説明

直下型地震発生検出システム

【課題】より短時間で、より高精度に、直下型地震の発生を検出し、警報を出力することができる直下型地震発生検出システムを提供する。
【解決手段】上下動と水平動とを含む振動を検出し、検出した振動を検出信号として出力する振動検出器11と、検出された振動のうちの上下動が、予め設定された判断時間(0.5秒)が経過する前に、予め設定された閾値(10(Gal))を超えたか否かを判断するCPU23(判断手段)と、上下動が閾値(10(Gal))を超えたと判断された場合に、その上下動と、これに同期した水平動との比が、予め設定された設定値(1.5)を超えたか否かを判断するCPU23(直下型地震判断手段)と、上下動と、この上下動に同期した水平動との比が、設定値(1.5)を超えたと判断された場合に、警報情報を警報装置30に出力させるCPU23(出力制御手段)と、を備えた振動計測システム1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直下型地震発生検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震発生時に地震動の強度を測定する方法としては、例えば、地震計から連続して出力される加速度データを順次記録し、所定の時間毎に所定の時間範囲の時系列データからSI値を算出し、これをデータ処理することによって地震動の強度を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、その他にも、地震波の初動3秒程度の波形から、震央距離とマグニチュードを推定する機能(所謂、早期検知アルゴリズムを用いた機能)が搭載された地震計によって、早期に地震動の強度を測定する方法等が知られている。
【0003】
ところで、地震発生時に震源から地球内部を伝播する地震動は、伝播速度が速く、初期微動に対応する縦波であるP波(Primary wave)と、伝播速度がやや遅く、主震動に対応する横波であるS波(Secondary wave)の2種類の波で構成されている。
また、地震は、海底で発生する海洋型地震と、内陸の浅いところを震源とする直下型地震の大きく2種類に分類され、陸地から離れた位置を震源とする海洋型地震では、P波が到達して初期微動が発生した後、暫くしてからS波が到達して主震動が発生するが、陸地の真下を震源とする直下型地震では、震源付近において、P波が到達して初期微動が発生してからすぐにS波が到達して主震動が発生することが知られている。従って、特に直下型地震の発生時には特に警戒を要する主震動を引き起こすS波が到達する前に、P波を検出することによって、できるだけ早期に地震警報を出力する必要がある。
【特許文献1】特開平10−123258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の地震計は、初期微動ではなく、主に、主震動を検出してなる仕組みであるため、直下型地震の場合、主震動を引き起こすS波が到達した後に、地震警報が出力される場合が多かった。
また前述の早期検知アルゴリズムの機能を備えた地震計によっても、振動検出開始時から約3秒間の時間を必要としており、より短時間での地震警報の出力が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明の課題は、より短時間で、より高精度に、直下型地震の発生を検出し、警報を出力することができる直下型地震発生検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、直下型地震発生検出システムにおいて、上下動と水平動とを含む振動を検出し、検出した振動を検出信号として出力する振動検出器と、前記振動検出器により検出された前記振動のうちの上下動が、予め設定された判断時間が経過する前に、予め設定された閾値を超えたか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって、前記上下動が前記閾値を超えたと判断された場合に、その上下動と、当該上下動に同期した水平動との比が、予め設定された設定値を超えたか否かを判断する直下型地震判断手段と、前記直下型地震判断手段によって、前記上下動と、当該上下動に同期した水平動との比が、前記設定値を超えたと判断された場合に、警報情報を警報出力手段に出力させる出力制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、直下型地震発生検出システムにおいて、上下動を含む振動を検出し、検出した振動を検出信号として出力する振動検出器と、前記振動検出器により検出された前記振動のうちの上下動が、予め設定された判断時間が経過する前に、予め設定された閾値を超えたか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって、前記上下動が前記閾値を超えたと判断された場合に、その上下動が、予め設定された設定時間継続して、前記閾値を超えたか否かを判断する直下型地震判断手段と、前記直下型地震判断手段によって、前記上下動が、前記設定時間継続して前記閾値を超えたと判断された場合に、警報情報を警報出力手段に出力させる出力制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によると、振動に含まれる上下動が、所定時間内に所定の閾値に達し、且つ、当該振動の上下動と水平動の比が所定の設定値を超えることにより、当該振動が直下型地震特有の振動であると判断されて、警報が出力されることとなる。
従って、直下型地震が発生したか否かの判断に要する時間として、上下動が所定の閾値に達するまでの時間があれば足りることとなり、短時間で地震の発生を検出することができる。
また、所定の設定値を基準として、上下動と水平動の比から直下型地震の発生に係る判断を行うことができるため、振動検出開始時に大きく上下方向に振動してなる直下型地震特有の振動を抽出し、例えばノイズパルスのような、上下動のみならず、水平方向の振動成分をも備える振動を警報出力対象から排除することができることとなり、直下型地震の発生を高精度で検出し、警報を出力することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によると、振動に含まれる上下動が、所定時間内に所定の閾値に達し、且つ、当該振動の上下動が所定の時間継続して所定の閾値を超えることにより、当該振動が直下型地震特有の振動であると判断されて、警報が出力されることとなる。
従って、直下型地震が発生したか否かの判断に要する時間として、上下動が所定の閾値に達した後所定の時間があれば足り、より短時間で地震の発生を検出することができ、警報を出力することができる。
また、上下動が、所定の時間継続して所定の閾値を超えているか否かの判断を行うことによって、振動検出開始後一定時間内においては下降することなく上昇し続ける地震動特有の振動のみを抽出し、例えばノイズパルスのような、発生後直ぐに消滅し、或いは減衰して消滅する振動を警報出力対象から排除することができることとなり、直下型地震の発生を高精度で検出し、警報を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、図面を参照して本発明の実施形態1について詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0011】
図1は直下型地震発生検出システムとしての振動計測システム1の内部構成を示すブロック図である。振動計測システム1は、振動を検出する振動検出器11と、この振動検出器11と通信回線N1を介して接続されたデータ処理装置20と、このデータ処理装置20と通信回線N2を介して接続された警報出力手段としての警報装置30と、等を備えている。
【0012】
振動検出器11は、別個の地点にそれぞれ設置され、上下動と水平動とを含む振動を検出し、検出した振動(例えば、加速度)に比例した電気信号(アナログ信号)を、検出信号(加速度信号)としてデータ処理装置20に出力する加速度計である。振動検出器11は、東西(X)方向、南北(Y)方向、上下(Z)方向の、各3方向の振動の大きさを示す電気信号(アナログ信号)をそれぞれ同期させて検出する。
【0013】
データ処理装置20は、振動検出器11の動作制御を行うと共に、振動検出器11によって出力されたアナログの加速度信号をデジタル信号としての地震動データ(加速度データ)に変換してデータ処理を行い、警報装置30に、警報情報を出力させるための指示を送信する装置である。
以下、振動検出器11によって検出されたアナログ信号を「加速度信号」と称し、当該加速度信号が、データ処理装置20によってデジタル信号に変換された後を「加速度データ」と称する。
【0014】
データ処理装置20は、アンプフィルタモジュール21、・・・と、A/D変換器22、・・・、と、CPU(Central Processing Unit)23と、RAM(Random Access Memory)24と、記憶部25と、ROM(Read Only Memory)26と、タイマ部27と、表示部28と、I/F部29と、等を備えている。
【0015】
アンプフィルタモジュール21、・・・は、各振動検出器11から常時送信される加速度信号を増幅し、A/D変換器22へ出力するアンプである。ここで、アンプフィルタモジュール21、・・・は、所定の周波数帯域の信号、例えば、地震波を濾波して、A/D変換器22、・・・へ出力する。この地震波の検出は、地震波の特徴である、周波数が低く、かつ振幅の大きい振動波のみを濾波することによって実現する。また、振動検出器11からは、X方向、Y方向、Z方向の振動に係る加速度信号が送信されるが、それぞれの信号を増幅して出力する。
【0016】
A/D変換器22、・・・は、アンプフィルタモジュール21、・・・によって増幅された、加速度に応じた加速度信号を、デジタル信号である加速度データに変換し、CPU23に出力する。
【0017】
CPU23は、ROM26に格納されているIPL(Initial Program Loader)プログラム(図示省略)や各種プログラム等を実行して、処理データをRAM24内のワークメモリエリアに格納するとともに、処理データを表示部28に表示させる。
ここで、処理データとしては、例えば、加速度データから算出した震度データや、SI値データ、最大加速度データ、及びこれらのデータに基づいて作成される警報情報データ等がある。
【0018】
また、CPU23は、処理データに基づいて、警報情報を出力させるための指示を、通信回線N2を介して警報装置30に送信する。
【0019】
RAM24は、アンプフィルタモジュール21等を介して振動検出器11から出力される加速度データを格納するリングバッファや、データ処理等の各種処理に係る各種データを格納するメモリエリアを形成している。
【0020】
記憶部25は、処理データを記憶するための記憶媒体(図示省略)を有しており、記憶手段として機能する。具体的には、例えば、記憶媒体には、閾値データ251、判断時間データ252、設定値データ253、などが記憶される。
この記憶媒体は磁気的、光学的な記憶媒体、若しくは半導体メモリで構成されている。また、この記憶媒体は記憶部25に固定的に設けられたもの、若しくは着脱自在に装着されるものであり、ハードディスクドライブやメモリカード等の何れの媒体であってもよい。
【0021】
閾値データ251は、例えば、図2に示す閾値251aであって、CPU23が、直下型地震が発生したか否かを判断するための加速度の値(以下、「加速度値」という。)を意味する。加速度値は振動の大きさ(即ち、揺れの速さ)を表す数値であって、本実施形態においては、閾値251aは、10(Gal)である。
【0022】
判断時間データ252は、例えば、図2に示す判断時間252aであって、CPU23が、直下型地震が発生したか否かを判断するための閾値251aに、振動の加速度値が達するまでに許容される時間を表す数値である。本実施形態においては、判断時間252aは、0.5(秒)である。
【0023】
ここで、地震動について説明する。
地震動は、上下震動を引き起こす縦波(以下、「P波」という)と、水平震動を引き起こす横波(以下、「S波」という。)によって構成されており、地震が発生すると、そのエネルギーは地震動(地震波)となって地中の震源から地表に伝播する。このとき、まず伝播速度の速いP波が地表に到達して微細な揺れ(初期微動)をもたらし、次いでP波よりもやや伝播速度の遅いS波が地表に到達して大きな揺れ(主震動)をもたらす。
このとき、地表の振動検出地点が震源に近いほど、地表で検出されるP波の加速度の上昇率が急激になる。
従って、判断時間252aが経過する前に、加速度値が閾値251aに達する振動は、P波の加速度の上昇率が急激であって直下型地震である可能性が高いと判断することができる。
本実施形態においては、判断時間である0.5秒が経過する前に、加速度が、閾値である10(Gal)以上上昇する振動を、直下型地震の発生による振動である可能性が高いと判断する。
【0024】
尚、閾値251aとしては、10(Gal)に限られるものではなく、好適な数値を用いることができる。
さらに、地表で検出されるP波の加速度の上昇率が急激である程、直下型地震である可能性が高くなる。従って、より震源が近い(より直下型である可能性の高い)振動のみを検出するためには、判断時間252aを短めに設定し、逆に、遠方を震源とする振動も検出するためには、判断時間252aを長めに設定してもよい。
尚、判断時間252aとしては、0.5秒に限られるものではなく、適宜好適な時間とすることができるが、検出される振動の大きさは、閾値251aと判断時間252aとの相対関係で決定されるため、これを加味しつつ、適切な数値とすることが好ましい。
【0025】
設定値データ253は、例えば、振動が備える上下方向(例えば、Z方向)の加速度値と、これに同期した水平方向(例えば、X、Y方向)の加速度値の比(以下、「加速度比」という。)を表す数値である。本実施形態においては、加速度比の設定として、例えば、上下動が水平動(X又はY方向)の約1.5(倍)とした。尚、加速度比はこれに限られず、適宜設定することができる。
【0026】
ここで、加速度比について説明する。
地震動以外の原因で発生し、振動検出器11によって検出される振動としては、例えば、外部からの電波によって発生した電磁的ノイズパルスや、振動検出器11周辺での落下物の存在による物理的ノイズパルス、その他の電気的ノイズパルスなど、上下動と水平動とによって構成される振動が挙げられる。これらのノイズパルスは発生後直ぐに消滅するか、若しくは発生後一定時間をかけて減衰して消滅する。
一方、地震動は、伝播速度の速い上下震動(P波)が先に地表に到達し、振動検出器11によって検出されるため、初期に検出される振動は、上下動によって構成される。
従って、地震動なのか、若しくは地震動以外の振動なのかを加速度比(具体的には、例えば、水平方向の加速度に対する上下方向の加速度の比)を用いて判断することができる。
本実施形態においては、加速度比が設定値である1.5を超える振動を、直下型地震を原因とする振動だと判断する。
【0027】
ROM26は、CPU23によって起動時に実行されるIPLプログラム(図示省略)や、各種データ処理プログラムの他、IPLプログラムやデータ処理プログラムに係る各種初期設定値等を格納する。
具体的には、ROM26は、判断プログラム261、直下型地震判断プログラム262、出力制御プログラム263等を格納する。
【0028】
判断プログラム261は、振動検出器11によって検出された振動のうち、上下動、即ち、上下方向の加速度値が、予め設定された判断時間252aが経過する前に、予め設定された閾値251aを超えたか否かを判断するためのプログラムであって、CPU23は、当該判断プログラム261を実行することによって判断手段として機能する。
具体的には、CPU23は、アンプフィルタモジュール21等を介して振動検出器11から出力され、RAM24に格納される加速度データから上下方向の加速度値を取得し、記憶部25に記憶されてなる閾値データ251より閾値251aを取得して、加速度値と閾値251aとを比較して、加速度値が閾値251aよりも大きいか否かを判断する。
さらに、CPU23は、記憶部25に記憶された判断時間データ252から判断時間252aを取得し、RAM24に格納されるカウントデータ(後述する)から経過時間を取得し、判断時間252aと経過時間を比較して、経過時間が判断時間252aを超えた場合に、判断時間252aが経過したと判断する。
【0029】
直下型地震判断プログラム262は、CPU23によって、上下動が閾値251aを超えたと判断された場合に、振動の上下動、即ち、上下方向の加速度値と、この上下動に同期した水平動、即ち、水平方向の加速度値との比(加速度比)が、予め設定された設定値(1.5)を超えたか否かを判断するためのプログラムであって、CPU23は、当該直下型地震判断プログラム262を実行することによって直下型地震判断手段として機能する。
具体的には、CPU23は、アンプフィルタモジュール21等を介して振動検出器11から出力され、RAM24に格納される加速度データから、それぞれ水平方向の加速度値及び上下方向の加速度値を取得し、水平方向の加速度値に対する上下方向の加速度値の比、即ち、加速度比を取得する。
一方、記憶部25に記憶されてなる設定値データ253より設定値を取得して、加速度比と設定値とを比較し、加速度比が設定値よりも大きいか否かを判断する。
【0030】
出力制御プログラム263は、CPU23によって、上下動、即ち、上下方向の加速度値が閾値データ251より取得される閾値251aを超えていると判断され、且つ、上下動と水平動の比、即ち、加速度比が設定値データ253から取得される設定値を超えていると判断された場合に、直下型地震が発生したと判断して、警報情報を警報装置30に出力させるためのプログラムであって、CPU23は、当該出力制御プログラム263を実行することによって、出力制御手段として機能する。
具体的には、CPU23は、警報装置30の音声出力部32(後述する)から警報情報として、所定の音声を出力させるための音声信号を送信し、警報装置30の表示部33(後述する)に警報情報として、所定の警報表示を表示するための表示信号を送信する。
【0031】
また、CPU23は、振動検出器11より入力された加速度データに基づいて、ROM26に格納される所定のプログラムを実行し、当該加速度データから取得される加速度値が閾値255a(例えば、1.0(Gal))を超えるか否かを判断し、加速度値が1.0(Gal)を超える場合には、地震動の検出を開始すると判断し、タイマ部27にカウント動作を開始させるための所定の指示を出力する。
【0032】
タイマ部27は、CPU23から所定の指示が入力されることにより、カウント動作を開始し、振動検出開始時から経過した時間(以下、「経過時間」という。)をカウントする。具体的には、タイマ部27はCPU23からの指示に従ってカウント動作を開始し、一定のタイミングで経過時間を取得する。さらに、取得した経過時間をRAM24に出力し、RAM24の所定の領域、例えば、ワークメモリエリアにカウントデータとして格納する。
【0033】
表示部28は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等により構成され、CPU23によりデータ処理された処理データを表示する。
【0034】
I/F部29は、振動検出器11や警報装置30との間で信号やデータを入出力/送受信するためのインターフェイスであり、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポートやRS−485C端子をはじめとするシリアル入出力端子、パラレル入出力端子、SCSIインターフェイス、IrDA(Infrared Data Association)規格に準じた赤外線通信装置等が備えられ、有線または無線通信手段により振動検出器11や警報装置30と接続することが可能である。通信回線N1、N2は、有線であっても無線であってもよく、例えば、電話回線、通信ケーブル等により構成されている。
【0035】
警報装置30は、データ処理装置20より送信された指示に基づいて警報情報を出力する。警報装置30は、例えば、制御部31や音声出力部32、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示部33等を備えて概略構成される。
警報装置30の制御部31は、データ処理装置20から送信された音声信号を音声に変換し、音声出力部32が備えるスピーカ(図示省略)等から出力する。また、制御部31は、データ処理装置20から送信された表示信号の指示に従って所定の表示を表示部33に表示するなどして、警報装置30の各種動作設定を行う。
【0036】
次に、図3のフローチャートを用いて、振動計測システム1による警報出力処理について説明する。尚、当該警報出力処理が実行される際には、予め、図示しない入力部より、閾値データ251、判断時間データ252、及び設定値データ253がデータ処理装置20に入力され、記憶部25に記憶されている。
【0037】
警報出力処理は、まず、振動検出器11が振動を検出することにより開始される(ステップS1)。
【0038】
振動検出器11が振動(加速度)を検出すると、振動検出器11は、検出した加速度を加速度信号としてデータ処理装置20に出力する(ステップS2)。
【0039】
データ処理装置20は、入力された加速度信号を、アンプフィルタモジュール21、A/D変換器22を介してデジタルの加速度データに変換し(ステップS3)、CPU23に出力する。CPU23は一時的に加速度データをRAM24に格納する。
【0040】
ステップS4では、CPU23はROM26から所定のプログラムを読み出し、RAM24の所定の作業領域に展開して実行することにより、記憶部25に記憶される所定のデータから閾値(1.0(Gal))を取得し、RAM24から加速度データを読み出して上下方向の加速度値を取得し、当該加速度値が閾値である1.0(Gal)を超えているか否かを判断する(ステップS4)。
【0041】
CPU23が、加速度値が閾値である1.0(Gal)を超えていると判断すると(ステップS4;Yes)、CPU23は、ROM26から所定のプログラムを読み出し、RAM24の所定の作業領域に展開して実行することにより、タイマ部27にカウント動作の開始を指示した上で、さらに処理を実行するためにステップS5に移行する。
【0042】
一方、ステップS4において、CPU23が、加速度値が閾値である1.0(Gal)を超えていないと判断すると(ステップS4;No)、CPU23は警報を出力せずに本処理を終了する。
【0043】
ステップS5では、CPU23は、ROM26から判断プログラム261を読み出してRAM24の所定の作業領域に展開し、これに従って、記憶部25に記憶される閾値データ251を読み出して閾値(10(Gal))を取得し、RAM24から加速度データを読み出して上下方向の加速度値を取得し、当該加速度値が閾値である10(Gal)を超えているか否かを判断する(ステップS5)。
【0044】
CPU23が、加速度値が閾値である10(Gal)を超えていると判断すると(ステップS5;Yes)、CPU23はさらに処理を実行するためステップS7に移行する。
【0045】
一方、ステップS5において、CPU23が、加速度値が閾値である10(Gal)を超えていないと判断すると(ステップS5;No)、CPU23はステップS6に移行する。
【0046】
ステップS6では、CPU23は、ROM26から判断プログラム261を読み出してRAM24の所定の作業領域に展開し、これに従って、記憶部25に記憶される判断時間データ252を読み出して判断時間(0.5秒)を取得し、RAM24からカウントデータを読み出して経過時間を取得し、経過時間が判断時間である0.5秒を経過しているか否かを判断する(ステップS6)。
【0047】
CPU23が、経過時間が判断時間である0.5秒を経過していないと判断すると(ステップS6;No)、CPU23は、加速度値が閾値である10(Gal)を超えているか否かを判断するために再びステップS5に戻る。
【0048】
一方、CPU23は、経過時間が判断時間である0.5秒を経過していると判断すると(ステップS6;Yes)、警報を出力せずに本処理を終了する。
【0049】
ステップS7では、CPU23は、ROM26から直下型地震判断プログラム262を読み出してRAM24の所定の作業領域に展開し、これに従って、記憶部25に記憶される設定値データ253を読み出して設定値(1.5)を取得し、RAM24から上下方向の加速度値とこれに同期した水平方向の加速度値を読み出して加速度比を算出し、算出された加速度比が設定値(1.5)を超えているか否かを判断する(ステップS7)。
【0050】
CPU23が、算出された加速度比が設定値(1.5)を超えていると判断すると(ステップS7;Yes)、CPU23は次処理を行うためにステップS8に移行する。
【0051】
一方、ステップS7において、CPU23が、算出された加速度比が設定値(1.5)を超えていないと判断すると(ステップS7;No)CPU23は検出された地震動が、例えば、ノイズパルスなどの、警報出力を必要としないものであると判断して、警報を出力することなく本処理を終了する。
【0052】
ステップS8では、CPU23は、ROM26から出力制御プログラム263を読み出してRAM24の所定の作業領域に展開し、これに従って、警報情報を出力させるための指示を警報装置30に送信する(ステップS8)。
【0053】
警報装置30の制御部31は、CPU23から送信された指示に従って、音声出力部32及び表示部33を介して所定の警報を出力し(ステップS9)、本処理を終了する。
【0054】
以上に説明した振動計測システム1によっては、振動に含まれる上下方向の加速度値が、判断時間である0.5秒以内に閾値である10(Gal)に達し、且つ、加速度比が設定値(1.5)を超えることにより、当該振動が直下型地震特有の振動であると判断されて、警報が出力されることとなる。これにより、閾値である10(Gal)以上の振動が発生したと判断するために要する時間として、上下方向の加速度値が閾値である10(Gal)に達するまでの時間(最長でも0.5秒)があれば足りることとなり、短時間で地震の発生を検出することができる。
また、設定値である(1.5)を基準として、加速度比から直下型地震の発生に係る判断を行うことができるため、振動検出開始時に大きく上下方向に振動してなる直下型地震特有の振動を抽出し、例えばノイズパルスのような、上下方向のみならず、水平方向の振動成分をも備える振動を警報出力対象から排除することができることとなり、直下型地震の発生を高精度で検出し、警報を出力することができる。
【0055】
[実施形態2]
次いで、本発明を実施するための実施形態2の振動計測システム100について説明する。図4は、直下型地震発生検出システムとしての振動計測システム100の内部構成を示すブロック図である。振動計測システム100を説明するにあたって、実施形態1の振動計測システム1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
振動計測システム100は、振動を検出する振動検出器11と、この振動検出器11と通信回線N1を介して接続されたデータ処理装置200と、このデータ処理装置200と通信回線N2を介して接続され、警報出力手段として機能する警報装置30と、等を備えている。
【0056】
データ処理装置200は、振動検出器11の動作制御を行うと共に、振動検出器11によって出力されたアナログの加速度信号をデジタルの地震動データ(加速度データ)に変換してデータ処理を行い、警報装置30に、警報情報を出力させるための指示を送信する装置である。
【0057】
データ処理装置200は、アンプフィルタモジュール21、・・・と、A/D変換器22、・・・、と、CPU(Central Processing Unit)23と、RAM(Random Access Memory)24と、記憶部225と、ROM(Read Only Memory)226と、タイマ部27と、表示部28と、I/F部29と、等を備えている。
【0058】
記憶部225は、処理データを記憶するための記憶媒体(図示省略)を有しており、記憶手段として機能する。具体的には、例えば、記憶媒体には、閾値データ251、判断時間データ252、設定時間データ254、などが記憶される。
この記憶媒体は磁気的、光学的な記憶媒体、若しくは半導体メモリで構成されている。また、この記憶媒体は記憶部225に固定的に設けられたもの、若しくは着脱自在に装着されるものであり、ハードディスクドライブやメモリカード等の何れの媒体であってもよい。
【0059】
設定時間データ254は、例えば、図2に示す設定時間254aであって、CPU23によって直下型地震が発生したか否かを判断するために必要な時間を表す数値である。具体的には、設定時間は、加速度値が閾値251aに達した時点から測定される所定の時間であって、本実施形態においては、加速度値が10(Gal)に達した時点から0.5(秒)である。
尚、設定時間254aとしては0.5秒に限定されることはなく、適宜好適な時間とすることができる。
【0060】
ROM226は、CPU23によって起動時に実行されるIPLプログラム(図示省略)や、各種データ処理プログラムの他、IPLプログラムやデータ処理プログラムに係る各種初期設定値等を格納する。
具体的には、ROM226は、判断プログラム261、直下型地震判断プログラム264、出力制御プログラム265等を格納する。
【0061】
直下型地震判断プログラム264は、CPU23によって、上下動、即ち、上下方向の加速度値が閾値251aを超えたと判断された場合に、その上下動が、予め設定された設定時間254a継続して、予め設定された閾値251aを超えているか否かの判断を行うためのプログラムであって、CPU23は当該直下型地震判断プログラム264を実行することによって、直下型地震判断手段として機能する。
具体的には、CPU23は、アンプフィルタモジュール21等を介して振動検出器11から出力され、RAM24に格納される加速度データから上下方向の加速度値を取得し、記憶部25に記憶されてなる閾値データ251より閾値251aを取得して、加速度値と閾値251aとを比較し、加速度値が閾値251aよりも大きい場合に、加速度値が閾値251aを超えていると判断する。
さらに、CPU23は、記憶部225に記憶された設定時間データ254から設定時間254aを取得し、RAM24に格納される第2のカウントデータ(後述する)から第2の経過時間(後述する)を取得し、設定時間254aと第2の経過時間を比較して、第2の経過時間が設定時間254aを超えた場合に、設定時間254aが経過したと判断する。
【0062】
出力制御プログラム265は、CPU23によって、上下動、即ち、上下方向の加速度値が閾値データ251より取得される閾値251aを超えていると判断され、且つ、上下方向の加速度値が、設定時間254a継続して、閾値251aを超えたと判断された場合に、直下型地震が発生したと判断して、警報情報を警報装置30に出力させるためのプログラムであって、CPU23は、当該出力制御プログラム265を実行することによって、出力制御手段として機能する。
具体的には、CPU23は、警報装置30の音声出力部32から警報情報としての所定の音声を出力させるための音声信号を送信し、警報装置30の表示部33に、警報情報としての所定の警報表示を表示するための表示信号を送信する。
【0063】
また、CPU23は、加速度値が閾値251aに達したと判断すると、ROM26に格納される所定のプログラム(図示省略)に基づいて、タイマ部27のカウンタをクリアして、再度新たにカウント動作を開始させるための所定の指示をタイム部27に出力する。
当該指示を入力したCPU23は、カウントをクリアした上で、新たにカウンタ動作を開始して、加速度値が閾値251aに達してから経過した時間である、第2の経過時間を一定のタイミングで取得する。さらに、取得した第2の経過時間をRAM24に出力し、RAM24の所定の領域に第2のカウントデータとして格納する。
【0064】
次に、図5のフローチャートを用いて、振動計測システム100による警報出力処理について説明する。尚、当該警報出力処理が実行される際には、予め、図示しない入力部より、閾値データ251、判断時間データ252及び設定時間データ254が、データ処理装置200に入力され、記憶部225に記憶されている。
また、ステップS1〜ステップS6までの処理は実施形態1と同様のため説明を省略する。
【0065】
ステップS107では、CPU23は、ROM226から所定のプログラム(図示省略)を読み出しRAM24の所定の作業領域に展開して実行することにより、タイマ部27のカウンタをクリアして、再度新たにカウント動作を開始させるための所定の指示を入力して、ステップS108に移行する。
【0066】
ステップS108では、CPU23は、ROM226から直下型地震判断プログラム264を読み出してRAM24の所定の作業領域に展開し、これに従って、記憶部225に記憶される閾値データ251を読み出して閾値である10(Gal)を取得し、RAM24から加速度データを読み出して上下方向の加速度値を取得し、上下方向の加速度値が閾値である10(Gal)を超えているか否かを判断する(ステップS108)。
【0067】
CPU23が、上下方向の加速度値が閾値である10(Gal)を超えていると判断すると(ステップS108;Yes)、CPU23は次処理を行うためにステップS109に移行する。
【0068】
一方、ステップS108において、CPU23が、上下方向の加速度値が閾値である10(Gal)を超えていないと判断すると(ステップS108;No)CPU23は検出された振動が、例えば、ノイズパルスなどの、警報出力を必要としないものであると判断して、警報を出力することなく本処理を終了する。
【0069】
さらに、ステップS109では、CPU23は、ROM26から読み出した直下型地震判断プログラム264に従って、記憶部225に記憶される設定時間データ254を読み出して設定時間(0.5秒)を取得し、RAM24から第2のカウントデータを読み出して第2の経過時間を取得し、第2の経過時間が設定時間である0.5秒を経過しているか否かを判断する(ステップS109)。
【0070】
CPU23は、第2の経過時間が設定時間である0.5秒を経過していないと判断すると(ステップS109;No)、CPU23は、再びステップS108に戻る。
【0071】
CPU23は、第2の経過時間が設定時間である0.5秒を経過していると判断すると(ステップS109;Yes)、ROM26から出力制御プログラム265を読み出してRAM24の所定の作業領域に展開し、これに従って、警報情報を出力させるための指示を警報装置30に送信する(ステップS110)。
【0072】
警報装置30の制御部31は、CPU23から送信された指示に従って、音声出力部32及び表示部33を介して所定の警報を出力し(ステップS111)、本処理を終了する。
【0073】
以上に説明した振動計測システム100によっては、振動に含まれる上下方向の加速度値が、設定時間である0.5秒以内に閾値である10(Gal)に達し、且つ、当該振動の上下方向の加速度値が、閾値である10(Gal)に達してから設定時間である0.5秒の間継続して閾値である10(Gal)を超えることにより、当該振動が直下型地震特有の振動であると判断されて、警報が出力されることとなる。従って、直下型地震が発生したか否かの判断に要する時間として、上下方向の加速度値が、所定の閾値である10(Gal)に達した後、設定時間である0.5秒があれば足り、より短時間で地震の発生を検出することができる。
また、上下方向の加速度値が、閾値である10(Gal)に達してから、設定時間である0.5秒の間継続して閾値である10(Gal)を超えているか否かの判断を行うことによって、振動検出開始後一定時間内においては下降することなく上昇し続ける地震動特有の振動のみを抽出し、例えばノイズパルスのような、発生後直ぐに消滅し、或いは減衰して消滅する振動を警報出力対象から排除することができることとなり、直下型地震の発生を高精度で検出し、警報を出力することができる。
【0074】
尚、振動計測システム1は、振動検出器11、データ処理装置20及び警報装置30が一箇所に設けられていても良く、また別々の場所に設置されていても構わない。振動計測システム100も同様である。
【0075】
また、従来の地震計に、当該振動計測システム1又は振動計測システム100の機能を組み込むこととしても構わない。この場合、地震動発生に係る判断を、当該振動計測システム1又は振動計測システム100の機能と、従来の通常検知機能の2段階で行うことができるため、発生した地震が直下型地震であるか否かに係らず警報が出力されることとなって、警報出力の精度を向上させることができる。
さらに、従来の地震計に、当該振動計測システム1又は振動計測システム100の機能と、早期検知アルゴリズムの機能を付加することとしてもよい。この場合、地震動発生に係る判断を、まず、当該振動計測システム1又は振動計測システム100の機能で行い、次いで早期検知アルゴリズムの機能で行い、さらに従来の通常検知機能によって行うこととなる。従って、地震動発生について3段階で判断することとなり、判断の精度をさらに向上させることができる。また、警報を段階的に出力することも可能となり、非常に有効な地震計とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態1に置ける振動計測システム1の内部構成を示すブロック図である。
【図2】振動計測システム1及び図4に示す振動計測システム100による各種判断基準を説明するための説明図である。
【図3】振動計測システム1による警報出力処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態2における振動計測システム100の内部構成を示すブロック図である。
【図5】振動計測システム100による警報出力処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1、100 振動計測システム(地震動発生検出システム)
11 振動検出器
20、200 データ処理装置
23 CPU
24 RAM
25、225 記憶部
251 閾値データ
251a 閾値
252 判断時間データ
252a 判断時間
253 設定値データ
254 設定時間データ
254a 設定時間
255a 閾値
26、226 ROM(判断手段、直下型地震判断手段、出力制御手段)
261 判断プログラム
262、264 直下型地震判断プログラム
263、265 出力制御プログラム
27 タイマ部
30 警報装置(警報出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動と水平動とを含む振動を検出し、検出した振動を検出信号として出力する振動検出器と、
前記振動検出器により検出された前記振動のうちの上下動が、予め設定された判断時間が経過する前に、予め設定された閾値を超えたか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記上下動が前記閾値を超えたと判断された場合に、その上下動と、当該上下動に同期した水平動との比が、予め設定された設定値を超えたか否かを判断する直下型地震判断手段と、
前記直下型地震判断手段によって、前記上下動と、当該上下動に同期した水平動との比が、前記設定値を超えたと判断された場合に、警報情報を警報出力手段に出力させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする直下型地震発生検出システム。
【請求項2】
上下動を含む振動を検出し、検出した振動を検出信号として出力する振動検出器と、
前記振動検出器により検出された前記振動のうちの上下動が、予め設定された判断時間が経過する前に、予め設定された閾値を超えたか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記上下動が前記閾値を超えたと判断された場合に、その上下動が、予め設定された設定時間継続して、前記閾値を超えたか否かを判断する直下型地震判断手段と、
前記直下型地震判断手段によって、前記上下動が、前記設定時間継続して前記閾値を超えたと判断された場合に、警報情報を警報出力手段に出力させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする直下型地震発生検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate