説明

直接溶解

【課題】カロテノイドを食用油脂に直接溶解するための連続的な方法を提供する。
【解決手段】食品組成物および飼料組成物についての連続式またはバッチ式の生産方法にインラインで組み込まれ得る、カロテノイドの溶解のためのインラインの方法および関連した装置とし、飼料組成物および食品組成物に組み込むために別の乾燥粉末カロテノイド配合物を調製および購入する必要性を回避するとともに冷却後に所望のカロテノイド濃度を有する油性カロテノイド溶液の連続調製により、処方されていないカロテノイドから出発して、魚用飼料に加工することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカロテノイドを食用油脂に溶解するための連続法に関する。より詳しくは、本発明は、油性媒体中の懸濁液を加熱し、続いて、好ましくは、インラインプロセスを使用して、より低い温度の油を用いて冷却することによってカロテノイドを油に直接溶解することに関する。得られる油溶液は、そのまま、またはカロテノイドを含む栄養組成物のインラインもしくはバッチ式の生産のために用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは、製薬産業、栄養産業、化粧品産業、食品産業および飼料産業にまたがって広く使われている。本明細書中では、この組成物を集合的に、栄養組成物という。飼料産業において、カロテノイドは、着色用添加物および必須栄養素としての有用性を有する。カロテノイドは周囲温度では実用的には水不溶性であるので、良好な吸収およびバイオアベイラビリティを有するカロテノイドを送達することは大きな課題である。具体例は、水産養殖のためのアスタキサンチンおよびカンタキサンチン(canthaxanthin)、ならびに養鶏業のためのβカロチンおよびゼアキサンチン(zeaxanthin)である。溶解性に乏しいことは、良好なバイオアベイラビリティにとっての大きな障害である。これらのカロテノイドの結晶形態は、溶解特徴に劣り、それゆえ、有用な飼料および栄養添加物になるように最初に配合されなければならないので、そのままでは使用されない。米国特許第2,756,177号に記載されている噴霧乾燥またはキャッチ小ビーズ技術(catch beadlet technology)によって調製される、ポリマーマトリックス中にアスタキサンチンまたはカンタキサンチンを含んでいる粒子状組成物が、飼料生産において広範囲に用いられる。この分散可能な小ビーズまたは顆粒は乾燥粉末として添加されるか、またはそれらは、飼料組成物に加工される前もしくは後に水中に溶解/分散され得る。
【0003】
本発明は、結晶、非晶質粒子または凝集物およびそれらの組み合わせであり得るカロテノイドを油中に分散させ、そしてこのカロテノイドを加熱された油相中に溶解し、続いて好ましくは油相を用いて、連続インライン法を使用して冷却することによって油性カロテノイド溶液を調製するためのものである。得られる油性カロテノイド組成物は、飼料および他の組成物を調製するために直接そのまま使用され得る。この方法は、親水コロイドを含むコロイド分散された乾燥粉末または粒子状組成物としてカロテノイドが配合されることを必要とせず、それによって、高コストの溶媒、ならびに溶媒回収および粉末生産に関連したエネルギーを回避する。さらに、この方法は、加熱されたカロテノイド溶液を、過剰の水相および乳化剤を用いて乳化して水中油型乳剤を同時に形成することを必要としない。従って、本発明は、顕著な製造費用低減および特に飼料製品のための供給チェーンを与える。
【0004】
特許文献1は、コロイド分散した水分散可能な粉末状カロテノイド調製物を調製するための方法を記載する。高沸点油中に10重量%〜50重量%のカロテノイドを含むカロテノイド懸濁液は、上昇した圧力および温度の下で超加熱蒸気と直接接触させられ、そして親水コロイドの水溶液中で直ちに冷却および乳化され、続いて、この水中油型乳化液を噴霧乾燥させて粉末が得られる。
【0005】
特許文献2は、上昇した圧力および温度の下で水混和性溶媒を使用して少なくとも2つの親水コロイドおよびカロテノイドを溶解する工程を包含する、水分散性の粒子または小ビーズを調製する方法を記載する。このカロテノイドは、この有機溶媒溶液と膨潤可能なコロイドの水溶液とを急速に混合し、そして冷却することによって分子的に分散した溶液から、コロイド状に分散した形態で直ちに沈澱し、そして得られる分散物からは、従来の様式で溶媒および分散媒が除去される。特許文献1と同様に、この方法は、溶媒および/または回収工程のいずれかによって、コロイドが分散した粒子状カロテノイド組成物を得ることを必要とする。
【0006】
特許文献3は、高沸点有機液体中のカロテノイドの懸濁液を加熱してカロテノイドを溶解し、次いで得られた溶液を親水コロイドのような乳化剤の水溶液に直ちに添加してこの溶液を乳化することによって、高沸点有機液体中のカロテノイドの溶液を調製してカロテノイド乳濁液を得るためのプロセスに関する。この乳濁液は噴霧乾燥されて、コロイドが分散したカロテノイド粉末が回収される。
【0007】
記載されている全ての方法は、親水コロイドおよび/または乳化剤を用いて過剰の水中に加熱されたカロテノイド溶液を乳化するという必須の工程によって特徴づけられる。
比較すると、特許文献4は、インラインでかつ規定の短時間加熱手順の適用なしで、魚用飼料および他の組成物を調製する前に油で冷却することなしで、油に溶解される親油性ポリマー/分散剤を含む油分散可能なカロテノイド組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国第5,364,563号明細書
【特許文献2】米国第6,296,877号明細書
【特許文献3】米国第6,664,300号明細書
【特許文献4】国際公開第03/102116号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、食品組成物および飼料組成物についての連続式またはバッチ式の生産方法にインラインで組み込まれ得る、カロテノイドの溶解のためのインラインの方法および関連した装置を記載する。この方法は、飼料組成物および食品組成物に組み込むために別の乾燥粉末カロテノイド配合物を調製および購入する必要性を回避する。冷却後に所望のカロテノイド濃度を有する油性カロテノイド溶液の連続調製は、このように、好ましくは処方されていないカロテノイドから出発して、魚用飼料に加工することが可能である。開示される溶解および冷却装置はまた、独立したモジュールに収容されてもよく、または大量の油性カロテノイド溶液を調製するための連結モジュール装置内に収容されてもよい。このモジュールは、(既存の)飼料生産ラインへのインラインの接続に特に適している。このプロセスは好ましくは、通常の大気条件下で実施される。しかしながら、加圧された(例えば、超臨界)流体および機器が単独で、または、油の加熱と組み合わせて使用される場合、このプロセスは、圧力下で実施されてもよい。
【0010】
好適な実施の形態によれば、本発明は、例えば、混合チャンバを含む加熱ゾーンにおいて最大で油相の沸点までであり得る温度で所定の時間にわたってカロテノイド組成物を高沸点油相に溶解し、その後すぐに好ましくは第2の混合チャンバにおいて急速に冷却して油性カロテノイド溶液を調製するためのインラインでのプロセスを記載する。カロテノイドを溶解するために必要な温度は、このカロテノイド懸濁液の温度と油相の沸点との間にある。混合という用語は、加熱された油性溶液を冷却媒体に添加すること、または冷却媒体を加熱された油性溶液に添加することによる、その逆のことを包含する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
油性カロテノイド組成物を調製するための方法であって、該方法は、
i)生理学的に受容可能な油相中に少なくとも一つのカロテノイドを分散させることによって懸濁液を調製する工程;
ii)該懸濁液を、最大で該油の沸点までの温度でインラインで最大30秒間加熱して、該懸濁されたカロテノイドを該油相に溶解させて、加熱された油性カロテノイド溶液を得る工程;および
iii)該加熱された油性溶液よりも低い温度の生理学的に受容可能な油相と混合することおよび熱交換器を使用することからなる群より選択される方法によって、該加熱された油性カロテノイド溶液を冷却する工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記油性カロテノイド懸濁液が、該懸濁液よりも高い温度の油相と混合することによって、100℃〜300℃で5秒間未満加熱され、ここで、該油相の加熱が、超加熱蒸気によって加熱された熱交換器、超臨界的ガスによって加熱された熱交換器、電気によって加熱された熱交換器、ローターステータミキサーによって発生した熱および超音波ミキサーによって発生された熱からなる群から選択される手段を用いて実施される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記カロテノイドが結晶カロテノイド化合物である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記加熱された油性カロテノイド溶液が、該加熱された油性カロテノイド溶液よりも低い温度である生理学的に受容可能な油相とのインライン混合、該加熱された油性カロテノイド溶液よりも低い温度である生理学的に受容可能な油相とのバッチ式混合およびインライン熱交換器を使用することからなる群より選択される方法を適用することによって冷却される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記油性カロテノイド溶液を冷却するために添加される前記油相が、30%までの乳化された水を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記加熱および冷却された油性カロテノイド溶液が、20,000ppmまでのカロテノイドを含み、該加熱された油性カロテノイド溶液の冷却が、魚油の添加によってインラインで実施される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記冷却後の油性カロテノイド組成物の温度が60℃未満であり、そして前記冷却工程が30秒間未満の時間において実施される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記油性カロテノイド懸濁液が実質的に純粋なカロテノイド粒子を含み、該カロテノイドが、合成または天然の、アスタキサンチン、カンタキサンチン、βカロチンおよびゼアキサンチンからなる群から選択され、そして、該粒子の90%が、15μm未満の直径を有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
アスタキサンチンおよびカンタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド粒子を含む油性カロテノイド懸濁液であって、該アスタキサンチンが、以下の品質基準および仕様:
【表1】

を満たし、そして該カンタキサンチンが以下の品質基準および仕様:
【表2】

を満たす、方法。
(項目10)
栄養組成物を調製するための方法であって、該方法は、
項目1に従って油性カロテノイド組成物を調製する工程、および
該油性カロテノイド組成物を栄養組成物に添加する工程
を包含する、方法。
(項目11)
前記油性カロテノイド組成物が、冷却後、栄養組成物にインラインまたはバッチ式で添加される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記栄養組成物が、飼料ペレットおよび飼料顆粒、飼料タブレットおよび飼料カプセルからなる群から選択される、項目10または11に記載の方法。
(項目13)
前記油性カロテノイド組成物が、非常に多孔性の無機質キャリアに添加される、項目1に記載の方法。
(項目14)
栄養組成物を調製するための方法であって、該方法は、
i)生理学的に受容可能な油相中に少なくとも一つのカロテノイドを分散させることによって懸濁液を調製する工程;
ii)該懸濁液を、最大で該油の沸点までの温度でインラインで最大30秒間加熱して、該懸濁されたカロテノイドを該油相に溶解させて、加熱された油性カロテノイド溶液を得る工程;
iii)該加熱された油性溶液よりも低い温度の生理学的に受容可能な油相と混合することおよび熱交換器を使用することからなる群より選択される方法によって、該加熱された油性カロテノイド溶液を冷却する工程;
iv)該冷却された油性カロテノイド溶液を、非常に多孔性の無機質キャリアに添加する工程;および
v)該キャリアを栄養組成物に添加する工程であって、該組成物が、飼料ペレットおよび飼料顆粒、飼料タブレットおよび飼料カプセルからなる群より選択される、工程
を包含する、方法。
【0011】
したがって、本発明は、以下の実施形態を記載する:
油性カロテノイド組成物を調製するための方法であって、該方法は、
i)生理学的に受容可能な油相中に少なくとも一つのカロテノイドを分散させることによって懸濁液を調製する工程;
ii)該懸濁液を、最大で該油相の沸点までの温度でインラインで最大30秒間加熱して、該懸濁されたカロテノイドを該油相に溶解させて、加熱された油性カロテノイド溶液を得る工程;および
iii)該加熱された油性溶液よりも低い温度の生理学的に受容可能な油相と混合することおよび熱交換器を使用することからなる群より選択される方法によって、該加熱された油性カロテノイド溶液を冷却する工程
を包含する、方法。
【0012】
本発明は以下の好ましい実施形態に関する:
・上記油性カロテノイド懸濁液が、該懸濁液よりも高い温度の油相と混合することによって、100℃〜230℃で5秒間未満加熱され、ここで、該油相の加熱が、超加熱蒸気によって加熱された熱交換器、超臨界的ガスによって加熱された熱交換器、電気によって加熱された熱交換器、ローターステータミキサーによって発生した熱および超音波ミキサーによって発生された熱からなる群から選択される手段を用いて実施される、方法。
【0013】
・上記カロテノイドが結晶カロテノイド化合物である、方法。
【0014】
・上記加熱された油性カロテノイド溶液が、該加熱された油性カロテノイド溶液よりも低い温度である生理学的に受容可能な油相のインライン添加、該加熱された油性カロテノイド溶液よりも低い温度である生理学的に受容可能な油相へのバッチ式添加およびインライン熱交換器を使用することからなる群より選択される方法を適用することによって冷却される、方法。
【0015】
・上記加熱および冷却された油性カロテノイド溶液が、20,000ppmまでのカロテノイドを含み、該加熱された油性カロテノイド溶液の冷却が、魚油の添加によってインラインで実施される、方法。
【0016】
・上記冷却後の油性カロテノイド溶液の温度が60℃未満であり、そして上記冷却工程が30秒間未満の時間において実施される、方法。
【0017】
・上記油性カロテノイド懸濁液が実質的に純粋なカロテノイド粒子を含み、該カロテノイドが、合成または天然の、アスタキサンチン、カンタキサンチン、βカロチンおよびゼアキサンチンからなる群から選択され、そして、該粒子の90%が、15μm未満の直径を有する、方法。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、栄養組成物を調製するための方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:
(i)生理学的に受容可能な油中に少なくとも一つのカロテノイドを分散させることによって懸濁液を調製する工程;
(ii)該懸濁液を、最大で該油の沸点までの温度でインラインで最大30秒間加熱して、該懸濁されたカロテノイドを該油相に溶解させて、加熱された油性カロテノイド溶液を得る工程;
(iii)該加熱された油性溶液よりも低い温度の生理学的に受容可能な油相と混合することおよび熱交換器を使用することからなる群より選択される方法によって、該加熱された油性カロテノイド溶液を冷却する工程;
(iv)該冷却された油性カロテノイド溶液を栄養組成物に添加する工程。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、栄養組成物を調製するための方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:
i)生理学的に受容可能な油中に少なくとも一つのカロテノイドを分散させることによって懸濁液を調製する工程;
ii)該懸濁液を、最大で該油相の沸点までの温度でインラインで最大30秒間加熱して、該懸濁されたカロテノイドを該油相に溶解させて、加熱された油性カロテノイド溶液を得る工程;
iii)該加熱された油性溶液よりも低い温度の生理学的に受容可能な油相と混合することおよび熱交換器を使用することからなる群より選択される方法によって、該加熱された油性カロテノイド溶液を冷却する工程;
iv)該冷却された油性カロテノイド溶液を、非常に多孔性の無機質キャリアに添加する工程;および
v)該キャリアを栄養組成物に添加する工程。
【0020】
本発明はさらに、アスタキサンチン粒子の油性カロテノイド懸濁液を記載し、ここで、このアスタキサンチンは以下の品質基準および仕様を満たす:
【0021】
【表3】

本発明はさらに、カンタキサンチン粒子の油性カロテノイド懸濁液を記載し、ここで、このカンタキサンチンは以下の品質基準および仕様を満たす:
【0022】
【表4】

本発明のさらなる実施形態において、上記油性カロテノイド溶液を冷却するために添加される上記油相は、30%までの乳化された水を含み得る。
【0023】
米国FDAの要件を満たしている上記のアスタキサンチンおよびカンタキサンチンの油性懸濁液は、米国第5,364,563号および米国第6,664,300号において記載されたような水分散可能な配合物の調製にも特に適している。
【0024】
好ましい実施形態によれば、上記油性カロテノイド溶液は、冷却後、栄養組成物にインラインまたはバッチ式で添加され、そしてこの栄養組成物は、飼料ペレット、飼料顆粒、飼料タブレットおよび飼料カプセルなどからなる群から選択される。このようにして得られたこの油性溶液は、飼料ペレットおよび他の栄養組成物において、油中に分子的に分散したカロテノイドの、より一貫した分布をもたらす。
【0025】
さらに、この油性カロテノイド溶液は、大きな内表面を有する非常に多孔性の粉末に添加され得、これはさらに、栄養組成物を用いて(好ましくは飼料組成物を用いて)加工され得るか、またはそれら単独で使用され得、そして経口投与、薬学的投与または栄養的投与のためのタブレット、カプセル剤などに加工され得る。
【0026】
以下の本発明の説明において、定義および用語は、以下の好ましい意味を有する:
「賦形剤」は、使用される量において薬理活性のない材料であって、技術的な取扱い(例えば、カロテノイドの溶解性および安定性)を改善するためおよび生きた生物への投与を容易にするために組成物に含まれ得る材料である。
【0027】
「溶解する」または「溶解」とは、カロテノイドのモノマー、ダイマー、トリマーなどおよび/またはコロイド分散物であり得る、カロテノイドの分子分散または分子凝集を得ることを意味する。油相中でのカロテノイドの溶解程度の評価は、0.45μmの孔サイズのフィルターを通した油相の濾過、続いて濾液中のカロテノイド含有量のHPLC決定、および濾過されてない油相中の総カロテノイド濃度との比較によって実施される。
【0028】
「実質的に」とは、少なくとも40重量%を意味する。
【0029】
「配合されたカロテノイド」とは、保護親水コロイドまたはポリマー分散剤のような賦形剤および安定剤とともにカロテノイドを含む、コロイドが分散した組成物をいい、そして粉末状の細胞および細胞断片(例えば、微細藻類(microalgae)(例えば、H.pluvialis、ChlorococcumおよびPhaffia rhodozyma))を包含する。
【0030】
「飼料」は、生きている種に供給される全ての種類の食料を包含する。
【0031】
「魚用飼料」は、魚(特にサケ科および甲殻類)に供給するために水産養殖において使用される、タンパク質、炭水化物、油、ミネラル、ビタミンおよび栄養素などを含む全ての飼料組成物を記載する。
【0032】
「結晶カロテノイド」は、規定された多形および偽多形(pseudo polymorph)を含む化合物の結晶構造を記載する。
「インライン」は、連続した一連の操作または工程のうちの必須の部分を構成する、方法またはプロセスをいう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、インライン加熱および混合、続いてより低い温度の油相を用いた冷却によってカロテノイドの油性溶液を得るための配置を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の説明)
カロテノイドは、8個のイソプレノイド単位からなる、一クラスの炭化水素である。カロテノイドのクラスの化合物は、主に以下の2つの群に分類される:カロチンおよびキサントフィル。純粋なポリエン炭化水素であるカロチン(例えば、βカロチンまたはリコピン)とは対照的に、キサントフィルはさらに、機能的な部分(例えば、ヒドロキシル、エポキシ基および/またはオキソ基)を含む。この群の典型的代表は、アスタキサンチン、カンタキサンチンおよびゼアキサンチンである。
【0035】
キサントフィルは、天然では非常に一般的であり、コーンにおいて(ゼアキサンチン)、緑莢インゲンにおいて(ルテイン)、パプリカにおいて(カプサンチン(capsanthin))、卵黄において(ルテイン)、そしてまた甲殻類およびサケにおいて(アスタキサンチン)生じる。それらは、それらの特徴的な色をこれらの食品に与える。
【0036】
いくつかのカロテノイドは、産業的に合成され得るまたは天然の供給源から分離され得る。それらは、合成染料の代替品としての、食品および飼料産業のための、そして医薬品産業のための、重要な天然の抗酸化剤および着色剤である。
【0037】
キサントフィルは、周囲条件において実用的には水不溶性であり、非常に低い油脂溶解性を示す。先行技術では、限られた溶解度および高い酸化感受性により、食品および飼料を着色する際に、合成によって得られる結晶物質を直接使用することが妨げられていると主張されている。
【0038】
好適なカロテノイドは、魚用飼料産業において使用される、アスタキサンチンおよびカンタキサンチンまたはそれらの混合物である。他の食品および飼料産業における応用については、代替カロテノイド(例えば、β−カロチン、リコピン、ビキシン、ゼアキサンチン(zeaxanthin)、クリプトキサンチン、ルテイン、β−アポ−8’カロテナール(β−apo−8’carotenal)、β−アポ−12’−カロテナール、ならびにエステルおよび誘導体)が考えられ得る。より油溶性である、アスタキサンチンおよびカンタキサンチンの脂肪酸エステルおよびジエステルが、遊離カロテノイドベースの代わりに使用され得る。好適な例は、米国第6709688号に記載されていて、本明細書中に参考として援用される、ω−3脂肪酸および/または短鎖カルボン酸を用いて調製される、アスタキサンチンのジエステルである。
【0039】
カロテノイドは、非晶質、H−凝集体もしくはJ−凝集体の形態であってもよく、または安定であるかもしくは準安定な多形で存在してもよい。本発明に適しているアスタキサンチンおよびカンタキサンチンの品質は、本明細書中に参考として援用されるUS−FDAデータベース(21CFR73.35および21CFR73.75)に記載されている。また、実質的に純粋なカロテノイドが使用され得るが、ただし、副産物が、消費に適しかつ無害であることが公知の、食品もしくは飼料組成物中に存在するクラスのカロテノイドと同定されているか、またはそれに属する。
【0040】
40重量%までの機能的な全トランス−カロテノイドを含む、アスタキサンチンおよびカンタキサンチンならびにそれらの多形、非晶質および凝集形態の純粋な化合物または混合物が使用され得る。アスタキサンチンは、60%〜98%(好ましくは80%〜96%)のトランス−アスタキサンチン、および2重量%〜40重量%の間(好ましくは2%〜35%、最も好ましくは2%〜4%)の重量部の少なくとも一つのカロテノイド誘導体を組成物中の微量成分として含み得る。
【0041】
配合されたカロテノイド組成物および天然の供給源からのアスタキサンチンが粉末状の細胞および細胞断片(例えば、微細藻類(例えば、H.pluvialisおよびChlorococcum))を含むことを理解すべきである。酵母(例えば、Phaffia rhodozyma)および甲殻類の副産物は、本発明による魚用飼料の製造においてアスタキサンチンの供給源として使用され得る。この記載された方法は、魚用飼料に組み込むことによってより均一な製品を得るための、(凍結または噴霧)乾燥された細胞成分からのカロテノイドのより高く、より一貫しかつ均一な溶解を可能にする。さらに、油相にアスタキサンチンを溶解のための、そして魚用ペレットの生産のための、インラインのプロセスを使用することは、改良された特性を有する高品質飼料を調製するための、ずっとコスト効率的であって、産業的に実現可能な方法である。
【0042】
本発明に記載されている方法によるインラインの溶解のために、油組成物は、0.1重量%〜40重量%の懸濁されたアスタキサンチンを含む。この粒子のうちの90%は、15μm未満の直径を有するべきである。油相中に懸濁されるカロテノイド粉末の平均粒子サイズは、15μm未満であるべきであり、好ましくは、低い温度でのより急速な溶解のためには、1μm〜5μmの間である。1μm未満の粒子サイズは、油中へのより迅速な溶解にさらにより適切であり得る。より可溶性の多形または非晶質改変のカロテノイドが用いられるならば、粒子サイズはより大きくてもよい。粒子サイズの低減は、コロイド状ボールミルにおいて、(好ましくは、油相中で懸濁液をミリングすることによって)実施され得る。微粉砕されたカロテノイドを得る、それほど好適ではないが、それにもかかわらず可能なオプションは、例えば、適切な湿潤剤(例えば、ホスホリピド)を含むカロテノイド水性懸濁液を、コロイドミルを用いてミリングすることである。必要に応じて、水の除去後、乾燥粉末は、粉末流動特性を改良し、そして粉塵度(dustiness)を改善するために賦形剤を添加することによってさらに加工され得、そして本発明に従って、油相に直接添加され得、そして加工され得る。空気ジェットミルによる凍結ミリング(cryo milling)および乾燥ミリングのような他の選択肢もまた、いくつかの例において考慮され得る。あるいは、サブミクロンの非晶質カロテノイド粒子は、超臨界液を使用した溶融分散プロセスによって、別々に調製され得る。所望の場合、費用がかかるにも関わらず、この方法は、本発明に従ってプロセスにおいてインラインで組み込まれ得る。このカロテノイドはまた、それが油相に添加される前に、高沸点の非水性液体(例えば、グリセロールまたはプロピレングリコールのようなポリオール)中に分散され得、そしてミリング(微粉砕)され得る。
【0043】
カロテノイドが加熱プロセス中に溶解される油相は、生理学的に受容可能な食用油であり、好ましくは、αトコフェロールおよびアスコルビルパルミテートのような抗酸化剤を含む。α‐トコフェロールのようなトコフェロールもまた、カロテノイドを溶解するために油相として使用され得る。この油相は、180℃〜230℃程度の高さの温度に到達し得る。高沸点油(例えば、植物油もしくはトウモロコシ油、MIGLYOLTMとして販売される合成もしくは部分合成のトリグリセリド)が好ましい。加熱プロセスのために使用される油相は、植物油もしくは魚油またはこれら2種類の油のブレンドであり得る。適切な植物油の例は、以下の通りである:綿実油、ゴマ油、ヤシ油もしくはラッカセイ油、クヘントウ油、トウモロコシ油、カノーラ油(ナタネ油)、オリーブ油、ピーナッツ油(ラッカセイ油)、ヒマワリ油、サフラワー油、植物性ダイズ油、クヘントウ油、杏仁、アボカド油、ホホバ油、オレンジ油、レモン油、パーム核油、カボチャ種子油、ヒマシ油、ヤシ油(76度および110度)、ゴマ油、焙煎ゴマ油(toasted sesame oil)、亜麻仁油(有機、従来のおよび高リグナン)、GLA油(ボラージ、ブラックカラント、イブニングプリムローズ)、ブドウ種子油、ヘイゼルナッツ油、ククイナッツ(kukui nut)油、マカダミアナッツ油、ママク(mamaku)油、ペカン油、えの油、ピスタチオ油、米糠油、チャノキ油、クルミ油、小麦胚種油、トウモロコシ油またはカノーラ油(ナタネ油)。好適な植物油は、以下の通りである:ダイズ油(GMOを含まない)および亜麻仁油。
【0044】
可能ならば、このプロセスは、外圧を適用せずに実施される。代表的には、50バールまでの圧力が、チュービング内のポンプ作用によって誘導される液圧および流体圧力を使用して内部に発生させられ得る。しかし、所望の場合、この圧力は、カロテノイドの溶解を加速するために、約300バールまでさらに上昇され得る。
【0045】
好ましくは、油相は、水を含まない。しかしながら場合によっては、カロテノイド溶液を加熱するために用いられる油相および/またはカロテノイドが分散される油相は、より少量の(約10〜30%の)乳化した水を含み得る(油中水型乳化液)。油相と比較してより低い沸点を有する不混和性相の存在は、圧力下で充分な過熱蒸気を生じて、加熱ゾーンにおけるカロテノイドの溶解を加速し得、従って、より高いカロテノイド濃度の使用を可能にし得る。同様に、カロテノイドが溶解される油相は、(油相と部分的に混合し得るかまたは油相に部分的に溶解し得る)加圧された(超臨界)流体(例えば、CO)と混合され得、そして懸濁されたカロテノイドの融点を降下させることによって、より高い溶解力を可能にし得る。費用および経済的要因は、高圧装置および構成要素の設置および使用における安全性の問題とともに考慮される主な考慮事項である。加熱および溶解のための(80℃〜230℃の間の温度の)加熱された油相の量は、カロテノイド油懸濁液の0.1重量部〜25重量部(好ましくは5〜10重量部)の範囲にある。
【0046】
インラインプロセスのプロセスまたは部分は、酸化的分解をさらに最小にするために加熱ゾーンにおいて不活性ガス下または圧力下で実施され得る。超臨界流体(例えば、CO)の使用は、カロテノイドの融点の重大な減少を引き起こす。過熱したガスまたは加圧した(超臨界)流体であり得る不活性ガスはまた、加熱ゾーンにおける圧力を上昇させて、カロテノイドがより低い温度でより急速に溶けることを可能にし、そしてより高濃度でのその溶解を増やすために使用され得る。気相はまた、加熱ゾーンを通過する間中上昇した圧力下で保たれる、加熱される油相中に乳化された微量の水から生じた過熱蒸気でもよい。
【0047】
60℃未満まで熱い溶液を冷却および/または希釈するための油の大部分は、30℃〜60℃以下に保たれる。水を含まないことが好ましい。しかしながら、それは、微量な微率の水または(例えば、粗製の天然(魚)油に)もともと存在する水を含み得る。油中の水の量は、10〜30重量%程度に多くてもよい。それは、使用される、より多量の油と比較して微量であり、そして本質的に、それはw/o系中にあり、乳化剤の水溶液ではない。好ましくは、使用される油は、天然油であるかまたは部分的に加水分解された天然の植物性もしくは魚のトリグリセリド(より容易に吸収される、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、ならびにそれらの組み合わせを含む)である。それは、合成油であっても、または半合成油であってもよい。適切な魚油の例は、以下の通りである:ω3酸−30%(18%のEPA/12%のDHA)、50%(30%のEPA/20%のDHA)−、コレステロール非含有で高効力DHAのノルウェータラ肝油(3000A/100D、2500A/250D)、マグロまたはカツオの魚油、魚肝油、ハリバ肝油、タラ類肝油、サメ肝油、スクアレン、スクアラン、サケ油、スキップジャック(skipjack)肝油、ニシン油、カラフトシシャモ油、メンヘーデン魚油のような特別海産油(specialty marine oil)。
【0048】
好ましくは、それは、商用名NorseECOilおよびNORSlamOilの下でEgersund Sildoljefabrikkから入手可能なもののような魚油、または他の魚油製造者からの、魚油と植物油とのブレンドである。
【0049】
冷却またはより低い温度の油相の添加後に熱交換器を出る得られる油溶液中のカロテノイドの量は、約50ppm〜約20,000ppmの間、好ましくは約100ppm〜約5,000ppmの間、より好ましくは約200ppm〜約1000ppmの間にある。したがって、加熱されたカロテノイド溶液を冷却するための油相の量は、溶解のために使用されるカロテノイド、油相および温度、冷却された溶液中のカロテノイドの所望の最終濃度のような要因に依存する。
【0050】
本発明の方法による方法によって得られる油性溶液は、飼料または食物組成物を調製するための貯蔵容器中に収集され得る。好ましい実施形態において、本発明の別の局面を形成する、記載される溶解装置は、魚用飼料生産ラインに組み込まれる。カロテノイドがアスタキサンチンである場合、好ましくは、溶液中でのトランスアスタキサンチン異性体からシスアスタキサンチン異性体への転換が異性体の合計の50%未満(好ましくは30%未満)であるように、温度および加熱条件が調整される。アスタセン(astacene)、セミアスタセン(semi−astacene)およびC−25アルデヒドのようなさらなる副産物のあり得る形成は、総アスタキサンチン重量の10%未満(好ましくは5%未満)であるべきである。
【0051】
飼料組成物に添加される、アスタキサンチンを含む油性カロテノイド溶液の量は、1〜50重量%の範囲にあり得る。好ましくは、添加される油性溶液の量は、10重量%と30重量%との間にある。この油性溶液中に溶解したカロテノイドの量は、10ppm〜300ppm、好ましくは30ppm〜100ppmの間にあり得る。
【0052】
本発明のプロセスは、栄養組成物および飼料の生産における冷水に分散可能な配合物の使用を必要としない。この製造は、流線形であり、油相中に溶解したアスタキサンチンの量のインラインでの制御を容易にする。さらに、この方法は、飼料ペレットに添加する前に、アスタキサンチンを化学的および物理的にモニタリングすることを可能にする。この方法は、EP0839004による、アスタキサンチンを配合物から遊離させるための冷水に分散可能な配合物の複雑な酵素的前処理を回避する。
【0053】
カロテノイドを含んでいる油溶液は、脂肪ベースの食品(例えば、βカロチンと組み合わせたマーガリン)を着色するために直接添加されてもよく、または養鶏飼料組成物もしくは魚用飼料組成物に直接添加されてもよい:最終的な冷却された油溶液は、顆粒化、押し出しまたはペレット化を容易にするために、飼料への添加の前に、水によって乳化され得る。水は、魚用飼料のさらなる加工または乾燥中に除去され得る。油性溶液の魚用飼料への添加は、減圧、大気圧または上昇した圧力を使用した固形飼料組成物の押出の前、後またはその最中であり得る。この油性組成物はまた、飼料ペレットに添加する前に、未溶解の材料を除去するために必要に応じて濾過されてもよい。あるいは、油性カロテノイド溶液は、粉末特性を失うことなくキャリア自体の重量の5倍までの油を吸収するという一部のキャリアの特性を利用して、非常に多孔性の無機マトリックスおよび無機キャリアへの添加によって固形組成物に加工され得る。非常に多孔性(100〜500m/g)の無機キャリアの例は、Zeopharm(登録商標)およびNeusilin(登録商標)である。得られる粒子状固形組成物は、飼料成分または食品成分に添加され、そして適切な投与形態に加工され得る。これらはまた、それ自体で薬学的組成物および栄養組成物として使用され得る。それぞれ、本発明において使用される好適な非常に多孔性の無機キャリアとしては、無機化合物(例えば、それぞれ、商標Fujicalin(登録商標)のSGタイプおよびSタイプ、ならびにNeusilinTMとして公知の、リン酸水素カルシウムおよびアルミノメタケイ酸マグネシウム(magnesium aluminometasilicate)が挙げられる。Fujicalin(登録商標)のSGタイプおよびSタイプについての代表的なパラメーターとしては、7nmの平均孔サイズ、約110μmの平均粒子サイズ、約2ml/gの比体積、30m/g〜40m/gのBET比表面積および約0.8ml/gの油および水の吸収能力が挙げられる。NeusilinTMは、等級S1、SG1、UFL2、US2、FH2、FL1、FL2、S2、SG2、NFL2NおよびNS2Nとして販売されている。特に好適な等級は、S1、SG1、US2およびUFL2である。多くの適用に最も好適な支持体材料は、等級US2である。他の適切な支持体材料は、300m/gで少なくとも450ml/100gの油吸収能力を有するZeopharm(登録商標)600(沈澱した非晶質ケイ酸カルシウム)、250〜300ml/100gの油吸収能力を有するHuber−sorb(登録商標)250 NF(沈澱した非晶質ケイ酸カルシウム)、および140m/gで185〜215ml/100gの油吸収能力を有するZeopharm(登録商標)80(沈澱した非晶質シリカ)である。非晶質であるこれらの材料は、代表して、約100m/g〜約300m/gの比面積、約1.3ml/g〜約4.5ml/gの油吸収能力、約1μm〜約14μmの平均粒子サイズおよび約2.1ml/g〜約12ml/gの比体積を有する。しかしながら、カロテノイドに対して有害な影響を及ぼさずかつ匹敵するほど大きな内部表面積を提示する限り、代替の有機または無機の多孔質材料が使用され得る。使用される支持体材料の量は、カロテノイドの溶液または分散液をチャネル内部に隔離するために利用され得る比表面積および特性(例えば、使用される溶液の粘度)に依存する。
【0054】
本発明は、油性カロテノイド組成物を調製するために、好適な配合されていない粒子状結晶または非晶質のカロテノイド化合物ではなく、コロイド分散された配合されたカロテノイド(例えば、顆粒および小ビーズ)を必要に応じて使用することを排除しない。本方法はカロテノイド(特に、アスタキサンチンおよびカンタキサンチン、ゼアキサンチンおよびβカロチン)を加工することについて記載されているが、当業者は、開示されたプロセスを、栄養組成物に添加するための加工プロセスにおいてほんの慣用的な変更を行って、類似の物理的特性および化学的特性を有し、カロテノイドと一緒に使用され得る他の化合物に適用することができるはずである。例は、機能的な親油性化合物(例えば、シトステロール、シトスタノールおよびそれらの誘導体、コエンザイムQ10、ならびに化合物(例えば、脂溶性ビタミン、特にビタミンAおよびその誘導体))である。
【0055】
本方法は、個々にまたは組み合わせてのいずれかの、カロテノイドの便利な加工を可能にする。例えば、アスタキサンチンおよびカンタキサンチンは、一緒に加工され得る。必要に応じて、加工を容易にするための成分または賦形剤のうちの1つまたは組合せが添加され得、この必要に応じた成分および賦形剤は、安定剤、高沸点油および高沸点ロウ、分散助剤、ポリマー、保護コロイド、保存剤、流動助剤、膜脂質、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を包含する。
【0056】
カロテノイドは、油に添加する前に、粉末の流れを改善するために賦形剤と物理的に混合され得る。
【0057】
本発明による方法がインライン式またはバッチ式の方法によって油相中の少なくとも一つのカロテノイドの溶液を調製するための新しい連続法であることを理解すべきである。記載されている方法は、配合されてない実質的に純粋な結晶化合物を使用することに限定されていない。例えば、本明細書中に引用したUS5,364,563、US6,296,877およびWO 03/102116に従って調製された、コロイドが分散した配合物もまた使用され得る。
【0058】
(方法)
本方法を、本発明に従うプロセスを実施するのに適した、図1に模式的に図示したフローチャートを参照して記載する。このプロセスは、加圧条件下で実施することを通常必要とするわけではないが、加圧された(超臨界)流体(例えば、CO)が油相とともに使用されるかまたは少量の水が油相中に存在する場合、より高い圧力が生成され得る。加熱ゾーンへの入り口および出口に適切に配置されたインラインでの加熱チャンバおよび冷却チャンバ、熱交換器、導管および含んでいる容器、高圧構成要素、圧力解放弁および温度センサー(など)のレイアウトおよびの構成は、適切に、入口および加熱ゾーンからの退出に据え付けられて、確立されているかまたは新たな飼料生産ラインに最も適切な組み込みを提供するように配置され得る。
【0059】
選択された油相または適切な流体媒体中の、混合物を基準として約0.1重量%〜約40重量%の濃度の1μm〜5μmの間の平均粒子サイズの直径を有する少なくとも一つのカロテノイドの懸濁液は、安定剤を添加して、または安定剤を添加せずに、最初に容器4に導入される。容器1は、懸濁されたカロテノイドを含まない高沸点油を含む。カロテノイド懸濁液は、粒子状カロテノイドまたはカロテノイド組成物を懸濁し、容器4に閉じ込めてかまたは混合チャンバ6へ直接注入するかのいずれで、これをインラインでミリングすることによって調製され得る。このカロテノイド懸濁液はまた、大スケールで別に予め調製されて何ヶ月間も保存され、その後、本発明の方法に従って溶解されてもよい。
【0060】
1つの実施形態では、容器1からの油相は、その流れを熱交換器3に通し、ここでこの流れはその沸点以下の温度まで加熱されてから、ポンプ2によって混合チャンバ6に供給される。このシステムにおける油の流は、再循環された油を除去および平衡化することによって、所望の温度、圧力および他の操作条件(例えば、流量)にされ得る。容器4内で100℃未満に保たれるカロテノイド懸濁液は、混合チャンバ6において、直角で、または、ポンプ5を介して接線方向で、加熱された油の流れと混合される。圧縮ガスは、懸濁液を汲み出すためにも使用され得る。加熱ゾーンにおける混合比は、所望の滞留時間での混合チャンバ6の通過の後に達成されるべき油の目標温度を考慮して、ポンプ2の送達速度を調整することによって予め決定され得る。加熱された油相中でのカロテノイドの溶解は、50℃〜300℃であり得る油の沸点以下で生じる。溶解のための接触時間は、加熱ゾーンにおける滞留時間を延ばすことによって延長され得る。これは、混合ポンプ5の流量を減少させるか、または加熱ゾーンを通る輸送の間、所望の温度を維持するために(必要に応じてサーモスタットによって制御されるかまたは保温される)加熱導管7の長さを延長することによっておこなわれる。図1において図示される加熱ゾーンは、混合チャンバ6と保温された導管7とからなる。所望の温度が維持される加熱ゾーンにおける滞留時間は、30秒間までであり得る。
【0061】
あるいは、混合チャンバ6の寸法は,それが加熱ゾーン全体を効果的に形成しかつポンプ2の選択された送達速度において懸濁液の滞留時間が30秒間まで(好ましくは5秒間未満)であり得るような寸法である。
【0062】
混合および溶解が起こる、加熱ゾーンに沿っての通過時間は、油相の温度が50℃〜230℃の間にある場合は好ましくは0.1秒間〜30秒間の間にあり、好ましくは100℃〜230℃の間の温度で0.1秒間〜10秒間の間にある。好ましい実施形態によれば、カロテノイドは、必要に応じて圧力下で、120℃〜180℃の間の温度で1秒間〜5秒間にわたって油相においてできるだけ急速に溶解され、それによって分解および異性化が最小にされて、標的カロテノイド濃度が達成される。油溶液が加工後に60℃未満の温度で出る場合に、溶けたカロテノイドの量が油中の総カロテノイド含有量の少なくとも50重量%であるようにカロテノイドの粒子を実質的に溶解することも受け入れられ得る。
【0063】
異性化を最小にするために、加熱工程は、累進的または段階的に行われてもよい。カロテノイドの安定性が損なわれない場合、カロテノイド懸濁液は、加熱ゾーンを通過させる前に容器において予熱され得る。加熱ゾーン内部で、懸濁液は、(好ましくは80℃〜120℃の間の加熱された油相と混合することにより)そのカロテノイドの融点未満の温度まで、10秒間まで、好ましくは5秒間まで加熱される。次いで、この懸濁液は、120℃〜300℃の間の、温度がカロテノイドの融点よりも上または油相の沸点より上でさえあり得るセクションに沿って、5秒間未満にわたって短時間加熱される。好ましくは、この懸濁液は、120℃〜180℃で0.1秒間〜2秒間にわたって短時間加熱される。一時的な加熱は、「フラッシュ加熱(flash−heating)」と記載され得る。
【0064】
油相中での溶解はまた、あるタイプのミキサー(例えば、インラインローター−ステーターディスパーセーター(in−line rotor−stator dispersator)、超音波ディスインテグレーターおよび高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザーを含むがこれに限定されない))から選択される過熱した(超臨界)臨界ガスおよび/または高エネルギーホモジナイザーを組み込むかまたは同時に使用することにより、より低い温度で、より効果的に実施され得る。目的は、懸濁されたカロテノイドを、その融点付近またはそれより高い温度において、分解および異性化を最小限にして、できるだけ急速かつ短時間に崩壊および溶解させることである。カロテノイドの懸濁液はまた、希釈せずに、または加熱された油相を添加して、熱交換器を通して油懸濁液を汲出すことにより、混合チャンバにおいて加熱され得、この熱交換器において、油懸濁液は、油層の沸点よりもさらに上であり得る温度において、短時間急速に加熱される。カロテノイドを溶解させるエネルギーの適用は、電気によって加熱されるかまたは圧力下の過熱蒸気もしくは加熱された超臨界液体を含むがこれらに限定されない媒体によって間接的に加熱される熱交換器を利用して直接行われ得る。
【0065】
加熱ゾーンの通過後、熱い油溶液は、加熱されたカロテノイド溶液の温度よりも低い温度に保たれる油相容器8からポンプ9を介して冷却された油相または周囲温度の油相を添加することによって、冷却チャンバ10と呼ばれる混合チャンバにおいて30秒間以内に約60℃未満まで、またはより低い温度まで、インラインで直ちに冷却される。好ましくは、冷却は、30秒間未満において実施される。冷却チャンバ10を出る導管は、(特に冷却するために添加される油相の量が、希釈される油相溶液の温度を60℃未満にするのに十分でない場合)外部媒体(例えば水、液体窒素または圧縮ガス)を用いる熱交換器を用いてさらに冷却または冷凍され得る。冷却するために添加される油相の量は、冷却方法および最終溶液中のカロテノイドの目標濃度に依存して、加熱されるカロテノイド溶液の重量の1部〜500部であり、好ましくは2部〜50部である。冷却後のカロテノイド油溶液の温度は、60℃未満であり、好ましくは30℃〜50℃の間であり、より好ましくは30℃未満である。
【0066】
加熱ゾーンから出る熱い油溶液はまた、バッチ式調製については格納容器中で、60℃未満またはそれより下に保たれた測定された量の油相を含んでいる容器に、激しく攪拌しながら、それを添加することによってすぐに冷却され得る。この容器は、凍結により、さらに冷却され得る。いずれにせよ、冷却は、短時間で、好ましくは30秒間未満で行うべきである。
【0067】
適切なインラインモニタリング設備(例えば、温度、圧力、流量および方向を制御するゲージおよびゲートバルブ)は、加熱および冷却の順序を制御するために回路に設置され得る。図1の構成は、本発明を図示する代表的な例である。構成要素およびそれらの設計の異なる構成および配置は、本発明の範囲内で可能である。
【0068】
加熱および冷却のための混合チャンバおよび熱交換器を含む溶解モジュールは、50ppmと20,000ppmとの間の濃度の所望の量のカロテノイド油溶液を調製するために適合され得る。スループットは、混合チャンバの適切な設計および寸法、カロテノイド油懸濁液の必要な流量に関するオリフィスの直径および圧力、ならびに熱交換器の容量を選択することによって規模を拡大または縮小され得る。固定ミキサーまたはミキシングノズル(例えば、オリフィスノズル)を用いた混合チャンバが使用され得る。油相を混合チャンバ内で50℃〜300℃の間まで加熱するための熱交換器の設計は、加熱面のボイド体積および表面積、懸濁液のスループット、温度および圧力、ならびに使用される熱移動媒体のタイプを考慮に入れる。1kWのエネルギー消費量を有する熱交換器によって駆動される溶解モジュールは、容器からバッチ式でまたは飼料製造プロセスとインラインで組み込まれてのいずれかでの魚用飼料への添加のための、250ppmのアスタキサンチンを含んでいる少なくとも60l/h〜180l/hのカロテノイド油溶液を調製するために使用され得る。このモジュールは、場合によってはより高濃度またはより低濃度のカロテノイドを含んでいる、より多量の溶液を得るために規模を変更され得る。
【0069】
以下の実施例は、例示として、そして制限するためにでなく、本発明を実証する。カロテノイド濃度、エネルギー源および/または加工温度なrばいに条件を本発明の範囲内で変更することによって別の実施形態を実施することは、当業者によって容易に適応され得る。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
シスアスタキサンチン、C−25アルデヒドアスタキサンチン、アスタシン(astacine)およびセミアスタシンを含む約20%の副産物とともに80%(±2%)の合成オールトランスアスタキサンチンを含む、100gの結晶を、3000ppmのアスタキサンチン濃度が達成されるような条件下で操作する、精度を操作したSilversonインラインローター/ステーターミキサーを用いて、ダイズ油に添加する。このインラインミキサーを熱交換器に接続して、この油を加熱する。ローターステーターによる発熱と組み合わせて、この油を180℃〜230℃の温度まで10秒間にわたって加熱し得る。アスタキサンチンの得られる油性溶液を、固定ミキサー(Sulzer AG,Winterthur,CH)を用いて、10倍過剰の40℃に加熱されたManhedan魚油と直ちに混合する。得られた油性溶液を溶解されたアスタキサンチンの程度についてアッセイし、そして魚用飼料生産のために使用する。
【0071】
(実施例2)
図1を参照する。
【0072】
結晶(98%純粋)の合成アスタキサンチンを、室温にて、4%(w/w)のα‐トコフェロールを含んでいるダイズ油中で、4%(w/w)使用して分散し、そして70℃で実施されるコロイド状ボールミル手順に供して、(レーザー回折分光学によって測定した)以下の粒子サイズ特徴を有する分散物を得る:d10:1.0μm、d50:2.5μm、d90:6μm。この懸濁液を別に調製して、本発明の方法に従ってアスタキサンチン油溶液を調製するために保存してもよい。
【0073】
この懸濁液を室温にてダイズ油で希釈して、1.5%(w/w、15000ppm)アスタキサンチンおよび1.5% α‐トコフェロールを達成する。23℃の1リットルの懸濁液を容器4へ移して穏やかに撹拌し、そして混合ポンプ5を介して1kg/hで汲み出して混合チャンバ6を通し、ここでアスタキサンチン懸濁液は、9kg/hで作動しているポンプ2を介して容器1から混合される、熱交換器3に通すことによって172℃まで予め加熱されたダイズ油と混合されて加熱される。その結果、150℃の1:9(w/w)アスタキサンチン懸濁液/予め加熱された油の混合物の温度は、1500ppmのアスタキサンチンを含む。この混合物は、保温された導管の体積に関連してポンプ2および混合ポンプ5の合わせた作用によって生じる流量を適用することによって、(150℃にて)1秒間の移動時間で保温された管7を通って流れて、アスタキサンチンを溶解する。この溶液を、冷却チャンバ10において、油容器8からポンプ9を介した23℃に保った50kg/hの魚油と直ちに混合して冷却して、250ppmのアスタキサンチンを含んでいるアスタキサンチンの油性組成物を得て、これを容器に集める。
【0074】
あるいは、150℃の1:9(w/w)アスタキサンチン懸濁液/予め加熱された油の混合物(1500ppmのアスタキサンチンを含んでいる)を、液体窒素または水によって冷却した熱交換器に通すことによって希釈せずに冷却して、そして温度20℃の1500ppmアスタキサンチン組成物を得て、そして容器内に集める。
【0075】
0.45μm孔サイズのフィルターを通した1500ppmまたは250ppmのアスタキサンチン組成物の濾過後のアスタキサンチン含有量のHPLC分析法は、アスタキサンチンが完全に可溶化されており、75%のオールトランスアスタキサンチンおよび25%のシス異性体を含み、さらなる分解産物がないことを示す。この油性アスタキサンチン溶液は、魚用飼料ペレットと混合することによって、さらに加工され得る。
【0076】
(実施例3)
実施例2と類似した様式で、実施例1の実質的に純粋な結晶合成アスタキサンチンを、10%(w/w)用いて、室温において10%(w/w)α‐トコフェロールを含んでいるダイズ油中に分散させる。この懸濁液を70℃でのコロイド状ボールミル中での粉砕にかけて、以下の粒子サイズ特徴を有する分散液を得る:4.9%>5μm、95.1%は2.7μmと1μmとの間(分別濾過、続いてアスタキサンチン含有量のHPLC分析によって測定)。この懸濁液を室温まで冷却し、そしてダイズ油で希釈して1.5%(w/w)(15,000ppm)のアスタキサンチンおよび1.5%のα‐トコフェロールを達成する。23℃の1リットルの懸濁液を容器4へ移して穏やかに撹拌し、そして1kg/hの速度で混合ポンプ5を介して汲み出して混合チャンバ6に通し、ここでこのアスタキサンチン懸濁液は、9kg/hで作動しているポンプ2を使用して容器1から供給される、熱交換器3を通すことによって148℃まで予め加熱された熱いダイズ油と混合されて、1:9(w/w)アスタキサンチン懸濁液/予め加熱された油の混合物(1500ppmのアスタキサンチンを含んでいる)が126℃になるように加熱されて、アスタキサンチンが溶解される。この混合物を、1秒間にわたって保温された管を通して汲出し、そして冷却チャンバ10において、ポンプ9を介した油容器8からの23℃の50kg/hの魚油と混合して冷却して、250ppmのアスタキサンチンを含んでいるアスタキサンチンの油性組成物を得て、これを容器内に集める。
【0077】
0.45μm孔サイズのフィルターを通した250ppmのアスタキサンチン組成物の濾過後のアスタキサンチン含有量のHPLC分析法は、アスタキサンチンが完全に可溶化されており、12%のシス異性体を含むことを示す。
【0078】
この油性アスタキサンチン溶液を、30重量%の油レベルで魚用飼料ペレットと混合する際に魚油で250ppmまで希釈することによってさらに加工して、ペレット中で83ppmのアスタキサンチンレベルを達成する。
【0079】
(実施例4)
実施例3と類似した様式で、得られる油性アスタキサンチン溶液の流れを押出機にインラインで供給して、飼料ペレットを調製する。
【0080】
(実施例5)
実施例2と類似した様式で、実質的に純粋である(92.5%)結晶カンタキサンチンをアスタキサンチンの代わりに使用する。
【0081】
(実施例6)
実施例2と類似した様式で、天然の供給源から精製された結晶アスタキサンチンを合成アスタキサンチンの代わりに使用する。
【0082】
(実施例7)
実施例1と類似した様式で、1%アスタキサンチンを含んでいるHaematococcus pluvialisの10%懸濁液をダイズ油で希釈して、3000ppmのアスタキサンチン懸濁液を得て、さらに、実施例1の条件を使用して加工して、油性カロテノイド溶液を得る。
【0083】
(実施例8)
H.Pluvialis懸濁液の代わりに、アスタキサンチンを含むPhaffia rhodozyma細胞または細胞断片を、実施例7に示すように使用し得る。
【0084】
(実施例9)
250ppmのアスタキサンチンを含んでいる実施例3の油性溶液(1kg)を攪拌しながら200gのアルミノケイ酸マグネシウム(Neusilin)に添加する。得られる乾燥粉末(1.2kg)を、乾式ブレンド技術を用いて、2.8kgの魚用飼料ペレット材料に添加する。魚ペレットを乾燥圧縮または押し出しによって調製し、そしてこれは、25% w/wtの油および63ppmのアスタキサンチンを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2013−46627(P2013−46627A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−232547(P2012−232547)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2008−512749(P2008−512749)の分割
【原出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(504438358)ファレス ファーマシューティカル リサーチ エヌ.ブイ. (5)
【Fターム(参考)】