説明

真空バルブ

ハウジング(2)と、可動接触子(19、34)と固定接触子(22、31)から成る第1接触装置(19、22、31、34)と、可動接地接触子(16)と固定接地接触子(11)とから成る第2接触装置(11、16)とを有し、可動接地接触子(16)がハウジング(2)から気密に導き出された可動電極棒(14)に配置された真空バルブ(1、1′)において、アークと固定接地接触子との相互作用を防止すべく、ハウジングの内部で、真空バルブの内部室(20、21)を第1接触装置付き第1内部室と第2接触装置付き第2内部室とに分割する真空密分離手段(9、18、33)によって第1接触装置を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、可動接触子と固定接触子から成る第1接触装置と、可動接地接触子と固定接地接触子とから成る第2接触装置とを有し、可動接地接触子がハウジングから気密に導き出された可動電極棒に配置された真空バルブに関する。
【0002】
かかる真空バルブは独国特許第10030670号明細書で知られている。該真空バルブは、固定接触子と可動電極棒としての電流供給棒に結合された可動接触子とから成る第1接触装置を有している。真空バルブのハウジングの内部空間は、電流供給棒でベローズによって大気に対して真空密に密封されている。その第1接触装置は電気接続を開閉するために用いられる。第2接触装置の接地接点として可動接触子を備えた接触子ホルダが可動電極棒に配置され、その対向接触子として固定接点を備えた固定接地接触子は、真空バルブを接地するために用いられる。その固定接地接触子はラジアルフランジ付き厚肉管部材によって外側に導き出されている。上述の真空バルブにおいて、可動電極棒によって次の3つの開閉状態が得られる。即ち、
1.固定接触子が可動接触子に接続されている閉路状態、
2.固定接触子が可動接触子から離され、可動接地接触子が固定接地接触子から 同様に離されている開路状態、
3.可動接地接触子が固定接地接触子に接続されている接地状態。
【0003】
開路過程中に生ずるアークは、ラビリンス状シールド装置によって対向接触子からプラズマ物理学的に遮蔽される。該ラビリンス状シールドにもかかわらず、アークのイオンが対向接触子の接地電位により引き寄せられ、その結果、真空バルブの極性依存開閉性能が生じてしまう。
【0004】
本発明の課題は、アークと固定接地接触子との相互作用が防止した、冒頭に述べた形式の真空バルブを提供することにある。
【0005】
この課題は、本発明に基づいて、ハウジングの内部において、真空バルブの内部室を第1接触装置付き第1内部室と第2接触装置付き第2内部室とに分割する真空密分離手段により第1接触装置を保持することによって解決される。
【0006】
内部室を各々接触装置が配置される2個の内部室に真空密に分割することによって、第1接触装置の開路過程中におけるアークのイオンと可動接地接触子ないし固定接地接触子との相互作用を防止できる。
【0007】
本発明の一実施態様では、分離手段は、ハウジングに保持された真空密ブッシング付き分離板を備える。この分離板は、好適には導電体であり、真空バルブの内部室を互いに真空密に密封された2個の内部室に分割する単純な方式を提供する。
【0008】
有利な実施態様では、可動電極棒は分離板を貫通して延び、第1内部室において第1接触装置の可動接触子に結合され、分離板においてベローズが真空密ブッシングを形成している。該ベローズにより可動電極棒に対する真空密のブッシングを形成し、可動電極棒に配置された接触子を異なった位置間で移動可能とすべく、そのブッシングによって可動電極棒の運動を可能とする。
【0009】
他の有利な実施態様では、真空密ブッシングを第1接触装置の固定接触子における分離板に真空密にはめ込んだ接触台により形成し、可動電極棒の内部終端部材が第3接触装置の可動接触子を形成し、第3接触装置の固定接触子は接触台である。この配置構造は、互いに真空密に分離された内部室に第1接触装置と第2接触装置を各々配置する方式を提供し、その場合、第3接触装置が真空バルブの開路機能を発揮する。
【0010】
この実施態様の目的に適った実施態様において、第1接触装置の可動接触子は、第1内部室に真空密に延びている他の第2可動電極棒に設けられている。該第2可動電極棒の配置により、電流断絶機能ないし閉路機能および開路機能を互いに無関係に実施でき、この結果、電流断絶およびアーク消弧のために、固定接触子と可動接触子との間隔が小さくて足りるので、真空バルブはコンパクトな構造になる。これに対して、誘電分離は接触子間に大きな間隔を必要とする。
【0011】
有利な実施態様では、ベローズが第2可動電極棒の真空密ブッシングを形成する。ベローズは、可動電極棒に対する真空密ブッシングを形成するための有効な手段である。
【0012】
本発明の他の有利な実施態様では、固定接触子および可動接触子を各々銅・クロム合金で形成する。かかる材料は、有利に大きな開閉特性を有し、同じ開閉強度の場合、僅かな過電圧しか生じない。
【0013】
他の実施態様では、固定接触子および可動接触子を各々、銀含有率20〜50%のダングステンカーバイト銀合金で形成する。この材料は同様に第1接触装置を形成するために使用する。
【0014】
本発明の他の有利な実施態様では、可動接地接触子および固定接地接触子を各々銅で形成する。銅は良導電材料であり、従って、第2接触装置に対して接地接触装置としての特性を提供する利点がある。
【0015】
他の実施態様では、可動接地接触子および固定接地接触子を各々銅・クロム合金で形成する。この材料は上述した利点を有し、従って、第2接触装置にも採用できる。
【0016】
本発明の他の実施態様で、第3接触装置の接触面を銅で形成する。上述の特性を持つ銅は、第3接触装置に適した材料である。
【0017】
他の実施態様では、第3接触装置の接触面を銅・クロム合金で形成する。銅・クロム合金も第3接触装置に対し有効に利用できる。
【0018】
以下、図に示した実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1は、ブッシング(貫通開口)4付きの片側端板3と、反対側端板5と、絶縁筒6、7、8とから成るハウジング2を備えた真空バルブ1を示す。ハウジング2の絶縁筒6と絶縁筒7との間に導電性分離板9が配置され、該導電性分離板9は真空密のブッシング10を備える。ハウジング2の絶縁筒7と絶縁筒8の間に固定接地接触子11が配置され、該固定接地接触子11は開口12を備え、絶縁筒7および8より大きな外径を持つ。この結果、固定接地接触子11を接地すべく、真空バルブ1のフランジ状突出部13に外側から接近できる。電流供給導体(図示せず)に導電的に、かつ作動装置に機械的に結合された可動電極棒14は、端板3のブッシング4を貫通して延びている。ベローズ15が端板3と可動電極棒14に、各々可動電極棒14が真空バルブの内部室から真空密に導き出されるように結合されている。可動電極棒14は固定接地接触子11の開口12を貫通して延び、該開口12は可動電極棒14の外径よりかなり大きな直径を有している。固定接地接触子11のベローズ15とは反対の側に、開口12の内径より大きい外径を持つ接触板16の形をした可動接地接触子16が配置されている。可動電極棒14は、更に分離板9の真空密ブッシング10を貫通して延び、先端17が可動接触子19に結合されている。その際、分離板9と可動接触子19に結合されたベローズ18は真空密ブッシングとして用いられ、この結果真空バルブの内部室が第1内部室20と第2内部室21とに真空密に分けられている。固定接触子22が第1内部室20内に可動接触子19に対向して配置されている。固定接触子22は端板5に固く結合されている。接触子19、22は、第1接触装置の接触特性および消弧特性を改善するために平形接点23ないし平形接点24を備えたラジアル磁界接触子或いはアキシャル磁界接触子である。矢印AとBは可動電極棒14の運動方向を示す。端板3にシールド25が、固定接地接触子11の両側にシールド26、27が、分離板9の両側にシールド28、29が、端板5にシールド30が、各々絶縁筒6、7、8を蒸気から遮蔽し、かつ電位を制御するために設けられている。
【0020】
真空バルブ1は、矢印A、Bで示す運動方向に沿った可動電極棒14の動きにより3つの異なる状態と取る。図1に示す状態は、真空バルブ1の開路状態に相当する。可動接触子19と固定接触子22は互いに空間的に離れ、導電接続は存在しない。この状態では、可動接地接触子16と固定接地接触子11の間にも導電接続は存在しない。可動電極棒14が駆動機構(図示せず)により矢印Bの方向に動かされると、真空バルブ1は可動接触子19と固定接触子22が導電接続された閉路状態となる。真空バルブ1は閉路状態にある。可動電極棒14が駆動機構を介して固定接触子22から矢印Aの方向に離されると、まず開路状態に相当する図1の位置となり、その方向に更に動かされると、最終的に可動接地接触子16が固定接地接触子11と導電接続する真空バルブ1の接地位置となる。真空バルブ1の個々の状態間の移行は、ベローズ15と18の可撓性により可能となり、該ベローズ15、18は、可動電極棒14の運動時、第1内部室20ないし第2内部室21の真空密を保証する。
【0021】
図2は本発明に基づく真空バルブ1′の異なる実施例を示す。この実施例では、固定接触子31は導電性分離板9に、固定接触子31の接触台33が分離板9に入り込むように配置され、接触台33は真空密ブッシング10を形成し、第2内部室21の中に達する。第1内部室20と第2内部室21は、分離板9と接触台33によって互いに真空密に分離されている。可動電極棒32は、端板3のブッシング4を通って第2内部室21に達し、該第2内部室21はベローズ15により外側に対し真空密に密封されている。可動電極棒32は、固定接地接触子11の開口を通って延び、固定接地接触子11のベローズとは反対の側に可動接地接触子16を有している。可動接触子34は別の(第2)可動電極棒35に固く結合されている。この第2可動電極棒35は端板36におけるブッシング37を通して第1内部室20から外側に延び、図示しない電流供給導体に接続されている。第1内部室20を大気に対して真空密に分離すべく、ベローズ38が端板36と第2可動電極棒35に結合されている。第1接触装置を形成する可動接触子34並びに固定接触子31には平形接点23、24が設けられている。各端板、分離板および固定接地接触子に各々シールド25〜30が配置されている。
【0022】
図2の配置構造において、固定接触子31の接触台33と可動電極棒32の先端は、接触面39、40を備えた第3接触装置を形成している。接触面39、40は、第3接触装置の接触特性を改善すべく、接触台33および可動電極棒32の先端における平形接点39、40によって形成されている。この配置構造の場合、真空バルブ1′の1つの開閉状態は、一方では、図示しない駆動装置を介して、可動接触子34付きの第2可動電極棒35が、矢印Cの方向に動かされ、このため可動接触子34と固定接触子31が導電接続され、他方では、可動電極棒32が矢印Aの方向に上向きに動かされ、このため固定接触子31の接触台33と可動電極棒32の先端が同様に導電接続されることで得られる。第2可動電極棒35が矢印Dの方向に動かれると、可動接触子34と固定接触子31は互いに離され、かくして導電接続が切られる。その際、固定接触子31と可動接触子34の間にアークが発生し、該アークは真空中で消弧される。この配置構造における断路過程は、可動電極棒32が固定接触子31の接触台33から誘電分離にとって十分な間隔が得られるまで、矢印Bの方向に離すことで生ずる。可動電極棒32が固定接触子31の接触台33から一層離された際、可動接地接触子16が固定接地接触子11と導電接続されることによって、真空バルブ1′の接地過程が生ずる。この配置構造における断路状態おいて電流を断絶しアークを消弧するための可動接触子34と固定接触子31との間隔s1は、断路状態における可動電極棒32の先端と固定接触子31の接触台33との間の誘電分離にとって必要な間隔s2よりかなり小さく、その値は、最大でs1=(0.35mm/kV×真空バルブの定格電圧[kV])である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に基づく真空バルブの第1実施例の断面図。
【図2】本発明に基づく真空バルブの第2実施例の断面図。
【符号の説明】
【0024】
1、1′ 真空バルブ、2 ハウジング、3 端板、4ブッシング、5 端板、6〜8 絶縁筒、9 分離板、10 ブッシング、11 固定接地接触子、12 開口、13 フランジ状突出部、14 可動電極棒、15 ベローズ、16 可動接地接触子、17 可動電極棒先端、18 ベローズ、19 可動接触子、20 第1内部室、21 第2内部室、 22 固定接触子、23、24 平形接点、25〜30 シールド、31 固定接触子、32 可動電極棒、33 接触台、34 可動接触子、35 可動電極棒、36 端板、37 ブッシング、38 ベローズ、39、40 平形接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、可動接触子(19、34)と固定接触子(22、31)から成る第1接触装置(19、22、31、34)と、可動接地接触子(16)と固定接地接触子(11)とから成る第2接触装置(11、16)とを有し、可動接地接触子(16)がハウジング(2)から気密に導き出された可動電極棒(14)に配置されている真空バルブ(1、1′)において、
第1接触装置がハウジングの内部において、真空バルブ(1、1′)の内部室(20、21)を第1接触装置(19、22、31、34)付きの第1内部室(20)と第2接触装置(11、16)付きの第2内部室(21)とに分割する真空密分離手段(9、18、33)に保持されていることを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
分離手段(9、18)が、ハウジング(2)に保持された真空密ブッシング(10)付き分離板(9)を有していることを特徴とする請求項1記載の真空バルブ。
【請求項3】
可動電極棒(14)が分離板(9)を貫通して延び、第1内部室(20)において第1接触装置の可動接触子(19)に結合され、分離板(9)においてベローズ(18)が真空密ブッシング(10)を形成していることを特徴とする請求項2記載の真空バルブ。
【請求項4】
真空密ブッシング(10)が、第1接触装置の固定接触子(31)における分離板に真空密にはめ込まれた接触台(33)により形成され、可動電極棒(32)の内部終端部材が第3接触装置の可動接触子を形成し、第3接触装置の固定接触子が接触台(33)であることを特徴とする請求項2記載の真空バルブ。
【請求項5】
断路状態における固定接触子(31)と可動接触子(34)との間隔(s1)が、断路状態における可動電極棒(32)の内部終端部材と第3接触装置の接触台(33)との間の間隔(s2)より小さく、その間隔(s1)が最大で(真空バルブの定格電圧)×0.35mm/kVに相当していることを特徴とする請求項4記載の真空バルブ。
【請求項6】
第1接触装置の可動接触子(34)が、第1内部室(20)に真空密に延びている可動電極棒(35)に設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の真空バルブ。
【請求項7】
ベローズ(38)が可動電極棒(35)の真空密ブッシングを形成していることを特徴とする請求項6記載の真空バルブ。
【請求項8】
固定接触子(22、31)および可動接触子(19、34)が各々銅・クロム合金で形成されていることを特徴とする請求項1から7の1つに記載の真空バルブ。
【請求項9】
固定接触子(22、31)および可動接触子(19、34)が、各々銀含有率20〜50%のダングステンカーバイト銀合金で形成されていることを特徴とする請求項1から7の1つに記載の真空バルブ。
【請求項10】
可動接地接触子(16)および固定接地接触子(11)が各々銅で形成されていることを特徴とする請求項1から9の1つに記載の真空バルブ。
【請求項11】
可動接地接触子(16)および固定接地接触子(11)が各々銅・クロム合金で形成されていることを特徴とする請求項1から9の1つに記載の真空バルブ。
【請求項12】
第3接触装置の接触面(39、40)が銅で形成されていることを特徴とする請求項5から11の1つに記載の真空バルブ。
【請求項13】
第3接触装置の接触面(39、40)が銅・クロム合金で形成されていることを特徴とする請求項5から11の1つに記載の真空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−508294(P2009−508294A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529459(P2008−529459)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001613
【国際公開番号】WO2007/031040
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】