説明

真空アクチュエータ及び基板搬送ロボット

【課題】ロータのステータに対する位置決め精度を向上するとともに、モータ効率や組み立て性を向上する。
【解決手段】真空アクチュエータは、内側を真空排気できる真空隔壁と、真空隔壁に回転自在に支持されたロータと、ロータの外周面に設けられた永久磁石と、永久磁石に対向して設けられたコイルと、コイルを設けるステータと、を有する。ステータと真空隔壁は、一体として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気内部の機構部を駆動する真空アクチュエータ及び基板搬送ロボットに関し、特に、真空雰囲気下で基板などを搬送する搬送装置の駆動源としての真空アクチュエータ及びこの真空アクチュエータを備える基板搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
真空雰囲気内部の機構部を駆動するアクチュエータは、ロータとステータの間に隔壁を配置することによって、永久磁石が取り付けられたロータを真空側に、磁界を発生させるステータを大気側に配置されているものが知られていた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0003】
ステータのコイルは導線を巻回して構成されているため巻かれた導線の長さに応じた表面積を有しているが、特許文献1、特許文献2のモータのようにコイルを真空側から分離する隔壁を有することで、コイルから放出されるアウトガスが真空側に及ぼす影響を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−51943号公報
【特許文献2】実開昭64−16157号公報
【特許文献3】特開2001−112223号公報
【特許文献4】特開平05−316706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に示された技術によれば、ロータが配置される空間とステータが配置される空間が隔壁によって分離されるため、ロータに固定された永久磁石と、ステータの先端との距離が広がってしまい、コイルに流した電流に対するロータが実際に発生可能な効率(トルク定数)が必然的に低くなってしまっていた。真空隔壁部の肉厚を薄くしようとしても、大気圧力に耐える剛性を備えた厚みが必要で、且つその隔壁とロータ、隔壁とステータの間に稼動時の干渉防止のためや、組立上の関係でギャップを空けなければならないため、大幅な改善を図ることができなかった。
【0006】
同様に、ロータが配置される空間とステータが配置される空間が隔壁によって分離されるため、ロータは隔壁に対して位置決めを行うことになる。一方、ステータも隔壁に対して位置決めを行わざるを得ない。そのため、ロータのステータに対する位置決め精度、すなわち同軸精度の確保が困難であるという問題を有しており、モータの振動の増大や効率の低下、若しくは組み立て性の低下などの不都合が生じていた。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑みて真空雰囲気内部の機構部を駆動する真空アクチュエータ及び基板搬送ロボットについてなされたものであり、真空度に悪影響を与えることなく、ロータに固定された永久磁石とステータの先端との距離を縮めて磁気効率を大幅に向上を図ることができる真空アクチュエータ及び基板搬送ロボットを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、ロータのステータに対する位置決め精度を向上するとともに、モータ効率や組み立て性を向上することができる真空アクチュエータ及び基板搬送ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明に係る真空アクチュエータは、
内側を真空排気できる真空隔壁と、
前記真空隔壁に回転自在に支持されたロータと、
前記ロータの外周面に設けられた永久磁石と、
前記永久磁石に対向して設けられたコイルと、
前記コイルを設けるステータと、を有し、
前記ステータと前記真空隔壁は、一体として形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモータによれば、真空雰囲気に悪影響を与えることなく、モータ効率を向上することができるとともに、ロータのステータに対する高い位置決め精度及び同軸精度や組み立て性の向上を図ることができる。また、ステータが部品に覆われないため、大気への放熱効率の向上が図れ、温度上昇による発熱抵抗の増大を減少させ、より大電流を流すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータの断面斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るモータの縦断面図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面図である。
【図4A】、
【図4B】図4A、Bは、本発明の第1の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボット(一軸)の構成例(斜視図)である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボット(二軸)の構成例(斜視図)である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボット(二軸)の構成例(部分断面図)である。
【図7】図7は、本発明の第1の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボット(二軸)の構成例(部分断面図)である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係るモータの断面斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態に係るモータの縦断面図である。
【図10】図10は、図5のB−B断面図である。
【図11】図11は、本発明の第2の実施形態に係るステータの他の構成例(図5のB−B断面図)である。
【図12】図12は、本発明の第2の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボットの構成例(斜視図)である。
【図13】図13は、本発明の第2の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボットの構成例(部分断面図)である。
【図14】図14は、本発明の第2の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボットの構成例(部分断面図)である。
【図15】図15は、本発明の第3の実施形態に係るモータの断面斜視図である。
【図16】図16は、本発明の第3の実施形態に係るモータの縦断面図である。
【図17】図17は、図16のA−A断面図である。
【図18】図18は、本発明の第3の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボットの構成例(斜視図)である。
【図19】図19は、本発明の第3の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボットの構成例(部分断面図)である。
【図20】図20は、本発明の第3の実施形態に係るモータを適用した搬送ロボットの構成例(部分断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変できることは勿論である。
【0013】
図1乃至7は本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータについての図であり、図1はモータの断面斜視図、図2はモータの縦断面図、図3は図2のA−A断面図である。図4A、B乃至図7は本実施形態に係るアクチュエータを基板搬送ロボットに適用した構成例である。
【0014】
なお、これらの図面は煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0015】
図1、2に示したアクチュエータ(モータ3)は、モータケーシング5に回転自在にロータ7が支持されて構成されている。真空容器1の壁面に形成された開口部1aにロータ7の先端を差し込むようにモータケーシング5(真空隔壁)を取り付けることができる。
【0016】
真空容器1に取り付けた状態では、ロータ7の先端部を真空容器1の内側に突出させて配置することができる。
【0017】
モータケーシング5(真空隔壁)は、内側を真空雰囲気に保つことができる略有底円筒状の容器であり、真空容器1に取り付けられる第1ハウジング9と、コイル23が設けられたステータ12と、ステータ12の底部に接続される第2ハウジング10とを主要構成要素として有している。
【0018】
また、ロータ7は、出力軸としてのシャフト15とシャフト15の回りにステータ12と対向して取り付けられた磁石部材17とを有して構成されている。ロータ7の回転軸とモータケーシング5の上下方向の中心軸は同軸として配設されている。
【0019】
なお、本明細書中では、シャフト15の軸方向を上下方向とし、真空容器1が配置されている方向を上方、モータケーシング5が配置されている方向を下方とする。
【0020】
まず、モータケーシング5について説明する。第1ハウジング9は、上部側で真空容器1の開口部1aの下側に締結部材によって取り付けられる部分であり、モータケーシング5の側面の一部を構成する円筒状の上側壁部9aを有して構成されている。上側壁部9aの上端にはOリング33aを嵌め込む溝部9cが形成されており、真空容器1の開口部1a周囲の底面と上側壁部9aの上端との間でOリング33aを挟み込むことによって気密を保持している。上側壁部9aは下側でステータ12の上部と気密に接続されており、上側壁部9aとステータ12の接続部分にはOリング33bが介装されている。
【0021】
ステータ12は、第1ハウジング9の下側に気密に接続される略円筒状の部材であり、図3に示すように、円筒状のシール隔壁12aと、シール隔壁12aを貫通するように形成された略矩形板状の複数のステータティース21とから構成されている。ステータ12は下部で第2ハウジング10の上部と気密に接続されており、ステータ12と第2ハウジング10の接続部分にはOリング33cが介装されている。
【0022】
ステータ12はシール隔壁12aの上下側でそれぞれ第1ハウジング10、第2ハウジング10と気密に接続されているため、シール隔壁12aを貫通して配置されているステータティース21は内側が真空側、外側が大気側に配置されている。コイル23はステータティース21の大気側の部分に形成されている。本実施形態のモータ3は24個のステータティース21を有しており、それぞれのステータティース21にコイル23が形成されるため、ステータティース21と同数のコイル23を有している。
【0023】
なお、図3においては、コイル23を3相8極24コイル、ロータ側極数を16極とした構成例を示しているが、コイル23とロータ極数の組み合わせとしては、公知の構造を適宜採用することができるものとする。また、本実施形態においては、ステータティース21に巻回される導線として直径1.0mmポリエステルエナメルワイヤー(φ1.0PEW)が用いられているが公知の導線を適宜用いることができるものとする。
【0024】
第2ハウジング10は、ステータ12の下側に気密に取り付けられる略円筒有底部材であり、モータケーシング5の側面の一部を構成する円筒状の下側壁部10aと底面を形成する略円板状の底板10bとからなる。
【0025】
次に、ロータ7について説明する。シャフト15は、上述のようにロータ7の主要構成要素であり、少なくとも下側部分をモータケーシング5の内側に挿入した状態で回転自在に支持されている。シャフト15の上側の先端部を真空容器1の内側に突出できるように、先端部をモータケーシング5の上側から突出させて配設されている。シャフト15の下側は磁石部材17と同軸に嵌合されている。なお、イナーシャ低減のためシャフト15は中空の管状部材から構成してもよい。
【0026】
磁石部材17は、上述のようにロータ7の主要構成要素であり、ステータ12及びシャフト15の軸線を一致させた状態で、シャフト15の下端側に固定されている。本実施形態における磁石部材17は、シャフト15に固定された略円環状のバックヨーク25と、バックヨーク25の外周面に沿って一列に並べて取り付けられた複数の永久磁石27とから構成されている。
【0027】
バックヨーク25は永久磁石27の磁路を形成する部材であり、磁性材料であるケイ素鋼板やフェライトに相当する材質で形成されている。このバックヨーク25の形状は、磁路を形成できる形状であればよく、例えば、内側面や外側面に凹凸を有する形状や、磁路に影響を与えない範囲内に複数の貫通した孔部が形成された形状でもよい。
【0028】
永久磁石27は、板厚方向に磁束が向くように磁化されたセグメント型の複数の永久磁石から構成されている。本実施形態においては、上下方向に細長い16枚の矩形状のセグメント磁石が、極性が互い違いになるようにバックヨーク25の外周面に沿ってリング状に配列されている。また、コギング対策として板厚方向の断面形状が扇状であればより好適である。
【0029】
磁石材料としてはSm系やNd系、フェライト系など任意の永久磁石を適用することができることはもちろんである。なお、永久磁石27は、コギングを抑えるためスキュー角度を有してバックヨーク25に取り付けられると好適である。さらに、磁石部材17は、バックヨーク25を備えず、シャフト15に永久磁石27を直接取り付ける構成であってもよいことはもちろんである。
【0030】
以下に、本実施形態の特徴的な構成について詳しく説明する。まず、ステータ12について詳しく説明する。上述したように、ステータ12はシール隔壁12aと、シール隔壁12aを貫通するように形成されたステータティース21とを備えている。シール隔壁12aは、真空隔壁としての機能を有しており、ステータティース21とは一体として構成されている。シール隔壁12aの厚さはコイル23で発生する磁束がロータ側に漏れ出す程度である必要があり、モータ3は0.5〜2.0mm程度に調整されている。
【0031】
ステータティース21は、その周囲に導線を巻回することでコイル23が形成される部材であり、シール隔壁12aを貫通するように形成された略矩形板状のコア部21aと、ステータ12内側のコア部21aの端部に形成された略矩形板状のコアホルダ部21bとから構成されている。また、本実施形態のモータ3は、ステータ12外側のコア部21aの端部に、略筒状の外周ヨーク21cを備えているが、外周ヨーク21cを備えない構成とすることもできる。
【0032】
コア部21aは、長手方向を軸方向に合わせ、等角度間隔に放射状に配置されており、径方向の中央位置付近がシール隔壁12aにほぼ垂直に差し込まれるように配設されている。すなわち、コア部21aの一端部側はステータ12の内側(真空側)に、他端部側はステータ12の外側(大気側)に配置されている。
【0033】
コアホルダ部21bは、磁石部材17の外周面と平行になるように湾曲して形成された略板状の構造を、ステータティース21内側のコア部21a先端に形成したものである。コイル23はコア部21aの大気側に位置する部分に導線を幾重にも巻回することで形成されている。コイル23が大気側に形成されているため、コイル23の導線から発生するアウトガスがステータ12内側の真空度に悪影響を及ぼすことがない。
【0034】
ステータ12は、ケイ素鋼板やフェライト、パーマロイなど鉄損の少ない材質から構成されている。本実施形態のステータ12は、これらの材質を所定の形状に加工した部材から構成されている。なお、上記の鉄損の少ない材質で構成された板材を軸方向(上下方向)に多数枚積層させて構成するとより好適である。また、シール隔壁12aとステータティース21とを別体として製造し、これらを組み立ててステータ12を構成してもよい。この場合には、シール隔壁に形成された開口にステータティースを差し込んでロウ付けや接着剤により気密に固着される。
【0035】
なお、予め導線を巻回してコイルが形成されたステータティースをシール隔壁に差し込んで固着すると、狭いスリットで巻線を行う必要がなくなり好適である。ステータティースはシール隔壁よりも透磁率の高い材質から構成されることが望ましい。または、シール隔壁だけを非磁性ステンレスなどの非磁性材料から構成されるとしてもよい。
【0036】
なお、本実施形態のモータ3では、ステータティース21の外側端部を連結する略筒状の外周ヨーク21cを備える構造が採用されている。外周ヨーク21cは、ステータティース21の外周部分に接してネジにより締結、若しくは、圧入や溶接により固着されている。リブと一体に取り付けることでステータの強度向上を図ることができる。また、外周ヨーク21cはステータティース21と同様の材質で構成されるため、ステータティース21の外周側の磁路を形成し、隣接するステータティース21にまで磁力線を導くことができる。
【0037】
外周ヨーク21cは、コイル23の上下部分を覆わないようにステータティース21に固定されており、ステータティース21の上下部分に隙間があるため放熱性が高い構造である。すなわち、コイル23付近で過熱された空気は外周ヨーク21cの上側の隙間から放出され、外周ヨーク21cの上側の隙間から外気が流入することで対流が生じやすくなっている。なお、外周ヨーク21cにさらに開口部分を形成して放熱性の向上を図ってもよい。
【0038】
コイル23で発生した磁場は、透磁率が高いステータティース21内を磁路とする。そのため、ステータ12の大気側で発生させた磁場はステータティース21内を通ってステータ12の内側(真空側)に導かれる。また、コアホルダ部21bによって磁石部材17の外周面に沿った領域に強い磁路を形成することができるため、磁石部材17の外周面の近傍により強い磁場を形成することができる。
【0039】
すなわち、大気側のコイル23で発生させた磁場は、そのコイル23が形成されているステータティース21内を通って真空側に誘導され、磁石部材17(永久磁石27)に近接するステータティース21の端部側に強い磁場を形成することができる。
【0040】
また、ステータティース21をシール隔壁12aよりも透磁率の高い材質で構成した場合には、シール隔壁12aに洩れる磁力線を少なくすることができるため、さらに高い出力や効率を有するモータを得ることができる。
【0041】
なお、ステータ12は板材を軸方向(上下方向)に多数枚積層して構成させた場合には、板材の隙間に滲み込ませた樹脂やセラミックを固めて(含浸処理)、シール構造とすると好適である。このように導線の隙間などに樹脂などを含浸させることで、ステータ12を真空隔壁として機能させるとともに、真空領域に曝されるコイル23の表面積を減少させてアウトガスの放出を抑えることができる。
【0042】
本実施形態では半導体素子等のパッケージングに使われるPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂が用いられている。PPSペレット(米粒状の原材料)をステータ12の周囲においた状態で加熱し、溶融させ、ステータ12の隙間へ毛細管現象により浸透させたあと冷却することで含浸処理をすることができる。
【0043】
次に、ベアリング31の配設位置と効果について説明する。磁石部材17の外周部分とステータティース21の内周部分との隙間にはベアリング31が介装されている。すなわち、ステータ12の内側に張り出して形成されたステータティース21(コアホルダ部21b)の内周側先端の上側及び下側に2つのベアリング31の外周面がそれぞれ当接しており、磁石部材17の外周面の上側及び下側に2つのベアリング31の内周面がそれぞれ当接している。
【0044】
このように、本実施形態に係るモータ3は、ステータ12に対してロータ7の位置を直接的に決めることができる。このため、ステータ12とロータ7の高い同軸精度を確保することができる。すなわち、ステータティース21の内周面と磁石部材17の外周面の距離を極めて高い精度で組み付けることができるとともに、ステータティース21の内周面と磁石部材17の外周面の距離を近づけることができる。従って、モータ3の高効率化やトルクリップルの低減、若しくは組み立て性の向上を図ることができる。
【0045】
また、ロータ7は、2つのベアリング31でのみ支持する構造とすることができる。すなわち、シャフト15の下側のみで他の部材と接触し、真空容器1に近い部分にベアリングを配置しない構成にすることができる。この場合、ベアリング31でパーティクルが発生した場合にもパーティクルが上方の開口部1aを通過して真空容器1内に到達することが難しい。
【0046】
さらに、ベアリング31はいずれも磁石部材17(永久磁石27)に隣接して配置されていることから、磁性を有するパーティクルが発生した場合には磁石部材17に付着して除去することができる。もちろん、ベアリング31は、磁石部材17の外周面の上側及び下側のいずれか一方にのみ配置される構成でもよく、この場合も、磁性を有するパーティクルは磁石部材17に付着して除去することができる。ただし、ベアリング31の位置はこれに限定されるものではない。
【0047】
なお、図4A,B乃至図7に示したモータ3を用いた基板搬送ロボットR1,R2については、実施例として後述する。
【0048】
(第2の実施形態)
図8乃至10は本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータ(モータ43)についての図であり、図8はモータの断面斜視図、図9はモータの縦断面図、図10は図9のB−B断面図である。図12乃至14は本実施形態に係るアクチュエータを基板搬送ロボットに適用した構成例である。なお、これらの図面は煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。なお、以下の本実施形態において、第1の実施の形態と同様部材、配置等には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係るアクチュエータ(モータ43)は、上述した第1の実施形態に係るモータ3と比べてステータ52の構成に大きな違いがある。
【0050】
ステータ52は、第1ハウジング9の下側に気密に接続される略円筒状の部材であり、図8に示すように、シール隔壁53と、シール隔壁53の外壁面から外方に向けて放射状に形成された略矩形板状の複数のステータティース61とから構成されている。
【0051】
シール隔壁53は、真空を保持する隔壁としての機能を有し、厚さ0.5〜2.0mm程度、ステータティース61とは一体として構成されている。また、シール隔壁53は、円筒状の隔壁部53aと、隔壁部53aの上側と下側のそれぞれに形成されたリング状のフランジ部53b,53cとから構成されており、隔壁部53aの直径はフランジ部53b,53cの内径側に連結される大きさに形成されている。
【0052】
フランジ部53bの上側とフランジ部53cの下側はそれぞれ第1ハウジング10、第2ハウジング10と接続される。フランジ部53bと第1ハウジング10の間には気密を保持するためのOリング33bが、フランジ部53cと第2ハウジング10の間にはOリング33cがそれぞれ介装されている。
【0053】
また、本実施形態に係るフランジ部53bは外径側の縁が第1ハウジング9及び第2ハウジング10の外周面とほぼ同一の直径になるように形成されている。すなわち、隔壁部53aの内周面がロータ7の外周面に接近するように張り出して配置されている。
【0054】
ステータティース61は、その周囲に導線を巻回することでコイル23が形成される略矩形板状の部材であり、長手方向を軸方向に合わせ、等角度間隔に放射状に配置されており、内側の端部が隔壁部53aにほぼ垂直に連結されるように配設されている。ステータティース61の外側の端部は、フランジ部53bは外径側の外周面とほぼ同一の直径になるように形成されている。
【0055】
そのため、ステータティース61に形成されるコイル23は、シール隔壁53の外側(大気側)、且つ、モータケーシング44の外周面から突出しないように配置されている。コイル23が大気側に形成されているため、コイル23の導線から発生するアウトガスがステータ12内側の真空度に悪影響を及ぼすことがなく、また、モータケーシング44の外周面から張り出した部分がないため省スペース化を図ることができる。
【0056】
上下のフランジ部53b,53cの間には、リブ62がステータ52と一体に形成されている。リブ62はステータティース61と平行に形成された板状部材であり、ステータ52の剛性の向上を図ることができる。すなわち、隔壁部53aに負荷される応力を緩和することができ、隔壁部53aの厚さをより薄く形成することができる。もちろん、リブ62を有さない構造のステータであってもよい。
【0057】
また、図10に示すように、隔壁部53aの内側には軸線に沿ってスリット54が形成されている。スリット54は、隔壁部53aの内面から外方に向けて、隔壁部53aの肉厚の0.3〜3.0mm程度を残すように形成された切れ込みであり、各ステータティース61の中間位置の隔壁部53a内側に形成されている。なお、スリット54を有しない構成とすることもできる。
【0058】
コイル23で発生した磁場は、透磁率が高いステータティース61内を磁路とする。そのため、ステータ52の大気側で発生させた磁場はステータティース61内を通ってステータ52の内側(真空側)に導かれる。
【0059】
スリット54が形成された肉厚の薄い部分は、各コイル23から発生した磁界が飽和しやすくなるため、コイル23からの磁界を効率よく磁石部材17側に及ぼすことができる。言い換えると、スリット54で隔壁部53aを縦方向に区切ることによって磁石部材17の外周面に沿った磁路を形成することができ、磁石部材17の外周面の近傍により強い磁場を形成することができる。すなわち、スリット54で区切られた隔壁部の部分が、コアホルダに相当する部分である。もちろん、隔壁部53aを完全に切断するスリットを形成し、スリットの隙間を樹脂やエラストマーなどのシール部材で補填してもよい。
【0060】
ステータ52はステータ12と同様、ケイ素鋼板やフェライト、パーマロイなど鉄損の少ない材質で構成されている。これらの材質で構成された板材を軸方向(上下方向)に多数枚積層させて構成するとより好適である。
【0061】
また、シール隔壁53とステータティース61とを別体として製造し、これらを組み立ててステータ52を構成してもよい。この場合は、隔壁部にステータティースの端部を差し込む開口を設けておき、ステータティースは隔壁部よりも透磁率の高い材質から構成されることが望ましい。このように、シール隔壁とステータティースを別部材で製造してから組み立てることで、隔壁部53aの側方に洩れる磁力線を少なくすることができ、より高い出力や効率を有するモータを得ることができる。
【0062】
図11に、本実施形態に適用できるステータの他の構成例(断面図)を示す。図11は、図9のB−B断面図に相当する。図11に示したステータ72は、ロータ7と対向する内面にスリットが形成されておらず、隔壁部53aの厚さが薄く形成されている点でステータ52と異なっている。スリット54を形成しない構成であるので製造コストの低減を図ることができる。
【実施例】
【0063】
モータ3を用いて構成した基板搬送ロボットについて図4A,B乃至図7に基づいて説明する。基板などを載置することができる基板載置部材(アーム)を、シャフト15の先端部に取り付けることで、シャフト15の回転角度に応じて、真空容器1内で水平方向の基板の支持位置を変更することができるダイレクトドライブの基板搬送ロボットを構成することができる。
【0064】
まず、モータ3を適用した1軸の基板搬送ロボットR1の構成例について図4A,Bに基づいて説明する。モータケーシング5と真空容器1とを上下方向に伸縮可能なベローズ管38を介して接続するとともに、モータケーシング5の上下位置を調整する公知の上下動機構37を大気側に設けて構成すると好適である。このように構成すると、シャフト15の先端部を回転、及び上下動させることができるため、シャフト15の先端に基板41を載置できるアーム36を取り付けることで、真空容器1内で水平及び上下方向に基板搬送を行う基板搬送ロボットR1を構成することができる。
【0065】
なお、モータ3は、シャフト15の回転角度を制御する公知のサーボ装置を備えている。サーボ装置は、シャフト15の回転角度や回転速度をモニターするエンコーダー(ディスクと読み取りヘッド)と、コイル(ステータコイル)を構成する導線に印加する電力を制御する電源(不図示)とからなり、エンコーダーから入力されるシャフト15の回転角度信号に基づいて電力を印加するコイルに流れる電流を制御することによってシャフト15の回転数や回転角度を制御することができる。すなわち、基板搬送ロボットR1の動力源としてモータ3を用いることで、アームの変位速度や位置を制御することができる。
【0066】
なお、モータ3に替えてモータ43や後述するモータ303を用いることができることはもちろんである。
【0067】
次に、モータ3を適用した2軸の基板搬送ロボットR2の構成例について図5乃至7に基づいて以下に説明する。図5はモータを適用した搬送ロボットの構成例(斜視図)、図6はモータを適用した搬送ロボットの構成例(部分断面図)、図7はモータを適用した搬送ロボットの構成例(部分断面図)である。
【0068】
基板搬送ロボットR2において、上下に配置された2つのモータ3a,3bは、上述したモータ3と同様の構成を有している。また、上側のモータ3aのシャフトである外側シャフト15bと、下側のモータ3bのシャフトである内側シャフト15aとが同軸に配置されるとともに、それぞれ独立回転制御可能に構成されている。
【0069】
外側シャフト15bは、アーム36cに接続され、内側シャフト15aはアーム36c内に掛け渡されているベルト(不図示)を介してアーム36bと同期して回動するように接続されている。従って、モータ3a,3bの回転制御により基板41を載置するアーム36aの前後・回転方向(水平方向)の移動制御をすることができる。なお、アーム部分の構成は一般的なスカラアームとして公知の構成である。
【0070】
図4A,Bに示した基板搬送ロボットR1と同様に、モータ3aのモータケーシングと真空容器1とを上下方向に伸縮可能なベローズ管(不図示)を介して接続するとともに、モータ3a,3bの上下位置を調整する公知の上下動機構をモータケーシングの大気側に設けると好適である。このように構成することで、アーム36aを水平方向及び上下方向に移動制御することができるため、真空容器1内で水平及び上下方向に基板搬送を行う基板搬送ロボットを構成することができる。
【0071】
図12乃至14は、モータ43を適用した基板搬送ロボットR3の構成例であり、モータ43(43a,43b)を上下方向に2つ連結して構成されている。基板搬送ロボットR3において上下に配置された2つのモータ43a,43bは、上述したモータ43と同様の構成を有している。また、上側のモータ43aのシャフトである外側シャフト15bと、下側のモータ43bのシャフトである内側シャフト15aとが同軸に配置されるとともに、それぞれ独立回転制御可能に構成されている。基板搬送ロボットR3の他の構成は、上述した基板搬送ロボットR2とほぼ同様である。
【0072】
(第3の実施形態)
図15乃至図20は本発明の第3の実施形態に係るモータについての図であり、図15はモータの断面斜視図、図16はモータの縦断面図、図17は図16のA−A断面図である。また図18乃至図20はいずれもモータを適用した搬送ロボットの構成例である。なお、これらの図面は煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0073】
図15、16に示したアクチュエータ(モータ303)は、モータケーシング305に回転自在にロータ307が支持されたアクチュエータである。真空容器301壁面の開口部301aにロータ307の先端を差し込むようにモータケーシング305(真空隔壁)を取り付けることができる。真空容器301に取り付けた状態では、ロータ307の先端部を真空容器301の内側に突出させて配置することができる。
【0074】
モータケーシング305(真空隔壁)は、内側を真空雰囲気に保つことができる略有底円筒状の容器であり、真空容器301に取り付けられる第1ハウジング309とコイル323が設けられたステータ312とステータ312の底部に接続される第2ハウジング310とを主要構成要素として有している。また、ロータ307は、出力軸としてのシャフト315とシャフト315の回りにステータ312と対向して取り付けられた磁石部材317とを有して構成されている。ロータ307の回転軸とモータケーシング305の上下方向の中心軸は同軸として配設されている。なお、本明細書中では、シャフト315の軸方向を上下方向とし、真空容器301が配置されている方向を上方、モータケーシング305が配置されている方向を下方とする。
【0075】
まず、モータケーシング305について説明する。第1ハウジング309は、上部側で真空容器301の開口部301aの下側に締結部材によって取り付けられる部分であり、モータケーシング305の側面の一部を構成する円筒状の上側壁部309aと真空容器301側に接する略リング状の天板309bが一体に連結されて構成されている。天板309bにはOリング309dを嵌め込む溝部309cが形成されており、真空容器301の開口部301a周囲の底面と天板309bとの間でOリング309dを挟み込むことによって気密を保持している。
【0076】
上側壁部309aは下側でステータ312の上部と気密に接続されており、上側壁部309aとステータ312の接続部分にはOリング312aが介装されている。
【0077】
ステータ312は、第1ハウジング309の下側に気密に接続される略円筒状の部材であり、図17に示すように、内周面に沿ってリング状に複数のコイル323が配列されている。ステータ312は下部で第2ハウジング310の上部と気密に接続されており、ステータ312と第2ハウジング310の接続部分にはOリング310aが介装されている。ステータ312は、ケイ素鋼板やフェライト、パーマロイなど鉄損の少ない材質で構成されている。また、これらの材質で構成された板材を軸方向(上下方向)に多数枚積層させて構成するとより好適である。
【0078】
コイル323は、モータケーシング305の内側にステータ312と一体に形成されたステータティース321に導線を幾重にも巻回することで形成されている。ステータティース321は、ステータ312のOリング312a,310cによるシール位置よりも内側に形成されている。そのため、コイル323はモータケーシング305の内側(真空側)に配設されている。
【0079】
なお、図17においては、コイル323を3相8極24コイル、ロータ側極数を16極とした構成例を示しているが、コイル323とロータ極数の組み合わせとしては、公知の構造を適宜採用することができるものとする。また、本実施形態においては、ステータティース321に巻回される導線としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)絶縁皮膜された直径1.0mmワイヤーが用いられているが、ポリエステルエナメルワイヤー(φ1.0PEW)などの公知の導線を適宜用いることができるものとする。ただし、ガス放出量が少ないPTFE絶縁皮膜のワイヤーの方がより好適である。なお、コイル323の構成については後述する。
【0080】
第2ハウジング310は、ステータ312の下側に気密に取り付けられる略円筒有底部材であり、モータケーシング305の側面の一部を構成する円筒状の下側壁部310aと底面を形成する略円板状の底板310bとからなる。
【0081】
次に、ロータ307について説明する。シャフト315は、上述のようにロータ307の主要構成要素であり、少なくとも下側部分をモータケーシング305の内側に挿入した状態で回転自在に支持されている。シャフト315の上側の先端部を真空容器301の内側に突出できるように、先端部をモータケーシング305の上側から突出させて配設されている。シャフト315の下側は磁石部材317と同軸に嵌合されている。なお、イナーシャ低減のため、シャフト315は中空の管状部材から構成ることも可能である。
【0082】
磁石部材317は、上述のようにロータ307の主要構成要素であり、ステータ312及びシャフト315の軸線を一致させた状態で、シャフト315の下端側に固定されている。本実施形態における磁石部材317は、シャフト315に固定された略円環状のバックヨーク325と、バックヨーク325の外周面に沿って一列に並べて取り付けられた複数の永久磁石327とから構成されている。
【0083】
バックヨーク325は永久磁石327の磁路を形成する部材であり、磁性材料であるケイ素鋼板やフェライトに相当する材質で形成されている。このバックヨーク325の形状は、磁路を形成できる形状であればよく、例えば、内側面や外側面に凹凸を有する形状や、磁路に影響を与えない範囲内に複数の貫通した孔部が形成された形状でもよい。
【0084】
永久磁石327は、板厚方向に磁束が向いくように磁化されたセグメント型の複数の永久磁石から構成されている。本実施形態においては、上下方向に細長い16枚の矩形状のセグメント磁石が、極性が互い違いになるようにバックヨーク325の外周面に沿ってリング状に配列されている。また、コギング対策として永久磁石327の板厚方向の断面形状が扇状に形成、若しくは円弧状に湾曲されているとより好適である。
【0085】
磁石材料としてはSm系やNd系、フェライト系など任意の永久磁石を適用することができることはもちろんである。なお、永久磁石327は、コギングを抑えるためスキュー角度を有してバックヨーク325に取り付けられると好適である。さらに、磁石部材17は、バックヨーク325を備えず、シャフト315に永久磁石327を直接取り付ける構成であってもよいことはもちろんである。
【0086】
以下に、本発明の特徴的な構成についてさらに説明する。まず、本発明に係るモータ303の主たる特徴であるステータ312について説明する。コイル323の形成されたステータティース321と一体に構成されたステータ312が、真空隔壁の機能を果たしている。これにより、ステータ312の内周部分と、磁性部材の外周部分の間(Gap)には、お互いの干渉防止用の空間のみの隙間しか必要がなくなるため、磁気効率を大幅に向上させることが可能になる。
【0087】
また、ステータ312自体が真空隔壁をなしているため、ステータ312の外側は大気に開放されることになる。従って、モータ駆動電流による発熱に対する高い冷却効果を得ることができる。さらに高い冷却効果を狙うために、空冷や、真空内部へ配管を通さずにステータ312に水冷機構を増設することも可能である。そして、このようなステータ312を備えることに起因して、ベアリング331、コイル323も特徴を有している。
【0088】
ベアリング331の配設位置と効果について説明する。磁石部材317の外周部分とステータ312の内周部分との隙間にはベアリング331が介装されている。すなわち、ステータ312の内側に張り出して形成されたステータティース321の内周側先端の上側及び下側に2つのベアリング331の外周面がそれぞれ当接しており、磁石部材317の外周面の上側及び下側に2つのベアリング331の内周面がそれぞれ当接している。
【0089】
このように、モータ303は、ステータ312に対してロータ307の位置を直接決めることができる。従って、ステータ312とロータ307の同軸精度を確保することができる。すなわち、ステータティース321の内周面と磁石部材317の外周面の距離を極めて高い精度で組み付けることができ、ステータティース321の内周面と磁石部材317の外周面の距離を近づけることができる。従って、モータ303の高効率化やトルクリップルの低減、若しくは組み立て性の向上を図ることができる。
【0090】
また、ロータ307は、2つのベアリング331でのみ支持する構造をすることができる。すなわち、シャフト315の下側のみで他の部材と接触し、真空容器301に近い部分にベアリングを配置しない構成にすることができる。この場合、ベアリング331でパーティクルが発生した場合にもパーティクルが上方の開口部301aを通過して真空容器301内に到達することが難しい。さらに、ベアリング331はいずれも磁石部材317(永久磁石327)に隣接して配置されていることから、磁性を有するパーティクルは磁石部材317に付着して除去することができる。
【0091】
もちろん、ベアリング331は、磁石部材317の外周面の上側及び下側のいずれか一方にのみ配置される構成でもよく、この場合も、磁性を有するパーティクルは磁石部材317に付着して除去することができる。ただし、ベアリング331の位置はこれに限定されるものではない。
【0092】
次に、コイル323の構成について説明する。コイル323は、ステータティース321に導線を巻回して構成されているが、本発明におけるコイル323は、導線同士の隙間や導線とステータティース321の隙間に滲み込ませた、樹脂やセラミックを固める(含浸処理)ことで、真空領域に曝されるコイル323の表面積を減少させている。このように導線の隙間などに樹脂などを含浸させることで、コイル323の表面積を低減しアウトガスの放出を抑えることができる。
【0093】
また、導線部分の表面を樹脂やセラミックによって覆うことでもほぼ同様の効果を得ることができる。すなわち、ステータティース321に巻回された導線の外側領域だけに樹脂やセラミックを浸透させて固めることで、真空領域に曝されるコイル323の表面積を低減し、アウトガスの放出を抑えることができる。
【0094】
コイル323部分に含浸させる材料として、本実施形態では半導体素子等のパッケージングに使われるPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂が用いられている。PPS樹脂を用いた場合について説明すると、PPS樹脂によって、コイル323部分、若しくは真空内部に配備されるステータ312とコイル323を一体とした部分を覆いPPS樹脂モールドを形成すると好適である。
【0095】
PPS樹脂モールドの形成方法としては、コイル巻き完了済みのステータ312の周囲に金型を配備し、PPSペレット(米粒状の原材料)をステータ312の周囲においた状態で加熱し、溶融させ、コイル323の細部へ毛細管現象により浸透させたあと冷却する方法を用いることができる。このとき、PPSモールド外側からコイル323の配線(巻線)が見えないだけでなく、コイル323内部からの脱ガスに対して、リークパスが発生しないように封止可能に固着させている。当然ながら、コイルの導線を絶縁する部材はこの際の温度に耐えうる耐熱性を持つものであるものとする。
【0096】
また、上記のPPS樹脂モールドの形成方法は、ステータ312がケイ素鋼板やフェライト、パーマロイなどの板材を軸方向(上下方向)に多数枚積層させて構成したものである場合にも適用することができる。この場合、コイル323が形成された状態のステータ312の周囲を減圧雰囲気にしてからPPSペレットを溶融させると、ステータの隙間やコイル323の細部により浸透しやすくなり、効果的にリークパスをなくすことができる。
【0097】
PPS樹脂の他にも、エポキシ系樹脂、絶縁メッキ、水ガラスなどの絶縁性材料を用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂を用いた場合は、エポキシ系樹脂による固着によって、真空内部の部品の真空に触れる部分の表面積を大幅に低減させ、吸着ガスの量を減らすことにより、真空雰囲気に悪影響を与えることなく真空内部への駆動伝達が可能になる。
【0098】
以下に、モータ303を用いた基板搬送ロボットについて説明する。基板などを載置することができる基板載置部材(アーム)を、シャフト315の先端部に取り付けることで、シャフト315の回転角度に応じて、真空容器301内で水平方向の基板の支持位置を変更することができるダイレクトドライブの基板搬送ロボットを構成することができる。モータ303を適用した基板搬送ロボットの構成例について、さらに後述する。
【0099】
図18乃至図20は、本発明のモータ303を上下方向に2つ連結したモータ304を適用した基板搬送ロボット(スカラロボット)の構成例である。モータ304は、スカラロボットの駆動源として好適に適用できるように構成されたものであり、モータ303と同様の構成を有する2つのモータ303a,303bを上下に配置されている。また、上側のモータ303aのシャフトである外側シャフト315bと、下側のモータ303bのシャフトである内側シャフト315aとが同軸に配置されるとともに、それぞれ独立回転制御可能に構成されている。
【0100】
外側シャフト315bは、アーム336cに接続され、内側シャフト315aはアーム336c内に掛け渡されているベルト(不図示)を介してアーム336bと同期して回動するように接続されている。従って、モータ303a,303bの回転制御により基板341を載置するアーム336aの前後・回転方向(水平方向)の移動制御をすることができる。なお、アーム部分の構成は一般的なスカラロボットとして公知の構成とする。
【0101】
モータ304(303a)と真空容器301とを上下方向に伸縮可能なベローズ管を介して接続するとともに、モータ304の上下位置を調整する公知の上下動機構337をモータ304のケーシングの大気側に設けると好適である。このように構成することで、アーム336aを水平方向及び上下方向に移動制御することができるため、真空容器301内で水平及び上下方向に基板搬送を行う基板搬送ロボットを構成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側を真空排気できる真空隔壁と、
前記真空隔壁に回転自在に支持されたロータと、
前記ロータの外周面に設けられた永久磁石と、
前記永久磁石に対向して設けられたコイルと、
前記コイルを設けるステータと、を有し、
前記ステータと前記真空隔壁は、一体として形成されていることを特徴とする真空アクチュエータ。
【請求項2】
前記ステータは、前記真空隔壁の一部を構成するシール隔壁と、前記シール隔壁と一体に且つ真空側と大気側を貫通して放射状に配設された複数のステータティースとを有して構成され、
前記コイルは前記ステータティースの大気側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空アクチュエータ。
【請求項3】
前記ステータは、前記真空隔壁の一部を構成するシール隔壁と、前記シール隔壁の大気側にのみ放射状に配設され、前記コイルが形成された複数のステータティースとを有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空アクチュエータ。
【請求項4】
前記シール隔壁は、真空排気される内面に軸方向に形成されたスリットを有し、
前記スリットは、前記ステータティースの間の位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の真空アクチュエータ。
【請求項5】
前記ステータティースは、前記シール隔壁よりも透磁率の高い材質で構成されることを特徴とする請求項2に記載の真空アクチュエータ。
【請求項6】
前記ステータは、前記コイルが設けられるステータティースを前記真空隔壁の内側に有することを特徴とする請求項1に記載の真空アクチュエータ。
【請求項7】
前記コイルは、絶縁樹脂で覆われていることを特徴とする請求項6に記載の真空アクチュエータ。
【請求項8】
前記ステータの少なくとも真空側に曝される部分が、絶縁樹脂で覆われていることを特徴とする請求項6に記載の真空アクチュエータ。
【請求項9】
前記ロータは、前記真空隔壁にベアリングを介して支持され、
前記ベアリングの外周面は、前記ステータの内周面に当接し、内周面は前記ロータの外周面に当接することを特徴とする請求項1に記載の真空アクチュエータ。
【請求項10】
前記ロータは、前記ベアリングのみに支持されていることを特徴とする請求項9に記載の真空アクチュエータ。
【請求項11】
前記ベアリングの外周面は、前記ステータティースに当接することを特徴とする請求項9に記載の真空アクチュエータ。
【請求項12】
請求項1に記載された真空アクチュエータを駆動源として備えることを特徴とする基板搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−205878(P2011−205878A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279845(P2010−279845)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】