説明

直動アクチュエータ

【課題】カムフォロアを設けることなく、偏摩耗を抑制することができる直動アクチュエータを提供する。
【解決手段】回転運動要素及び直線運動要素を有し、前記回転運動要素に伝達された回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構62を備え、前記ボールねじ機構は、前記直線運動要素に設けた半径方向に突出する案内突起66eと、前記直線運動要素と対向する固定部に配設されて前記案内突起と係合して当該案内突起を軸方向に案内する案内溝82とを有して、前記直線運動要素の回り止めを行う構成とされ、円筒状の外周面を有するガイド部材80に前記案内溝を軸方向に沿って形成し、前記ガイド部材を前記固定部の前記直線運動要素に対面する位置に軸方向に形成した支持孔81に回動自在に保持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動要素に伝達された回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構を備えた直動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の直動アクチュエータは、ボールねじ軸とこれに多数のボールを介して螺合するボールねじナットとを有するホールねじ機構を有し、ボールねじ軸及びボールねじナットの一方を回転駆動する回転運動要素とし、他方を直線移動させる直線運動要素としている。このとき、直線運動要素が直線移動するには回転運動要素と供回りすることを防ぐ必要があり、通常、固定部に軸方向に形成した案内溝に直線運動要素に形成した案内突起を係合させて回り止めを行うようにしている。
【0003】
例えば、ハウジングに装着された転がり軸受を介して回転可能に、且つ軸方向移動不可に支持されたナットと、このナットに多数のボールを介して内装され、駆動軸と同軸上に一体化されたねじ軸とで構成されるボールねじ機構を備えた電動アクチュエータが知られている(特許文献1参照)。この電動アクチュエータは、ハウジングに互いに対向する平坦面を有する円筒状の袋孔が形成され、この袋孔に回り止め部材が平坦面に係合する平坦面を有する略四角形状に形成されて軸方向に移動自在に嵌挿されている。また、回り止め部材の内周に螺旋状の突条が形成され、この突条をねじ溝に係合させてねじ軸がハウジングに対して回転不可に、且つ軸方向移動可能に支持されている。
【0004】
このような電動アクチュエータでは、回転運動要素と直線運動要素とは両者の螺合状態の逸脱を防止するために、直線運動要素の軸方向のストロークを規制するストッパを設けるようにしている。
このために、ナット部材と回転駆動力が伝達される断面C字状のブラケットとを一体に構成し、ナット部材にボールを介して固定配置されたねじ軸を螺合させ、ねじ軸にストッパピンを形成するとともに、ブラケットに切欠きを形成し、ナット部材を回転させながら縮み方向に移動させたときに、所定位置でストッパピンに切欠きが当接して強制停止するようにしたボールねじ装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、外周にらせん溝軌道を形成した内側部材と、内周にらせん溝を形成した外側部材と、上記2つのらせん溝間に介挿される複数のボールと、上記複数のボールを保持する複数のポケットが形成された円環状の保持器とを備え、内側部材のらせん溝軌道の端部または外側部材のらせん溝軌道の端部の少なくとも一方に、保持器に対して周方向に係合して、保持器の軸方向の動きを規制するストッパを設けたボールねじ式の送り装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、ボールねじナットの大径部にフラット面を形成し、このフラット面の略中央部にカムフォロアを径方向の外側に向けて突設し、カムフォロアの先端をハウジングの切り欠き部に回転摺動可能に嵌合させることにより、ボールねじナットがボールねじ軸の回転に伴って回転することを抑制するように電動アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
一方、直線運動要素では、回転運動要素による回転力による供回りを抑制するために、回り止め機構を設けるようにしている。
このために、ナットにボールを介して螺合されたねじ軸を備え、ナットに形成された回り止め部材をハウジングに形成された案内溝内に係合させて回り止めを行うようにしたボールねじ機構が提案されている(例えば、特許文献5参照)。逆に、ハウジングに固定されたピンをナットに形成した溝内に摩擦低減部材となるブッシュを介して係合させて回り止めを行うアクチュエータも提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
また、ボールねじナットの大径部にフラット面を形成し、このフラット面の略中央部にカムフォロアを径方向の外側に向けて突設し、カムフォロアの先端をハウジングの切り欠き部に回転摺動可能に嵌合させることにより、ボールねじナットがボールねじ軸の回転に伴って回転することを抑制するような電動アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−270887号公報
【特許文献2】特開2003−120782号公報
【特許文献3】特開2004−116561号公報
【特許文献4】特開2002−181156号公報
【特許文献5】特開2005−299726号公報
【特許文献6】特開2005−163922号公報
【特許文献7】特開2007−333046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載された従来例にあっては、直線運動要素となるねじ軸の回り止めを行う回り止め機能のみを有するので、ストロークエンドでは、回り止め部材がナットに突き当たって停止することになり、ロック状態に陥る虞がある。
このストロークエンドでのロック状態に陥ることを回避するためには、特許文献2及び3に記載された従来例のように、直線運動用途のストロークエンドを規定するストッパ機能を設ける必要がある。しかしながら、これら特許文献2及び3に記載された従来例では、直線運動要素のストロークエンドを規制するストッパ機能のみを有するので、直線運動要素の回り止めを行うには、別途回り止め機構を設ける必要がある。
【0011】
すなわち、図28(a)及び(b)に概念的に示すように、回転駆動されるボールねじナット100に図示しないボールを介してボールねじ軸101を螺合させ、このボールねじ軸101にストロークエンドでボールねじナット100に近接する係止突起102を形成し、ボールねじナット100に係止突起102に係止される係止片103を形成する。そして、ボールねじ軸101には、係止突起102とはボールねじナット100を挟んで反対側に案内突起104を突出形成し、この案内突起104をボールねじ軸101に沿う固定部に形成した案内溝105に係合させて回り止めを行うようにする。
【0012】
このように、係止突起102及び係止片103によるストッパ機能と案内突起104及び案内溝105による回り止め機能とを個別に設けるため、構成が複雑となるという未解決の課題がある。また、ボールねじ軸101がストロークエンドに達して、係止突起102にボールねじナット100の係止片103が係止されたたときに、回転駆動されるボールねじナット100に大きなトルクが入力されると、この入力トルクは係止片103及び係止突起102を介してボールねじ軸101に伝達され、このボールねじ軸101から案内突起104及び案内溝105で構成される回り止め機構へ伝達される。この時、ボールねじナット100及びボールねじ軸101間には入力トルクの反力としてラジアル荷重が発生してしまう。ボールねじ機構はラジアル荷重が入らない状態で使用するのが一般的であり、このようなラジアル荷重が発生する状況は好ましくないという未解決の課題もある。
【0013】
また、直線運動要素の回り止めを行うためには、特許文献5に記載されているように、回り止め部材をハウジングの案内部を構成する切欠の当接部に係合させているが、この場合には、回り止め部材が切欠の当接部に摺接するので、回り止め部材及び当接部間での接触抵抗が大きくなるとともに、摩(磨)耗が発生することになる。
【0014】
これら接触抵抗や摩(磨)耗を低減するために、特許文献6に記載された従来例では、摩擦低減部材を用いることにより、溝と突起の接触抵抗を小さくして摩擦を抑制するようにしている。しかしながら、通常、組立性や加工時のバラツキを考慮して、溝と突起との間には所定隙間を設けているので、突起が溝側壁に当接しても、突起と溝側壁は角度を持った状態で接触し、点接触(或いは線接触)となって、接触箇所の面圧が高くなり、長期間使用した場合に、偏磨耗、ガタの増大に繋がるという未解決の課題がある。
【0015】
また、特許文献7に記載された従来例にあっては、カムフォロアを溝に回転摺動可能に嵌合しているので、磨耗に対しては効果を有するが、カムフォロアを設けると突起寸法が大きくなるとともに、製造コストが嵩むという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、本発明の第1の目的は、カムフォロアを設けることなく、偏摩耗を抑制することができる直動アクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記第1の目的を達成するために、本発明に係る直動アクチュエータの第1の形態は、回転運動要素及び直線運動要素を有し、前記回転運動要素に伝達された回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構を備え、前記ボールねじ機構は、前記直線運動要素に設けた半径方向に突出する案内突起と、前記直線運動要素と対向する固定部に配設されて前記案内突起と係合して当該案内突起を軸方向に案内する案内溝とを有して、前記直線運動要素の回り止めを行う構成とされ、円筒状の外周面を有するガイド部材に前記案内溝を軸方向に沿って形成し、前記ガイド部材を前記固定部の前記直線運動要素に対面する位置に軸方向に形成した支持孔に回動自在に保持している。
【0017】
また、本発明に係る直動アクチュエータの第2の形態は、前記第1の形態において、前記ガイド部材が、半円形以上の角度を有する断面形状を有し、前記支持孔は半円形を越える角度の断面形状を有する。
また、本発明に係る直動アクチュエータの第3の形態は、前記第2の形態において、前記ガイド部材が、半円形以上の角度を有する円筒面とその端部を結ぶ平面部とで構成され、前記平面部に前記案内溝を形成している。
【0018】
また、本発明に係る直動アクチュエータの第4の形態は、前記第1乃至第3の形態の何れか1つの形態において、前記ガイド部材を、引き抜き加工によって形成した長尺部材を所定の長さに切断して形成している。
【0019】
また、本発明に係る直動アクチュエータの第5の形態は、前記第1乃至第3の形態の何れか1つの形態において、前記ガイド部材が、外形を大径部と、小径部とから形成し、前記支持孔は、前記ガイド部材の前記大径部及び前記小径部とに係合する大径孔部と小径孔部と前記大径孔部及び前記小径孔部とを連結するテーバー部とを備えている。
また、本発明に係る直動アクチュエータの第6の形態は、前記第5の形態において、前記ガイド部材が、焼結成形品で構成されている。
【0020】
また、本発明に係る直動アクチュエータの第7の形態は、前記第1乃至第6の形態の何れか1つの形態において、前記ガイド部材には、耐磨耗性及び摺動性を向上する表面処理を施している。
また、本発明に係る直動アクチュエータの第8の形態は、前記第1乃至第7の何れか1つの形態において、前記ガイド部材には、前記円筒面に、前記支持孔の内周面に形成し円周方向の凸条に係合する凹溝を形成している。
【0021】
また、本発明に係る直動アクチュエータの第9の形態は、前記第1乃至第8の形態の何れか1つの形態において、前記案内突起が、前記直線運動要素のストロークエンドで、前記案内溝と係合しながら所定長さ突出する突出部を有し、該突出部に前記回転運動要素に設けた係止部を係止する。
また、本発明に係る直動アクチュエータの第10の形態は、前記第1乃至第9の形態の何れか1つの形態において、前記直線運動要素にその中心軸を挟む対称位置に一対の前記案内突起を形成し、前記固定部の前記直線運動要素の中心軸を挟む対象位置に一対の前記支持孔を形成し、一対の前記支持孔に一対の前記ガイド部材を個別に回動自在に保持し、前記一対のガイド部材の案内溝に前記一対の案内突起を個別に係合している。
【0022】
また、本発明に係る直動アクチュエータの第11の形態は、前記第1乃至第10の形態の何れか1つの形態において、前記案内突起が、筒状体の外周面に形成され、該筒状体を、前記直線運動要素に形成した軸部に、円周方向の回動を不能とし且つ軸方向に位置調整した状態で固定している。
また、本発明に係る直動アクチュエータの第12の形態は、前記第1乃至第10の形態の何れか1つの形態において、前記案内突起が、内周面にスプライン穴を形成した円筒体の外周面に形成され、該円筒体を、前記直線運動要素に、前記スプライン穴を当該直線運動要素に形成されたスプライン軸に結合した状態で固定している。
【0023】
【0024】
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ボールねじ機構の軸方向移動要素に形成した突起を係合させる回り止め用の溝を円筒状のガイド部材に形成し、このガイド部材を固定部に回動可能に支持するようにしたので、突起を案内する案内溝が突起の傾きに倣うことになり、長期の使用による偏磨耗の発生を防止できるという効果が得られる。
【0026】
また、ガイド部材及びこれを支持する支持孔の断面形状を半円より大きな角度とすることにより、ガイド部材が軸方向移動要素側に倒れこむことを確実に防止できる。
さらに、ガイド部材が固定部とは別部材で構成されているので、突起を案内するために必要な硬度に応じた材料を選択できるとともに、必要な表面処理をガイド部材に限って施すことができ、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る直動アクチュエータの一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のA−A線上の断面図である。
【図4】図2のB−B線上の断面図である。
【図5】図4のC−C線上の断面図である。
【図6】ハウジングの背面図である。
【図7】図6のD−D線上の断面図である。
【図8】ボールねじ機構の正面図である。
【図9】一部を拡大して示す図8のE−E線上の断面図である。
【図10】ボールナットを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は(c)のF−F線上の断面図である。
【図11】回り止め部材を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は断面図である。
【図12】ガイド部材を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図13】ガイド部材の取り付け方法を示す正面図である。
【図14】第1の実施形態の案内突起とストッパ部との位置関係を示す説明図である。
【図15】第1の実施形態のガイド部材の倣い動作の説明に供する説明図である。
【図16】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【図17】図16のボールねじ機構を示す斜視図である。
【図18】第2の実施形態の案内突起と係止部材との位置関係を示す説明図である。
【図19】本発明の第3の実施形態を示す斜視図である。
【図20】第3の実施形態の案内突起と係止部材との位置関係を示す説明図である。
【図21】本発明の第4の実施形態を示す断面図である。
【図22】図21のG−G線上の断面図である。
【図23】ガイド部材を示す斜視図である。
【図24】ガイド部材の倣い動作の説明に供する説明図である。
【図25】第4の実施形態におけるガイド部材の変形例を示す斜視図である。
【図26】図25のガイド部材を装着する支持孔を示す断面図である。
【図27】支持孔にガイド部材を装着した状態の断面図である。
【図28】従来例を示す概略構成図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る直動アクチュエータの一実施形態を示す正面図、図2は側面図、図3は図1のA−A線上の断面図、図4は図2のB−B線上の断面図である。
図中、10は直動アクチュエータであって、この直動アクチュエータ10は、ともに例えばアルミニウム又はアルミニウム合金でダイキャスト成形された主ハウジング11A及び副ハウジング11Bを有する。
【0029】
主ハウジング11Aは、図3及び図7に示すように、電動モータ12を前面側に装着するモータ装着部13と、このモータ装着部13と並列に配設されたボールねじ機構20を背面側に装着するボールねじ機構装着部14とを有する。これらモータ装着部13及びボールねじ機構装着部14は、互いの中心軸が平行となるように形成されている。
モータ装着部13は、前面側に形成された電動モータ12の取付フランジ12aを取付けるフランジ取付部13aと、このフランジ取付部13aの背面側に形成された電動モータ12の大径部12bを挿入する大径孔部13bと、この大径孔部13bの背面側に連通する電動モータ12の小径部12cを挿入する小径孔部13cと、この小径孔部13cの背面側に連通するピニオン収納部13dとを有する。
【0030】
ボールねじ機構装着部14は、背面側に形成したモータ装着部13の小径孔部13cに対応する位置に形成したボールねじ機構収納部14aと、このボールねじ機構収納部14aに連通して前方に延長する円筒部14bと、この円筒部14bの前端に連通するシール収納部14cとを有する。ボールねじ機構収納部14aには、図6に及び図7に示すように、円筒部14bとの間で空気を通過させる空気孔14dを形成している。
【0031】
副ハウジング11Bは、図3に示すように、主ハウジング11Aの背面側に形成したピニオン収納部13d及びボールねじ機構収納部14aを覆う形状に構成されている。この副ハウジング11Bは、主ハウジング11Aのピニオン収納部13d及びボールねじ機構収納部14aに対応するピニオン収納部16及びボールねじ機構収納部17を形成し、さらに下部側にブリーザ18を形成している。ここで、ボールねじ機構収納部17には背面側にボールねじ収納部17aを形成している。このボールねじ収納部17aの後述するボールねじナット22の軸方向端面と接触する位置にスラストニードル軸受17bを配置している。
【0032】
電動モータ12は、図3に示すように、その出力軸12dの先端にピニオンギヤ15を装着している。そして、電動モータ12をモータ装着部13に装着する。この電動モータ12の装着は、電動モータ12をピニオンギヤ15側からモータ装着部13に挿入して、ピニオンギヤ15をピニオン収納部13dに収納した状態で、取付フランジ12aをフランジ取付部13aに取付けることにより行う。
【0033】
一方、ボールねじ機構20は、主ハウジング11A及び副ハウジング11Bのボールねじ機構収納部14a及び17にシール付の転がり軸受21a及び21bによって回転自在に支持した回転運動要素としてのボールねじナット22と、このボールねじナット22に多数のボール23を介して螺合する直線運動要素としてのボールねじ軸24とを備えている。
【0034】
ボールねじナット22は、図10に示すように、内周面にボールねじ溝25a及びボール循環溝25bを形成した円筒部材25で構成している。ここで、ボールねじナット22のボール循環方式としては、図10(d)に示すように、例えばボール循環部が1巻きに1箇所存在するS字状の循環溝25bをボールねじナット22と一体に形成した形態を採用している。そして、循環溝25bは冷間鍛造によって形成され、ボールねじ溝25aは切削加工により形成される。
【0035】
この円筒部材25は、外周面における軸方向の両端部側をボールねじ機構収納部14aに転がり軸受21a及び21bを介して回転自在に支持されている。そして、円筒部材25の外周面の転がり軸受21a及び21bの内輪間にインボリュートスプライン軸部25cを形成している。さらに、正面から見て扇状の係止部となるストッパ部25dを円筒部材25の前面側端面に一体に突出形成している。
【0036】
ここで、ストッパ部25dは、回転運動要素となるボールねじナット22のボールねじ溝25a及び循環溝25bの少なくとも一方の溝加工前に成形し、ボールねじ溝25a及び循環溝25bの少なくとも一方の加工基準とすることが好ましい。
また、円筒部材25は、インボリュートスプライン軸部25cに例えばガラス繊維入り合成樹脂材等を射出成形したドリブンギヤ26をスプライン結合している。このドリブンギヤ26は電動モータ12の出力軸12dに装着されたピニオンギヤ15に噛合している。ドリブンギヤ26には、内周面にインボリュートスプライン軸部25cに噛合するインボリュートスプライン孔部26aを形成している。
【0037】
そして、ドリブンギヤ26を円筒部材25に装着するには、先ずドリブンギヤ26のインボリュートスプライン孔部26aを円筒部材25のインボリュートスプライン軸部25cに噛合させる。次いで、ドリブンギヤ26の内周面側の軸方向端部に転がり軸受21a及び21bの内輪を当接させるように圧入嵌合する。これにより、ドリブンギヤ26を円筒部材25に軸方向及び回転方向に移動不可能に固定できる。
【0038】
ボールねじ軸24は、図3及び図4に示すように、主ハウジング11Aに形成した円筒部14b及び副ハウジング11Bに形成したボールねじ収納部17aに装着されている。このボールねじ軸24は、図9に示すように、軸方向の中央部より後端側(図9の左側)に形成されたボールねじ部31と、このボールねじ部31の前端側(図9の右側)に連接するボールねじ部31より小径のインボリュートスプライン軸部32と、このインボリュートスプライン軸部32の前端に連接するインボリュートスプライン軸部32より小径で、先端に二面幅33aを形成した連結軸部33とで構成されている。
【0039】
このボールねじ軸24のインボリュートスプライン軸部32に、図3、図4及び図9に示すように、回り止め部材34をスプライン係合している。この回り止め部材34は、図11に示すように、内周面にインボリュートスプライン孔部35aを形成した円筒部35と、この円筒部35の外周面における左右対称位置に形成された半径方向に突出する案内突起36及び37とを有する。ここで、案内突起36は、軸方向の長さを案内突起37に比較して長く設定し、後述するストロークエンドで軸方向後端側にボールねじナット22に形成したストッパ部25dが当接する突出部36aが形成されている。
【0040】
そして、回り止め部材34は、インボリュートスプライン孔部35aにボールねじ軸24のインボリュートスプライン軸部32をスプライン結合した状態で、図9で拡大図示するように、インボリュートスプライン軸部32の前端側を軸方向から、円周方向複数箇所、例えば上下左右の4箇所を加締めることにより加締め部32aを形成する。したがって、回り止め部材34は、スプライン結合によって回転不能とされるとともに、加締め部32aによってボールねじ軸24の軸方向に移動不能とされてボールねじ軸24に固定されている。
【0041】
ここで、案内突起36の軸方向長さLcは、図14に示すように、ボールねじ溝25aのリードLbより長く設定されている。すなわち、案内突起36の突出部36aとストッパ部25dとの係止長さをLdとし、回り止めに必要な案内突起36のガイド部材40の案内溝40cとの係合長さをLeとし、ストッパ部25dの軸方向先端と案内溝40cのボールねじナット22側の端面との間の隙間をLfとしたときに、案内突起36の軸方向長さLcを、
Lc=Ld+Le+Lf>Lb …………(1)
に設定する。また、係止長さLdはリードLbより小さく設定する(Ld<Lb)。
【0042】
また、案内突起37は、図11(c)に示すように、前方への突出長さを案内突起36の突出長さに比較して短く設定している。すなわち、図8に示す案内突起36の突出部36aがストッパ部25dに当接してストロークエンドに達している状態からボールねじナット22を時計方向に回動させてストッパ部25dが案内突起37と周方向に重複する位置に達したときに、案内突起37がストッパ部25dに接触しない軸方向位置に設定している。
【0043】
一方、主ハウジング11Aの円筒部14bの内周面には、図5に示すように180°対称位置に、ガイド部材40を回動自在に保持する支持孔41a及び41bを軸方向に延長して形成している。これら支持孔41a及び41bのそれぞれは、図5に拡大図示するように、断面形状が半円形より大きく、長さが直径以下で且つ中心角θが180度未満の角度例えば140度となる弦を円筒部14bの内周面に開口する形状に形成している。
【0044】
したがって、ガイド部材40を保持したときに、ガイド部材40が支持孔41a及び41bから脱落して円筒部14bの内周面に突出することを防止している。これら支持孔41a及び41bの前端は、シール収納部14cに開口している。そして、支持孔41a及び41bには、半径方向内方に突出する突条41cを支持孔41a及び41bの前端側(図4の左側)に形成している。
ガイド部材40は、例えば鋼で形成し、図4、図5及び図12に示すように、上述した支持孔41a及び41bと略同一の断面形状に形成している。すなわち、円柱を、断面で見て、長さを直径以下で且つ中心角θが180度以下の角度とする弦で軸方向に切断して形成される柱体で構成している。
【0045】
したがって、ガイド部材40は、円筒面40aとフラット面40bとを有して半円か又は半円より円に近い断面形状とされている。フラット面40bの中央部には、軸方向に延長し、深さが断面の円弧の中心軸を越える深さでボールねじ軸24の回り止め部材34の案内突起36,37の幅より僅かに広い幅の案内溝40cを形成している。この案内溝40cには、ボールねじ軸24の回り止め部材34の案内突起36又は37を係合している。また、ガイド部材40の前端側の外周面には、円周方向に支持孔41a及び41bの突条41cに係合する係合溝40dを形成している。
【0046】
そして、上記構成を有するガイド部材40は、上述した断面形状に形成した金型を使用して丸棒を引き抜き成形して長尺の成形体を形成し、この成形体を所定寸法に切断することにより形成される。その後、外周面に係合溝40dを切削加工してガイド部材40が形成される。
また、主ハウジング11Aには、図3及び図4に示すように、ボールねじ機構装着部14におけるシール収納部14cにボールねじ軸24の連結軸部33の外周面に摺接するシール50を装着し、このシール50を止め輪51によって固定している。
【0047】
次に、上記直動アクチュエータ10の組立方法を説明する。
先ず、主ハウジング11Aの支持孔41a及び41bにそれぞれガイド部材40を装着保持する。このガイド部材40を支持孔41a(又はび41b)に装着するには、先ず、図13(a)に示すように、例えばガイド部材40をその案内溝40cを下側(支持孔41a,41bの深さ方向とフラット面40bが略平行となる方向)に向けた状態で、主ハウジング11Aのシール収納部14cを通じて円筒部14b内に挿通する。
【0048】
その後、支持孔41a(又は41b)の突条41cにガイド部材40の係合溝40dを対向させた状態で、ガイド部材40を支持孔41a(又は41b)内に挿入して、係合溝40d内に突条41cを係合させる。その後、ガイド部材40を図13(a)で見て反時計方向(又は時計方向)に回動させることにより、図13(b)に示すように、ガイド部材40を支持孔41a(又は41b)内に案内溝40cを円筒部14bの内周面側に開口した状態で保持する。このとき、支持孔41a(又は41b)に形成した突条41cがガイド部材40の係合溝40d内に係合するので、ガイド部材40の軸方向の移動を阻止できる。
【0049】
一方、ボールねじ機構20を別途組立てる。このボールねじ機構20の組立ては、先ず、ボールねじナット22の円筒部材25の外周面における軸方向の中央部にドリブンギヤ26をスプライン結合させ、その両脇に転がり軸受21a及び21bを装着し、これら転がり軸受21a及び21bの内輪によってドリブンギヤ26を固定する。
その後又はその前に、ボールねじ軸24を、ボールねじナット22内にボール23を介して螺合させる。その後又はその前にボールねじ軸24に回り止め部材34をスプライン結合した状態で、インボリュートスプライン軸部32を加締めることにより、回り止め部材34をボールねじ軸24に軸方向及び回転方向に移動不可能に固定する。これにより、図9に示すボールねじ機構20が構成される。
【0050】
ここで、回り止め部材34の装着位置は、ボールねじナット22及びボールねじ軸24間のボールの外部への抜け出しを阻止可能なストロークエンドで案内突起36の突出部36aを案内溝40cから軸方向に突出させ、この突出部36aにボールねじナット22のストッパ部25dを当接させる位置に設定している。
そして、ボールねじ機構20を主ハウジング11Aのボールねじ機構収納部14aに連結軸部33側から挿入し、回り止め部材34の案内突起36及び37を主ハウジング11Aに装着されたガイド部材40の案内溝40cに係合させる。最後に、転がり軸受21aの外輪をボールねじ機構収納部14aの内周面に嵌合させながらドリブンギヤ26ボールねじ機構収納部14aに収納して、主ハウジング11Aへのボールねじ機構20の装着を完了する。
【0051】
その後、電動モータ12をそのピニオンギヤ15側から主ハウジング11Aのモータ装着部13内に挿入して、ピニオンギヤ15をボールねじ機構20のドリブンギヤ26に噛合させる。次いで、電動モータ12の取付フランジ12aをフランジ取付部13aにボルト締めする。
なお、電動モータ12の主ハウジング11Aへの装着は、主ハウジング11Aへのボールねじ機構20の装着前に行うようにしてもよい。
【0052】
このように主ハウジング11Aへの電動モータ12及びボールねじ機構20の装着を終了すると、主ハウジング11Aの背面側に図示しないパッキンを介して副ハウジング11Bを装着してボルト締め等の固定手段で固定し、主ハウジング11Aのシール収納部14cにシール50を挿入し、止め輪51で抜け止めすることにより、直動アクチュエータ10の組立を完了する。
【0053】
この組立完了状態では、図4及び図5に示すように、ガイド部材40の案内溝40c内に、回り止め部材34の案内突起36及び37が係合した状態となる。このとき、案内溝40cと案内突起36,37とは、図15(a)に図示するように、案内溝40cの幅が案内突起36及び37の幅より僅かに大きくなるように選定されている。
【0054】
この状態で、電動モータ12を回転駆動して、ピニオンギヤ15からドリブンギヤ26に回転駆動力を伝達して、ボールねじナット22を例えば図8で見て時計方向に回動させる場合を考える。この場合には、ボールねじナット22の回転力はボール23を通じてボールねじ軸24に伝達されることにより、ボールねじ軸24はボールねじナット22と同一方向の時計方向に回動しようとする。このとき、案内突起36及び37も図15(b)に示すように、時計方向に回動し、この案内突起36及び3の先端は案内溝40cの右側面に係合する状態となり、線接触状態となる。
【0055】
ところが、ガイド部材40は主ハウジング11Aの支持孔41a及び41bに回動可能に保持されているので、案内突起36及び37が時計方向に回動したときに、案内突起36及び37の先端で案内溝40cの右側面を時計方向に押圧する。
このとき、案内突起36及び37の接触点がガイド部材40の中心軸より外側にあるので、ガイド部材40を案内突起36及び37の時計方向の回動に伴って図15(c)に示すように時計方向に案内突起36及び37の側面が案内溝40cの右側面に倣って面接触状態となるまで回動する。この面接触状態で、案内突起36及び37の時計方向の回動を規制する。このため、これ以上の案内突起36及び37の回動を規制することができ、ボールねじ軸24の回動を規制して回り止め機能を発揮する。
【0056】
そして、ボールねじナット22を図8で見て時計方向に回動し続けることにより、ボールねじ軸24は図3及び図4で見て左方に移動する。このとき、ボールねじ軸24の軸方向の移動は、案内突起36及び37とガイド部材40の案内溝40cとは図15(c)の面接触状態を維持した状態で行われる。
したがって、案内突起36及び37が案内溝40cに面接触状態で接触することにより、長期間の使用によっても案内突起36及び37とガイド部材40の案内溝40cとに生じる偏磨耗を確実に防止できる。
【0057】
同様に、電動モータ12を逆回転させて、ボールねじ軸24に図8で見て反時計方向の回転力を伝達したときには、案内突起36及び37の左側面がガイド部材40の案内溝40cの左側面に面接触状態で接触して軸方向に移動することになり、同様に案内突起36及び37とガイド部材40の案内溝40cとに生じる偏磨耗を確実に防止できる。
【0058】
そして、ボールねじナット22をストロークエンドから時計方向に回転させるとストッパ部25dが案内突起37の位置に達するが、この案内突起37の後端側への突出長さを案内突起36より短く決定しているので、ストッパ部25dが案内突起37の後端に接触することはない。その後、ボールねじナット22がストロークエンドから一回転すると、図14に示すように、係止長さLd<リードLbの関係より、ボールねじナット22のストッパ部25dの先端が案内突起36の後端より離間しており、ストッパ部25dが案内突起36の円周方向端面に当接することはなくなる。
【0059】
その後、ボールねじナット22の回転を継続してボールねじ軸24が所望の前進位置に達したときに、電動モータ12を停止させることにより、ボールねじ軸24の前進を停止させる。
その後、ボールねじ軸24が前方側の所望の前進位置に達している状態から電動モータ12を逆転駆動して、ボールねじナット22を図8で反時計に回転させると、ボールねじ軸24は、その案内突起36及び37がガイド部材40の案内溝40cに係合しているので、回り止めされて軸方向に後退する。
【0060】
そして、ボールねじ軸24の案内突起36がボールねじナット22のストッパ部25dに対向する(ストロークエンドの1回転手前)位置となったとき、前述したように、係止長さLd<リードLbの関係としているため、ストッパ部25dが案内突起36に接触することはなく、ボールねじナット22の逆転を許容する。このため、案内突起36の後端がボールねじナット22に形成したストッパ部25dの先端の軌跡内に入り込むことになる。
【0061】
そして、ボールねじ軸24をさらに後退させて、ストッパ部25dが案内突起37位置となったときにも、前述したように案内突起37の後方への突出長さが案内突起36より短いことにより、ストッパ部25dが案内突起37に当接することなくボールねじナット22の逆転を許容する。
【0062】
その後、図8に示すように、ストッパ部25dが案内突起36の突出部36aの円周方向端面に当接することなる。この状態では、図3及び図4に示すように、案内突起36の軸方向長さの半分程度がガイド部材40の案内溝40cに係合している。このため、ホールねじ軸24は回り止め状態にあり、この案内突起36の突出部36aにストッパ部25dが係止長さLdをもって当接するので、ストッパ部25dが案内突起36に係止されてボールねじナット22のこれ以上の逆回転が規制され、ボールねじ軸24が後方側ストロークエンドに達する。このストロークエンドでは、ボールねじ軸24の後端面が副ハウジング11Bのボールねじ機構収納部17の底面に近接した位置で停止する。
【0063】
このように、上記第1の実施形態によると、案内突起36及び37とガイド部材40に形成した案内溝40cとを面接触状態を維持しながら軸方向に移動させることができる。このため、案内突起36及び37とガイド部材40の案内溝40cとの間の偏磨耗の発生を確実に防止できる。しかも、ガイド部材40はこれを装着する主ハウジング11Aとは別部材で構成するので、ガイド部材40を耐磨耗性が高い部材を使用して形成することができ、高耐磨耗性のガイド部材を得ることができる。この場合、高耐磨耗性の材料はガイド部材40の部分だけでよく、主ハウジング11A全体を高耐磨耗性部材で形成する必要がないので、製造コストを低コスト化することができるとともに、カムフォロアを使用する必要がないので、案内突起36及び37が大形化することもない。
【0064】
さらに、ガイド部材40を、高耐磨耗性を有する部材で形成する場合に代えて、案内突起36及び37と摺接するガイド部材40の案内溝40cに耐磨耗性及び摺動性を向上させる表面処理を施すようにしても良く、この場合でもガイド部材40にのみ表面処理を施せばよいので、表面処理コストを低減できる。
【0065】
また、ガイド部材40を支持する支持孔41a及び41bの弦の中心角θが180°未満に設定され、且つ弦の長さが支持孔41a及び41bの直径より短く設定されているので、つまり支持孔41a及び41bの断面形状が半円を越える形状とされているので、ガイド部材40を支持孔41a及び41bで保持する組付け時に、ガイド部材40が支持孔41a及び41bからボールねじ軸24側に脱落することを確実に防止できる。
また、2つの案内突起36及び37を円筒部材25の軸線を挟んで対称位置に形成しているので、案内突起36及び37でガイド部材40を押圧する際の反力を分割して分担することができ、摩耗の発生を低減することができる。
【0066】
また、上記第1の実施形態によると、ボールねじ軸24のボールねじナット22側へのストロークエンドに達したときに、ボールねじ軸24の回り止め機能を有する回り止め部材34の案内突起36に、ボールねじナット22に形成したストッパ部25dを係止されてストッパ機能が発揮される。
したがって、案内突起36によって回り止め機能とストッパ機能とを兼ね備えることができ、ストッパ機能を別部材で構成する必要がなく、構成を簡易化することができるとともに、部品点数を削減して製品コストを低減することができる。
【0067】
また、ボールねじ軸24がストロークエンドに達したときに、ボールねじ軸24の案内突起36は案内溝40cに係合しており、この案内突起36の案内溝40cから突出した突出部36aにボールねじナット22に形成したストッパ部25dを当接させる。このため、ボールねじナット22に伝達される入力トルクがストッパ部25dを介して案内突起36に伝達されたときに、案内突起36自体が案内溝40cに係合されていることから、伝達されるトルクは案内突起36を介して案内溝40cで受けられさらに案内溝40cから主ハウジング11Aへ入ることになり、ボールねじ軸24及びボールねじナット22に作用するラジアル荷重を確実に防止できる。
【0068】
また、主ハウジング11Aのボールねじ機構収納部14aに円筒部14bを副ハウジング11Bに形成したブリーザ18に連通する空気孔14dを形成したので、ボールねじ軸24の進退時に生じる円筒部14b内の空気圧変動を抑制して円滑な移動を確保できる。
【0069】
さらに、回り止め部材34をボールねじ軸24にスプライン結合してインボリュートスプライン軸部を加締めることにより、ボールねじ軸24に固定するようにしているので、ワッシャー等のスペーサを介挿することによって回り止め部材34の軸方向位置を調整することが可能となる。また、案内突起36とボールねじナット22のストッパ部25dとが突き当たる位相をスプラインの山で調整することが可能となる。すなわち、ボールねじ軸24のストロークエンドにおける軸端位置を微調整することが可能となる(例えば、リードLbのボールねじでスプラインの歯数がZの場合、回り止め部材34との嵌合を1歯ずらすと、軸端位置がLb/Zずれることになる)。
【0070】
また、ボールねじナット22を回転自在に支持している転がり軸受21a及び21bとしてシール付軸受を適用することにより、転がり軸受21a及び21bで生じる摩耗粉がボールねじナット22及びボールねじ軸24間に混入することを確実に阻止できる。
さらに、上記第1の実施形態では、電動モータ12の出力軸12dが後方側とされ、この出力軸12dにピニオンギヤ15及びドリブンギヤ26を介してボールねじナット22を連結し、このボールねじナット22に螺合するボールねじ軸24の連結軸部33を前方突出するようにし直動アクチュエータ10の軸方向長さを短くすることができる。
【0071】
なお、上記第1の実施形態においては、主ハウジング11Aに2つの支持孔41a及び41bを形成し、これらにガイド部材40を保持するとともに、ボールねじ軸24の回り止め部材34に2つの案内突起36及び37を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、案内突起のガイド部材の組を1組又は3組以上設けるようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態では、ボールねじナット22に扇状のストッパ部25dを形成する場合について説明したが、ストッパ部25dの形状は任意形状とすることができる。
【0072】
また、上記第1の実施形態では、円筒部35の外周面に案内突起36及び37を形成して回り止め部材34を構成し、この回り止め部材34をボールねじ軸24にスプライン結合した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、内周にインボリュートスプライン孔部が形成されていれば、外周を角筒として、この角筒部に案内突起36及び37を形成してもよい。また、ボールねじ軸24に角柱部を形成し、この角柱部に係合する角筒部に案内突起36及び37を形成して回り止め部材34を構成するようにしてもよい。この場合も、回り止め部材34の軸方向位置を角形ワッシャ等で調整することにより、ボールねじ軸24のストロークエンド位置を調整することができる。
【0073】
また、上記第1の実施形態では、電動モータ12とボールねじ機構20の連結軸部33とを並設した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動モータ12をボールねじ軸24のボールねじ部31と並設するようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態では、電動モータ12とボールねじ機構20のボールねじナット22とを歯車式動力伝達機構で連結した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、プーリーとタイミングベルトとによるベルト式動力伝達機構やその他の動力伝達機構で連結するようにしてもよい。
【0074】
次に、本発明の第2の実施形態を図16〜図18について説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態におけるガイド部材40及び支持孔41a及び41bを省略したものである。
すなわち、第2の実施形態の直動アクチュエータ61は、図16に示すように、ボールねじ機構62を有する。このボールねじ機構62は、固定部としてのハウジング63に形成した中心開口63aに連通する大径孔部63bに軸受64によって回転自在に支持されたボールねじナット65と、このボールねじナット65に螺合する直線運動要素としてのボールねじ軸66と、ボールねじナット65及びボールねじ軸66間に介挿された多数のボール67とで構成されている。
【0075】
ボールねじナット65は、内周面にボールねじ溝65aが形成された円筒部材65bで構成されている。この円筒部材65bの外周面における一方の端部は軸受64を介してハウジング63に回転自在に支持され、他方の端部に平歯車65cを外嵌している。この平歯車65cは、図示しない回転駆動源としての電動モータの回転軸に連結された平歯車65dと噛合している。このため、ボールねじナット65は、電動モータの回転力によって回転駆動される。
【0076】
また、ボールねじナット65には、図17に示すように、平歯車65c側の軸方向端面65eにおけるボールねじ溝65aより半径方向外側位置に、係止部としての円柱状の係止片70を突出形成している。この係止片70は、ボールねじ軸66の後方側のストロークエンドに達したときに、後述するボールねじ軸66の案内突起66eの円周方向端面に当接する。ここで、係止片70は、回転運動要素となるボールねじナット65のボールねじ溝65aの溝加工前に成形し、ボールねじ溝25a及び循環溝25bの少なくとも一方の加工基準とすることが好ましい。
【0077】
ボールねじ軸66は、ハウジング63に形成された中心開口63a内に挿通されており、外周面にボールねじ溝66aを形成した大径部66bと、この大径部66bの一端に形成した角柱部66cに嵌合された角筒部66d及びその1面から半径方向に大径部66bより外方に突出する案内突起66eと、角柱部66cに連接する小径軸部66fとで構成されている。
【0078】
なお、案内突起66eの軸方向長さLcは、図18に示すように、ボールねじ溝66aのリードLbより長く設定されている。すなわち、案内突起66eと係止片70との係止長さをLdとし、回り止めに必要な案内突起66eの後述する案内溝69cとの係合長さLeとし、係止片70の先端と案内溝69cのボールねじナット65側の端面との間の隙間をLfとしたときに、案内突起66eの軸方向長さLcを、
Lc=Ld+Le+Lf>Lb …………(1)
に設定する。また、係止長さLdはリードLbより小さく設定される(Ld<Lb)。
【0079】
また、ハウジング63のボールねじナット65を収納する端部には、ボールねじナット65を収納する収納部69aを形成した例えばアルミニウム、アルミニウム合金等をダイキャスト成形して構成された固定部としての固定カバー69がボルト締め等の固定手段によって一体に固定されている。この固定カバー69には、ボールねじ軸66の小径軸部66f及び大径部66bを挿通するハウジング63の中心開口63aよりは小径でボールねじ軸66の大径部66bよりは大径の挿通孔69bを形成し、この挿通孔69bの内周面側にボールねじ軸66の案内突起66eを案内する案内溝69cを形成している。この案内溝69cは、収納部69a側に開口しており、収納部69aとは反対側では開口することなく案内突起66eが当接するストッパ部69dが形成されている。
【0080】
次に、上記第2の実施形態における直動アクチュエータ61の組み立て方法を説明する。
先ず、ボールねじナット65内にボールねじ軸66を、ボール67を介して螺合させてボールねじ機構62を構成する。このボールねじ機構62のボールねじナット65を、ハウジング63の大径孔部63b内に軸受64を介して回転自在に支持し、このボールねじナット65に外嵌された平歯車65cを電動モータ等の回転駆動源の回転軸に接続された平歯車65dに噛合させる。
【0081】
次いで、ハウジング63に固定カバー69を装着する。このとき、固定カバー69の案内溝69c内にボールねじ軸66の案内突起66eを係合させながら固定カバー69を装着し、装着が完了すると、固定カバー69をハウジング63にボルト締め等の固定手段で固定することにより、直動アクチュエータ61の組立を完了する。
この組立完了状態で、図16及び図17に示すように、ボールねじナット65の係止片70がボールねじ軸66の案内突起66eの円周方向端面に当接して軸方向後方側のストロークエンドにあるものとする。この状態では、案内突起66eは、図16に示すように、固定カバー69の案内溝69cに軸方向の半分程度に係合している。
【0082】
この状態から、図17でボールねじナット65を矢印A方向に回転させることにより、図18に示すように、ボールねじナット65の回転によって、係止片70が案内突起66eから円周方向に離間する。これと同時に、案内突起66eは固定カバー69の案内溝69cに係合していてボールねじ軸66が回り止めされているので、ボールねじ軸66は軸方向に前進し、案内突起66eも前進する。
【0083】
そして、ボールねじナット65が一回転すると、図18に示すように、係止長さLd<リードLbの関係より、ボールねじナット65の係止片70の先端は案内突起66eの後端(図16の右側端面)より離間しており、係止片70が案内突起66eの円周方向端面に当接することはなくなる。
その後、ボールねじナット65の回転が継続されて、ボールねじ軸66の案内突起66eの小径軸部66f側の端面が固定カバー69のストッパ部69dに当接すると、ボールねじ軸66の前進が停止されて前方側のストロークエンドに達する。なお、通常は、ボールねじ軸66の前進を、ボールねじ軸66の案内突起66eがストッパ部69dに当接する前に停止するように制御される。
【0084】
その後、ボールねじ軸66が前方側に移動している状態からボールねじナット65を図17で矢印Aとは反対方向に逆回転させると、ボールねじ軸66は、その案内突起66eを固定カバー69の案内溝69cに係合しているので、回り止めされてボールねじナット65の逆回転に伴って軸方向に後退する。
そして、ボールねじ軸66の案内突起66eがボールねじナット65の係止片70に対向する(ストロークエンドの1回転手前)位置となったとき、前述したように、係止長さLd<リードLbの関係としているため、ボールねじナット65の逆転が許容される。
【0085】
このため、ボールねじ軸66がさらに後退して、案内突起66eの後端がボールねじナット65に形成した係止片70の先端の軌跡内に入り込むことになり、ついには、図17に示すように係止片70が案内突起66eの円周方向端面に当接することなる。この状態では、図16に示すように、案内突起66eは、その軸方向長さの半分程度が案内溝69cに係合して、回り止め状態にある。この回り止め状態の案内突起66eに係止片70が係止長さLdをもって当接するので、ボールねじナット65のこれ以上の逆回転が規制され、ボールねじ軸66が後方側(図16の右側)ストロークエンドに達する。
【0086】
このように、上記第2の実施形態によると、ボールねじ軸66のボールねじナット65側へのストロークエンドがボールねじ軸66の回り止め機能を有する案内突起66eに、ボールねじナット65に形成した係止片70を当接させることによりストッパ機能を発揮する。
したがって、案内突起66eによって回り止め機能とストッパ機能とを兼ね備えることができ、ストッパ機能を別部材で構成する必要がなく、構成を簡易化することができるとともに、部品点数を削減して製品コストを低減することができる。
【0087】
また、ボールねじ軸66がストロークエンドに達したときに、ボールねじ軸66の案内突起66eは案内溝69cに係合しており、この案内突起66eの案内溝69cから突出した突出部にボールねじナット65に形成した係止片70が係止される。このため、ボールねじナット65に伝達される入力トルクを、係止片70を介して案内突起66eに伝達したときに、伝達されるトルクは案内突起66eを介して案内溝69cで受けられることになり、ボールねじ軸66及びボールねじナット65へのラジアル荷重の作用を確実に防止できる。
【0088】
なお、上記第2の実施形態においては、係止片70が円柱状である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、円筒状としたり、角柱状としたり、円周方向に延長させた円弧形状とすることもでき、任意の形状とすることができる。
【0089】
次に、本発明の第3の実施形態を図19及び図20について説明する。
この第3の実施形態では、係止部材を係止片に代えて螺旋スロープと係止面とで構成するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図19に示すように、ボールねじナット65の平歯車65c側端面に形成する係止部材を、ボールねじナット65の平歯車65c側端面65eにおける外周縁の1点から半径方向に内周側に所定幅とった始端72aから反時計方向の円周方向に行くに従い軸方向突出長が徐々に長くなるように形成した螺旋スロープ72と、この螺旋スロープ72の始端72aに対向する最長突出部72bから軸方向に始端72aに向かって軸方向に延長して形成された前記ボールねじ軸66の案内突起66eの円周方向端面に係止される係止面73とで構成したことを除いては第2実施形態の図17と同様の構成を有し、図17との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0090】
この第3の実施形態によると、図19及び図20に示すように、係止面73がボールねじ軸66の案内突起66eの円周方向端面に係止されているボールねじ軸66が後方側ストロークエンドにある状態からボールねじナット65を図19の矢印A方向に回転させることにより、図20に示すように、ボールねじナット65の回転によって、螺旋スロープ72の係止面73が案内突起66eから円周方向に離間する。これと同時に、案内突起66eは固定カバー69の案内溝69cに係合していてボールねじ軸66の回り止めをしているので、ボールねじ軸66は軸方向に前進し、案内突起66eも前進する。
【0091】
そして、ボールねじナット65が一回転すると、図20に示すように、ボールねじナット65の係止面73は案内突起66eの後端より離間しており、係止面73が案内突起66eの円周方向端面に当接することはなくなる。
その後、ボールねじナット65の回転が継続されて、ボールねじ軸66の案内突起66eの小径軸部66f側の端面が固定カバー69のストッパ部69dに当接する前の所望位置で、ボールねじ軸66の前進を停止する。
【0092】
このボールねじ軸66が前方側に移動している状態からボールねじナット65を図19で矢印Aとは反対方向に逆回転させると、ボールねじ軸66はその案内突起66eが固定カバー69の案内溝69cに係合しているので回り止めされて、ボールねじナット65の逆回転に伴って、軸方向に後退する。
そして、ボールねじ軸66の案内突起66eがボールねじナット65の係止面73に対向する(ストロークエンドの1回転手前)位置となったとき、前述したように、係合長Ld<リードLbの関係としているため、ボールねじナット65の逆転が許容される。
【0093】
このため、ボールねじ軸6がさらに後退して、案内突起66eの後端がボールねじナット65に形成した最長突出部72bの軌跡内に入り込むことになり、ついには、図20に示すように係止面73が案内突起66eの円周方向端面に当接することなる。この状態では、前述した第2の実施形態と同様に、案内突起66eの軸方向長さの半分程度が案内溝69cに係合して回り止め状態にあり、この案内突起66eに係止面73が当接するので、ボールねじナット65のこれ以上の逆回転が規制され、ボールねじ軸66が後方側ストロークエンドに達する。
【0094】
このように、上記第3の実施形態においても、ボールねじ軸66のボールねじナット65側へのストロークエンドがボールねじ軸66の回り止め機能を有する案内突起66eに、ボールねじナット65に形成した螺旋スロープ72の係止面73を係止するのでストッパ機能を発揮できる。
したがって、案内突起66eによって回り止め機能とストッパ機能とを兼ね備えることができ、ストッパ機能を別部材で構成する必要がなく、構成を簡易化することができるとともに、部品点数を削減して製品コストを低減することができる。
【0095】
また、ボールねじ軸66がストロークエンドに達したときに、ボールねじ軸の案内突起66eは案内溝69cに係合しており、この案内突起66eの案内溝69cから突出した突出部にボールねじナット65に形成した係止面73を当接する。このため、ボールねじナット65に伝達される入力トルクを、螺旋スロープ72の係止面73を介して案内突起66eに伝達したときに、伝達されるトルクは案内突起66eを介して案内溝69cで受けられることになり、ボールねじ軸66及びボールねじナット65へのラジアル荷重の作用を確実に防止できる。
【0096】
また、この第3の実施形態によると、係止面73が螺旋スロープ72の端面に形成されているので、係止面73の円周方向の力に対する剛性を大きくすることができ、係止面73が案内突起66eの円周方向端面に繰り返し当接して疲労破壊に至ることを抑制することができ、長寿命化することができる。
なお、上記第3の実施形態においては、螺旋スロープ72をボールねじナット65の円周分すなわち始端72aと係止面73を形成する最長突出部72bとが一致するように形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、螺旋スロープ12の傾斜を急にしてスロープ長をボールねじナット65のスロープ形成面の円周より短くしてもよい。
【0097】
また、上記第2及び第3の実施形態においては、ボールねじ軸66に角柱部66cを形成し、この角柱部66cに案内突起66eの角筒部66dを嵌合するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ボールねじ軸66に二面幅又はその一方の面でなる平坦面を形成し、この平坦面に案内突起を嵌合させるようにしてもよく、要はボールねじ軸66に軸方向に延長する案内突起66eを回転不能に固定するようにすればよいものである。
【0098】
次に、本発明の第4の実施形態を図21〜図23について説明する。
この第4の実施形態は、前述した第1の実施形態において、ガイド部材40を1つだけ形成するようにしたものである。
すなわち、第4の実施形態では、図21及び図22に示すように、前述した第2の実施形態において、係止片70を省略し、固定カバー69の案内溝69cに代えてガイド部材80を設け、さらにボールねじ軸66の案内突起66eを円柱状に形成してボールねじ軸66に形成した二面幅66gに設けたことを除いては前述した第2の実施形態と同様の構成を有し、図16及び図17との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0099】
ここで、ガイド部材80は、固定カバー69のボールねじ軸66に対向する内周面に軸方向に形成された支持孔81内に回動自在に配置されている。このガイド部材80は、例えば鋼で形成され、図22及び図23に示すように、円柱を断面で見て、長さが直径以下で且つ中心角θが180°以下となる弦で軸方向に切断して形成した円筒面80aとフラット面80bとを有して半円か又は半円より円に近い断面形状の柱体80cで構成されている。フラット面80bの中央部には、軸方向に延長し、深さが円筒面80aの中心軸を越える深さでボールねじ軸66の案内突起66eの外径より僅かに広い幅の案内溝82を形成している。この案内溝82にボールねじ軸66の案内突起66eを係合させる。そして、上記構成を有するガイド部材80は、上述した断面形状に形成した金型を使用して丸棒を引き抜き成形して長尺の成形体を形成し、この成形体を所定寸法に切断することにより形成される。
【0100】
また、固定カバー69に形成された支持孔81は、図23に示すように、収納部69a側から他端側に軸方向に延長して形成され、断面で見てガイド部材80の外形と略一致する内形を有する円筒面に形成され、この円筒面の前述したガイド部材80の弦に対応する位置が挿通孔69bに露出されている。ここで、支持孔81は、弦の中心角θが180°未満とされ、且つ弦の長さが直径よりも短く設定されてガイド部材80を挿通したときに、ガイド部材80が支持孔81から脱落して挿通孔69b内に突出することを防止している。
【0101】
そして、固定カバー69の支持孔81内にガイド部材80を収納部69a側から回動自在に挿通し、ガイド部材80の案内溝82を挿通孔69bに対向して配設し、その案内溝82内にボールねじ軸66の案内突起66eを係合させる。
次に、上記直動アクチュエータ10の組立方法は、固定カバー69にガイド部材80を挿通してボールねじ機構62を装着したハウジング63に装着することを除いては前述した第2の実施形態と同様に行うことができる。
【0102】
そして、直動アクチュエータ10の組立完了状態では、図21及び図22に示すように、ガイド部材80の案内溝82内に、ボールねじ軸66の案内突起66eが係合した状態となる。このとき、案内溝82と案内突起66eとは、図24(a)に示すように、案内溝82の幅が案内突起66eの直径より僅かに大きくなるように選定されている。
【0103】
この状態で、図示しない回転駆動源から平歯車65dを介して平歯車65cに動力を伝達することにより、ボールねじナット65を例えば図24(a)で見て時計方向に回動させる場合には、ボールねじナット65の回転力がボール67を通じてボールねじ軸66に伝達されることにより、ボールねじ軸66がボールねじナット65と同一方向の時計方向に回動しようとする。このとき、案内突起66eも図24(b)と同様に、時計方向に回動し、この案内突起66eの先端が案内溝82の右側面に係合する状態となり、点接触状態となる。
【0104】
ところが、ガイド部材80が固定カバー69の支持孔81に回動可能に支持されているので、案内突起66eが時計方向に回動したときに、案内突起66eの先端で案内溝82の右側面が時計方向に押圧され、この接触点がガイド部材80の中心軸より上側にあるので、案内突起66eの時計方向の回動に伴ってガイド部材80が図24(c)に示すように時計方向に案内突起66eの側面が案内溝82の右側面に倣って線接触状態となるまで回動し、線接触状態で、案内突起66eの時計方向の回動を規制する。
【0105】
このため、ボールねじ軸66は回り止めされて、ボールねじナット65を図22で見て時計方向に回動し続けることにより、ボールねじ軸66は図21で見て左方に移動する。このとき、ボールねじ軸66の軸方向の移動は、案内突起66eと案内溝82とは図24(c)の線接触状態を維持した状態で行われる。したがって、案内突起66eが案内溝82に線接触状態で接触することにより、長期間の使用によっても案内突起66e及び案内溝82に偏磨耗を生じることを確実に防止できる。
【0106】
同様に、ボールねじ軸66に図22で見て反時計方向の回転力を伝達したときには、案内突起66eの左側面が案内溝82の左側面に線接触状態で接触して軸方向に移動されることになり、同様に案内突起66e及び案内溝82に偏磨耗を生じることを確実に防止できる。
【0107】
このように、上記第4の実施形態によると、案内突起66eとガイド部材80に形成した案内溝82とを線接触状態を維持しながら軸方向に移動させることができるので、偏磨耗の発生を確実に防止できる。しかも、ガイド部材80はこれを装着する固定部としての固定カバー69とは別部材で構成されているので、耐磨耗性が高い部材を使用してガイド部材80を形成することにより、高耐磨耗性のガイド部材とすることができる。この場合、高耐磨耗性の材料はガイド部材80の部分だけでよく、固定カバー69全体を高耐磨耗性部材で形成する必要がないので、製造コストを低コスト化することができるとともに、カムフォロアを使用する必要がないので、案内突起66eが大形化することもない。
【0108】
さらに、ガイド部材80を、高耐磨耗性を有する部材で形成する場合に代えて、案内突起66eと摺接する案内溝82に耐磨耗性及び摺動性を向上させる表面処理を施すようにしても良く、この場合でもガイド部材80にのみ表面処理を施せばよいので、表面処理コストを低減することができる。
また、上記第4の実施形態においては、ガイド部材80を支持する支持孔81の弦の中心角θを180°未満に設定し、且つ弦の長さを支持孔81の直径より短く設定したので、つまり支持孔81の断面形状を、半円を越える形状としたので、ガイド部材80を支持孔81で支持する組付け時に、ガイド部材80が支持孔81からボールねじ軸66側に脱落することを確実に防止できる。
【0109】
なお、上記第4の実施形態においては、ガイド部材80の円筒面の径が軸方向に一定である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図25に示すように、ガイド部材80を大径部80dと、この大径部80dに連接する小径部80eとで段付き円筒構造とすることもできる。このように、ガイド部材80を段付き円筒構造とする場合には、焼結成形によってガイド部材80を形成する。
【0110】
上記のようにガイド部材80を段付き円筒構造とする場合には、固定カバー69に形成する支持孔81についても図26及び図27に示すように、ガイド部材80の大径部80dを収納する大径部81aと、ガイド部材80の小径部80eを収納する奥側の小径部81bと、大径部81a及び小径部81b間を連結するテーパー部81cとで構成することが好ましい。この構成とすることにより、固定カバー69を例えばダイキャスト成形する場合に、支持孔81の大径部81a及び小径部81b間を鋳肌(抜きテーパー)とすることで加工部位を大径部81a及び小径部81bのみとして単純円筒面とする場合よりも減らし、加工精度の向上を図れる。
【0111】
また、上記第4の実施形態においては、図21に示すように、固定カバー69の挿通孔69bの上方側に支持孔81を形成した場合について説明したが、ガイド部材80の設置位置は挿通孔8bの円周上の任意の位置に形成することができる。
また、上記第4の実施形態においては、案内突起66e及びガイド部材80を1組形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、案内突起66e及びガイド部材80の組を複数箇所に形成するようにしてもよい。
【0112】
また、上記第4の実施形態においては、案内突起66eを円柱状とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、楕円柱、角柱などの任意の形状とすることができる。さらに、案内突起66eを二面幅66gに形成した場合について説明したが、二面幅66gである必要はなく、案内突起66eを形成する一方のフラット面を残し、他方のフラット面を円筒面とすることもできる。
【0113】
また、上記第4の実施形態においては、固定カバー69に支持孔81を形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ボールねじナット65の平歯車65cと軸受64との配置を逆関係すなわち平歯車65cの位置に軸受64を配置し、軸受64の位置に平歯車65cを配置し、固定カバー69を固定部としてのハウジングとし、ハウジング63を固定カバーとするようにしてもよい。この場合には固定部としてのハウジングにガイド部材80を回動可能に支持する支持孔81を形成する。
【0114】
さらには、図21の構成において、案内突起66eをボールねじ軸66の大径部66bの小径軸部66fとは反対側に形成し、固定部としてのハウジング63の中心開口63aの内周面にガイド部材80を回転自在に支持する支持孔を形成するようにしてもよい
【0115】
また、上記第1〜第4の実施形態においては、ボールねじナット22,65を回転駆動源によって回転駆動して、ボールねじ軸24,66を直線運動要素とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上記とは逆にボールねじ軸24,66を回転駆動源によって回動する回転運動要素とし、ボールねじナット22,65を直線運動要素とした場合にも本発明を適用することができる。
また、上記第1〜第4の実施形態では、ガイド部材40,80の材質を鋼にした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、合成樹脂やセラミック等で構成することもでき、任意の材質とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
ボールねじ機構の軸方向移動要素に形成した突起を係合させる回り止め用の溝を円筒状のガイド部材に形成し、このガイド部材を固定部に回動可能に支持するようにしたので、突起を案内する案内溝が突起の傾きに倣うことになり、長期の使用による偏磨耗の発生を防止できる直動アクチュエータを提供することができる。
【符号の説明】
【0117】
10…直動アクチュエータ、11A…主ハウジング、11B…副ハウジング、12…電動モータ、13…モータ装着部、14…ボールねじ機構装着部、15…ピニオンギヤ、16…ピニオン収納部、17…ボールねじ機構収納部、18…ブリーザ、20…ボールねじ機構、21a,21b…転がり軸受、22…ボールねじナット、23…ボール、24…ボールねじ軸、25a…ボールねじ溝、25b…循環溝、25c…インボリュートスプライン軸部、25d…ストッパ部、26…ドリブンギヤ、26a…インボリュートスプライン孔部、31…ボールねじ部、32…インボリュートスプライン軸部、33…連結軸部、34…回り止め部材、35…円筒部、35a…インボリュートスプライン孔部、36…案内突起、36a…突出部、37…案内突起、40…ガイド部材、40a…円筒面、40b…フラット面、40c…案内溝、40d…係合溝、41a,41b…支持孔、41c…突条、50…シール、61…直動アクチュエータ、62…ボールねじ機構、63…ハウジング、64…軸受、65…ボールねじナット、66…ボールねじ軸、66a…ボールねじ溝、66b…大径部、66c…角柱部、66d…角筒部、66e…案内突起、66f…小径軸部、66g…二面幅、67…ボール、69…固定カバー、70…係止片、71…支持孔、72…螺旋スロープ、73…係止面、80…ガイド部材、80a…円筒面、80b…フラット面、80c…柱体、80d…大径部、80e…小径部、81…支持孔、81a…大径部、81b…小径部、81c…テーパー部、82…案内溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動要素及び直線運動要素を有し、前記回転運動要素に伝達された回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構を備え、
前記ボールねじ機構は、前記直線運動要素に設けた半径方向に突出する案内突起と、前記直線運動要素と対向する固定部に配設されて前記案内突起と係合して当該案内突起を軸方向に案内する案内溝とを有して、前記直線運動要素の回り止めを行う構成とされ、
円筒状の外周面を有するガイド部材に前記案内溝を軸方向に沿って形成し、前記ガイド部材を前記固定部の前記直線運動要素に対面する位置に軸方向に形成した支持孔に回動自在に保持したことを特徴とする直動アクチュエータ。
【請求項2】
前記ガイド部材は、半円形以上の角度を有する断面形状を有し、前記支持孔は半円形を越える角度の断面形状を有することを特徴とする請求項1に記載の直動アクチュエータ。
【請求項3】
前記ガイド部材は、半円形以上の角度を有する円筒面とその端部を結ぶ平面部とで構成し、前記平面部に前記案内溝を形成したことを特徴とする請求項2に記載の直動アクチュエータ。
【請求項4】
前記ガイド部材を、引き抜き加工によって形成した長尺部材を所定の長さに切断して形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。
【請求項5】
前記ガイド部材は、外形を大径部と、小径部とから形成し、前記支持孔は、前記ガイド部材の前記大径部及び前記小径部とに係合する大径孔部と小径孔部と前記大径孔部及び前記小径孔部とを連結するテーバー部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。
【請求項6】
前記ガイド部材は、焼結成形品で構成したことを特徴とする請求項5に記載の直動アクチュエータ。
【請求項7】
前記ガイド部材には、耐磨耗性及び摺動性を向上する表面処理を施したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。
【請求項8】
前記ガイド部材には、前記円筒面に、前記支持孔の内周面に形成し円周方向の凸条に係合する凹溝を形成したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。
【請求項9】
前記案内突起は、前記直線運動要素のストロークエンドで、前記案内溝と係合しながら所定長さ突出する突出部を有し、該突出部に前記回転運動要素に設けた係止部を係止することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。
【請求項10】
前記直線運動要素にその中心軸を挟む対称位置に一対の前記案内突起を形成し、前記固定部の前記直線運動要素の中心軸を挟む対象位置に一対の前記支持孔を形成し、一対の前記支持孔に一対の前記ガイド部材を個別に回動自在に保持し、前記一対のガイド部材の案内溝に前記一対の案内突起を個別に係合したことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。
【請求項11】
前記案内突起は、筒状体の外周面に形成され、該筒状体を、前記直線運動要素に形成した軸部に、円周方向の回動を不能とし且つ軸方向に位置調整した状態で固定したことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。
【請求項12】
前記案内突起は、内周面にスプライン穴を形成した円筒体の外周面に形成され、該円筒体を、前記直線運動要素に、前記スプライン穴を当該直線運動要素に形成されたスプライン軸に結合した状態で固定したことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の直動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−100921(P2013−100921A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−46452(P2013−46452)
【出願日】平成25年3月8日(2013.3.8)
【分割の表示】特願2012−512668(P2012−512668)の分割
【原出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】