説明

直列共振型コンバータおよび直列共振型コンバータシステム

【課題】直列共振型コンバータから出力される高電圧を高精度に検出する。
【解決手段】出力トランスT1は、一次側に入力される入力電圧を昇圧して、二次側から出力電圧を出力する。共振コイルL1は、出力トランスT1の一次側に接続される。電圧検出トランスT2は、出力トランスT1の一次側に入力される入力電圧を降圧して、二次側から検出用の電圧を出力する。補正トランスT3は、一次側が共振コイルL1の両端に接続され、二次側が電圧検出トランスT2の二次側に接続されるトランスであって、検出用の電圧に含まれる、出力トランスT1の一次側に発生するリーケージインダクタンスによる歪成分を打ち消すためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底光伝送システムの給電装置などに用いられる直列共振型コンバータおよび複数の直列共振型コンバータを接続した直列共振型コンバータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
海底光伝送システムの給電装置は、高電圧定電流で陸上端局より直列接続された海底光中継器に電力を供給する。海底光伝送システムの給電装置は、伝送ルート、給電ルートの切り替えや海底光ケーブルの障害探索などにも使用されるため、低電流領域でも安定した電力の供給が求められる。そのためには、高品位な定電流コンバータが必要である。
【0003】
海底光伝送システムの給電装置に適した高品位な定電流コンバータの条件として、高効率であること、雑音および騒音が少ないことが挙げられる。とくに、給電装置が自然空冷の場合、高効率であることは重要である。このような条件を満足するコンバータに共振型コンバータがある。共振型コンバータには直列共振型コンバータ(たとえば、特許文献1参照)と並列共振型コンバータがあるが、前者のほうが後者より出力電圧の変化に対して出力電流の変化が小さいため、給電装置用のコンバータに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−88952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海底光伝送システムの給電装置のように高電圧を出力する電源装置では、出力電圧を監視する際、人体に危険が及ぶ可能性がある。また、過電圧を検出するための検出回路に、高耐圧な部品を使用する必要があるため高コストになるという問題もある。
【0006】
そこで、出力トランスの一次側から電圧を取得し、その電圧を降圧トランス(後述する電圧検出トランスに対応)に通した後、電圧検出を行う方法が考えられる。ただし、この方法では出力トランスのリーケージインダクタンスにより電圧の検出精度が低下してしまう。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、直列共振型コンバータから出力される電圧を高精度に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の直列共振型コンバータは、一次側に入力される入力電圧を昇圧して、二次側から出力電圧を出力する出力トランスと、出力トランスの一次側に接続される共振コイルと、出力トランスの一次側に入力される入力電圧を降圧して、二次側から検出用の電圧を出力する電圧検出トランスと、一次側が共振コイルの両端に接続され、二次側が電圧検出トランスの二次側に接続されるトランスであって、検出用の電圧に含まれる、出力トランスの一次側に発生するリーケージインダクタンスによる歪成分を打ち消すための補正トランスと、を備える。さらに、出力トランスの二次巻線に接続された第1整流回路と、電圧検出トランスの二次巻線に接続された第2整流回路とを備えてもよい。
【0009】
この態様によると、出力トランスの一次側に発生するリーケージインダクタンスを打ち消すことができ、出力電圧の検出精度を高めることができる。
【0010】
補正トランスは、一次巻線と二次巻線が逆極性に設計され、一次巻線と二次巻線の巻数比が歪成分の振幅と、当該補正トランスの二次巻線に発生する当該歪成分に対する反位相成分の振幅とが対応するよう設計されてもよい。また、補正トランスの一次巻線に共振コイルが使用されてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、直列共振型コンバータシステムである。この直列共振型コンバータシステムは、上述した直列共振型コンバータが複数設けられる直列共振型コンバータシステムであって、複数の直列共振型コンバータの複数の第1整流回路の出力が直列に接続されて、それぞれの直列共振型コンバータの出力電圧が合計され、複数の直列共振型コンバータの複数の第2整流回路の出力が直列に接続されて、それぞれの直列共振型コンバータの検出用の電圧が合計される。さらに、合計された検出用の電圧と、それぞれの直列共振型コンバータの検出用の電圧を検出する電圧検出回路を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直列共振型コンバータから出力される電圧を高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】比較例に係る直列共振型コンバータの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る直列共振型コンバータの構成を示す図である。
【図3】図3(a)〜(e)は、実施の形態1に係る直列共振型コンバータの動作例を示すタイミングチャートを示す図である。
【図4】実施の形態2に係る直列共振型コンバータの構成を示す図である。
【図5】実施の形態3に係る直列共振型コンバータシステムの構成を示す図である。
【図6】実施の形態4に係る直列共振型コンバータシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、比較例に係る直列共振型コンバータ100の構成を示す図である。直列共振型コンバータ100は、共振コイルL1、出力トランスT1、第1整流回路、電圧検出トランスT2および第2整流回路を備える。電圧検出回路10は、図1では外付けされる形態で描いているが、直列共振型コンバータ100と一体的に構成されてもよい。
【0015】
直列共振型コンバータ100には、図示しないスイッチング電源(たとえば、プッシュプル回路、フルブリッジ回路など)により生成された交流電圧が印加される。共振コイルL1は、出力トランスT1の一次側に接続される。出力トランスT1は、一次側に入力される入力電圧を昇圧して、二次側から出力電圧を出力する。出力トランスT1の一次巻線と二次巻線との巻数比を小さくするほど昇圧率を高くできる。より具体的には、一次巻線の巻数を小さくし、および/または二次巻線の巻数を大きくするほど昇圧率を高くできる。
【0016】
図1に示す直列共振型コンバータ100では、上記スイッチング電源により共振コイルL1の共振周波数と実質的に等しい駆動パルスでオン/オフ制御されることにより、出力トランスT1の一次側に共振電流が流れ、二次側に安定化した出力が得られる。
【0017】
第1整流回路は出力トランスT1の二次巻線に接続され、出力トランスT1の二次側の電圧を整流する。図1では第1整流回路はダイオードブリッジ回路で構成される例を描いている。当該ダイオードブリッジ回路は、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3および第4ダイオードD4を含む。
【0018】
より具体的には、出力トランスT1の二次巻線のプラス端子に、第1ダイオードD1のアノード端子および第3ダイオードD3のカソード端子が接続され、出力トランスT1の二次巻線のマイナス端子に、第2ダイオードD2のアノード端子および第4ダイオードD4のカソード端子が接続される。直列共振型コンバータ100のプラス出力端子に、第1ダイオードD1のカソード端子および第2ダイオードD2のカソード端子が接続され、直列共振型コンバータ100のマイナス出力端子に、第3ダイオードD3のアノード端子および第4ダイオードD4のアノード端子が接続される。なお、図示しないが第1整流回路の後段には一般に、平滑化容量が接続される。
【0019】
電圧検出トランスT2の一次巻線の両端はそれぞれ、出力トランスT1の一次巻線の両端に接続される。電圧検出トランスT2は、出力トランスT1の一次側に入力される入力電圧を降圧して、二次側から検出用の電圧を出力する。電圧検出トランスT2の一次巻線と二次巻線との巻数比を大きくするほど降圧率を高くできる。より具体的には、一次巻線の巻数を大きくし、および/または二次巻線の巻数を小さくするほど降圧率を高くできる。
【0020】
第2整流回路は電圧検出トランスT2の二次巻線に接続され、電圧検出トランスT2の二次側の電圧を整流する。図1では第2整流回路はダイオードブリッジ回路で構成される例を描いている。当該ダイオードブリッジ回路は、第5ダイオードD5、第6ダイオードD6、第7ダイオードD7および第8ダイオードD8を含む。第5ダイオードD5、第6ダイオードD6、第7ダイオードD7および第8ダイオードD8の接続関係は、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3および第4ダイオードD4の接続関係と同様である。なお、図示しないが第2整流回路の後段には一般に、平滑化容量が接続される。
【0021】
電圧検出回路10は、第2整流回路により整流された検出用の電圧から、出力トランスT1での昇圧および電圧検出トランスT2での降圧を参酌して、直列共振型コンバータ100の出力電圧を測定する。この電圧が、設定された上限電圧または下限電圧を超えるときアラームを鳴らすなどにより、過電圧検出または低電圧検出を外部に通知する。
【0022】
図1に示す比較例では、電圧検出回路10が直列共振型コンバータ100の出力電圧を検出する際、出力トランスT1のリーケージインダクタンスL2の影響を受ける。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る直列共振型コンバータ100の構成を示す図である。実施の形態1に係る直列共振型コンバータ100は、比較例に係る直列共振型コンバータ100に、補正トランスT3が追加された構成である。補正トランスT3は、一次側が共振コイルL1の両端に接続され、二次側が電圧検出トランスT2の二次側に接続される。より具体的には、補正トランスT3の一次巻線の両端は、それぞれ共振コイルL1の両端に接続される。補正トランスT3の二次巻線のマイナス端子は電圧検出トランスT2の二次巻線のマイナス端子に接続され、電圧検出トランスT2の二次側で合成巻線を形成する。
【0024】
補正トランスT3は、上述の検出用の電圧に含まれる、出力トランスT1の一次側に発生するリーケージインダクタンスL2による歪成分を打ち消すためのトランスである。補正トランスT3の一次巻線と二次巻線は逆極性に設計される。したがって、電圧検出トランスT2の二次巻線に流れる電流から補正トランスT3の二次巻線に流れる電流が減算されることになる。また、補正トランスT3の一次巻線と二次巻線との巻数比が上記歪成分の振幅と、補正トランスT3の二次巻線に発生する、当該歪成分に対して反位相の打消成分の振幅とが実質的に同一になるよう設計される。
【0025】
図3(a)〜(e)は、実施の形態1に係る直列共振型コンバータ100の動作例を示すタイミングチャートを示す図である。電圧検出トランスT2は、出力トランスT1の一次側の電圧(a)を取得して、出力トランスT1の二次側の電圧(b)を測定する。その際、電圧検出トランスT2の二次側に現れる電圧(c)は、リーケージインダクタンスL2により波形が歪む。この歪は出力電圧が低くなるほど影響が大きくなる。そこで、共振コイルL1に現れる電圧(d)を、電圧検出トランスT2の二次側に現れる電圧から減算することにより、リーケージインダクタンスL2の影響を打ち消すことができる。これにより、出力トランスT1の二次側の波形と同様の波形を得ることができる(e)。
【0026】
以上説明したように実施の形態1によれば、直列共振型コンバータから出力される電圧を高精度に検出できる。すなわち、出力トランスT1の一次側に接続されている共振コイルL1のインダクタンスを利用して、出力トランスT1のリーケージインダクタンスL2を打ち消すことにより検出精度を改善できる。リーケージインダクタンスL2を打ち消すことにより、過電圧検出、低電圧検出をより正確に行うことができる。また、既存の共振コイルL1を利用するため、補正トランスT3以外の新たな部品を追加する必要がなく、コスト増を抑制できる。
【0027】
また、出力トランスT1で昇圧される前の電圧を取得し、さらに電圧検出トランスT2で降圧することにより、検出用の電圧を下げることができ、第2整流回路および電圧検出回路10に使用される部品の耐圧を下げることができ、低コスト化を図ることができる。また、電圧検出トランスT2で絶縁しつつ降圧するため、1000V以上の高電圧を検出する場合の安全性を高めることもできる。
【0028】
図4は、実施の形態2に係る直列共振型コンバータ100の構成を示す図である。実施の形態2に係る直列共振型コンバータ100は、実施の形態1に係る直列共振型コンバータ100と比較し、補正トランスT3の一次巻線に共振コイルL1を使用する。実施の形態1と同様に、補正トランスT3の一次巻線となる共振コイルL1と二次巻線L3とは逆極性に設計される。また、補正トランスT3の一次巻線となる共振コイルL1と二次巻線L3との巻数比が上記歪成分の振幅と、補正トランスT3の二次巻線に発生する、当該歪成分に対して反位相の打消成分の振幅とが実質的に同一になるよう設計される。実施の形態2でも実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0029】
図5は、実施の形態3に係る直列共振型コンバータシステム500の構成を示す図である。実施の形態3に係る直列共振型コンバータシステム500は、実施の形態1に係る直列共振型コンバータ100が複数設けられるものである。図5では三つの直列共振型コンバータ100の出力電圧を合計する構成を示しているが、直列共振型コンバータ100の数は三つに限るものではなく、二つであってもよいし、四つ以上であってもよい。
【0030】
三つの直列共振型コンバータの三つの第1整流回路の出力が直列に接続されて、それぞれの直列共振型コンバータの出力電圧が合計される。また、三つの直列共振型コンバータの三つの第2整流回路の出力が直列に接続されて、それぞれの直列共振型コンバータの検出用の電圧が合計される。電圧検出回路10は、合計された検出用の電圧を検出する。これにより、三つの直列共振型コンバータの出力電圧の合計を測定できる。なお、この出力電圧の合計は10000V以上になる場合もあり、電圧検出トランスT2で絶縁しつつ降圧する手法は非常に有効である。
【0031】
図6は、実施の形態4に係る直列共振型コンバータシステム500の構成を示す図である。実施の形態4では、電圧検出回路10は、上述の合計された検出用の電圧を検出するとともに、それぞれの直列共振型コンバータの検出用の電圧を検出する。図6では便宜上、二つの直列共振型コンバータ100しか描いていないが、三つ以上であってもよいことはいうまでもない。また、ユニットbの直列共振型コンバータ単体の検出用の電圧を検出する構成しか描いていないが、ユニットaの直列共振型コンバータ単体の検出用の電圧も検出する。実施の形態4では直列共振型コンバータシステム500全体の出力電圧と、直列共振型コンバータシステム500を構成する個別の直列共振型コンバータの出力電圧を監視することができ、より安全にシステムを運用できる。
【0032】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0033】
100 直列共振型コンバータ、 L1 共振コイル、 L2 リーケージインダクタンス、 T1 出力トランス、 T2 電圧検出トランス、 T3 補正トランス、 10 電圧検出回路、 L3 二次巻線、 500 直列共振型コンバータシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側に入力される入力電圧を昇圧して、二次側から出力電圧を出力する出力トランスと、
前記出力トランスの一次側に接続される共振コイルと、
前記出力トランスの一次側に入力される前記入力電圧を降圧して、二次側から検出用の電圧を出力する電圧検出トランスと、
一次側が前記共振コイルの両端に接続され、二次側が前記電圧検出トランスの二次側に接続されるトランスであって、前記検出用の電圧に含まれる、前記出力トランスの一次側に発生するリーケージインダクタンスによる歪成分を打ち消すための補正トランスと、
を備えることを特徴とする直列共振型コンバータ。
【請求項2】
前記補正トランスは、
一次巻線と二次巻線が逆極性に設計され、
一次巻線と二次巻線の巻数比が前記歪成分の振幅と、当該補正トランスの二次巻線に発生する当該歪成分に対する反位相成分の振幅とが対応するよう設計されることを特徴とする請求項1に記載の直列共振型コンバータ。
【請求項3】
前記補正トランスの一次巻線に前記共振コイルが使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の直列共振型コンバータ。
【請求項4】
前記出力トランスの二次巻線に接続された第1整流回路と、
前記電圧検出トランスの二次巻線に接続された第2整流回路と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の直列共振型コンバータ。
【請求項5】
請求項4に記載の直列共振型コンバータが複数設けられる直列共振型コンバータシステムであって、
複数の直列共振型コンバータの複数の第1整流回路の出力が直列に接続されて、それぞれの直列共振型コンバータの出力電圧が合計され、
複数の直列共振型コンバータの複数の第2整流回路の出力が直列に接続されて、それぞれの直列共振型コンバータの検出用の電圧が合計されることを特徴とする直列共振型コンバータシステム。
【請求項6】
前記合計された検出用の電圧と、それぞれの直列共振型コンバータの検出用の電圧を検出する電圧検出回路をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の直列共振型コンバータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21772(P2013−21772A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151471(P2011−151471)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】