説明

真空下水道システム用開閉弁の弁体構造

【課題】良好なシール性を得られて、確実に、真空圧を遮断することが出来る真空下水道システム用開閉弁の弁体構造を提供する。
【解決手段】真空ステーション7の真空ポンプによって生じる真空圧で、真空下水管路16内の汚水を移送する真空下水道システムであって、開閉弁23の弁体27が、BMC樹脂によって形成されている。
弁体27の周囲には、真空下水管路16の内側面と圧接されることにより、シールを行うゴム製シール部材が被覆されてシール被覆部34が設けられている。
そして、弁体27に設けられた雌ネジ部材32に、軸部材14の雄ネジ部14bを螺合させることにより、軸方向に弁体27を移動させる。
雌ネジ部32aを構成する雌ネジ部材32は、金属製材料で形成されて、弁体27と一体となるように埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空圧を用いて流体を搬送する真空下水道システムで、メンテナンス等の流路を遮断する際に、開閉塞可能な開閉弁に用いられる弁体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然流下式下水道システムに代わって、真空下水道システムの採用が増加しつつある。この真空下水道システムは、真空圧を利用して、汚水枡に溜まった汚水を吸引収集するものである(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような真空下水道システムでは、図20乃至図22に示す様な建築物1などから排出された汚水が、排水路2を介して、真空弁4を備えた汚水枡3から構成される真空弁ユニット5に一時的に貯留されている。
【0004】
この汚水枡3内の汚水が、一定量に達すると、前記真空弁4が開放されて、真空弁4の下流側に接続された真空下水道6を通じて、真空ステーション7に設けられた真空ポンプ11から生じる真空圧により、集水タンク8へ移送される。
【0005】
そして、この真空ステーション7の集水タンク8へ移送された汚水wは、その後、圧送ポンプ9の駆動によって、図示省略の下水処理場へ送られて処理されるように構成されている。
【0006】
図20に示すような真空下水道システムでは、真空弁4よりも下流側直後には、図21に示すように、開閉弁装置13が設けられている。
【0007】
この開閉弁装置13は、図22に示す様に、上部フランジ部13a〜13c間に水密シールされて回転自在に軸支された軸部材14の上端14aにハンドル部15が固着されている。
【0008】
また、この軸部材14には、真空下水分岐管12から真空下水管路16を開閉塞可能とする弁体17が、樹脂成型品によって一体に形成されている。
【0009】
この弁体17の上下方向に穿設された雌ネジ開口部の内側面には、軸部材14の雄ネジと螺合する雌ネジ部17aが形成されている。
【0010】
そして、ハンドル部15を回転させることにより、軸部材14の長手方向に沿って、弁体17が、上下方向に移動して、真空下水管路16が、開閉塞されるように構成されている。
【0011】
次に、この従来の開閉弁装置13が設けられた真空下水道システムの作用効果について説明する。
【0012】
このような構成によれば、真空下水道システムの汚水枡3内を清掃したり、真空弁4をメンテナンスする為には、先ず、開閉弁装置13のハンドル部15の回動によって、弁体17を下降させて、真空下水管路16が閉塞される。
【0013】
真空下水管路16側の真空圧は、この弁体17によって遮断されるので、汚水枡3内は、大気圧に近づき、汚水枡3内の清掃や真空弁4のメンテナンスを作業者が容易に行うことが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−317132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の真空下水道システムでは、開閉弁装置13の前記ハンドル部15の回転によって、弁体17が下降して、真空下水管路16が閉塞される。
【0016】
この際、弁体17の周囲を覆うゴム製のシール部材が、真空下水管路16の内側面に弾接して変形する。
【0017】
このため、弁体17の降下位置に応じた明解な所定の弾発力が、ハンドル部15を介して作業者に伝わりにくい。
【0018】
よって、この弁体17の周囲のシール部材により、前記真空下水管路16の内側面との間でシールが適切に行われているか確認することが困難で、更にハンドル部15を絞め込んでしまい前記弁体17の雌ネジ部17aを破損させてしまう虞があった。
【0019】
そこで、この発明は、良好なシール性が得られて、確実に、真空圧を遮断することが出来る真空下水道システム用開閉弁の弁体構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、真空圧により汚水升内の汚水を真空下水管路を通じて真空ステーションへ移送する真空下水道システムに用いられて、真空下水管路を開閉塞可能な弁体を設けた真空下水道システム用開閉弁の弁体構造であって、前記弁体は、BMC樹脂によって形成される弁本体と、該弁本体の周囲を被覆し真空下水管路の内側面と圧接してシールを行うゴム製シール部材と、前記弁本体に設けられた雌ネジ部と、該雌ネジ部に雄ネジ部を螺合させることにより、軸方向に前記弁本体を移動させる軸部材とを有し、該雌ネジ部を金属製材料で形成した雌ネジ部材を前記弁本体に一体に埋設した真空下水道システム用開閉弁の弁体構造を特徴としている。
【0021】
ここで、BMC樹脂(Bulk Molding Compound)とは、不飽和ポリエステル樹脂に各種の添加剤が加えられた塊粘土状の熱硬化性樹脂である(以下、BMC樹脂と記す)。
【0022】
また、請求項2に記載されたものは、前記雌ネジ部材には、前記BMC樹脂との係着面積を増大させるフランジ部が、前記弁本体内に埋設される該雌ネジ部材の外周面から一体となるように、突設されている請求項1記載の弁体構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1記載のものによれば、BMC樹脂で構成される弁本体に一体となるように、雌ネジ部材が埋設されているので軸部材の雄ネジ部が螺合される際に雌ネジ部が破損する虞が無い。
【0024】
このため、弁本体が変形等すること無く、常に、良好なシール性を確保することが出来る。
【0025】
また、請求項2に記載されたものは、雌ネジ部材の外周面から一体となるように、突設されているフランジ部がBMC樹脂との係着面積を増大させると共に、埋設される弁本体内のBMC樹脂によって係合されている。
【0026】
このため、軸部材からの軸方向への押圧力が、径方向外側に拡張された広い面積に分散されて支持されて、圧壊する虞を更に減少させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造で、図2中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図2】実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造で、ハンドル部の上面図である。
【図3】実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造で、図2中B−B線に沿った位置での断面図である。
【図4】実施の形態の弁本体で、内部の構成を説明する断面斜視図である。
【図5】実施の形態の弁本体に用いる雌ネジ部材の軸延設方向に沿った鉛直断面斜視図である。
【図6】実施の形態の実施例1の弁本体に埋設された様子を説明する雌ネジ部材の鉛直断面図である。
【図7】実施の形態の真空下水道システムの開閉弁を開放状態とした様子を説明する図1に相当する部分での断面図である。
【図8】実施の形態の真空下水道システムの開閉弁で、閉塞状態とした様子を説明し、図1に相当する部分での断面図である。
【図9】実施の形態の真空下水道システムの開閉弁の弁本体の構成を説明し、最開放状態での縦断面図である。
【図10】実施の形態の真空下水道システムの開閉弁の弁本体の成形に用いられるインサートロッドの側面図である。
【図11】インサートロッドの雄ネジ部に、雌ネジ部材を装着脱着する様子を示す一部断面側面図である。
【図12】弁本体の成型工程を示し、BMC樹脂塊を型内に投入する様子を示す模式的な断面図である。
【図13】弁本体の成型工程を示し、型内のBMC樹脂塊を型締めする様子を示す模式的な断面図である。
【図14】弁本体の成型工程を示し、型内から、BMC樹脂塊を型開きして、取り出す様子を説明する模式的な断面図である。
【図15】実施の形態の弁本体を、インサートロッドの雄ネジ部から、取り外す様子を説明する模式的な断面図である。
【図16】実施の形態の弁本体の開口部に、蓋体を装着する様子を説明する模式的な拡大斜視図である。
【図17】実施の形態の弁本体を成型する様子を示し、シール部材を弁体表面に射出成形する金型内にセットした様子を説明する縦断面図である。
【図18】実施の形態の弁本体を成型する様子を示し、シール部材を弁体表面に射出成形する金型内から、弁本体が取り出される様子を説明する縦断面図である。
【図19】実施の形態の実施例2の弁本体に用いられる雌ネジ部材の一部縦断面斜視図である。
【図20】一般的な従来例の真空下水道システムで、全体の構成を説明する模式図である。
【図21】地中に埋設された一般的な真空下水道システムの汚水枡の構造を説明する縦断面である。
【図22】一般的な開閉弁装置の構成を説明する一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施の形態のこの開閉弁23には、図2及び図3に示す様に、上部フランジ部13a〜13c間に水密シールされた状態で、回転自在となるように、軸部材14が軸支されている。
【0029】
この軸部材14の上端14aには、ハンドル部15が固着されていると共に、外周面には、二条ネジで構成される雄ネジ部14bが略全長に渡り設けられている。
【0030】
また、この開閉弁23には、図7及び図8に示す様に、上下方向に移動することにより、真空下水管路16の開閉塞を行う弁体27が設けられている。
【0031】
この実施の形態では、この弁体27が、図4に示す様に、骨格となる弁本体31と、黄銅等の金属製の雌ネジ部材32と、下面部31aに開口形成された成型開口部31dを覆うキャップ部材33と、これらの弁本体31及び雌ネジ部材32を覆うゴム製のシール被覆部34とを有して主に構成されている。
【0032】
このうち、前記雌ネジ部材32には、前記雄ネジ部14bと螺合される雌ネジ部32aが、内側面に二条ネジの形状を呈して形成されていてBMC等の強化樹脂製部材で構成される弁本体31に一体に埋設されている。
【0033】
この実施の形態の雌ネジ部材32の外周面には、六角形状のフランジ部32b,32b,32bが、軸部材14の軸方向に、一定間隔を置いて平行に、径方向外側方に突設されている。
【0034】
これらの各フランジ部32b,32b間には、溝部32cが各フランジ部間に凹設形成されていて、周囲に一体に形成された弁本体31を構成するBMC樹脂の一部31c,31cが、図9に示されるように交互に介挿されている。
【0035】
次に、この実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造の成形順序を、図10乃至図18に沿って説明する。
【0036】
この実施の形態の開閉弁23の弁体27を成形する際には、図10に示す様な治具としてのインサートロッド50が用いられる。
【0037】
このインサートロッド50には、図11に示す様に、先端に前記雌ネジ部材32の雌ネジ部32aを螺合させる仮止めネジ部51が形成されていて、この雌ネジ部材32を装脱着可能としている。
【0038】
また、このインサートロッド50の先端縁には、円錐状突起部52が形成されていて、図12に示す様に、成形金型のキャビティ60の底面部60bの中央に設けられた凹部60aに、係合されることにより、位置決めが行われるように構成されている。
【0039】
この実施の形態では、前記インサートロッド50の後端部には、ピン孔50aが開口形成されていて、このピン孔50aに挿通される係止ピン50bによって、イジェクトロッド部材50cが連結されている。
【0040】
まず、前記弁体27の弁本体31を成型する成形金型のキャビティ60及びコア61間に、計量されたBMC樹脂材料40が装填される。
【0041】
この実施の形態のBMC樹脂材料40は、射出成型機等により樹脂混練されて、この射出成型機のノズル部によりパージされた混合樹脂である。
【0042】
このBMC樹脂材料40は、混合後、加熱筒内で加熱加圧されながら、射出成型機のバレルシリンダー内に供給される。
【0043】
このBMC樹脂材料40が、ノズル部によりパージされる際には、粘土状の半溶融状態となっている。
【0044】
また、成形金型のキャビティ60及びコア61内には、前記イジェクトロッド部材50cが連結された前記インサートロッド50が装着される。
【0045】
そして、予熱により、約200℃に保たれている成形金型のキャビティ60及びコア61内側面に、離型材が塗布されると共に、計量されたBMC樹脂材料40が投入される。
【0046】
この際、インサートロッド50の先端に設けられた仮止めネジ部51には、前記雌ネジ部材32が、螺合されていると共に、前記凹部60aに、前記円錐状突起部52が係合されて、金型内における前記雌ネジ部材32のインサート位置が、規定されている。
【0047】
次に、図13に示す様に、金型を移動させて、型締めを行うことによりキャビティ60及びコア61内に配置された雌ネジ部材32を、BMC樹脂材料40内にインサート成型する。
【0048】
そして、図14に示す様に、型開きが行われて、成型された弁本体31が、インサートロッド50ごと、取り出される。
【0049】
図15に示す様に、この状態で、若しくは、係止ピン50bが抜き取られて、イジェクトロッド部材50cとの連結が、解除された前記インサートロッド50は、回転されることにより、弁本体31にインサート成型された雌ネジ部材32との螺合が解除されて、成型開口部31dから、抜き取られる。
【0050】
この成型開口部31dには、別途若しくは同時に成型されたキャップ部材33が、図16に示す様に、係着されて、この成型開口部31dが覆われる。
【0051】
そして、周囲を被覆するゴム製のシール被覆部34を形成する為、図17に示す様に、別の射出金型のキャビティ70及びコア71間に、この雌ネジ部材32がインサート成型された弁本体31が配置されて、射出された溶融ゴム材料によってこの弁本体31の外周面が、被覆される。
【0052】
溶融ゴム材料が、この弁本体31の外周面に、図18に示す様に、シール被覆部34として添着されて一体となった後、射出金型のキャビティ70及びコア71が型開きされて、雌ネジ部材32が、BMC樹脂材料40内にインサート成型されて、シール被覆部34を一体に設けた弁体27が取り出される。
【0053】
次に、この真空下水道システム用開閉弁の弁体構造に用いられる弁体27の作用効果について説明する。
【0054】
この実施の形態の弁体27では、図4に示す様に、BMC樹脂で構成される弁本体31に、図5に示す様な前記金属製の雌ネジ部材32が、インサート成型されることにより、一体となるように埋設されている。
【0055】
このため、BMC樹脂との間で、係着される面積が、雌ネジ部材32のフランジ部32b…によって増大されて、各凹状の溝部32c内のBMC樹脂と係合される際に接着力が増大される。
【0056】
また、図1又は、図3に示す様に、軸部材14の雄ネジ部14bが、開閉弁23に収納された金属製の雌ネジ部材32の雌ネジ部32aに螺合されている。
【0057】
これらの雄ネジ部14bと雌ネジ部32aとは金属製同士であるのでハンドル部15の回転により、軸方向Lに押圧力が加わっても、従来の樹脂製の雌ネジ部に比して、雌ネジ部32aが破損する虞が少ない。
【0058】
したがって、図1又は、図3に示す様に、前記ハンドル部15の回転により、弁体27が、下端部を真空下水管路16の内側面に突き当てられて、真空下水管路16が閉塞されても、弁体27の弁本体31が変形等することが無く、周囲のゴム製のシール被覆部34を、真空下水管路16の内側面に圧接させることが出来る。
【0059】
よって、常に、良好なシール性を確保することが出来、図8に示す様に、図中真空下水管路16内右側に位置する下流側の真空度を保ちながら、図中真空下水管路16内左側に位置する汚水枡3内を大気圧に近づけることが出来、メンテナンス性を向上させることが出来る。
【0060】
また、雌ネジ部材32の外周面から、一体に突設されている複数のフランジ部32b…、この実施の形態では、3つのフランジ部32b…が、埋設される弁本体31内のBMC樹脂を係合させることにより、軸部材14から加わる軸方向への押圧力が、一定間隔を置いて突設されて、径方向外側に向けて拡張されたこれらのフランジ部32b…によって、広い面積に分散されて支持される。
【0061】
従って、この雌ネジ部材32の周囲に位置する弁本体31のBMC樹脂を圧壊させる虞を、更に減少させることが出来る。
【0062】
更に、この実施の形態では、図5に示す様に、雌ネジ部材32の軸方向Lに沿って、複数のフランジ部32b,32bが、一定間隔を開けて一体に突設されることにより、各フランジ部32b,32b間に、溝部32c,32cが、凹設形成される。
【0063】
そして、図4に示す様にインサート成型によって、BMC樹脂の内部に埋設される際に、溝部32c,32cの底部にまで行き渡るように、これらのBMC樹脂の一部が、充填硬化されて一体に係合される。
【0064】
従って、弁体27の開閉時、軸方向Lに沿う押圧力と共に、径方向Dへ加わる力も各フランジ部32b,32b間に介挿されたBMC樹脂に各々伝達されて、更に、変形する虞を減少させることが出来る。
【0065】
しかも、この実施の形態の雌ネジ部材32は、図5に示す様に、各フランジ部32b…の外形形状が、平面視で、六角形形状であるので、周方向Rに加わる応力が、各フランジ部32bの六角形の各角部32d…から、周囲のBMC樹脂に、分散されて伝達される。
【0066】
このため、更に、周方向Rに回転しようとする雌ネジ部材32から、周囲の前記BMC樹脂が剥離すること無く、この雌ネジ部材32のみが回転したり、或いは周囲のBMC樹脂が破壊されて、変形により、開閉動作が不能となる虞を減少させることが出来る。
【0067】
また、この実施の形態では、雌ネジ部材32に金属材料としての黄銅を用いることにより、軸部材14の材質として、一般的な鋼材を用いている場合には、この鋼材よりも比較的強度が低い。従って、雌ネジ部32aに異常が発生した場合にも、弁体27ごと交換すれば良く、更にメンテナンス性が良好である。
【0068】
更に、この実施の形態の雌ネジ部材32には、二条ネジで構成される雄ネジ部14bと螺合される二条構造が採用されているので、ハンドル部15の回転数に比して、弁体27の軸方向Lに沿った動きを大きくすることが出来、開閉塞に必要とされる時間を短くすることが出来る。
【0069】
しかも、前記弁本体31の周囲を覆う、前記ゴム製のシール部材が、前記真空下水管路16の内側面に弾接して、変形することにより、更にシール性を向上させる。
【0070】
この際、金属製の雌ネジ部材32の雌ネジ部32aは、鋼製の雄ネジ部14bと螺合されて、弁本体31を上下方向に移動させる際の力を両金属同士で、有効に伝達することができる。
【0071】
特に、閉塞状態では、弁体27の先端及び周縁が、真空下水管路16の内側面に対して当接したことが、この雌ネジ部材32及び雄ネジ部14bを介して、ハンドル部15に伝えられて、作業者が、弁体27を閉めすぎる虞を減少させることができる。
【0072】
また、図7に示す様な開放状態では、図9に示す様に、前記弁体27のうち、弁本体31の上面部31bが、前記軸部材14のフランジ下端面14cに当接して、上昇を停止させる。
【0073】
この際、金属製の雌ネジ部材32の上端面32eと、鋼製のフランジ下端面14cとの間に、BMC樹脂製の弁本体31の上面部31bが、環状に介在して、弾接するので、弁本体31の過度の上昇が抑制される。
【0074】
しかも、雌ネジ部材32の上端面32eが、弁本体31の下面部31aによって覆われているので、雌ネジ部材32が弁本体31から脱落する等、軸方向Lに沿って、BMC樹脂から、剥離する虞を減少させることが出来る。
【0075】
従って、更に、開閉動作に伴う弁体27の変形量を減少させることが出来、良好なシール性を得られて、確実に、真空下水管路16内の真空圧の遮断を容易に行えて、メンテナンス作業性を良好なものとすることが出来る。
【0076】
他の構成及び作用効果については、従来と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【実施例1】
【0077】
図6は、この発明の実施の形態の実施例1の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造を示すものである。
【0078】
なお、前記実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0079】
この実施例1の弁体37は、雌ネジ部材32の上端面32eが、BMC樹脂製の前記弁本体31の上面部31bと面一となるように構成されている。
【0080】
この実施例1では、実施の形態の弁体構造の作用効果に加えて、更に、雌ネジ部材32の上端面32eが、BMC樹脂で構成される弁本体31の上面部31bと面一となっている。
【0081】
このため、前記実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造の作用効果に加えて、更に、雌ネジ部材32の上端面32eが、BMC樹脂で構成される弁本体31の上面部31bと面一になる。
【0082】
よって、インサート成形を行う際に、BMC樹脂材料が、前記雌ネジ部32a内に浸入する虞が少ない。
【0083】
しかも、開放状態では、弁体37のうち、金属製の雌ネジ部材32の上端面32eが、同じく金属製の軸部材14のフランジ下端面14cに当接して、上昇を停止させる。
【0084】
このため、金属部材同士の当接が、軸部材14を介して、ハンドル部15に伝えられ、作業者が弁体27の開放を容易に認識出来る。
【実施例2】
【0085】
図19は、この発明の実施の形態の実施例2の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造に用いられる雌ネジ部材42を説明するものである。
【0086】
この実施例2の真空下水道システムの開閉弁に用いられる雌ネジ部材42は、雌ネジ部32aの軸方向Lの両端縁部に一対、六角形状のフランジ部42b,42bが、各々一体となるように、一定間隔を置いて、径方向外側方に向けて突設されている。
【0087】
これらの各フランジ部42b,42b間には、溝部42cが、凹設形成されていて、周囲に一体に成型されるBMC樹脂の一部が、介挿されるように構成されている。
【0088】
この実施例2では、前記実施の形態及び実施例1の弁体構造の作用効果に加えて、更に、前記雌ネジ部材42の両端縁部に設けられた一対のフランジ部42b,42b間の間隔寸法w3が、図5に示す前記実施の形態の雌ネジ部材32のフランジ部32b,32b間の間隔寸法w1,w2に比して、比較的大きく設定出来る。
【0089】
このため、多くのBMC樹脂を、これらのフランジ部42b,42b間の溝部42c内に位置させることが出来、一体成形性が良好である。
【0090】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の真空下水道システム用開閉弁の弁体構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0091】
例えば、前記実施の形態では、雌ネジ部材32には、雄ネジ部14bと螺合される雌ネジ部32aが、内側面に二条ネジの形状を呈して、形成されているが、特にこれに限らず、一条ネジ或いは、三条以上の複数条のネジ等で、雌ネジ部32aを構成しても良く、ネジ山の条数、形状及び材質等が特に限定されるのではない。
【0092】
また、雌ネジ部材32,42が、金属材料としての黄銅によって構成されているが、例えば、鋼材や、銅 と亜鉛との合金で、含有比率が異なるもの等、どのような種類の金属であっても良く、雄ネジ部14bが螺合される雌ネジ部32a等を金属製材料で構成するものであれば、形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
w 汚水
3 汚水枡
7 真空ステーション
11 真空ポンプ
14 軸部材
14b 雄ネジ部
16 真空下水管路
23 開閉弁
27,37 弁体
31 弁本体
32,42 雌ネジ部材
32a 雌ネジ部
34 シール被覆部
40 BMC樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空圧により汚水升内の汚水を真空下水管路を通じて真空ステーションへ移送する真空下水道システムに用いられて、真空下水管路を開閉塞可能な弁体を設けた真空下水道システム用開閉弁の弁体構造であって、
前記弁体は、BMC樹脂によって形成される弁本体と、該弁本体の周囲を被覆し真空下水管路の内側面と圧接してシールを行うゴム製シール部材と、前記弁本体に設けられた雌ネジ部と、該雌ネジ部に雄ネジ部を螺合させることにより、軸方向に前記弁本体を移動させる軸部材とを有し、該雌ネジ部を金属製材料で形成した雌ネジ部材を前記弁本体に一体に埋設したことを特徴とする真空下水道システム用開閉弁の弁体構造。
【請求項2】
前記雌ネジ部材には、前記BMC樹脂との係着面積を増大させるフランジ部が、前記弁本体内に埋設される該雌ネジ部材の外周面から一体となるように、突設されていることを特徴とする請求項1記載の弁体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−207378(P2012−207378A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71601(P2011−71601)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】