説明

目玉焼用補助具

【課題】卵黄球が保たれた状態で加熱することができ、しかも、卵黄の水分量を少なくして産みたてのような濃厚な味にすることができる目玉焼用補助具を提供する。
【解決手段】割卵した生卵を受ける卵黄用受け皿10を設ける。該卵黄用受け皿10に卵白流出用のスリット11を形成して卵黄のみを分離収納するように構成する。該卵黄用受け皿10の下に卵白用受け皿20を配置する。卵黄用受け皿10から分離流出した卵白を卵白用受け皿20で受けるように構成する。卵白用受け皿20内の卵白を焼く前に、卵黄用受け皿10内で分離した卵黄を焼くように構成する。卵黄用受け皿10の上方に、割卵時の高さを規制する高さ誘導ガイドを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おいしい目玉焼きを簡単に作ることができ、しかも、卵黄と卵白を、それぞれ好みの焼き加減に調整することができる目玉焼用補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目玉焼きは極めて一般的で簡単な料理であると思われていた。ところが、最近の研究で、卵黄の中には、卵黄球と称する小さな丸い粒が180万個もつまっており、この卵黄球の扱いで、おいしい目玉焼きにできることが報告されている。
【0003】
すなわち、この卵黄球は衝撃に弱いため、10cmの高さから落としただけで、ほとんどつぶれてなくなる性質がある。ところが、この卵黄球の有無が食感に深くかかわっており、卵黄球が保たれたものを加熱すると食感が良くなり、卵黄球が割れてしまったものを加熱すると食感が悪くなるというものである。
【0004】
さらに、卵は、時間の経過と共に、卵白から卵黄に水分が移動する性質がある。このため、卵黄の水分量が増加して味が薄くなることも判明している。産みたての新鮮な卵の味が濃厚なのは、卵黄の水分移動が少ないことも一因である。そこで、卵黄を産みたてのような濃厚な味にするには、卵黄の水分を少なくするのが良いとされている。
【0005】
ところが、従来の目玉焼きの製造方法には、このような卵黄球の扱いや、卵黄の水分に着目したものは提案されておらず、目玉焼きの風味や食感を良くする手段として、目玉焼きを液に浸漬する手段(特許文献1)が提案されているに過ぎなかった。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載された目玉焼きは、目玉焼きを液に浸漬した状態で容器詰めすることで、目玉焼きの風味や食感の保持効果があるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3443384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の目玉焼きの製造方法等では、目玉焼きの風味や食感が保たれるとしても、卵黄球の適正な扱いや、卵黄の水分量に着目したものではない。したがって、卵黄球を保全しながら加熱することで食感を良好にし、あるいは、卵黄の水分量を少なくして卵黄を産みたてのような濃厚な味にするなどということは全く考慮されていなかった。
【0009】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、卵黄球を保全しながら加熱することができ、しかも、卵黄の水分量を少なくして産みたてのような濃厚な味にすると共に、卵黄と卵白を、それぞれ好みの焼き加減にすることができる目玉焼用補助具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、
目玉焼き用の生卵を焼く前に卵黄と卵白とに分離収納する目玉焼用補助具であって、
割卵した生卵を受ける卵黄用受け皿10を設け、該卵黄用受け皿10に卵白流出用のスリット11を形成して卵黄のみを卵黄用受け皿10に分離載置するように構成し、
卵黄用受け皿10の下に卵白用受け皿20を配置し、卵黄用受け皿10から分離流出した卵白を卵白用受け皿20で受けるように構成し、
卵黄用受け皿10上の卵黄から順に加熱器に移して目玉焼きを焼くように構成したことにある。
【0011】
第2の手段は、前記卵黄用受け皿10の上方に、割卵時の高さを規制する割卵用ガイド30を備えたものである。
【0012】
第3の手段は、前記卵黄用受け皿10が前記卵白用受け皿20の開口上部を施蓋して前記卵黄用受け皿10が前記卵白用受け皿20内の卵白の流出を防止するように構成すると共に、前記卵黄用受け皿10を傾けたときに卵黄用受け皿10上の卵黄を焼き器上に移動せしめる注出片12を卵黄用受け皿10の端部に備えている。
【0013】
第4の手段は、前記卵白用受け皿20内に撹拌用突起21を設け、分離した前記卵白が卵白用受け皿20内を移動する際に、該撹拌用突起21に接触して卵白の固まりが細かくなるように構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によると、割卵した生卵を受ける卵黄用受け皿10を設け、該卵黄用受け皿10に卵白流出用のスリット11を形成して卵黄のみを分離収納するように構成し、卵黄用受け皿10の下に卵白用受け皿20を配置し、卵黄用受け皿10から分離流出した卵白を卵白用受け皿20で受けるように構成し、卵白用受け皿20内の卵白を焼く前に、卵黄用受け皿10内で分離した卵黄を焼くように構成したことにより、卵黄の水分を少なくして産みたてのような濃厚な味にすることができる。しかも、卵黄と卵白を、それぞれ好みの焼き加減にすることも可能である。
【0015】
また、卵黄用受け皿10上に割卵する必要があるので、使用者は卵黄用受け皿10上の近い位置で注意しながら割卵することになる。その結果、卵黄球が潰れずに、卵黄球を保った状態で割卵することができるので、加熱後の食感が良好になる。
【0016】
請求項2によると、卵黄用受け皿10の上方に、割卵時の高さを規制する割卵用ガイド30を備えたことで、使用者は卵黄球が潰れない位置を確認して割卵することができるので、卵黄球の保全効果をより確実にすることができる。
【0017】
請求項3のごとく、卵黄用受け皿10が卵白用受け皿20の開口上部を施蓋して卵黄用受け皿10が卵白用受け皿20内の卵白の流出を防止するように構成し、卵黄用受け皿10が卵白用受け皿20内の卵白の流出を防止するように構成したことで、分離した卵白用受け皿20内の卵白を気にせずに、卵黄用受け皿10の卵黄のみを先にフライパン等の加熱器に移動させ、加熱することができる。
【0018】
しかも、卵黄用受け皿10を傾けたときに卵黄用受け皿10上の卵黄を焼き器上に移動せしめる注出片を卵黄用受け皿10の端部に備えたことで、卵黄用受け皿10上の卵黄に衝撃を与えずに加熱器上に移動させることができる。
【0019】
さらに、卵黄用受け皿10は卵白用受け皿20を施蓋しているので、この卵黄用受け皿10を取り外すことで、卵白用受け皿20内の卵白を加熱器上に移動させることができる。このとき、先に加熱した卵黄の加熱具合を確認して卵白を移動させることができるので、卵黄と卵白を、それぞれ好みの焼き加減に調整することが可能である。
【0020】
請求項4のごとく、卵白用受け皿20内に撹拌用突起21を設け、卵白が卵白用受け皿20内を移動する際に、該撹拌用突起21に接触して卵白の固まりが細かくなるように構成したことにより、卵白が偏らず均等に広がった見栄えの良好な状態で焼き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の卵黄用受け皿の一実施例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例を示す側面図である。
【図4】本発明の使用状態を示す正断面図である。
【図5】本発明の使用状態を示す側断面図である。
【図6】本発明の卵黄用受け皿から卵黄を移動する状態を示す側断面図である。
【図7】本発明の卵白用受け皿から卵白を移動する状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によると、卵黄球が保たれた状態で加熱することができ、しかも、卵黄の水分を少なくして産みたてのような濃厚な味にすると共に、卵黄と卵白を、それぞれ好みの焼き加減にすることができるなどといった当初の目的を達成した。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、目玉焼き用の生卵を焼く前に卵黄と卵白とに分離収納する目玉焼用補助具であり、卵黄用受け皿10と卵白用受け皿20とを備えている(図1参照)。そして、卵白用受け皿20内の卵白を焼き器に移す前に、卵黄用受け皿10内で分離した卵黄を焼き器に移して焼くように構成したものである。
【0024】
卵黄用受け皿10は、割卵した生卵を受ける部材で、該卵黄用受け皿10に卵白流出用のスリット11を形成して卵黄のみを分離収納するように構成している(図5参照)。このとき、卵黄用受け皿10が後述する卵白用受け皿20の開口上部を施蓋するように設けてあり、卵黄用受け皿10が前記卵白用受け皿20内の卵白の流出を防止するように構成している。
【0025】
図示例の卵黄用受け皿10は、卵白用受け皿20の開口部を施蓋する蓋体13を別邸に形成し、アンカー構成体10の下部に設けている(図2参照)。この蓋体13は、卵白用受け皿20の開口周囲縁に沿って嵌合するもので、スリット11の下方に卵白移動用の開口部14を形成している。また、蓋体13の周囲に係止爪状のストッパー15を複数配設してあり、この蓋体13が卵白用受け皿20から外れないように設けている。
【0026】
さらに、図中、符号16は、後述する卵白用受け皿20内の撹拌用突起21に卵白を撹拌せしめる際に、この卵白の飛び出しを防止するための撹拌カバー16である。さらに符号17は、卵白用受け皿20から卵白を移動させる際に使用する抽出口22を塞ぐための抽出カバー17である。
【0027】
さらに、卵黄用受け皿10の端部に注出片12を設け、卵黄用受け皿10を傾けたときに卵黄用受け皿10上の卵黄を焼き器上に静かに移動できるように設けている(図6参照)。
【0028】
卵黄用受け皿10の上方に、割卵時の高さを規制する割卵用ガイド30を備えている(図3参照)。この割卵用ガイド30は、10cmの高さから落とすと潰れてしまう性質の卵黄球が潰れないようにするために配置している。そのため、この割卵用ガイド30よりも下の位置で割卵すると、卵黄が卵黄用受け皿10の僅か上から落下するように配置している(図4参照)。
【0029】
図示例の割卵用ガイド30は、側面略J字状を成し、中間部構成体20の側面から卵黄用受け皿10の真上に至るように配置している(図7参照)。このように設けることで、割卵用ガイド30を持って卵白用受け皿20内の卵白を撹拌用突起21で撹拌させ、卵白用受け皿20から卵白を抽出する際に利用することができる。さらに、この割卵用ガイド30の強度を高めることで、例えば、割卵用ガイド30の先端部を割卵時に卵殻Pの一部を潰す部材として利用することが可能になる。尤も、割卵時に卵殻Pの一部を潰す場所はどこでも良いものである。
【0030】
卵白用受け皿20は、卵黄用受け皿10の下に配置する部材で、卵黄用受け皿10から分離流出した卵白を卵白用受け皿20で受けるように構成している(図5参照)。このとき、卵白用受け皿20内に撹拌用突起21を設け、卵白が卵白用受け皿20内を移動する際に、該撹拌用突起21に接触した卵白の固まりが細かくなるように構成している。
【0031】
図示例の卵白用受け皿20は、卵黄用受け皿10よりも深い容器で、卵黄用受け皿10から分離して流れ込んだ卵白を撹拌用突起21側に誘導せしめる誘導段部23を形成している(図4参照)。
【0032】
尚、本発明の卵黄用受け皿10や卵白用受け皿20、或いは割卵用ガイド30の各構成や形状等は図示例に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は任意に行えるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明において、目玉焼用の用具として説明しているが、卵黄の食感を良好にすると共に、産みたてのような濃厚な味にすることができるので、目玉焼に限らず、他の卵料理に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
P 卵殻
Q 卵黄
R 卵白
10 卵黄用受け皿
11 スリット
12 注出片
20 卵白用受け皿
21 撹拌用突起
30 割卵用ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目玉焼き用の生卵を焼く前に卵黄と卵白とに分離収納する目玉焼用補助具であって、
割卵した生卵を受ける卵黄用受け皿を設け、該卵黄用受け皿に卵白流出用のスリットを形成して卵黄のみを卵黄用受け皿に分離載置するように構成し、
卵黄用受け皿の下に卵白用受け皿を配置し、卵黄用受け皿から分離流出した卵白を卵白用受け皿で受けるように構成し、
卵黄用受け皿上の卵黄から順に加熱器に移して目玉焼きを焼くように構成したことを特徴とする目玉焼用補助具。
【請求項2】
前記卵黄用受け皿の上方に、割卵時の高さを規制する割卵用ガイドを備えた請求項1記載の目玉焼用補助具。
【請求項3】
前記卵黄用受け皿が前記卵白用受け皿の開口上部を施蓋して前記卵黄用受け皿が前記卵白用受け皿内の卵白の流出を防止するように構成すると共に、前記卵黄用受け皿を傾けたときに卵黄用受け皿上の卵黄を焼き器上に移動せしめる注出片を卵黄用受け皿の端部に備えた請求項1記載の目玉焼用補助具。
【請求項4】
前記卵白用受け皿内に撹拌用突起を設け、分離した前記卵白が卵白用受け皿内を移動する際に、該撹拌用突起に接触して卵白の固まりが細かくなるように構成した請求項1又は3記載の目玉焼用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59292(P2013−59292A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200378(P2011−200378)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(511224830)
【Fターム(参考)】