説明

直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法

【課題】電圧検出回路に高価な絶縁形の検出器を使用することなく、直流出力電圧の検出値を得ることができる直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】直流電源11の電圧をスイッチングするスイッチング素子12と、このスイッチング素子12でチョッピングされた直流電圧を平滑するリアクトル14およびコンデンサ15からなるフィルタ回路とを備えて所望の直流出力電圧を出力する直流出力電力変換装置において、リアクトル14の同一コアに電気的に絶縁した補助巻線17を設け、電圧読込み回路24に補助巻線17の両端電圧を取り込んで直流出力電圧を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電源をスイッチングするチョッパ回路を用いた直流出力電力変換装置に関し、特にその出力にリアクトルとコンデンサとからなるフィルタ回路を備えた直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のチョッパ回路を用いた直流出力電力変換装置の構成図を示す。同図において、11は直流電源あるいは交流電源からダイオードブリッジ整流回路を介して得られる直流電源、12はこの直流電源をオン・オフするトランジスタ等のスイッチング素子、14は出力電圧を平滑するためのリアクトル、15は同じく平滑用のコンデンサであり、リアクトル14とコンデンサ15によりフィルタ回路を構成している。なお、13はスイッチング素子12のオフ時にリアクトル14の電流を転流するためのダイオードであり、16は直流電動機等の負荷である。また、21はコンデンサ15の両端電圧を検出するための絶縁形の電圧検出回路であり、22は電圧設定器(不図示)により設定された出力電圧指令信号Vと電圧検出回路21で検出した直流出力電圧Voとに基づくフィードバック制御によりスイッチング素子12のオン・オフ信号を出力するパルス発生回路であり、23は加算演算器である。
【0003】
このような構成において、加算演算器23では出力電圧指令信号Vと電圧検出回路21で検出した直流出力電圧Voとの偏差△Vを求める。パルス発生回路22では、加算演算器23からの偏差ΔVを零にする調節演算を行い、この調節演算結果と例えば三角波状の搬送波とに基づくPWM演算を行い、このPWM演算結果に対応したスイッチング素子12のオン・オフ信号を生成する。このようにスイッチング素子12のオン・オフ比を制御して直流電源11をチョッピングすることにより所望の直流出力電圧を得ている。
【0004】
この種の直流出力電力変換装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−37546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電圧検出回路21で検出した出力直流電圧Voは、フィードバック制御に用いるために加算演算器23,パルス発生回路22等から構成される制御部に入力されるが、一般的に制御部と主回路部とは絶縁する必要がある。従来の直流出力電力変換装置においては、出力電圧を検出する電圧検出回路21には主回路部と制御部とを絶縁するために高価な絶縁形の電圧検出器が使用されており、この絶縁形の電圧検出器がこの種の直流出力電力変換装置の価格低下を阻害する大きな要因となっていた。
【0007】
この発明は、電圧検出回路に高価な絶縁形の検出器を使用することなく、直流出力電圧の検出値を得ることができる直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明は、直流電源の電圧をスイッチングするスイッチング素子と、このスイッチング素子でチョッピングされた直流電圧を平滑するリアクトルおよびコンデンサからなるフィルタ回路とを備えて所望の直流出力電圧を出力する直流出力電力変換装置において、前記リアクトルの同一コアに電気的に絶縁した補助巻線を設け、この補助巻線の両端電圧を取り込んで直流出力電圧を検出するものである。
【0009】
また、この発明は、直流電源の電圧をスイッチングするスイッチング素子と、このスイッチング素子でチョッピングされた直流電圧を平滑するリアクトルおよびコンデンサからなるフィルタ回路とを備えて所望の直流出力電圧を出力する直流出力電力変換装置において、前記リアクトルに流れる電流を検出する電流検出器を設け、前記リアクトルに流れる電流の変化率と予め記憶した前記リアクトルのインダクタンス値とから直流出力電圧を検出するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、リアクトルの同一コアに電気的に絶縁した補助巻線を設け、この補助巻線の両端電圧を取り込んで直流出力電圧を検出するか、または、リアクトルに流れる電流の変化率と予め記憶したリアクトルのインダクタンス値とから直流出力電圧を検出することにより、高価な絶縁形の直流電圧検出器を使用することなく、絶縁された直流出力電圧の検出値を得ることができ、直流出力電力変換装置の価格低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す構成図
【図2】図1の動作を説明する動作波形図
【図3】この発明の第2の実施の形態を示す構成図
【図4】この発明の第3の実施の形態を示す構成図
【図5】この発明の第4の実施の形態を示す構成図
【図6】従来の直流出力電力変換装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はこの発明の第1の実施の形態を示す構成図であり、図6と同一機能を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施の形態においては、フィルタ回路を構成するリアクトル14の同一コアに電気的に絶縁した補助巻線17を巻回するとともに、この補助巻線17の端子間に電圧読込み回路24を接続している。
【0013】
このような構成において、第1の実施の形態を図2に示す動作波形図を参照しつつ説明する。図2において、(a)はスイッチング素子12のオン・オフ信号およびリアクトル14に流れる電流を示し、(b)はリアクトル14の両端電圧を示し、(c)は補助巻線17の両端電圧を示す。
【0014】
直流電源11の入力直流電源電圧をEdc、直流出力電圧をVoとすると、スイッチング素子12がオンのとき、直流電源11→スイッチング素子12→リアクトル14→コンデンサ15と負荷16との並列回路の経路で電流が流れ、リアクトル14には直流電圧Edcが加わり、リアクトル14の両端にはEdc−Voの電圧が掛かる。また、スイッチング素子12がオフのとき、リアクトル14の電流はリアクトル14→コンデンサ15と負荷16との並列回路→ダイオード13の経路で通流し、リアクトル14の両端には逆方向にVoの電圧が掛かることになる。
【0015】
一方、リアクトル14に電流が流れると、補助巻線17にはリアクトル14の両端電圧に比例し、かつ絶縁された二次電圧が誘起されるので、電圧読込み回路24では、補助巻線17の両端電圧を入力して直流出力電圧Voを演算する。具体的に説明すると、スイッチング素子12がオンのとき、補助巻線17にはリアクトル14の両端電圧Edc−Voに比例した電圧k×(Edc−Vo)が発生し、スイッチング素子12がオフのとき、補助巻線17にはリアクトル14の両端電圧Voに比例した電圧k×Voが発生することになる。スイッチング素子12がオフのときの補助巻線17の両端電圧k×Voを電圧読込み回路24で読み込むことにより、読み込んだ補助巻線17の両端電圧k×Voと定数kとに基づいて直流出力電圧Voを求めることができる。なお、定数kはリアクトル14と補助巻線17との巻数比で決まる定数であり、予め装置に記憶しておく。
【0016】
上記のようにして電圧読込み回路24で得られる直流出力電圧Voを用いて、加算演算器23により不図示の電圧設定器により設定された出力電圧指令信号Vと直流出力電圧Voとの偏差△Vを演算し、パルス発生回路22により偏差△Vを零にする調節演算を行ってスイッチング素子12のオン・オフ信号を生成する。このように電圧読込み回路24で得られた直流出力電圧Voと出力電圧指令信号Vとに基づいてフィードバック制御してスイッチング素子12のオン・オフ比を制御することにより、所望の直流出力電圧を得ることが可能になる。
【0017】
なお、電圧読込み回路24にはパルス発生回路22のオン・オフ信号を入力して、補助巻線17の両端電圧を読み込むタイミングをスイッチング素子12がオフの期間に同期させるようにするとよい。
【0018】
図3はこの発明の第2の実施の形態を示す構成図であり、図1と同一機能を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対して直流電源11の入力直流電源電圧Edcを検出する電圧検出器を追加し、電圧読込み回路25は、検出した直流電源11の入力直流電源電圧Edcと、補助巻線17の両端電圧と、パルス発生回路22のオン・オフ信号とに基づいて直流出力電圧Voを演算している。
【0019】
図2(c)に示すように、スイッチング素子12がオンのとき、補助巻線17にはリアクトル14の両端電圧Edc−Voに比例した電圧k×(Edc−Vo)が発生する。スイッチング素子12がオンの期間に同期して入力直流電源電圧Edcを読み込むとともに、補助巻線17の両端電圧k×(Edc−Vo)とを読み込んでリアクトル14の両端に発生する電圧Edc−Voを求める。そして、検出した入力直流電源電圧Edcから演算で求めたリアクトル14の両端電圧Edc−Voを減算することにより、直流出力電圧Voを求めることができる。
【0020】
なお、スイッチング素子12がオフのときには、第1の実施の形態と同様に、スイッチング素子12がオフの期間に同期して電圧読込み回路25が補助巻線17の両端電圧を読み込んで演算することにより、直流出力電圧Voを求めることができる。
【0021】
図4はこの発明の第3の実施の形態を示す構成図であり、図1と同一機能を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
図4において、18はリアクトル14に流れる電流を検出する電流検出器であり、26はパルス発生回路22のオン・オフ信号と、電流検出器18の電流検出値と、予め記憶したリアクトル14のインダクタンス値Lとに基づいて直流出力電圧Voを演算する出力電圧演算回路である。
【0022】
このような構成において、出力電圧演算回路26では、スイッチング素子12がオフの期間の電流変化率di/dtと、リアクトル14のインダクタンス値Lとから出力電圧Voを演算している。すなわち、リアクトル14の両端電圧はL×di/dtで演算可能であり、図2(b)で示すようにスイッチング素子12がオフの期間はリアクトル14の両端に電圧Voが発生しているため、スイッチング素子12がオフの期間の電流変化率di/dtを求め、この電流変化率di/dtと予め記憶したインダクタンス値Lとから直流出力電圧Voを演算することができる。ここで、電流変化率di/dtは、電流検出器18から得られる電流検出値の単位時間当たりの変化量から容易に求めることができる。
【0023】
図5はこの発明の第4の実施の形態を示す構成図であり、図4と同一機能を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
第4の実施の形態では、第3の実施の形態に対して直流電源11の入力直流電源電圧Edcを検出する電圧検出器を追加し、出力電圧演算回路27は、検出した直流電源11の入力直流電源電圧Edcと、パルス発生回路22のオン・オフ信号と、電流検出器18の電流検出値と、予め記憶したリアクトル14のインダクタンス値Lとに基づいて直流出力電圧Voを演算している。
【0024】
図2(b)に示すように、スイッチング素子12がオンのとき、リアクトル14の両端電圧はEdc−Voである。スイッチング素子12がオンの期間に電流検出器18から得られる電流検出値から求めた電流変化率di/dtと予め記憶したリアクトル14のインダクタンス値Lとからからリアクトル14の両端電圧Edc−Voを演算する。そして、スイッチング素子12がオンの期間に取り込んだ入力直流電源電圧Edcからリアクトル14の両端電圧Edc−Voを減算することにより、直流出力電圧Voを演算することができる。
【0025】
なお、スイッチング素子12がオフのときには、第3の実施の形態と同様に、スイッチング素子12がオフの期間の電流変化率di/dtと、予め記憶したリアクトル14のインダクタンス値Lとから直流出力電圧Voを演算することができる。
【符号の説明】
【0026】
11…直流電源、12…スイッチング素子、13…ダイオード、14…リアクトル、15…コンデンサ、16…負荷、17…補助巻線、18…電流検出器、22…パルス発生回路、23…加算演算器、24,25…電圧読込み回路、26,27…出力電圧演算回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の電圧をスイッチングするスイッチング素子と、このスイッチング素子でチョッピングされた直流電圧を平滑するリアクトルおよびコンデンサからなるフィルタ回路とを備えて所望の直流出力電圧を出力する直流出力電力変換装置において、前記リアクトルの同一コアに電気的に絶縁した補助巻線を設け、この補助巻線の両端電圧を取り込んで直流出力電圧を検出することを特徴とする直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法において、前記スイッチング素子がオフの期間の前記補助巻線の両端電圧から直流出力電圧を検出することを特徴とする直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法において、前記直流電源の電圧を検出する電圧検出器を設け、前記スイッチング素子がオンの期間の前記直流電源の電圧と前記補助巻線の両端電圧とから直流出力電圧を検出することを特徴とする直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法。
【請求項4】
直流電源の電圧をスイッチングするスイッチング素子と、このスイッチング素子でチョッピングされた直流電圧を平滑するリアクトルおよびコンデンサからなるフィルタ回路とを備えて所望の直流出力電圧を出力する直流出力電力変換装置において、前記リアクトルに流れる電流を検出する電流検出器を設け、前記リアクトルに流れる電流の変化率と予め記憶した前記リアクトルのインダクタンス値とから直流出力電圧を検出することを特徴とする直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法において、前記スイッチング素子がオフの期間の前記リアクトルに流れる電流の変化率と予め記憶した前記リアクトルのインダクタンス値とから直流出力電圧を検出することを特徴とする直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法において、前記直流電源の電圧を検出する電圧検出器を設け、前記スイッチング素子がオンの期間の前記直流電源の電圧と前記リアクトルに流れる電流の変化率と予め記憶した前記リアクトルのインダクタンス値とから直流出力電圧を検出することを特徴とする直流出力電力変換装置の出力電圧検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−223665(P2011−223665A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87470(P2010−87470)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】