説明

相変化インク組成物

【課題】圧電インクジェット法などのインクジェット印刷プロセスに適した相変化インクを提供する。
【解決手段】白色着色料と、着色料分散剤と、少なくとも1つの硬化性モノマー、少なくとも1つのゲル化剤を含み、少なくとも1つの光開始剤、少なくとも1つの安定剤、及び少なくとも1つのワックスを含んでいてもよいインク媒体とを含む、照射硬化性相変化インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に硬化性インクに関し、具体的には硬化性相変化白色インク組成物及びその調製法、特にインクジェット印刷における使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷システムには一般に2つの型、連続流型とドロップ・オン・デマンド型がある。連続流型インクジェット・システムにおいては、インクは、加圧下で少なくとも1つのオリフィス又はノズルを通して連続流状態で噴出される。その流れは乱されて、オリフィスから一定の距離において崩壊して小滴になる。崩壊点において、小滴はディジタル・データ信号によって帯電させられて静電場を通過させられ、この静電場が各々の小滴の軌道を調節して再循環用溝又は記録媒体上の特定位置に向けさせる。ドロップ・オン・デマンド型システムにおいては、小滴はディジタル・データ信号によって、オリフィスから直接に記録媒体上の位置に噴出される。小滴は、記録媒体上に配置されるべきでない限り形成され又は噴出されない。
【0003】
少なくとも3つ型のドロップ・オン・デマンド型インクジェット・システムがある。1つの型のドロップ・オン・デマンド型システムは、主部分として、一端にノズルをもち他端の近くに圧力パルスを生成する圧電変換器をもったインク充填チャネル又は経路を有する圧電デバイスである。別の型のドロップ・オン・デマンド型システムは、音響インク印刷として知られている。既知のように、音響ビームはそれが当たる目標物に照射圧を及ぼす。従って、音響ビームが液体のプールの自由表面(即ち、液/空気界面)に下から当たるとき、それがプール表面に及ぼす照射圧は、プールから個々の小液滴を、表面張力の抑止力に拘らず放出させるのに十分に高くなる可能性がある。そのビームをプール表面上又はその近傍に合焦させることにより、それが及ぼす照射圧は所与の入力量に対して強められる。さらに別の型のドロップ・オン・デマンド型システムは、サーマル・インクジェット型又はバブルジェット(登録商標)型として知られ、高速小滴を生成する。この型のドロップ・オン・デマンド型システムの主部分は、一端にノズルと、ノズル近傍の熱発生抵抗とを有するインク充填チャネルである。ディジタル情報を表す印刷信号は、オリフィス又はノズル近傍の各々のインク経路内の抵抗層内に電流パルスを生じさせ、ごく近傍のインク媒体(普通は水)を殆ど瞬間的に蒸発させて泡を生成する。その泡が膨張するとき、オリフィスにあるインクは押し出されて推進された小滴となる。
【0004】
相変化インクを用いて直接に基材上又は中間転写部材上に印刷する圧電インクジェット・デバイスの典型的な設計において、画像は、インクジェット噴出ヘッドに対する基材(画像受け取り部材又は中間転写部材)の4回から16回までの回転(増分移動)の間に、着色インクを適切にジェット噴出することによって塗布される、即ち、各々の回転の間に、基材に対するプリントヘッドの小さな移動がある。この技法はプリントヘッドの設計を簡単にし、その小さな移動は良好な小滴位置合せを確実にする。ジェット動作温度においてインクの小液滴は印刷デバイスから噴出され、インク小滴が記録媒体の表面に接触するとき、直接に又は中間加熱転写ベルト若しくはドラムを介して、速やかに凝固して凝固インク滴の所定のパターンを形成する。
【0005】
高温溶融インクは普通、ワックス・ベースのインク媒体、例えば結晶ワックスを有するインクジェット・プリンタによって用いられる。そのような固体インクジェット・インクは鮮明なカラー画像を与える。典型的なシステムにおいて、結晶ワックス・インクは中間転写部材上で部分的に冷却され、次いで紙などの画像受け取り媒体に押し付けられる。注入は画像の小滴を広げて、より豊かな色及びより低い堆積高をもたらす。固体インクの低流動性は紙の透き通しを防ぐ。
【0006】
これらのシステムにおいて、結晶ワックス・インクは転写部材、例えば、アルミニウム・ドラム上に、約130℃乃至約140℃の温度においてジェット噴出される。これらワックス・ベースのインクは、それらの粘性を減少させるように高温まで加熱して転写部材上に効率的に適切にジェット噴出するようにする。転写部材は約60℃であり、従ってワックスは凝固又は結晶化するのに十分に冷えることになる。転写部材が記録媒体上で回転すると、ワックス・ベースのインクからなる画像は紙に圧入される。
【0007】
照射硬化性インクは一般に、硬化性モノマー、硬化性ワックス、着色料、及び照射活性化開始剤、特に、インクの硬化性成分、具体的には硬化性モノマー及び硬化性ワックスの重合を開始する光開始剤を含む。白色の照射硬化性インクは、プリンタに対する高付加価値材料であると考えられる。白色インクは特定のグラフィック及びラベリング用途のために必要である。それらは、最も典型的には透明及び暗い基材上に用いられて、テキスト又はグラフに背景を与える又は供給する。煙色プラスチック上の白色テキストは特に印象的である。白色着色料は顔料であり、種々の材料を含むことができるが、最も典型的には二酸化チタンである。白色は光散乱によって生じるので、約200乃至約300ナノメートルの体積平均粒子サイズを有する顔料が一般に選択されて良好な白色を生じる。分散中の粒子サイズがこの範囲より下に減少すると、その分散は青色光を選択的に散乱して青みを帯びた白に見える。粒子サイズがさらに減少すると、可視光は散乱せず透明となる。例えば、より小さなナノメートル・サイズの二酸化チタン顔料が知られているが、それらは無色である。実施形態において、有効な白色光散乱は、最適のサイズにした二酸化チタン粒子を選択し、顔料の充填を、硬化されたインク層の全体積を基にして約5乃至約30体積パーセントに増加させることによって達成される。さらに、有効な白色光散乱は、最適のサイズにした二酸化チタン粒子を選択し、顔料の充填を、硬化されたインク層の全体積を基にして約10体積パーセントに増加させることによって達成される。10体積パーセント充填の重量パーセントは、硬化性媒体に対する二酸化チタン粒子の高密度性により、実際上約40パーセントとなる。高密度分散の組合せ、例えば、顔料及び分散の1ミリリットル当たり約2乃至約4グラムの顔料、比較的大きなサイズ、及び顔料の高充填は、貯蔵に安定でジェット噴出可能な白色硬化性インクの設計を特に難しくする。高い顔料充填及び開始に必要な高い散乱光のために、硬化を完遂することが難しいことが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
圧電インクジェット法などのインクジェット印刷プロセスに適した相変化インクに対する必要性が残っている。音響インクジェット印刷プロセスに適切な相変化インクに対する必要性が残っている。さらに、改善された硬化性相変化インク、例えば、改善された貯蔵安定性、低いニュートン粘性、及び良好な硬化性を有する照射硬化性相変化白色インクに対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
白色着色料、着色料分散剤、及び、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つのゲル化剤と、隋意に少なくとも1つの光開始剤と、隋意に少なくとも1つの安定剤と、隋意に少なくとも1つのワックスとを含むインク媒体、を含む照射硬化性相変化インクが提供される。
【0010】
(I)インクジェット印刷装置に、白色着色料、着色料分散剤、及び、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つのゲル化剤と、隋意に少なくとも1つの光開始剤と、隋意に少なくとも1つの安定剤と、隋意に少なくとも1つのワックスとを含むインク媒体、を含む照射硬化性相変化インクを組み込み、(II)インクを溶融し、(III)溶融インクの小滴を基材上に画像様パターンに噴出させ、(IV)画像様パターンを紫外照射に曝す、ステップを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
染料、顔料、及びそれらの混合物を含む任意の所望の又は有効な白色着色料は、その着色料がインク媒体に溶解又は分散できるならば、本明細書における相変化白色インク組成物中に用いることができる。
【0012】
実施形態において白色着色料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、粘土、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、又はそれらの混合物若しくは組合せから選択される白色顔料である。実施形態において、白色着色料は二酸化チタン顔料である。業務用TiO2は、淡色強度及び底色などの光学特性を高め、分散安定性を促進するように付加的な加工品に設計される。顔料の特徴はサイズ、シリカ及び/又はアルミナによるコーティングの程度、及び随意の有機材料を含む。適切な二酸化チタン顔料の例証となる実例は、Ti−Pure(登録商標)R−108、Ti−Pure(登録商標)R−104、Ti−Pure(登録商標)R−103、Ti−Pure(登録商標)R−102、Ti−Pure(登録商標)R−700、Ti−Pure(登録商標)R−706、Ti−Pure(登録商標)R−760、Ti−Pure(登録商標)R−900、Ti−Pure(登録商標)R−960、DE、2020(登録商標)、2063(登録商標)、2090(登録商標)、2310(登録商標)、2450(登録商標)、並びに、Tiona(登録商標)595、Tiona(登録商標)568、Tiona(登録商標)RCL−6、Tiona(登録商標)RCL−9、及びTiona(登録商標)696から選択される顔料を含む。
【0013】
ここで選択される顔料は、約150乃至約450ナノメートルの、又は約200乃至約300ナノメートルの体積平均粒子サイズ(直径)を有することができる。1つの実施形態において、白色着色料は約200乃至約300ナノメートルの粒子サイズを有する二酸化チタン顔料である。
【0014】
白色着色料はインク中に任意の所望の又は有効な量存在し、実施形態においては、インクの全重量に基づいて約1乃至約60パーセント、又は約20乃至約40パーセントの量で存在する。1つの実施形態において白色着色料は、インクの全重量に基づいて約1乃至約60パーセント、又は約20乃至約40パーセント、又は約10パーセントの量でインク中に存在する白色顔料である。
【0015】
白色着色料は、任意の所望の又は有効な分散剤を含む分散剤中に分散させることができる。適切な分散剤は、アミン、エステル、アルコール及びカルボン酸などの顔料親和性基を含有するコポリマー及びブロックコポリマーを含む。実施形態において分散剤は、Disperbyk(登録商標)2001を含むが、これは修飾アクリル酸ブロックコポリマーを含む工業用コポリマーの銘柄品である。例えば、実施形態においてDisperbyk(登録商標)2001の典型的な特性は、約29ミリグラムKOH/グラムのアミン価、約19ミリグラムKOH/グラムの酸価、1ミリリットル当たり約1.03グラムの20℃における密度、約46.0パーセントの不揮発性材料、約35℃の引火点、及び、メトキシプロピルアセテート/ブチルグリコール/メトキシプロパノールを2/2/1の比で含む溶媒系、を含む。
【0016】
分散剤と共に相乗剤を用いることができる。適切な相乗剤の例証となる実例は、Solsperse(登録商標)22000及びSolsperse(登録商標)5000を含むが、それらに限定されない。
【0017】
分散剤は任意の有効量加えることができる。実施形態において分散剤は、顔料の重量に対して、約0.5乃至約50重量パーセント、約0.5乃至約12重量パーセント、又は約0.8乃至約8重量パーセントの量を加えることができる。
【0018】
本明細書で開示されるインク媒体は任意の適切な硬化性モノマーを含むことができる。例としては、相変化インク担体として用いるのに適したアクリル酸及びメタクリル酸モノマー化合物などのラジカル硬化性モノマー化合物が挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸モノマーの例としては、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸カプロラクトン、アクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アルコキシ化ラウリル、アクリル酸エトキシ化ノニルフェノール、メタクリル酸エトキシ化ノニルフェノール、メタクリル酸エトキシ化ヒドロキシエチル、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びこれらの混合物又は組合せが挙げられる。多官能アクリル酸及びメタクリル酸モノマー及びオリゴマーを、反応性希釈剤として且つ硬化画像の架橋密度を増加させることのできる材料として相変化インク担体に含めて、硬化画像の靭性を高めることができる。適切な多官能アクリル酸及びメタクリル酸モノマー及びオリゴマーの例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、1,6−へキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカノールジアクリレート、1,12−ドデカノールジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、アルコキシ化へキサンジオールジアクリレート、アルコキシ化シクロへキサンジメタノールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、Sartomer Co.Inc.より入手可能な3官能アクリル酸エステルの銘柄品であるSR9012(登録商標)、アミン修飾アクリル酸ポリエーテル(BASF社よりPO83F(登録商標)、LR8869(登録商標)、及び/又はLR8889(登録商標)として入手可能)、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシ化トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Sartomer Co.Inc.よりSR494(登録商標)として入手可能)、及びそれらの混合物又は組合せが挙げられる。反応性希釈剤をインク担体材料に加えるときは、反応性希釈剤は任意の所望の又は有効な量加えることができ、1つの実施形態においては、少なくとも担体の約1重量パーセント、少なくとも担体の約35重量パーセントであり、担体の約98重量パーセントを超えず、担体の約75重量パーセントを超えないが、希釈剤の量はこれらの範囲外とすることも可能である。
【0019】
インク媒体は、紫外線などの照射に曝されるときに硬化性モノマーとして振舞う化合物などの液体に溶解したとき比較的狭い温度範囲で比較的鋭い粘度増加を受ける、ゲル様の挙動を示すことができる少なくとも1つの化合物を含む。そのような硬化性液体モノマーの一例はプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートである。本明細書で開示される幾つかの媒体は、少なくとも約30℃、少なくとも約10℃、少なくとも約5℃の温度範囲にわたり、少なくとも約103センチポアズ、少なくとも約105センチポアズ、又は少なくとも約106センチポアズの粘度変化を受けるが、粘性変化及び温度範囲はこれらの範囲外であってもよく、これらの範囲内の変化を受けない媒体もまた本明細書に含められる。
【0020】
任意の適切なゲル化剤をここで開示されるインク媒体に用いることができる。実施形態において、ゲル化剤はフリーラジカル硬化性ゲル化剤である。
【0021】
ゲル化剤は、同時継続中の、2005年11月30日出願の「相変化特性及びゲル化剤親和性を有する光開始剤」と題するPeter G.Odell,Eniko Toma,及びJennifer L.Belelieを発明者とする米国特許出願第11/290,207号に開示される材料から選択することができ、例えば次の化学式
【化1】

の化合物であるが、
式中、R1は、
【0022】
(i)アルキレン基(ここでアルキレン基は、直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、置換又は非置換のアルキレン基を含む2価脂肪族基又はアルキル基として規定され、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキレン基内に存在しても存在しなくともよい)であって、少なくとも1個の、約12個を超えない、約4個を超えない、又は約2個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキレン基、
【0023】
(ii)アリーレン基(ここでアリーレン基は、置換及び非置換アリーレン基を含む2価芳香族基又はアリール基として規定され、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリーレン基内に存在しても存在しなくともよい)であって、少なくとも約5個の、少なくとも約6個の、約14個を超えない、約10個を超えない、又は約6個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアリーレン基、
【0024】
(iii)アリールアルキレン基(ここでアリールアルキレン基は、置換及び非置換アリールアルキレン基を含む2価アリールアルキル基として規定され、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよい)であって、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約32個を超えない、約22個を超えない、又は約7個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアリールアルキレン基、或いは、
【0025】
(iv)アルキルアリーレン基(ここでアルキルアリーレン基は、置換及び非置換アルキルアリーレン基を含む2価アルキルアリール基として規定され、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキルアリーレン基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態においては、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約32個を超えない、約22個を超えない、又は約7個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキルアリーレン基であり、ここで、置換アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基及びアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せなど、とすることができ、ここで、2つ又はそれ以上の置換基は互いに結合して環を形成することができ、
【0026】
2及びR2’の各々は、互いに独立に、
(i)アルキレン基(ここでアルキレン基は、直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、置換又は非置換のアルキレン基を含む2価脂肪族基又はアルキル基として規定され、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキレン基内に存在しても存在しなくともよい)であって、少なくとも1個の、約54個を超えない、又は約36個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキレン基、
【0027】
(ii)アリーレン基(ここでアリーレン基は、置換及び非置換アリーレン基を含む2価芳香族基又はアリール基として規定され、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリーレン基内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態において、少なくとも約5個の、少なくとも約6個の、約14個を超えない、約10個を超えない、又は約7個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアリーレン基、
【0028】
(iii)アリールアルキレン基(ここでアリールアルキレン基は、置換及び非置換アリールアルキレン基を含む2価アリールアルキル基として規定され、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態においては、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約32個を超えない、約22個を超えない、又は約8個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアリールアルキレン基、或いは、
【0029】
(iv)アルキルアリーレン基(ここでアルキルアリーレン基は、置換及び非置換アルキルアリーレン基を含む2価アルキルアリール基として規定され、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキルアリーレン基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態においては、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約32個を超えない、約22個を超えない、又は約7個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の個数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキルアリーレン基であり、ここで、置換アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基及びアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、フォスフィン基、フォスフォニウム基、燐酸基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、無水酸基、アジド基、アゾ基、シアナト基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せなど、とすることができ、ここで、2つ又はそれ以上の置換基は互いに結合して環を形成することができ、
【0030】
3及びR3’の各々は、互いに独立に、
(a)光開始基であって、化学式
【化2】

の1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから導かれる基、或いは、
化学式
【化3】

の1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンから導かれる基、或いは、
化学式
【化4】

の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから導かれる基、或いは、
化学式
【化5】

のN,Nジメチルエタノールアミン又はN,Nジメチレンジアミンから導かれる基であり、或いは
【0031】
(b)以下の基、
(i)アルキル基(直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、置換及び非置換アルキル基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキル基内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態においては、少なくとも約2個の、少なくとも約3個の、少なくとも約4個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキル基、
【0032】
(ii)アリール基(置換及び非置換アリール基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリール基内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態においては、少なくとも約5個の、少なくとも約6個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアリール基、例えばフェニル基、
【0033】
(iii)アリールアルキル基(置換及び非置換アリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリールアルキル基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態においては、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアリールアルキル基、例えばベンジル基、或いは、
【0034】
(iv)アルキルアリール基(置換及び非置換アルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキルアリール基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよい)であって、1つの実施形態においては、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキルアリール基、例えばトリル基などであり、ここで、置換アルキル基、アリールアルキル基及びアルキルアリール基上の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、硫酸基、スルフォネート基、スルフォン酸基、スルフィド基、スルフォキシド基、フォスフィン基、フォスフォニウム基、燐酸基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフォン基、アシル基、無水酸基、アジド基、アゾ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せなど、とすることができ、ここで、2つ又はそれ以上の置換基は互いに結合して環を形成することができ、
【0035】
3及びR3’のうちの少なくとも1つが光開始基であるとして、
X及びX’の各々は互いに独立に酸素原子又は化学式−NR4−の基であり、ここでR4は、
(i)水素原子、
(ii)直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、そして置換及び非置換アルキル基を含むアルキル基であって、ヘテロ原子がアルキル基内に存在しても存在しなくともよく、1つの実施形態においては、少なくとも1個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキル基、
【0036】
(iii)置換及び非置換アリール基を含むアリール基であって、ヘテロ原子がアリール基内に存在しても存在しなくともよく、1つの実施形態においては、少なくとも約5個の、少なくとも約6個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアリール基、
【0037】
(iv)置換及び非置換アリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができるアリールアルキル基であって、ヘテロ原子がアリールアルキル基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよく、1つの実施形態においては、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアリールアルキル基、或いは、
【0038】
(v)置換及び非置換アルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式とすることができるアルキルアリール基であって、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアリール部分又はアルキル部分内に存在しても存在しなくともよく、1つの実施形態においては、少なくとも約6個の、少なくとも約7個の、約100個を超えない、約60個を超えない、又は約30個を超えない炭素原子を有し、炭素原子の数はこれらの範囲外であることも可能であるアルキルアリール基であり、ここで、置換アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及びアルキルアリール基上の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、硫酸基、スルフォネート基、スルフォン酸基、スルフィド基、スルフォキシド基、フォスフィン基、フォスフォニウム基、燐酸基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフォン基、アシル基、無水酸基、アジド基、アゾ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの組合せなど、とすることができ、ここで、2つ又はそれ以上の置換基は互いに結合して環を形成することができる。ここで、照射硬化性相変化インクは、照射硬化性ワックス及び上記のゲル化剤を含む。
【0039】
ここで用いられる光開始剤の例としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンジルケトン、ヒドロキシケトン・モノマー、ヒドロキシケトン・ポリマー、α−アミノケトン、アシルフォスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、IRGACURE(登録商標)及びDAROCUR(登録商標)の商品名で販売されるアシルフォスフィン光開始剤、イソプロピルチオキサンテノン、アリールスルフォニウム塩、アリールヨードニウム塩、並びに、それらの混合物及び組合せが挙げられる。具体的な例としては、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルフォリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキシド及び他のアシルフォスフィン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン及び1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)−ブタノン、チタノセン、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジルジメチルケタール、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
相変化インクはまた、アミン相乗剤を含むことができるが、これは光開始剤に水素を供与して重合を開始するラジカル種を生成することができる共同開始剤であり、また、フリーラジカル重合を阻害する溶存酸素を消滅させて重合速度を高めることができる。適切なアミン相乗剤の例としては、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
本明細書で開示されるインクに関する開始剤は、任意の所望の又は有効な波長、1つの実施形態においては少なくとも約200ナノメートルの、約560ナノメートルを超えない、約420ナノメートルを超えない、波長の照射を吸収することができるが、波長はこれらの範囲外であってもよい。
【0042】
開始剤はインク中に任意の所望の又は有効な量存在することができ、1つの実施形態においては、インク重量の少なくとも約0.5パーセント、少なくとも約1パーセントで、約15パーセントを超えない、約10パーセントを超えない量であるが、その量はこれらの範囲外であってもよい。
【0043】
本明細書における照射硬化性相変化白色インクは、隋意に抗酸化剤又は安定剤を含むことができる。抗酸化剤は画像を酸化から保護することができ、またインク調製プロセスの加熱中にインク成分を酸化から保護することができる。適切な抗酸化安定剤の具体例としては、NAUGARD(登録商標)524、NAUGARD(登録商標)635、NAUGARD(登録商標)A、NAUGARD(登録商標)I−403、及びNAUGARD(登録商標)959、IRGANOX(登録商標)1010及びIRGASTAB(登録商標)UV10、GENORAD16及びGENORAD40、並びにそれらの混合物が挙げられる。存在する場合、抗酸化剤はインク中に任意の所望の又は有効な量存在し、1つの実施形態においては、インク担体の重量の少なくとも約0.01パーセント、少なくとも約0.1パーセント、少なくとも約1パーセントで、約20パーセントを超えない、約5パーセントを超えない、約3パーセントを超えない量であるが、その量はこれらの範囲外であってもよい。
【0044】
照射硬化性相変化インクはまた添加剤を含んで、その添加剤に付随する既知の機能性を利用することができる。そのような添加剤は、消泡剤、滑り及び平滑化剤、顔料分散剤、及びそれらの混合物を含むことができる。インクはまた所望により付加的なモノマー又はポリマー材料を含むことができる。
【0045】
本明細書における照射硬化性相変化白色インクはワックスを含むことができ、それはフリーラジカル重合により硬化可能なワックス、紫外照射開始重合により硬化可能なワックスであり、フリーラジカル硬化性ワックス、少なくとも1つのアクリル酸基を含む照射硬化性ワックスである。本明細書における照射硬化性相変化白色インクは照射硬化性ワックス、及び少なくとも1つのゲル化剤、例えば本明細書で記述される化学式の化合物を含むゲル化剤を含むことができる。
【0046】
インクの硬化はインク画像を任意の所望の又は有効な波長、1つの実施形態においては少なくとも約200ナノメートルの、約400ナノメートルを超えない波長における化学線への曝露によって達成することができるが、波長はこれらの範囲外であってもよい。化学線への曝露は、任意の所望の又は有効な時間、1つの実施形態においては、少なくとも約0.2秒、少なくとも約1秒、少なくとも約5秒、しかし約30秒を超えない、約15秒を超えない時間行うことができるが、曝露時間はこれらの範囲外であってもよい。硬化とはインク中の硬化性化合物の分子量が化学線に対する曝露により、例えば、架橋、長鎖化などによって増加することを意味する。インクの硬化はまた、光開始剤がないとき電子ビーム照射によって達成することができる。
【0047】
インク組成物は一般に、ジェット噴出温度(1つの実施形態においては、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上で、約120℃以下、約110℃以下であるが、ジェット噴出温度はこれらの範囲外であってもよい)において溶融粘度を有し、1つの実施形態においては、約30センチポアズ以下、約20センチポアズ以下、約15センチポアズ以下で、約2センチポアズ以上、約5センチポアズ以上、約7センチポアズ以上であり、又は、約40℃未満の温度においては約105センチポアズより大きく、別の実施形態においては、約70℃以上の温度において約15センチポアズ未満であるが、溶融温度はこれらの範囲外であってもよい。
【0048】
1つの実施形態において、インクは低温で、具体的には約110℃以下で、約40℃乃至約110℃で、約50℃乃至約110℃で、約60℃乃至約90℃でジェット噴出されるが、ジェット噴出温度はこれらの範囲外とすることもできる。そのような低いジェット噴出温度においては、ジェット噴出されるインクと、その上にインクがジェット噴出される基材との間の温度差を利用してインクの急速な相変化を達成する従来の方法は有効ではない可能性がある。そこでゲル化剤を用いて基材上のジェット噴出インクの急速な粘度増加をもたらすことができる。具体的には、ジェット噴出インク小滴は、受け取り基材、例えば紙又は透明材料などの最終記録基材、或いは、例えば転写ドラム又はベルトなどの中間転写部材の上に固定することができるが、その際中間転写部材は、インクが液体状態からゲル状態(又は半固体状態)まで顕著な粘度変化を受ける相変化転移が起きている間、インクのインク噴出温度よりも低い温度に維持される。
【0049】
幾つかの実施形態においてインクがゲル状態を形成する温度はインクのジェット噴出温度よりも低い任意の温度であり、1つの実施形態においては約5℃又はそれ以上インクのジェット噴出温度よりも低い任意の温度である。1つの実施形態においてゲル状態は、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、約100℃以下、約70℃以下、約50℃以下で形成することができるが、温度はこれらの範囲外であってもよい。インクが液体状態にあるジェット噴出温度からインクがゲル状態にあるゲル温度まで冷却する際に、インクの粘度に急速で大きな増加が起る。一つの特定の実施形態における粘度増加は、少なくとも102.5倍の粘度増加となる。
【0050】
中間転写表面から最終記録シートへの最適転写効率及び最適プリント品質は、中間転写部材上に堆積したインク画像の粘度がインクのジェット噴出後に顕著に増加して、不鮮明にならない安定な転写可能な画像が得られる場合に達成することができる。インク用の適切なゲル化剤は、インク媒体中で迅速かつ可逆的にモノマー/オリゴマーをゲル化することになり、狭い相変化転移、例えば約30℃乃至約100℃、又は約30℃乃至約70℃の温度範囲内の転移を示すことになるが、転移範囲はこれらの温度範囲外であってもよい。インクのゲル状態は実施形態において、ジェット噴出温度における粘度に比べて、転写温度、例えば1つの特定の実施形態においては約30℃乃至約70℃において、最低でも102.5センチポアズ、103センチポアズの粘度増加を示す。1つの実施形態は、ジェット噴出温度よりも約5℃乃至約10℃低い範囲で粘度が急速に増加し、最終的にジェット噴出粘度より104倍大きな、別の実施形態においてはジェット噴出粘度より105倍大きな粘度に達するゲル化剤を含有するインクに向けられるが、粘度はこれらの範囲外であってもよい。
【0051】
インクがゲル状態にあるとき、インクの粘度は、1つの実施形態において少なくとも約1,000センチポアズ、少なくとも約10,000センチポアズ、少なくとも約100,000センチポアズであるが、粘度はこれらの範囲外であってもよい。ゲル状態における粘度値は、1つの実施形態において少なくとも約103センチポアズ、少なくとも約104.5センチポアズで、約109センチポアズ以下、約106.5センチポアズ以下であるが、ゲル状態の粘度はこれらの範囲外であってもよい。好ましいゲル状態粘度はプリント・プロセスによって変化することができる。例えば、中間転写を用いるとき、又はインクのにじみ及び散りの効果を最少にするために多孔性紙に直接ジェット噴射するときは、最高の粘度が好ましい。一方、プラスチックなどの低多孔性基材は、個々のインク画素のドットゲイン及び凝集を制御する低いインク粘度の使用に至ることがある。ゲル粘度はインク調合及び基材温度によって制御することができる。照射硬化性インクに対するゲル状態の付加的な利点は、約103乃至約104センチポアズの最高粘度がインク内の酸素拡散を減少させ、このことがフリーラジカル開始においてより速い硬化速度をもたらすことができる。
【0052】
インクが中間転写部材にプリントされ次いで最終基材に転写される印刷用途に対しては、1つの特定の実施形態においてインクの粘度は、中間転写部材温度において約106センチポアズ又はそれ以上に増加して中間転写部材への付着を促進し、インクが最終基材に直接プリントされる印刷用途に対しては、1つの特定の実施形態においてインクの粘度は、インクが最終基材に染み込むことを防ぐため、及び/又は照射への曝露により硬化するまで最終基材への付着を促進するために、最終基材の温度において106センチポアズ又はそれ以上にまで増加する。1つの実施形態において、その上にインクがプリントされそこでインク粘度が約106センチポアズ又はそれ以上まで増加する、中間転写部材又は最終基材の温度は、約70℃又はそれ以下である。
【0053】
実施形態において、インクは、約15℃乃至約50℃の温度範囲において約104乃至約107センチポアズより大きな粘度、或いは約40℃未満の温度において約105センチポアズより大きな粘度、或いは約40℃未満の温度において約106センチポアズより大きな粘度、或いは約75℃乃至約95℃の温度範囲において約2乃至約22センチポアズより大きな粘度、或いは約70℃より高い温度において約15センチポアズ未満の粘度、を有する。
【0054】
インク組成物は任意の所望の又は適切な方法により調製することができる。インク成分は、混ぜ合わせ、次いで、1つの実施形態においては少なくとも約80℃、又は約120℃以下の温度(これらの範囲外の温度でもよい)まで加熱し、そして均質なインク組成物が得られるまで攪拌し、次にインクを室温(普通約20℃乃至約25℃)まで冷却することができる。インクは室温では固体となる。
【0055】
このインクは、直接印刷インクジェット・プロセス用装置、及び間接(オフセット)印刷インクジェット用途に用いることができる。別の実施形態は、ここで開示されたインクをインクジェット印刷装置に組み入れ、インクを溶融させ、溶融したインクの小滴を記録基材上に画像様パターンで噴出させるステップを含むプロセスに向けられる。開示される別の実施形態は、ここで開示されたインクをインクジェット印刷装置に組み入れ、インクを溶融させ、溶融したインクの小滴を中間転写部材上に画像様パターンで噴出させ、画像様パターン内のインクを、中間転写部材から最終記録基材へ転写するステップを含むプロセスに向けられる。特定の実施形態において中間転写部材は、最終記録シートの温度より高く、印刷装置内の溶融インクの温度より低い温度に加熱される。1つの実施形態において印刷装置は、インクの小滴を圧電振動素子の振動により画像様パターンに噴出させる圧電印刷プロセスを用いる。ここで開示されたインクはまた、他のホット・メルト印刷プロセス、例えば、ホット・メルト音響インクジェット印刷、ホット・メルト熱インクジェット印刷、ホット・メルト連続流又は偏向インクジェット印刷において用いることができる。ここで開示された相変化インクはまた、ホット・メルト・インクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスに用いることができる。
【0056】
普通紙、罫線入りノートブック用紙、ボンド紙、シリカ・コート紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT(登録商標)紙、光沢コート紙、透明材料、繊維、織物製品、プラスチック、ポリマーフィルム、セラミックス、金属などの無機基材及び材木を含む、任意の適切な基材又は記録シートを用いることができる。
【実施例1】
【0057】
表1に示された組成物を有する2つのインクを調製した。初めの分散体は、約0.2グラムのDisperbyk(登録商標)2001(BYK−Chemieより入手可能な修飾アクリル酸ブロックコポリマー)を、約15.8グラムのSR−9003(登録商標)(Sartomer Companyより入手可能なプロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレートモノマー)及び約4.0グラムのDupont(登録商標)R−103二酸化チタン顔料と混合して調製した。得られた懸濁液を一晩放置して顔料を濡れさせた。この顔料懸濁液を回転子固定子ミキサにより約300rpmで約30秒間混ぜ合わせ、次に顔料分散体を8日間寝かせた。8日後、分散体の分離は殆ど認め得ないほどであったが、超音波プローブを全出力で用いて約300秒間再分散させた。再び、分散体の安定性を1週間評価した。1週間後、顔料分散体は良好に分散したままであり、約0.2グラムのIrgastab(登録商標)UV10(Ciba(登録商標)Specialty Cemicals,Inc.より入手可能なラジカル・スカベンジャー)と混ぜ合わせて約90℃で約3時間加熱したが、有害な効果は起らなかった。次にこの分散体を、表1に示された組成物を有する完全ゲル・インク及びワックス・ゲル・インクに調製した。

表1

【0058】
インク実施例1−4のレオロジー・プロフィルは以下の表2−9に与えられる。レオロジー・プロフィルによると、これら全てのインクは90℃又はそれ以下でジェット噴出可能(即ち、約10cpsの粘度を有する)である。インクのレオロジー特性は、Rheometric(登録商標)Fluid Spectrometer RFS3を用いた試験によって取得した。温度ステップは、温度範囲にわたる離散的な温度におけるレオロジー測定である。速度掃引は、単一の温度で可変ずり速度によるレオロジー測定である。G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である。タンジェント・デルタはG’で除したG”である。90℃から30℃までの1Hz掃引速度での温度掃引を行って、5度又は10度毎に測定値を取得した。ワックス−ゲル化剤インクはレオロジーを効果的に安定化するのにより多くのエネルギーを必要としたので、これは超音波プローブ(全出力、15秒、10gスケール)により成し遂げた。
【0059】
表2

【0060】
表3

【0061】
表4

【0062】
表5

【0063】
表6

【0064】
表7

【0065】
表8

【0066】
表9


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色着色料と、
着色料分散剤と、
少なくとも1つの硬化性モノマー、少なくとも1つのゲル化剤を含み、少なくとも1つの光開始剤、少なくとも1つの安定剤、及び少なくとも1つのワックスを含んでいてもよいインク媒体と、
を含むことを特徴とする照射硬化性相変化インク。
【請求項2】
前記白色着色料は、約200乃至約300ナノメートルの粒子サイズを有する二酸化チタン顔料であることを特徴とする、請求項1に記載の照射硬化性相変化インク。
【請求項3】
前記少なくとも1つのワックスは照射硬化性ワックスであることを特徴とする、請求項1に記載の照射硬化性相変化インク。
【請求項4】
前記少なくとも1つのワックスは照射硬化性ワックスであり、前記少なくとも1つのゲル化剤は次の化学式
【化1】

の化合物であり、
式中、R1は(i)アルキレン基であって、直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、置換及び非置換アルキレン基を含み、ヘテロ原子が該アルキレン基内に存在しても存在しなくともよいアルキレン基、(ii)アリーレン基であって、置換及び非置換アリーレン基を含み、ヘテロ原子が該アリーレン基内に存在しても存在しなくともよいアリーレン基、(iii)アリールアルキレン基であって、置換及び非置換アリールアルキレン基を含み、該アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子が該アリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアリールアルキレン基、或いは(iv)アルキルアリーレン基であって、置換及び非置換アルキルアリーレン基を含み、該アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子が該アルキルアリーレン基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアルキルアリーレン基であり、
2及びR2’の各々は互いに独立に、(i)アルキレン基であって、直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、置換及び非置換アルキレン基を含み、ヘテロ原子が該アルキレン基内に存在しても存在しなくともよいアルキレン基、(ii)アリーレン基であって、置換及び非置換アリーレン基を含み、ヘテロ原子が該アリーレン基内に存在しても存在しなくともよいアリーレン基、(iii)アリールアルキレン基であって、置換及び非置換アリールアルキレン基を含み、該アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子が該アリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアリールアルキレン基、或いは(iv)アルキルアリーレン基であって、置換及び非置換アルキルアリーレン基を含み、該アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子が該アルキルアリーレン基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアルキルアリーレン基であり、
3及びR3’の各々は互いに独立に、(a)光開始基であるか、又は(b)(i)アルキル基であって、直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、置換及び非置換アルキル基を含み、ヘテロ原子が該アルキル基内に存在しても存在しなくともよいアルキル基、(ii)アリール基であって、置換及び非置換アリール基を含み、ヘテロ原子が該アリール基内に存在しても存在しなくともよいアリール基、(iii)アリールアルキル基であって、置換及び非置換アリールアルキル基を含み、該アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子がアリールアルキル基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアリールアルキル基、或いは(iv)置換及び非置換アルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子が該アルキルアリール基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアルキルアリール基、である基であり、
ここで、R3及びR3’の内の少なくとも1つは光開始基であり、X及びX’の各々は互いに独立に酸素原子または化学式−NR4−の基であるとし、
4は(i)水素原子、(ii)アルキル基であって、直鎖及び分岐の、飽和及び不飽和の、環式及び非環式の、置換及び非置換のアルキル基を含み、ヘテロ原子が該アルキル基内に存在しても存在しなくともよいアルキル基、(iii)アリール基であって、置換及び非置換アリール基を含み、ヘテロ原子が該アリール基内に存在しても存在しなくともよいアリール基、(iv)アリールアルキル基であって、置換及び非置換アリールアルキル基を含み、該アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子が該アリールアルキル基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアリールアルキル基、或いは(v)アルキルアリール基であって、置換及び非置換アルキルアリール基を含み、該アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、環式又は非環式であり、ヘテロ原子が該アルキルアリール基のアリール部分又はアルキル部分に存在しても存在しなくともよいアルキルアリール基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の照射硬化性相変化インク。

【公開番号】特開2009−41015(P2009−41015A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197593(P2008−197593)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】