説明

相乗的殺微生物組成物

【課題】イソチアゾリン−3−オン殺菌剤の相乗作用的組合わせを提供する。
【解決手段】(a)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと(b)アニス酸、デシレングリコール、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、イミノジスクシナート(IDS)、マレイン酸、メチルグリシン二酢酸(MDGA)、フェノキシプロパノール、フィチン酸およびプロピオン酸からなる群から選択される1種以上の化合物との、殺微生物的に相乗的な混合物を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された殺微生物剤と他の殺微生物剤、配合成分または原料との相乗的組み合わせに関し、これは結果的に、個々の抗微生物活性に基づいて個々の成分の組み合わせから予想されるであろう抗微生物活性よりも驚くべきことに高い抗微生物活性を有する組成物を生じさせる。
【背景技術】
【0002】
ある場合においては、市販の殺微生物剤は高い使用濃度でさえ、特定の種類または種の微生物に対する弱い活性のせいで、および/または過酷な環境条件のせいで、特定の微生物の効果的な制御を提供することができない。特定の最終用途環境における複数種の微生物の全体的な制御を提供するために、異なる殺微生物剤の組み合わせが場合によっては使用される。例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと他の殺生物剤との組み合わせが米国特許出願公開第2004/0014799号に開示されており、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと他の殺生物剤との組み合わせが米国特許出願公開第2006/0106024号に開示されている。しかし、様々な株の微生物に対してその効果的な制御を提供する向上した活性を有する、殺微生物剤のさらなる組み合わせ、または殺微生物剤と配合成分もしくは原料との組み合わせについての必要性が依然として存在する。さらに、環境および経済的利益のために、より少ない量の個々の殺微生物剤を含む組み合わせについての必要性が依然として存在する。本発明によって取り組まれる課題は、イソチアゾリン−3−オン殺微生物剤と、他の殺微生物剤、配合成分または原料とのこのようなさらなる組み合わせを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0014799号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0106024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、イソチアゾリン−3−オン殺微生物剤と、他の殺微生物剤、配合成分または原料とのこのようなさらなる組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の実施形態は、
(a)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと;
(b)アニス酸、デシレングリコール、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、イミノジスクシナート(IDS)、マレイン酸、メチルグリシン二酢酸(MDGA)、フェノキシプロパノール、フィチン酸およびプロピオン酸からなる群から選択される1種以上の化合物;
との、殺微生物的に相乗的な混合物を含む組成物に関する。
本発明の第2の実施形態は、
(a)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと;
(b)アニス酸、カプリン酸、デシレングリコール、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチドロン酸、グルコン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、イミノジスクシナート(IDS)、マレイン酸、メチルグリシン二酢酸(MDGA)、フェノキシプロパノール、フィチン酸およびプロピオン酸からなる群から選択される1種以上の化合物;
との、殺微生物的に相乗的な混合物を含む組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「MIT」は2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンであり、2−メチル−3−イソチアゾロンまたはメチルイソチアゾリノンの名称でも呼ばれる。「BIT」は、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンである。「アニス酸」は4−メトキシ安息香酸である。「カプリン酸」はデカン酸である。「デシレングリコール」は1,2−デカンジオールである。「DTPA」はジエチレントリアミン五酢酸である。「エチドロン酸」はヒドロキシエチリデンビスリン酸である。「グルコン酸」はペンタヒドロキシヘキサン酸である。「HEDTA」はヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸である。「IDS」はイミノジスクシナートである。「マレイン酸」は2−ブテンジオン酸である。「MDGA」はメチルグリシン二酢酸である。「フェノキシプロパノール」はプロピレングリコールフェニルエーテルである。「フィチン酸」はイノシトール六リン酸である。「プロピオン酸」はエタンカルボン酸である。
【0007】
本明細書において使用される場合、次の用語は、文脈が明らかに他のことを示さない限りは、特定された定義を有する。用語「殺微生物剤」、「殺生物剤」、「防腐剤」または「抗微生物剤」は、対象において、微生物を殺し、微生物の成長を阻害し、または微生物の成長を制御することができる化合物をいい;殺微生物剤には、これらに限定されないが、殺バクテリア剤、殺真菌剤および殺藻剤が挙げられる。用語「微生物」には、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビなど)、バクテリアおよび藻類が挙げられる。用語「対象(locus)」とは、産業システムもしくは製品、パーソナルケア(personal care)システムもしくは製品、ホームケア(home care)システムもしくは製品、または微生物による汚染を受ける他の環境をいう。用語「化合物」とは、殺微生物剤、配合成分または原料をいう。以下の略語が本明細書を通じて使用される:ppm=重量基準の100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル、ATCC=アメリカンタイプカルチャーコレクション、MBC=最小殺生物濃度、およびMIC=最小阻止濃度。他に特定されない限りは、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージ(%)に関する言及は重量基準である。有機殺生物剤の量はppm(w/w)単位で活性成分基準で示される。比率は重量基準であり、例えば、1/400または1:400のように表されうる。
【0008】
本発明の組成物は、個々の殺微生物剤の組み合わせ、または配合成分もしくは原料と組み合わせた殺微生物剤について、その個々の効力に基づいて予想されるであろうよりも少ない活性成分量で、予想外に向上した殺微生物効力を提供することが見いだされた。
【0009】
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびアニス酸を含む。別の実施形態においては、MITのアニス酸に対する重量比は1/5〜1/13である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびデシレングリコールを含む。別の実施形態においては、MITのデシレングリコールに対する重量比は1/0.8〜1/50である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびDTPAを含む。別の実施形態においては、MITのDTPAに対する重量比は1/0.05〜1/20である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびHEDTAを含む。別の実施形態においては、MITのHEDTAに対する重量比は1/0.05〜1/160である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびIDSを含む。別の実施形態においては、MITのIDSに対する重量比は1/2〜1/300である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびマレイン酸を含む。別の実施形態においては、MITのマレイン酸に対する重量比は1/50〜1/300である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびMDGAを含む。別の実施形態においては、MITのMDGAに対する重量比は1/15〜1/250である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびフェノキシプロパノールを含む。別の実施形態においては、MITのフェノキシプロパノールに対する重量比は1/4〜1/200である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびフィチン酸を含む。別の実施形態においては、MITのフィチン酸に対する重量比は1/10〜1/100である。
本発明のある実施形態においては、組成物はMITおよびプロピオン酸を含む。別の実施形態においては、MITのプロピオン酸に対する重量比は1/7.5〜1/25である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびアニス酸を含む。別の実施形態においては、BITのアニス酸に対する重量比は1/30〜1/1000である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびカプリン酸を含む。別の実施形態においては、BITのカプリン酸に対する重量比は1/30〜1/600である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびデシレングリコールを含む。別の実施形態においては、BITのデシレングリコールに対する重量比は1/50〜1/133である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびDTPAを含む。別の実施形態においては、BITのDTPAに対する重量比は1/0.7〜1/100である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびエチドロン酸を含む。別の実施形態においては、BITのエチドロン酸に対する重量比は1/27〜1/200である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびグルコン酸を含む。別の実施形態においては、BITのグルコン酸に対する重量比は1/80〜1/600である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびHEDTAを含む。別の実施形態においては、BITのHEDTAに対する重量比は1/13〜1/1200である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびIDSを含む。別の実施形態においては、BITのIDSに対する重量比は1/800〜1/1300である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびマレイン酸を含む。別の実施形態においては、BITのマレイン酸に対する重量比は1/30〜1/1000である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびMDGAを含む。別の実施形態においては、BITのMDGAに対する重量比は1/20〜1/1600である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびフェノキシプロパノールを含む。別の実施形態においては、BITのフェノキシプロパノールに対する重量比は1/20〜1/1600である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびフィチン酸を含む。別の実施形態においては、BITのフィチン酸に対する重量比は1/6〜1/300である。
本発明のある実施形態においては、組成物はBITおよびプロピオン酸を含む。別の実施形態においては、BITのプロピオン酸に対する重量比は1/2〜1/1000である。
【0010】
本発明の各組成物における殺微生物剤、配合成分および原料は、「そのまま」使用されることができ、または最初に溶媒または固体キャリアと配合されることができる。好適な溶媒には、例えば、水;グリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなど;グリコールエーテル;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびフェネチルアルコールなど;ケトン、例えば、アセトンおよびメチルエチルケトンなど;エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、クエン酸トリアセチルおよびグリセロール三酢酸など;炭酸エステル、例えば、炭酸プロピレンおよび炭酸ジメチル;並びにこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、溶媒は、水、グリコール、グリコールエーテル、エステル、およびこれらの混合物から選択される。好適な固体キャリアには、例えば、シクロデキストリン、シリカ、珪藻土、クレイ、無機塩、糖、スターチ、ポリマー、シリケート、クラスレート、ゼオライト、ワックス、セルロール系物質(例えば、塩化物、硝酸エステル、臭化物および硫酸エステル誘導体など)、並びに炭が挙げられる。
【0011】
殺微生物剤、配合成分または原料成分が溶媒中に配合される場合には、配合物は場合によっては界面活性剤を含むことができる。界面活性剤には、例えば、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性界面活性剤およびこの混合物が挙げられる。このような配合物が界面活性剤を含む場合には、これは一般的に、エマルション濃縮物、エマルション、マイクロエマルション濃縮物またはマイクロエマルションの形態である。エマルション濃縮物は、充分な量の水の添加の際にエマルションを形成する。マイクロエマルション濃縮物は、充分な量の水の添加の際にマイクロエマルションを形成する。このようなエマルションおよびマイクロエマルション濃縮物は、一般的に当該技術分野においてよく知られている。様々なマイクロエマルションおよびマイクロエマルション濃縮物の製造のさらなる一般的かつ具体的な詳細について、米国特許第5,444,078号が参考にされうる。ある実施形態においては、このようなエマルションおよびマイクロエマルションは界面活性剤を含まない。
【0012】
殺微生物剤、配合成分または原料成分は、分散物の形態で配合されることもできる。分散物の溶媒成分は、例えば、有機溶媒または水であることができる。ある実施形態においては、溶媒成分は水だけである。分散物は、1種以上の任意のアジュバント、例えば、補助溶媒、増粘剤、凍結防止剤、分散剤、充填剤、顔料、界面活性剤、生物学的分散剤(biodispersant)、スルホスクシナート、テルペン、フラノン、ポリカチオン、安定化剤、スケール防止剤、および防蝕剤などを含むことができる。
【0013】
殺生物剤、配合成分または原料が、それぞれ、最初に溶媒と配合される場合には、第1の成分のために使用される溶媒は、他の成分を配合するのに使用される溶媒と同じであっても良いし、または異なっていてもよい。ある実施形態においては、多くの殺生物剤用途のために水が好ましい。ある実施形態においては、2種類の溶媒が混和可能である。
【0014】
本発明の殺微生物剤、配合成分または原料成分は、逐次的に、同時に対象に添加されることができるか、または対象に添加される前に一緒にされうることを当業者は認識しうる。本発明のある実施形態においては、第1の成分および第2の成分は、同時にまたは逐次的に対象に添加される。成分が同時にまたは逐次的に添加される場合には、それぞれは独立して、1種以上の任意のアジュバントを含むことができる。
【0015】
本発明の組成物は使用されて、殺微生物的有効量の組成物を、微生物の汚染を受ける対象上に、対象中にまたは対象に導入することにより、微生物またはより高等な形態の水生生物(例えば、原虫、無脊椎動物、コケムシ、渦鞭毛藻、甲殻類、軟体動物など)の成長を妨げまたは阻止することができる。好適な対象には、例えば、工業プロセス水;電着堆積系;冷却塔;空気清浄機;ガススクラバー;鉱物スラリー;排水処理;装飾噴水;逆浸透ろ過;超ろ過;バラスト水;蒸発凝縮器;熱交換機;パルプおよび紙処理用流体および添加剤;スターチ;プラスチック;エマルション;分散物;塗料;ラテックス;コーティング剤、例えば、ワニス;建築用製品、例えば、マスチック、コーキングおよびシーラント;建築用接着剤、例えば、セラミック接着剤、カーペット裏当て接着剤および積層接着剤;産業用または消費者用接着剤;写真用化学物質;印刷用流体;家庭用およびパーソナルケア製品、例えば、浴室および台所洗浄剤など;化粧品;ローション、保湿剤、洗面用化粧品;ヘアスタイリングクリーム、ペーストまたはガム;コンディショナー、ツーインワンコンディショニングシャンプー、ボディウォッシュ/シャワーゲル、液体石けん、日焼け防止ローションおよびスプレー、日焼け用ローション、スキンケアローション、一液および二液型髪染め剤、パーマネントウェーブ用配合物、石けん;洗剤;洗浄剤;フロアポリッシュ;洗濯リンス水;金属加工用流体;コンベア潤滑剤;液圧流体;皮革および皮革製品;織物;織物製品;木材および木材製品、例えば、合板、チップボード、フレークボード、積層梁、配向ストランドボード、ハードボードおよびパーティクルボード;石油処理用流体;燃料;油田用流体、例えば、注入水、破砕流体、および掘削泥水;農業用アジュバント保存;界面活性剤保存;医療用装置;診断試薬保存;食品保存、例えば、プラスチックまたは紙製食品ラップ;食品、飲料および産業用プロセス殺菌装置;便器;娯楽用水;プール;並びに温泉が挙げられる。
【0016】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、化粧品;日焼け防止剤、ローション、洗面用化粧品;ヘアスタイリングクリーム、ペーストまたはガム;コンディショナー、ツーインワンコンディショニングシャンプー、ボディーウォッシュ/シャワーゲル、液体石けん、日焼け防止ローションおよびスプレー、日焼け用ローション、スキンケアローション、一液および二液型髪染め剤、パーマネントウェーブ用配合物、石けん;並びに洗剤の1種以上から洗濯される対象において、微生物の成長を阻害するために使用される。
【0017】
対象において、微生物およびより高等な水生生物形態の成長を阻害もしくは制御するのに必要な本発明の組成物の具体的な量は、その微生物またはより高等な水生生物形態のタイプ、種および/または固有性、並びに保護されるべき具体的な対象に応じて変化することを当業者は認識しうる。典型的には、対象において微生物の成長を制御するための本発明の組成物の量は、対象において組成物が組成物の3−イソチアゾリン成分0.1〜1,000ppmを提供する場合には、充分である。ある実施形態においては、組成物の3−イソチアゾロン成分は対象において、少なくとも0.5ppmの量で、別の実施形態においては少なくとも1ppmの量で、さらなる実施形態においては少なくとも10ppmの量で存在する。ある実施形態においては、組成物のイソチアゾロン成分は対象中に、1000ppm以下の量で、別の実施形態においては500ppm以下の量で、さらなる実施形態においては200ppm以下の量で存在する。
【0018】
本発明の組成物は、微生物に対してより広い効力を有する組成物を提供するために、場合によっては、1種以上の追加の殺微生物剤を含むことができる。このような殺微生物剤は、特定の微生物を制御する能力、および保存されるべき具体的な対象に基づいて、既知の殺微生物剤から選択される。本発明のある実施形態は、追加の殺微生物剤を含まない。
【実施例】
【0019】
材料および方法
本発明の組み合わせの相乗作用は、示された生物に対して、化合物の広範囲の濃度および比率を試験することにより示された。特定の組み合わせに対する他の微生物の感受性は変わるであろうし、その結果、化合物のそれぞれまたは両方についての濃度、比率はこれらの実施例で詳述されたものから変わりうることを当業者は認識するであろう。この濃度および比率は、異なる試験条件下で、または異なる試験方法を用いても変わりうる。
【0020】
相乗作用の1つの指標は、Kull,F.C.;Eisman,P.C.;Sylwestrowicz,H.D.およびMayer,R.L.によってアプライドマイクロバイオロジー(Applied Microbiology)9:538−541(1961)に記載されている産業界に受け入れられている方法であり、以下の式で決定される比率を使用する:
【数1】

式中、
=単独で作用し、終点をもたらす化合物A(第1成分)のppm濃度(化合物AのMIC)。
=終点をもたらす、混合物中での化合物Aのppm濃度。
=単独で作用し、終点をもたらす化合物B(第2成分)のppm濃度(化合物BのMIC)。
=終点をもたらす、混合物中での化合物Bのppm濃度。
【0021】
/QとQ/Qとの合計が1を超える場合には、拮抗作用が示される。合計が1に等しい場合には相加作用が示され、1未満の場合には相乗作用が示される。SIがより低くなると、その特定の混合物によって示される相乗作用はより高い。殺微生物剤の最小阻止濃度(MIC)は、具体的な設定条件下で試験された、被験微生物の成長を妨げる最も低い濃度である。
【0022】
相乗作用試験は、被験微生物の最適な成長のために設計された培地を用いる標準マイクロタイタープレートアッセイを用いて行われた。0.2%グルコースおよび0.1%酵母エキスを加えた最小塩培地(M9GY培地)がバクテリアを試験するために使用され;ポテトデキストロース培地(PDB培地)が酵母およびカビを試験するために使用された。この方法において、様々な濃度のMITまたはBITの存在下で高分解能MICアッセイを行うことにより、殺微生物剤と他のパーソナルケア原料との広範囲の組み合わせが試験された。高分解能MICは様々な量の殺微生物剤をマイクロタイタープレートの一列に加え、続いて自動化液体ハンドリングシステムを用いて10倍希釈を行い、活性成分2ppm〜10,000ppmの範囲の一連の終点を得ることにより決定された。
【0023】
本発明の組み合わせの相乗作用は、バクテリアである大腸菌(Escherichia coli ATCC#8739)および/または酵母であるカンジダアルビカンス(Candida albicans ATCC 10231)および/またはカビであるアスペルギルスニガー(Aspergillus niger ATCC 16404)に対して決定された。バクテリアは1mLあたり約5×10バクテリアの濃度で、並びに酵母およびカビは1mLあたり5×10菌の濃度で使用された。これらの微生物は、多くの消費者および産業用途における天然の汚染生物の代表例である。プレートは、25℃(酵母およびカビ)または30℃(バクテリア)での様々なインキュベーション時間後に、微生物の成長(濁度)について目視で評価され、MICを決定した。
【0024】
本発明のMIT組み合わせの相乗作用を示すための試験結果は、以下の表1〜10に示される。それぞれの試験において、第1の成分(A)はMITであり、第2の成分(B)は他の殺微生物剤、配合成分または原料であった。それぞれの表は;MITと第2の成分との具体的な組み合わせ;インキュベーション時間と共に、試験された微生物に対する結果;MIT単独についてのMIC(Q)、第2の成分単独についてのMIC(Q)、混合物中のMITについてのMIC(Q)および混合物中の第2の成分についてのMIC(Q)によって測定されたppmでの終点活性;計算SI値;並びに、特定の微生物に対して、試験されたそれぞれの組み合わせについての相乗作用比率の範囲(MIT/第2の成分、すなわちA/B)を示す。
【0025】
本発明のBIT組み合わせの相乗作用を示すための同様の試験結果が以下の表11〜23に示される。
それぞれの比較において、有効相乗作用比率は、試験された微生物と、成分AおよびBの様々な組み合わせとの間で変化しうる。以下の表中のデータは、相乗的であることが見いだされた比率の範囲を含む。(相乗的範囲外で収集されたデータは報告されない。)これらのデータは、成分AおよびBの特定の組み合わせが、組み合わせが相乗的ではなく相加的であった場合に予想されるであろうよりも、微生物に対して増大した制御を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
試験されたMIT/アニス酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/アニス酸の相乗作用比率は、カビに対して試験された場合に、約1/5〜約1/13の範囲である。
【0028】
【表2】

【表3】

【0029】
試験されたMIT/デシレングリコールの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/デシレングリコールの相乗作用比率は、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/0.8〜1/50の範囲である。
【0030】
【表4】

【表5】

【0031】
試験されたMIT/DTPAの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/DTPAの相乗作用比率は、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/0.05〜1/20の範囲である。
【0032】
【表6】

【表7】

【0033】
試験されたMIT/HEDTAの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/HEDTAの相乗作用比率は、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/0.05〜1/60の範囲である。
【0034】
【表8】

【0035】
試験されたMIT/IDSの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/IDSの相乗作用比率は、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/2〜1/300の範囲である。
【0036】
【表9】

【0037】
試験されたMIT/マレイン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/マレイン酸の相乗作用比率は、酵母に対して試験された場合に、1/50〜1/300の範囲である。
【0038】
【表10】

【表11】

【0039】
試験されたMIT/MDGAの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/MDGAの相乗作用比率は、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/15〜1/250の範囲である。
【0040】
【表12】

【0041】
試験されたMIT/フェノキシプロパノールの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/フェノキシプロパノールの相乗作用比率は、酵母に対して試験された場合に、1/4〜1/200の範囲である。
【0042】
【表13】

【0043】
試験されたMIT/フィチン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/フィチン酸の相乗作用比率は、カビに対して試験された場合に、1/10〜1/100の範囲である。
【0044】
【表14】

【0045】
試験されたMIT/プロピオン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。MIT/プロピオン酸の相乗作用比率は、酵母に対して試験された場合に、1/7.5〜1/25の範囲である。
【0046】
【表15】

【0047】
試験されたBIT/アニス酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/アニス酸の相乗作用比率は、バクテリアおよびカビに対して試験された場合に、1/30〜1/1000の範囲である。
【0048】
【表16】

【0049】
試験されたBIT/カプリン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/カプリン酸の相乗作用比率は、バクテリア、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/30〜1/600の範囲である。
【0050】
【表17】

【0051】
試験されたBIT/デシレングリコールの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/デシレングリコールの相乗作用比率は、酵母に対して試験された場合に、1/50〜1/133の範囲である。
【0052】
【表18】

【表19】

【0053】
試験されたBIT/DTPAの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/DTPAの相乗作用比率は、カビに対して試験された場合に、1/0.7〜1/100の範囲である。
【0054】
【表20】

【0055】
試験されたBIT/エチドロン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/エチドロン酸の相乗作用比率は、カビに対して試験された場合に、1/27〜1/200の範囲である。
【0056】
【表21】

【0057】
試験されたBIT/グルコン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/グルコン酸の相乗作用比率は、バクテリアに対して試験された場合に、1/80〜1/600の範囲である。
【0058】
【表22】

【表23】

【0059】
試験されたBIT/HEDTAの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/HEDTAの相乗作用比率は、バクテリアおよびカビに対して試験された場合に、1/13〜1/1200の範囲である。
【0060】
【表24】

【0061】
試験されたBIT/IDSの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/IDSの相乗作用比率は、酵母に対して試験された場合に、1/800〜1/1300の範囲である。
【0062】
【表25】

【0063】
試験されたBIT/マレイン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/マレイン酸の相乗作用比率は、バクテリアおよび酵母に対して試験された場合に、1/30〜1/1000の範囲である。
【0064】
【表26】

【表27】

【0065】
試験されたBIT/MDGAの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/MDGAの相乗作用比率は、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/20〜1/1600の範囲である。
【0066】
【表28】

【0067】
試験されたBIT/フェノキシプロパノールの比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/フェノキシプロパノールの相乗作用比率は、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/20〜1/の範囲である。
【0068】
【表29】

【0069】
試験されたBIT/フィチン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/フィチン酸の相乗作用比率は、バクテリア、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/6〜1/1300の範囲である。
【0070】
【表30】

【0071】
試験されたBIT/プロピオン酸の比率は1/0.05〜1/1000の範囲であった。BIT/プロピオン酸の相乗作用比率は、バクテリア、酵母およびカビに対して試験された場合に、1/2〜1/1000の範囲である。
【0072】
上述のと同様の試験方法を用いると、MITとカプリン酸、グルコン酸カルシウム、エチドロン酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、クエン酸マグネシウムまたはコハク酸との比較例の組み合わせにおいては、相乗作用は見いだされなかった。BITとグルコン酸カルシウム、ラクトビオン酸、ラウリン酸、クエン酸マグネシウムまたはコハク酸との組み合わせにおいては相乗作用は見いだされなかった。これらの結果は、請求項に特定される組成物における予想外の相乗作用を支持する。
【0073】
さらに、初期の検討において、MITは、シュードモナスエールジノーサ(P.aeruginosa)、カンジダアルビカンス、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、アスペルギルスニガーおよび大腸菌をはじめとする様々な生物に対する他の殺生物剤との組み合わせで試験された。この結果は、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチレングリコール、クエン酸、DMDMH、EDDS、IPBC、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、プロピルパラベン、ソルビン酸、DBDCBまたはジンクピリチオンとのMIT組み合わせについて、試験された生物の少なくともいくつかに対して相乗的相互作用がなかったことを示した。さらに、ある範囲の市販の殺生物剤と組み合わせたMITを用いて行われた、他の従前の相乗作用検討が行われ、これは最終的に米国特許第5489588号のクレームに特定された組み合わせを導いた。大腸菌およびカンジダアルビカンスに対して行われたこれらの検討の条件下で、p−クロロ−m−キシレノール、ジクロロフェンナトリウム、ビス−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)スルフィド、ベンジルブロモアセタート、ドデシルアミン、4−(2−ニトロブチル)モルホリンおよびジプロピルアミンエーテルとの7種のMIT組み合わせが相乗的であると見いだされた。しかし、29種、すなわち、4,4−ジメチルオキサゾリジン、2−(ヒドロキシメチル)−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、N−メチロールクロロアセトアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(しかし、異なる微生物および試験条件を使用するその後の試験において、この組み合わせは相乗作用があると見いだされた)、ブロモニトロスチレン、グルタルアルデヒド、2−(ヒドロキシメチル)アミノエタノール、2−(ヒドロキシメチル)アミノ−2−メチルプロパノール、ポリ[オキシ−エチレンジメチルイミノエチレン ジメチルイミノエチレン)クロライド]、ベンゾイルクロロホルムアルドキシム、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、2−チオシアノメチルチオベンダゾール、N,N’−ジヒドロキシメチル−5,5−ジメチルヒダントイン、ヘキサヒドロ−1,3,5−(2−ヒドロキシエチル)トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジン、ビス−(トリクロロメチル)スルホン、ビス−(トリブチルスズ)オキシド/2−(ヒドロキシメチル)アミノエタノールのブレンド、ビス−(トリブチルスズ)オキシド、イミダゾリジニルウレア、ジアゾリジニルウレア、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、シス1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロライド、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、2,4−ジクロロベンジルアルコール、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、メチレン−b−チオシアナート、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、ビス−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)スルフィド、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、および3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマート;とMITとのさらなる組み合わせが試験され、これら2種の微生物に対して相乗的ではなかった。殺生物剤開発および試験の当業者は、他の殺生物剤組み合わせを試験することから、同様の結果に気づいたであろうし、殺生物剤の何らかの具体的な組み合わせが相乗的相互作用を示すと予想され得たとは予期できないであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと;
(b)アニス酸、デシレングリコール、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、イミノジスクシナート(IDS)、マレイン酸、メチルグリシン二酢酸(MDGA)、フェノキシプロパノール、フィチン酸およびプロピオン酸からなる群から選択される1種以上の化合物;
との、殺微生物的に相乗的な混合物を含む組成物。
【請求項2】
(a)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと;
(b)アニス酸、カプリン酸、デシレングリコール、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチドロン酸、グルコン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、イミノジスクシナート(IDS)、マレイン酸、メチルグリシン二酢酸(MDGA)、フェノキシプロパノール、フィチン酸およびプロピオン酸からなる群から選択される1種以上の化合物;
との、殺微生物的に相乗的な混合物を含む組成物。

【公開番号】特開2011−32260(P2011−32260A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−142986(P2010−142986)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】