説明

直立状態で旋回する二輪及び三輪の乗用軽車両

【課題】二輪の乗用軽車両に於いて、幼児用補助座席や屋根等を装着した状態で安定した走行が可能な車両、又、三輪の乗用軽車両に於いて軽量・安価で二輪車と同等の整備性・小回り性を持つ車両を提供する。
【解決手段】旋回中心が接地点中心を通過する構造の操舵輪を用いる事で車体が直立した状態で旋回可能とし、ステアリングブレーキによる不安定化を防止する為後輪2を操舵輪とした。又三輪車両に於いてはデファレンシャルギアが不要な後輪二輪を操舵する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直立状態で旋回する二輪及び三輪の乗用軽車両の構造に関する発明である
【背景技術】
【0002】
現在実用化されている二輪の乗用軽車両は、車体を傾斜させて車両を旋回させる構造となっている
【0003】
車体を傾斜した状態でバランスを維持する必要が有り、このバランスを維持する事は運転者の技量に拠る
【0004】
運転者によっては操縦が出来ない者もいる
又、幼児用補助座席を装備した車両では転倒による事故や立ちゴケ(停止状態での転倒)等が発生している
さらに屋根を付加した場合安定した走行はほぼ不可能である
【0005】
現在、後輪二輪を駆動輪とした三輪の原動機付き車両が存在するが、後輪二輪の差動が必須でありデファレンシャルギアを必要とする
デファレンシャルギアを用いる為に、価格・重量・整備性の面で一般の利用には適しておらず一部業務用途以外には普及していない
【0006】
自転車ではデファレンシャルギアを用いない三輪車両も存在するが
回頭性が低い為に小回りが効かず、取り回し・価格・重量・サイズの面で二輪車に劣る為広く普及するには至っていない
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】近藤政市 著 二輪車(自転車,モペット,スクータ,オートバイ)の力学
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決する問題点は、既存の二輪の乗用軽車両では旋回時に車体を傾斜させる必要が有り、運転者は自分の技量で車両の安定を維持しなければならない点と、幼児用補助座席や屋根を付加した場合走行安定性が損なわれる点である
又、三輪車両に於いてはデファレンシャルギアに起因する高価格、高重量、整備性の悪さ、デファレンシャルギアを用いない車両については小回りが効かない点である
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、操舵輪旋回中心が操舵輪の接地点中心を通過する構造の操舵輪を用いる事で、車体を直立したままで車両の旋回を可能とした
又、後輪を操舵輪とすることで上記構造上発生するステアリングブレーキの影響を軽減し安定した走行を実現した
三輪車両に於いては後輪二輪を操舵輪旋回中心が操舵輪の接地点中心を通過する構造の操舵輪とし、デファレンシャルギアを不要とした
【0010】
ステアリングブレーキ現象について以下に説明する
既存の車両は操舵輪の旋回中心を操舵輪の接地点からずらしている為、操舵輪によって発生する旋回力(操舵輪の向いた方向へ車体の向きを変えようとする力)が小さくステアリングブレーキはほぼ発生しない
前輪に本発明の操舵輪の構造を採った場合、走行速度による慣性力が、操舵輪の接地点と車両及び運転者の重心を結ぶ操舵輪の接地点を中心とする円の法線に直交する前方への回転方向の力となり、後輪を浮き上がらせ走行を不安定にする
後輪に本発明の操舵輪の構造を採った場合、ステアリングブレーキによって発生する力は走行速度による慣性力はと反対方向の為に相殺される
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両は、直立した状態で旋回が可能である為旋回時に車体を傾斜させる必要が無い
この事により二輪車に於いては、転倒防止用の補助輪を装備しても走行に支障が無く転倒の危険を大幅に低減出来る
又上記補助輪を格納可能とする事で既存の駐輪施設への駐輪も可能となる
三輪車両に於いては、後輪の操舵輪二輪を操舵する事でデファレンシャルギアを不要とし、軽量・低価格で二輪車と同等の整備性が実現出来る
又二輪を操舵する事で回頭性が向上し、特に低速での旋回半径を小さくする事が可能となる
これらの事に拠って、転倒の恐れが低い幼児用補助座席、屋根を付加した二輪車両、又実用的な価格・重量・整備性及び回頭性を持った三輪車両を実現する事が出来る
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は既存車両の構造を表したものであり(1)操舵輪、(2)駆動輪、(3)操舵輪の旋回中心、(4)操舵輪の旋回中心の接地点、(5)操舵輪の接地点を示している
【図2】図2は直立旋回の為の操舵輪の構造の側面図であり(1)操舵輪の旋回中心、(2)操舵輪の旋回中心の接地点・操舵輪の接地点、(3)ステアリングハンドル、(4)車体(フレーム)を示している
【図3】図3は直立旋回の為の操舵輪の構造の正面図であり(1)操舵輪の旋回中心、(2)操舵輪の旋回中心の接地点・操舵輪の接地点、(3)ステアリングハンドル、(4)車体(フレーム)を示している
【図4】図4は既存車両のステアリングブレーキ現象の車体への影響を表したものであり(1)操舵輪、(2)駆動輪、(3)操舵輪の接地点、(4)慣性力を示している
【図5】図5は直立旋回可能な前輪操舵車両のステアリングブレーキ現象の車体への影響を表したものであり(1)操舵輪、(2)駆動輪、(3)操舵輪の接地点、(4)慣性力(ステアリングブレーキによって変化した慣性力)、(5)操舵輪の接地点と車体及び運転者の重心を結ぶ操舵輪の接地点を中心とする円の法線を示している
【図6】図6は直立旋回可能な後輪操舵車両のステアリングブレーキ現象の車体への影響を表したものであり(1)操舵輪、(2)駆動輪、(3)操舵輪の接地点、(4)慣性力(ステアリングブレーキによって相殺された慣性力)を示している
【図7】図7は直立旋回可能な二輪車量の操舵輪の直進時の状態を表した上面図であり(1)操舵輪、(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)ステアリングハンドルの向き、を示している
【図8】図8は直立旋回可能な二輪車量の操舵輪の直進時の状態を表した正面図であり(1)操舵輪、(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)操舵輪の旋回中心、(6)操舵輪フレーム、(7)ステアリングハンドルの向き、を示している
【図9】図9は直立旋回可能な二輪車量の操舵輪の左折時の状態を表した上面図であり(1)操舵輪,(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)ステアリングハンドルの向き、(6)ハンドル操作によるケーブルの動く方向を示している
【図10】図10は直立旋回可能な二輪車量の操舵輪の左折時の状態を表した正面図であり(1)操舵輪,(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)操舵輪の旋回中心、(6)操舵輪フレーム、(7)ステアリングハンドルの向き、を示している
【図11】図7は直立旋回可能な三輪車量の操舵輪の直進時の状態を表した上面図であり(1)操舵輪、(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)ステアリングハンドルの向き、(6)操舵盤(操舵輪・従動)、(7)連結ロッドを示している
【図12】図12は直立旋回可能な三輪車量の操舵輪の直進時の状態を表した正面図であり(1)操舵輪、(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)操舵輪の旋回中心、(6)操舵輪フレーム、(7)ステアリングハンドルの向き、(8)操舵盤(操舵輪・従動)、(9)連結ロッドを示している
【図13】図13は直立旋回可能な三輪車量の操舵輪の右折時の状態を表した上面図であり(1)操舵輪、(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)ステアリングハンドルの向き、(6)ハンドル操作によるケーブルの動く方向、(7)操舵盤(操舵輪・従動)、(8)連結ロッドを示している
【図14】図14は直立旋回可能な三輪車量の操舵輪の右折時の状態を表した正面図であり(1)操舵輪、(2)車体(フレーム)断面、(3)操舵ケーブル断面、(4)操舵盤(操舵輪側)、(5)操舵輪の旋回中心、(6)操舵輪フレーム、(7)ステアリングハンドルの向き、(8)操舵盤(操舵輪・従動)、(9)連結ロッドを示している
【図15】図15はステアリングハンドルと操舵輪のワイヤーを用いた接続の例を表しており(1)操舵盤(ハンドル側)、(2)操舵盤(操舵輪側)、(3)ワイヤーケーブル、(4)車体にワイヤーを固定するステー、(5)右折時のハンドル操作、(6)左折時のハンドル操作、(7)車体(操舵輪結合部のみ)を示している
【図16】図16は直立旋回可能な電動アシスト二輪車の例の上面図であり(1)駆動輪、(2)操舵輪、(3)ギア、(4)ペダル、(5)座席、(6)補助輪、(7)屋根、(8)荷物カゴを示している
【図17】図17は直立旋回可能な電動アシスト二輪車の例の側面図であり(1)駆動輪、(2)操舵輪、(3)ギア、(4)ペダル、(5)座席、(6)バッテリー、(7)補助輪、(8)屋根及びステー、(9)荷物カゴを示している
【図18】図18は幼児用補助座席を取り付けた直立旋回可能な電動アシスト二輪車の例の側面図であり(1)駆動輪、(2)操舵輪、(3)ギア、(4)ペダル、(5)座席、(6)バッテリー、(7)補助輪、(8)屋根及びステー、(9)幼児用補助座席を示している
【図19】図19は直立旋回可能な電動二輪車の例の上面図であり(1)駆動輪、(2)操舵輪、(3)インホイールモーター、(4)バックミラー、(5)座席、(6)補助輪、(7)屋根(8)荷物カゴ、(9)ヘッドライト・方向指示器、(10)ストップランプ・方向指示器、(11)フットプレートを示している
【図20】図20は直立旋回可能な電動二輪車の例の側面図であり(1)駆動輪、(2)操舵輪、(3)インホイールモーター、(4)バックミラー、(5)座席、(6)バッテリー、(7)補助輪、(8)屋根及びステー、(9)荷物カゴ、(10)ヘッドライト・方向指示器、(11)ストップランプ・方向指示器、(12)フットプレートを示している
【発明を実施するための形態】
【0013】
図16から図20に示した様に、補助輪と屋根を装備した二輪の電動アシスト自転車、原動機付き自転車、上記車両に幼児用補助座席を装備した電動アシスト自転車等が考えられる
又原動機付き車両で高速走行(時速30Km/H以上)を目的とする車両に於いては後輪二輪を操舵輪とした三輪車両が考えられる
これらの車両は基本的には既存の車両の構成部品を用いて製作が可能であるが操舵輪及びステアリングハンドルと操舵輪の連動システムは新規に設計が必要である
一例としてワイヤーケーブルによる連動システムを図15に示す
ステアリングハンドルは操舵盤(ハンドル側)と直結しておりその回転により左右両側のワイヤーケーブルを伸縮させる
ステアリングハンドルの操作は車体にステーを介して設置されたワイヤーケーブルの伸縮によって操舵盤(操舵輪側)へと伝達される
操舵盤(操舵輪側)はワイヤーケーブルの伸縮に伴い回転し、それに直結された操舵輪フレームを回転させる
操舵輪フレームが回転することにより操舵輪の方向が変わる
この時ステアリングハンドルの操作の方向と操舵輪の方向を逆にする事で運転者の感覚に沿った旋回が実現される
二輪車両におけるステアリングハンドル操作と操舵輪の関係を図7、図8、図9、図10に示す
三輪車両におけるステアリングハンドル操作と操舵輪の関係を図11、図12、図13、図14に示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪及び三輪の乗用軽車両に於いて、旋回中心が接地点中心を通過する構造の操舵輪を後輪に用い、直立状態で旋回する車両

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−116295(P2012−116295A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266863(P2010−266863)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(710012025)
【Fターム(参考)】