説明

直流回路遮断器

【課題】直流電路において短絡電流の発生時にも引き外し装置を駆動する制御装置に確実に電源供給できて遮断動作を確実に行うことができる直流回路遮断器を得る。
【解決手段】直流電路を開閉する開閉接点2と、この開閉接点2を開放する引き外し装置7と、直流電路の電流を検出する第1及び第2の電流センサ3a、3bと、この第1及び第2の電流センサ3a、3bの検出電流に応動し引き外し装置7を動作させる制御装置6と、直流電路に設けられ、該直流電路の電流変化を検出する第1及び第2の交流変流器8a、8bと、直流電路の短絡事故による過大電流発生時に第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力に基づく電力を制御装置6に供給する第1の電源回路9とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路遮断器における電源装置としては、交流電路中を流れる電流の変化に応じた電流を出力する交流変流器を設け、その出力電流を合成して生成された直流電圧を引き外し装置の制御回路に供給しているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−188532号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路遮断器の電源に交流変流器を用いた場合、上記のような交流電路においては、短絡事故発生時に短絡電流により交流変流器の磁心が飽和したとしても該短絡電流は交番電流なので、短絡電流の向きが交番するごとに交流変流器から出力電流を継続的に得ることができ、開閉接点の引き外しを行う制御回路に電源を継続して供給できて遮断動作を確実に行うことができる。
ところが、直流電路においては、短絡電流が増加して交流変流器の磁心が飽和するまでもしくは短絡電流が飽和するまでのどちらか短い時間の1回しか交流変流器からの出力電流を得られない。このため、定格電流の数倍程度の短絡電流時に出力電圧が得られるような交流変流器を設けると、短絡電流が回路遮断器の遮断容量の限界近くの非常に大きい場合に、非常に短い時間で交流変流器の磁心が飽和してしまい制御回路に引き外し装置を駆動する十分な時間、電源供給することができない。逆に回路遮断器の遮断容量の限界近くの大きな短絡電流に合わせた交流変流器を設けると短絡電流が定格電流の数倍程度の大きくない場合に、引き外し装置を駆動する制御回路が動作可能な出力電圧を交流変流器から得られないこととなり、遮断動作を確実に行えないという問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような実情に着目してなされたもので、直流電路において短絡事故の発生時に短絡電流の大小にかかわらず引き外し装置を駆動する制御回路に確実に電源供給できて遮断動作を確実に行える直流回路遮断器を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の直流回路遮断器は、直流電路を開閉する開閉接点と、この開閉接点を開放する引き外し装置と、直流電路の電流を検出する電流検出手段と、この電流検出手段の検出電流に応動して前記引き外し装置に引き外し信号を出力する制御装置と、直流電路に設けられ、直流電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず少なくとも1つからは所定の電圧が所定時間以上得られるように互いの出力特性を異ならせた複数の交流変流器と、直流電路に短絡電流が流れたとき交流変流器の出力電圧に基づいて制御装置に電力を供給する第1の電源回路と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず少なくとも1つからは所定の電圧が所定時間以上得られるように互いの出力特性が異なる複数の交流変流器の出力電圧に基づいて引き外し信号を出力する制御装置に電力を供給する第1の電源回路を備えたことにより、直流電路において短絡電流の発生時にも引き外し装置を駆動する制御装置に電源供給できて遮断動作を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施形態1における直流回路遮断器の構成を示すブロック図である。図2は短絡事故時の直流電路電流及び直流電路に設けられた第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bの出力を示す波形図で、(a)は直流電路に流れる電路電流と第1の交流変流器8aの出力電流及び出力電圧の波形図、(b)は直流電路に流れる電路電流と第2の交流変流器8bの出力電流及び出力電圧の波形図、(c)は直流電路1a及び1bに流れる電路電流と第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bの合成出力を示す波形図である。図3は第1の電源回路9と第2の電源回路10で生成される出力電圧の波形図で、(a)は第1の電源回路9で生成される出力電圧の波形図、(b)は第2の電源回路10で生成される出力電圧の波形図、(c)は第1の電源回路9の出力電圧と第2の電源回路10の出力電圧を合成した電源電圧Vccの波形図である。
【0009】
図1において、直流回路遮断器100は、直流電路1a、1bを開閉する開閉接点2と、直流電路1aに流れる電流を検出する第1の電流センサ3aおよび直流電路1bに流れる電流を検出する第2の電流センサ3b、すなわち電流検出手段と、第1および第2の電流センサ3a、3bの出力信号を所定のレベルへ変換する信号変換回路4と、信号変換回路4の出力信号をデジタル値に変換するA/D変換回路5と、A/D変換回路5から出力されるデジタル値に基づいて電流値を演算し、演算結果が所定の閾値を超過した場合に引き外し信号を出力する制御装置6と、この制御装置6からの引き外し信号が発せられた場合に開閉接点2を開放する引き外し装置7と、直流電路1aに設けられ、直流電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず少なくとも1つからは所定の電圧が所定時間以上得られるように互いの出力特性を異ならせた複数の交流変流器、たとえば第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bと、第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力を合成した電力から生成され、電源電圧Vccを供給する第1の電源回路9と、直流電路1a、1bの線間電圧から生成され、電源電圧Vccを供給する第2の電源回路10とから構成されている。直流回路遮断器100の負荷側には、直流負荷11が接続されている。
【0010】
以下、第1及び第2の電源回路9、10の詳細について説明する。
第1の電源回路9は、第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力電圧を合成して整流するフルダイオードブリッジからなる第1の整流回路91と、この第1の整流回路91の正側後段に設けられ、電流を制限する第1の電流制限抵抗器92と、第1の電流制限抵抗器92の出力と第1の整流回路91の負側とに接続されたコンデンサ93と、このコンデンサ93と第1の電流制限抵抗器92との接続点に接続され、電流を制限する第2の電流制限抵抗器94と、第2の電流制限抵抗器94の出力とコンデンサ93の負側とに接続された第1のツェナーダイオード95とで構成されている。
【0011】
また、第2の電源回路10は、直流電路1a、1bに接続されたフルダイオードブリッジからなる第2の整流回路101と、この第2の整流回路101の正側後段に接続され、電流を制限する第3の電流制限抵抗102と、この第3の電流制限抵抗102の後段に設けられ、第3の電流制限抵抗102の出力と第2の整流回路101の負側とに接続された定電圧回路103と、第3の電流制限抵抗102の出力と第2の整流回路101の負側とに接続され、定電圧回路103に入力される電圧を抑制する第2のツェナーダイオード104と、定電圧回路103の出力に接続され、電流の逆流を防止する逆流防止用ダイオード105とで構成されている。そして、第2の電源回路10の逆流防止用ダイオード105の出力と第1の電源回路9の第1のツェナーダイオード95の正側とが接続され、第1のツェナーダイオード95の両端間の電圧が、電源電圧Vccとして第1及び第2の電流センサ3a、3b、信号変換回路4、A/D変換回路5及び制御装置6に供給されている。
【0012】
また、第1の交流変流器8aは回路遮断器の定格電流の数倍程度の短絡電流で、出力電圧として制御装置6等の動作可能下限電圧V10を得ることを目的とし、第2の交流変流器8bは回路遮断器の遮断容量に近い大きな短絡電流が流れたとき動作可能下限電圧V10を制御装置6が動作できる時間確保することを目的とし、例えば第1の交流変流器8aの2次巻線数は第2の交流変流器8bの2次巻線数の1/3に設定されている。
【0013】
なお、引き外し判定のための所定の閾値は図示しない入力手段により任意に設定できる値で、例えば直流回路遮断器の定格電流の200%〜1000%の範囲で選択可能である。また、第1および第2の電流センサ3a、3bは、例えばホール素子を用いた電流センサを用いる。
【0014】
次に動作について説明する。
通常時においては、直流電路1a、1bの線間電圧が第2の電源回路10の第2の整流回路101に印加される。第2の整流回路101は、正負を逆接続されても正常動作させるために設けられている。第2の整流回路101の出力は第3の電流制限抵抗102を介して第2のツェナーダイオード104に印加され、第2のツェナーダイオード104により抑制された電圧が定電圧回路103に入力される。定電圧回路103により定電圧化された電圧が逆流防止用ダイオード105を介して、電源電圧Vccとして第1の電流センサ3a、第2の電流センサ3b、信号変換回路4、A/D変換回路5及び制御装置6に供給される。一方、直流電路1a及び1bに流れる電流は直流であり大きな変動はないため、第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力電圧は発生せず、第1の電源回路9は動作しない。
【0015】
直流電路1a、1bの負荷側における短絡事故発生時においては、線間電圧が喪失されるので、図3(b)に示すように第2の電源回路10の生成電圧は制御装置6などの電力消費により低下していく。
【0016】
しかし、第1の電源回路9において、直流電路1a、1bの電路電流が急激に増加するので、図2(a)に示すように、第1の交流変流器8aの出力電流及び電圧は、電路電流の増加に伴い急速に立ち上がるが、磁心がすぐに磁気飽和するので出力は短時間で低下する。一方、図2(b)に示すように、第2の交流変流器8bの出力電流及び電圧は、第1の交流変流器8aに比べると、ゆるやかに立ち上がり、磁心がすぐには磁気飽和しないので、第2の交流変流器8bの出力は第1の交流変流器8aに比べ長時間維持される。そして、第1の交流変流器8aと第2の交流変流器8bの出力を合成した出力は、図2(c)に示すように立ち上がり時間も短く、出力の維持時間も長いものとなる。
【0017】
図3(a)に示すように第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bの合成出力は、第1の整流回路91で整流され、第1の電流制限抵抗器92を介してコンデンサ93に電荷が充電されて、第1の電源回路9の出力電圧は上昇し始める(図3(a)のT0〜T1)。図3(c)に示すように、第1の電源回路9におけるコンデンサ93の充電電圧が第2の電源回路10の出力電圧よりも高くなると(T1)、第1の電源回路9が主電源となり制御回路6等への電源電圧Vccを供給し始める。なお、ここでは簡単のため逆流防止用ダイオード105の順方向電圧は無視している。
【0018】
制御装置6は信号変換回路4、A/D変換回路5を経て入力される直流電路1a、1bを流れる電路電流のデジタル信号値に対し、あらかじめ設定されている引き外し閾値との比較判定を行い、直流電路1a、1bに流れる電路電流が引き外し閾値を超過すると(T2)、引き外し装置7に対し引き外し信号を発する。その後、引き外し装置7により開閉接点2が開放され、直流電路の開離が完了する(T3)。
【0019】
なお、本実施の形態では、第2の電源回路10で生成される電圧が制御装置6の動作可能下限電圧V10(例えばDC5V)を下回る前に第1の電源回路9が動作可能下限電圧V10を生成できる例を示したが、第1の電源回路9が動作可能下限電圧V10を生成する前に第2の電源回路10の電圧供給が動作可能下限電圧V10より低下しても問題はない。つまり、電路電流が引き外し閾値を超過する期間に第1の電源回路9により動作可能下限電圧V10が生成できていればよく、本実施の形態では引き外し動作の際に第2の電源回路10で生成される電圧は必要ない。しかし、短絡電流のように急激な電路電流の変化のない、例えば過負荷電流に対しては第1の電源回路9から電源電圧を生成することが困難であるため、第2の電源回路10が必要である。
【0020】
本実施の形態によれば、電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず少なくとも1つからは所定の電圧が所定時間以上得られるように互いの出力特性が異なる第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力電圧に基づいて引き外し信号を出力する制御装置6に電力を供給する第1の電源回路9を備えたことにより、直流電路において短絡電流の発生時にも引き外し装置7を駆動する制御装置6に電源供給できて遮断動作を確実に行うことができる。
【0021】
また、第1の交流変流器8aは出力の立ち上がり時間が短く所定の電圧を出力する交流変流器とし、第2の交流変流器8bは第1の交流変流器8aより出力の立ち上がり時間が長くて、磁気飽和に至るまでの時間が長い交流変流器としたので、電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず引き外し装置7を駆動する制御装置6に確実に電源供給できて遮断動作を行うことができる。
【0022】
また、電路1a、1bの線間電圧に基づいて制御装置6に電力を供給する第2の電源回路10を備えたので、過電流発生時にも第2の電源回路10から引き外し装置7を駆動する制御装置6に電源供給できて遮断動作を確実に行うことができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、第1の交流変流器8aはできるだけ速く制御装置6等の動作可能下限電圧V10を得るように、第2の交流変流器8bはできるだけ長く制御装置6等の動作可能下限電圧V10を確保なできるように磁気飽和特性を異ならせる方法として、2次巻線数を変える方法を示したが、この方法に限るものではない。例えば、ギャップ付の磁心を使用してギャップを変えることで磁気飽和特性を異ならせる方法、交流変流器の磁心の断面積を変える方法、交流変流器の磁心の磁路長をかえる方法、交流変流器の磁心の材料を変える方法などを採用することが可能である。
【0024】
また、本実施の形態では、第1の電源回路9のための交流変流器として、直流電路1a、1bに磁心の飽和電流が異なる交流変流器を各1個ずつ設けたが、短絡事故時により安定した電源を第1の電源回路9により生成するために、互いに磁心の飽和電流が異なる交流変流器を3個以上直流電路に設けてもよい。
【0025】
実施の形態2.
図4は本発明の実施形態2における直流回路遮断器の構成を示すブロック図である。図5は短絡事故時の直流電路電流及び直流電路に設けられた第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bの出力を示す波形図で、(a)は直流電路に流れる電路電流と第1の交流変流器8aの出力電流及び出力電圧の波形図、(b)は直流電路に流れる電路電流と第2の交流変流器8bの出力電流及び出力電圧の波形図、(c)は直流電路1a及び1bに流れる電路電流と第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bの合成出力を示す波形図である。実施の形態1における図2と異なり、短絡電流は比較的緩やかに増加している。図6は第1の電源回路9と第2の電源回路10で生成される出力電圧の波形図で、(a)は第1の電源回路9で生成される出力電圧の波形図、(b)は第2の電源回路10で生成される出力電圧の波形図、(c)は第1の電源回路9の出力電圧と第2の電源回路10の出力電圧を合成した電源電圧Vccの波形図である。
【0026】
図4において、直流回路遮断器101は、実施の形態1における第1の電源回路9の第1の電流制限抵抗92とコンデンサ93との接続点と、第2の電流制限抵抗96との間に出力制御手段であるスイッチ96を設け、第1及び第2の電流センサ3a、3bのそれぞれの出力信号と所定の基準値とを比較し少なくともいずれか一方が基準値を超過した場合にスイッチ96を閉成制御する出力信号を出力するコンパレータ部12を設けている。なお、コンパレータ部12の基準値は制御装置6へあらかじめ与えている引き外し閾値と等しいか若干小さく設定されることが望ましい。本実施の形態では等しいものとする。その他の構成については、実施の形態1と同様なので、説明は省略する。
【0027】
次に動作について説明する。
通常時においては、直流電路1a、1bの線間電圧が第2の電源回路10の第2の整流回路101に印加される。第2の整流回路101は、正負を逆接続されても正常動作させるために設けられている。第2の整流回路101の出力は第3の電流制限抵抗102を介して第2のツェナーダイオード104に印加され、第2のツェナーダイオード104により抑制された電圧が定電圧回路103に入力される。定電圧回路103により定電圧化された電圧が流防止用ダイオード105を介して、電源電圧Vccとして第1の電流センサ3a、第2の電流センサ3b、信号変換回路4、A/D変換回路5及び制御装置6に供給される。一方、直流電路1a及び1bに流れる電流は直流なので、第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力は発生せず、第1の電源回路9は動作しない。
【0028】
直流電路1a、1bの負荷側における短絡事故発生時においては、線間電圧が喪失されるため、第2の電源回路10の生成電圧は図6(a)に示すように制御装置6などの電力消費により低下していく。
【0029】
第1の電源回路9においては、直流電路1a、1bの電路電流が急激に増加するため、図5(a)に示すように、第1の交流変流器8aの出力電流及び電圧は、電路電流の増加に伴い急速に立ち上がるが、磁心がすぐに飽和するので出力は短時間で低下する。一方、図5(b)に示すように、第2の交流変流器8bの出力電流及び電圧は、第1の交流変流器8aに比べるとゆるやかに立ち上がり、磁心はすぐに飽和しないので、第2の交流変流器8bの出力は第1の交流変流器8aに比べ長時間維持される。そして、第1の交流変流器8aと第2の交流変流器8bの出力を合成した出力は、図5(c)に示すように立ち上がり時間も短く、出力の維持時間も長いものとなる。
【0030】
しかしながら、実施の形態1で示した場合と異なり、短絡電流の増加が比較的緩やかなので、電路電流が遮断電流Imaxに到達する時間T13まで、第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力を得ることはできない。したがって、スイッチ96をオンさせたままだと、図6(a)に示すように電路電流が遮断電流Imaxに到達する前の時間T12に電源電圧Vccは、制御装置6及び引外装置7の動作下限電圧V10より低下してしまい、引き外し装置7を駆動できず、結果として電路の遮断動作を行うことができない。
【0031】
そこで本実施の形態では、図6(b)に示すようにコンデンサ93の充電電圧が動作下限電圧V10(例えば5V)に達して(時間T11)制御装置6等が動作可能な電圧レベルとなっても、スイッチ96をオフのままとし、第1の電源回路9から制御装置6等へは電源電圧の供給を行わないようにする。コンデンサ93は放電することなく第1及び第2の交流変流器8a、8bから得られるエネルギーをすべて充電していく。ただし、第1及び第2の電流センサ3a、3b及びコンパレータ部12へは、コンデンサ93の電圧を電源として供給するものとする。
【0032】
電路電流がさらに増加し第1及び第2の電流センサ3a、3bの出力信号がコンパレータ部12の基準値を超過すると、コンパレータ部12よりスイッチ96に対してオン信号が出力されスイッチ96がオンする(T13)。スイッチ96がオンすると第1の電源回路9から制御装置6、信号変換回路4及びA/D変換回路5へ電源電圧Vccが供給され、制御装置6は信号変換回路4およびA/D変換回路5を経て入力される電路電流のデジタル信号値に対し、あらかじめ設定されている引き外し閾値との比較判定を行う。本実施の形態では引き外し閾値がコンパレータ部11の基準値と等しいため、引き外し装置7に対し直ちに引き外し信号が出力され、引き外し装置7により開閉接点2が開放され、直流電路の開離が完了する。
【0033】
本実施の形態によれば、電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず少なくとも1つからは所定の電圧が所定時間以上得られるように互いの出力特性が異なる第1及び第2の交流変流器8a、8bの出力電圧に基づいて引き外し信号を出力する制御装置6に電力を供給する第1の電源回路9を備えたことにより、直流電路において短絡電流の発生時にも引き外し装置7を駆動する制御装置6に電源供給できて遮断動作を確実に行うことができる。
【0034】
また、第1の交流変流器8aは出力の立ち上がり時間が短く所定の電圧を出力する交流変流器とし、第2の交流変流器8bは第1の交流変流器8aより出力の立ち上がり時間が長くて、磁気飽和に至るまでの時間が長い交流変流器としたので、電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず引き外し装置7を駆動する制御装置6に確実に電源供給できて遮断動作を行うことができる。
【0035】
また、電路1a、1bの線間電圧に基づいて制御装置6に電力を供給する第2の電源回路10を備えたので、過電流発生時にも第2の電源回路10から引き外し装置7を駆動する制御装置6に電源供給できて遮断動作を確実に行うことができる。
【0036】
また、制御装置6、引き外し装置7等へ第1の電源回路9からの電源電圧Vccの供給を開始するタイミングをコンパレータ部12により制御できるため、短絡事故の状態により短絡電流の立ち上がり時間が緩やかな場合でも電源電圧Vccを制御装置6および引き外し装置7等へ供給することができ、引き外し装置7を駆動する制御装置6に確実に電源供給できて遮断動作を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における直流回路遮断器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1における短絡事故時の直流電路電流と直流電路に設けられた第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bの出力を示す波形図である。
【図3】本発明の実施の形態1における第1の電源回路9と第2の電源回路10で生成される出力電圧の波形図である。
【図4】本発明の実施の形態2における直流回路遮断器の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2における短絡事故時の直流電路電流及び直流電路に設けられた第1の交流変流器8a及び第2の交流変流器8bの出力を示す波形図である。
【図6】本発明の実施の形態2における第1の電源回路9と第2の電源回路10で生成される出力電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0038】
2 開閉接点、第1の電流センサ3a、第2の電流センサ3b、
6 制御装置、7 引き外し装置、
8a 第1の交流変流器、8b 第2の交流変流器、
9 第1の電源回路、100 直流回路遮断器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電路を開閉する開閉接点と、この開閉接点を開放する引き外し装置と、前記直流電路の電流を検出する電流検出手段と、この電流検出手段の検出電流に応動して前記引き外し装置に引き外し信号を出力する制御装置と、前記直流電路に設けられ、前記直流電路に短絡電流が流れたとき短絡電流の大小にかかわらず少なくとも1つからは所定の電圧が所定時間以上得られるように互いの出力特性を異ならせた複数の交流変流器と、前記直流電路に短絡電流が流れたとき前記交流変流器の出力電圧に基づいて前記制御装置に電力を供給する第1の電源回路と、を備えた直流回路遮断器。
【請求項2】
複数の交流変流器は、出力の立ち上がり時間が短く所定の電圧を出力する第1の交流変流器と、前記第1の交流変流器より出力の立ち上がり時間が長くて、磁気飽和に至るまでの時間が長い第2の交流変流器とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の直流回路遮断器。
【請求項3】
前記直流電路の線間電圧に基づいて前記制御装置に電力を供給する第2の電源回路を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流回路遮断器。
【請求項4】
電流検出手段の検出電流に基づいて直流電路の電流が所定値を超えたとき第1の電源回路から制御装置に電力を供給する出力制御手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の直流回路遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−103048(P2010−103048A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275535(P2008−275535)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】