説明

真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫

【課題】断熱性の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】繊維集合体の芯材と、該芯材を収納する外袋とを有し、前記外袋内を減圧した真空断熱材において、前記芯材は第一の積層体及び第二の積層体の間に所定間隔で第三の積層体及び第四の積層体を備え、前記第一の積層体及び前記第二の積層体は第三の積層体及び第四の積層体の間を埋めるように曲がり、前記第一の積層体及び前記第二の積層体の外面にそれぞれ凹所が形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2008−64323号公報(特許文献1)がある。この公報には、「外箱と内箱間に発泡断熱材を充填した断熱箱体と、外箱の内面側に配される放熱パイプと、芯材を外包材で覆って内部が減圧されるとともに放熱パイプが嵌められる溝部を設けた真空断熱パネルとを備えた冷蔵庫において、真空断熱パネルは、溝部を形成した面の裏面に溝部に対向して形成されるとともに溝部よりも長手方向に垂直な幅が広い凸部を有することを特徴としている」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−64323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、真空引きされた真空断熱パネルは、上金型及び下金型によってプレス加工されて、放熱パイプが嵌められる溝部及び凸部を形成している。プレス加工によって溝部及び凸部を形成する場合、例えば、プレス加工時に、金型に埃などが付着していると真空断熱材が傷付けられ、リークする場合がある。また、プレス加工により芯材が切断されて、断熱性能が低下する。
【0005】
また、溝部を形成した面の裏面に溝部に対向して形成されるとともに溝部よりも長手方向に垂直な幅が広い凸部を有するため、凸部で外包材が大きく伸ばされて、クラックなどが発生して信頼性が低下する。
【0006】
そこで本発明は、断熱性の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。一例として、繊維集合体の芯材と、該芯材を収納する外袋とを有し、前記外袋内を減圧した真空断熱材において、前記芯材は第一の積層体及び第二の積層体の間に所定間隔で第三の積層体及び第四の積層体を備え、前記第一の積層体及び前記第二の積層体は第三の積層体及び第四の積層体の間を埋めるように曲がり、前記第一の積層体及び前記第二の積層体の外面にそれぞれ凹所が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、断熱性の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面図。
【図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の縦断面図(図1のA−A断面図)。
【図3】本発明の実施形態に係る真空断熱材の概略断面図。
【図4】(a)は冷蔵庫の発泡断熱材の注入方向に関する説明図、(b)は冷蔵庫の発泡断熱材の発泡方向に関する説明図。
【図5】(a)は芯材原綿の概略図、(b)は真空断熱材の芯材配置説明図、(c)は図5(b)を矢印Cから目視した図、(d)は真空断熱材の製作工程に関する説明図、(e)は実施例1の真空断熱材の概略断面。
【図6】(a)は実施例2の真空断熱材の芯材配置説明図、(b)は実施例2の真空断熱材の概略断面図。
【図7】実施例3に係る放熱パイプ及び真空断熱材の配置の説明図。
【図8】(a)は実施例3の真空断熱材の芯材配置説明図、(b)は実施例3の真空断熱材の概略断面図、(c)は実施例3の真空断熱材の配置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。図1は本実施形態に係る冷蔵庫の正面図であり、図2は図1のA−A断面図を示している。また、図3は本実施形態の真空断熱材の断面概略図を示したものである。図4は、冷蔵庫の発泡断熱材の注入方向及び発泡方向に関する説明図である。
【0011】
冷蔵庫1は、図2に示すように、上から冷蔵室2,製氷室3a及び上段冷凍室3b,下段冷凍室4,野菜室5を有している。各貯蔵室は、前面開口を開閉する扉を備える。冷蔵室2には、ヒンジ10を中心に回動する回転式の冷蔵室扉6a,6bを備える。冷蔵室扉6a,6b以外は、引き出し式の扉であり、製氷室扉7a,上段冷凍室扉7b,下段冷凍室扉8,野菜室扉9を配置する。これらの引き出し式扉を引き出すと、各貯蔵室の収納容器が扉と共に引き出されてくる。各扉には、冷蔵庫1と密閉して開口を閉塞するためのパッキン11が、各扉の貯蔵室側の外側縁に取り付けられている。
【0012】
また、冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3bとの間を区画断熱するために断熱仕切り12を配置している。また、下段冷凍室4と野菜室5の間には、区画断熱するための断熱仕切り14を設けている。
【0013】
製氷室3a及び上段冷凍室3bと下段冷凍室4は、温度帯が同じであるため、断熱区画する仕切り断熱壁ではなく、パッキン11の受面を有する仕切り部材13を設けている。
【0014】
基本的に冷蔵,冷凍等の貯蔵温度帯の異なる部屋の仕切りには、断熱仕切りを設置している。
【0015】
なお、各貯蔵室の配置については、特にこれに限定するものではない。また、冷蔵室扉6a,6b,製氷室扉7a,上段冷凍室扉7b,下段冷凍室扉8,野菜室扉9に関しても、開閉可能であれば、回転扉又は引き出し扉以外であってもよく、扉の分割数等、特に限定するものではない。
【0016】
箱体20は、外箱21と内箱22とを備え、外箱21と内箱22とによって形成される空間に断熱部を設けており、箱体20内の各貯蔵室と外部とを断熱している。この外箱21と内箱22の間の空間には、真空断熱材50(50a,50b,50c,50d)を配置し、真空断熱材50以外の空間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填している。
【0017】
また、冷蔵庫1の各貯蔵室を所定の温度に冷却するために、冷凍温度帯室(製氷室3a,上段冷凍室3b,下段冷凍室4)の背面には、冷却器収納室28a内に冷却器28が備えられている。また、野菜室5の後方には、機械室30aが設けられており、機械室30a内に圧縮機30及び凝縮器31が配置されている。冷却器28,圧縮機30,凝縮機31及び図示しないキャピラリーチューブを冷媒配管で接続して、冷凍サイクルを構成している。
【0018】
冷却器28の上方には、冷却器28にて冷却された冷気を冷蔵庫1の各貯蔵室内に循環して所定の温度を保持する送風機27が設けられている。
【0019】
また、冷蔵庫1の冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3b、冷凍室4と野菜室5をそれぞれ断熱区画する断熱仕切り12,14は、発泡ポリスチレン33と真空断熱材50cを備えている。なお、特に発泡ポリスチレン33に限定するものではなく、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23と真空断熱材50cであってもよい。
【0020】
また、箱体20の上面壁21a後方部には、冷蔵庫1の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品41を収納するための凹部40が形成されている。さらに凹部40には、電気部品41を覆うカバー42が設けられている。カバー42の高さは、外観意匠性と内容積確保を考慮して、外箱21の上面壁21aとほぼ同じ高さになるように配置している。特に限定するものではないが、カバー42の高さが外箱21の上面壁21aよりも突出する場合は、10mm以内の範囲に収めることが望ましい。これに伴い、凹部40は発泡断熱材23側に電気部品41を収納する空間だけ窪んだ状態で配置される。そのため、断熱厚さ分、必然的に内容積が犠牲になってしまう。一方、内容積をより大きくしようとすると、凹部40と内箱22間の断熱厚さが薄くなってしまう。そこで、発泡断熱材23中には、上面壁21aの凹部40に沿うように、略Z形状に折り曲げた真空断熱材50aを配置して、断熱性能を確保,強化している。なお、カバー42は耐熱性を考慮して鋼板製としている。
【0021】
また、箱体20の背面壁21b下部に位置する機械室30aには、発熱の大きい部品である圧縮機30や凝縮機31が配置される。そのため、貯蔵室内への熱侵入を防止するため、底面壁21d側には機械室30aの形状に沿って折り曲げた真空断熱材50dを配置している。
【0022】
また、箱体20の背面壁21b及び側面壁(図示せず)にも、真空断熱材50bをそれぞれ配置しており、断熱性能を向上している。さらに、各扉にも発泡断熱材とともに真空断熱材50eをそれぞれ配置すれば、断熱性能はさらに向上する。
【0023】
次に、真空断熱材50について、図3を用いてその基本構成を説明する。真空断熱材50は、芯材51、該芯材51を圧縮状態に保持するための内袋52、内袋52で圧縮状態に保持した芯材51を被覆するガスバリヤ層を有する外袋53、及び吸着剤54を有する構成である。
【0024】
外袋53は、真空断熱材50の外郭として配置され、同じ大きさのラミネートフィルムの稜線から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせた袋状で構成されている。
【0025】
芯材51は、バインダー等で接着や結着していない柔軟性を有する無機繊維の積層体として、平均繊維径4μmのグラスウールを用いた。なお、芯材51に、無機系繊維材料の積層体を使用することにより、アウトガスが少なくなるため、断熱性能的に有利であるが、特にこれに限定するものではない。例えば、セラミック繊維やロックウール,グラスウール以外のガラス繊維等の無機繊維等でもよい。なお、芯材51の種類によっては内袋52が不要の場合もある。
【0026】
また、芯材51については、無機系繊維材料の他に、有機系樹脂繊維材料を用いることができる。有機系樹脂繊維の場合、耐熱温度等の使用条件を満たしていれば、特に使用に際しては制約されるものではない。具体的には、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレン等をメルトブローン法やスパンボンド法で1〜30μm程度の繊維径になるように繊維化するのが一般的であるが、繊維化できる有機系樹脂や繊維化方法であれば特に問うものではない。
【0027】
外袋53のラミネート構成については、ガスバリヤ性を有し、熱溶着可能であれば特に限定するものではないが、本実施形態においては、表面保護層,ガスバリヤ層,熱溶着層の少なくとも3層を有するラミネートフィルムとしている。
【0028】
表面保護層は、突き刺し等の外的衝撃から減圧状態を保護する役割を持つ樹脂フィルムとする。
【0029】
ガスバリヤ層は、樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、さらに金属蒸着層同士に向かい合うように酸素バリヤ性の高い樹脂フィルムに金属蒸着層を設けて貼り合わせている。
【0030】
熱溶着層は、表面保護層と同様に吸湿性の低いフィルムを用いる。
【0031】
さらに具体的には、表面保護層を二軸延伸タイプのポリプロピレン,ポリアミド,ポリエチレンテレフタレート等の各フィルムとする。
【0032】
ガスバリヤ層は、アルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム,アルミニウム蒸着付きの二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム又はアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルム、或いはアルミ箔とする。
【0033】
熱溶着層は、未延伸タイプのポリエチレン,ポリプロピレンとする。
【0034】
なお、フィルムの層構成や材料については、特にこれらに限定するものではない。例えば、ガスバリヤ層として、金属箔、或いは樹脂系のフィルムに無機層状化合物、ポリアクリル酸等の樹脂系ガスバリヤコート材,DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等によるガスバリヤ膜を設けたもの、熱溶着層として、酸素バリヤ性の高いポリブチレンテレフタレートフィルム等を用いてもよい。
【0035】
表面保護層はガスバリヤ層を保護する機能を有するが、真空断熱材の製造工程における真空排気効率を高めるために、好ましくは吸湿性の低い樹脂を配置するのがよい。
【0036】
また、ガスバリヤ層に使用する金属箔以外の樹脂系フィルムは、吸湿することによってガスバリヤ性が著しく悪化してしまう。そのため、熱溶着層についても吸湿性の低い樹脂を配置することで、ガスバリヤ性の悪化を抑制すると共に、ラミネートフィルム全体の吸湿量を抑制できる。これにより、真空断熱材50の真空排気工程においても、外袋53が持ち込む水分量を小さくできるため、真空排気効率が大幅に向上し、断熱性能が向上する。
【0037】
なお、各フィルムのラミネート(貼り合わせ)は、二液硬化型ウレタン接着剤を介してドライラミネート法によって貼り合わせるのが一般的であるが、接着剤の種類や貼り合わせ方法は特にこれに限定するものではなく、ウェットラミネート法,サーマルラミネート法等の他の方法によるものでもよい。
【0038】
また、内袋52については、本実施例では熱溶着可能なポリエチレンフィルム,吸着剤54については物理吸着タイプの合成ゼオライトを用いたが、いずれもこれらの材料に限定するものではない。一例として、内袋52についてはポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリブチレンテレフタレートフィルム等、吸湿性が低く熱溶着でき、アウトガスが少ないものであればよく、吸着剤54については水分やガスを吸着するもので、物理吸着,化学反応型吸着のどちらでもよい。
【0039】
次に、硬質ウレタンフォームの発泡方法について、図4を用いて説明する。図4(a)に示すように、外箱21の背面壁21bに設けたウレタン注入孔25から硬質ウレタンフォーム(発泡断熱材23)を外箱前面21f側に注入方向23aの如く注入する。その後、図4(b)の如く、硬質ウレタンフォームが発泡を始め、背面壁21b側に発泡方向23bのように立ち上がり外箱21に充填される。
【実施例1】
【0040】
ここで、本発明の実施例1について、図5を用いて説明する。図5は、本実施例の真空断熱材とその製作工程を説明する図である。図5(a)は芯材原綿の概略図であって、ロール状に巻かれた芯材原綿を破線の部分で切断して所定寸法とするところを示す。図5(b)は真空断熱材の芯材配置説明図であって、図5(a)で切断された複数の芯材を内袋に収納した状態を示す側面断面図である。図5(c)は図5(b)を矢印Cから目視した図である。図5(d)は真空断熱材の製作工程に関する説明図であって、溶着工程を説明する図である。図5(e)は真空断熱材の概略断面図である。
【0041】
まず、図5(a)に示すように、ロール状で厚さ100mm〜150mmに予め作成した無機繊維の積層体をカットして複数の芯材51a〜51dとする。本実施例では、芯材51a及び芯材51dを最外層として、その中間層に芯材51b及び芯材51cを50mmの間隔を空けて配置して、内袋53a内に収納する。なお、内袋53aは肉厚20μm程度のポリエチレン製の合成樹脂フィルムとする。
【0042】
このとき、最外層の芯材51a(第一の積層体)及び芯材51d(第二の積層体)の間に、芯材51a,51dよりも面積が小さい芯材51b(第三の積層体)及び芯材51c(第四の積層体)を配置している。また、芯材51b,51cは、所定間隔を空けて芯材51a,51dの間に配置している。
【0043】
すなわち、内袋52aへ収納する時に、最外層の芯材51a,51dで中間層の芯材51b,51cを挟み込んでいるので、芯材51の位置がずれることなく、芯材51b,51cの間隔を50mmの所定間隔に保ちながら、内袋52aへ収納することが容易となる。なお、この時、一定間隔を保つために治具を使用して内袋52aに収納してもよい。
【0044】
内袋52aへ収納された芯材51a〜51dは、プレス機55で圧縮した状態で内袋52a内を減圧する。次いで、熱溶着機56で内袋52aの開口全体を熱溶着密封して、内袋52a内に収納した複数の芯材51a〜51dがずれないように位置決めする。こうして、芯材を仮圧縮したものが作られる。この状態で芯材51を一時保管することも可能である。
【0045】
次いで、内袋52aの内部に仮圧縮した状態の芯材51を外袋53a内に収納する。芯材51は圧縮されているので、外袋53aを損傷することなく、スムーズに外袋53a内に挿入できる。その後、内袋52aの熱溶着を一部開封すると、芯材51は圧縮が解除されて、外袋53a内で外側に広がる。この状態で、外袋53a及び内袋52a内を減圧して、外袋53a及び内袋52aの開口を溶着密封することにより、真空断熱材50fが製作される。
【0046】
このように、圧縮−減圧−溶着密封工程を経ることで、真空断熱材50fの厚み方向には凹所58a,58bが形成される。その構成について、図5(c)に真空断熱材50fの概略断面図を示す。減圧工程で外袋53a及び内袋52aは、外側より芯材51を圧縮する。このとき、本実施例では、芯材51a(第一の積層体)及び芯材51d(第二の積層体)は、外側より圧縮されて、芯材51b(第三の積層体)及び芯材51c(第四の積層体)の間の部分に入り込むように変形する。
【0047】
すなわち、第一の積層体及び第二の積層体の間に、第一の積層体(及び第二の積層体)よりも面積の小さい第三の積層体(及び第四の積層体)を重ねて外被材内に収納して内部を減圧すると、第一の積層体及び第二の積層体は空間60aを埋めるように圧縮変形する。
【0048】
減圧時、芯材51は外袋53a(及び内袋52a)によって外側に広がろうとする弾性変形が規制されている。そして、減圧が進行すると、芯材51の繊維間に存在する隙間は次第に減少して、外側から内側に圧縮変形する。
【0049】
仮に、芯材51がほぼ同一の厚みからなる積層体の場合、減圧によって均等に圧力が加わるので、形成される真空断熱材は平板状になる。
【0050】
一方、芯材51b及び芯材51cの間に空間60aが存在するような積層体の場合、図5(c)に示すように、外側の両面に凹所58a,58bが形成される。
【0051】
凹所58a,58bは、以下のようにして形成される。芯材51を外袋53aで覆って、減圧チャンバー内に設置して減圧した状態では、外袋53aの内部と外部の圧力がほぼ同一のため、芯材51の厚みはすぐに変化しない。その後、減圧完了してから外袋53aの開口を溶着密封して、減圧チャンバー内を大気圧に戻すと、外袋53aの内部と外部の圧力差により、芯材51の厚みが圧縮される。
【0052】
芯材51の全体の厚みが小さくなる際に、芯材51b及び芯材51cの間の空間60aを埋めるように、芯材51a及び芯材51dの層が空間60aに引き込まれるように繊維が曲線状に変形する。
【0053】
より詳細に説明すると、まず、所定間隔を空けて配置した芯材51b及び芯材51cに跨るように上下にそれぞれ重ねた芯材51a及び芯材51dには、減圧によって均等に圧力が加わる。すると、芯材51a及び芯材51dは、積層した繊維間の隙間を埋めるように圧縮が進行する。
【0054】
ここで、芯材51b及び芯材51cに重なっている部分は変形が規制されるが、芯材51b及び芯材51cに重なっていない部分(空間60aの上方及び下方)では変形を規制するものがない状態である。すると、芯材51a及び芯材51dは空間60aに入り込み、空間60aを埋めることで安定した真空状態になろうとする。すなわち、空間60aに入り込んだ芯材51a及び芯材51dは、外袋53a及び内袋52aによって変形が規制されて、次第に内部の気体が減少することで、空間60aに芯材51a及び芯材51dが入り込んだ状態で減圧が終了する。これにより、真空断熱材50fには、空間60aの上面及び下面にそれぞれ凹所58a,58bが形成される。
【0055】
さらに説明を加えると、内袋52aは減圧工程で外周から芯材51a〜51dを圧縮する。このとき、芯材51b及び芯材51cを中間層に所定間隔(50mm程度)の空間60aをあけて配置したことで、最外層の2面に凹所58a,58bが形成される。より具体的には、積層した3層の芯材51a〜51dの厚さを各100mmと等しくなるように配置した場合、積層状態では合わせて300mmの厚さとなる。そして、圧縮−減圧工程では、300mmから15mmと約20分の1の厚さに圧縮する。すると、最外層2面には、深さがほぼ等しい2.5mm前後の凹所58a,58bが形成される。
【0056】
また、内袋52aの肉厚は20μm前後であり、テント張り状の空間を形成しないような薄さ、すなわち、柔軟性を有し、形状に沿って変形し易い薄さである。
【0057】
なお、中間層の芯材51b及び芯材51cが対向する面の一部又は全面に傾斜を有するように配置することで、芯材51a及び芯材51dが空間60aを埋めようとする時、芯材51b及び芯材51cの傾斜に沿って追随し易くなるため、凹所を安定して形成することができる。
【0058】
また、図4に示す発泡断熱材の注入孔25近傍に凹所58a,58bが位置すれば、発泡断熱材の流動を阻害することがない。よって、注入方向23a及び発泡方向23bに真空断熱材が障害物とならないような状態で配置することができ、発泡断熱材の流動性を向上することができる。
【実施例2】
【0059】
次に、実施例2について、図6を参照して説明する。図6(a)は、実施例2の真空断熱材の芯材配置説明図である。図6(b)は、実施例2の真空断熱材の概略断面図である。
【0060】
実施例2が実施例1と異なる点は、芯材の最外層の2層を互いに異なる厚さにした点である。まず、芯材の配置について説明する。
【0061】
図6(a)において、最外層である芯材51eは厚さ100mm、芯材51hは厚さ200mmと厚さが異なり、中間層の芯材51f及び芯材51gは100mmとして積層する。そして、積層した芯材51を内袋52bへ収納する。その後、圧縮−減圧−溶着密封工程を経ることで、最外層の芯材厚さに応じて異なる深さの凹所58c,58dが形成される。
【0062】
本実施例においては、芯材51eの外面に深さ1.7mm前後の凹所58cが形成され、芯材51hの外面に深さ3.3mm前後の凹所58dが形成される。なお、圧縮−減圧−溶着密封工程は実施例1と同様であり、説明を省略する。
【0063】
また、本実施例では芯材51hの厚さを200mmとしたが、厚さ100mmの芯材を2枚重ねて配置してもよい。
【0064】
真空断熱材50gの外面(上面及び下面)には、それぞれ異なる深さの凹所58c,58dが形成される。ここで、凹所58c,58dの幅寸法が同一の場合、凹所58c,58dの深さ寸法が大きいほど、外袋は伸ばされて大きな応力が加わる。そこで本実施例では、芯材51hの外面の外袋53bが、もう一方の面の芯材51e(芯材51hよりも厚さが薄い芯材)の外面の外袋53bよりも収縮率が大きい外袋53bを適用する。すなわち、深さ寸法の大きい凹所58d側の外袋53bは、深さ寸法の小さい凹所58c側の外袋53bよりも収縮率が大きいものとすることで、変形に対する外袋の信頼性を確保することができる。
【0065】
また、深さ寸法の大きい凹所が形成されて、引き伸ばされる長さが大きい外袋(本実施例では、芯材51hの外面の外袋53b)は、信頼性を確保するために、もう一方の面の芯材51e(芯材51hよりも厚さが薄い芯材であり、深さ寸法の小さい凹所が形成される側)の外面の外袋53bよりも厚さを厚くしてもよい。
【0066】
なお、真空断熱材の2面に形成される凹所の深さ寸法比率の変更は、最外層にそれぞれ位置する2層の芯材厚さの比率を変更することで可能である。また、1面のみの凹所の深さを変える手段としては、芯材51e又は芯材51hの少なくともいずれかの一部を切取り、空間60bの寸法を調整すればよい。また、2面の凹所を同時に浅くするためには、中間層の芯材51f及び芯材51gの厚さを薄くすればよい。
【0067】
さらに、芯材51の硬度を高めることで、芯材51の強度が上がるため、これによって芯材51の変形量を抑えて凹所の深さを浅くさせることもできる。また、芯材51の表面の滑り性を高めて、外袋53b及び内袋52bと芯材51の滑り抵抗を低減させることで、芯材51の変形量が大きくなり、凹所を深くすることができる。
【0068】
また、凹所の幅寸法は、中間層の芯材51f及び芯材51gを配置する間隔を調整することでコントロールできる。
【0069】
次に、凹所が形成された真空断熱材を冷蔵庫に配置した例を図7に示す。図7は、箱体20に使用する真空断熱材50のうち、外箱21の背面壁21bに配置する真空断熱材50b及び側面壁21eに配置する真空断熱材50gを、発泡断熱材23の中に埋設した例である。
【0070】
外箱21eの内側の面には、冷媒の放熱性を向上させるために、放熱パイプ90を配置している。放熱パイプ90はアルミテープ91によって外箱21の内面に貼り付けている。本実施例では、真空断熱材50gに形成された深さ4mmの凹所に、直径4mmの放熱パイプ90を配置している。
【0071】
以上のように、本実施例によれば、プレス加工により芯材が切断されて断熱性能が低下することがない。また、凹所の裏面に凸部が形成されにくく、凸部で外被材が伸ばされてクラックなどが発生することを抑制できる。よって、断熱性能の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材となる。
【0072】
また、図4に示す発泡断熱材の注入孔25近傍に凹所58cが位置すれば、発泡断熱材の流動を阻害することがない。よって、注入方向23a及び発泡方向23bに真空断熱材が障害物とならないような状態で配置することができ、発泡断熱材の流動性を向上することができる。
【実施例3】
【0073】
次に、実施例3について、図8を用いて説明する。図8(a)は実施例3の真空断熱材の芯材配置説明図である。図8(b)は実施例3の真空断熱材の概略断面図である。図8(c)は実施例3の真空断熱材の配置の説明図である。
【0074】
実施例3が実施例1及び実施例2と異なる点は、真空断熱材の端部に曲面を形成した点である。図8(a)に示すように、芯材51i〜51kを配置して、真空断熱材50hを製作する。製造工程については、実施例1で述べた通りであるので、説明を省略する。
【0075】
図8(b)のように、最外層に位置する2層の芯材51i(第一の積層体)と芯材51k(第二の積層体)は、それぞれ厚さが異なっている。また、端部の形状は両端で非対称となっており、中間層の芯材51j(第三の積層体)の長さが、最外層に位置する2層の芯材51iと芯材51kよりも一端が短い構成である。
【0076】
芯材51i,51j,51kで囲まれた部分には、空間60cが形成される。この状態で芯材51を内袋52cに収納して、さらに外袋53cに挿入して減圧すると、端部に曲面が形成される。すなわち、芯材51kが空間60c側に引き込まれるように曲がることで、芯材51k側の外面には曲面が形成される。
【0077】
図4(a)にて説明したように、外箱21の背面壁21bに設けた注入孔25から発泡断熱材23を外箱前面21f側に注入方向23aの如く注入する。その後、図4(b)のように、発泡断熱材が発泡方向23bに発泡を始めて背面壁21b側に立ち上がり、外箱21に充填される。
【0078】
図8(c)に示すように、真空断熱材50hは、発泡方向23bを考慮して先端を曲線形状にして配置しいている。そのため、内箱22との距離を確保して、発泡断熱材の流動性を良好に保つことができる形状としている。
【0079】
なお、減圧工程において、芯材は内袋及び外袋から圧縮するように押しつけられる力が加わる。
【0080】
この場合、減圧が進行して芯材と内袋、及び内袋と外袋との摩擦抵抗が大きくなると、芯材,内袋及び外袋間で滑り変形しにくくなる。すると、外袋には引張又は圧縮の応力が加わり、金属蒸着層等のガスバリヤ層にクラックが生じる場合がある。
【0081】
そこで、減圧工程前又は減圧開始直後から減圧の途中までの間、芯材,内袋及び外袋間の摩擦抵抗が大きくなる前に、外袋の外側から、金型等で凹所の形成位置を部分的に押し出すようにする。これにより、摩擦抵抗が大きくなる前に、外袋が凹所近傍に滑るように位置するので、ガスバリヤ層のクラックの発生を抑制できる。
【0082】
以上のように本発明の実施例に係る冷蔵庫は、真空断熱材に金型によるプレス成形加工を実質的に行うことなく、目的に応じた溝部を成形することが可能となる。このため、プレス成形加工時に発生する異物でのリークや芯材の切断による断熱性能の低下を抑制し、断熱性能の良好な冷蔵庫を提供できるものである。また、本発明の実施例のように、効果的に真空断熱材の面積を拡大することで、断熱性能を向上させることができ、省エネルギー化に寄与するものである。
【符号の説明】
【0083】
1 冷蔵庫
20 箱体
21 外箱
21a 上面壁
21b 背面壁
21d 底面壁
21e 側面壁
22 内箱
23 発泡断熱材
23a 注入方向
23b 発泡方向
25 注入孔
50,50a〜50h 真空断熱材
51 芯材
51a,51e,51i 芯材(第一の積層体)
51b,51h,51j 芯材(第三の積層体)
51c,51f 芯材(第四の積層体)
51d,51g,51k 芯材(第二の積層体)
52,52a〜52c 内袋
53,53a〜53c 外袋
54 吸着剤
55 プレス機
56 熱溶着機
58,58a〜58d 凹所
60,60a〜60c 空間
90 放熱パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維集合体の芯材と、該芯材を収納する外袋とを有し、前記外袋内を減圧した真空断熱材において、
前記芯材は第一の積層体及び第二の積層体の間に所定間隔で第三の積層体及び第四の積層体を備え、
前記第一の積層体及び前記第二の積層体は第三の積層体及び第四の積層体の間を埋めるように曲がり、前記第一の積層体及び前記第二の積層体の外面にそれぞれ凹所が形成されたことを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記第二の積層体は前記第一の積層体よりも厚さ寸法が大きく、前記第二の積層体側に形成される凹所は前記第一の積層体側に形成される凹所よりも深さ寸法が大きいことを特徴とする、請求項1記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記第二の積層体側の前記外袋は前記第一の積層体側の前記外袋よりも収縮率が大きいことを特徴とする、請求項2記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記第二の積層体側の前記外袋は前記第一の積層体側の前記外袋よりも厚いことを特徴とする、請求項2記載の真空断熱材。
【請求項5】
繊維集合体の芯材と、該芯材を収納する外袋とを有し、前記外袋内を減圧した真空断熱材において、
前記芯材は第一の積層体及び第二の積層体の間に第三の積層体を備え、
前記第三の積層体は前記第一の積層体及び前記第二の積層体よりも長さが短く、前記第二の積層体は第一の積層体側に曲がり、前記第二の積層体の外面に曲面が形成されたことを特徴とする真空断熱材。
【請求項6】
前記第二の積層体側の前記外袋は前記第一の積層体側の前記外袋よりも収縮率が大きいことを特徴とする、請求項5記載の真空断熱材。
【請求項7】
外箱の内側に配置された真空断熱材と、該真空断熱材と前記外箱との間に配置された放熱パイプと、を備えた冷蔵庫において、
前記真空断熱材は、繊維集合体の芯材と、該芯材を収納する外袋とを有し、前記外袋内を減圧して、
前記芯材は第一の積層体及び第二の積層体の間に所定間隔で第三の積層体及び第四の積層体を備え、
前記第一の積層体及び前記第二の積層体は第三の積層体及び第四の積層体の間を埋めるように曲がり、前記第一の積層体及び前記第二の積層体の外面にそれぞれ凹所が形成され、前記凹所のいずれかに前記放熱パイプが配置されたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項8】
外箱の内側に配置された真空断熱材と、前記外箱に設けられた発泡断熱材の注入孔と、を備えた冷蔵庫において、
前記真空断熱材は、繊維集合体の芯材と、該芯材を収納する外袋とを有し、前記外袋内を減圧して、
前記芯材は第一の積層体及び第二の積層体の間に第三の積層体を備え、
前記第三の積層体は前記第一の積層体及び前記第二の積層体よりも長さが短く、前記第二の積層体は第一の積層体側に曲がり、前記第二の積層体の外面に曲面が形成され、
前記曲面は前記注入孔近傍に位置することを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−62904(P2012−62904A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205029(P2010−205029)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】