説明

直動回転アクチュエータ

【課題】 直動回転アクチュエータを組立て性のよい、軽量、コンパクトなものとする。
【解決手段】直動回転アクチュエータを、歯付ベルト・プーリにより連結され、互いに左右対称である1組のボールねじと、歯付ベルト・プーリにより連結された1組のボールスプラインと、一方のボールねじと一方のモータとを連結する歯付ベルト・プーリと、一方のボールスプラインと他方のモータとを連結する歯付ベルト・プーリと、一方のボールねじと一方のボールスプラインとにより一体で支持される直動軸と、で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直動と回転の自由度に比較して少ないアクチュエータ個数で、回転と直動の2つの動作を精密に行う直動回転アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の直動回転アクチュエータは、例えば、電子部品実装装置の装着ヘッドに関するものがあり、1個のモータでボールねじを駆動して直動の位置決めを行い、もう1個の別のモータで回転を制御するように構成している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、他の構成として、リニアモータを並列配置して各軸の直動の位置決めは1軸あたり1個のモータで駆動するようにし、回転はベルト連結によって1個のモータで複数軸を駆動できるようにしている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−174290号公報(図1)
【特許文献2】特開2006−067771号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の直動回転アクチュエータは、1個の直動自由度に対してモータが少なくとも1個必要となるため、アクチュエータの並列数が増えるとモータ電力線やセンサの配線数が多くなり、組み立て性が悪くなる等の課題があった。
【0006】
また、電子部品実装装置の装着ヘッドの用途では、上記の直動回転アクチュエータを並列に複数並べて前記の装着ヘッドを構成し、これをXY移動装置で駆動するようにしている。このような用途では、XY移動装置の移動速度が生産性に大きく影響するため、XY移動装置に搭載する装着ヘッドはできるだけ軽量であることが好ましい。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、組み立て性のよい、軽量、コンパクトな直動回転アクチュエータを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る直動回転アクチュエータは、複数のモータと、ボールねじと、ボールスプラインと、歯付ベルトとプーリと、を備える直動回転アクチュエータにおいて、上記プーリを介して、上記歯付ベルトにより連結され、互いに左右対称である少なくとも1組のボールねじと、上記プーリを介して、上記歯付ベルトにより連結された少なくとも1組のボールスプラインと、上記プーリを介して、上記1組のボールねじのうち一方のボールねじと、上記複数のモータのうち一方のモータとを連結する上記歯付ベルトと、上記プーリを介して、上記ボールスプラインのうち一方のボールスプラインと、上記複数のモータのうち他方のモータとを連結する上記歯付ベルトと、上記1組のボールねじのうち、1つのボールねじと、上記1組のボールスプラインのうち、1つのボールスプラインとにより、一体で支持される直動軸と、を有するように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、歯付ベルト及びプーリで連結した1組の直動軸がモータの回転方向に対して、装着ヘッドの移動可能な方向であるXY面に垂直な方向であるZ方向に(あるいは図の上下方向に)逆動作するようにしたことにより、1組の直動軸を1個のモータでZ方向に位置制御でき、直動軸の数に対してモータの数を減らすことができるため、組み立て性がよく、軽量でコンパクトな直動回転アクチュエータを得ることができるといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の直動回転アクチュエータを有するユニットを搭載したXY移動装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による直動回転アクチュエータの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1による直動回転アクチュエータの軸の直動動作を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1による直動回転アクチュエータの軸の直動動作を説明するための他の図である。
【図5】本発明の実施の形態1による直動回転アクチュエータの構成を示す別の図である。
【図6】本発明の実施の形態1の直動回転アクチュエータを複数並べたユニットを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1の直動回転アクチュエータを複数並べたユニットを搭載したXY移動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の直動回転アクチュエータを有するユニット23を搭載したXY移動装置29を示す図である。図において、Y軸機構28には、ユニット23がフレーム27に搭載されており、Y軸直動機構(図示せず)によって、Y軸機構28をY軸方向に移動させることができる。また、架台24に設置されたX軸直動機構25、26によって、Y軸機構28全体をX軸方向に移動することができる。なお図中の細い矢印は3次元の方向X、Y、Zを規定したものであり、太い矢印については、Y軸方向の太い矢印はユニット23の移動可能な方向を、X軸方向の太い矢印はフレーム27の移動可能な方向を示している。
【0012】
また、図2は、本発明の実施の形態1による直動回転アクチュエータの構成を示す図である。直動回転アクチュエータ1は、左右ねじの向きは異なるが対称形状のボールねじ(以下では「左右対称なボールねじ」と呼ぶ)2、3とボールスプライン4、5とにより、各々一体に支持され、左右対称なボールねじの各ボールねじ、および各ボールスプラインと一体に連結された2つの直動軸6、7を有する。さらに、軸受8によって支持されたボールねじのナット9、10が回転し、ボールねじのナット9、10とボールねじ2、3とが相対的な回転運動することによって、直動軸6、7は図2の上下方向(Z方向)に移動可能に構成されている。
【0013】
上記において、ボールねじ2とボールねじ3は、それぞれ異なる向きにねじが切られている。ボールねじのナット9とボールねじのナット10もそれぞれに組み合わせるボールねじ2、3のねじの向きにあわせて異なる向きにねじが切られているので、同一方向に回転させた場合に直動軸6、7は、逆方向に動作する(移動する)ようになっている。
【0014】
また、ボールねじのナット9とボールねじのナット10(の外周表面)には、ベルト伝達のための歯が切られている(図示せず)。ボールねじのナット9とボールねじのナット10とを、歯付ベルト22で連結し、歯付ベルト11を介してボールねじのナット10とプーリ12とを連結している。ここで、直動軸6、7は各々、軸受8と軸受21を介して、各々、ボールねじのナット9とボールねじのナット10に支持されており、プーリ12はモータ13に直結しているので、モータ13を回転させることで、直動軸6と直動軸7が、同一方向に同一回転速度で回転できるようにしている。
【0015】
さらに、ボールスプラインのナット14、15(の外周表面)にも、ベルト伝達のための歯が切られている(図示せず)。ボールスプラインのナット14とボールスプラインのナット15は、歯付ベルト16で連結され、歯付ベルト17を介してボールスプラインのナット15とプーリ19とが連結されている。プーリ19はモータ18に直結しているので、モータ18を回転させることで、ボールスプラインのナット14、15とが歯付ベルト16で連結されていることにより、ボールスプラインのナットに取付けられた軸受を介して直動軸6と7とが同一方向に同一回転速度で回転できるようにされている。
【0016】
このような構成にすれば、モータ13とモータ18の回転角度と回転角速度をそれぞれ独立に制御することで、直動軸6、7の上下方向位置は、例えば、モータ13 1個で制御できる。また、モータ18とモータ13を同一方向に回転させれば、直動軸6、7の上下方向位置を変えずに、直動軸6、7の回転角度を制御できる。
図2のモータ13、18の軸上に示した矢印は各々のモータ軸(あるいは歯付ベルト)の回転方向の一例を示している。図のように回転させることで、直動軸6、7は上下方向の位置を保持したまま、直動軸6、7の軸上に示した矢印の向きに回転することができる。
【0017】
また、図3、図4のように、モータ18を静止させて(各図において、歯付ベルト17の回転方向が記載されていない)、モータ13を回転させる(各図において、モータ13の回転による歯付ベルト11の回転方向を示す矢印の記載がされている。)ことで、直動軸6、7を回転角度を保持したままで上下動させることができ、歯付ベルト11の回転方向を、図3と図4に示すように互いに逆方向にすることにより、直動軸6、7を上下方向に互いに逆方向に移動させることができる。
【0018】
また、モータ13、モータ18を、各々、独立に回転制御すれば、直動軸6、7の回転角度を変化させつつ、上下動させることができるので、図1〜図3に示したように、直動軸6、7の直動あるいは回転の動作を各々単独で行う場合に比べて位置決め時間の短縮が可能である。
【0019】
このように、歯付ベルトおよびプーリで連結した1組の直動軸がモータの回転方向に対して上下逆動作するようにしたことにより、1組の直動軸を1個のモータで上下に位置制御できるので、直動軸の数に対してモータの数を減らすことができる。
【0020】
また、上述のように、モータの数が減ることで、センサ配線、モータに電力を供給する電力線を減らすことができるので、構成が簡素となり、組み立て性のよい、軽量、コンパクトな直動回転アクチュエータを得ることができる利点がある。
【0021】
また、ボールねじとボールスプラインで直動軸を支持することによって、直動案内機構を直動軸上に配置できるので、従来の直動アクチュエータに比べて、よりコンパクトに構成できる利点がある。
【0022】
なお、以上においては、モータ13とモータ18が直動回転アクチュエータの1つの凹部に互いに近接して配置された場合を例に示したが、モータの取付け易さを考慮して、図5に示すように、一方のモータを凹部とは異なる別位置に配置しても、同様の効果が得れれることは、言うまでもない。
【0023】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について図6、図7を用いて説明する。
以上説明したように、従来は、モータ1軸をモータ2個で回転制御および直動制御していたが、本発明ではモータの数を減らしたこと、および直動案内機構を直動軸上に配置したことによって、図6に示したように、直動アクチュエータ6、7を複数個、並列配置したユニット23として構成した場合でも、直動2軸をモータ2個で回転位置と直動位置を制御できるようにしても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらにモータを配置できる空間の余裕を増やすことができる。このように配置すれば、隣り合うモータの距離を大きく取れ、発熱の影響を受けにくくなる、といった別の効果も得られる。
【0024】
また、実際の電子部品実装装置の装着ヘッドの用途では、図7のように、直動回転アクチュエータを並列に複数並べて装着ヘッドを構成し、これをXY移動装置で駆動する場合が多い。このような用途では、XY移動装置の移動速度が生産性に大きく影響する。本発明においては、従来よりモータ数を減らすことができるため、XY移動装置に搭載する装着ヘッドを軽量にできることから、従来よりXY移動装置の移動速度を速めることができるといった利点もある。
【0025】
図7において、XY移動装置は、工作機械や電子部品実装装置の装着ヘッドでよく用いられるXY移動装置の一般的な構成例を示している。直動アクチュエータを複数搭載したユニット23をフレーム27に搭載したY軸機構28を有し、Y軸直動機構(図示せず)によって、Y軸機構28をY軸方向に移動させることができる。X軸直動機構25、26によってY軸機構28全体をX軸方向に移動させることができるようにしている。なお図中の各矢印の説明は、図1と同様であるので、ここでは詳細説明は省略する。
【0026】
なお、図示しないが、直動回転アクチュエータを並列に複数並べて装着ヘッドを構成した場合でも、直動軸7にかけた歯付ベルト17を複数軸にまたがせて連結することが可能であることは容易に想像できる。すなわち、図7に示したように、本構成を並列に並べた場合であっても、特許文献2の場合と同様に、モータの数を直動軸に対して大幅に減らすことができる。ここで、特許文献2では直動軸1個に対して直動用のモータが1個必要になるが、本発明では直動軸2個に対して直動用モータが1個でよい。
【符号の説明】
【0027】
1 直動回転アクチュエータ、2、3 ボールねじ、4、5 ボールスプライン、6、7 直動軸、8、21 軸受、9、10 ボールねじのナット、11、16、17、22 歯付ベルト、12、19 プーリ、13、18 モータ、14、15 ボールスプラインのナット、23 ユニット、24 架台、25、26 X軸直動機構、27 フレーム、28 Y軸機構、29 XY移動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータと、ボールねじと、ボールスプラインと、歯付ベルトとプーリと、を備える直動回転アクチュエータにおいて、
上記プーリを介して、上記歯付ベルトにより連結され、互いに左右対称である少なくとも1組のボールねじと、
上記プーリを介して、上記歯付ベルトにより連結された少なくとも1組のボールスプラインと、
上記プーリを介して、上記1組のボールねじのうち一方のボールねじと、上記複数のモータのうち一方のモータとを連結する上記歯付ベルトと、
上記プーリを介して、上記1組のボールスプラインのうち一方のボールスプラインと、上記複数のモータのうち他方のモータとを連結する上記歯付ベルトと、
上記1組のボールねじのうち、一方のボールねじと、上記1組のボールスプラインのうち、一方のボールスプラインとにより一体で支持される直動軸と、
を有する直動回転アクチュエータ。
【請求項2】
前記一方のモータと他方のモータのうち、片方のモータの静止を含み、各モータを各々独立に回転制御することを特徴とする請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項3】
前記回転制御は、回転角度、回転角速度、回転方向の制御のうち、少なくとも1つの制御方法による制御であることを特徴とする請求項2に記載の直動回転アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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