説明

直線型差動変圧器用ボビン構造

【課題】本発明は、絶縁性樹脂からなるボビンに直接巻線を施し、このボビンの一端側に端子ピンを有する端板を固定することにより、軽量で安価なボビン構造を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による直線型差動変圧器用ボビン構造は、絶縁性樹脂のボビン(1)に巻線(2)を直接設け、このボビン(1)の端部(1b)側に互いに間隔(D)をあけて第1、第2端板(10,11)を一体成形し、複数の端子ピン(12)が各端板(10,11)にインサート成形され、一体成形によるボビン構造をなす構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線型差動変圧器用ボビン構造に関し、特に、絶縁性樹脂からなるボビンに直接巻線を施し、このボビンの一端側に端子ピンを有する端板を固定することにより、軽量で安価なボビン構造を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の直線型差動変圧器用ボビン構造としては、例えば、特許文献1等に開示されている構成を挙げることができるが、巻線2を有するボビン1内のプローブ部7の先端側には棒状のコア6が設けられ、このコア6の先端にはコア先端ガイド5が設けられていることにより、プローブ7を矢印A方向に摺動させてボビン1外周の巻線2によって直線位置を検出することができるように構成されている。
また、図示していないが、巻線2の上面にポッティング剤を介して端板が接着固定され、この端板には複数の端子ピンがインサート成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−311737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の直線型差動変圧器は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、従来構成の直線型差動変圧器のボビンは、金属製パイプの外径に絶縁チューブを巻き付け、その上にポッティング剤で端板を接着して製作していたため、金属製のパイプからなるボビンと、絶縁用チューブ、2つの端板を必要とし、4点構成となるため、組立てには多くの加工工数を必要とし、コストダウンが困難であると共に、軽量化が困難であった。
また、金属製のパイプからなるボビン内を摺動するプローブは、その先端に耐磨耗性の材料からなるキャップを装着する必要があり、組立てにおける負荷となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による直線型差動変圧器用ボビン構造は、絶縁性樹脂からなる円筒状のボビンと、前記ボビンの外周に直接巻回された巻線と、前記ボビンの端部に一体成形され互いに間隔を置いて配設された第1、第2端板と、前記第1端板に保持され前記第2端板を軸方向に沿って貫通する複数の端子ピンと、前記各端子ピンに形成され前記ボビンの半径方向に沿って延設された突出ピン部と、を備え、前記各端子ピンは前記各端板にインサート成形され、前記各突出ピン部は前記各端板間で外部に露出し、前記各突出ピン部には前記巻線の端線がからげられている構成であり、また、前記第1端板は、輪状に形成され、前記第2端板は、中実状の板部材で形成されている構成である。
【発明の効果】
【0006】
本発明による直線型差動変圧器用ボビン構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、絶縁性樹脂からなる円筒状のボビンと、前記ボビンの外周に直接巻回された巻線と、前記ボビンの端部に一体成形され互いに間隔を置いて配設された第1、第2端板と、前記第1端板に保持され前記第2端板を軸方向に沿って貫通する複数の端子ピンと、前記各端子ピンに形成され前記ボビンの半径方向に沿って延設された突出ピン部と、を備え、前記各端子ピンは前記各端板にインサート成形され、前記各突出ピン部は前記各端板間で外部に露出し、前記各突出ピン部には前記巻線の端線がからげられていることにより、ボビンに設けられる端板及び端子ピン等が一体のインサート成形で構成することができ、低価格化、高信頼性化、軽量化を達成することができる。
また、巻線とボビン間の絶縁が不要で、プローブの対磨耗構造が不要となる。また、プローブにボビンと同じ樹脂材料を使用することで軽量化が可能となる。
さらに、前記第1端板は、輪状に形成され、前記第2端板は、中実状の板部材で形成されていることにより、各端子ピンは第2端板を貫通して第1端板の貫通孔の内縁にインサートされ、強固に固定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による直線型差動変圧器用ボビン構造を示す断面図である。
【図2】従来の直線型差動変圧器の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、絶縁性樹脂からなるボビンに直接巻線を施し、このボビンの一端側に端子ピンを有する端板を固定することにより、軽量で安価な直線型差動変圧器用ボビン構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0009】
以下、図面と共に本発明による直線型差動変圧器用ボビン構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。
図1において、符号1で示されるものは、絶縁性樹脂からなる円筒状のボビンであり、このボビン1の外周1aには、周知の励磁用と出力用とからなる巻線2が絶縁チューブ等を介することなく、直接巻回されている。
【0010】
前記ボビン1の一方の端部1bには、輪状をなす第1端板10がこのボビン1と一体成形にて形成されている。
前記端部1b側には、この第1端板10とは軸方向Bに沿って互いに間隔Dをおいて配設された第2端板11がボビン1と一体成形にて形成されている。
【0011】
前記各端板10,11は、前記ボビン1と一体成形により構成されており、前記第2端板11は中実状の板部材で形成され、第1端板10内には、周知のインサート成形によって複数(例えば、6個)の端子ピン12がボビン1の外周に沿って所定角度毎に配設されると共に、この各端子ピン12はボビン1の軸方向Bに沿ってこの第2端板11を貫通するようにインサート成形されている。
【0012】
前記各端子ピン12の基部12aは、前記第1端板10の中心に形成された貫通孔13の内面にインサート成形によって一体状に配設されている。
従って、前記各端子ピン12は、前記ボビン1と一体成形された各端板10,11にインサート成形によって一体かつ各端板10,11間に跨る状態で配設されている。すなわち、各端板10,11は、インサート成形によって各端子ピン12によって一体状に連結している。
【0013】
前記各端子ピン12のほぼ中央位置には、ボビン1の半径方向Cに沿って外側へ向けて突出する突出ピン部14が形成され、各突出ピン14は各端板10,11間の空隙15内で外部に露出している。
前記各突出ピン部14には、図示していないが、前記巻線2の端線がからげられている。
【0014】
従って、本発明によるボビン構造は、ボビン1と、ボビン1の端部1b側に一体成形された第1、第2端板10,11と、各端板10,11にインサート成形された各端子ピン12と、により構成されているため、ボビン構造自体は、1個の一体成形体よりなる1部品として構成され、従来のように、複数の独立した部品を組立てる構成に比べると、部品の単一化されたボビン構造とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明による直線型差動変圧器用ボビン構造は、航空機用、ロボット用、工作機用、宇宙機器用等の各分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 ボビン
1a 外周
1b 端部
B 軸方向
C 半径方向
2 巻線
10 第1端板
11 第2端板
12 端子ピン
12a 基部
13 貫通孔
14 突出ピン部
15 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性樹脂からなる円筒状のボビン(1)と、前記ボビン(1)の外周に直接巻回された巻線(2)と、前記ボビン(1)の端部(1b)に一体成形され互いに間隔を置いて配設された第1、第2端板(10,11)と、前記第1端板(10)に保持され前記第2端板(11)を軸方向(B)に沿って貫通する複数の端子ピン(12)と、前記各端子ピン(12)に形成され前記ボビン(1)の半径方向(C)に沿って延設された突出ピン部(14)と、を備え、
前記各端子ピン(12)は前記各端板(10,11)にインサート成形され、前記各突出ピン部(14)は前記各端板(10,11)間で外部に露出し、前記各突出ピン部(14)には前記巻線(2)の端線がからげられていることを特徴とする直線型差動変圧器用ボビン構造。
【請求項2】
前記第1端板(10)は、輪状に形成され、前記第2端板(11)は、中実状の板部材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の直線型差動変圧器用ボビン構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−242156(P2011−242156A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112068(P2010−112068)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】