両端部が当接し、前記床用目地プレート9との間に隙間16を有するように配置されたリップミゾ形鋼形状の目地カバー17と、この目地カバー17の下端部に上下方向にスライド移動可能で、かつ前記床用目地装置4の床用目地プレート9と当接する下部の、該床用目地プレート9の先端部側で、かつ中央部より先端部側に切欠部18が形成されたスライド目地カバー19と、このスライド目地カバー19の切欠部18を覆う台形状の遮蔽板20と、この遮蔽板20を該遮蔽板20の傾斜面20aに沿って上方へ移動できるようにガイドする、前記スライド目地カバー19に形成された遮蔽板ガイド片21、22とで構成されている。
【0015】
前記目地カバー支持具15は少なくとも2個以上の中央維持リンク機構14、14と、この少なくとも2個以上の中央維持リンク機構14、14の中央枢支部13、13に枢支ピン23、23で枢支された支持バー24と、この支持バー24に所定間隔で中央部が固定された前記目地カバー17を複数本のタッピングビス25等で取付けるためのカバー取付板26、26、26とで構成されている。
【0016】
上記構成の目地装置1は、通常時には左右の建物3、3の左右の床躯体3a、3a間の目地部2は床用目地装置4の床用目地プレート9で覆われ、左右の建物3、3の壁面3b、3b間の目地部2は壁用目地装置5の目地カバー17、スライド目地カバー19および遮蔽板20で覆われた状態となっている。
【0017】
地震で左右の建物3、3間の目地部2が狭くなるように左右の建物3、3が揺れ動いた場合、図8に示すように、床用目地装置4の床用目地プレート9の先端部が他方の建物3の床用目地プレートスライド支持凹部8の傾斜面7をスライド移動し、他方の建物3の床面上へ突出し、その揺れ動きを吸収するとともに、この床用目地プレート9の先端部の上方への回動によって、壁用目地装置5の遮蔽板20の底面20bは床用目地プレート9と面接触状態で上方へ遮蔽板ガイド片21、22によって案内されて、スムーズに上方へ移動して、その揺れ動きを吸収する。
【0018】
また、左右の建物3、3の目地部2が非常に狭くなるように揺れ動き、床用目地プレート9が回動した場合、図9に示すようにスライド目地カバー19の中央部の底面が床用目地プレート9と接触して、目地カバー17内へ平行移動する状態でスライド移動して、その揺れ動きを吸収する。
【0019】
地震で目地部2が広くなるように左右の建物3、3が揺れ動いた場合、図10に示すように、床用目地プレート9の先端部は床用目地プレートスライド支持凹部8をスライド移動し、その揺れ動きを吸収するとともに、壁用目地装置5の目地カバー17の両端部は左右の建物3、3の左右の壁面3b、3bをスライド移動し、かつ遮蔽板20とスライド目地カバー19の底面は床用目地プレート9上をスライド移動して、その揺れ動きを吸収する。
【0020】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図11ないし図16に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
図11ないし図14に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、スライド目地カバー19の下端部中央部に枢支ピン27で回動可能に取付けた切欠部18を覆う遮蔽板20Aを用いた点で、このように遮蔽板20Aをスライド目地カバー19に取付けた壁用目地装置5Aを用いて構成した目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0022】
図15ないし図17に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、左右の建物3、3の目地部側の壁面3b、3bのいずれか一方の壁面3bに先端部が水平方向に回動できるように後端部がヒンジ部材28で取付けられ、先端部が他方の壁面3bに当接する少なくとも2個以上の目地カバー支持アーム29、29と、この少なくとも2個以上の目地カバー支持アーム29、29の先端部を常時他方の壁面3bに当接するよう付勢できるようにそれぞれ一方の壁面3bに付勢スプリング30、30を用いて取付けられた付勢機構31、31とからなる目地カバー支持具15Aを用いて壁用目地装置5Bを構成した点で、このような壁用目地装置5Bを用いて構成した目地装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0023】
なお、前記本発明を実施するための各形態ではリップミゾ形鋼形状の目地カバー17を用いるものについて説明したが、本発明はこれに限らず、コ字状の目地カバーを用いてもよい。
【0024】
また、前記本発明を実施するための各形態では四角枠状の中央維持リンク機構14、14を用いたが、本発明はこれに限らず、パンタグラフ形状の中央維持リンク機構を用いても同様な作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は左右の建物間の床と壁面間の目地部を覆う床用目地装置と壁用目地装置を備える目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0026】
1、1A、1B:目地装置、 2:目地部、
3:建物、 4:床用目地装置、
5、5A、5B:、壁用目地装置、
6:床用目地プレート支持凹部、7:傾斜面、
8:床用目地プレートスライド支持凹部、
9:床用目地プレート、 10:係止ピン、
11:係止穴、 12:枢支ピン、
13:中央枢支部、 14:中央維持リンク機構
15、15A:目地カバー支持具、
16:隙間、 17:目地カバー、
18:切欠部、 19:スライド目地カバー、
20、20A:遮蔽板、 21、22:遮蔽板ガイド片、
23:枢支ピン、 24:支持バー、
25:タッピングビス、 26:カバー取付板、
27:枢支ピン、 28:ヒンジ部材、
29:目地カバー支持アーム、 30:付勢スプリング、
31:付勢機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部を介して設けられた左右の建物の目地部側の一方の床躯体に後端部が取付具によって取付けられ、先端部が目地部側の他方の床躯体に反目地部側が傾斜面の目地プレートスライド支持凹部に支持され、目地部が狭くなると先端部が他方の床躯体上へ突出する床用目地プレートを備える床用目地装置と、この床用目地装置が設けられた部位の左右の建物の壁面間の目地部を覆う壁用目地装置とを備える目地装置において、前記壁用目地装置は前記左右の建物の壁面間の目地部を前記床用目地プレートと隙間を有するように覆うコ字状あるいはリップミゾ形鋼形状の目地カバーと、この目地カバーを前記目地部が広くなったり狭くなったりしても損傷することなく覆えるように、前記左右の建物の目地部側壁面に取付けられた目地カバー支持具と、前記目地カバーの下端部に上下方向にスライド移動可能に取付けられ、中央部より前記床用目地プレートの後端部側が該床用目地プレートと当接し、先端部側が床用目地プレートと当接しない切欠部が形成されたスライド目地カバーと、このスライド目地カバーの切欠部を覆い、前記床用目地プレートの先端部が上方へ回動する、押し圧により該床用目地プレートの回動方向にスライド移動するように、該スライド目地カバーに取付けられた遮蔽板とで構成されていることを特徴とする目地装置。
【請求項2】
遮蔽板は台形状に形成され、かつ両側部はスライド目地カバーに形成されたガイド部材とスライド移動可能に係合されていることを特徴とする請求項1記載の目地装置。
【請求項3】
遮蔽板はスライド目地カバーの下部中央部に枢支ピンで枢支されていることを特徴とする請求項1記載の目地装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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