説明

直流配電用接続器

【課題】外部にアークを放出することがなく、しかもプラグの栓刃をコンセントの接続部に逆挿することを防止でき安全性を向上させた直流配電用接続器を提供することである。
【解決手段】直流駆動される電気機器に使用されるプラグ11は、長さの異なる一対の栓刃12a、12bを有し、プラグ11の各栓刃12a、12bはコンセント13の挿入孔14a、14bに挿入され、コンセントの挿入孔14a、14bの内部に設けられた一対の接続部15a、15bの接続される。この一対の接続部15a、15bは、プラグ11の各栓刃12a、12bが挿入孔14a、14bに挿入されたとき短い栓刃12bが長い栓刃12aより先に電気接続されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流配電用のプラグ及びコンセントから成る直流配電用接続器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、交流配電用の接続装置としては、プラグとコンセントからなる接続装置が使用されている。プラグには電気機器に使用される一対の栓刃が設けられ、コンセントにはプラグの栓刃が電気接続される一対の接続部が設けられている。
【0003】
一方、直流配電の場合には0Vとなるタイミングがないので、接続装置による閉離時にアークが発生する。従って、交流配電用の接続装置であるプラグとコンセントを使用する場合には、アークの発生を抑制する機構を設けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、アークの発生は許容し、直流電流によるアークがプラグに備えてある一対の接続端子の両方で生じるといった事態を防止することができるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。すなわち、プラグの一対の接続端子の一方と他方とでプラグからの突出長さを相違させて、コンセントの接続部から開離するタイミングを相違させ、一対の接続端子の両方で生じるといった事態を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−146783号公報
【特許文献2】特開2009−146777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものではアークの発生を抑制する機構が必要となり、装置構成が複雑となる。また、特許文献2のものでは、一対の接続端子の両方で生じるといった事態を防止できるが、プラグの接続端子とコンセントの接続部との間で発生したアークが接続装置の外部に放出される可能性があり安全性が十分でない。
【0007】
また、直流配電の場合にはプラスとマイナスとの極性を逆に接続すると、電気機器を損傷することになるので、プラグの接続端子のコンセントへの挿入については誤りなく挿入することが必要となるが、特許文献2のものにはその対策が施されていない。
【0008】
本発明の目的は、外部にアークを放出することがなく、しかもプラグの栓刃をコンセントの接続部に逆挿することを防止でき安全性を向上させた直流配電用接続器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係わる直流配電用接続器は、直流駆動される電気機器に使用される長さの異なる一対の栓刃を有したプラグと;前記プラグの各栓刃が挿入される挿入孔を有したコンセントと;前記コンセントの挿入孔の内部に設けられ、前記プラグの各栓刃が挿入孔に挿入されたとき短い栓刃が長い栓刃より先に電気接続されるように配置された一対の接続部と;を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明及び以下の発明において、特に指定しない限り用語の定義及び技術的意味は以下による。
【0011】
直流駆動される電気機器とは、直流電源で動作する電気機器をいう。栓刃とは、例えば、プラグにおいてコンセントに差し込む銅合金製の板状の刃をいい、プラグから突出して設けられる。また、長さの異なる一対の栓刃とは、直流のプラスとマイナスの極性に対応して設けられた2つの栓刃のコンセントへの差込方向の長さが相違することを言う。
【0012】
プラグの各栓刃が挿入される挿入孔とは、プラグの栓刃をコンセントの挿入孔の内部に設けられた接続部に案内するための孔をいう。
【0013】
一対の接続部とは、一対の栓刃に対応して設けられ栓刃と電気的な接続を行うための電気部材をいう。また、「プラグの各栓刃が挿入孔に挿入されたとき短い栓刃が長い栓刃より先に電気接続される」とは、各栓刃をコンセントの挿入孔に挿入したときに、短い栓刃が先にコンセントの接続部に到達して接触し、その状態のときには、長い栓刃がコンセントの接続部には未到達で非接触の状態にあることをいい、その後に、さらに各栓刃を挿入孔に押し込んだときに、後で長い栓刃がコンセントの接続部に接触することをいう。
【0014】
請求項2の発明に係わる直流配電用接続器は、請求項1の発明において、前記一対の栓刃は互いに異なった形状であり、前記長い栓刃は、前記短い栓刃よりも前記接続部との接合面積が大きく先端部の一部に尖鋭部を有したことを特徴とする。
【0015】
「一対の栓刃は互いに異なった形状」とは、例えば、コンセントへの差込方向に対する垂直断面形状が異なった形状であることをいう。これに伴い、コンセントの挿入孔の形状が異なった形状となる。例えば、一方の栓刃のコンセントへの差込方向に対する垂直断面形状を縦長の長方形とし、他方の栓刃のコンセントへの差込方向に対する垂直断面形状を横長の長方形や円弧形状とする。これにより、栓刃の逆挿が防止できる。
【0016】
「接続部との接合面積が大きい形状」とは、栓刃が接続部と接合する面積が大きくなる形状であり、例えば、コンセントへの差込方向に対する垂直断面形状が長方形である場合には幅広の長方形とし、また、同じ幅であれば平面形状に代えて円弧形状とする。これにより、接続部との接合部の電流容量を確保する。また、尖鋭部とは、栓刃の先端部に形成されたアーク発生ポイントをいう。アークは尖鋭部に集中して発生することからアーク対策のメインテナンスが行いやすくなる。
【0017】
請求項3の発明に係わる直流配電用接続器は、請求項1または2の発明において、前記長い栓刃は、前記コンセントの陰極に接続される極性としたことを特徴とする。
【0018】
コンセントの陰極とは、電気機器からコンセントの接続部に直流電流が戻る方向の極をいう。従って、コンセントの陰極側から長い栓刃側に向けてアーク(電子)が流れる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、一対の接続部は、プラグの各栓刃が挿入孔に挿入されたとき短い栓刃が長い栓刃より先に電気接続されるように配置されているので、コンセントの接続部と長い栓刃との間でアークが発生することになる。従って、アークが発生した場合においても、プラグの栓刃の挿入部分より離れた場所であるコンセントの挿入孔の内部でアークが発生することになるので、アークが外部に放出されることを防止でき安全性が向上する。また、栓刃の長さが異なることにより、プラグをコンセントに逆挿した場合においても短い栓刃とコンセントの接続部とが接合できず、極性を反転させて通電されることはない。さらに、アークが発生する極を長い栓刃側に限定できるため、耐アーク構造は片方の極である長い栓刃のみとすることができ、劣化による寿命を延ばすことが可能となる。
【0020】
請求項2の発明によれば、一対の栓刃は互いに異なった形状とするので、プラグをコンセントに逆挿することを防止できる。また、アークが発生する長い栓刃は、短い栓刃よりも接続部との接合面積を大きい形状として電流容量を確保し、また、尖鋭部によりアークの発生する箇所を端部に特定するので、アークの対策を容易に行える。
【0021】
請求項3の発明によれば、アークが発生する長い栓刃は、コンセントの陰極に接続される極性とするので、コンセントの陰極側から長い栓刃側に向けてアークが流れる。これにより、コンセントの接続部よりも長い栓刃の方がアークによる影響を受け易くなり、アークによるメンテナンスがし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の一例の説明図。
【図2】図1に示した直流配電用接続器のプラグをコンセントに接続する接続過程の説明図。
【図3】本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の他の一例の説明図。
【図4】本発明の実施の形態おけるプラグのコンセントへの逆挿防止のためのコンセントの挿入孔の一例の平面図。
【図5】本発明の実施の形態おけるプラグのコンセントへの逆挿防止のためのコンセントの凹部の一例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の一例の説明図であり、図1(a)は本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の一例のプラグの斜視図、図1(b)は本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の一例のコンセントの平面図である。
【0024】
図1(a)において、プラグ11は直流駆動される電気機器に使用される直流配電用のプラグであり、長さの異なる一対の栓刃12a、12bが設けられている。すなわち、長い栓刃12aと短い栓刃12bとがプラグ11の前面に突出して設けられている。長い栓刃12aと短い栓刃12bとの一対の栓刃12は、図1(b)に示すコンセント13の挿入孔14a、14bに挿入され、コンセント13の挿入孔14a、14bの内部に設けられた接続部に接続される。
【0025】
図2は、図1に示した直流配電用接続器のプラグ11をコンセント13に接続する接続過程の説明図であり、図2(a)はプラグ11の挿入前の状態を示す側面図、図2(b)はプラグ11の短い栓刃がコンセント13の接続部に接触した状態を示す側面図、図2(c)はプラグ11の双方の栓刃14a、14bがコンセント13のそれぞれの接続部に接触した状態を示す側面図である。
【0026】
図2において、コンセント13には、プラグ11の長い栓刃12a及び短い栓刃12bに対応して、挿入孔14a、14bが設けられている。そして、挿入孔14aの内部には、長い栓刃12aと接続される接続部15aが設けられ、同様に、挿入孔14bの内部には、短い栓刃12bと接続される接続部15bが設けられている。つまり、一対の栓刃12a、12bに対して一対の接続部15a、15bが設けられている。
【0027】
プラグ11をコンセント13に接続するにあたっては、図2(a)に示すように、プラグ11の長い栓刃12aをコンセント13の挿入孔14aの入口に位置させ、プラグ11の長い栓刃12aをコンセント13の挿入孔14aに挿入していく。それに伴い、プラグ11の短い栓刃12bもコンセント13の挿入孔14bに挿入される位置となり、さらにプラグ11をコンセント13に挿入していく。
【0028】
そうすると、図2(b)に示すように、まず、短い栓刃12bが挿入孔14bの内部に配置された接続部15bに接触する。この状態では、長い栓刃12aは挿入孔14aの内部に配置された接続部15aには未到達であり非接触の状態にある。すなわち、長い栓刃12aと接続部15aとの間にはギャップgが存在することになるが、コンセント13の接続部15a、15b間には直流電源電圧が印加されており、短い栓刃12bが接続部15bに接触していることから、長い栓刃12aと接続部15aとの間のギャップgにアークが発生する。これにより、コンセント13側(直流電源側)からプラグ11側(電気機器側)に直流電流が流れることになる。
【0029】
図2(b)の状態では、アークが発生してもコンセントの挿入孔14aの奥まった箇所であるので、長い栓刃12aと接続部15aとの間のギャップgで発生するアークが挿入孔14aから外部に流出することはない。これにより、安全性を確保できる。
【0030】
図2(b)の状態から、さらにプラグ11をコンセント13に挿入していくと、図2(c)に示すように、短い栓刃12bは接続部15bに接合し、長い栓刃12aも接続部15aに接合する。従って、長い栓刃12a及び短い栓刃12bはともに接続部15a、15bに接続された状態であるので、図2(c)の状態では、アークは発生しない。
【0031】
次に、図2(c)の状態から、プラグ11をコンセント13から離脱させる場合についても同様に、プラグ11をコンセント13から引き抜いていくと、まず、長い栓刃12aは接続部15aとの間にアークを生じながら離脱する。そして、図2(b)に示すように、短い栓刃12bが接続部15bと接続された状態で、長い栓刃12aと接続部15aとの間がギャップgを超えるとアークが消滅する。この場合も、アークが発生してもコンセントの挿入孔14aの奥まった箇所であるので、長い栓刃12aと接続部15aとの間のギャップgで発生するアークが挿入孔14aから外部に流出することはない。これにより、安全性を確保できる。
【0032】
そして、図2(b)の状態から、さらにプラグ11を引き抜くと、短い栓刃12bが接続部15bから離脱するので、プラグ11はコンセントから離脱した状態となり、アークの発生はなくなる。これにより、プラグ11をコンセント13から安全に引き抜くことができる。このように、一対の接続部15a、15bは、プラグ11の各栓刃12a、12bが挿入孔14a、14bに挿入されたとき、短い栓刃12bが長い栓刃12bより先に電気接続されるように配置されているので、長い栓刃12aと接続部15aとの間にアークが発生しても、アークを挿入孔14aの外部に流出することなく、プラグ11をコンセント13に対し安全に挿脱できる。
【0033】
次に、図3は本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の他の一例の説明図であり、図3(a)は本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の他の一例のプラグの斜視図、図3(b)は本発明の実施の形態に係る直流配電用接続器の他の一例のコンセントの平面図である。この他の一例は、図1に示した一例に対し、長い栓刃12aを平板状のものから半円筒状のものに置き換えたものである。すなわち、コンセントへの差込方向に対する垂直断面形状が長方形のものから円弧形状のものにしたものである。
【0034】
図3(a)において、プラグ11は直流駆動される電気機器に使用される直流配電用のプラグであり、長さの異なる一対の栓刃12a、12bが設けられている。長い栓刃12aは、コンセントへの差込方向に対する垂直断面形状が円弧形状に形成されている。従って、コンセントの挿入孔14aも、図3(b)に示すように、長い栓刃12aの円弧形状に対応して円弧形状に形成され、挿入孔14aの内部に設けられた図示省略の接続部15aも円弧形状に形成されている。これにより、長い栓刃12aと接触部15aとの接触面積は円弧状の曲面となることから平面形状の栓刃に比較して大きくなり、接合部における電流容量を確保できる。なお、コンセントの挿入孔14a、14bにて形成される形状は、直流を意味するD字状となっている。
【0035】
また、長い栓刃12aを円弧形状としたことから、長い栓刃12aの先端部の両端部が尖った尖鋭部となり、アークが発生した場合に、この尖鋭部にアークが集中することになり、長い栓刃12aを接続部15aに挿脱するときに発生するアーク発生ポイントを特定し易くなる。
【0036】
なお、長い栓刃12aの先端部は、一部をさらに突出した形状とすることが好ましい。
【0037】
以上の説明では、長い栓刃12aを円弧形状とし短い栓刃12bを平面形状として、一対の栓刃12a、12bを互いに異なった形状としたが、図4(a)に示すように、長い栓刃12aを幅広の平面形状とし短い栓刃12bを幅狭の平面形状として、一対の栓刃12a、12bを互いに異なった形状としてもよいし、図4(b)に示すように、長い栓刃12aを幅広の平面形状とし短い栓刃12bを幅狭の平面形状で長い栓刃12aに対して90°回転させた方向(クロスする方向)に配置するようにしてもよい。これにより、プラグ11をコンセント13に逆挿することを防止できる。また、長い栓刃12aを平面形状としたときには、その先端部に例えば三角形状の尖った尖鋭部を設けることになる。
【0038】
また、プラグ11をコンセント13に逆挿することを防止するには、図5に示すように、コンセント13の上面に、プラグ11の形状と嵌合する凹部16を設けるようにしてもよい。この場合は、一対の栓刃12a、12bの形状は同じであってもプラグ11をコンセント13に逆挿することを防止できる。なお、この場合もプラグ11の形状を直流を意味するD形としていることから、プラグ11の形状と嵌合する凹部16の形状もD形となっている。
【0039】
次に、一対の栓刃12a、12bは、コンセント13の陽極及び陰極のいずれの極に接続してもよいが、アークが発生する長い栓刃12aをコンセント13の陰極に接続するのが望ましい。これは、アークはコンセントの陰極側から栓刃側に向けて流れるので、そのアークによる影響を受ける箇所として、長い栓刃12aとすることで、アークによるメンテナンスを容易に行えるようにするためである。これにより、コンセント13側の接続部15の損傷が緩和されるので、コンセントの長寿命化が図れる。
【符号の説明】
【0040】
11…プラグ、12…栓刃、13…コンセント、14…挿入孔、15…接続部、16…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流駆動される電気機器に使用される長さの異なる一対の栓刃を有したプラグと;
前記プラグの各栓刃が挿入される挿入孔を有したコンセントと;
前記コンセントの挿入孔の内部に設けられ、前記プラグの各栓刃が挿入孔に挿入されたとき短い栓刃が長い栓刃より先に電気接続されるように配置された一対の接続部と;
を備えたことを特徴とする直流配電用接続器。
【請求項2】
前記一対の栓刃は互いに異なった形状であり、前記長い栓刃は、前記短い栓刃よりも前記接続部との接合面積が大きく先端部の一部に尖鋭部を有したことを特徴とする請求項1記載の直流配電用接続器。
【請求項3】
前記長い栓刃は、前記コンセントの陰極に接続される極性としたことを特徴とする請求項1または2記載の直流配電用接続器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−124098(P2011−124098A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280858(P2009−280858)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】