説明

相乗的な5’−メチルチオアデノシンの組み合わせ

本発明は、5'-メチルチオアデノシンおよび酢酸グラチラマーの組み合わせ、ならびに多発性硬化症の治療におけるそれらの使用に関する。特定の態様において、本発明は、多発性硬化症の予防および/または治療のための同時、単独または逐次使用のための組み合わされた調製物としての5'-メチルチオアデノシンおよび酢酸グラチラマーを含む製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、5'-メチルチオアデノシンおよび酢酸グラチラマーの組み合わせ、ならびに多発性硬化症の予防および/または治療におけるそれらの使用に関する。特定の態様において、本発明は、多発性硬化症の予防および/または治療のためのその同時、単独または逐次使用のための組み合わされた調製物としての5'-メチルチオアデノシンおよび酢酸グラチラマーを含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多発性硬化症(MS)は、重要な炎症性成分に、主に先進国における、世界中において、200万人の人々が現在冒されている自己免疫疾患である。
【0003】
6つの医薬が再発型MSの治療について現在認可されており、これらには以下が含まれる:3つのインターフェロン-β調製物[アボネックス(インターフェロンβ-1a)(Biogen Idec, Cambridge, Massachusetts, United States)、ベタセロン(登録商標)/ベタフェロン(登録商標)(インターフェロンβ-1b)(Berlex, Montville, New Jersey, United States)、およびレビフ(登録商標)(Serono, Geneva, Switzerland)];酢酸グラチラマー(GA)(コパキソン(登録商標);Teva, Nordani, Israel);ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標);Serono, Geneva, Switzerland);ならびにナタリズマブ(タイサブリ(登録商標);Biogen Idec)[Jacobs et al. Ann Neurol (1996), 39:285-294(非特許文献1); IFNβ Multiple Sclerosis Study Group. Interferon beta-1b is effective in relapsing remitting multiple sclerosis. I. Clinical results of a multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Neurology (1993), 43:655-661(非特許文献2); PRISMS (Prevention of Relapses and Disability by Interferon beta 1a Subcutaneously in Multiple Sclerosis) Study Group. Lancet (1998), 352:1498-1504(非特許文献3); Johnson et al. Neurology (1995), 45:1268-1276(非特許文献4); Hartung et al. Lancet (2002), 360:2018-2025(非特許文献5); Polman et al. N Engl J Med (2006), 354:899-910(非特許文献6)]。インターフェロン-βおよび酢酸グラチラマーは、第一選択薬として作用し、およそ10年間、日常的に使用されてきた。これらの認可された抗MS薬の欠点は、それらが皮下(インターフェロン-βまたはGA)、筋肉内(インターフェロンβ-1a)または静脈内(ナタリズマブ)投与される必要があることである。
【0004】
MSの病態生理学は多面的であり、従来の単剤療法に応答しない患者において最大限の臨床的利益を得るために、補完的な作用機構を有する異なる薬物を併用することが、必要であり得る。薬物の組み合わせを使用することについての主な臨床的根拠は、相加的な治療効果を得るかまたは相乗的な治療効果をも得ることである[Reid. J Hum Hypertens (1995), 9 (Suppl 4):S19-S23(非特許文献7)]。2つまたはそれ以上の薬物の組み合わせを使用することについて2つの薬理学的基礎がある:クラス1併用療法は、互いに独立していると考えられ、かつ、疾患の基礎をなす有害な機構の異なる局面を標的化する、2つ(またはそれ以上)の薬物を含む[Toews et al. Proc Am Thorac Soc 2005; 2:282-289(非特許文献8)]。MSの場合、例えば、一方の薬物はCNS中における細胞輸送を標的化し得、ところがもう一方の薬物は細胞活性化に影響を与え得る。クラス2薬物組み合わせは、単一の細胞型内に異なる分子標的を有するか、またはその細胞型中において単一の応答機構を有する、2つまたはそれ以上の薬理学的薬剤を含む[上述のToews et al. (2005)]。
【0005】
コポリマー1、Cop 1、コパキソン、またはGAとしても公知である、酢酸グラチラマーは、4つのアミノ酸:L-Glu、L Lys、L-Ala、およびL-Tyrから作製された非病原性合成ランダムコポリマーである。その異なる作用機構に起因して、酢酸グラチラマーは、他の薬剤を併用して、補完的でありかつ潜在的に相乗的な治療効果を達成するための、理想的な候補を示し得ることが記載された(Costello et al. Curr Op Neurology (2007), 20:281-285(非特許文献9))。Boggild[Boggild. J Neurol (2006), 253 (Suppl 6):VI/45-VI/51(非特許文献10)]およびRamtahalら[Ramtahal et al. J Neurol (2006); 253:1160-1164(非特許文献11)]は、一連の非ランダム無制御観察ケースにおいて、導入療法としてミトキサントロンを使用し、続いてGAで維持療法を行い、患者の中で再発率の90%低下を観察した。WO2005009333(特許文献1)は、コポリマー1(GA)関連ヘテロポリマーまたはペプチドが、他の免疫抑制剤との併用で、予想外の相乗的効果を誘発し、従って、現在の免疫抑制レジメンの効能を改善することを記載している。
【0006】
残念ながら、GAでの療法は、その必要とされる固定用量、および応答が特定の投与レジメンに非常に影響を受けやすいという事実に由来するいくつかの欠点を有し、その効能を達成するために一日用量を必要とする。さらに、そのワクチン設計に起因して、GA免疫化後の個々の免疫応答は、遺伝的背景または他の免疫学的因子に依存して、個体間で異なり、様々な異なる程度の応答者をもたらす。実際に、MSにおける新たな再発を予防することにおけるGAの現在の効能は、せいぜい25%である。この限られた効能は、いくつかの国におけるその一般に普及した使用を妨げ、それは、しばしば、軽度の疾患を有する患者について処方され;より重篤な疾患を有する患者は、しばしば、GAで治療されない。従って、GAは、現在、再発寛解型MSの治療について認可されているにすぎない。
【0007】
5'-メチルチオアデノシン(MTA)は、ポリアミンであるスペルミンおよびスペルミジンの合成の間にS-アデノシルメチオニン(SAM)から生成される親油性の硫黄含有アデニンヌクレオシドである。MTAは、T細胞活性化の調節、中枢神経系における炎症および脱髄の減少によって、急性実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を予防することができ、および慢性再発性EAE(RR-EAE)を改善し、これらは、多発性硬化症(MS)の2つの異なるモデルである[Moreno et al. Ann.Neurol. (2006) Sep, 60(3):323-334(非特許文献12)]。MTAは、副作用なしに、広範囲の用量で用量−応答効果を示した。さらに、MTAは、その小さなサイズおよび親油性特徴に起因して、経口製剤について好適な薬物である。EP352609は、免疫賦活剤活性を有する薬学的組成物を作製することにおける、アデノシン誘導体、特にMTAの使用を記載している。WO2006097547(特許文献2)は、自己免疫疾患、例えばMSの予防および/または治療における、ならびに移植片拒絶の予防および/または治療における、MTAの使用を記載している。
【0008】
MTAがその免疫調節活性を発揮する作用機構は複雑である[Williams-Ashman et al., Biochem Pharmacol. (1982), 31:277-288(非特許文献13)]。それにもかかわらず、MTAは、シグナル伝達経路の化学的調節によって、CD4+細胞活性化に依存する免疫応答を特異的に調節すると主張され得る。
【0009】
GAは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)について特異的なT細胞受容体の結合について拮抗活性を示した。GAは、脳自己抗原に対する免疫寛容を誘発するためのワクチンとして考えられ得る。GAでの療法が、Th2応答へのシフト、および自己免疫応答を抑制する調節性T細胞の活性化を誘発することが、観察された。そのワクチンタイプの作用機構に起因して、有効となるためには、GAは、CD4+によって媒介されるGAに対する免疫応答を誘発する必要がある。MTAはGA特異的T細胞応答の発生のために必要であるCD4+活性化を抑制するので、MTAおよびGAの組み合わせは、中立であり得るかまたは有害でさえあり得ると予想し得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2005009333
【特許文献2】WO2006097547
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jacobs et al. Ann Neurol (1996), 39:285-294
【非特許文献2】IFNβ Multiple Sclerosis Study Group. Interferon beta-1b is effective in relapsing remitting multiple sclerosis. I. Clinical results of a multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Neurology (1993), 43:655-661
【非特許文献3】PRISMS (Prevention of Relapses and Disability by Interferon beta 1a Subcutaneously in Multiple Sclerosis) Study Group. Lancet (1998), 352:1498-1504
【非特許文献4】Johnson et al. Neurology (1995), 45:1268-1276
【非特許文献5】Hartung et al. Lancet (2002), 360:2018-2025
【非特許文献6】Polman et al. N Engl J Med (2006), 354:899-910
【非特許文献7】Reid. J Hum Hypertens (1995), 9 (Suppl 4):S19-S23
【非特許文献8】Toews et al. Proc Am Thorac Soc 2005; 2:282-289
【非特許文献9】Costello et al. Curr Op Neurology (2007), 20:281-285
【非特許文献10】Boggild. J Neurol (2006), 253 (Suppl 6):VI/45-VI/51
【非特許文献11】Ramtahal et al. J Neurol (2006); 253:1160-1164
【非特許文献12】Moreno et al. Ann.Neurol. (2006) Sep, 60(3):323-334
【非特許文献13】Williams-Ashman et al., Biochem Pharmacol. (1982), 31:277-288
【発明の概要】
【0012】
予想し得たことに反し、今回、驚くべきことに、MS動物モデルへのMTAおよびGAの併用投与が、薬物の各々を別々に投与することと比較して、より強力な免疫調節活性を生じさせることがわかった。従って、MTAおよびGAの併用投与は、MSの有害な影響を減少させることにおいて有用であることがわかり、従って、MSの予防および治療において価値のある療法である。
【0013】
さらに、MTAおよびGAの組み合わせは、GAの個々の限定された効能を克服し得るので、いくつかの利点を有する。MTAおよびGAの組み合わせは、さらに、柔軟な投薬レジメンを可能にし、これは、疾患を十分に制御し、かつ、より広範囲の群の患者についてその適応を広げる機会を増加させ、ある患者の特定の要求へ投薬レジメンを調節することによって個別の療法を可能にする。さらに、MTAは経口投与され得ることから、GAおよびMTAの併用療法は、患者に投与される注射物の量が減少するので、患者のクオリティ・オブ・ライフの改善に関して明らかに有利である。
【0014】
従って、一局面において、本発明は、(A)MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに(B)酢酸グラチラマーを含む組み合わせに関する。代替の様式で表現されると、本発明は、組み合わされた調製物としての、(A)MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに(B)GAを含む製品に関する。
【0015】
別の局面において、本発明は、(A)MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに(B)GAを含む前記組み合わせを含む薬学的組成物に関する。
【0016】
別の局面において、本発明は、多発性硬化症の予防および/または治療におけるその同時、単独または逐次使用のための組み合わされた調製物としての、(A)MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに(B)GAを別々に含む製品に関する。
【0017】
上記で言及された組み合わせ、薬学的組成物または製品は、MSの、特に、再発型MSの、より特には、再発寛解型MSの、さらにより特には、少なくとも6ヶ月間、GA単独で治療された後1つまたは複数の再発が存在する再発寛解型MSの、予防および/または治療において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プラシーボ、MTA、GA、またはMTA+GAで毎日処置されたC57/bl6マウスによって示されたEAE疾患の重篤度の経時的スコアを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の説明
定義
「および/または」という用語は、非排他的な「または」を指し、即ち、「Aおよび/またはB」は、「AおよびB」ならびに「AまたはB」の両方を含む。従って、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグという表現は、MTAのみ、およびMTAの薬学的に許容される塩のみ、およびMTAのプロドラッグのみ、またはそれらの組み合わせを指す。
【0020】
「治療有効量」という用語は、疾患を治療する;特定の疾患の1つまたは複数の症状を改善する、弱める、または除去する;または疾患の1つまたは複数の症状の発症を予防するかまたは遅延させる、化合物または化合物の組み合わせの量を意味する。
【0021】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物または化合物の組み合わせが、製剤の他の成分と適合性であり、かつ患者について有害でないことを意味する。
【0022】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書において使用される場合、医薬の製造において使用され得るMTAの任意の塩を指す。塩の性質は重要ではなく、但し、それは、有毒ではなく、薬学的に許容される。MTAの薬学的に許容される塩の中には、酸付加塩があり、これは、好適な酸とMTAとを好適な化学量論量で反応させることによる、当業者に周知の従来の方法によって、有機酸または無機酸から得ることができる。前記酸付加塩を得るために使用され得る有機酸の例示的な非限定的な例としては、酢酸、p-アミノサリチル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、1,4-ブタンジスルホン酸、シクラミン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸(ヒドロキシブタン二酸)、マロン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸(エタン二酸)、パモ酸、ピルビン酸、プロパン酸、サリチル酸、コハク酸(ブタン二酸)、酒石酸、p-トルエンスルホン酸および同様の酸が挙げられる。同様に、前記酸付加塩を得るために使用され得る無機酸の例示的な非限定的な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸および同様の酸が挙げられる。例として、例えば、MTA塩酸塩は、注射製剤において使用され得;MTA塩酸塩、MTA硫酸塩、MTAクエン酸塩、MTAアスコビル酸塩、MTA 1,4-ブタンジスルホン酸塩(胃耐性錠剤)、MTA p-トルエンスルホン酸塩などは、経口製剤において使用され得る。それらの治療的使用について、MTAの治療的に許容される塩は、薬学的に許容される濃度で投与される。MTAの付加塩は、好適な塩基での処理によって遊離塩基形態へ変換され得る。
【0023】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書において使用される場合、それが対象へ投与されると、該対象へ、直接的にまたは間接的に、MTAを提供することができる、MTAから誘導される任意の化合物を含む。MTAの該プロドラッグの例示的な非限定的な例としては、そのアシル化(例えば、アセチル化または他の)誘導体、そのエステル(例えば、そのピリジンエステルまたは他のもの)などが挙げられる(WO98/16184)。有利には、MTAの前記誘導体は、それが対象へ投与されるとMTAのバイオアベイラビリティーを増加させるか、または生物学的区画中におけるMTAの放出を高める化合物である。前記誘導体の性質は重要ではなく、但し、それは、対象へ投与され得、それは、該対象の生物学的区画中においてMTAを提供する。前記プロドラッグは、当業者に公知の従来の方法によって作製され得る。
【0024】
「予防する」という用語は、このような用語が適用される疾患、障害または状態の、または疾患、障害または状態に関連する1つまたは複数の症状の、発症または再発が起こらないようにすること、生じないようにすること、またはこれを遅延させることを指す。「予防」という用語は、上記で既に定義された予防の行為を指す。
【0025】
「治療する」という用語は、本発明において使用される場合、このような用語が適用される障害または状態の、またはこのような障害または状態の1つまたは複数の症状の、進行を逆転させる、緩和する、または阻害することを指す。「治療」という用語は、上記で既に定義された治療の行為を指す。
【0026】
「対象」という用語は、動物、特に、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ガチョウ、およびヒトを意味する。特に好ましい患者は、両方の性別のヒトを含む、哺乳動物である。
【0027】
硬化症は、進行性の硬化、または硬化であり、間質物質の疾患におけるならびに炎症および結合組織の形成増加に起因する組織の硬化を特に指す。「硬化症」という用語は、結合組織の堆積に起因する神経系のこのような硬化について、または血管の硬化を示すために、主に使用される。
【0028】
多発性硬化症(MS)は、CNSの白質の全体にわたって、時には灰白質中へ広がって、いくつかのサイズの脱髄巣が存在し、脱力、協調運動障害、感覚異常、言語障害および視覚愁訴を生じさせる疾患である。MSは、多くの寛解および再発を伴う長期経過を有する未知の病因の疾患である。「多発性硬化症」または「MS」という用語は、本明細書において使用される場合、良性多発性硬化症(良性MS)、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、二次進行型多発性硬化症(SPMS)、一次進行型多発性硬化症(PPMS)、および進行再発型多発性硬化症(PRMS)を含むように意図される。疾患(MS)のこれらのサブタイプまたは形態は、疾患の経過、関与する炎症のタイプに基づいて、および磁気共鳴画像法(MRI)の使用によって、互いに識別され得る。
【0029】
慢性進行性多発性硬化症は、SPMS、PPMS、およびPRMSを総称して指すために使用される用語である。再発型多発性硬化症は、重なる再発を伴うSPMS、RRMS、およびPRMSである。
【0030】
MTA、(5'-メチルチオアデノシン)[CAS登録番号:2457-80-9]は、以下の構造式を有する:

【0031】
MTAは、Sigma社によって提供され得る市販品である。あるいは、この化合物は、公知の方法によって、例えば、Schienk F. et al., Arch. Biochem. Biophys., 1964, 106:95-100によって記載される方法に従ってS-アデノシル-メチオニン(SAM)より、得ることができる。
【0032】
コパキソン(登録商標)は、有効成分として酢酸グラチラマー(GA)を含有する製剤についての商品名である。酢酸グラチラマーは、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)における再発の頻度を減少させることについて認可されている。GAは、4つの天然アミノ酸:L-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシン、およびL-リジンから作製された合成コポリマーであり、コパキソン(登録商標)中における平均モル比は、それぞれ0.141、0.427、0.095および0.338である。コパキソン(登録商標)において、GAの平均分子量は、4,700〜11,000ダルトンである。化学的には、GAは、L-アラニン、L-リジンおよびL-チロシンを有するL-グルタミン酸ポリマー、アセテート(塩)と呼ばれ;そのCAS登録番号は147245-92-9であり、その構造式は以下である:
(Glu,Ala,Lys,Tyr)x.CH3COOH(C5H9NO4.C3H7NO2.C6H14N2O2.C9H11NO3)x χC2H4O2
【0033】
GAは、Advanced Technology、Finechemie & Pharma、ACC Corp Product、Accurate Chemical And Scientific、Aceto、またはChina Hallochem Pharma Co., Ltdから市販されている。
【0034】
MTAおよびGAの組み合わせ
一局面において、本発明はある組み合わせ、本明細書以下においては以下を含む本発明の組み合わせに関する:
(A)5’-メチルチオアデノシンおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに
(B)酢酸グラチラマー。
【0035】
本発明の前記組み合わせは、任意のその形態の多発性硬化症(MS)を予防および/または治療するために特に有用である。
【0036】
本明細書において使用される場合、「本発明の組み合わせ」は、その成分が、異なる代替提示に従って提供され得る組み合わされた組成物である。特定の態様において、本発明の組み合わせは、1、2またはそれ以上のパック中に組み合わせの成分[(A)および(B)]、ならびに任意で、他の成分またはエレメント(例えば、バイアル、注射器など)を含む製品またはキットとして提供され;該製品またはキットは、特に、1パック組成物または2パック組成物であり得る。本発明の組み合わせは、多発性硬化症の予防および/または治療における同時、単独および/または逐次使用のための組み合わされた調製物として好適である。
【0037】
従って、代替の様式で表現されると、本発明は、組み合わされた調製物としての、(A)5’-メチルチオアデノシン(MTA)および/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに(B)酢酸グラチラマー(GA)を含む製品に関する。
【0038】
特定の態様において、本発明の組み合わせは、MSの治療において有用な1つまたは複数の追加の化合物、例えば、インターフェロン-β(例えば、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1bなど)、ミトキサントロン、ナタリズマブ、フィンゴリモド、ラキニモド、リツキシマブ、ダクリズマブ、ファムプリジン、サティベックス、アレムツズマブ、フマル酸、テリフルノミド、クラドリビン、ミコフェノール酸モフェチル、イブジラスト、アタシセプトなどをさらに含み得る。
【0039】
本発明の組み合わせが、任意のその形態のMSの予防および/または治療に特に好適であることを考えると、本発明の組み合わせは医薬として使用され得る。
【0040】
従って、別の局面において、本発明は、多発性硬化症を予防および/または治療するための医薬の製造における本発明の組み合わせの使用に関する。換言すれば、本発明は、対象におけるMSの予防および/または治療におけるその使用のための本発明の組み合わせを提供し、即ち、本発明は、多発性硬化症の予防および/または治療におけるその同時、単独または逐次使用のための組み合わされた調製物としての、(A)MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに(B)GAを、別々に、含む製品を提供する。
【0041】
同義語において、本発明は、MSの予防および/または治療のための方法であって、このような予防および/または治療の必要がある対象へ、有効量の本発明の組み合わせを投与する工程を含む方法を含む。
【0042】
本発明の特定の態様において、本発明の組み合わせは、多発性硬化症の任意の形態、即ち、良性多発性硬化症、RRMS、SPMS、PPMSおよびPRMSの予防および/または治療のために使用される。本発明の好ましい態様において、本発明の組み合わせは、再発型MS、即ち、RRMSおよびPRMSの予防および/または治療において有用である。本発明のより好ましい態様において、本発明の組み合わせは、再発寛解型MS、特にRRMSの予防および/または治療において有用である。本発明のなおより好ましい態様において、本発明の組み合わせは、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月間、GA単独で治療された後、1つまたは複数の再発が存在する、RRMSを有する対象の予防および/または治療において有用である。別の好ましい態様において、本発明の組み合わせは、MSに苦しみ、GAを伴うミトキサントロンの療法を終えている対象の予防および/または治療において有用である。
【0043】
単独で摂取される場合のMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩の量、ならびに単独で摂取される場合のGAの量は、任意の形態のMSの症状を緩和するのに通常有効である(即ち、治療は部分的に有効である)。あるいは、単独で摂取される場合のMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの量、または単独で摂取される場合のGAの量は、任意の形態のMSの症状を緩和するのに有効でない場合がある(即ち、個々の治療は有効ではなく、しかし、それらは、組み合わされた場合、有効である)。
【0044】
投与されるMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグならびにGAの用量は、個々の場合に依存し、通常、最適な効果のために個々の場合の条件に適合されなければならない。従って、それは、当然、投与の頻度、および治療または予防のために各場合において使用される化合物の効力および作用持続時間に依存するだけでなく、疾患および症状の性質および重篤度、ならびに治療される対象の性別、年齢、体重、共同投薬(共投薬)および個々の感度、ならびに療法が急性または予防的であるかどうかにも依存する。
【0045】
MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの治療有効量は、一般的に、0.01 mg〜50 g/日;0.02 mg〜40 g/日;0.05 mg〜30 g/日;0.1 mg〜20 g/日;0.2 mg〜10 g/日;0.5 mg〜5 g/日;1 mg〜3 g/日;2 mg〜2 g/日;5 mg〜1.5 g/日;10 mg〜1 g/日;または10 mg〜500 mg/日の範囲内に含まれ得る。
【0046】
GAの治療有効量は、50〜150 mg/日;60〜140 mg/日;70〜130 mg/日;80〜120 mg/日;90〜110 mg/日の範囲内に含まれ得るか;または100 mg/日である。同様に、別の特定の態様において、酢酸グラチラマーの量は、10〜80 mg/日;12〜70 mg/日;14〜60 mg/日;16〜50 mg/日;18〜40 mg/日;19〜30 mg/日の範囲内に含まれ得るか;または約20 mg/日である。
【0047】
GAの投与は、毎日のレジメンに基づいて、または、各レジメンにおいて投与される一日量の半分を投与する、1日2回のレジメンにおいて、行われる。代替の特定の態様において、GAの定期的投与が、3〜11日毎に1回;5〜9日毎に1回;7日毎に1回;または24時間毎に1回、行われる。
【0048】
GAの各投与レジメンについて、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグは、6〜24時間毎に1回;7〜22時間毎に1回;8〜20時間毎に1回;9〜18時間毎に1回;10〜16時間毎に1回;11〜14時間毎に1回;または12時間毎に1回、投与され得る。
【0049】
MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグならびにGAは、独立した薬学的製剤としてまたは同一の単位投薬形態の部分として、一緒に投与され得る。あるいは、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグならびにGAは、別々にしかし同一の治療レジメンの部分として投与され得る。前記2つの成分は、別々に投与される場合、本質的に同時に投与される必要は必ずしもなく、しかし、そのように望まれる場合、それらは可能である。従って、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグならびにGAは、独立した用量または投薬形態として投与され得るが、同時に投与され得る。任意で、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグならびにGAの単独投与は、異なる時間で、任意の順序で、行われ得る。
【0050】
本発明の特定の態様において、GAの投与は、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの投与に実質的に先行する。あるいは、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの投与は、GAの投与に実質的に先行する。
【0051】
本発明の別の特定の態様において、GAならびにMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグは、少なくとも4日の期間の間、投与され得る。さらなる態様において、期間は、5日〜5年;10日〜3年;2週間〜1年;1ヶ月〜6ヶ月;または3ヶ月〜4ヶ月であり得る。別の特定の態様において、GAならびにMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグは、対象の生涯にわたって投与され得る。
【0052】
MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびにGAは、互いに独立して、任意の好適な経路、例えば、経口、経鼻、経肺、非経口、静脈内、関節内、経皮、皮内、皮下、局所、筋肉内、直腸、髄腔内、眼内、頬経路、または胃管栄養によって投与され得る。MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの投与経路は、好ましくは、経口経路または胃管栄養による。GAについての好ましい投与経路は、皮下または経口経路である。当業者は、範囲の最も高い限度での用量が、経口投与について必要であり得ることを認識する。
【0053】
特定の態様において、GAは、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、眼内または経口経路によって投与され得、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの投与は、経口的であり得る。別の特定の態様において、GAの投与は皮下的であり得、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの投与は、経口的であり得る。
【0054】
別の局面において、本発明はある薬学的組成物、本明細書以下においては(A)MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに(B)GAを含む、治療有効量の本発明の組み合わせと、薬学的に許容される賦形剤とを含む本発明の薬学的組成物に関する。
【0055】
特定の態様において、本発明の薬学的組成物中における、単独で摂取される場合のGAの量、ならびに単独で摂取される場合のMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの量は、多発性硬化症の症状を緩和するに有効である(即ち、個々の治療は部分的に有効である)。あるいは、単独で摂取される場合の酢酸グラチラマーの量、またはMTAおよび/または単独で摂取される場合のその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの量は、その任意の形態の多発性硬化症の症状を緩和するに有効でない場合がある(即ち、個々の治療は有効ではなく、しかし、それらは、組み合わされた場合、有効である)。本発明の薬学的組成物中のGAの量は、治療的に有効な一日用量と一致している場合があり、10〜80 mg、12〜70 mg、14〜60 mg、16〜50 mg、18〜40 mg、19〜30 mgの範囲内に含まれ得るか、または約20 mgである。あるいは、別の特定の態様において、薬学的組成物中のGAの量は、50〜150 mg、60〜140 mg、70〜130 mg、80〜120 mg、90〜110 mgの範囲内に含まれ得るか、または約100 mgである。
【0056】
本発明の薬学的組成物中のGAの各量について、本発明の薬学的組成物中のMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの量は、0.01 mg〜50 g、0.02 mg〜40 g、0.05 mg〜30 g、0.1 mg〜20 g、0.2 mg〜10 g、0.5 mg〜5 g、1 mg〜3 g、2 mg〜2 g、5 mg〜1.5 g、10 mg〜1 g、10 mg〜500 mgの範囲内に含まれ得る。
【0057】
本発明の好ましい態様において、本発明の薬学的組成物は、その皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内または眼内投与に意図される。
【0058】
別の局面において、本発明はある製品、本明細書以下においては、MSの予防および/または治療におけるその同時、単独または逐次使用のための組み合わされた調製物としてのMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグならびにGAを含む本発明の製品に関する。
【0059】
別の局面において、本発明はさらにキット、本明細書以下においては、独立した薬学的組成物の組み合わせを含むキットであって、ここで、該薬学的組成物の少なくとも1つは、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグを含み、該薬学的組成物の少なくとももう一つは、GAを含む本発明のキットに関する。特定の態様において、本発明のキットは、2つの独立した薬学的組成物を含み、それらのうちの一方は、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグを含み、それらのうちの他方は、GAを含む。キットはまた、前記独立した薬学的組成物についての容器、例えば、分割されたボトルまたは分割されたホイルパケットを含む。容器の例示的な非限定的な例としては、注射器、箱、バッグなどが挙げられる。キットは、通常、独立した成分の投与についての指示書を含む。独立した成分が、好ましくは、異なる投薬形態(例えば、経口および非経口)で投与され、異なる投薬間隔で投与される場合、または、処方医師が、組み合わせの個々の成分の用量を調節したい場合、キット形態が特に有利である。
【0060】
本発明の製品または本発明のキットは、多発性硬化症の予防および/または治療について特に好適である。特定の態様において、本発明の製品またはキットは、任意の形態のMS、例えば、良性多発性硬化症、RRMS、SPMS、PPMSまたはPRMSの予防および/または治療において使用される。好ましい態様において、本発明の製品または本発明のキットは、再発型MS、即ち、RRMSおよびPRMSの予防および/または治療において有用である。より好ましい態様において、本発明の製品または本発明のキットは、再発寛解型MS、特に、RRMSの予防および/または治療において有用である。より好ましい態様において、本発明の製品または本発明のキットは、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月または12ヶ月間、GA単独で治療された後、1つまたは複数の再発が存在するRRMSを有する対象の予防および/または治療において特に有用である。別の好ましい態様において、本発明の製品または本発明のキットは、MSに苦しみ、GAを伴うミトキサントロンの療法を終えている対象の予防および/または治療において有用である。
【0061】
本発明のキットの提供例は、ブリスターパックである。ブリスターパックは、包装産業おいて周知であり、薬学的単位投薬形態(錠剤、カプセル剤、注射器、滅菌散剤など)の包装について広く使用されている。ブリスターパックは、一般的に、好ましくは透明プラスチック材料のフィルムでカバーされた比較的硬い材料のシートからなる。包装プロセスの間、凹部またはキャビティーがプラスチックフィルム中に形成される。凹部は、包装される錠剤またはカプセル剤のサイズおよび形状を有する。あるいは、ブリスターパックの凹部またはキャビティーは、好都合なことに、注射可能な流体医薬、または再構成される滅菌散剤を含有するように製造される。
【0062】
例えば、錠剤、カプセル剤、または注射可能な流体の隣の番号の形態の、記憶補助物をキット中に提供することが望ましい場合があり、番号は、指定の錠剤またはカプセル剤が摂取されるべきであるレジメンの日に対応する。前記記憶補助物の別の例は、例えば、「第1週、月曜日、火曜日など、第2週、月曜日、火曜日」などを示す、カード上に印刷されたカレンダーである。記憶補助物の他のバリエーションは、容易に明らかである。「一日用量」は、所定の日に摂取される、単一の錠剤、カプセル剤、もしくは注射可能な流体、またはいくつかの丸剤、カプセル剤、もしくは注射可能な流体であり得る。さらに、MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの一日用量は、いくつかの錠剤またはカプセル剤からなり得、一方、GAの一日用量は、単一の注射可能な流体からなり得、逆もまた同様である。記憶補助物は、これを反映し、活性薬剤の正しい投与を助けるべきである。
【0063】
別の局面において、本発明は、それらの意図される使用の順序で、一つずつ、各成分(MTAおよび/またはその薬学的に許容される成分および/またはプロドラッグ、ならびにGA)の一日用量を分配するように設計されたディスペンサーに関する。ディスペンサーは、投薬レジメンの順守をさらに容易にするように、好ましくは記憶補助物が備えられている。前記記憶補助物の例は、分配された一日用量の数を示す機械的カウンターである。前記記憶補助物の別の例は、可聴リマインダーシグナル、または液晶読み出しと連結された電池式マイクロチップメモリであり、これは、例えば、摂取された最後の一日用量の日付を読み上げるおよび/または次の用量を摂取するときを思い出させる。
【0064】
特定の態様において、本発明のキットにおいてまたは本発明の製品において、GAの量は、治療的に有効な一日用量と一致していてもよく、10〜80 mg、12〜70 mg、14〜60 mg、16〜50 mg、18〜40 mg、19〜30 mgの範囲内に含まれ得るか、または約20 mgである。あるいは、別の特定の態様において、本発明のキット中または本発明の製品中のGAの量は、50〜150 mg、60〜140 mg、70〜130 mg、80〜120 mg、90〜110 mgの範囲内に含まれ得るか、または約100 mgである。
【0065】
本発明のキット中または本発明の製品中のGAの各量について、同一のキットまたは製品中のMTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグの量は、0.01 mg〜50 g、0.02 mg〜40 g、0.05 mg〜30 g、0.1 mg〜20 g、0.2 mg〜10 g、0.5 mg〜5 g、1 mg〜3 g、2 mg〜2 g、5 mg〜1.5 g、10 mg〜1 g、10 mg〜500 mgであり得る。
【0066】
MTAおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグならびにGAは、経口、直腸、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、もしくは皮下など)、槽内、膣内、腹腔内、膀胱内、局所(例えば、散剤、軟膏剤もしくはドロップによる)に、または口腔用もしくは鼻腔用スプレーとして、対象へ投与され得る。
【0067】
それらの非経口注射に好適な本発明の薬学的組成物としては、生理学的に許容される滅菌水性または非水性液剤、ディスパージョン、懸濁剤または乳剤が挙げられ、または、滅菌注射可能液剤またはディスパージョンへの再構成のための滅菌散剤が挙げられ得る。好適な水性もしくは非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの好適な混合物、トリグリセリド、例えば、植物油、例えば、オリーブ油、または注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。
【0068】
薬学的製剤、特に、GAを含むものはまた、当業者に公知の薬学的に許容されるアジュバントまたは担体を含み得る。前記アジュバントとしては、完全フロイントアジュバントおよび不完全フロイントアジュバントが挙げられる。本発明によって提供される薬学的組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、香料ならびに防腐剤を含み得る。製剤の微生物汚染の予防が、いくつかの抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの添加によって行われ得る。等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含めることも望ましい場合がある。注射可能な薬学的製剤の持続的吸収は、吸収を遅らせることができる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0069】
GAは、薬学的に許容される担体、例えば、水、生理食塩水と共に薬学的組成物に製剤化され得、点眼薬に製剤化され得る。GAはまた、放出システム、例えば、マトリックスシステムに製剤化され得る。
【0070】
経口投与用の固体投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。前記固体投薬形態において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性の通常の賦形剤(例えば、担体)、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムまたは(a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはケイ酸;(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、またはアカシア;(c)湿潤剤、例えば、グリセロール;(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、または炭酸ナトリウム;(e)溶解遅延剤(solution retarding agent)、例えば、パラフィン;(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールまたはグリセロールモノステアレート;(h)吸着剤、例えば、カオリンまたはベントナイト;および/または(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物と混合される。カプセル剤および錠剤の場合、投薬形態はまた緩衝剤を含み得る。
【0071】
同様のタイプの固体製剤はまた、賦形剤、例えば、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質または硬質充填ゼラチンカプセル剤中の充填物として使用され得る。
【0072】
固体投薬形態、例えば、コーティングされた錠剤、カプセル剤および顆粒剤は、コーティングまたはシェル、例えば、腸溶性コーティングおよび当技術分野において公知の他のものを用いて作製され得る。それらはまた、不透明化剤を含有し得、それらが有効成分を遅延様式で放出するように製剤化され得る。使用され得る包埋製剤の例は、ポリマー物質およびワックスである。有効成分はまた、適切な場合、1つまたは複数の上述の賦形剤を有する、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0073】
経口投与用の液体投薬形態としては、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。有効成分に加えて、液体投薬形態は、当技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特定の綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、ミグリオール(登録商標)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などを含有し得る。前記不活性希釈剤に加えて、製剤はまた、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤ならびに香料を含み得る。
【0074】
懸濁剤は、有効成分に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールもしくはソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天またはトラガカント、またはこれらの物質の混合物などを含有し得る。
【0075】
以下の実施例は、本発明を例示するように意図され、それを限定するようには意図されない。
【実施例】
【0076】
実施例1
MS動物モデルへのMTAおよびGAの投与の分析
MS動物モデルへのMTAおよびGA(コパキソン(登録商標))の投与が相乗的効果を有し得るかどうかを評価するために、この実施例を行った。研究は、ナバラ大学のCommittee on Animal Careによって承認された。
【0077】
I.材料および方法
動物
6〜8週齢であり体重20gである、Charles Riverからの雌性C57/bl6マウスを使用し、マウス乏突起膠細胞糖タンパク質の組換え断片(rMOG35-55)での免疫化によって作製されたMS動物モデル(急性EAEモデル)を得、これらのマウスをプラスチックケージに収容し、市販のフードペレットおよび水を適宜与えた。
【0078】
EAE誘発およびスコア
マウスMOG35-55(Sigma)300μgを含有し、かつ5 mg/ml結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(H37Ra株)(Difco)が補われた、等体積の生理食塩水および不完全フロイントアジュバント(IFA)のエマルジョン100μlを用いて、両方の後肢のつけ根において、マウスを免疫化した。続いて、500 gの百日咳毒素(Sigma)を、免疫化の24時間および72時間後に腹腔内(i.p)投与した。
【0079】
盲検の観察者によって、動物は、毎日、体重を量られ、検査され、疾患(EAE)の臨床的兆候の発症が観察された。疾患(EAE)の重篤度を、以下のスケールに従って評価した:0=正常;0.5=軽度の跛行がある尾;1=跛行がある尾;2=後肢の軽度の不全対麻痺、不安定な歩行;3=中程度の不全対麻痺、しかし、随意運動が依然として可能;4=対麻痺または四肢不全麻痺;5=瀕死状態。
【0080】
治療
5’-メチルチオアデノシン(MTA)は、Enantia Inc. (Barcelona, Spain)によって作製され、これを以前記載された方法[Schlenk F. et al., Arch. Biochem. Biophys. (1964), 106:95-100]に従って精製した。動物を、免疫化後に開始した毎日のi.p注射によって、MTA(96 mmol/kg体重=MTA 27.84 mg/kg体重)またはプラシーボ(100 mM Tris緩衝液, pH 7.0)で処置した。
【0081】
酢酸グラチラマー(GA)をTeva Pharmaceutical Industries (Petah Tiqva, Israel)から得、100 μlの0.5 mg/mlの毎日のi.p注射(0.1 mg/マウス/日)によってそれを適用した。
【0082】
EAE誘発(rMOG35-55での免疫化)の同日に、受容する処置に従って、具体的には、(i)プラシーボ(n=6)、(ii)MTA(n=5)、(iii)GA(n=5)または(iv)MTA+GA(n=5)での処置に従って、動物を4つの群へ無作為に分類した。各場合において、処置を毎日施し、動物を盲検で評価した。
【0083】
組織サンプル
研究の終わりに(免疫化後の第31日)、動物に麻酔し、0.1 Mのリン酸緩衝液(pH 7.6)中の4%パラホルムアルデヒドを心臓内に灌流させた。脳ならびに頸髄、胸髄および腰髄の体節を、切開し、一晩固定した。5%スクロース中において一晩4℃でインキュベーションした後、組織をパラフィンに包埋し、組織病理学および免疫組織化学研究を行った。
【0084】
統計分析
EAEスコアを比較するために両側Mann-Whitney検定、疾患の発生率を比較するためにX2検定、ならびに急性EAEの発症の日の差異または慢性再発性EAEにおける二次再発の発症の差異についてKaplan Meier曲線を用いて、統計分析を行った。P<0.05の値が有意差を示すと考えた。SPSS 11.0統計プログラムを使用することによって、統計評価を行った。
【0085】
II.結果
前述したように、EAEの誘発と同日に開始して、動物を、プラシーボ、MTA、GA、またはMTA+GAでの毎日の処置へ無作為に割り当て、盲検で評価した。
【0086】
プラシーボ(n=6)で処置した動物は、進行性体重減少、跛行がある尾、および軽度から中程度の不全対麻痺からなる慢性EAEの神経学的症状を生じさせた。
【0087】
MTA(n=5)で処置した動物およびGA(n=5)で処置した動物は、中間の強度の疾患の過程を示した。
【0088】
最後に、GAおよびMTA(n=5)で処置した動物は、疾患の実質的な抑制を経験した(図1)。
【0089】
MTAが単独で有する免疫調節活性に加えて、得られた結果は、MTAおよびGAの共同投与は、EAEモデルにおける脳自己免疫の抑制において相乗的効果を有することを示している。これらの結果は、MTAおよびGAの併用療法は、GA単独が投与される現在の療法と比較した場合、MSに苦しむ患者について増加した利益をもたらすことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)5'-メチルチオアデノシンおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに
(B)酢酸グラチラマー
を含む、組み合わせ。
【請求項2】
多発性硬化症の治療に有用な1つまたは複数の追加の化合物をさらに含む、請求項1記載の組み合わせ。
【請求項3】
医薬としての使用のための、請求項1または2記載の組み合わせ。
【請求項4】
対象における多発性硬化症の予防および/または治療におけるその使用のための、請求項1または2記載の組み合わせ。
【請求項5】
対象における多発性硬化症の予防および/または治療用の医薬の製造のための、請求項1または2記載の組み合わせの使用。
【請求項6】
有効量の請求項1または2記載の組み合わせ、および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項7】
対象における多発性硬化症の予防および/または治療のためのその同時、単独または逐次使用のための組み合わされた調製物としての、
(A)5'-メチルチオアデノシンおよび/またはその薬学的に許容される塩および/またはプロドラッグ、ならびに
(B)酢酸グラチラマー
を含む、製品。
【請求項8】
多発性硬化症の予防および/または治療のための方法であって、該予防および/または治療の必要がある対象へ、治療有効量の請求項1または2記載の組み合わせを投与する工程を含む、方法。
【請求項9】
予防および/または治療される多発性硬化症が、再発型多発性硬化症である、請求項4記載の組み合わせ、請求項5記載の使用、または請求項7記載の製品、または請求項8記載の方法。
【請求項10】
予防および/または治療される多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症である、請求項4記載の組み合わせ、請求項5記載の使用、または請求項7記載の製品、または請求項8記載の方法。
【請求項11】
予防および/または治療される多発性硬化症が、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、酢酸グラチラマー単独で治療された後、1つまたは複数の再発が存在する、再発寛解型多発性硬化症である、請求項4記載の組み合わせ、請求項5記載の使用、または請求項7記載の製品、または請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、多発性硬化症に苦しみ、酢酸グラチラマーを伴うミトキサントロンの療法を終えている対象である、請求項4記載の組み合わせ、請求項5記載の使用、または請求項7記載の製品、または請求項8記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−515377(P2011−515377A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500244(P2011−500244)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070067
【国際公開番号】WO2009/115634
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510250674)プロイェクト デ バイオメディシナ シマ エス.エル. (1)
【Fターム(参考)】