説明

省エネルギー支援システム

【課題】従来制御によるエネルギー使用量のデータが存在しない場合であっても、省エネルギー効果の把握やエネルギー使用量の異常な傾向を通知できること。
【解決手段】コンビニエンスストアなどの店舗に設置されている店舗側装置から店舗で消費するエネルギー使用量と外気温度をネットワーク経由で本部の管理サーバに送り、管理サーバでは受信したエネルギー使用量と外気温度を分析して各店舗のエネルギー使用量の傾向を把握し、エネルギー傾向が分析した結果と異なる場合はその旨を店舗側装置に通知する。通知を受けた店舗側装置はエネルギーの異常傾向の原因候補を管理サーバに通知し、管理サーバはそのエネルギー異常傾向と原因候補の関連付けを行ってデータベースに蓄積していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビニエンスストアなどの省エネルギーを支援するための省エネルギー支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンビニエンスストアなどの商業設備に対する省エネルギー化の取組みがなされている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、平均外気温度と電力消費量との間に2次曲線形式あるいは直線的な相関関係があることに着目し、この相関関係にもとづいて、エネルギー使用量の基準となるベースラインモデルを作成し、省エネ制御がうまく行われているかどうかを評価する装置が提案されている。この装置の動作概要は以下の如くである。
【0004】
まず、省エネ対策を実施していないときのエネルギー消費量を推定するのに必要なベースラインモデルを作成し、このベースラインモデルに対し実際の計測データを適用してベースラインエネルギー消費量を求める。次に、求めたベースラインエネルギー消費量(=従来制御による消費量)と実績エネルギー消費量(=省エネ制御による消費量)とを比較し、省エネ率を評価する。これにより、ベースラインモデル作成に必要な手間と、時間とを削減しつつ、省エネ制御がうまく行われているかどうかを評価することができるという効果を奏するというものである。
【0005】
また、この特許文献の第10の実施形態では、省エネ率に閾値を設定し、閾値以下の場合(省エネ制御がうまく行われていない場合)には、異常診断処理を行い、異常データが見つかった場合は画面に異常発生情報を表示するという技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−98361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の省エネ率による省エネ制御の評価は、従来制御によるエネルギー消費量と省エネ制御によるエネルギー消費量とを比較すること、すなわち省エネ率を求めることが前提となる。このため、新規店舗のような場合は、従来制御によるエネルギー消費量のデータが存在しないためこの評価手法は適用できず、機器や設備などの異常や無駄によるエネルギー使用量の異常を発見できないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、従来制御による機器のエネルギー使用量のデータが存在しない場合であっても、省エネルギー効果の把握や所定期間ごとのエネルギー使用量の異常な傾向を検出し、通知することのできる省エネルギー支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係わる省エネルギー支援システムは、電気、水道、ガスその他のエネルギーの使用量を収集する店舗側装置(50)と、店舗側装置と通信ネットワークを介して接続し、店舗側装置から送られてくるエネルギーの使用量をもとにエネルギーの使用量に関する異常の傾向を判定し、該判定結果を店舗側装置へ通知する管理サーバ(10)とを有する省エネルギー支援システム(1)であって、店舗側装置は、店舗内で消費するエネルギーの使用量を収集して管理サーバへ送信するエネルギー量送信手段(73)と、店舗の外気温度を収集して管理サーバへ送信する外気温度送信手段(72)と、管理サーバから送られてくる判定結果を受信して出力するエネルギー異常傾向受信手段(74)とを備え、管理サーバは、店舗側装置から送られてくるエネルギーの使用量と外気温度を受信して、それぞれエネルギーDB(31)と外気温度DB(32)に保存するエネルギー量・外気温度取得手段(22)と、収集した店舗ごとのエネルギーの使用量と外気温度の各データを用いて該エネルギー使用量の分析を行い、分析結果をエネルギー分析結果DB(33)に保存するエネルギー分析手段(24)と、エネルギーDB、外気温度DB、および、エネルギー分析結果DBに保存されている各データに基づいてエネルギーの使用量に異常な傾向があるか否か判定するエネルギー異常傾向判定手段(25)と、エネルギー異常傾向判定手段によってエネルギーの使用量に異常な傾向があると判定された場合は、該判定結果を店舗側装置に送信するエネルギー異常傾向送信手段(26)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、コンビニエンスストアなどの各店舗の使用エネルギーデータと外気温度を通信ネットワーク経由で本部の管理サーバに送り、管理サーバでは各店舗のエネルギー使用量と外気温度を分析して各店舗のエネルギー使用量傾向を把握し、エネルギー使用傾向がで分析した結果と異なる場合にその旨を店舗側装置に通知するので、店舗側で異常傾向を把握して、改善を図ることができる。
【0011】
ここで、「電気、水道、ガスその他のエネルギー」とは、エネルギー量として把握可能であれば足り、例示した電気、水道、あるいは、ガスに限定されない趣旨である。
【0012】
また、本発明に係わる省エネルギー支援システムは、さらに、店舗側装置に入力部を介してエネルギー異常原因を入力するエネルギー異常原因入力手段(75)と、エネルギー異常原因入力手段によって入力されたエネルギー異常原因を管理サーバへ送信するエネルギー異常原因送信手段(76)とを備え、管理サーバに店舗側装置から送られてくるエネルギー異常原因を受信して、判定結果と関連付けて保存するエネルギー異常原因受信手段(23)を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明では、異常傾向の通知を受けた店舗はエネルギーの異常傾向の原因(原因の候補を含む。)を本部側の管理サーバに通知し、管理サーバはそのエネルギー異常傾向と原因候補の関連付けを行ってエネルギー異常傾向・原因関連付けDB(34)に蓄積する。これにより、他の店舗で同様の異常傾向が検出されたときに当該DBにアクセスしてその原因を調べるなど、異常傾向への対策に利用することができる。
【0014】
また、本発明に係わる省エネルギー支援システムは、さらに、管理サーバに異常レベルごとに、異常検出時の通知先を選択する条件を記憶する通知先抽出条件テーブル(35)を備え、エネルギー異常傾向判定手段は、異常検出時の異常レベルに応じて、通知先抽出条件テーブルに基づいて選択された通知先へ異常傾向を送信することを特徴とする。
【0015】
本発明では、異常レベルによって異常傾向検出時の通知先を変えることによって、異常の影響度合いに応じて適切な通知が可能となる。
【0016】
好ましくは、通知先のアドレスには、地域の区分を特定可能な地域情報と、エネルギー使用量の監視対象となる設備を特定可能な設備情報と、役職IDとのうち少なくとも一つを含め、通知先抽出条件テーブルには、異常レベルごとに、地域情報、設備情報、または役職IDに基づいて通知先を選択する条件を設定すると良い。通知先条件テーブルで異常傾向検出時の通知先を管理することにより、通知先の設定・変更の管理が容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、平均外気温度とエネルギー使用量の相関関係に着目して、過去の外気温度とエネルギー使用量を分析し、この分析結果と現在の外気温度とエネルギー使用量のデータとを比較することによって、同じような外気温度の他の日と現在のエネルギー使用量の傾向が異なるという傾向(異常傾向)を簡易に判定でき、店舗の管理者に通知することができる。通知を受けた管理者は該当する機器や主幹、あるいは店舗全体の点検を実施することで、機器の異常や無駄の迅速な発見・対処を行うことが可能となる。また、異常傾向と原因との関係をデータベースに蓄積するので、省エネルギーに関するノウハウとして活用できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態による省エネルギー支援システム1の機能ブロック図である。
【図2】図1のエネルギーDB31のデータ構成図である。
【図3】図1の外気温度DB32のデータ構成図である。
【図4】図1のエネルギー分析手段24による分析結果の説明図である。
【図5】図4のグラフ例の説明図である。
【図6】図1のエネルギー分析結果DB33のデータ構成図である。
【図7】図1のエネルギー異常傾向判定手段25によって作成される単位時間データの集計テーブル例である。
【図8】図5のエネルギー使用傾向の分析結果のグラフに図7の集計テーブルのデータをプロットした図である。
【図9】図1のエネルギー異常傾向・原因関連付けDB34のデータ構成図である。
【図10】図1の省エネルギー支援システム1の処理手順の概要を示すフローチャートである。
【図11】図1の他の実施例による省エネルギー支援システム1の機能ブロック図である。
【図12】図11のエネルギー異常傾向送信手段26で用いられる通知先アドレスの構成例を示す図である。
【図13】図1の通知先抽出条件テーブル35のデータ構成図である。
【図14】図12の他の実施例による通知先アドレスの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態による省エネルギー支援システム1の機能ブロック図である。この図において、省エネルギー支援システム1は、各店舗に配置され、エネルギー使用量や外気温度の収集および異常傾向の通知等を行う店舗側装置50と、各店舗側装置50から通信ネットワーク5を経由して送られてくるエネルギー使用量・外気温度を取得し、これらのデータを分析して異常傾向を判定し、各店舗へ判定結果を通知する管理サーバ10とから構成されている。
【0020】
店舗側装置50は、店舗の外気温度を検知する温度センサ51、電気,ガス,水道などのエネルギー量を検知するセンサ52、データを入力する入力部62、警報装置や表示装置などから構成される出力部63、種々のデータ処理を実行する演算処理部64、通信ネットワーク5を介してデータの送受信を行う送受信部61から構成されている。
【0021】
また店舗側装置50の演算処理部64は、送受信部61との間でデータの受け渡し処理を実行する送受信処理手段71、温度センサ51によって検知された外気温度を管理サーバ10へ送信する外気温度送信手段72、各種センサ52から取得したエネルギー使用量を管理サーバ10へ送信するエネルギー量送信手段73、管理サーバ10から送られてくるエネルギー異常傾向を受信して出力部63へ出力するエネルギー異常傾向受信手段74、入力部62を介してエネルギー異常原因を入力するエネルギー異常原因入力手段75、および、入力したエネルギー異常原因を管理サーバ10へ送信するエネルギー異常原因送信手段76を有している。演算処理部64の有する各手段71〜76は、CPUによって実行されるプログラムとして実現可能な機能である。
【0022】
一方、管理サーバ10は、通信ネットワーク5を介してデータの送受信を行う送受信部11、種々のデータ処理を実行する演算処理部12、および、データを記憶する記憶部13から構成されている。
【0023】
また、管理サーバ10の演算処理部12は、送受信部11との間でデータの受け渡し処理を実行する送受信処理手段21、店舗側装置50から送られてくるエネルギー使用量や外気温度を受信して、それぞれエネルギーDB31,外気温度DB32に保存するエネルギー量・外気温度取得手段22、収集した店舗ごとのエネルギー使用量と外気温度のデータを用いてエネルギー使用量の分析を行い、分析結果をエネルギー分析結果DB33に保存するエネルギー分析手段24、各DB31〜33に保存されているデータからエネルギー使用量に異常な傾向があるかどうかを判定するエネルギー異常傾向判定手段25、エネルギー異常傾向判定手段25によってエネルギー使用量に異常傾向があると判定された場合は、その異常傾向を店舗側装置50に送信するエネルギー異常傾向送信手段26、および、店舗側装置50から送られてくるエネルギー異常原因データを受信して、エネルギー異常傾向と関連付けてエネルギー異常傾向・原因関連付けDB34に保存するエネルギー異常原因受信手段23を有している。演算処理部12の有する各手段21〜26は、CPUによって実行されるプログラムとして実現可能な機能である。
【0024】
次に、図10を用いて上記の構成を有する省エネルギー支援システム1の動作概要を説明する。
【0025】
まず、店舗側装置50においては、店舗で消費する電気、ガス、水道などのエネルギーの使用量と外気温度を定期的(例えば1時間ごと)に計測し、計測したデータを本部側の管理サーバ10へ送信する(S101,S102)。管理サーバ10は、これらのデータを受信すると(S201)、逐次データベースに蓄積する(S202)。そして、一日の最終時刻(24時)になると(S203で「Yes」)、蓄積した計測データを用いて、後述する手法によりエネルギー使用量の分析を行い(S204)、その分析結果をデータベースに格納する(S205)。その後、エネルギー異常傾向の有無の判定を行い(S206)、異常傾向が検出された場合は(S207で「Yes」)、その旨を店舗側装置50へ通知する。
【0026】
店舗側装置50では、管理サーバ10から送られてくるエネルギー異常傾向の通知を受信すると(S103)、その原因を調査した後(S104)、その調査結果であるエネルギー異常原因を管理サーバ10へ送信する(S105)。
【0027】
管理サーバ10は、店舗側装置50から送られてくるエネルギー異常原因を受信すると(S208)、それを先に送信した異常傾向と関連付けてデータベースに保存する(S209)。
【0028】
上記の手順において、ステップS203で、一日の最終時刻に達していない場合は、ステップS206に移行する。
【0029】
省エネルギー支援システム1の動作概要は上記の如くであるが、以下、各処理の詳細を説明する。
【0030】
(エネルギー使用量・外気温度データ収集処理)
店舗側装置50のエネルギー量送信手段73は、店舗内に備え付けられた各種センサ52を介して単位時間ごとに店舗内の電気,ガス,水道などのエネルギーの使用量を計測し、この計測データを管理サーバ10へ送信する。同様に、外気温度送信手段72も単位時間ごとに温度センサ51を介して店舗の外気温度を計測して、この計測データを管理サーバ10へ送信する。単位時間は、例えば1分,5分,1時間など、任意の時間に設定可能である。また、エネルギーの計測点はエネルギーを計測しているセンサ(測定器)に合わせて任意に複数個選ぶことができ、例えば、機器一つの電力量でも良いし、ある設備の主幹の電力量でも良い。
【0031】
店舗側装置50から送信されたエネルギー使用量と外気温度は、本部の管理サーバ10のエネルギー量・外気温度取得手段22を通して、各々エネルギーDB31と外気温度DB32に保存される。エネルギーDB31の例を図2、外気温度DB32の例を図3にそれぞれ示す。
【0032】
図2のエネルギーDB31は、単位時間を1時間とし、計測点は冷凍機動力の電力量とした例を示している。計測時刻ごとに電力量が記録されると共に、最終計測時点の電力量合計値が算出され、記録・更新されるようになっている。
【0033】
図3の外気温度DB32は、単位時間を1時間とし、店舗付近の外気温度とした例を示している。計測時刻ごとに外気温度が記録されると共に、最終計測時点の外気温度の平均値が算出され、記録・更新されるようになっている。
【0034】
なお、計測時刻ごとに、電力量合計値および外気温度の平均値を算出し、以降のエネルギー使用量分析処理に繋げることによって、異常傾向判定のための基準となるデータが完全に揃う前でもある程度精度を落とした異常傾向の判定が可能となる。この場合、データ数の増加に伴い、精度が向上する。
【0035】
(エネルギー使用量分析処理)
次に、エネルギー分析手段24は、一日の終了時にエネルギーDB31に保存されているエネルギーデータの電力消費量と外気温度DB32に保存されている外気温度データを用いて、店舗ごとの電力消費量についてのエネルギー使用傾向の分析を行う。エネルギー使用傾向の分析は、電力消費量計測点の一日単位のエネルギー使用量合計と一日の平均外気温度を求め、一日の平均外気温度毎に集計して、平均値,標準偏差,最大値,最小値などの統計量を算出する。この時、曜日によって平日と休日・祭日に分けて集計しても良い。分析結果およびそのグラフ例を図4、図5に示す。
【0036】
図4は、エネルギー使用傾向の分析結果として、ある期間(258日分、平日・休日・祭日混合)の冷凍機動力の電力量の平均値,標準偏差,最大値,最小値を算出した例を示している。また、図5は、エネルギー使用傾向の分析結果のグラフとして、平均外気温度毎に平均値,最大値,最小値をプロットしたグラフの例を示している。平均外気温度は、小数点以下を四捨五入した整数で扱っている。図5において、黒丸(●)の点はエネルギー分析手段24で分析したエネルギー使用量の最大値、三角(▲)の点は平均値、四角(■)の点は最小値を示している。
【0037】
エネルギー分析手段24で分析された分析結果は、エネルギー分析結果DB33に格納される。このエネルギー分析結果DB33に格納される情報としては、曜日(平日か休日・祭日か混合)、平均外気温毎のエネルギー使用量の平均値,標準偏差,最大値,最小値などがある。エネルギー分析結果DB33の例を図6に示す。図6のエネルギー分析結果DB33は、冷凍機動力の電力量の平均値,標準偏差,最大値,最小値(曜日混合)を算出した例を示している。
【0038】
(エネルギー使用量に関する異常傾向判定処理)
次に、エネルギー異常傾向判定手段25は、単位時間ごとのデータ取得時に、エネルギーDB31に保存されている電力消費量計測点のエネルギー使用量と外気温度DB32に保存されている外気温度とから、その時刻までの単位時間データを集計し、エネルギー分析結果DB33に蓄積された平均値,標準偏差,最大値,最小値などの統計量と比較して、エネルギー使用量に異常な傾向があるかどうかを判定する。単位時間データの集計テーブルの例を図7に示す。
【0039】
平均外気温度は、小数点以下を四捨五入した整数で扱っている。図7の単位時間データの集計テーブルは、2008年7月18日の冷凍機動力の電力量、24時間終了時点の例であり、一日の途中、例えば7時の時点では8時以降のデータは存在しない。
【0040】
また、図5のエネルギー使用傾向の分析結果のグラフに図7の集計テーブルのデータをプロットした例を図8に示す。
【0041】
図8において、白い菱形(◇)は、図7に示した単位時間データの集計テーブルにおける2008年7月18日の各時刻の平均外気温度(横軸)と単位時間使用量積算値(縦軸)をプロットした点である。また、曲線は最小値(■),平均値(▲),最大値(●)の多項式近似曲線(次数2)を示している。
【0042】
エネルギー使用の異常傾向を判定する方法としては、最大値,最小値の範囲を超えるエネルギー使用量があるかどうか、平均値±3×標準偏差の範囲を超えるエネルギー使用量があるどうかなどを用いることができる。また、クラスター分析やパターンマッチング手法も使用することができる。ここでは、平均値、最大値を超えるエネルギー使用量があるかどうかの異常傾向判定方法の例を示す。
【0043】
図6〜図8からわかるように、18時の時点で23℃2281は分析結果の23℃の平均値2209.1を超えており、平均値を超えた場合は「異常傾向の手前である(注意)」と判定する。20時の時点で23℃2548は23℃の最大値2469を超えており、最大値を超えた場合は「この日のエネルギー使用量に異常傾向がある」と判定する。つまり、外気温度を基準にして、所定範囲にある外気温度の他の日と比較して最大値を超えた場合は、異常傾向があると判定する。なお、異常傾向の判定は上記に限らず、外気温度ごとのエネルギー使用量の標準偏差(σ)を用いて、さらに詳細に区分するようにしても良い。たとえば、平均〜+3σは、異常傾向の手前、+3σ超過〜+6σ以下の範囲は異常レベル「小」、+6σ超過〜最大値以下の範囲は異常レベル「中」、最大値超過は異常レベル「大」とすることもできる。
【0044】
エネルギー異常傾向判定手段25によってエネルギー使用量に異常傾向があると判定された場合は、エネルギー異常傾向送信手段26を介して本部の管理サーバ10から店舗側装置50に通知し、店舗側の管理者にエネルギー使用量に異常傾向がある旨を通知する。平均値超過は注意レベル、最大値超過は警報レベルというようにレベル分けして通知をしても良いし、上記の如くさらに細分化された異常レベルを通知するようにしても良い。
【0045】
分析データ数が少ない(データ収集期間が短い)場合は、異常傾向の判定が出やすいので、管理サーバ10の画面(図示せず)からレベルによって通知するかどうかの条件を設定するようにしても良い。通知先は複数でも良い。また、注意レベルなら特定の通知先にのみ通知、警報レベルなら全通知先に通知するような条件を設定するようにしても良い。
【0046】
(エネルギー使用量に関する異常傾向通知処理)
エネルギー使用量に関する異常傾向の通知は例えば電子メールにて行うことができる。エネルギー異常傾向送信手段26は、電子メールの内容として、エネルギー異常傾向が認められた日時,内容,計測点,現在値(その時刻までの使用量積算値),分析結果,レベル分けした場合はそのレベル(注意/警報)は電子メールの本文や件名に記載し、その日のエネルギー使用量と外気温度の時間推移は、電子メールへの添付ファイルとしてcsvファイル化したものを送信する。
【0047】
店舗側装置50のエネルギー異常傾向受信手段74は、管理サーバ10から送られてくる異常傾向を受信すると出力部63に警報または表示出力する。
【0048】
(異常原因通知処理)
異常傾向の通知を受信した店舗側の管理者は計測点を中心にチェックし、異常傾向の原因が判明した場合は、エネルギー異常原因入力手段75により原因内容を入力する。入力されたエネルギー異常傾向の原因は、エネルギー異常原因送信手段76によって、本部の管理サーバ10に送信される。なお、エネルギー異常原因の送信は、例えば電子メールで行うことができる。すなわち、エネルギー異常傾向受信手段74によって受信したメールの返信メールとして、エネルギー異常原因入力手段75により入力され、その内容は管理サーバ10に送信されることになる。
【0049】
管理サーバ10では、エネルギー異常原因受信手段23によって、その内容を受信し、エネルギー異常傾向・原因関連付けDB34に格納する。図9にエネルギー異常傾向・原因関連付けDB34のデータ例を示す。
【0050】
エネルギー異常傾向・原因関連付けDB34に格納する内容としては、異常傾向を示した日時,内容,計測点,その日のエネルギー使用量と外気温度(単位時間データの外気温度と単位時間使用量),異常判定規準値,異常傾向の原因とする。これにより、エネルギーの異常傾向とその原因が相関付けられることになる。なお、異常の原因は1つである必要はなく、必要に応じて2つ、3つ或いはそれ以上の原因を格納してもよい。
【0051】
本実施の形態の説明は、管理本部に設置された管理サーバ10と、複数の店舗にそれぞれ設置されている店舗側装置50の1つについて説明を行ったが、エネルギーの異常傾向とその原因を関連付けるエネルギー異常傾向・原因関連付けDB34は、1つの店舗側装置50からだけの情報で構成されるのもではなく、多数の店舗側装置50からの情報を1つにまとめておくのが望ましい。これにより、ある店舗からの情報が他の店舗の省エネルギーに活用できるというメリットがある。
【0052】
このようにして、過去のエネルギー使用の異常傾向とその原因が関連付けられることにより、管理本部だけでなく全ての店舗における省エネルギーに関するノウハウなどが蓄積されていくことになる。これにより、個別の店舗における省エネルギー対策や、全ての店舗における省エネルギーに関する指針などを検討することが可能となる。
【0053】
(異常傾向通知処理の他の実施例)
図11に本実施例による省エネルギー支援システム1の機能ブロック図を示す。図1との違いは、記憶部13に異常レベルごとに異常検出時の通知先を選択する条件を記憶した通知先抽出条件テーブル35を設けたことである。同一要素には同一符号を付し説明を省略する。
【0054】
本実施例では、アカウントとドメインから構成されるアドレスによって店舗側装置50を特定して通知を行うものであるが、図12に示すように店舗側装置50のアドレスのアカウントを地域情報、設備情報、および固有のIDの3つの領域で構成することを特徴としている。地域情報は、都道府県などの小地域、市区などの中地域、町村などの小地域に分ける。また、設備情報は、電力設備、水道設備など、その店舗が保有する設備に応じて対応するアカウントのビット位置にフラグを立てる。さらに、アドレス全体がユニークに決定するように固有IDを設ける。
【0055】
このように異常傾向の通知先アドレスを体系的に構成する。そして、ある店舗で異常傾向が検出されたときは、図13に示す通知先抽出条件テーブルに基づいて通知先を選択し、抽出された通知先に異常傾向を通知するようにする。
【0056】
図13の通知先抽出条件は、異常レベルごとに抽出条件が定められている。例えば、上述の如く最大値を超えた場合など、特定の基準に基づいて異常レベルが「大」のときは、地域情報、設備情報共にフィルタをせず、予め登録された全通知先へ送信する。異常レベルが「中」の場合は、特定の地域のみに通知するようにする。たとえば、地域情報の大区分と中区分は異常傾向が検出された店舗と同じ地域のコードをセットし、地域情報の小区分は初期値から順にインクリメントし、送信するようにする。また、設備情報としては、異常傾向が検出された店舗と同じ設備を有する店舗のみに送信するようにする。また、異常程度が「小」の場合は、異常を検出した店舗のみに通知するようにする。
【0057】
以上の手順により、異常傾向のレベルに応じて適切な店舗側装置に通知することが可能となる。なお、通知先アカウントは、図14に示すように役職IDを付し、異常レベルによって、例えば「中」以上の場合は、所定のクラスの店舗管理者へも通知が行くようにしても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 省エネルギー支援システム
5 通信ネットワーク
10 管理サーバ
11 送受信部
12 演算処理部
13 記憶部
21 送受信処理手段
22 エネルギー量・外気温度取得手段
23 エネルギー異常原因受信手段
24 エネルギー分析手段
25 エネルギー異常傾向判定手段
26 エネルギー異常傾向送信手段
31 エネルギーDB
32 外気温度DB
33 エネルギー分析結果DB
34 エネルギー異常傾向・原因関連付けDB
35 通知先抽出条件テーブル
50 店舗側装置
51 温度センサ
52 各種センサ
61 送受信部
62 入力部
63 出力部
64 演算処理部
71 送受信処理手段
72 外気温度送信手段
73 エネルギー量送信手段
74 エネルギー異常傾向受信手段
75 エネルギー異常原因入力手段
76 エネルギー異常原因送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気、水道、ガスその他のエネルギーの使用量を収集する店舗側装置と、前記店舗側装置と通信ネットワークを介して接続し、前記店舗側装置から送られてくるエネルギーの使用量をもとにエネルギーの使用量に関する異常の傾向を判定し、該判定結果を前記店舗側装置へ通知する管理サーバとを有する省エネルギー支援システムであって、
前記店舗側装置は、
店舗内で消費する前記エネルギーの使用量を収集して前記管理サーバへ送信するエネルギー量送信手段と、
店舗の外気温度を収集して前記管理サーバへ送信する外気温度送信手段と、
前記管理サーバから送られてくる前記判定結果を受信して出力するエネルギー異常傾向受信手段と、を備え、
前記管理サーバは、
前記店舗側装置から送られてくる前記エネルギーの使用量と外気温度を受信して、それぞれエネルギーDBと外気温度DBに保存するエネルギー量・外気温度取得手段と、
収集した店舗ごとの前記エネルギーの使用量と外気温度の各データを用いて該エネルギー使用量の分析を行い、分析結果をエネルギー分析結果DBに保存するエネルギー分析手段と、
前記エネルギーDB、前記外気温度DB、および、前記エネルギー分析結果DBに保存されている各データに基づいてエネルギーの使用量に異常な傾向があるか否か判定するエネルギー異常傾向判定手段と、
前記エネルギー異常傾向判定手段によってエネルギーの使用量に異常な傾向があると判定された場合は、該判定結果を前記店舗側装置に送信するエネルギー異常傾向送信手段と、を備えたことを特徴とする省エネルギー支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の省エネルギー支援システムであって、さらに、
前記店舗側装置は、
入力部を介してエネルギー異常原因を入力するエネルギー異常原因入力手段と、
前記エネルギー異常原因入力手段によって入力されたエネルギー異常原因を前記管理サーバへ送信するエネルギー異常原因送信手段と、を備え、
前記管理サーバは、
前記店舗側装置から送られてくるエネルギー異常原因を受信して、前記判定結果と関連付けて保存するエネルギー異常原因受信手段を備えたことを特徴とする省エネルギー支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の省エネルギー支援システムであって、さらに、
前記管理サーバは、異常レベルごとに、異常検出時の通知先を選択する条件を記憶する通知先抽出条件テーブルを備え、
前記エネルギー異常傾向判定手段は、異常検出時の異常レベルに応じて、通知先抽出条件テーブルに基づいて選択された通知先へ異常傾向を送信することを特徴とする省エネルギー支援システム。
【請求項4】
前記通知先のアドレスは、地域の区分を特定可能な地域情報と、エネルギー使用量の監視対象となる設備を特定可能な設備情報と、役職IDとのうち少なくとも一つを含み、前記通知先抽出条件テーブルは、前記異常レベルごとに、前記地域情報、前記設備情報または前記役職IDに基づいて前記通知先を選択する条件が記憶されていることを特徴とする請求項3に記載の省エネルギー支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−198051(P2010−198051A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38702(P2009−38702)
【出願日】平成21年2月21日(2009.2.21)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)
【Fターム(参考)】