真空断熱構造体
【課題】断熱性能を低下させることなく、組立作業性を向上する。
【解決手段】第1壁部12と第2壁部16とを備え、これらの間に多数の球状スペーサ20を位置決め部材21を介して配設するとともに、第1および第2壁部12,16の間を真空空間19とした真空断熱構造体において、位置決め部材21は、球状スペーサ20の直径dより大きい大開口部23と、球状スペーサ20の直径dより少なくとも一部が小さい小開口部24とを有する保持部22を備え、保持部22は、球状スペーサ20に接する当接位置Pから小開口部24までの高さT1が、球状スペーサ20の当接位置Pから頂部までの上側寸法d1より小さく、当接位置Pから大開口部23までの高さT2が、球状スペーサ20の下側寸法d2より小さく、第1および第2壁部12,16のいずれにも固定されていない。
【解決手段】第1壁部12と第2壁部16とを備え、これらの間に多数の球状スペーサ20を位置決め部材21を介して配設するとともに、第1および第2壁部12,16の間を真空空間19とした真空断熱構造体において、位置決め部材21は、球状スペーサ20の直径dより大きい大開口部23と、球状スペーサ20の直径dより少なくとも一部が小さい小開口部24とを有する保持部22を備え、保持部22は、球状スペーサ20に接する当接位置Pから小開口部24までの高さT1が、球状スペーサ20の当接位置Pから頂部までの上側寸法d1より小さく、当接位置Pから大開口部23までの高さT2が、球状スペーサ20の下側寸法d2より小さく、第1および第2壁部12,16のいずれにも固定されていない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱パネル、魔法瓶、真空二重管、真空二重ジャケット、真空容器等の真空断熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の真空断熱構造体は、対向する第1および第2壁部の間を密封して真空空間としている。この真空断熱構造体は、壁部の肉厚を厚くすれば、真空排気による内外の圧力差に抗して変形することを防止できるが、重量が重くなるという欠点がある。
【0003】
そこで、特許文献1の真空断熱構造体では、第1および第2壁部の間に多数の球状スペーサを配設することにより、変形を防止できるようにしている。球状スペーサは、第1および第2壁部の間に均等に分布して配列しなければ、部分的な変形が生じる。そのため、特許文献1の真空断熱構造体は、球状スペーサを位置決め部材を介して配設する構成としている。この位置決め部材は、球状スペーサを覆う円錐筒部を備えている。この円錐筒部は、球状スペーサの直径より大きい大径開口部と、球状スペーサの直径より小さい小径開口部とを有する。そして、この位置決め部材に球状スペーサを配置し、第1および第2壁部のうち一方に溶接することによって、均等に分布して配設するように構成している。
【0004】
特許文献1の真空断熱構造体は、第1および第2壁部を薄肉としても、内部の球状スペーサによって変形を確実に防止できるうえ、十分な断熱性能を得ることができる。しかし、この真空断熱構造体は、位置決め部材を壁部に対して溶接して固着する必要があるため、組立作業性が悪いという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、断熱性能を低下させることなく、組立作業性を向上できる真空断熱構造体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の真空断熱構造体は、第1壁部と、この第1壁部と所定間隔をもって位置する第2壁部とを備え、これら第1および第2壁部の間に、これらの対向面に接触する直径(d)の多数の球状スペーサを位置決め部材を介して配設するとともに、前記第1および第2壁部の間を密封して真空空間とした真空断熱構造体において、前記位置決め部材は、前記球状スペーサの直径(d)より大きい寸法(D1)の大開口部と、前記球状スペーサの直径(d)より少なくとも一部が小さい寸法(D2)の小開口部とを有する多数の保持部を備え、前記保持部は、前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記小開口部までの高さ(T1)が、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記小開口部より突出した頂部までの上側寸法(d1)より小さく、前記当接位置(P)から前記大開口部までの高さ(T2)が、前記球状スペーサの直径(d)から前記上側寸法(d1)を減算した下側寸法(d2)より小さく、前記第1および第2壁部のいずれにも固定されていない構成としている。
【0008】
ここで、第1および第2壁部の間の真空空間は、第1および第2壁部の周囲を溶着することにより密封して形成する構成、および、第1および第2壁部をラミネートフィルムで密封して形成する構成を含む。
【0009】
この真空断熱構造体は、例えば位置決め部材の大開口部を上向きに位置させ、各保持部に球状スペーサを配置する。この状態で、大開口部が位置する上側に第1壁部を配置するとともに、小開口部が位置する下側に第2壁部を配置する。この状態で、上下を逆向きにすることにより、各保持部の軸線上に球状スペーサの中心を位置させる。その後、第1および第2壁部の間の空間を真空排気することにより形成される。このように、本発明の真空断熱構造体は、位置決め部材を第1および第2壁部のいずれにも固定しないため、組立作業性を向上できる。なお、球状スペーサは、真空排気により第1および第2壁部の間に圧接され、移動不可能な状態に位置決めされる。
【0010】
そして、この真空断熱構造体では、第1壁部を下側に位置させると、固定していない位置決め部材の小開口部が球状スペーサに周方向に当接(嵌合)した状態をなす。この状態では、位置決め部材の大開口部の側は、保持部の高さ設定により第1壁部には当接しない。よって、この状態では、第1および第2壁部のうち、一方からの熱は点接触した球状スペーサからのみ他方へ伝熱される。
【0011】
また、第2壁部を下側に位置させると、固定していない位置決め部材の小開口部が第2壁部に当接した状態をなす。この状態では、位置決め部材の大開口部の側は、第1壁部には当接しない。また、保持部の内周部は、球状スペーサに当接しない状態と、一部のみが点接触した状態のいずれかになる。位置決め部材と球状スペーサとが全く当接しない状態の場合、第2壁部からの熱は、位置決め部材を伝熱して再び第2壁部に戻されるため、第1壁部への伝熱は、球状スペーサからのみとなる。一方、位置決め部材と球状スペーサの一部が当接した状態の場合、第2壁部からの熱は、位置決め部材から球状スペーサを介して第1壁部へ伝熱する。しかし、位置決め部材と球状スペーサとの当接は点接触であるため、殆どの熱は第2壁部へ戻されることになる。
【0012】
このように、本発明の真空断熱構造体は、固定していない位置決め部材が第1または第2壁部に当接しても、第1および第2壁部のうち、一方から他方への伝熱を最小限に抑えることができる。よって、断熱性能を低下させることはない。
【0013】
この真空断熱構造体では、前記小開口部を、前記保持部の軸線に対して傾斜させることが好ましい。このようにすれば、第1または第2壁部に位置決め部材の小開口部が当接した状態になった際の伝熱を抑制し、断熱性能の低下を確実に防止できる。
【0014】
または、前記位置決め部材の小開口部の側に、この小開口部が対向する壁部へ移動して干渉することを防止する規制部を設けることが好ましい。このようにすれば、位置決め部材の小開口部が第1または第2壁部に当接することを防止できる。そのため、第1および第2壁部の一方から他方へ位置決め部材を介して伝熱することを抑制できる。
この場合、前記規制部は、弾性的に変形可能な断熱材からなることが好ましい。このようにすれば、位置決め部材を介して伝熱することを確実に抑制できる。
または、前記規制部は、前記位置決め部材の一部を切り起こして設けることが好ましい。このようにすれば、位置決め部材を介して伝熱することを抑制できるとともに、部品点数が増加しないため、組立作業性を向上できる。
【0015】
または、一部の前記保持部の前記小開口部を、少なくとも一部が前記寸法(D2)より小さく、前記球状スペーサの頂部が突出可能な寸法(D3)とすることが好ましい。このようにすれば、小開口部を寸法(D3)とした保持部には球状スペーサが接触し、小開口部を寸法(D2)とした保持部の殆どには球状スペーサが接触しない状態で、位置決め部材を規制できる。その結果、断熱性能を更に向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の真空断熱構造体では、第1および第2壁部の一方に球状スペーサと位置決め部材を配置し、位置決め部材を固定することなく、第1および第2壁部の他方を被せて真空排気すればよいため、組立作業性を向上できる。
【0017】
また、真空断熱構造体は、固定していない位置決め部材が第1または第2壁部に当接しても、第1および第2壁部の一方から他方へ伝熱することを最小限に抑えることができる。よって、断熱性能を低下させることはない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の真空断熱パネルを示し、(A)は小開口部を上向きに配置した状態を示す断面図、(B)は小開口部を下向きに配置した状態を示す断面図、(C)は球状スペーサと保持部の関係を示す拡大断面図である。
【図2】密封前の真空断熱パネルの分解斜視図である。
【図3】図1(A)での伝熱を示す断面図、(B)は図1(B)での伝熱を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図5】第3実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図6】第4実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図7】第5実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図8】第6実施形態の真空断熱パネルを示し、(A)は断面図、(B)は位置決め部材の斜視図である。
【図9】第7実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図10】第8実施形態の真空断熱パネルを示し、(A)は小開口部を上向きに配置した状態を示す断面図、(B)は他の位置での要部断面図、(C)は球状スペーサと第2保持部の関係を示す拡大断面図、(D)は(C)の平面図である。
【図11】第8実施形態の位置決め部材の斜視図である。
【図12】(A),(B)は組立工程の一例を示す断面図である。
【図13】(A),(B)は第8実施形態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1(A),(B)は、本発明の第1実施形態に係る真空断熱構造体である真空断熱パネル10を示す。この真空断熱パネル10は、一対の外装パネル11,15と、これらの間に配設した多数の球状スペーサ20と、各球状スペーサ20を位置決めするための位置決め部材21とを備えている。そして、本実施形態では、位置決め部材21を外装パネル11,15に固着することなく配設することにより、組立作業性を向上したものである。
【0021】
なお、以下の説明では、外装パネル11,15を形式的に第1および第2として区別して説明するが、実際の生産および使用に関して、これらが区別されることはない。
【0022】
第1および第2外装パネル11,15は、それぞれ薄肉(約0.5mm)のステンレス(SUS304)により形成されている。第1外装パネル11は、球状スペーサ20が接触する第1壁部12と、第1壁部12の外周縁から屈曲された第1外面部13と、第1外面部13の端縁からフランジ状をなすように外向きに屈曲された第1接合部14とを備えている。また、第2外装パネル15は、第1外装パネル11の開口側(第1接合部14側)に配設される対称形状のもので、第2壁部16と、第2外面部17と、第2接合部18とを備えている。
【0023】
これら外装パネル11,15は、互いの接合部14,18が重畳するように突き合わされ、シーム溶接等の圧着接合またはTIG溶接等の突き合わせ溶接、MIGブレージング等によって接合されている。これにより、各外装パネル11,15の壁部12,16は、互いに所定間隔をもって平行に位置し、その間に形成される空間が、真空排気後に真空空間19を構成する。なお、外装パネル11,15はステンレスに限られず、鉄やチタン等であってもよく、必要とされる耐熱温度に応じて変更が可能である。しかも、第1外装パネル11と第2外装パネル15とで異なる金属材料のものを使用してもよい。勿論、使用目的に応じた耐熱温度が得られるならば、樹脂により構成してもよい。
【0024】
球状スペーサ20は、熱伝導度が低い硬質なセラミックの一種であるジルコニア(Zro2)を、球状としたものである。この球状スペーサ20の直径dは、外装パネル11,15を接合した状態で、壁部12,16の対向面間の隙間と同一に形成されている。なお、球状スペーサ20はセラミックボールに限られず、ガラスボールや耐熱性樹脂ボールであってもよく、熱伝導度が低い硬質なものであれば適用可能である。
【0025】
位置決め部材21は、外装パネル11,15の壁部12,16間に球状スペーサ20を均等に分布して配置するものである。この位置決め部材21は薄肉(約0.2〜1.0mm)のシート状をなし、いずれの外装パネル11,15にも固定されることなく、対向する壁部12,16間に配置される。また、位置決め部材21は、外装パネル11,15と同様のステンレス(SUS304)により形成されている。なお、位置決め部材21はステンレスに限られず、耐熱性樹脂により形成してもよい。また、輻射伝熱を防止するために、表面に銅メッキを施してもよい。
【0026】
位置決め部材21は、球状スペーサ20を縦横に均等に分布して配置するために、多数の保持部22が設けられている。これら保持部22は、バーリング加工等によって一方向に突出するように設けた円錐筒状のものである。本実施形態では、保持部22を3行4列の等間隔に設けているが、その形成位置や数は希望に応じて変更が可能である。
【0027】
図1(C)に示すように、保持部22の下端は、球状スペーサ20の直径dより大きい寸法設定の大開口部23とされている。また、保持部22の上端は、球状スペーサ20の直径dより小さい寸法設定の小開口部24とされている。ここで、球状スペーサ20の直径dより大きい寸法設定の大開口部23とは、保持部22の軸芯を通過する部分で切断した大開口部23の両縁間寸法が、全て直径dより大きいことを意味する。また、球状スペーサ20の直径dより小さい寸法設定の小開口部24とは、保持部22の軸芯を通過する部分で切断した小開口部24の両縁間寸法が、少なくとも1箇所直径dより小さいことを意味する。そして、本実施形態の保持部22は円錐筒状であるため、大開口部23は直径dより大きい直径D1で形成され、小開口部24は直径dより小さい直径D2で形成されている。
【0028】
保持部22の全高Tは、球状スペーサ20の直径dより低く形成されている。更に具体的には、球状スペーサ20に対して保持部22を上方から被せると、球状スペーサ20と保持部22とは、平面視円形状をなすように接した状態をなす。この当接位置Pは、球状スペーサ20の中心から保持部22に対して垂直に交わる線上に位置する。当接位置Pから小開口部24までの保持部22の高さT1は、当接位置Pから球状スペーサ20の上側頂部(保持部22の軸線に沿った上端)までの上側寸法d1より、小さくなるように構成されている。また、当接位置Pから大開口部23までの保持部22の高さT2は、当接位置Pから球状スペーサ20の下側頂部、即ち球状スペーサ20の直径dから上側寸法d1を減算した下側寸法d2より、小さくなるように構成されている。
【0029】
次に、真空断熱パネル10の製造方法の一例について説明する。
【0030】
まず、位置決め部材21の大開口部23を上向きに位置させ、各保持部22に球状スペーサ20を配置する。この状態で、大開口部23が位置する上側に第1外装パネル11を配置するとともに、小開口部24が位置する下側に第2外装パネル15を配置する。この際、第1外装パネル11または第2外装パネル15に、真空排気後の真空空間19で発生したガス等を吸収して所望の真空度を維持するためのゲッター(図示せず)を配設する。
【0031】
ついで、第1および第2外装パネル11,15の接合部14,18を重畳させ、この状態で第1外装パネル11が下側に位置するように、上下を逆向きにする。これにより、各保持部22の軸線上に球状スペーサ20の中心が位置するように、球状スペーサ20が転動する。その結果、球状スペーサ20を正確かつ簡単に均等に分布させることができる。その後、重畳させた接合部14,18を接合する。このように、位置決め部材21は、第1および第2外装パネル11,15のいずれにも固着しない。
【0032】
なお、大開口部23が上側に位置するように位置決め部材21を配置して、各保持部22に球状スペーサ20を配置した後、上側に第1装着パネル11を配置する。その後、小開口部24が上側に位置するように上下逆向きにして、その上側に第2装着パネル15を配置してもよい。また、接合部18が上側に位置するように第2装着パネル15を配置し、その上側に大開口部23が上側に位置するように位置決め部材21を配置する。その後、各保持部22に球状スペーサ20を配置した後、上側に第1装着パネル11を配置して、上下逆向きにしてもよい。これらのようにしても同様の作用を得ることができる。
【0033】
接合前の第2外装パネル15には、図2に示すように、断面凸形状に突出する排気部25が形成され、この排気部25に排気孔26が形成されている。この排気孔26は、第2外装パネル15に開口を形成するだけでもよいし、チップ管を接合してもよい。また、第1外装パネル11には、排気部25の下面を閉塞する突片27が設けられている。
【0034】
この第2外装パネル15の排気孔26に排気装置の排気管をシール部材を介して押し付け、予め規定した真空度になるように真空排気する。そして、真空排気により規定の真空度に達すると、その真空度を維持した状態でリークテスト装置により外装体の内部空間にリークが存在するか否かをテストする。リークが無いことが確認されると、最後に、排気部25の基部(付け根の部分)をシーム溶接により接合した後、他の外周縁と面一になる位置で切断する。
【0035】
このように製造された真空断熱パネル10は、第1および第2壁部12,16の間に、球状スペーサ20の直径dと同一幅の真空空間19が形成される。そして、第1および第2壁部12,16の対向面(内側面)には、球状スペーサ20がそれぞれ接触し、その間隔が維持される。球状スペーサ20は、第1および第2壁部12,16との接触により、略移動不可能に位置決めされる。
【0036】
このように、本発明の真空断熱パネル10は、位置決め部材21に形成した各保持部22によって、球状スペーサ20を第1および第2壁部12,16間に均等に分布して、簡単かつ確実に配置することができる。そのため、完成した真空断熱パネル10の厚さが不均一になることを防止できるとともに、それに伴う断熱性能の低下を防止できる。しかも、位置決め部材21は、第1および第2外装パネル11,15のいずれにも固定する必要がないため、組立作業性の向上を図ることができる。
【0037】
図3(A)に示すように、真空断熱パネル10の第1壁部12を下側に位置させて使用すると、固定していない位置決め部材21の小開口部24が球状スペーサ20に周方向に当接(嵌合)した状態をなす。この状態では、位置決め部材21の大開口部23の側は、保持部22の高さT2の設定により第1壁部12には当接しない。よって、この状態では、第1および第2壁部12,16のうち、一方(第1壁部12)からの熱は点接触した球状スペーサ20からのみ他方(第2壁部16)へ伝熱される。
【0038】
また、図3(B)に示すように、第2壁部16を下側に位置させて使用すると、固定していない位置決め部材21の小開口部24が第2壁部16に当接した状態をなす。この状態では、位置決め部材21の大開口部23の側は、第1壁部12には当接しない。また、保持部22の内周部は、球状スペーサ20に当接しない状態と、図示のように一部のみが点接触した状態のいずれかになる。位置決め部材21と球状スペーサ20とが全く当接しない状態の場合、第2壁部16からの熱は、位置決め部材21を伝熱して再び第2壁部16に戻される。よって、第1壁部12への伝熱は、球状スペーサ20からのみとなる。一方、位置決め部材21と球状スペーサ20の一部が当接した状態の場合、第2壁部16からの熱は、位置決め部材21から球状スペーサ20を介して第1壁部12へ伝熱する。しかし、位置決め部材21と球状スペーサ20との当接は点接触であるため、殆どの熱は第2壁部16へ戻されることになる。
【0039】
なお、真空断熱パネル10を垂直面に配設する場合には、第2壁部16を下側に位置させた場合と同様に、保持部22の内周部は、一部のみが点接触した状態になる。そのため、この場合の伝熱作用も前述と同様になる。
【0040】
このように、本発明の真空断熱構造体は、固定していない位置決め部材21が第2壁部16に当接しても、第1および第2壁部12,16のうち、一方(第2壁部16)から他方(第1壁部12)への伝熱を最小限に抑えることができる。よって、断熱性能を低下させることはない。
【0041】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第2実施形態では、保持部22の小開口部24が当接する第2壁部16の側に、輻射伝熱を防止するための銅またはアルミ等からなる金属箔28を配設した点でのみ、第1実施形態と相違する。このように構成した第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、更に断熱性能を向上できる。
【0042】
(第3実施形態)
図5は第3実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第3実施形態では、第1および第2壁部12,16に重畳するように、補強板29を配設した点でのみ、第2実施形態と相違する。この補強板29は、外装パネル11,15と同様のステンレス(SUS304)により構成された薄肉(0.5〜1.0mm)のものである。そして、第3実施形態の球状スペーサ20の直径dは、これら補強板29,29間の寸法と同一とされている。なお、補強板29は、表面硬度が高いステンレス(SUS301)により構成してもよい。
【0043】
この第3実施形態では、第2実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、補強板29によって壁部12,16の変形を確実に防止できる。即ち、真空空間19の真空度が高い場合には、内外の圧力差によって壁部12,16が変形して、球状部材に対して部分的に面接触する可能性があるが、本実施形態では、確実に点接触状態を確保できる。よって、断熱性能の低下を確実に防止できる。
【0044】
(第4実施形態)
図6は第4実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第4実施形態では、保持部22の小開口部24を、保持部22の軸心に対して先細に傾斜させた点でのみ、第1実施形態と相違する。このように構成した第4実施形態では、保持部22の突出側である第2外装パネル15を下側に位置させて使用すると、小開口部24の傾斜した上端のみが第2壁部16に点接触する。そのため、この状態での第2壁部16から位置決め部材21自体への伝熱を抑制できる。よって、断熱性能の低下を確実に防止できる。
【0045】
(第5実施形態)
図7は第5実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第5実施形態では、位置決め部材21の小開口部24の側の第2壁部16との間に、規制部として断熱材30を配設した点でのみ、第1実施形態と相違する。この断熱材30は、グラスウールやセラミックウールからなる弾性的に変形可能なものである。このように構成した第5実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、断熱材30によって、小開口部24が対向する第2壁部16へ向けて移動し、干渉(当接)することを防止できる。そのため、第2壁部16から第1壁部12へ位置決め部材21を介して伝熱することを確実に抑制できる。
【0046】
(第6実施形態)
図8(A)は第6実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第6実施形態では、断熱材30の代わりに、規制部として位置決め部材21に切起部31を設けた点でのみ、第5実施形態と相違する。この切起部31は、図8(B)に示すように、矩形状をなす一辺を連続させ、他の辺を切断して保持部22の突出方向に屈曲させて設けたものである。この切起部31は、保持部22のバーリング(プレス)加工と同時に形成することができる。このように構成した第6実施形態では、第5実施形態と略同様の作用および効果を得ることができる。しかも、別部材からなる規制部が不要であるため、部品点数を削減し、組立作業性を向上できる。
【0047】
(第7実施形態)
図9は第7実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第7実施形態では、外装パネル11,15に外面部13,17および接合部14,18を設けることなく、壁部12,16のみにより構成し、別材のラミネートフィルム32によって密封して真空空間19を形成した点で、各実施形態と相違する。このラミネートフィルム32は、一辺のみを開口部33とした袋状のものである。このラミネートフィルム32は、金属箔の両面を樹脂シートで挟み込むようにして接着したものである。
【0048】
そして、この第7実施形態の真空断熱パネル10は、大開口部23を上側に位置させて保持部22内に球状スペーサ20を配置した状態で、上下に第1壁部12と第2壁部16とを配置する。そして、これらによって挟み込んだ状態で上下を逆向きに配置して、開口部33からラミネートフィルム32内に配置する。そして、開口部33から内部を真空排気した後、その開口部33を溶着により密封する。そして、このように構成した第7実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0049】
(第8実施形態)
図10(A),(B)は第8実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第8実施形態では、一部の保持部22の小開口部24を、球状スペーサ20の頂部が突出可能な寸法(直径)D2より更に小さい寸法設定D3とした点で、各実施形態と相違する。なお、以下の説明では、各実施形態と同一の寸法D2としたものを第1保持部22Aおよび第1小開口部24Aと称し、寸法D3としたものを第2保持部22Bおよび第2小開口部24Bと称する。
【0050】
位置決め部材21は、各実施形態と同様に、薄肉(約0.2〜1.0mm)のシート状ステンレス(SUS304)からなり、いずれの外装パネル11,15にも固定されることなく、対向する壁部12,16間に配置される。この位置決め部材21には、バーリング加工等によって保持部22A,22Bがマトリクス状をなすように設けられている。本実施形態では、3行4列の保持部22A,22Bのうち、対称に位置する第1,第3行第2,第3列の部分を第2保持部22Bとし、他の部分を第1保持部22Aとしている。
【0051】
第1保持部22Aは、各実施形態と同様に、直径D1の大開口部23と直径D2の第1小開口部24Aを有する円錐筒状をなす。第2保持部22Bは、第1保持部22Aと同様の円錐筒状をなし、その外周部に円弧状をなすように内向きに窪む凹部35を周方向に所定間隔をもって複数(本実施形態では3箇所)設けたものである。具体的には、図10(C),(D)に示すように、第2保持部22Bの下端は、球状スペーサ20の直径dより大きい寸法(直径)設定D1の大開口部23である。また、第2保持部22Bの上端は、一点鎖線で示す各凹部35の内端部を結ぶ円形状の仮想開口部(内接円)により、第1小開口部22Aより更に小さい寸法(直径)設定D3の第2小開口部24Bが構成されている。
【0052】
第1および第2保持部22A,22Bの全高Tは、球状スペーサ20の直径dより低く形成されている。球状スペーサ20に対して第2保持部22Bを上方から被せると、球状スペーサ20と第2保持部22Bとは、凹部35の内側頂部が点接触した状態をなす。この当接位置Pから小開口部24Bまでの第2保持部22Bの高さT1は、当接位置Pから球状スペーサ20の上側頂部までの上側寸法d1より小さく、当接位置Pから大開口部23までの第2保持部22Bの高さT2は、当接位置Pから球状スペーサ20の下側頂部までの下側寸法d2より小さくなるように構成されている。
【0053】
この第8実施形態の真空断熱パネル10は、第1実施形態と同様に組み立てられる。例えば、図12(A)に示すように、大開口部23が上側に位置するように位置決め部材21を配置して、各保持部22A,22Bに球状スペーサ20を配置した後、その上側に第1装着パネル11を配置する。ついで、図12(B)に示すように、小開口部24A,24Bが上側に位置するように上下逆向きにする。これにより、各保持部22A,22Bの軸線上に球状スペーサ20の中心が位置するように、球状スペーサ20が転動する。その後、小開口部24A,24Bから突出した球状スペーサ20上に第2装着パネル15を配置した後、重畳させた接合部14,18を接合し、排気装置によって真空排気して排気部25を封止する。
【0054】
これにより、第1および第2壁部12,16の間に、球状スペーサ20の直径dと同一幅の真空空間19が形成される。第1および第2壁部12,16の対向面(内側面)には、球状スペーサ20がそれぞれ接触して略移動不可能に位置決めされる。また、本実施形態の位置決め部材21は、直径D2の第1小開口部24Aとした第1保持部22Aと、第1小開口部24Aより小さい直径D3の第2小開口部24Bとした第2保持部22Bを有する。そのため、図10(A)に示すように、小開口部24A,24Bを上側に配置した状態は勿論、大開口部23を上側に配置した状態でも、第1保持部22Aでは球状スペーサ20と殆ど接触しない。その結果、第1および第2壁部12,16の双方向の伝熱を更に確実に抑えることができる。しかも、本実施形態では、更に以下の作用および効果を得ることができる。
【0055】
即ち、位置決め部材21を薄肉のシート状ステンレスにより構成する場合、図12(A)に示すように、保持部22A,22Bを除く部分を平坦な状態とすることは極めて困難であり、図示のように歪みが生じることは避けられない。このように位置決め部材21に歪みが生じていても、図12(B)に示す状態で球状スペーサ20上に第2装着パネル15を配置し、下向きに負荷を加えた状態で接合部14,18を接合することにより、真空断熱パネル10の製造には何ら問題はない。
【0056】
しかし、このようにして製造した真空断熱パネル10は、図10(B)に示すように、歪みにより第2装着パネル15に一部の保持部22A,22Bが接触した状態になる。これにより、位置決め部材21は、小開口部24A,24Bを上側に配置した状態、大開口部23を上側に配置した状態、開口部23,24A,24Bを横向きに配置した状態のいずれでも、歪みの矯正による弾性的な復元力や摩擦抵抗により、上下左右に移動不可能な状態をなす。
【0057】
その結果、第2装着パネル15と一部の保持部22A,22Bとの接触により、図10(A)に示すように、小開口部24A,24Bを上側に配置した状態では、第1および第2壁部12,16の双方向間の伝熱量が増えるかのように思われる。しかしながら、第2装着パネル15と保持部22A,22Bとは一部だけが接触した状態をなすうえ、本実施形態の真空断熱パネル10は、第2小開口部24Bとした第2保持部22Bのみが球状スペーサ20と接触した状態をなす。よって、全て直径D2の小開口部24の保持部22とした第1実施形態の位置決め部材21に歪みが生じている場合と比較すると、第1および第2壁部12,16の双方向の伝熱を更に確実に抑えることができる。
【0058】
なお、本発明の真空断熱構造体は、実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、前記実施形態では、全ての球状スペーサ20を1枚の位置決め部材21で位置決めしたが、2個以上の球状スペーサ20を位置決め可能とした複数の位置決め部材21によって、全て球状スペーサ20を位置決めする構成としてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、位置決め部材21に対して縦横に均等に配列して保持部22を設けたが、必ずしも平行かつ均等である必要はなく、特に加圧力が大きい部分が存在する場合には、その部分に多く配置する構成としてもよい。
【0061】
さらに、第4実施形態から第8実施形態の真空断熱パネル10では、第2実施形態と同様に金属箔28を配設する構成としてもよく、また、第3実施形態のように金属箔28と補強板29を配設する構成としてもよい。しかも、第7実施形態では、第5実施形態または第6実施形態のように規制部を設ける構成としてもよい。
【0062】
さらにまた、第8実施形態の第2保持部22Bは、凹部35を設けることにより直径D3の小開口部24Bを設ける構成に限られず、図13(A)に示すように、直径D3の真円形状をなす小開口部24Bとしてもよく、図13(B)に示すように、短径D3の楕円形状をなす小開口部24Bとしてもよい。
【0063】
また、前記各実施形態では、保持部22,22A,22Bを円錐筒状をなすように形成したが、平面視三角形状以上の多角錐筒状であってもよい。さらに、前記実施形態では、真空断熱パネル10の形状を平面視矩形状に形成したが、三角形状や五角形以上の多角形状でもよいうえ、円形状としてもよく、その形状は希望に応じて変更が可能である。
【0064】
そして、前記実施形態では、真空断熱構造体として真空断熱パネル10を用いて説明したが、魔法瓶、真空二重管、真空二重ジャケット、真空容器等の真空構造体にも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
10…真空断熱パネル(真空断熱構造体)
11…第1外装パネル
12…第1壁部
15…第2外装パネル
16…第2壁部
19…真空空間
20…球状スペーサ
21…位置決め部材
22,22A,22B…保持部
23…大開口部
24,24A,24B…小開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱パネル、魔法瓶、真空二重管、真空二重ジャケット、真空容器等の真空断熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の真空断熱構造体は、対向する第1および第2壁部の間を密封して真空空間としている。この真空断熱構造体は、壁部の肉厚を厚くすれば、真空排気による内外の圧力差に抗して変形することを防止できるが、重量が重くなるという欠点がある。
【0003】
そこで、特許文献1の真空断熱構造体では、第1および第2壁部の間に多数の球状スペーサを配設することにより、変形を防止できるようにしている。球状スペーサは、第1および第2壁部の間に均等に分布して配列しなければ、部分的な変形が生じる。そのため、特許文献1の真空断熱構造体は、球状スペーサを位置決め部材を介して配設する構成としている。この位置決め部材は、球状スペーサを覆う円錐筒部を備えている。この円錐筒部は、球状スペーサの直径より大きい大径開口部と、球状スペーサの直径より小さい小径開口部とを有する。そして、この位置決め部材に球状スペーサを配置し、第1および第2壁部のうち一方に溶接することによって、均等に分布して配設するように構成している。
【0004】
特許文献1の真空断熱構造体は、第1および第2壁部を薄肉としても、内部の球状スペーサによって変形を確実に防止できるうえ、十分な断熱性能を得ることができる。しかし、この真空断熱構造体は、位置決め部材を壁部に対して溶接して固着する必要があるため、組立作業性が悪いという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、断熱性能を低下させることなく、組立作業性を向上できる真空断熱構造体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の真空断熱構造体は、第1壁部と、この第1壁部と所定間隔をもって位置する第2壁部とを備え、これら第1および第2壁部の間に、これらの対向面に接触する直径(d)の多数の球状スペーサを位置決め部材を介して配設するとともに、前記第1および第2壁部の間を密封して真空空間とした真空断熱構造体において、前記位置決め部材は、前記球状スペーサの直径(d)より大きい寸法(D1)の大開口部と、前記球状スペーサの直径(d)より少なくとも一部が小さい寸法(D2)の小開口部とを有する多数の保持部を備え、前記保持部は、前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記小開口部までの高さ(T1)が、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記小開口部より突出した頂部までの上側寸法(d1)より小さく、前記当接位置(P)から前記大開口部までの高さ(T2)が、前記球状スペーサの直径(d)から前記上側寸法(d1)を減算した下側寸法(d2)より小さく、前記第1および第2壁部のいずれにも固定されていない構成としている。
【0008】
ここで、第1および第2壁部の間の真空空間は、第1および第2壁部の周囲を溶着することにより密封して形成する構成、および、第1および第2壁部をラミネートフィルムで密封して形成する構成を含む。
【0009】
この真空断熱構造体は、例えば位置決め部材の大開口部を上向きに位置させ、各保持部に球状スペーサを配置する。この状態で、大開口部が位置する上側に第1壁部を配置するとともに、小開口部が位置する下側に第2壁部を配置する。この状態で、上下を逆向きにすることにより、各保持部の軸線上に球状スペーサの中心を位置させる。その後、第1および第2壁部の間の空間を真空排気することにより形成される。このように、本発明の真空断熱構造体は、位置決め部材を第1および第2壁部のいずれにも固定しないため、組立作業性を向上できる。なお、球状スペーサは、真空排気により第1および第2壁部の間に圧接され、移動不可能な状態に位置決めされる。
【0010】
そして、この真空断熱構造体では、第1壁部を下側に位置させると、固定していない位置決め部材の小開口部が球状スペーサに周方向に当接(嵌合)した状態をなす。この状態では、位置決め部材の大開口部の側は、保持部の高さ設定により第1壁部には当接しない。よって、この状態では、第1および第2壁部のうち、一方からの熱は点接触した球状スペーサからのみ他方へ伝熱される。
【0011】
また、第2壁部を下側に位置させると、固定していない位置決め部材の小開口部が第2壁部に当接した状態をなす。この状態では、位置決め部材の大開口部の側は、第1壁部には当接しない。また、保持部の内周部は、球状スペーサに当接しない状態と、一部のみが点接触した状態のいずれかになる。位置決め部材と球状スペーサとが全く当接しない状態の場合、第2壁部からの熱は、位置決め部材を伝熱して再び第2壁部に戻されるため、第1壁部への伝熱は、球状スペーサからのみとなる。一方、位置決め部材と球状スペーサの一部が当接した状態の場合、第2壁部からの熱は、位置決め部材から球状スペーサを介して第1壁部へ伝熱する。しかし、位置決め部材と球状スペーサとの当接は点接触であるため、殆どの熱は第2壁部へ戻されることになる。
【0012】
このように、本発明の真空断熱構造体は、固定していない位置決め部材が第1または第2壁部に当接しても、第1および第2壁部のうち、一方から他方への伝熱を最小限に抑えることができる。よって、断熱性能を低下させることはない。
【0013】
この真空断熱構造体では、前記小開口部を、前記保持部の軸線に対して傾斜させることが好ましい。このようにすれば、第1または第2壁部に位置決め部材の小開口部が当接した状態になった際の伝熱を抑制し、断熱性能の低下を確実に防止できる。
【0014】
または、前記位置決め部材の小開口部の側に、この小開口部が対向する壁部へ移動して干渉することを防止する規制部を設けることが好ましい。このようにすれば、位置決め部材の小開口部が第1または第2壁部に当接することを防止できる。そのため、第1および第2壁部の一方から他方へ位置決め部材を介して伝熱することを抑制できる。
この場合、前記規制部は、弾性的に変形可能な断熱材からなることが好ましい。このようにすれば、位置決め部材を介して伝熱することを確実に抑制できる。
または、前記規制部は、前記位置決め部材の一部を切り起こして設けることが好ましい。このようにすれば、位置決め部材を介して伝熱することを抑制できるとともに、部品点数が増加しないため、組立作業性を向上できる。
【0015】
または、一部の前記保持部の前記小開口部を、少なくとも一部が前記寸法(D2)より小さく、前記球状スペーサの頂部が突出可能な寸法(D3)とすることが好ましい。このようにすれば、小開口部を寸法(D3)とした保持部には球状スペーサが接触し、小開口部を寸法(D2)とした保持部の殆どには球状スペーサが接触しない状態で、位置決め部材を規制できる。その結果、断熱性能を更に向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の真空断熱構造体では、第1および第2壁部の一方に球状スペーサと位置決め部材を配置し、位置決め部材を固定することなく、第1および第2壁部の他方を被せて真空排気すればよいため、組立作業性を向上できる。
【0017】
また、真空断熱構造体は、固定していない位置決め部材が第1または第2壁部に当接しても、第1および第2壁部の一方から他方へ伝熱することを最小限に抑えることができる。よって、断熱性能を低下させることはない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の真空断熱パネルを示し、(A)は小開口部を上向きに配置した状態を示す断面図、(B)は小開口部を下向きに配置した状態を示す断面図、(C)は球状スペーサと保持部の関係を示す拡大断面図である。
【図2】密封前の真空断熱パネルの分解斜視図である。
【図3】図1(A)での伝熱を示す断面図、(B)は図1(B)での伝熱を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図5】第3実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図6】第4実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図7】第5実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図8】第6実施形態の真空断熱パネルを示し、(A)は断面図、(B)は位置決め部材の斜視図である。
【図9】第7実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図10】第8実施形態の真空断熱パネルを示し、(A)は小開口部を上向きに配置した状態を示す断面図、(B)は他の位置での要部断面図、(C)は球状スペーサと第2保持部の関係を示す拡大断面図、(D)は(C)の平面図である。
【図11】第8実施形態の位置決め部材の斜視図である。
【図12】(A),(B)は組立工程の一例を示す断面図である。
【図13】(A),(B)は第8実施形態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1(A),(B)は、本発明の第1実施形態に係る真空断熱構造体である真空断熱パネル10を示す。この真空断熱パネル10は、一対の外装パネル11,15と、これらの間に配設した多数の球状スペーサ20と、各球状スペーサ20を位置決めするための位置決め部材21とを備えている。そして、本実施形態では、位置決め部材21を外装パネル11,15に固着することなく配設することにより、組立作業性を向上したものである。
【0021】
なお、以下の説明では、外装パネル11,15を形式的に第1および第2として区別して説明するが、実際の生産および使用に関して、これらが区別されることはない。
【0022】
第1および第2外装パネル11,15は、それぞれ薄肉(約0.5mm)のステンレス(SUS304)により形成されている。第1外装パネル11は、球状スペーサ20が接触する第1壁部12と、第1壁部12の外周縁から屈曲された第1外面部13と、第1外面部13の端縁からフランジ状をなすように外向きに屈曲された第1接合部14とを備えている。また、第2外装パネル15は、第1外装パネル11の開口側(第1接合部14側)に配設される対称形状のもので、第2壁部16と、第2外面部17と、第2接合部18とを備えている。
【0023】
これら外装パネル11,15は、互いの接合部14,18が重畳するように突き合わされ、シーム溶接等の圧着接合またはTIG溶接等の突き合わせ溶接、MIGブレージング等によって接合されている。これにより、各外装パネル11,15の壁部12,16は、互いに所定間隔をもって平行に位置し、その間に形成される空間が、真空排気後に真空空間19を構成する。なお、外装パネル11,15はステンレスに限られず、鉄やチタン等であってもよく、必要とされる耐熱温度に応じて変更が可能である。しかも、第1外装パネル11と第2外装パネル15とで異なる金属材料のものを使用してもよい。勿論、使用目的に応じた耐熱温度が得られるならば、樹脂により構成してもよい。
【0024】
球状スペーサ20は、熱伝導度が低い硬質なセラミックの一種であるジルコニア(Zro2)を、球状としたものである。この球状スペーサ20の直径dは、外装パネル11,15を接合した状態で、壁部12,16の対向面間の隙間と同一に形成されている。なお、球状スペーサ20はセラミックボールに限られず、ガラスボールや耐熱性樹脂ボールであってもよく、熱伝導度が低い硬質なものであれば適用可能である。
【0025】
位置決め部材21は、外装パネル11,15の壁部12,16間に球状スペーサ20を均等に分布して配置するものである。この位置決め部材21は薄肉(約0.2〜1.0mm)のシート状をなし、いずれの外装パネル11,15にも固定されることなく、対向する壁部12,16間に配置される。また、位置決め部材21は、外装パネル11,15と同様のステンレス(SUS304)により形成されている。なお、位置決め部材21はステンレスに限られず、耐熱性樹脂により形成してもよい。また、輻射伝熱を防止するために、表面に銅メッキを施してもよい。
【0026】
位置決め部材21は、球状スペーサ20を縦横に均等に分布して配置するために、多数の保持部22が設けられている。これら保持部22は、バーリング加工等によって一方向に突出するように設けた円錐筒状のものである。本実施形態では、保持部22を3行4列の等間隔に設けているが、その形成位置や数は希望に応じて変更が可能である。
【0027】
図1(C)に示すように、保持部22の下端は、球状スペーサ20の直径dより大きい寸法設定の大開口部23とされている。また、保持部22の上端は、球状スペーサ20の直径dより小さい寸法設定の小開口部24とされている。ここで、球状スペーサ20の直径dより大きい寸法設定の大開口部23とは、保持部22の軸芯を通過する部分で切断した大開口部23の両縁間寸法が、全て直径dより大きいことを意味する。また、球状スペーサ20の直径dより小さい寸法設定の小開口部24とは、保持部22の軸芯を通過する部分で切断した小開口部24の両縁間寸法が、少なくとも1箇所直径dより小さいことを意味する。そして、本実施形態の保持部22は円錐筒状であるため、大開口部23は直径dより大きい直径D1で形成され、小開口部24は直径dより小さい直径D2で形成されている。
【0028】
保持部22の全高Tは、球状スペーサ20の直径dより低く形成されている。更に具体的には、球状スペーサ20に対して保持部22を上方から被せると、球状スペーサ20と保持部22とは、平面視円形状をなすように接した状態をなす。この当接位置Pは、球状スペーサ20の中心から保持部22に対して垂直に交わる線上に位置する。当接位置Pから小開口部24までの保持部22の高さT1は、当接位置Pから球状スペーサ20の上側頂部(保持部22の軸線に沿った上端)までの上側寸法d1より、小さくなるように構成されている。また、当接位置Pから大開口部23までの保持部22の高さT2は、当接位置Pから球状スペーサ20の下側頂部、即ち球状スペーサ20の直径dから上側寸法d1を減算した下側寸法d2より、小さくなるように構成されている。
【0029】
次に、真空断熱パネル10の製造方法の一例について説明する。
【0030】
まず、位置決め部材21の大開口部23を上向きに位置させ、各保持部22に球状スペーサ20を配置する。この状態で、大開口部23が位置する上側に第1外装パネル11を配置するとともに、小開口部24が位置する下側に第2外装パネル15を配置する。この際、第1外装パネル11または第2外装パネル15に、真空排気後の真空空間19で発生したガス等を吸収して所望の真空度を維持するためのゲッター(図示せず)を配設する。
【0031】
ついで、第1および第2外装パネル11,15の接合部14,18を重畳させ、この状態で第1外装パネル11が下側に位置するように、上下を逆向きにする。これにより、各保持部22の軸線上に球状スペーサ20の中心が位置するように、球状スペーサ20が転動する。その結果、球状スペーサ20を正確かつ簡単に均等に分布させることができる。その後、重畳させた接合部14,18を接合する。このように、位置決め部材21は、第1および第2外装パネル11,15のいずれにも固着しない。
【0032】
なお、大開口部23が上側に位置するように位置決め部材21を配置して、各保持部22に球状スペーサ20を配置した後、上側に第1装着パネル11を配置する。その後、小開口部24が上側に位置するように上下逆向きにして、その上側に第2装着パネル15を配置してもよい。また、接合部18が上側に位置するように第2装着パネル15を配置し、その上側に大開口部23が上側に位置するように位置決め部材21を配置する。その後、各保持部22に球状スペーサ20を配置した後、上側に第1装着パネル11を配置して、上下逆向きにしてもよい。これらのようにしても同様の作用を得ることができる。
【0033】
接合前の第2外装パネル15には、図2に示すように、断面凸形状に突出する排気部25が形成され、この排気部25に排気孔26が形成されている。この排気孔26は、第2外装パネル15に開口を形成するだけでもよいし、チップ管を接合してもよい。また、第1外装パネル11には、排気部25の下面を閉塞する突片27が設けられている。
【0034】
この第2外装パネル15の排気孔26に排気装置の排気管をシール部材を介して押し付け、予め規定した真空度になるように真空排気する。そして、真空排気により規定の真空度に達すると、その真空度を維持した状態でリークテスト装置により外装体の内部空間にリークが存在するか否かをテストする。リークが無いことが確認されると、最後に、排気部25の基部(付け根の部分)をシーム溶接により接合した後、他の外周縁と面一になる位置で切断する。
【0035】
このように製造された真空断熱パネル10は、第1および第2壁部12,16の間に、球状スペーサ20の直径dと同一幅の真空空間19が形成される。そして、第1および第2壁部12,16の対向面(内側面)には、球状スペーサ20がそれぞれ接触し、その間隔が維持される。球状スペーサ20は、第1および第2壁部12,16との接触により、略移動不可能に位置決めされる。
【0036】
このように、本発明の真空断熱パネル10は、位置決め部材21に形成した各保持部22によって、球状スペーサ20を第1および第2壁部12,16間に均等に分布して、簡単かつ確実に配置することができる。そのため、完成した真空断熱パネル10の厚さが不均一になることを防止できるとともに、それに伴う断熱性能の低下を防止できる。しかも、位置決め部材21は、第1および第2外装パネル11,15のいずれにも固定する必要がないため、組立作業性の向上を図ることができる。
【0037】
図3(A)に示すように、真空断熱パネル10の第1壁部12を下側に位置させて使用すると、固定していない位置決め部材21の小開口部24が球状スペーサ20に周方向に当接(嵌合)した状態をなす。この状態では、位置決め部材21の大開口部23の側は、保持部22の高さT2の設定により第1壁部12には当接しない。よって、この状態では、第1および第2壁部12,16のうち、一方(第1壁部12)からの熱は点接触した球状スペーサ20からのみ他方(第2壁部16)へ伝熱される。
【0038】
また、図3(B)に示すように、第2壁部16を下側に位置させて使用すると、固定していない位置決め部材21の小開口部24が第2壁部16に当接した状態をなす。この状態では、位置決め部材21の大開口部23の側は、第1壁部12には当接しない。また、保持部22の内周部は、球状スペーサ20に当接しない状態と、図示のように一部のみが点接触した状態のいずれかになる。位置決め部材21と球状スペーサ20とが全く当接しない状態の場合、第2壁部16からの熱は、位置決め部材21を伝熱して再び第2壁部16に戻される。よって、第1壁部12への伝熱は、球状スペーサ20からのみとなる。一方、位置決め部材21と球状スペーサ20の一部が当接した状態の場合、第2壁部16からの熱は、位置決め部材21から球状スペーサ20を介して第1壁部12へ伝熱する。しかし、位置決め部材21と球状スペーサ20との当接は点接触であるため、殆どの熱は第2壁部16へ戻されることになる。
【0039】
なお、真空断熱パネル10を垂直面に配設する場合には、第2壁部16を下側に位置させた場合と同様に、保持部22の内周部は、一部のみが点接触した状態になる。そのため、この場合の伝熱作用も前述と同様になる。
【0040】
このように、本発明の真空断熱構造体は、固定していない位置決め部材21が第2壁部16に当接しても、第1および第2壁部12,16のうち、一方(第2壁部16)から他方(第1壁部12)への伝熱を最小限に抑えることができる。よって、断熱性能を低下させることはない。
【0041】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第2実施形態では、保持部22の小開口部24が当接する第2壁部16の側に、輻射伝熱を防止するための銅またはアルミ等からなる金属箔28を配設した点でのみ、第1実施形態と相違する。このように構成した第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、更に断熱性能を向上できる。
【0042】
(第3実施形態)
図5は第3実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第3実施形態では、第1および第2壁部12,16に重畳するように、補強板29を配設した点でのみ、第2実施形態と相違する。この補強板29は、外装パネル11,15と同様のステンレス(SUS304)により構成された薄肉(0.5〜1.0mm)のものである。そして、第3実施形態の球状スペーサ20の直径dは、これら補強板29,29間の寸法と同一とされている。なお、補強板29は、表面硬度が高いステンレス(SUS301)により構成してもよい。
【0043】
この第3実施形態では、第2実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、補強板29によって壁部12,16の変形を確実に防止できる。即ち、真空空間19の真空度が高い場合には、内外の圧力差によって壁部12,16が変形して、球状部材に対して部分的に面接触する可能性があるが、本実施形態では、確実に点接触状態を確保できる。よって、断熱性能の低下を確実に防止できる。
【0044】
(第4実施形態)
図6は第4実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第4実施形態では、保持部22の小開口部24を、保持部22の軸心に対して先細に傾斜させた点でのみ、第1実施形態と相違する。このように構成した第4実施形態では、保持部22の突出側である第2外装パネル15を下側に位置させて使用すると、小開口部24の傾斜した上端のみが第2壁部16に点接触する。そのため、この状態での第2壁部16から位置決め部材21自体への伝熱を抑制できる。よって、断熱性能の低下を確実に防止できる。
【0045】
(第5実施形態)
図7は第5実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第5実施形態では、位置決め部材21の小開口部24の側の第2壁部16との間に、規制部として断熱材30を配設した点でのみ、第1実施形態と相違する。この断熱材30は、グラスウールやセラミックウールからなる弾性的に変形可能なものである。このように構成した第5実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、断熱材30によって、小開口部24が対向する第2壁部16へ向けて移動し、干渉(当接)することを防止できる。そのため、第2壁部16から第1壁部12へ位置決め部材21を介して伝熱することを確実に抑制できる。
【0046】
(第6実施形態)
図8(A)は第6実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第6実施形態では、断熱材30の代わりに、規制部として位置決め部材21に切起部31を設けた点でのみ、第5実施形態と相違する。この切起部31は、図8(B)に示すように、矩形状をなす一辺を連続させ、他の辺を切断して保持部22の突出方向に屈曲させて設けたものである。この切起部31は、保持部22のバーリング(プレス)加工と同時に形成することができる。このように構成した第6実施形態では、第5実施形態と略同様の作用および効果を得ることができる。しかも、別部材からなる規制部が不要であるため、部品点数を削減し、組立作業性を向上できる。
【0047】
(第7実施形態)
図9は第7実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第7実施形態では、外装パネル11,15に外面部13,17および接合部14,18を設けることなく、壁部12,16のみにより構成し、別材のラミネートフィルム32によって密封して真空空間19を形成した点で、各実施形態と相違する。このラミネートフィルム32は、一辺のみを開口部33とした袋状のものである。このラミネートフィルム32は、金属箔の両面を樹脂シートで挟み込むようにして接着したものである。
【0048】
そして、この第7実施形態の真空断熱パネル10は、大開口部23を上側に位置させて保持部22内に球状スペーサ20を配置した状態で、上下に第1壁部12と第2壁部16とを配置する。そして、これらによって挟み込んだ状態で上下を逆向きに配置して、開口部33からラミネートフィルム32内に配置する。そして、開口部33から内部を真空排気した後、その開口部33を溶着により密封する。そして、このように構成した第7実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0049】
(第8実施形態)
図10(A),(B)は第8実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第8実施形態では、一部の保持部22の小開口部24を、球状スペーサ20の頂部が突出可能な寸法(直径)D2より更に小さい寸法設定D3とした点で、各実施形態と相違する。なお、以下の説明では、各実施形態と同一の寸法D2としたものを第1保持部22Aおよび第1小開口部24Aと称し、寸法D3としたものを第2保持部22Bおよび第2小開口部24Bと称する。
【0050】
位置決め部材21は、各実施形態と同様に、薄肉(約0.2〜1.0mm)のシート状ステンレス(SUS304)からなり、いずれの外装パネル11,15にも固定されることなく、対向する壁部12,16間に配置される。この位置決め部材21には、バーリング加工等によって保持部22A,22Bがマトリクス状をなすように設けられている。本実施形態では、3行4列の保持部22A,22Bのうち、対称に位置する第1,第3行第2,第3列の部分を第2保持部22Bとし、他の部分を第1保持部22Aとしている。
【0051】
第1保持部22Aは、各実施形態と同様に、直径D1の大開口部23と直径D2の第1小開口部24Aを有する円錐筒状をなす。第2保持部22Bは、第1保持部22Aと同様の円錐筒状をなし、その外周部に円弧状をなすように内向きに窪む凹部35を周方向に所定間隔をもって複数(本実施形態では3箇所)設けたものである。具体的には、図10(C),(D)に示すように、第2保持部22Bの下端は、球状スペーサ20の直径dより大きい寸法(直径)設定D1の大開口部23である。また、第2保持部22Bの上端は、一点鎖線で示す各凹部35の内端部を結ぶ円形状の仮想開口部(内接円)により、第1小開口部22Aより更に小さい寸法(直径)設定D3の第2小開口部24Bが構成されている。
【0052】
第1および第2保持部22A,22Bの全高Tは、球状スペーサ20の直径dより低く形成されている。球状スペーサ20に対して第2保持部22Bを上方から被せると、球状スペーサ20と第2保持部22Bとは、凹部35の内側頂部が点接触した状態をなす。この当接位置Pから小開口部24Bまでの第2保持部22Bの高さT1は、当接位置Pから球状スペーサ20の上側頂部までの上側寸法d1より小さく、当接位置Pから大開口部23までの第2保持部22Bの高さT2は、当接位置Pから球状スペーサ20の下側頂部までの下側寸法d2より小さくなるように構成されている。
【0053】
この第8実施形態の真空断熱パネル10は、第1実施形態と同様に組み立てられる。例えば、図12(A)に示すように、大開口部23が上側に位置するように位置決め部材21を配置して、各保持部22A,22Bに球状スペーサ20を配置した後、その上側に第1装着パネル11を配置する。ついで、図12(B)に示すように、小開口部24A,24Bが上側に位置するように上下逆向きにする。これにより、各保持部22A,22Bの軸線上に球状スペーサ20の中心が位置するように、球状スペーサ20が転動する。その後、小開口部24A,24Bから突出した球状スペーサ20上に第2装着パネル15を配置した後、重畳させた接合部14,18を接合し、排気装置によって真空排気して排気部25を封止する。
【0054】
これにより、第1および第2壁部12,16の間に、球状スペーサ20の直径dと同一幅の真空空間19が形成される。第1および第2壁部12,16の対向面(内側面)には、球状スペーサ20がそれぞれ接触して略移動不可能に位置決めされる。また、本実施形態の位置決め部材21は、直径D2の第1小開口部24Aとした第1保持部22Aと、第1小開口部24Aより小さい直径D3の第2小開口部24Bとした第2保持部22Bを有する。そのため、図10(A)に示すように、小開口部24A,24Bを上側に配置した状態は勿論、大開口部23を上側に配置した状態でも、第1保持部22Aでは球状スペーサ20と殆ど接触しない。その結果、第1および第2壁部12,16の双方向の伝熱を更に確実に抑えることができる。しかも、本実施形態では、更に以下の作用および効果を得ることができる。
【0055】
即ち、位置決め部材21を薄肉のシート状ステンレスにより構成する場合、図12(A)に示すように、保持部22A,22Bを除く部分を平坦な状態とすることは極めて困難であり、図示のように歪みが生じることは避けられない。このように位置決め部材21に歪みが生じていても、図12(B)に示す状態で球状スペーサ20上に第2装着パネル15を配置し、下向きに負荷を加えた状態で接合部14,18を接合することにより、真空断熱パネル10の製造には何ら問題はない。
【0056】
しかし、このようにして製造した真空断熱パネル10は、図10(B)に示すように、歪みにより第2装着パネル15に一部の保持部22A,22Bが接触した状態になる。これにより、位置決め部材21は、小開口部24A,24Bを上側に配置した状態、大開口部23を上側に配置した状態、開口部23,24A,24Bを横向きに配置した状態のいずれでも、歪みの矯正による弾性的な復元力や摩擦抵抗により、上下左右に移動不可能な状態をなす。
【0057】
その結果、第2装着パネル15と一部の保持部22A,22Bとの接触により、図10(A)に示すように、小開口部24A,24Bを上側に配置した状態では、第1および第2壁部12,16の双方向間の伝熱量が増えるかのように思われる。しかしながら、第2装着パネル15と保持部22A,22Bとは一部だけが接触した状態をなすうえ、本実施形態の真空断熱パネル10は、第2小開口部24Bとした第2保持部22Bのみが球状スペーサ20と接触した状態をなす。よって、全て直径D2の小開口部24の保持部22とした第1実施形態の位置決め部材21に歪みが生じている場合と比較すると、第1および第2壁部12,16の双方向の伝熱を更に確実に抑えることができる。
【0058】
なお、本発明の真空断熱構造体は、実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、前記実施形態では、全ての球状スペーサ20を1枚の位置決め部材21で位置決めしたが、2個以上の球状スペーサ20を位置決め可能とした複数の位置決め部材21によって、全て球状スペーサ20を位置決めする構成としてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、位置決め部材21に対して縦横に均等に配列して保持部22を設けたが、必ずしも平行かつ均等である必要はなく、特に加圧力が大きい部分が存在する場合には、その部分に多く配置する構成としてもよい。
【0061】
さらに、第4実施形態から第8実施形態の真空断熱パネル10では、第2実施形態と同様に金属箔28を配設する構成としてもよく、また、第3実施形態のように金属箔28と補強板29を配設する構成としてもよい。しかも、第7実施形態では、第5実施形態または第6実施形態のように規制部を設ける構成としてもよい。
【0062】
さらにまた、第8実施形態の第2保持部22Bは、凹部35を設けることにより直径D3の小開口部24Bを設ける構成に限られず、図13(A)に示すように、直径D3の真円形状をなす小開口部24Bとしてもよく、図13(B)に示すように、短径D3の楕円形状をなす小開口部24Bとしてもよい。
【0063】
また、前記各実施形態では、保持部22,22A,22Bを円錐筒状をなすように形成したが、平面視三角形状以上の多角錐筒状であってもよい。さらに、前記実施形態では、真空断熱パネル10の形状を平面視矩形状に形成したが、三角形状や五角形以上の多角形状でもよいうえ、円形状としてもよく、その形状は希望に応じて変更が可能である。
【0064】
そして、前記実施形態では、真空断熱構造体として真空断熱パネル10を用いて説明したが、魔法瓶、真空二重管、真空二重ジャケット、真空容器等の真空構造体にも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
10…真空断熱パネル(真空断熱構造体)
11…第1外装パネル
12…第1壁部
15…第2外装パネル
16…第2壁部
19…真空空間
20…球状スペーサ
21…位置決め部材
22,22A,22B…保持部
23…大開口部
24,24A,24B…小開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1壁部と、この第1壁部と所定間隔をもって位置する第2壁部とを備え、これら第1および第2壁部の間に、これらの対向面に接触する直径(d)の多数の球状スペーサを位置決め部材を介して配設するとともに、前記第1および第2壁部の間を密封して真空空間とした真空断熱構造体において、
前記位置決め部材は、前記球状スペーサの直径(d)より大きい寸法(D1)の大開口部と、前記球状スペーサの直径(d)より少なくとも一部が小さい寸法(D2)の小開口部とを有する多数の保持部を備え、
前記保持部は、前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記小開口部までの高さ(T1)が、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記小開口部より突出した頂部までの上側寸法(d1)より小さく、前記当接位置(P)から前記大開口部までの高さ(T2)が、前記球状スペーサの直径(d)から前記上側寸法(d1)を減算した下側寸法(d2)より小さく、前記第1および第2壁部のいずれにも固定されていないことを特徴とする真空断熱構造体。
【請求項2】
前記小開口部を、前記保持部の軸線に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項3】
前記位置決め部材の小開口部の側に、この小開口部が対向する壁部へ移動して干渉することを防止する規制部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項4】
前記規制部は、弾性的に変形可能な断熱材からなることを特徴とする請求項3に記載の真空断熱構造体。
【請求項5】
前記規制部は、前記位置決め部材の一部を切り起こして設けたものであることを特徴とする請求項3に記載の真空断熱構造体。
【請求項6】
一部の前記保持部の前記小開口部を、少なくとも一部が前記寸法(D2)より小さく、前記球状スペーサの頂部が突出可能な寸法(D3)としたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項1】
第1壁部と、この第1壁部と所定間隔をもって位置する第2壁部とを備え、これら第1および第2壁部の間に、これらの対向面に接触する直径(d)の多数の球状スペーサを位置決め部材を介して配設するとともに、前記第1および第2壁部の間を密封して真空空間とした真空断熱構造体において、
前記位置決め部材は、前記球状スペーサの直径(d)より大きい寸法(D1)の大開口部と、前記球状スペーサの直径(d)より少なくとも一部が小さい寸法(D2)の小開口部とを有する多数の保持部を備え、
前記保持部は、前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記小開口部までの高さ(T1)が、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記小開口部より突出した頂部までの上側寸法(d1)より小さく、前記当接位置(P)から前記大開口部までの高さ(T2)が、前記球状スペーサの直径(d)から前記上側寸法(d1)を減算した下側寸法(d2)より小さく、前記第1および第2壁部のいずれにも固定されていないことを特徴とする真空断熱構造体。
【請求項2】
前記小開口部を、前記保持部の軸線に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項3】
前記位置決め部材の小開口部の側に、この小開口部が対向する壁部へ移動して干渉することを防止する規制部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項4】
前記規制部は、弾性的に変形可能な断熱材からなることを特徴とする請求項3に記載の真空断熱構造体。
【請求項5】
前記規制部は、前記位置決め部材の一部を切り起こして設けたものであることを特徴とする請求項3に記載の真空断熱構造体。
【請求項6】
一部の前記保持部の前記小開口部を、少なくとも一部が前記寸法(D2)より小さく、前記球状スペーサの頂部が突出可能な寸法(D3)としたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−215293(P2012−215293A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63670(P2012−63670)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】
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