説明

直流電源装置およびそれを用いた空気調和機

【課題】直流電源電圧の電圧調整するためのリアクタ短絡動作が発生を開始する境界付近の負荷においてリアクタ短絡動作に同期して発生する、リアクタ騒音を抑制すること。
【解決手段】制御部9は、直流電圧を所望の値に制御するために目標直流電圧と前記直流電圧検出手段の出力の差分を参照し前記オン期間△t(0≦t)を可変させるが、前記オン期間△tが0より大の状態から0に移行するのは負荷量検出手段10で検出した負荷量が予め設定された値未満になった時とすることにより、境界付近の負荷におけるリアクタ騒音を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路を制御する直流電源装置であって、特に、力率改善回路の直流電圧可変機能を用いた直流電源装置、およびその直流電源装置を用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流電源装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流し平滑する整流平滑手段と、前記交流電源と前記整流平滑手段の一方の交流入力端との間に接続されたリアクタと、前記交流電源を前記リアクタを介して短絡するスイッチング手段と、前記交流電源のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段と、前記整流平滑手段の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出手段と、前記直流電圧検出手段の出力を参照し前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の間だけ連続的に前記スイッチング手段を短絡させる制御手段で構成される。前記制御手段が前記遅延期間△d(0≦d)及び前記オン期間△t(0≦t)を変更することにより、出力直流電圧値が制御される。
【0003】
従来、直流電圧を所望の値に制御するためには、制御手段が目標直流電圧と前記直流電圧検出手段の出力の差分を参照し前記オン期間△t(0≦t)を可変させることにより実現される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図4は特許文献1に記載された従来の直流電源装置を示すものである。図4に示されるとおり、直流電源装置は交流電源1からの交流電圧を整流平滑部2で直流電圧に変換し、平滑コンデンサにより直流電圧のリップル成分は削除される。そして平滑化された直流電圧はインバータ部3に入力され、電動機4は駆動されている。
【0005】
また、交流電源1と一方の交流入力端との間にリアクタ5が接続されており、前記交流電源1を前記リアクタ5を介して短絡する短絡部6と、前記交流電源1のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出部7と、前記整流平滑部の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出部8と、前記直流電圧検出部の出力を参照し前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の間だけ連続的に前記スイッチング部を短絡させる制御部9が接続されている。制御部9は、直流電圧を所望の値に制御するために目標直流電圧と前記直流電圧検出手段の出力の差分を参照し前記オン期間△t(0≦t)を可変させる。
【0006】
図5は交流電源から直流電源装置に入力される電流とオン期間△tの関係を示しており、AC200Vにおいて目標直流電圧が255Vの場合、3.0A以上ではオン期間△tが0より大きくなり、入力電流が大きくなるほどオン期間△tは大きくなり、直流電源電圧は一定値に保たれる。
【特許文献1】特開2004−72806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、オン期間△tが0と0より大となる境界付近の入力電流において、直流電源の負荷によっては、前記スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生することがある。前記短絡電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期では、リアクタから発生する騒音レベルが異なるため、電源周期ごとの騒音レベルの違いによりリアクタから異音が発生するという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、リアクタから異音が発生させることなく直流電圧を所定の値に制御する直流電源装置を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の直流電源装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流し平滑する整流平滑手段と、前記交流電源と前記整流平滑手段の一方の交流入力端との間に接続されたリアクタと、前記交流電源を前記リアクタを介して短絡するスイッチング手段と、前記交流電源のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段と、前記整流平滑手段の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出手段と、前記直流電圧検出手段の出力を参照し前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の間だけ連続的に前記スイッチング手段を短絡させる制御手段とを備えた直流電源装置に負荷量を検出する負荷量検出手段を設けたものである。
【0010】
前記制御手段は、前記直流電圧検出手段の出力が目標直流電圧になるようオン期間△tを制御し、前記オン期間△tが0より大の状態から0に移行するのは前記負荷量検出手段で検出した負荷量が予め設定された値未満になったときとする。
【0011】
これにより、オン期間△tが0と0より大となる境界付近の入力電流においても、前記スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生することを回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の直流電源装置は、スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生しないことにより、リアクタから異音が発生しなくなり、直流電源装置の騒音低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流し平滑する整流平滑手段と、前記交流電源と前記整流平滑手段の一方の交流入力端との間に接続されたリアクタと、前記交流電源を前記リアクタを介して短絡するスイッチング手段と、前記交流電源のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段と、前記整流平滑手段の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出手段と、前記直流電圧検出手段の出力を参照し前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の間だけ連続的に前記スイッチング手段を短絡させる制御手段とを有する直流電源装置において、前記直流電源装置の負荷量を検出する負荷量検出手段を設け、前記制御手段は、前記直流電圧検出手段の出力が目標直流電圧になるようオン期間△tを制御し、前記オン期間△tが0より大の状態から0に移行するのは前記負荷量検出手段で検出した負荷量が予め設定された値未満になったときにすることにより、オン期間△tが0と0より大となる境界付近の入力電流においても、前記スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生することを回避し、スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生しないことにより、リアクタから異音が発生しなくなり、直流電源装置の騒音低減が可能となる。
【0014】
第2の発明は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流し平滑する整流平滑手段と、前記交流電源と前記整流平滑手段の一方の交流入力端との間に接続されたリアクタと、前記交流電源を前記リアクタを介して短絡するスイッチング手段と、前記交流電源のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段と、前記整流平滑手段の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出手段と、前記直流電圧検出手段の出力を参照し電源半周期中に1回または複数回前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の
間だけ連続的に前記スイッチング手段を短絡させる制御手段とを有する直流電源装置において、前記直流電源装置の負荷量を検出する負荷量検出手段を設け、前記制御手段は、前記直流電圧検出手段の出力が目標直流電圧になるようオン期間△tを制御し、電源半周期中のスイッチング回数が複数回から1回に移行するのは前記負荷量検出手段で検出した負荷量が予め設定された値未満になったときにすることにより、複数回目のオン期間△tが0と0より大となる境界付近の入力電流においても、前記スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生することを回避し、スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生しないことにより、リアクタから異音が発生しなくなり、直流電源装置の騒音低減が可能となる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1から第2の発明の直流電源装置を、室内機と室外機のそれぞれに熱交換器温度検出手段を備えた空気調和機に使用し、暖房運転時には、室内機の熱交換器に配した室内熱交換器温度検出手段を用い、冷房運転時には室外機の熱交換器に配した室外熱交換器温度検出手段を用い、それぞれの運転状態において検出した熱交換の温度を三相電動機に負荷量とすることにより、負荷量検出手段を新たに設けることなく、安価で低騒音な空気調和機を実現するものである。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施形態1におけるブロック図を示すものである。直流電源装置は交流電源1からの交流電圧を整流平滑部2で直流電圧に変換し、平滑コンデンサにより直流電圧のリップル成分は削除される。そして平滑化された直流電圧はインバータ部3に入力され、電動機4は駆動されている。また、交流電源1と一方の交流入力端との間にリアクタ5が接続されており、前記交流電源1を前記リアクタ5を介して短絡する短絡部6と、前記交流電源1のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出部7と、前記整流平滑部の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出部8と、前記直流電圧検出部の出力を参照し前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の間だけ連続的に前記スイッチング部を短絡させる制御部9が接続されている。
【0018】
電動機4には負荷量を検出する負荷量検出手段10が設けられ、負荷量検出手段で検出した負荷量は制御部9に入力される。制御部9は、直流電圧を所望の値に制御するために目標直流電圧と前記直流電圧検出手段の出力の差分を参照し前記オン期間△t(0≦t)を可変させるが、前記オン期間△tが0より大の状態から0に移行するのは前記負荷量検出手段が検出した負荷量が予め設定された値以上となったときにしている。
【0019】
以上のように構成された直流電源装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0020】
図2は交流電源から直流電源装置に入力される電流とオン期間△tの関係を示しており、AC200Vにおいて目標直流電圧が255Vの場合、オン期間△tが0の状態でAC3.0Aで直流電圧と目標直流電圧が一致する。一旦、直流電源装置に入力される電流がAC3.0A超となりオン期間が△tが0より大となった後にAC3.0Aより小さくなると、直流電圧が目標直流電圧よりも大きくなるが、前記負荷量検出手段が検出した負荷量が予め設定された負荷量未満となるAC2.2Aまでは、オン期間△tが0より大の状態で継続する。
【0021】
AC2.2A以下でオン期間△tが0となるが、オン期間△tが0に移行後はAC3.0A超となるまではオン期間△tが0で継続する。
【0022】
入力電流がAC3.0A付近で安定している場合において、前記スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生することを回避することができる。スイッチング部を短絡した電流がリアクタに流れる電源周期と流れない電源周期が交互に発生しないことにより、リアクタから異音発生が無くなり、直流電源装置の騒音低減が可能となる。
【0023】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2におけるブロック図を示すものである。11は空気調和機の室内機、12は室外機であり、13は圧縮機である。
【0024】
冷房運転時には、室外熱交換器温度検出手段15で検出した室外熱交換温度を、暖房運転時には室内熱交換機温度検出手段14で検出した室内熱交換機温度を負荷量とすることで、負荷量検出手段10を新たに設けることなく、安価で低騒音な空気調和機を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかる直流電源装置は、リアクタ騒音を抑制ながらに直流電圧を供給することがさせることが可能となるので空気調和機やヒートポンプ方式給湯機など夜間動作し静音性が求められる家電製品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1における直流電源装置のブロック図
【図2】本発明の実施形態1における直流電源装置に入力される電流とオン期間△tの関係図
【図3】本発明の実施形態2における空気調和機のブロック図
【図4】特許文献1に記載された従来直流電源装置のブロック図
【図5】特許文献1における従来直流電源装置に入力される電流とオン期間△tの関係図
【符号の説明】
【0027】
1 交流電源
2 整流平滑部
3 インバータ部
4 電動機
5 リアクタ
6 短絡部
7 ゼロクロス検出部
8 直流電圧検出部
9 制御部
10 負荷量検出手段
11 空気調和機の室内機
12 空気調和機の室外機
13 圧縮機
14 室内熱交換器温度検出手段
15 室外熱交換器温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流し平滑する整流平滑手段と、前記交流電源と前記整流平滑手段の一方の交流入力端との間に接続されたリアクタと、前記交流電源を前記リアクタを介して短絡するスイッチング手段と、前記交流電源のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段と、前記整流平滑手段の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出手段と、前記直流電圧検出手段の出力を参照し前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の間だけ連続的に前記スイッチング手段を短絡させる制御手段とを有する直流電源装置において、前記直流電源装置の負荷量を検出する負荷量検出手段を設け、前記制御手段は、前記直流電圧検出手段の出力が目標直流電圧になるようオン期間△tを制御し、前記オン期間△tが0より大の状態から0に移行するのは、前記負荷量検出手段で検出した負荷量が予め設定された値未満になった時であることを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流し平滑する整流平滑手段と、前記交流電源と前記整流平滑手段の一方の交流入力端との間に接続されたリアクタと、前記交流電源を前記リアクタを介して短絡するスイッチング手段と、前記交流電源のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段と、前記整流平滑手段の出力直流電圧値を検出し出力する直流電圧検出手段と、前記直流電圧検出手段の出力を参照し電源半周期中に1回または複数回前記ゼロクロス点の遅延期間△d(0≦d)後からオン期間△t(0≦t)の間だけ連続的に前記スイッチング手段を短絡させる制御手段とを有する直流電源装置において、前記直流電源装置の負荷量を検出する負荷量検出手段を設け、前記制御手段は、前記直流電圧検出手段の出力が目標直流電圧になるようオン期間△tを制御し、電源半周期中のスイッチング回数が複数回から1回に移行するのは、前記負荷量検出手段で検出した負荷量が予め設定された値未満になった時であることを特徴とする直流電源装置。
【請求項3】
空気調和機の室内機の熱交換器に熱交換器温度を検出する室内熱交換器温度検出手段と、室外機の熱交換器に熱交換器温度を検出する室外熱交換器温度検出手段を有し、暖房運転時には室内機に配した室内熱交換器温度検出手段を、冷房運転時には室外機に配した室外熱交換器温度検出手段を用いて熱交換器温度を検出し、検出した熱交換器温度を直流電源装置の負荷量とする請求項1または2に記載の直流電源装置を用いたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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