説明

真空装置及びその製造方法

【課題】真空装置の真空外囲器内を高真空状態に保持する。
【解決手段】真空装置は、気密に封止された真空外囲器2と、真空外囲器内を真空に吸引するために真空外囲器内と連通された排気管60とを備える。排気管は、小内径部60aと、小内径部に対して真空外囲器から遠い側に配置され且つ小内径部より大きな内径を有する大内径部60bとを備える。小内径部と大内径部とが隣接する位置にて、排気管が金属材料62により封止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の高真空に保たれた真空外囲器内に少なくとも1つの電極を備えた真空装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の高真空に保たれた真空外囲器内に少なくとも1つの電極と電子放出手段とを配置し、真空外囲器を貫通する導電体を介して真空外囲器外から電極に所定の電圧を印加することで、電子放出手段から放出される電子の量を制御して、所望の動作を行わせる真空装置が知られている。
【0003】
このような真空装置の動作としては、例えば入力された小さな電気信号を大きな電気信号に変換して出力するいわゆる増幅や、入射した光の明るさに応じた電気信号を出力したり、この逆に、入力された電気信号に応じて発光したりする光電変換などがある。一般に良く知られている陰極線管は、入力された電気信号を光に変換する動作を行う真空装置の代表例である。
【0004】
上記の真空装置の動作は、電子放出手段(以下「陰極」と称す)から真空外囲器内の空間に放出された電子によって行われる。陰極は電界により、または熱及び電界により電子を放出する。真空外囲器内の空間の真空度が低いと、真空外囲器内のガスの分子が陰極からの電子の放出を邪魔することにより、真空装置が所望の動作を行うことを妨げる場合がある。また、真空外囲器内のガスがイオンとなり、陰極周辺に形成された電界によって陰極に向かって加速され、陰極に衝突し、陰極の電子放出面を破壊してしまう場合もある。従って、真空装置の真空外囲器内の空間は残留ガスが極めて少ない高真空状態に保持されていることが望まれる。
【0005】
撮像管として動作する真空装置の真空外囲器内の空間を真空にして封止する従来の方法を図6を用いて説明する。
【0006】
低融点金属40を介して透光性基板3が封着された外囲器本体4内に、一対のサポートロッド11により一体化された陰極5及び複数の電極群10を挿入し、外囲器本体4とステム部8とを溶着して真空外囲器2を作成する。次いで、ステム部8に接続された排気管160を所定の容積を有するチャンバー71に接続する。チャンバー71は真空ポンプ70に接続されている。真空ポンプ70を駆動し、チャンバー71及び真空外囲器2内を真空に吸引(以下「真空引き」という)する。高真空度を得るために、一般的には真空ポンプ70としては粗引き用のロータリーポンプ(図示せず)と高真空用の拡散ポンプ等(図示せず)とが併用される。
【0007】
真空外囲器2内が目標とする真空度に達した後、排気管160を封止して真空外囲器2を密封するとともに、排気管160をチャンバー71から切り離す。これを行う方法として、排気管160の一部をバーナー175(又は電熱器等)で加熱し溶融させて、外界の空気が真空外囲器2内に入らないように切断して、真空外囲器2内を高真空状態に保持したまま排気管160を封止するとともにチャンバー71から分離す方法が知られている(特許文献1,2)。
【0008】
ところが、この方法は、排気管160を加熱し溶融する際に排気管160からガスが発生し、このガスが真空外囲器2内に拡散し、真空外囲器2内の真空度を劣化させてしまうという問題がある。
【0009】
この問題を解決する手段として、真空外囲器内にガスを吸着するガス吸着物質(ゲッター)設けることが一般的に行われている。ゲッターは真空外囲器内が真空引きされる前の大気圧の状態では不活性で、目標とする真空度に達した後、ある温度に加熱することにより活性化され、ガス吸着できる状態となる。即ち、ゲッター26を真空外囲器2内の適当な空いた空間に予め設けておき、所望の真空度に達した後にゲッター26を加熱して、真空外囲器2の内壁面に活性化されたゲッター物質からなる蒸着膜27を形成する。この蒸着膜27が排気管160を加熱して封止した際に発生したガスを吸着する。
【0010】
活性化されたゲッター物質を真空外囲器2の内壁面に蒸着膜27の形態で形成することにより、ゲッター物質の表面積が拡大するので、真空外囲器2内のガスを効率よく吸着することができる。
【0011】
ゲッター物質は、ジルコニウム、アルミニウム、バナジウム、鉄及び/又はチタンを含み、例えば、バナジウム、鉄、及びジルコニウムの合金として形成される場合もある。
【特許文献1】特開昭60−127635号公報
【特許文献2】実公昭50−6754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の従来の真空装置は以下の問題を有していた。一般に真空外囲器2の容積の大小に関わらず、排気管160の径は概略同じであるので、排気管160を加熱し溶融する際に発生するガスの絶対量も概略同じである。真空外囲器2の容積が小さい場合、真空外囲器2の容積に対するガスの発生量の割合が相対的に大きくなるので、ガス発生による真空外囲器2内の真空度の低下は顕著となる。更に、真空外囲器2の容積が小さい場合、真空外囲器2の内壁面において蒸着膜27を形成できる面積が制限されるので、蒸着膜27によるガス吸着量は少なくなる。従って、真空外囲器2の容積が小さいほど、真空外囲器2内を高真空状態に保持することが困難になるという問題がある。真空外囲器2内の真空度が低下すると、陰極からの電子の放出が妨げられたり、イオン衝突により陰極の電子放出面が破壊されたりして、真空装置に所望の動作を行わせることが困難になる。
【0013】
本発明は、真空外囲器内を高真空状態に保持することができる真空装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の真空管装置は、気密に封止された真空外囲器と、前記真空外囲器内に配置された少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極と前記真空外囲器外との電気的導通を確保するために前記真空外囲器を貫通する少なくとも1つの導電体と、前記真空外囲器内を真空に吸引するために前記真空外囲器内と連通された排気管とを備える。
【0015】
前記排気管は、小内径部と、前記小内径部に対して前記真空外囲器から遠い側に配置され且つ前記小内径部より大きな内径を有する大内径部とを備え、前記小内径部と前記大内径部とが隣接する位置にて、前記排気管が金属材料により封止されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の真空装置の製造方法は、気密に封止された真空外囲器と、前記真空外囲器内に配置された少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極と前記真空外囲器外との電気的導通を確保するために前記真空外囲器を貫通する少なくとも1つの導電体と、前記真空外囲器内を真空に吸引するために前記真空外囲器内と連通された排気管とを備えた真空装置であって、前記排気管は、小内径部と、前記小内径部に対して前記真空外囲器から遠い側に配置され且つ前記小内径部より大きな内径を有する大内径部とを備え、前記排気管が金属材料により封止されている真空装置の製造方法であって、前記排気管を介して前記真空外囲器内を真空に吸引する工程と、前記真空外囲器内を真空に維持したまま、前記排気管内に前記大内径部側から前記小内径部側に向かって金属材料を挿入して、前記小内径部と前記大内径部とが隣接する位置にて前記排気管を前記金属材料により封止する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、真空装置の真空外囲器内を所望する真空度まで真空引きした後、真空外囲器に連通された排気管を加熱し溶融させることなく、排気管を封止することができる。従って、排気管を加熱し溶融させることにより排気管からガスが発生して真空外囲器内を高真空に保持することができないという従来の課題を解決することができる。かくして、真空外囲器内を高真空状態に保持することができ、陰極からの電子ビーム放出が妨げられることがなく、所望する動作を安定して行わせることができる真空装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記の本発明の真空装置において、前記排気管の内径は、前記小内径部と前記大内径部との間で階段状に変化していることが好ましい。これにより、階段状の段差を利用して金属材料を塑性変形させることができるので、効率よく且つ確実に排気管を封止することができる。
【0019】
また、前記金属材料がインジウムからなることが好ましい。インジウムは常温で柔らかく、圧力を加えると容易に塑性変形するので、排気管を効率よく封止することが出来る。
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、撮像管として動作する本発明の実施の形態1に係る真空装置を示した断面図である。
【0022】
この真空装置は、筒状の外囲器本体4と、外囲器本体4の一方の開口端に例えばインジウム等の封着用低融点金属40を介して封着された透光性基板3と、外囲器本体4の他方の開口端に溶着されたガラス製のステム部8とからなり、内部空間が高真空状態に保たれた真空外囲器2を備えている。透光性基板3の内面には、透光性導電膜22及び光電変換膜23が順に積層されてなる光電変換ターゲット7が形成されている。光電変換ターゲット7は、外部からの入射光1に応じて信号電荷を発生し蓄積する。真空外囲器2内には、光電変換ターゲット7に空間分布的に蓄積された信号電荷を時系列電気信号として読み出すための電子ビーム30を放出する陰極5と、陰極5から放出された電子ビームを光電変換ターゲット7上にほぼ集束させるための複数の電極群10とが封入されている。陰極5及び複数の電極群10はガラス製の一対のサポートロッド11により一体化され保持されている。陰極5及び複数の電極群10に所定の電圧を与えるための複数の金属製ステムピン9がステム部8を気密に貫通している。図示しない複数の棒状の金属部材により、陰極5及び複数の電極群10と複数のステムピン9とが電気的に接続されており、且つ、一対のサポートロッド11により一体化された陰極5及び複数の電極群10がステムピン9に支持されている。
【0023】
陰極5から放出された電子ビームを効果的に光電変換ターゲット7に到達させ、且つ真空外囲器4内に存在する迷走電子、余剰電子および残留ガスイオンなどによって陰極5が損傷するのを防ぐためのシールド−グリッド電極20が、陰極5と透光性基板3との間に、透光性基板3に対して対向し且つ所定の距離を隔てて配置されている。
【0024】
真空外囲器2内を高真空状態に保持するためのゲッター26が外囲器本体4の内壁近傍に配置されている。真空外囲器2内を真空引きした状態で、ゲッター26を加熱して外囲器本体4の内壁に活性化されたゲッター物質からなる蒸着膜27を形成する。蒸着膜27は、真空外囲器2内に残留しているガスを吸着し、真空外囲器2内を高真空状態に保持することができる。
【0025】
透光性基板3としては、公知の基板材料を撮像する光の波長に応じて選択して用いれば良く、例えば可視光撮像の場合ガラス基板が用いられ、紫外光撮像の場合サファイヤや石英ガラスが用いられ、またX線撮像の場合にはBe,Al,Ti,BNなどが用いられる。
【0026】
透光性導電膜22としては、真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成された、例えばSnO2膜やITO膜などの金属薄膜を用いることができる。
【0027】
光電変換膜23は光を透過しない不透膜であり、従来から一般に知られているPbO,Sb23,Sc,Si,Cd,Zn,As,Teなどからなる半導体材料を真空蒸着法などで形成することができる。
【0028】
透光性導電膜22に所定の電圧を供給するためにリードピン24が透光性基板3を貫通している。リードピン24は超音波はんだ加工法等により透光性導電膜22と電気的導通が確保されていると共に真空外囲器2の高真空気密状態を保っている。
【0029】
陰極5から放出された電子ビーム30は、所定の電圧が印加された複数の電極群10によって加速され、複数の電極群10に形成された電子ビーム通過孔を通って光電変換ターゲット7に向かって進行する。また、複数の電極群10が互いに対向して配置され、且つこれらに所定の電圧が印加されることで、隣り合う電極間に電子レンズが形成される。この電子レンズが、光電変換ターゲット7上で電子ビーム30をほぼ集束させる。
【0030】
外囲器本体4の外側には偏向コイル50が設けられている。電子ビーム30は偏向コイル50によって偏向され、光電変換ターゲット7上を走査する。入射光量に応じて光電変換膜23の膜中に発生し蓄積された信号電荷は、電子ビーム30によってリードピン24を介して時系列的に真空装置外に読み出される。かくして、入射光量の空間的分布に対応した電気信号が得られる。
【0031】
ステム部8のほぼ中央には、真空装置の製造過程において真空外囲器2内を真空引きするために、真空外囲器2内と連通された排気管60が設けられている。
【0032】
排気管60の内径は一定ではなく、排気管60は、相対的に小さな内径Diを有する小内径部60aと、Diよりも大きな内径Doを有する大内径部60bとを備える。大内径部60bは小内径部60aに対して真空外囲器2から遠い側に配置されている。大内径部60bと小内径部60aとの間には、内径Doから内径Diへと内径が階段状に変化することにより生じた段差部61が排気管60の内壁面に形成されている。
【0033】
大内径部60bと小内径部60aとが隣接する位置、即ち段差部61の近傍にて、排気管60は例えばインジウム等の低融点金属62により気密に封止されている。
【0034】
本実施の形態に係る真空装置の製造方法を図2及び図3を用いて説明する。
【0035】
図2に示すように、透光性基板3が封着された外囲器本体4内に、一対のサポートロッド11により一体化された陰極5及び複数の電極群10を挿入し、外囲器本体4とステム部8とを溶着する。ステム部8に接続された排気管60を所定の容積を有するチャンバー71に接続する。チャンバー71は真空ポンプ70に接続されている。
【0036】
チャンバー71は、排気管60の中心軸の延長線上の下方に、低融点金属62を保持した棒状部材72と、チャンバー71内の真空雰囲気を維持したまま棒状部材72を前記延長線に沿って突き上げる駆動機構73とを備えている。低融点金属62の外径Dmは、排気管60の大内径部60bの内径Doよりも小さく、小内径部60aの内径Diよりも大きい。
【0037】
この状態で真空ポンプ70を駆動し、チャンバー71及び真空外囲器2内を真空引きする。真空外囲器2内が目標とする真空度に達した後、ゲッター26を、例えば高周波誘導加熱等の方法により加熱し、外囲器本体4の内壁に活性化されたゲッター物質からなる蒸着膜27を形成する。ゲッター26を加熱する際にガスが発生するため、蒸着膜27の形成直後は一時的に真空外囲器24内の真空度が低下する。従って、蒸着膜27の形成後、再度、目標とする真空度に達するまで真空引きを継続する。
【0038】
蒸着膜27の形成後に真空外囲器2内が目標とする真空度に達した後、図3に示すように、駆動機構73を駆動して棒状部材72を突き上げて低融点金属62を排気管60内に挿入する。
【0039】
低融点金属62は、排気管60の内壁面に形成された段差部61に当接し、更に上方に突き上げられることにより排気管60の段差部61周辺の内壁形状に沿って塑性変形して、排気管60を気密に封止する。低融点金属62は非常にやわらかいので、所定の圧力で排気管60の段差部61に押し付けられることにより容易に塑性変形して、段差部61近傍の排気管60の内壁面に密着する。従って、真空外囲器2内を良好な高真空状態に保持し続けることが可能となる。
【0040】
その後、排気管60内に低融点金属62を残したまま棒状部材72を排気管60から抜き取り、排気管60をチャンバー71から分離し、機械的手法等により排気管60を切断する。かくして、図1に示したような内部が高真空状態に保持された真空装置が得られる。
【0041】
(実施の形態2)
図4を用いて本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態1と機能及び構造が同一と見なせる部分については、実施の形態1と同一の符号を付与して、それらについての重複する説明を省略する。
【0042】
実施の形態1と同様に、排気管60の内径は一定ではなく、排気管60は、相対的に小さな内径Diを有する小内径部60aと、Diよりも大きな内径Doを有する大内径部60bとを備える。大内径部60bは小内径部60aに対して真空外囲器2から遠い側に配置されている。但し、実施の形態1と異なり、大内径部60bと小内径部60aとの間には、内径Doから内径Diへと内径がなだらかに変化することにより生じた漏斗状部63が排気管60の内壁面に形成されている。また、排気管60を気密に封止する低融点金属62の排気管60への挿入前の形状は、排気管60の漏斗状部63の形状に沿うようにその挿入方向先端は面取りされている(即ち、略円錐台形状に形成されている)。
【0043】
本実施の形態2の真空装置の製造方法は、実施の形態1のそれと同様である。即ち、排気管60をチャンバー71に接続し、真空ポンプ70を駆動して、チャンバー71及び真空外囲器2内を真空引きする。真空外囲器2内が目標とする真空度に達した後、ゲッター26を加熱し、外囲器本体4の内壁に活性化されたゲッター物質からなる蒸着膜27を形成する。その後、再度、目標とする真空度に達するまで真空引きを継続する。
【0044】
真空外囲器2内が目標とする真空度に達した後、駆動機構73を駆動して棒状部材72を突き上げて低融点金属62を排気管60内に挿入する。低融点金属62は、排気管60の内壁面に形成された漏斗状部63に当接し、更に上方に突き上げられることにより排気管60の漏斗状部63周辺の内壁形状に沿って塑性変形して、排気管60を気密に封止する。
【0045】
その後、排気管60内に低融点金属62を残したまま棒状部材72を排気管60から抜き取り、排気管60をチャンバー71から分離し、機械的手法等により排気管60を切断する。かくして、内部が高真空状態に保持された真空装置が得られる。
【0046】
(実施の形態3)
図5を用いて本発明の実施の形態3を説明する。実施の形態1,2と機能及び構造が同一と見なせる部分については、実施の形態1,2と同一の符号を付与して、それらについての重複する説明を省略する。
【0047】
実施の形態1,2に示した真空装置の製造方法では、真空ポンプ70が接続された所定の容積を有するチャンバー71に排気管60を接続して排気管60の封止を行った。これに対して、本実施の形態3では、真空ポンプ70に接続されたチャンバー75内に真空装置全体を収納した状態で排気管60を封止する。
【0048】
即ち、透光性基板3が封着された外囲器本体4内に、一対のサポートロッド11により一体化された陰極5及び複数の電極群10を挿入し、外囲器本体4とステム部8とを溶着する。このようにして得た、排気管60が未封着の真空装置を、チャンバー75内に設けられた保持機構80を用いてチャンバー75内に保持する。チャンバー75は、排気管60の中心軸の延長線上の下方に、低融点金属62を保持した棒状部材72と、チャンバー75内の真空雰囲気を維持したまま棒状部材72を前記延長線に沿って突き上げる駆動機構73とを備えている。
【0049】
この状態で真空ポンプ70を駆動してチャンバー75内を真空引きすると、排気管60を介して真空外囲器2内もチャンバー75内と同圧に真空引きされる。真空外囲器2内が目標とする真空度に達した後、ゲッター26を加熱し、外囲器本体4の内壁に活性化されたゲッター物質からなる蒸着膜27を形成する。その後、再度、目標とする真空度に達するまで真空引きを継続する。
【0050】
真空外囲器2内が目標とする真空度に達した後、駆動機構73を駆動して棒状部材72を突き上げて低融点金属62を排気管60内に挿入する。低融点金属62は、排気管60の内壁面に形成された段差部61に当接し、更に上方に突き上げられることにより、実施の形態1と同様に排気管60を気密に封止することができる。その後、排気管60内に低融点金属62を残したまま棒状部材72を排気管60から抜き取り、チャンバー75内の圧力を大気圧に戻して、真空装置をチャンバー75から取り出す。最後に、機械的手法等により排気管60を切断することで真空装置を得る。
【0051】
実施の形態3では、排気管60の内壁形状及び低融点金属62が実施の形態1と同様である場合を説明したが、実施の形態2と同様である場合にも本実施の形態3を適用することができる。
【0052】
上記の実施の形態1〜3では、真空装置が撮像管である場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、排気管を備える真空装置であれば、真空装置の動作、用途、形状、大きさなどにかかわらず適用することができ、上記と同様の効果を得ることが出来る。
【0053】
上記の実施の形態1〜3では、排気管60を封止する金属材料としてインジウムなどの低融点金属62を用いた場合を説明したが、本発明ではインジウム以外の低融点金属を用いることもできる。また、インジウムなどに比べて高融点を有する金属材料であっても使用可能である。例えば棒状部材72で保持された半田を軟化点まで加熱して排気管60内に挿入して突き上げることにより、上記と同様に排気管60を気密に封止することができ、上記と同様の効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、真空装置の真空外囲器内を所望する高真空状態に保持した状態で真空外囲器を気密に封止することができ、真空外囲器内の残留ガスが極めて少なく陰極からの電子ビーム放出が妨げられることがない。従って、安定して動作する真空装置として広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る真空装置を示した断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る真空装置の製造方法の一工程を示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る真空装置の製造方法の一工程を示した断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係る真空装置の製造方法の一工程を示した断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態3に係る真空装置の製造方法の一工程を示した断面図である。
【図6】図6は、真空装置の従来の製造方法を示した断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 入射光
2 真空外囲器
3 透光性基板
4 外囲器本体
5 陰極
8 ステム部
7 光電変換ターゲット
9 ステムピン
10 複数の電極群
11 サポートロッド
20 シールド−グリッド電極
22 透光性導電膜
23 光電変換膜
24 リードピン
26 ゲッター
27 蒸着膜
30 電子ビーム
40 低融点金属
50 偏向コイル
60 排気管
61 段差部
60a 小内径部
60b 大内径部
62 低融点金属(金属材料)
63 漏斗状部
70 真空ポンプ
71 チャンバー
72 棒状部材
73 駆動機構
75 チャンバー
80 保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密に封止された真空外囲器と、前記真空外囲器内に配置された少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極と前記真空外囲器外との電気的導通を確保するために前記真空外囲器を貫通する少なくとも1つの導電体と、前記真空外囲器内を真空に吸引するために前記真空外囲器内と連通された排気管とを備えた真空装置であって、
前記排気管は、小内径部と、前記小内径部に対して前記真空外囲器から遠い側に配置され且つ前記小内径部より大きな内径を有する大内径部とを備え、
前記小内径部と前記大内径部とが隣接する位置にて、前記排気管が金属材料により封止されていることを特徴とする真空装置。
【請求項2】
前記排気管の内径は、前記小内径部と前記大内径部との間で階段状に変化している請求項1に記載の真空装置。
【請求項3】
前記金属材料がインジウムからなる請求項1又は2に記載の真空装置。
【請求項4】
気密に封止された真空外囲器と、前記真空外囲器内に配置された少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極と前記真空外囲器外との電気的導通を確保するために前記真空外囲器を貫通する少なくとも1つの導電体と、前記真空外囲器内を真空に吸引するために前記真空外囲器内と連通された排気管とを備えた真空装置であって、前記排気管は、小内径部と、前記小内径部に対して前記真空外囲器から遠い側に配置され且つ前記小内径部より大きな内径を有する大内径部とを備え、前記排気管が金属材料により封止されている真空装置の製造方法であって、
前記排気管を介して前記真空外囲器内を真空に吸引する工程と、
前記真空外囲器内を真空に維持したまま、前記排気管内に前記大内径部側から前記小内径部側に向かって金属材料を挿入して、前記小内径部と前記大内径部とが隣接する位置にて前記排気管を前記金属材料により封止する工程と
を備えることを特徴とする真空装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属材料がインジウムからなる請求項4に記載の真空装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate