説明

真空断熱材、およびこの真空断熱材を備えた断熱箱

【課題】断熱性能に優れた真空断熱材およびこれを備えた断熱箱を提供すること。
【解決手段】ガスバリア性容器2の内部に芯材3を収容し内部を減圧状態にして封止した真空断熱材1であって、芯材3は、有機材料からなる繊維をシート状に形成した有機繊維集合体3aと、有機繊維集合体3aの材料よりも引張弾性率が高い材料からなる繊維をシート状に形成した繊維集合体3bとが、ランダムに積層されたシート集合体からなる。このとき、有機繊維集合体3aの繊維は連続した繊維であることが望ましい。そして、有機繊維集合体3aまたは繊維集合体3bの繊維材料は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、アラミド、LCP、ガラスのいずれかからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材およびこの真空断熱材を備えた断熱箱に係り、特に、冷熱機器へ使用して好適な真空断熱材、およびこの真空断熱材を備えた断熱箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱材としてウレタンが用いられているが、近年、ウレタンよりも断熱性能が優れた真空断熱材がウレタンと併用して使用されるようになっている。かかる真空断熱材は、冷蔵庫の他に、保温庫、車両空調機、給湯器などの冷熱機器にも用いられている。
【0003】
真空断熱材とは、ガスバリア性(空気遮断性)のアルミ箔などからなる外包材の中に、粉末、発泡体、繊維体などが芯材として挿入され、内部が数Paの真空度に保持されているものである。
この真空断熱材の断熱性能は、外気から進入する空気や水分の他に、芯材から発生するアウトガス、芯材そのものに存在する水分などが原因となって下がる場合があるが、これらを吸着するために外包材の中に吸着剤が挿入されている。
【0004】
真空断熱材の芯材として、シリカなどの粉末、ウレタンなどの発泡体、ガラスなどの繊維体などがあるが、現在では断熱性能が最も優れた繊維体が主流になっている。
【0005】
繊維体には、無機繊維、および有機繊維がある。無機繊維には、ガラス繊維、炭素繊維などがあり(例えば、特許文献1、8参照)、有機繊維には、ポリスチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維、アラミド繊維、LCP(液晶ポリマー)繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、セルロース繊維などがある(例えば、特許文献2、7、9参照)。
そして、繊維体の形状には、綿状のものや、シートを積層したものなどがある(例えば、特許文献3、4参照)。シートを積層したものでは、シートを繊維の配向が交互になるようにして積層したものがある(特許文献5、6参照)。
【0006】
さらに、真空断熱材の芯材として、無機繊維または発泡樹脂からなる断熱層と、この断熱層に積層されこの断熱層よりも剛性が高くかつ塑性変形自在な形状保持部材とを有するものがある(特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−028776号公報(第2頁−3頁)
【特許文献2】特許第3656028号公報(第5頁、図1)
【特許文献3】特開2005−344832号公報(第3頁−第4頁、図1)
【特許文献4】特開2006−307921号公報(第5頁−第6頁、図2)
【特許文献5】特開2006−017151号公報(第3頁、図1)
【特許文献6】特公平7−103955号公報(第2頁、図2)
【特許文献7】特開2006−283817号公報(第7頁−第8頁)
【特許文献8】特開2005−344870号公報(第7頁、図2)
【特許文献9】特許第4012903号公報(第3頁)
【特許文献10】特開2007−46628号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜10では、真空断熱に、ポリエステルやポリプロピレン等の有機繊維や、ガラス繊維のような無機繊維が芯材として使用されている。
しかしながら、有機繊維を芯材とすると、もともと材料としての熱伝導率は低いので材料としては適しているが、剛性が低くてたわみやすいため、空隙率が下がり、断熱性能を上げることは難しい。一方、ガラス繊維を芯材とすると、剛性が高くてたわみにくいために空隙率を上げることができ、断熱性能に優れるものもあるが、もともと材料としてのガラスの熱伝導率は高いため最適な材料選定ではない。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、それぞれの繊維体の利点を相乗的に生かして断熱性能に優れた真空断熱材、およびこの真空断熱材を備えた断熱箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る真空断熱材は、ガスバリア性容器の内部に芯材を収容し内部を減圧状態にして封止した真空断熱材であって、
芯材は、有機材料からなる繊維をシート状に形成した有機繊維集合体と、有機繊維集合体の材料よりも引張弾性率が高い材料からなる繊維をシート状に形成した繊維集合体とが、ランダムに積層されたシート集合体からなることものである。
【0011】
また、本発明に係る断熱箱は、外箱と、外箱の内部に配置された内箱とを備え、
外箱と内箱との間に上記の真空断熱材を配置したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱伝導率が低い有機繊維集合体と引張弾性率が高い(剛性がある)繊維集合体とのシート集合体としたので、熱伝導率が低い有機維集合体の空隙率が上がり、シート集合体の断熱性能が向上して、断熱性能に優れた真空断熱材を得ることができる。
また、断熱性に優れた断熱箱を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る真空断熱材の斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】図1の真空断熱材の芯材の積層状態を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る断熱箱を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1:真空断熱材]
図1、図2に示すように、本発明の実施形態1に係る真空断熱材1は、空気遮断性を有するガスバリア性容器2(以下、外包材という)と、外包材2に封入された芯材3およびガス吸着剤4とからなり、外包材2の内部は所定の真空度に減圧されている。
【0015】
真空断熱材1の外包材2は、ナイロン、アルミ蒸着PET、アルミ箔、高密度ポリエチレンで構成された、ガスバリア性のあるプラスチックラミネートフィルムからなる。さらに、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンのようなアルミ箔を含まないラミネートフィルムを使用すると、ヒートブリッジによる断熱性能の低下を抑制することができる。なお、外包材2は、4辺のうち3辺がヒートシールされている。
【0016】
外包材2に封入された芯材3は、図3に示すように、異なった材料からなる2種類の繊維集合体3a、3bを1枚ごとに交互に積層したシート集合体によって形成されている。
【0017】
すなわち、有機材料からなる繊維をシート状に形成した有機繊維集合体3a(第1の繊維集合体)と、有機繊維集合体3aの材料よりも引張弾性率が高い(剛性がある)材料からなる繊維をシート状に形成した繊維集合体3b(第2の繊維集合体)とを1枚ごとに交互に積層して、シート集合体とし、これを芯材3としたものである。このとき、有機繊維集合体3a(第1の繊維集合体)は、連続した有機繊維がシート状に形成された集合体であることが望ましい。
【0018】
第1の繊維集合体3aの材料は有機材料であり、一般に繊維として汎用されているポリエステル、ポリプロピレンであり、もともと熱伝導率は低く、引張弾性率が高い材料からなる繊維と積層すると、断熱性能を向上させることができる。
その他に、第1の繊維集合体3aの材料として、ポリスチレン、ポリ乳酸、アラミド、LCP(液晶ポリマー)などがある。ポリスチレンは固体熱伝導が小さく、有機材料としては剛性が高いので、真空包装されて大気圧を受けたときの形状保持性が良く、引張弾性率が高い材料からなる繊維と積層すると空隙率を高めることができて、断熱性能を向上させることができる。また、ポリ乳酸には生分解性があるので、製品の使用後に解体、分別された繊維を埋め立て処理することもできる。さらに、アラミドやLCPは剛性が高いので、真空包装されて大気圧を受けたときの形状保持性がよく、引張弾性率が高い材料からなる繊維と積層すると空隙率を高めることができ、断熱性能を向上させることができる。
【0019】
第2の繊維集合体3bの材料は、第1の繊維集合体3a(有機繊維集合体)の材料よりも引張弾性率が高い材料であり、一般に無機繊維として汎用されているガラスからなっている。
なお、ガラスのような無機繊維に限らなくても、第1の繊維集合体3a(有機繊維集合体)の材料よりも引張弾性率が高い材料からなる繊維であればよく、有機繊維材料からなるものであってもよい。
【0020】
第1の繊維集合体3aと第2の繊維集合体3bを組み合わせたシート集合体として、例えば、ポリプロピレン繊維からなる第1の繊維集合体3aとガラス繊維からなる第2の繊維集合体3bとを組み合わせた集合体、ポリエステル繊維からなる第1の繊維集合体3aとガラス繊維からなる第2の繊維集合体3bとを組み合わせた集合体、ポリプロピレン繊維からなる第1の繊維集合体3aとポリエステル繊維からなる第2の繊維集合体3bとを組み合わせる場合などのシート集合体がある。
【0021】
なお、上記の説明では、異なった材料からなる繊維集合体(第1の繊維集合体3aと第2の繊維集合体3b)を1枚ごとに交互に積層した場合を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、ランダムに積層したものであってもよい。
ランダムに積層するとは、上記のように第1の繊維集合体3aと第2の繊維集合体3bとを1枚ごとに交互に積層する場合のほかに、数枚ごとに交互に積層するものであってもよく、あるいは、はじめは1枚ごとに積層し途中から数枚ごとに積層するようにしてもよく、要するに一つの材料からなる繊維集合体(第1の繊維集合体3aまたは第2の繊維集合体3bのいずれかの繊維集合体)の連続積層枚数は何枚であってもよく、積層途中で枚数を変えてもよいということである。また、2種類の繊維集合体(第1の繊維集合体3aと第2の繊維集合体3b)の積層枚数は同じでなくてもよい。
【0022】
上記のように構成した真空断熱材1の製造方法について説明する。
まず、芯材5を形成する繊維集合体(シート集合体)の製造工程を述べる。
第1の繊維集合体3a(例えばポリエステル繊維やポリプロピレン繊維のような有機繊維集合体)は、横一列に並んだノズルから、加熱溶融した樹脂を、コンベア上に自由落下させて、これを巻き取って製造する。ノズルは、製造したい幅に対して横一列に並んでおり、コンベアは任意の速度を動いてノズルから落下した溶融樹脂を巻き取る。繊維集合体の嵩密度は溶融樹脂の吐出量とコンベアの速度により調整することができ、これによって厚さの異なる繊維集合体を得ることができる。
【0023】
第2の繊維集合体3bは、例えばガラス繊維のような繊維集合体である場合は、湿式抄紙法によって不織布状に製造する。なお、第2の繊維集合体3bがポリエステル繊維のような繊維集合体である場合は、第1の繊維集合体3aを製造した場合と同様の方法で製造する。
【0024】
こうして得られた第1、第2の繊維集合体3a、3bを裁断して、芯材3を形成する。
【0025】
次に、真空断熱材1の外包材2の製造工程を述べる。
真空断熱材の外包材は、例えば15μmのナイロン、12μmのアルミ蒸着PET、6μmのアルミ箔、50μmの高密度ポリエチレンで構成されるガスバリア性のあるプラスチックラミネートフィルムにより製造する。その他に、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンのようなアルミ箔を含まないラミネートフィルムをも用いることができる。
外包材2は、4辺のうち3辺をシール包装機によってヒートシールする。
【0026】
次に、真空断熱材1の真空包装の工程について述べる。
袋である外包材2に芯材3を挿入し、残りの1辺の口が閉まらないように固定して恒温槽により、例えば100℃の温度下で半日(約12時間)乾燥を行う。次に、真空包装後の残存ガスや経時的に放出される芯材3からのアウトガスや、外包材2のシール層を通して侵入する透過ガスを吸着するためのガス吸着剤4を外包材2内に挿入し、例えば柏木式真空包装機(NPC社製;KT−650)によって真空引きを行う。真空引きは、チャンバー内の真空度が例えば1Pa〜10Pa程度になるまで行い、そのままチャンバー内で外包材2の開口部をヒートシールして、板状の真空断熱材1を得る。
【0027】
上記のようにして製造した真空断熱材1は、熱伝導率が低い有機繊維集合体3aと剛性が高い(引張弾性率が高い)繊維集合体3bとを積層した複合体によって形成されており、また、粉末、フィルムなどと比較して、両繊維集合体3a、3bはそれぞれの利点を引き出せば複合体の断熱性能がさらに向上する形態及び繊維で構成されているので、本発明のように複合体とすることによって、熱伝導率が低い有機繊維集合体3aの空隙率が向上し、双方の利点が相乗効果となって断熱性能を向上させることができる。
【0028】
[実験例]
横一列に並んだノズルから、加熱溶融したポリエステルやポリプロピレンの樹脂をコンベア上に自由落下させ、コンベアを動かしながら巻き取って、ポリエステル繊維やポリプロピレン繊維を製造した。また、湿式抄紙法によってガラス繊維を不織布状に製造した。
得られた繊維集合体をA4サイズに裁断し、芯材3を形成した。用いた芯材の仕様は、表1に示す通りである。
【0029】
【表1】

【0030】
表1において、平均繊維径はマイクロスコープを用いて測定した10箇所の測定値の平均値とした。目付はシート一枚の単位面積当たりの重量で計算した。
なお、材料の熱伝導率(W/mK)、引張弾性率(GPa)は、ポリプロピレン、ポリエステルでは、プラスチックデータブック(工業調査会出版)を参照し、ガラスでは、熱伝達の基礎と演習(東海大学出版会出版)を参照にした。
この場合、材料の引張弾性率は材料の剛性を表す指標として考えることができる。
【0031】
表1に示すように、ポリプロピレンは、材料の熱伝導率(W/mK)が0.117であり、材料の引張弾性率(GPa)が1.032〜1.720である。また、ポリエステルは、材料の熱伝導率(W/mK)が0.14であり、材料の引張弾性率(GPa)が2.8〜4.1である。さらに、ガラスは、材料の熱伝導率(W/mK)が0.76であり、材料の引張弾性率(GPa)が71.6である。
【0032】
実施例1では、ポリプロピレン材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が12、平均繊維径(μm)が15)と、ガラス材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が30、平均繊維径(μm)が10)とをそれぞれ25枚ずつ積層し、全体として50枚積層してシート集合体とした。また、実施例2では、ポリエステル材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が12、平均繊維径(μm)が15)と、ガラス材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が30、平均繊維径(μm)が10)とをそれぞれ25枚ずつ積層し、全体として50枚積層してシート集合体とした。さらに、実施例3では、ポリプロピレン材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が12、平均繊維径(μm)が15)と、ポリエステル材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が12、平均繊維径(μm)が15)とをそれぞれ25枚ずつ積層し、全体として50枚積層してシート集合体とした。
【0033】
一方、比較例1では、ポリプロピレン材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が12、平均繊維径(μm)が15)を全体として50枚積層してシート集合体とした。また、比較例2では、ポリエステル材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が12、平均繊維径(μm)が15)を全体として50枚積層してシート集合体とした。さらに、比較例3では、ガラス材料からなる繊維集合体(目付(g/m2 )が30、平均繊維径(μm)が10)を全体として50枚積層してシート集合体とした。
【0034】
なお、実施例1〜3では繊維径15μmのものも使用しているが(ポリプロピレン、ポリエステル)、断熱性能上は繊維径がより細い方が良く、理論的に繊維径は10μm以下が望ましい。また、積層する枚数は、得られた繊維集合体の厚さと、製造したい真空断熱材1の厚さを元に任意に設定することができる。
【0035】
上記の実施例1〜3、比較例1〜3において、断熱性能を調べるために、熱伝導率計「AutoΛ HC−073(英弘精機製)」を用いて、上温度37.7℃、下温度10.0℃の温度差における熱伝導率を測定した。なお、測定は真空引き工程から1日経過後に行った。真空断熱材1としての断熱性能比は、比較例2の熱伝導率を、実施例1、2、3、比較例1、3の熱伝導率で、それぞれ割った数値(実施例1、2、3、比較例1、3の熱伝導率を比較例2の熱伝導率で割った値の逆数に同じ)で表している。空隙率は、芯材3の重量を芯材3の体積(芯材幅×芯材長さ×芯材厚み(真空断熱材1の厚さから外包材2の厚さの2倍を引いた値))で割った後、芯材3の固体の密度で割った値を1から引いた値である。
実験結果は表2に示す通りであった。
【0036】
【表2】

【0037】
[実施例1]
ポリプロピレン単体のシート(比較例1、真空断熱材としての断熱性能比0.7)、またはガラス単体のシート(比較例3、真空断熱材としての断熱性能比0.9)によって真空断熱材1を形成するよりも、ポリプロピレンとガラスの複合シート(実施例1、真空断熱材としての断熱性能比1.0)によって真空断熱材1を形成したほうが断熱性能が良いことが分かる。
【0038】
ガラス(空隙率(%)92、引張弾性率(GPa)71.6)はポリプロピレン(空隙率(%)79、引張弾性率(GPa)1.032〜1.720G)よりも空隙率が高く、引張弾性率が高いので、剛性があり、たわみにくく、性能が良い。それに対し、ポリプロピレン(空隙率(%)79、引張弾性率(GPa)1.032〜1.720)は引張弾性率が低いのでたわみやすく、空隙率が低く、性能が悪い。しかし、この2種類を交互に積層したので、たわみやすいポリプロピレンもたわみにくくなって空隙率が増加し(空隙率(%)79から87に増加)、もともとポリプロピレンの熱伝導率は低いため、ガラス単体よりも性能がよくなった(真空断熱材としての断熱性能比は、ポリプロピレン0.7、ガラス0.9に対して、ポリプロピレンとガラスを交互に積層した場合は1.0で、断熱性能比が向上した)。
【0039】
[実施例2]
ポリエステル単体のシート(比較例2、真空断熱材としての断熱性能比1.0)、またはガラス単体のシート(比較例3、真空断熱材としての断熱性能比0.9)によって真空断熱材1を形成するよりも、ポリエステルとガラスの複合シート(実施例2、真空断熱材としての断熱性能比1.1)によって真空断熱材1を形成したほうが断熱性能が良いことが分かる。
【0040】
ガラス(空隙率(%)92、引張弾性率(GPa)71.6)はポリエステル(空隙率(%)84、引張弾性率(GPa)2.8〜4.1)よりも空隙率が高く、引張弾性率が高いので、剛性があり、たわみにくく、性能が良い。それに対し、ポリエステル(空隙率(%)84、引張弾性率(GPa)2.8〜4.1)は引張弾性率が低いのでたわみやすく、空隙率が低く、性能が悪い。しかし、この2種類を交互に積層したので、たわみやすいポリエステルもたわみにくくなって空隙率が増加し(空隙率(%)84から87に増加)、もともとポリエステルの熱伝導率は低いため、ガラス単体よりも性能がよくなった(真空断熱材としての断熱性能比は、ポリエステル1.0、ガラス0.9に対して、ポリエステルとガラスを交互に積層した場合は1.1で、断熱性能比が向上した)。
【0041】
[実施例3]
ポリエステル単体のシート(比較例2、真空断熱材としての断熱性能比1.0)、またはポリプロピレン単体のシート(比較例1、真空断熱材としての断熱性能比0.7)によって真空断熱材1を形成するよりも、ポリエステルとポリプロピレンの複合シート(実施例3、真空断熱材としての断熱性能比1.1)によって真空断熱材1を形成したほうが断熱性能が良いことが分かる。
【0042】
ポリエステル(空隙率(%)84、引張弾性率(GPa)2.8〜4.1)はポリプロピレン(空隙率(%)79、引張弾性率(GPa)1.032〜1.720)よりも空隙率が高く、引張弾性率が高いので、剛性があり、たわみにくく、性能が良い。それに対し、ポリプロピレン(空隙率(%)79、引張弾性率(GPa)1.032〜1.720)は引張弾性率が低いのでたわみやすく、空隙率が低く、性能が悪い。しかし、この2種類を交互に積層することで、たわみやすいポリプロピレンもたわみにくくなって空隙率が増加し(空隙率(%)79から82に増加)、もともとポリプロピレンの熱伝導率は低いため、ポリエステル単体よりも性能がよくなった(真空断熱材としての断熱性能比は、ポリプロピレン0.7、ポリエステル1.0に対して、ポリプロピレンとポリエステルを交互に積層した場合は1.1で、断熱性能比が向上した)。
【0043】
[実施の形態2:冷蔵庫]
図4は、本発明の実施形態2に係る断熱箱(本実施の形態では冷蔵庫を示す)の断面図である。
図4において、断熱箱である冷蔵庫20は、外箱21と、外箱21の内部に配置された内箱22と、外箱21と内箱22との間に配置された真空断熱材1およびポリウレタンフォーム(断熱材)23と、内箱22内に冷熱を供給する冷凍ユニット(図示しない)とを備えている。なお、外箱21および内箱22は、共通する面にそれぞれ開口部(図示せず9)が形成され、この開口部に開閉扉(図示せず)が設けられており、内箱22の内部温度は温度調整手段により調整される。
【0044】
上記の冷蔵庫において、真空断熱材1の外包材2はアルミ箔を含んでいるため、このアルミ箔を通って熱が回り込むヒートブリッジが生じるおそれがある。このため、ヒートブリッジの影響を抑制するため、真空断熱材1は樹脂成形品であるスペーサ24を用いて、外箱21の塗装鋼板から離して配設されている。なお、スペーサ24は後工程で断熱壁内に注入されるポリウレタンフォームにボイドが残らないように、流動を阻害しないための孔が、適宜設けられている。
【0045】
すなわち、冷蔵庫20は、真空断熱材1、スペーサ24およびポリウレタンフォーム23によって形成された断熱壁25を有している。なお、断熱壁25が配置される範囲は限定するものではなく、外箱21と内箱22との間に形成される隙間の全範囲あるいは一部であってもよく、また、前記開閉扉の内部に配置してもよい。
【0046】
上記のように構成した冷蔵庫20は、使用済みとなった場合、家電リサイクル法に基づき、各地のリサイクルセンターで解体、リサイクルされる。
このとき、冷蔵庫20は、繊維集合体からなる芯材3が配設された真空断熱材1を有しており、この真空断熱材1は冷蔵庫箱体のまま破砕処理することができる。特に、繊維集合体が、有機繊維のみによって形成されている場合は、サーマルリサイクルに際して燃焼効率を下げたり、残渣となったりすることがなく、リサイクル性が良い。
【0047】
なお、真空断熱材の芯材が、本発明のような繊維集合体からなるものではなく無機粉末からなる場合は、冷蔵庫箱体のまま破砕処理すると粉末が飛散してしまうため、真空断熱材を冷蔵庫箱体から取り外さなければならず、取り外しに大変な手間がかかる。
【0048】
上記の説明では、断熱箱が冷蔵庫20である場合を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、保温庫、車両空調機、給湯器などの冷熱機器あるいは温熱機器、さらには、所定の形状を具備する箱に替えて、変形自在な外袋および内袋を具備する断熱袋(断熱容器)であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 真空断熱材、2 外包材(ガスバリア性容器)、3 芯材、3a 有機繊維集合体(第1の繊維集合体)、3b 繊維集合体(第2の繊維集合体)、20 冷蔵庫、21 外箱、22 内箱、23 ポリウレタンフォーム(断熱材)、24 スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性容器の内部に芯材を収容し内部を減圧状態にして封止した真空断熱材であって、
前記芯材は、有機材料からなる繊維をシート状に形成した有機繊維集合体と、前記有機繊維集合体の材料よりも引張弾性率が高い材料からなる繊維をシート状に形成した繊維集合体とが、ランダムに積層されたシート集合体からなることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記有機繊維集合体の繊維が、連続した繊維であることを特徴とする請求項1記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記有機繊維集合体と前記繊維集合体とが1枚ごとに交互に積層されたことを特徴とする請求項1または2記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記有機繊維集合体と前記繊維集合体とが数枚ごとに交互に積層されたことを特徴とする請求項1または2記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記有機繊維集合体と前記繊維集合体とがはじめは1枚ごとに積層され途中から数枚ごとに積層されたことを特徴とする請求項1または2記載の真空断熱材。
【請求項6】
前記有機繊維集合体または前記繊維集合体の繊維材料が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、アラミド、LCP、ガラスのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項7】
前記有機繊維集合体の繊維材料がポリプロピレンであり、前記繊維集合体の繊維材料がガラスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項8】
前記有機繊維集合体の繊維材料がポリエステルであり、前記繊維集合体の繊維材料がガラスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項9】
前記有機繊維集合体の繊維材料がポリプロピレンであり、前記繊維集合体の繊維材料がポリエステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項10】
前記有機繊維集合体及び前記繊維集合体の平均繊維径が15μm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項11】
外箱と、前記外箱の内部に配置された内箱とを備え、
前記外箱と前記内箱との間に請求項1〜10のいずれかに記載の真空断熱材を配置したことを特徴とする断熱箱。
【請求項12】
前記外箱と前記真空断熱材との間、および前記内箱と前記真空断熱材との間の両方またはいずれか一方に、断熱材が充填されたことを特徴とする請求項11記載の断熱箱。
【請求項13】
前記外箱と前記真空断熱材との間にスペーサを配設したことを特徴とする請求項11または12記載の断熱箱。
【請求項14】
温度調整手段によって前記内箱の内部温度を調整することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の断熱箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74934(P2011−74934A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224116(P2009−224116)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】