説明

直動玉軸受、直動玉軸受用の支持軌道部材、及び支持軌道部材の製造方法、並びに支持軌道部材の製造のための装置

【課題】直動玉軸受を改善して、該直動玉軸受を経済的に製造することができ、該直動玉軸受は十分な支持力若しくは支持作用を有し、かつ相対運動可能な構成部分間の整合誤差を十分に補償できるようにする。
【解決手段】軸状のガイドレール2を長手方向移動可能に支承する直動玉軸受1であって、スリーブ状の保持器4を備え、保持器の切欠き5内にボール循環部分9を設け、ボール循環部分9はボール90の受容のための支持区分を有し、ボールは、保持器内に装着された支持軌道部材8に転動可能に支え、支持軌道部材は、ガイドレールを取り囲む構成部分3の内面での支持のために、外側へ凸状に湾曲された半径方向の外面を有している形式のものにおいて、外面はリブ状の隆起部によって形成されており、隆起部は支持軌道部材の長手方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸状のガイドレールを該ガイドレールの収容のための構成部分内に長手方向移動可能に支承する直動玉軸受であって、スリーブ状の保持器を備えており、該保持器は円周方向に相前後して配置された複数の切欠きを有しており、該切欠き内にボール循環部分を設けてあり、該各ボール循環部分(ボール循環要素又はボール循環機構)は、前記ガイドレールに転動可能に接触するボール(球体又は鋼球)の受容のための少なくとも1つの支持区分(循環軌道区分)を有しており、前記ボール循環部分内の前記ボールは付加的に、前記保持器内に直接若しくは間接的に装着された支持軌道部材に転動可能に支えられており、前記支持軌道部材(支持軌道構成要素)は、該支持軌道部材を前記ガイドレールの収容のための前記構成部分の内面(内周面)で支持するために、外側へ凸状に少なくとも1つの方向で湾曲された少なくとも1つの半径方向の外面を有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
前記形式の直動玉軸受は、往復運動式の機械部分の支承のために知られている。往復運動式の機械部分(機械構成要素)は、例えば工作機械の支承ケーシング若しくは軸受ケーシングや駆動スピンドルである。直動玉軸受(リニアボールベアリング)は、運動方向での摩擦の少ない支承を保証するものである。相対的に運動可能な構成部分間に小さな整合誤差(両方の構成部分の軸線間の同軸誤差又は心ずれ若しくは平行誤差)のある場合にも十分な機能を保証するために、特殊な構成部分に用いられる直動玉軸受の支持軌道部材(軌道路が形成された支持部材)は、ガイドレール(案内レール)を取り囲む構成部分若しくはケーシングの内面(支持面)で該支持軌道部材を支持するために、曲面を有し、つまり直動玉軸受の半径方向で見て外側へ凸状に湾曲され若しくはふくらまされた少なくとも1つの外面(円筒面又は円弧面若しくは球面)を有している。これによって、支持軌道部材は、ガイドレールを取り囲む構成部分の支持面に対して傾倒運動若しくは揺動運動できるようになっており、その結果、構成部分間の整合誤差は補償されるようになっている。
【0003】
支持軌道部材の曲面の成形には、高いコストを必要としている。曲面の成形は、一般的に支持軌道部材を所望の方向で曲げることによって行われている。この場合には、支持軌道部材の、曲げ加工によって凸状に湾曲された外面と相対して位置する走行軌道路は、所定の走行軌道路品質を得るために、曲げ加工に続いて研削仕上げされねばならない。必要に応じて支持軌道部材の硬化作業若しくは焼入れ作用も行われている。
【0004】
冒頭に述べた形式の直動玉軸受は、国際公開第01/11251A1号パンフレット(独国特許出願公開第19937278A1号明細書)により公知である。該直動玉軸受の支持軌道部材は、2つの方向で外側へ凸状に湾曲された外面を有していて、したがって、直動玉軸受を取り囲む機械ケーシングの孔内周面に沿って良好に旋回運動又は揺動運動若しくは転動運動できるようになっている。支持軌道部材自体は、ケーシング状の受容部分内に保持(受容)されており、該受容部分(受容構成要素)はスリーブ状の保持器(ケージ)の切欠き(開口部)内に半径方向で装着可能及び取り外し可能に配置されている。
【0005】
独国特許出願公開第3910469A1号明細書に記載の直動玉軸受においては、保持器の切欠き内に同じく支持軌道部材をはめ込むようになっている。支持軌道部材は保持器の受容のための支承ケーシング孔の内周面での揺動可能な支持のために形成(規定又は画成)された外面を有しており、該外面は、揺動軸線の領域に画定された中央領域から支持軌道部材の端部に向かって保持器軸線に対して半径方向内側へ降下しており、つまり下り勾配を有している。
【0006】
独国特許出願公開第1949182A1号明細書にも、直動玉軸受を開示してあり、該直動玉軸受においても支持軌道部材は、その長手方向で中央から端部に向かって下り傾斜を有していて、保持器の切欠き内にはめ込まれている。支持軌道部材の中央の部分は、旋回軸を形成していて、これによって傾倒運動若しくは揺動運動を可能にしていて、相対的に運動可能な構成部分間の角度誤差、つまり同軸誤差又は心ずれ若しくは平行誤差を補償するようになっている。
【0007】
独国特許出願公開第19954387A1号明細書も、軸の支承(軸受)のための直動玉軸受を開示しており、該直動玉軸受の支持軌道部材の半径方向の外面(表面)は湾曲して形成されており、これによって支持軌道部材は傾倒運動に基づき軸の寸法誤差を補償するようになっている。
【0008】
米国特許第5558442号明細書に記載の直動玉軸受にいては、該直動玉軸受の支持軌道部材はその中央の領域に、長手方向に湾曲された半径方向の外面を有しており、この場合に湾曲は支持軌道部材の全幅にわたって延びている。
【0009】
本発明はさらに、直動玉軸受に用いられる支持軌道部材、及び該支持軌道部材の製造方法、並びに該支持軌道部材の製造のための装置(エンボス加工装置若しくは型押し装置)に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第01/11251A1号パンフレット(独国特許出願公開第19937278A1号明細書)
【特許文献2】独国特許出願公開第3910469A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第1949182A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19954387A1号明細書
【特許文献5】米国特許第5558442号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の直動玉軸受を改善して、該直動玉軸受を経済的に製造することができ、該直動玉軸受は十分な支持力若しくは支持作用(荷重若しくは負荷を支える力又は特性)を有し、かつ相対運動可能な構成部分間の整合誤差を十分に補償できるようにすることである。さらに、経済的に、つまり安価に製造可能な支持軌道部材、支持軌道部材の製造のための方法、並びに支持軌道部材用の素材の塑性変形加工、例えばエンボス加工若しくは型押し加工のための適切な装置(金型)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明の構成では、支持軌道部材の少なくとも1つの外面(表面)は、リブ状(ウエブ状若しくは条片状)の少なくとも1つの隆起部(突起部)によって形成されており、該隆起部は支持軌道部材の長手方向(縦軸線方向)に延びている。直動玉軸受の支持軌道部材の本発明に基づくこのような構成により、支持軌道部材の支持力若しくは支持作用をほとんど損なうことなしに、支持軌道部材の外面の必要な球面若しくは曲面を簡単かつ経済的に成形できるようになっている。リブ状の隆起部によって、加工成形すべき面の面積、ひいては成形加工力は減少されている。したがって、支持軌道部材を備える直動玉軸受は経済的に、ひいては安価に製造できるようになっている。
【0013】
本発明の1つの実施態様では、リブ状の隆起部は支持軌道部材の幅の方向で中央の領域に配置されおり、かつ軸線方向若しくは長手方向で、有利には支持軌道部材の全長にわたって延びている。このような構成では、リブ状の隆起部による均一な負荷分配若しくは荷重分配を達成している。
【0014】
支持軌道部材とガイドレールの受容のための構成部分との間の十分な負荷分配若しくは力伝達を保証するために、有利な実施態様では、リブ状の隆起部は、支持軌道部材の幅の70%よりも小さい寸法の幅、有利には5%〜35%の間の寸法の幅を有しており、つまり、リブ状の隆起部の幅は、支持軌道部材の幅の70%よりも小さく、有利には5%〜35%である。
【0015】
リブ状の隆起部の球面状の外面を本願発明に基づく製造方法でエンボス加工(若しくは型押し加工)によって応力なしに成形する場合に、極めて有利な実施態様では、リブ状の隆起部に沿って少なくとも1つの空所若しくは少なくとも1つの溝状の凹設部を設けて、つまり形成してある。さらに理想的な実施態様では、リブ状の隆起部の両側にそれぞれ有利には複数の空所若しくは有利には複数の溝状の凹設部を形成してある。このような構成により、リブ状の隆起部の球面状の外面の成形のエンボス加工は極めて容易に行われ、それというのはエンボス加工により押し退けられる材料が、空所若しくは溝状の凹設部として形成された空間若しくはスペース内へ流れ込むようになっているからである。
【0016】
支持軌道部材の支持力を高めるために有利な実施態様では、リブ状の隆起部の両側に沿って、それぞれ別のリブ状の少なくとも1つの隆起部を形成してあり、該隆起部は複数の空所若しくは複数の溝状の凹設部を互いに離間している。これによって、必要なエンボス加工力のさらなる減少を達成しており、空所若しくは溝状の凹設部は、エンボス加工により押し退けられる材料の受容のための空間として用いられている。
【0017】
本発明のさらに有利な実施態様では、支持軌道部材はケーシング状の受容部分(ボール循環用ケーシング)内に装着され、つまりはめ込まれており、該受容部分は保持器の切欠き(受容開口部)内に装着されている。
【0018】
本発明はさらに、直動玉軸受に用いられる支持軌道部材に関し、該支持軌道部材は、外側へ凸状に少なくとも1つの方向で湾曲された少なくとも1つの半径方向の外面を有し、かつ該湾曲された少なくとも1つの外面に相対して位置していて直動玉軸受の支持作用のあるボールを少なくとも部分的に受容するための走行軌道路を有している形式のものにおいて、本発明に基づき前記湾曲された少なくとも1つの外面はリブ状の少なくとも1つの隆起部によって形成されており、該隆起部は前記支持軌道部材の長手方向に延びている。本発明のこのような構成により、直動玉軸受に用いられる支持軌道部材の外面の必要な球面若しくは曲面は、支持軌道部材の支持力若しくは支持作用をほとんど損なうことなしに、簡単かつ経済的に成形できるようになっている。
【0019】
リブ状の隆起部は支持軌道部材の中央の領域に配置されている。この場合に有利な実施態様では、リブ状の隆起部は、支持軌道部材の幅の70%よりも小さい寸法の幅、有利には5%〜35%の間の寸法の幅を有している。
【0020】
極めて有利な実施態様では、リブ状の隆起部に沿って、つまり有利にはリブ状の隆起部に平行に少なくとも1つの空所若しくは少なくとも1つの溝状の凹設部を設けてある。
最適な実施態様では、リブ状の隆起部の両側にそれぞれ有利には複数の空所若しくは有利には複数の溝状の凹設部を形成してある。支持軌道部材の支持力を高めるために有利な実施態様では、リブ状の隆起部の両側に沿って、それぞれ別のリブ状の隆起部を形成してあり、該隆起部は複数の空所若しくは複数の溝状の凹設部を互いに離間している。
【0021】
上記課題を解決するために、支持軌道部材のための本発明に基づく製造方法では、
素材を形成し、有利には成形材若しくは形材(異形材若しくは異形品)として素材を形成し、該素材は、該素材の長手方向に延びるリブ状の少なくとも1つの隆起部を有しており、前記リブ状の隆起部を、該リブ状の隆起部が外側へ凸状に少なくとも前記長手方向で、つまり有利には長手方向でも横方向でも湾曲された少なくとも1つの外面を有するように、エンボス加工するようになっている。
【0022】
本発明に基づく上記製造方法は、減少された塑性加工力で極めて経済的に行われる。必要な塑性変形力(エンボス加工力又は型押し力)を減少できることにより、支持軌道部材の背面、つまり走行軌道路のある面を変形させてしまい、ひいては支持軌道部材を不良品にしてしまう若しくは支持軌道部材の後加工を必要とするようなおそれはなくなっている。
【0023】
塑性変形力をできるだけ小さくするために、塑性変形力(エンボス加工力)は、もっぱら、素材の中央の領域に配置されたリブ状の隆起部上にのみ加えられる。
【0024】
支持軌道部材用の素材の塑性変形加工のための本発明に基づく製造装置において、該製造装置は構成部分として、少なくとも1つのエンボス金型(雌金型若しくは下型)を含んでおり、該エンボス金型は、支持軌道部材若しくはその素材の、玉軸受のボールのための走行軌道路を有する面に嵌合した状態で該面を支持する、つまり該面に形状結合して該面を支持するようになっており、さらに少なくとも2つの側方金型部分(側方の金型部分)、少なくとも2つの端面金型部分(端面側の金型部分)及び少なくとも1つのエンボス加工雄型(加圧用上型)を含んでおり、前記エンボス加工雄型は前記素材に向けられた面を、エンボス加工力(型押し力)がもっぱら前記支持軌道部材用の素材のリブ状の隆起部にのみ作用するように形成されている。
【0025】
次に本発明を図示の実施例に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に基づく直動玉軸受の斜視図である。
【図2】本発明に基づく支持軌道部材の装着されたボール循環用ケーシングの斜視図である。
【図3】本発明に基づく支持軌道部材の第1の実施例の斜視図である。
【図4】図3の矢印IVの方向で見た端面図である。
【図5】図4の矢印Vの方向で見た側面図である。
【図6】本発明に基づく支持軌道部材の第2の実施例の斜視図である。
【図7】図6の矢印VIIの方向で見た端面図である。
【図8】図6の矢印VIIIの方向で見た側面図である。
【図9】本発明に基づく製造装置の概略的な斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施例の支持軌道部材の加工前の素材の斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施例の支持軌道部材の加工前の素材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、直動玉軸受1を示してある。直動玉軸受1は、ガイドレールとしての軸2をケーシング孔3内に移動可能(スライド可能若しくは摺動可能)に支承するために用いられており、前記軸及びケーシング孔は、本発明の原理を理解するために破線によって概略的に示してある。直動玉軸受1は、スリーブ状の保持器4を有しており、該保持器は全周にわたって分配されていて結合ウエブ(条片状結合部分)6によって互いに離隔された複数の切欠き5を有している。切欠き5は平面図で見て長方形の形状(基本形状)を有し、つまり実質的に長方形に形成されていて、ボール循環用ケーシング7の取り外し可能な受容のために用いられている。図面に示してあるように、保持器4は実施例では5つのボール循環用ケーシング7を備えており、この場合に各ボール循環用ケーシング7はそれぞれ2つのボール循環部分9を含んでいる。各ボール循環部分9は、軸2に転動可能に接触していて支持作用のあるボール90の案内のための支持区分、支持区分(ボール循環路区分)の出口から入口へ戻されるボール(図示省略)の案内のための戻り区分(ボール循環路区分)、及び支持区分と戻り区分とをつなぐ図示省略の2つの転向区分(湾曲部分)から成っており、エンドレスな循環路を形成している。
【0028】
図2に示してあるように、各ボール循環用ケーシング7は、平面図で見てほぼ長方形の形状を有し、かつ横断面図で見て外側へ凸状に湾曲されていて、保持器4の所定の切欠き5内に適切にはめ込まれるようになっている。この場合にボール循環用ケーシング7は、その長手方向に延びる側面にそれぞれ2つの凹設部70を備えており、該凹設部は保持器4の切欠き5の領域に設けられた係止部材(図示省略)と係止係合するようになっている。さらにボール循環用ケーシング7の端面に突起73,74を一体成形してあり、該突起は切欠き5の端面(切欠きの長手方向若しくは縦軸線方向に対して垂直な方向に延びる壁面)の領域に設けられた凹設部内に入り込む、つまり該凹設部内に嵌合するようになっている。各ボール循環用ケーシング7は全体的に各切欠き5内に次のように装着されて位置決めされており、つまりボール循環用ケーシング7は切欠き5内でわずかに傾倒運動(揺動運動)を行えるようになっている。ボール循環用ケーシング7はさらに平面図で見て同様に長方形の切欠き71を備えており、該切欠き内には支持軌道部材8を装着するようになっている。この場合に位置決め手段としては、切欠き71の側面(該切欠きの長手方向に延びる壁面)に設けられた突起72を用いてある。
【0029】
図3乃至図5には、支持軌道部材8の1つの実施例を種々の方向から見て示してある。支持軌道部材8は、所定の長さLを有するロッド若しくは成形材若しくは異形材の形状を有している。支持軌道部材8の上面には、それも幅の方向の中央の領域に、リブ状の1つの隆起部80を設けてあり、該隆起部(条片状部分)は、図示の実施例では支持軌道部材8に一体成形されていて、かつ支持軌道部材8の全長Lにわたって延びていて、所定の半径rの凸曲面状の外面81を有している。付言すると、リブ状の隆起部80は支持軌道部材8の表面に必ずしも一体成形されなければならないものではなく、必要に応じて支持軌道部材の表面に別個の構成部分若しくは層として設けられ若しくは接合され、つまり例えば溶接、特に点溶接、若しくは接着、或いはろう付け等により結合されていてよいものである。
【0030】
リブ状の隆起部80の両側には、支持軌道部材8の全長さLにわたって延びる溝状の凹設部82を設けてあり、該凹設部はエンボス加工中において、エンボス加工される素材R8の凹設部R82からなるものである。凹設部R82は空間を成していて、該空間(スペース)内に、素材R8のエンボス加工に際して押し退けられる材料が流れ込み、つまり、素材の凹設部によって形成された空間は、押し退けられて流動する材料を受容するようになっている。特に図3から明らかであるように、支持軌道部材8は横断面で見て上側の半分O及び下側の半分Uによって形成されており、この場合に下側の半分Uは広い幅を有していて、その下面の中央に溝状の1つの凹設部83を備えており、該凹設部は支持作用のあるボール90のための2つの走行軌道路84を互いに離間している。
【0031】
図6乃至図8に本発明の第2の実施例の支持軌道部材10を示してある。支持軌道部材10は、前述の支持軌道部材8とほぼ同じ形状を有している。相違点はリブ状の隆起部100にあり、該リブ状の隆起部は支持軌道部材10の上面に、それも支持軌道部材10の上面の幅の方向で中央の領域に位置していて、同じく支持軌道部材10の全長Lにわたって延びており、リブ状の隆起部100の両側に、リブ状の別の隆起部102を設けてあり、該隆起部は同じく支持軌道部材10の全長Lにわたって延びていて、溝状の凹設部104によって互いに離間されている。リブ状の隆起部100,102は、所定の半径rで外側に向かって凸状にかつ長さLの方向に湾曲された外面101,103を有している。支持軌道部材10の下面には、同じく2つの走行軌道路106を設けてあり、該走行軌道路は、溝状の1つの凹設部105によって互いに離間されている。
【0032】
図9には、支持軌道部材用素材R8(図10、参照)のエンボス加工のための本発明に基づく装置を示してある。該装置はエンボス金型11を含んでおり、該エンボス金型内に支持軌道部材用素材R8は下面でもって挿入されて、該エンボス金型に嵌合状態で支持される。さらにエンボス加工雄型12を設けてあり、該エンボス加工雄型(エンボス加工若しくは型押し用の上型若しくはラム)は、上方から支持軌道部材用素材R8のリブ状の隆起部R80にエンボス加工力Fを加えるようになっている。側方で、つまり幅の方向でリブ状の隆起部R80の横に設けられている領域R84は隆起部R80よりもわずかに低くなっているので、素材R8の、リブ状の隆起部R80を含む中央の領域のみをエンボス加工することができるようになっている。これによって、塑性変形加工すべき、つまりエンボス加工すべき面、ひいては加えるべきエンボス加工力Fは著しく減少されており、したがって、エンボス加工に際して支持軌道部材用素材R8の、走行軌道路84を含む下面をも変形させてしまうような恐れは、避けられるようになっている。
【0033】
別の実施例として、若しくは付加的な手段(追加的な手段)として、エンボス加工雄型12は突起部120を備えていてよく、該突起部(隆起部)は素材のリブ状の隆起部R80の幅にほぼ相当しており、若しくは該リブ状の隆起部よりも少なくともわずかに幅広になっている。さらにエンボス加工雄型12は、内側へ凹状に湾曲された湾曲面を有しており、該湾曲面は、製造すべき支持軌道部材8の外面81の目標湾曲面に相当していて、つまりエンボス加工雄型の凹状の湾曲面の曲率が支持軌道部材の外面に形成すべき凸状の湾曲面の曲率に相当しており、かつ素材の全長にわたって延びている。さらに2つの側方金型部分13を設けてあり、該側方金型部分はエンボス加工時にエンボス加工雄型12及び素材R8の側方からの支えを成している。さらに2つの端面金型部分14を設けてある。端面金型部分は、エンボス金型11内での素材R8の座着を見易くするために1つだけしか示されていない。
【0034】
図10及び図11には、支持軌道部材8,10の素材R8,R10を示してある。「素材」とは、球面状の縦リブ(球面若しくは円弧面を備えた長手方向の条片状部分)がエンボス加工成形若しくは型押し加工成形される前の支持軌道部材8,10を意味するものである。素材R8,R10は、製造方向、つまり長手方向に引き抜き加工された成形材(形材若しくは異形材又は異形品)であり、上面に引き抜き加工成形時に成形されたリブ状の隆起部R80,R100を備えており、該隆起部の上面はまだ直線状に延びている。リブ状の隆起部R80と側方の領域R84との間には溝状の凹設部R82を成形してあり、該凹設部はエンボス加工中に材料流れによって凹設部82に塑性変形されるものである。
同様にリブ状の隆起部R100,R102間に溝状の凹設部104を成形してある。素材R8,R10は下面にすでに走行軌道路84,106及びその間に位置する溝状の凹設部83,105を引き抜き加工成形されて備えている。リブ状の隆起部R80,R100,R102に湾曲の上面を成形するために、素材はエンボス加工装置内に挿入される(図9のR80、参照)。
【符号の説明】
【0035】
1 直動玉軸受、 2 軸、 3 ケーシング孔、 4 保持器、 5 切欠き、 6 結合ウエブ、 7 ボール循環用ケーシング、 8 支持軌道部材、 9 ボール循環部分、 10 支持軌道部材、 11 エンボス金型、 12 エンボス加工雄型、 80 隆起部、 83 凹設部、 84 走行軌道路、 90 ボール、 100 隆起部、 101 外面、 102 隆起部、 103 外面、 105 凹設部、 106 走行軌道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状のガイドレール(2)を該ガイドレール(2)の収容のための構成部分(3)内に長手方向移動可能に支承する直動玉軸受(1)であって、スリーブ状の保持器(4)を備えており、該保持器は円周方向に相前後して配置された複数の切欠き(5)を有しており、該切欠き(5)内にボール循環部分(9)を設けてあり、該各ボール循環部分(9)は、前記ガイドレール(2)に転動可能に接触している支持作用のあるボール(90)の受容のための少なくとも1つの支持区分を有しており、前記ボール循環部分(9)内の前記ボール(90)は、前記保持器(4)内に装着された支持軌道部材(8,10)に転動可能に支えられており、前記支持軌道部材(8,10)は、前記ガイドレール(2)を取り囲む前記構成部分(3)の内面での支持のために、外側へ凸状に少なくとも1つの方向(L)で湾曲された少なくとも1つの半径方向の外面(81;101,103)を有している形式のものにおいて、前記少なくとも1つの外面(81;101,103)はリブ状の少なくとも1つの隆起部(80;100,102)によって形成されており、該隆起部(80;100,102)は前記支持軌道部材(8,10)の長手方向に延びていることを特徴とする、直動玉軸受。
【請求項2】
リブ状の隆起部(80)は支持軌道部材(8)の中央の領域に配置されている請求項1に記載の直動玉軸受。
【請求項3】
リブ状の隆起部(80)は、支持軌道部材(8)の幅の70%よりも小さい寸法の幅、有利には5%〜35%の間の寸法の幅を有している請求項1又は2に記載の直動玉軸受。
【請求項4】
リブ状の隆起部(80)に沿って少なくとも1つの空所若しくは少なくとも1つの溝状の凹設部を形成してある請求項1から3のいずれか1項に記載の直動玉軸受。
【請求項5】
リブ状の隆起部(80)の両側にそれぞれ少なくとも1つの空所若しくは少なくとも1つの溝状の凹設部(82)を形成してある請求項1から3のいずれか1項に記載の直動玉軸受。
【請求項6】
リブ状の隆起部(100)の両側に沿って別のリブ状の隆起部(102)を形成してあり、該隆起部(102)は空所若しくは溝状の凹設部(104)を互いに離間している請求項5に記載の直動玉軸受。
【請求項7】
支持軌道部材(8,10)はケーシング状の受容部分(7)内に装着されており、該受容部分(7)は保持器(4)の切欠き(5)内に装着されている請求項1から6のいずれか1項に記載の直動玉軸受。
【請求項8】
直動玉軸受に用いられる支持軌道部材(8,10)、殊に請求項1から7のいずれか1項に記載の直動玉軸受(1)に用いられる支持軌道部材(8,10)であって、該支持軌道部材(8,10)は、外側へ凸状に少なくとも1つの方向(L)で湾曲された少なくとも1つの半径方向の外面(81;101,103)を有し、かつ該湾曲された少なくとも1つの外面(81;101,103)に相対して位置していて直動玉軸受(1)の支持作用のあるボール(90)を少なくとも部分的に受容するための走行軌道路(84,106)を有している形式のものにおいて、前記湾曲された少なくとも1つの外面(81;101,103)はリブ状の少なくとも1つの隆起部(80;100,102)によって形成されており、該隆起部(80;100,102)は前記支持軌道部材(8,10)の長手方向に延びていることを特徴とする、支持軌道部材。
【請求項9】
リブ状の隆起部(80)は支持軌道部材(8)の中央の領域に配置されている請求項8に記載の支持軌道部材。
【請求項10】
リブ状の隆起部(80)に沿って少なくとも1つの空所若しくは少なくとも1つの溝状の凹設部を形成してある請求項8又は9に記載の支持軌道部材。
【請求項11】
リブ状の隆起部(80)の両側にそれぞれ少なくとも1つの空所若しくは少なくとも1つの溝状の凹設部(82)を形成してある請求項8から10のいずれか1項に記載の支持軌道部材。
【請求項12】
リブ状の隆起部(80)は、支持軌道部材(8)の幅の70%よりも小さい寸法の幅、有利には5%〜35%の間の寸法の幅を有している請求項8から11のいずれか1項に記載の支持軌道部材。
【請求項13】
リブ状の隆起部(100)の両側に沿って別のリブ状の隆起部(102)を形成してあり、該隆起部(102)は空所若しくは溝状の凹設部(104)を互いに離間している請求項8から12のいずれか1項に記載の支持軌道部材。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか1項に記載の支持軌道部材(8,10)を製造するための方法において、
素材(R8,R10)を形成し、有利には形材として素材を形成し、該素材(R8,R10)は、該素材(R8,R10)の長手方向(L)に延びるリブ状の少なくとも1つの隆起部(R80;R100,R102)を有しており、
前記リブ状の隆起部(R80;R100,R102)を、該リブ状の隆起部(R80;R100,R102)が外側へ凸状に少なくとも前記長手方向(L)で湾曲された外面(81;101,103)を有するようにエンボス加工することを特徴とする、支持軌道部材の製造方法。
【請求項15】
エンボス加工力(F)を、素材(R8,R10)の中央の領域に配置されたリブ状の隆起部(R80)上にのみ加える請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の製造方法により支持軌道部材(8)用の素材(R8)を塑性変形加工するための装置において、少なくとも1つのエンボス金型(11)を含んでおり、該エンボス金型は、支持作用のあるボール(90)のための走行軌道路(84)を有する面に嵌合した状態で該面を支持するようになっており、さらに少なくとも2つの側方金型部分(13)、少なくとも2つの端面金型部分(14)及び少なくとも1つのエンボス加工雄型(12)を含んでおり、前記エンボス加工雄型(12)は前記素材(R8)に向けられた面を、エンボス加工力(F)が前記支持軌道部材用の素材(R8)のリブ状の隆起部(R80)にのみ作用するように形成されていることを特徴とする、支持軌道部材用の素材の塑性変形加工のための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−107045(P2010−107045A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250906(P2009−250906)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(390009623)シエツフレル コマンディートゲゼルシャフト (99)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】