説明

目標検出装置及び目標検出方法

【課題】目標検出性能を向上させることができる目標検出装置を提供する。
【解決手段】アンテナユニット1により予め設定された周期で目標に向けて電波を送信し、目標により反射された電波を受信する。受信信号は、励振受信ユニット2により周波数変換され信号制御回路3を介してデジタル変換される。デジタル変換された受信信号は、信号処理回路4によりFFT処理により周波数スペクトラムに変換される。信号処理回路4は、変換された周波数スペクトラムにおける最大の信号強度と予め決められた目標検出レベルとを比較することにより目標を検出する。この検出において、最大の信号強度が目標検出レベルを下回ると判定された場合は、最大の信号強度に隣接する周波数の信号強度を最大の信号強度に加算して、加算された信号強度が目標検出レベルを超えると判定された場合に、最大の信号強度を有する周波数をもとに目標を検出するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、誘導装置等に用いられ、受信信号を信号処理した結果から目標を検出する目標検出装置及び目標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導装置における目標検出処理は、目標に向けて周期的にパルス状の電波を送信し、目標から反射して戻ってきた受信信号を所定の期間毎に高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理した結果から、信号強度の最大値を検出して、その受信レベルと目標検出レベルとを比較して、目標であるかどうかを判定する(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
あらかじめ設定したデータ取得期間内、例えば20ms以内に、信号制御回路によりデジタル変換されたFFT処理するためのデジタルデータを取得する。デジタルデータの取得時間は、電波の送信周期及び取得データ数で異なる。FFT処理するための取得データ数は2の階乗であり、20ms以内に取得できるデータ数である必要がある。取得データ数を例えば2048個とすると、電波の送信周期が例えば6μsのデータをFFT処理した結果の周波数分解能は約81.4Hzとなる。FFT結果の1つのデータは、目標と誘導装置の相対速度に換算すると約1.22m/sの範囲の結果となる。従って、目標と誘導装置の相対速度が122m/sとすると、目標からの受信信号をFFT処理した結果、目標の信号は、122m/s相当の位置に算出される。
【0004】
しかしながら、目標と誘導装置の相対速度は常に連続的に変化しており、相対速度が必ずしも、FFT結果の周波数分解能の速度の倍数に一致するとは限らない。例えば、送信周期が6μsで、目標と誘導装置との間の距離が同じでも、相対速度が122m/sから122.81m/sに変化するとFFT処理した結果は、信号結果が122m/sのセルと123.22m/sのセルに分かれてしまう。このため、FFT処理結果の最大値を検出して目標と判定していると、速度が変化することにより、信号結果の大きさが約1/2まで小さくなる場合があり、信号結果が目標と認識できる大きさと一致している場合に、安定して目標を検出することができない。
【特許文献1】特開2004−219245公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、目標と誘導装置の相対速度は常に連続的に変化しているため、目標信号が隣接するセルに分かれてしまうことがある。このような場合には、目標検出レベルを超える値が検出されないため、目標を検出することができないという問題がある。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、目標検出性能を向上させることができる目標検出装置及び目標検出方法を提供することにある。連続的に目標を検出する
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明に係る目標検出装置は、予め設定された周期で目標に向けて電波を送信し、前記目標により反射された電波を受信する送受信手段と、前記受信された信号を周波数スペクトルに変換する変換手段と、前記変換された周波数スペクトラムにおける最大の信号強度と予め決められた目標検出レベルとを比較することにより目標を検出する検出手段とを具備し、前記検出手段は、前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合は、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出し、前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを下回ると判定された場合は、前記最大の信号強度に隣接する周波数の信号強度を前記最大の信号強度に加算して、この加算された信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合に、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出することを特徴とする。
【0008】
また、この発明に係る目標検出方法は、予め設定された周期で目標に向けて電波を送信し、前記目標により反射された電波を受信する送受信手段と、前記受信された信号を周波数スペクトルに変換する変換手段と、前記変換された周波数スペクトラムにおける最大の信号強度と予め決められた目標検出レベルとを比較することにより目標を検出する検出手段とを具備する目標検出装置に用いられ、前記検出手段において、前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合は、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出し、前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを下回ると判定された場合は、前記最大の信号強度に隣接する周波数の信号強度を前記最大の信号強度に加算して、この加算された信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合に、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出することを特徴とする。
【0009】
上記構成による目標検出装置及び目標検出方法では、受信信号を周波数軸上に周波数スペクトラムに変換し、この周波数スペクトラムにおける最大の信号強度と予め決められた目標検出レベルとを比較することにより目標を検出する。この検出において、最大の信号強度が目標検出レベルを下回ると判定された場合は、最大の信号強度に隣接する周波数の信号強度を最大の信号強度に加算して、加算された信号強度が目標検出レベルを超えると判定された場合に、最大の信号強度を有する周波数をもとに目標を検出するようにする。これにより、目標の相対速度が変動した場合でも連続して目標を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
したがってこの発明によれば、目標検出性能を向上させることができる目標検出装置及び目標検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、この発明に係る目標検出装置を備えた誘導装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
誘導装置は、目標検出装置10と、誘導制御回路5とを備える。目標検出装置10は、アンテナユニット1と、励振受信ユニット2と、信号制御回路3と、信号処理回路4とを備える。アンテナユニット1は、目標への電波の送受信を行うアンテナモジュールと、励振受信ユニット2から電波の送受信を行う送受信回路とを有する。励振受信ユニット2は、信号制御回路3から設定された電波の送信周期で電波を発振させる発振回路と、アンテナユニット1に電波を送信する送信回路と、アンテナユニット1が受信した電波を周波数変換し信号制御回路3へ送信する周波数変換回路とを有する。
【0012】
信号制御回路3は、誘導制御回路5から電波の送信周期を受信し励振受信ユニット2へ電波の送信周期の設定する送信周期指令回路と、励振受信ユニット2で周波数変換した電波を受信しA/D変換し信号処理回路へ送信するA/D回路及びA/D変換したデジタル信号を信号処理回路4に送信する時間を設定する送信ディレイクロック回路とを有する。
【0013】
信号処理回路4は、信号制御回路3から受信したデジタル信号にFFT処理を行うFFT処理回路と、FFT処理によって得られた周波数スペクトラムにより目標検出を行い、目標検出位置から目標位置を特定し目標位置データを誘導制御回路5へ送信する目標検出回路とを有する。
【0014】
誘導制御回路5は、信号処理回路4から受信した目標位置データを現在位置に補正する目標位置補正回路と、目標位置へ向かって飛しょうするための飛しょう経路計算と風などの外乱からの機体制御を行う空間安定化回路、目標位置から次の電波の送信周期を決め信号制御回路3へ送信する送信周期設定回路とを有する。
【0015】
次に、このように構成された誘導装置における目標検出動作について説明する。
図2は、目標検出装置10の処理手順とその処理内容を示すフローチャートである。
図2において、電波送信周期設定で、誘導制御回路5の送信周期設定回路から信号制御回路3の送信周期指令回路に電波の送信周期が送られ、その送信周期で励振受信ユニット2が電波を発振させアンテナユニット1へ電波を送信する(ステップS2a)。アンテナユニット1は、目標へ向けて電波を送信し(ステップS2b)、アンテナユニット1は目標から反射した電波を受信する(ステップS2c)。
【0016】
励振受信ユニット2は、アンテナユニット1により受信された電波を受信し、周波数変換して電波の周波数を下げる(ステップS2d)。信号制御回路3は、励振受信ユニット2から電波を受信しA/D変換してアナログ信号をデジタル信号へ変換する(ステップS2e)。信号処理回路4は、受信したデジタル信号をFFT処理する(ステップS2f)。
【0017】
上記ステップS2gのFFT処理において、通常は、受信信号の信号強度の最大値を用いて目標検出を行う。例えば、図3に示すように、目標信号が1つの周波数セルに集中し、信号レベル(V)が目標検出レベル(VACQ)を超えている場合には、目標信号として検出できる。しかしながら、図4に示すように、目標信号が複数の周波数セルに分かれてしまった場合は、信号レベル(V)が目標検出レベル(VACQ)を下回ってしまい、目標信号として検出することができない。
【0018】
このような場合に、本発明は次のように目標検出処理を行う。FFT処理結果で検出された信号強度の最大値が目標検出レベルを下回ると判定された場合は、最大値を示す周波数セルに隣接する周波数セルの値の信号強度を最大の信号強度に加えて、最大値(ピーク)とする。このとき、隣接する周波数セルのうち大きい方の信号強度の値を最大の信号強度に加算するようにする。そして、この加算された信号強度が目標検出レベルを超えた場合に、目標が検出されたとしてその位置を計算する。このようにすることで、目標の相対速度がずれて、FFT結果が2つの周波数セルに分かれて検出された場合にも、目標信号を安定して検出できる。
【0019】
例えば、図4に示すように、目標信号が2つの周波数セルに分かれた場合には、信号レベル(V´)が目標検出レベル(VACQ)を下回ってしまい、目標を検出できないおそれがある。そこで、本発明では、目標信号(V´)と目標信号(V´)に隣接する目標信号(V´)とを加算して、目標信号合成値(V´)を求め、この目標信号合成値(V´)と目標検出レベル(VACQ)とを比較するようにする。このようにすることで、目標信号合成値(V´)が目標検出レベル(VACQ)を上回り、安定して目標を検出することが可能となる。
【0020】
以上述べたように上記実施形態では、アンテナユニット1により予め設定された周期で目標に向けて電波を送信し、目標により反射された電波を受信する。受信信号は、励振受信ユニット2により周波数変換され信号制御回路3を介してデジタル変換される。デジタル変換された受信信号は、信号処理回路4によりFFT処理により周波数スペクトラムに変換される。信号処理回路4は、変換された周波数スペクトラムにおける最大の信号強度と予め決められた目標検出レベルとを比較することにより目標を検出する。この検出において、最大の信号強度が目標検出レベルを下回ると判定された場合は、最大の信号強度に隣接する周波数の信号強度を最大の信号強度に加算して、加算された信号強度が目標検出レベルを超えると判定された場合に、最大の信号強度を有する周波数をもとに目標を検出するようにしている。
【0021】
したがって上記実施形態によれば、目標の相対速度が変動した場合でも連続して目標を検出することができ、目標検出性能を向上させることが可能となる。
【0022】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る目標検出装置の一実施形態を示す機能ブロック図。
【図2】図1に示す誘導装置の目標検出処理の手順とその内容を示すフローチャート。
【図3】目標検出受信信号の最大(ピーク)の求める手法を示す図。
【図4】目標検出受信信号の最大(ピーク)の求める手法を示す図。
【符号の説明】
【0024】
10…目標検出装置、1…アンテナユニット、2…励振受信ユニット、3…信号制御回路、4…信号処理回路、5…誘導制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された周期で目標に向けて電波を送信し、前記目標により反射された電波を受信する送受信手段と、
前記受信された信号を周波数スペクトルに変換する変換手段と、
前記変換された周波数スペクトラムにおける最大の信号強度と予め決められた目標検出レベルとを比較することにより目標を検出する検出手段と
を具備し、
前記検出手段は、
前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合は、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出し、
前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを下回ると判定された場合は、前記最大の信号強度に隣接する周波数の信号強度を前記最大の信号強度に加算して、この加算された信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合に、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出することを特徴とする目標検出装置。
【請求項2】
前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを下回ると判定された場合は、前記最大の信号強度に隣接する周波数のうち大きい方の信号強度を前記最大の信号強度に加算することを特徴とする請求項1記載の目標検出装置。
【請求項3】
予め設定された周期で目標に向けて電波を送信し、前記目標により反射された電波を受信する送受信手段と、前記受信された信号を周波数スペクトルに変換する変換手段と、前記変換された周波数スペクトラムにおける最大の信号強度と予め決められた目標検出レベルとを比較することにより目標を検出する検出手段とを具備する目標検出装置に用いられ、
前記検出手段において、
前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合は、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出し、
前記最大の信号強度が前記目標検出レベルを下回ると判定された場合は、前記最大の信号強度に隣接する周波数の信号強度を前記最大の信号強度に加算して、この加算された信号強度が前記目標検出レベルを超えると判定された場合に、前記最大の信号強度を有する周波数をもとに前記目標を検出することを特徴とする目標検出方法。
【請求項4】
前記最大の信号強度が予め決められた目標検出レベルを下回ると判定された場合は、前記最大の信号強度に隣接する周波数のうち大きい方の信号強度を前記最大の信号強度に加算することを特徴とする請求項3記載の目標検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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