説明

真空ミキサー

【課題】真空チャンバー内のデッド真空容積を大巾に減少して省エネルギー化ができる真空ミキサーを提供する。
【解決手段】容器80の自転と公転により2種又は2種以上の物質の撹拌脱泡ができるようにした真空ミキサーにおいて、回転フレーム20の回転及びその回転機構に支障のないように真空チャンバー701内のデッドスペースを充填した固定構造物700、回転フレームの回転空間を埋めると共に、共に回転できるように回転フレーム又はその回転軸21に設けた回転構造物200、回転フレームとその回転機構に支障のないように真空チャンバー内のデッドスペースを充填する密封用開閉蓋74に設けた蓋構造物740のうち、固定構造物700のみ又は固定構造物700と回転構造物200又は固定構造物700と回転構造物200と蓋構造物740とを設けて真空チャンバー701内のデッド真空容積を大巾に減少できるようにした真空ミキサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスを、真空チャンバーと大気チャンバーに、隔壁により分けて設け、前記真空チャンバー内に、回転軸により回転(以下、公転という。)できるようにした回転フレームを設けて、その一端又は両端に自転できるようにした容器ホルダーをのせて、2種又は2種以上の被撹拌脱泡物質を入れた容器を前記容器ホルダーに入れ、前記大気チャンバーからの駆動機により、前記容器を公転すると共に自転させて、前記容器中の前記物質を混合撹拌すると共に脱泡する真空ミキサーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記真空ミキサーの公知例は種々あるが、真空チャンバー内の回転機械を、大気チャンバーの駆動機により、前記真空チャンバーと前記大気チャンバーとの隔壁を隔てて、マグネットカップリングにより作動させる公知例として、特開2006−289254号公報に示すものがある。同公報の図8に示すように、真空チャンバー内の被撹拌脱泡物質を入れた容器を自転させる機構と公転させる機構とを、真空チャンバーと大気チャンバーとの間の隔壁を隔てて、それぞれの前記機構を、それぞれのマグネットカップリングにより、大気チャンバー内の容器自転用の電動機と容器公転用の電動機によりそれぞれ駆動していたので、真空チャンバーは大気チャンバーから完全に密封されて、真空チャンバー内の真空度の向上と真空ポンプの小型化及び前記真空ポンプのボックス内への収納に大きく寄与することができた。
本発明者は、真空チャンバー内の真空度の向上と真空ポンプの小形化と省エネルギー化に、さらに大きく寄与できるようにした改良された真空ミキサーの開発に成功した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−289254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、真空チャンバーにおける真空度の向上、ケース内に収容した真空ポンプの小形化に大きく寄与して省エネルギー化をはかることができる真空ミキサーを提供するものである。
また、本発明は、容器の撹拌脱泡能力のさらに向上をはかることができるようにした真空ミキサーを提供するものである。
さらに、本発明は、装置全体として小形軽量化ができ、構造簡単で安価に製作できる真空ミキサーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の真空ミキサーは、上記課題を達成するため、図示するように、請求項1の発明は、ボックス70に、真空チャンバー701と大気チャンバー702とを隔壁75により分けて設け、前記真空チャンバー701内に、2種又は2種以上の被撹拌脱泡物質を入れた容器80を搭載して、容器80を自転させると共に、公転させる回転フレーム20を回転可能に回転軸21に支持した真空ミキサーにおいて、前記回転フレーム20の回転及びその回転機構に支障のないように、前記真空チャンバー701内のデッドスペースを充填する固定構造物700を、前記真空チャンバー701内に設けて、前記真空チャンバー701内のデッド真空容積を大巾に減少できるようにしたものである。
また、本発明真空ミキサーは、上記課題を達成するため、図示するように、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記真空ミキサーが、前記回転フレーム20の回転空間を埋める回転構造物200を、前記回転フレーム20又はその回転軸21に設けて、共に回転できるようにして、前記真空チャンバー701内のデッド真空容積を大巾に減少できるようにしたものである。
また、本発明真空ミキサーは、上記課題を達成するため、図示するように、請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記真空ミキサーが、前記真空チャンバー701の密封用開閉蓋74に前記真空チャンバー701内のデッドスペースを充填する蓋構造物740を、前記回転フレーム20とその回転機構に支障のないように設けて、前記真空チャンバー701内のデッド真空容積を大巾に減少できるようにしたものである。
また、本発明真空ミキサーは、上記課題を達成するため、図示するように、請求項4の発明は、請求項1、請求項2又は請求項3の発明において、前記真空ミキサーが、前記真空チャンバー701内に回転可能に支持した前記回転フレーム20の公転用の回転軸21を、前記真空チャンバー701と大気チャンバー702との隔壁75を隔てて、マグネットカップリング30を介して前記大気チャンバー702内の公転用電動機10により駆動できるようにし、前記真空チャンバー701内に回転可能に支持した前記回転フレーム20上の自転用の回転軸51を、公転用の回転軸21の回転と無関係に歯車伝動した、自転用の歯車伝動軸58を、前記真空チャンバー701と前記大気チャンバー702との前記隔壁75を隔てて、マグネットカップリング50を介して前記大気チャンバー702内の自転用電動機40により駆動できるようにしたものである。
本発明において、固定構造物700、回転構造物200又は蓋構造物740は、ポリ塩化ビニル樹脂や硬質発泡ポリウレタン樹脂等のプラスチック樹脂の成形物によるもの、木、合板製の成形物によるもの、金属板、合成樹脂板の組立物によるもの、アルミニウム等の鋳造物によるものなど、その材質、形状、構造、重量又は軽量化等は任意に決定できるが、回転構造物200は、公転用回転軸21の高速回転に伴う不つり合いやふれまわり(whirling)の防止に役立つ配慮が必要である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、真空チャンバー701は、固定構造物700、回転構造物200、蓋構造物740のいずれか1つ又は2つ又は全部を設けることにより、真空チャンバー701内のデッド真空容積を大巾に減少させることができ、また、真空チャンバー701内は、大気チャンバー702からの公転用及び自転用動力の伝動が、マグネットカップリング30及び50による場合は、従来装置のように、隔壁75に設けたこれらの動力軸封装置からのリークが全くなく、真空チャンバー701内の真空度は、小型の真空ポンプ60で充分高真空度を維持でき、容器80の撹拌脱泡能力は極めて高い。
従って、省エネルギー化、装置の小型軽量化が達成できると共に、構造簡単、安価に製作できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の全体装置の概略を示した縦断面図的な説明図である。
【図2】蓋を除いて図1の真空チャンバーの概略を示した平面図的な説明図である。
【図3】図1の真空チャンバーをA−A線で横断したときの平面図的な概略説明図である。
【図4】蓋及び蓋構造物の斜視図的な概略説明図である。
【図5−1】公転用回転軸のディスクタイプのマグネットカップリングの断面図的な説明図である。
【図5−2】公転用回転軸のディスクタイプのマグネットカップリングの別の斜視図的な説明図である。
【図5−3】自転用回転軸のディスクタイプのマグネットカップリングの断面図的な説明図である。
【図6−1】公転用回転軸のシリンダタイプのマグネットカップリングの断面図的な説明図である。
【図6−2】公転用回転軸のシリンダタイプのマグネットカップリングの別の斜視図的な説明図である。
【図6−3】自転用回転軸のシリンダタイプのマグネットカップリングの断面図的な説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の真空ミキサーの最良の形態が実施例1に記載される。
【実施例1】
【0009】
本発明装置の実施例1が図1、図2、図3、図4、図5−1、図5−2、図5−3、図6−1、図6−2及び図6−3に示されている。本発明実施例1の真空ミキサーは、ボックス70内を隔壁75を介して真空チャンバー701と大気チャンバー702に完全に隔離している。また、隔壁75には、第1穴7501と第2穴7502とを設け、各穴7501、7502の縁部に支持された非磁性金属製カップ状隔壁751、752をそれぞれ下方向に設けている。真空チャンバー701には、公転用回転軸21に対し、対向する1対の傾斜構造体201及び対向する1対の水平構造体202からなる回転フレーム20を、固着して回転可能に支持した軸受台座22を隔壁75上に設けている。
1対の傾斜構造体201には、容器80と、容器80を着脱可能に挿入して嵌合又は係合して、自転できるようにした容器ホルダ81、容器ホルダ81を回転可能に軸支した自転用回転軸51、自転用回転軸51に固着した傘歯車521、傘歯車521に歯合した傘歯車522、傘歯車522の回転軸523に固着した平歯車53、平歯車53に歯合して一体的に回転する平歯車55及び56であって公転用回転軸21に遊嵌されたもの、平歯車56に噛合された平歯車57、平歯車57に固着した回転軸58を回転可能に隔壁75上に支持した軸受台座59を設けている。
マグネットカップリング装置30は、ディスクタイプのもので、公転用回転軸21の下端に、図1、図5−1及び図5−2に示すように、複数対のマグネット311(311(a)及び311(b))を円板状台座の裏面に放射状に交互に配置した従動側ディスク31を固着すると共に、第1穴7501の縁部に支持された非磁性金属製カップ状隔壁751を設けて、その底壁7511内側に近接して従動側ディスク31を回転可能に回転軸21により支持している。隔壁751の底壁7511の外側には、駆動側ディスク32が、円板状台座の表面に、複数対のマグネット321(321(a)及び321(b))を放射状に交互に配置して隔壁751の底壁7511の外側に近接して、駆動側ディスク32を回転可能に公転用駆動軸11に直結している。
マグネットカップリング装置30は、図6−1及び図6−2に示すシリンダータイプの装置30Bのものでもよい。マグネットカップリング装置30Bは、公転用回転軸21の下端に、図6−1及び図6−2に示すように、複数対のマグネット311B(311B(a)及び311B(b))を外周面に交互に取りつけた内輪ヨーク31を固着すると共に、第1穴7501の縁部に支持された非磁性金属製カップ状隔壁751Bを設けて、その筒状壁7511B内側に近接して、内輪ヨーク31Bを回転可能に回転軸21により軸支している。隔壁751Bの筒状壁7511Bの外側には、公転用の駆動軸11に直結した回転軸33Bを介して外輪ヨーク32Bが、内周面に複数対のマグネット321B(321B(a)及び321B(b))を交互に固着すると共に、隔壁751の筒状壁7511外側に近接して回転可能に軸受台座34Bによりその軸33Bが回転可能に支持されている。ケーシング300Bは、第1穴7501の縁部に支持され、軸受台座34Bを介して、回転軸33Bに直結した軸11を遊嵌している。
マグネットカップリング装置50は、図1及び図5−3に示すように、ディスクタイプのもので、歯車伝動軸58の下端に、図5−2に示すように、複数対のマグネット511(511(a)511(b))を円板状台座の裏面に放射状に交互に配置した従動側ディスク51を固着すると共に、第2穴7502の縁部に支持された非磁性金属製カップ状隔壁752を設けて、その底壁7521内側に近接して従動側ディスク51を回転可能に回転軸58により支持している。隔壁752の底壁7521の外側には、駆動側ディスク52が、円板状台座の表面に、図5−2に示すように、複数対のマグネット521(521(a)及び521(b))を放射状に交互に配置して隔壁752の底壁7521の外側に近接して、駆動側ディスク52を回転可能に自転用駆動軸41に直結している。
マグネットカップリング装置50は、図6−3に示すシリンダータイプの装置50Bのものでもよい。マグネットカップリング装置50Bは、回転軸58の下端に、図6−2に示すように、複数対のマグネット511B(511B(a)及び511B(b))を外周面に交互に取りつけた内輪ヨーク51を固着すると共に、第2穴7502の縁部に支持された非磁性金属製カップ状隔壁752Bを設けて、その筒状壁7521Bに近接して、内輪ヨーク51Bを回転可能に回転軸58により軸受台座59を介して回転可能に支持している。隔壁752Bの筒状壁7511の外側には自転用の電動機軸41に直結する外輪ヨーク52Bが、内周面にマグネット511Bにそれぞれ対応する複数対のマグネット521B(521B(a)及び521B(b))を交互に固着すると共に、隔壁752Bを隔てて内輪ヨーク511Bに近接して回転可能に軸受台座54Bによりその軸53Bが支持されている、ケーシング500Bは第2穴7502の縁部に支持され、軸受台座54Bを介して、回転軸53Bに直結する軸41を遊嵌している。
大気チャンバー702には、公転用電動機10、自転用電動機40、真空チャンバー701内を吸引管61を介して真空吸引する真空ポンプ60を設けている。
公転用電動機10は、駆動側ディスク32に直結した駆動軸11を設けている。自転用電動機40は、駆動側ディスク52に直結した駆動軸41を設けている。
真空チャンバー701内では、図1、図2及び図3に示すように、回転フレーム20の回転及びその回転機構(回転軸21、1対の平歯車53、平歯車55及び56、平歯車57、軸受台座22、軸受台座59等)に支障のないデッドスペースを充填する固定構造物700を設けている。
また、図1及び図2に示すように、回転フレーム20の回転空間を埋める回転構造物200を、回転フレーム20及び回転軸21に支持された円板203を介して、共に回転できるように円板203上に固着している。
さらに、図1及び図4に示すように、真空チャンバー701の密封用開閉蓋74には、回転フレーム20の回転及びその回転機構(回転軸21、1対の容器80及び容器ホルダ81等)に支障のないデッドスペースを充填する蓋構造物740を固着している。
従って、大気チャンバー702において、公転用電動機10と自転用電動機40を起動すると、真空チャンバー701内では、ボックス70の密封された隔壁75を介して、マグネットカップリング30及び50によって、回転フレーム20は公転し、回転フレーム20上の容器ホルダ81は自転し、また、真空ポンプ60は真空チャンバー701内を真空吸引して、被撹拌脱泡物質を入れた容器80は、自転すると共に、回転軸21まわりに公転し、真空雰囲気中で容器80内の2種又は2種類以上の被撹拌脱泡物質を均一混合して急速に脱泡するが、この際、真空チャンバー701は、固定構造物700、回転構造物200、蓋構造物740のいずれかの組合せにより、有効な真空容積が最小になるように形成することができるので、高真空度を維持して極めて短時間の撹拌脱泡ができる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明装置は、構造簡単、小型、軽量に製作できる。
【符号の説明】
【0011】
10 公転用電動機
20 回転フレーム
200 回転構造物
21 回転フレームの回転軸
30、30B マグネットカップリング
40 自転用電動機
50、50B マグネットカップリング
51 自転用回転軸
58 自転用歯車伝動軸
70 ボックス
700 固定構造物
701 真空チャンバー
702 大気チャンバー
74 密封用開閉蓋
740 蓋構造物
75 隔壁
80 容器
81 容器ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス(70)内に、真空チャンバー(701)と大気チャンバー(702)とを隔壁(75)により分けて設け、前記真空チャンバー(701)内に、2種又は2種以上の被撹拌脱泡物質を入れた容器(80)を搭載して、容器(80)を自転させると共に、公転させる回転フレーム(20)を回転可能に回転軸(21)に支持した真空ミキサーにおいて、前記回転フレーム(20)の回転及びその回転機構に支障のないように、前記真空チャンバー(701)内のデッドスペースを充填する固定構造物(700)を、前記真空チャンバー(701)内に設けて、前記真空チャンバー(701)内のデッド真空容積を大巾に減少できるようにしたことを特徴とした真空ミキサー。
【請求項2】
前記真空ミキサーが、前記回転フレーム(20)の回転空間を埋める回転構造物(200)を、前記回転フレーム(20)又はその回転軸(21)に設けて、共に回転できるようにして、前記真空チャンバー(701)内のデッド真空容積を大巾に減少できるようにしたことを特徴とした請求項1記載の真空ミキサー。
【請求項3】
前記真空ミキサーが、前記真空チャンバー(701)の密封用開閉蓋(74)に前記真空チャンバー(701)内のデッドスペースを充填する蓋構造物(740)を、前記回転フレーム(20)とその回転機構に支障のないように設けて、前記真空チャンバー(701)内のデッド真空容積を大巾に減少できるようにしたことを特徴とした請求項1又は2記載の真空ミキサー。
【請求項4】
前記真空ミキサーが、前記真空チャンバー(701)内に回転可能に支持した前記回転フレーム(20)の公転用の回転軸(21)を、前記真空チャンバー(701)と大気チャンバー(702)との隔壁(75)を隔てて、マグネットカップリング(30)を介して前記大気チャンバー(702)内の公転用電動機(10)により駆動できるようにし、前記真空チャンバー(701)内に回転可能に支持した前記回転フレーム(20)上の自転用の回転軸(51)を、公転用の回転軸(21)の回転と無関係に歯車伝動した、自転用歯車伝動軸(58)を、前記真空チャンバー(701)と前記大気チャンバー(702)との前記隔壁(75)を隔てて、マグネットカップリング(50)を介して前記大気チャンバー(702)内の自転用電動機(40)により駆動できるようにしたことを特徴とした請求項1、2又は3記載の真空ミキサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【公開番号】特開2011−177662(P2011−177662A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45086(P2010−45086)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(391042232)ワタナベ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】