説明

真菌免疫調節タンパク質の使用

【課題】本発明は、免疫治療または血中グルコースの減少のための、
配列番号1
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AVSGRNLGVKPSYAVESDGSQKVNFLEYNSGYGIADTNTIQVFVVDPDTNND
FIIAQWN
または
配列番号3
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IAEWKKT
のアミノ酸を有する真菌免疫調節タンパク質の使用に関する。
【解決手段】前記本発明の使用は、Ganoderma種、Flammulina velutipes、または組換え微生物(例えば、組換えEscherichia coli または酵母)より得られ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫治療または血中グルコースの減少における真菌免疫調節タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Ganodermaは漢方薬における希少及び高価な薬草である。中国では5000年に亘って「霊芝(Ling Zhi)」として知られている。G. lucidum(赤色)、G. applanatum(茶色)、G. tsugae(赤色)、G. sinense(黒色)、及びG. oregonense(暗茶色)を含む、各種のGanodermaが存在する。
【0003】
霊芝は抗アレルギー作用(Chen H.Y et al., J. Med. Mycol.1992; 33:505-512)、肝保護作用(Lin J.M. et al., Am J Chin Med. 1993;21(1):59-69)、及び抗ガン作用(Wasser SP, Crit Rev Immunol 1999. 19:65-96)、並びに免疫効果(Kino, J Biol. Chem. 1989. 264(1) : 472-8)を有することが知られている。しかしながら、霊芝は原料の抽出物(Horner W.E. et al.,Allergy 1993; 48:110-116)または小分子(Kawagishi H., et al., Phytochemistry1993; 32: 239-241)の形態で制限されて使用されている。
【0004】
Ganoderma Lucidium (Ling zhi or Reishi),Volvariella Volvacea (Chinese Mushroom), Flammulina Velutipes (Golden needle mushroom)のような食用の真菌由来の幾つかのタンパク質は、類似のアミノ酸配列及び免疫調節機能を共有する。これらのタンパク質は、真菌免疫調節タンパク質(FIP)と名付けられた(Ko J.L., Eur.J. Biochem. 1995; 228:224-249)。
【0005】
Lin et al.はFIP-gtsと名付けられたGanoderma tsugaeの菌糸由来の免疫調節タンパク質を精製した( Lin, W.H., et al., J Biol Chem. 1997. 272, 20044-20048.)。Ganoderma tsugaeの子実体で認められるFIP-gtsは免疫調節作用を有さない;菌糸で認められるタンパク質のみ前記作用を有する。クローニング後に、FIP-gtsのDNA配列はGanoderma lucidiumのLZ-8の配列と一致することが認められた。双方のタンパク質が同一の免疫活性を示し、それらが同一のタンパク質であることを示した。
【0006】
Garnier分析を使用して二次構造を分析すると、FIP-gtsは2つのαへリックス、7つのβシート、及び1つのβターンを有することが予測された。TIP-gtsの分子量はSDS-PAGE分析を使用して、13kDであると決定された。アミノ酸に20μMのグルタルアルデヒドを結合させて(タンパク質結合体)、FIP-gtsは26kDのホモダイマーを形成することが認められた。
【0007】
さらに、芽球化刺激活性アッセイ(BFSA)によって3つの真菌タンパク質を発見した。Ganoderma lucidiumで発見されたタンパク質以外に、Flammulina velutipes及びVolvariella volvaceaで発見された血液凝固タンパク質が部分的に免疫調節活性を有する。それらの分子量は約13kDであり、それらのいずれもヒスチジン、システイン、またはメチオニンを含有しない。それらは、炭化水素に結合されるレクチンの一種である。
【0008】
ナチュラルキラー(NK)細胞は死をもたらすリンパ球のさらに他のタイプである。細胞傷害性T細胞のように、それらは強力な化学物質で満たされた顆粒を含有する。それらは、細胞傷害性T細胞とは異なり、作用する前に特異的な抗体を認識する必要がないことから「ナチュラル」キラーと称される。それらはガン細胞を標的とし、広範な感染性の微生物に対して保護する。AIDSを含む幾つかの免疫不全疾患では、ナチュラルキラー細胞の機能が異常である。ナチュラルキラー細胞は、高レベルの有力なリンホカインを分泌することによって、免疫調節に関与する可能性もある。
【0009】
細胞傷害性T細胞とナチュラルキラー細胞の双方が接触して死滅させる。前記キラー細胞はその標的に結合して、その武器を向け、次いで標的細胞の膜に穴を生じさせる化学物質の致死性のバーストを提供する。流動体が浸透及び放出し、前記細胞が破裂する。
【0010】
最近まで、免疫-抗ガン治療は3つの形態:手術、化学療法、照射からなった。しかしながら、これらの形態の全てにおいて、結果として生じる副作用が頻繁に起こり、有害であった。かくして、これら3つの形態はガン患者、特にガンの末期の患者にとって最善の方法ではない。例えば、過量の化学療法及び照射は実際に有害であることが証明されており、生命を短くするであろう。
【0011】
しかしながら、近年では、第4の抗ガン免疫治療が一般的になっている。この第4の方法は、実際に患者の自己の自然な抗ガン免疫力を強化する。この第4の方法は、身体の中で最も強力であり、最も効果的な免疫細胞である、身体の自己のNK(ナチュラルキラー)細胞を使用する。キラーT細胞よりも約50,000倍強力である。このNK免疫治療は間違いなく将来には更に一般的になるであろう。
【0012】
NK細胞は固有の免疫系の重要な構成因子であり、特定のウイルス、細胞内バクテリア、及び形質転換された細胞に対する監視を提供する(Trinchieri G. Adv Immunol 1989; 47:187-376.; French AR, Yokoyama WM. Curr Opin Immunol 2003; 15:45-51.; Smyth MJ et al., Nat Immunol 2001; 2:293-9.)。NK細胞は細胞仲介性細胞傷害を実施し、各種のサイトカイン(例えば、IFNg、GM-CSF、及びTNF-h)及びケモカイン(例えば、MIP-1ファミリー及びRANTES)の放出を通じて、先天性及び適応性の免疫反応の間の架け橋として有効である(Biron CA. Curr Opin Immunol 1997; 9:24-34.; Biron CA et al., Annu Rev Immunol 1999; 17:189-220.)。T細胞とは異なり、ウイルス感染細胞または悪性形質転換細胞を殺滅するNK細胞は事前の感作を必要とせず、MHC制限に依存しないため、NK細胞は悪性のガン、特に造血細胞起源の悪性のガンの適応性移植治療の有力な候補として考えられている(Robertson MJ, Ritz J. Blood 1990; 76:2421-38.)。変化されたMHCクラスI抗原を発現または欠失しているガン細胞は細胞傷害性CD8+T細胞による検出から逃れるが、それらはNK細胞によって排除されやすいであろう。しかしながら、悪性の細胞は通常、MHCクラスI分子の下方調節によって免疫認識を避けること、Fas-Lの発現の増大によって反応性リンパ球を殺滅すること、及びTGF-hのような抑制性サイトカインの生産を含む、宿主の免疫学的監視を妨げる発達した戦略を有している(Garcia-Lora A et al., J Cell Physiol 2003; 195:346-55.; Kim R et al., Cancer 2004; 100:2281-91.)。そのため、適応性免疫が「アネルギー」または「耐性」の状態である間の悪性のガンの発達を制限する宿主の能力を増大するためにNK細胞の動員は重要である。
【0013】
マクロファージ及び好中球の双方はガンの発達に対する英雄及び悪役として考えられ得る。これらの細胞はガン細胞のファゴサイトーシス、及びガン細胞に対して抗体依存性の細胞性細胞傷害(ADCC)を実施すること、並びにガン増殖阻害サイトカインを分泌することが可能である(Marek Jakobisiak et al., Immunology Letters December 15, 2003 pp: 103-122)。
【0014】
最近では、薬草治療が悪性疾患に対する代替的な治療として考えられてきている(Eisenberg DM, et al., Jama 1998; 280(18):1569-1575.; Risberg T, et al., J Clin Oncol 1998; 16(1):6-12.)。これらの治療では、医薬用キノコが世界中で民間薬において長い間使用されており、アジアでは担子菌類のキノコであるGanoderma tsugae(G. tsugae)が最も一般的な化学予防キノコの1つである。多くの生物学的活性を有する成分は、子実体、菌糸、胞子、及び培養媒体を含む、このキノコの異なる部位より同定されている。
【0015】
生物学的活性を有する成分の2つの主なカテゴリーはポリサッカリドとトリテルペンである。G. lucidumは、免疫調節機構を介してin vitro及びin vivoにおける抗ガン作用を持つポリサッカリドを有する(Wang SY, et al., Int J Cancer 1997; 70(6):699-705.)。数人の研究者によって、トリテルペンは一般的に抗酸化 (Zhu M, Chang Q, et al., Phytother Res 1999; 13(6):529-531.)、肝保護 (Kim DH, et al., Biol Pharm Bull 1999; 22(2):162-164.)、及び抗高血圧 (Kabir Y, et al., J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) 1988; 34(4):433-438.)の生物学的活性を有することが報告されている。最近では、Ganoderma spp由来のガン細胞に対する細胞傷害活性が報告されている。あるGanoderma tsugaeのトリテルペンが、ヒト肝臓ガン細胞Hep3B細胞の細胞アポトーシス及び細胞周期の停止を誘導することが発見されたが、その分子機構は調べられていない(Gan KH, et al., J Nat Prod 1998; 61(4):485-487)。
【0016】
テロメラーゼは、テロメアDNAの合成及び伸長を触媒する細胞内の逆転写酵素である(Greider CW, et al., Nature 1989; 337(6205):331-337.)。この酵素は最も悪性のガンにおいて特異的に活性化されるが、通常の身体の細胞では普通は不活性状態であり、結果としてテロメアが通常の細胞の細胞分裂の間に徐々に短くなる(Kim NW, et al., Science 1994; 266(5193):2011-2015.)。細胞は分裂的な老化を克服するためにテロメアの安定性を維持する機構を必要とするため、90%より多くのヒトのガン細胞がin vivoにおいてテロメラーゼ活性の存在を示すように、テロメラーゼの活性化は細胞の不滅化及びガンの発生において律速段階または重要な段階である可能性がある(Harley CB et al., Curr Opin Genet Dev 1995; 5(2):249-255.)。リボヌクレオタンパク質複合体として、ヒトのテロメラーゼは2つの主要なサブユニットからなる。それらは、各々hTRとhTERT遺伝子にコードされるRNA鋳型と逆転写酵素サブユニットである。興味深いことに、テロメラーゼ活性を有さない肺ガン患者はテロメラーゼ活性を有する患者よりも有意に良好な予後で生存する(Wu TC, et al., Lung Cancer 2003; 41(2):163-169.)。このことは、テロメラーゼ活性が肺ガン患者において重要な予後因子であることを示す。
【非特許文献1】Chen H.Y et al., J. Med. Mycol.1992; 33:505-512
【非特許文献2】Lin J.M. et al., Am J Chin Med. 1993;21(1):59-69
【非特許文献3】Wasser SP, Crit Rev Immunol 1999. 19:65-96
【非特許文献4】Kino, J Biol. Chem. 1989. 264(1) : 472-8
【非特許文献5】Kawagishi H., et al., Phytochemistry1993; 32: 239-241
【非特許文献6】Ko J.L., Eur.J. Biochem. 1995; 228:224-249
【非特許文献7】Lin, W.H., et al., J Biol Chem. 1997. 272, 20044-20048.
【非特許文献8】Trinchieri G. Adv Immunol 1989; 47:187-376.
【非特許文献9】French AR, Yokoyama WM. Curr Opin Immunol 2003; 15:45-51.
【非特許文献10】Smyth MJ et al., Nat Immunol 2001; 2:293-9.
【非特許文献11】Biron CA. Curr Opin Immunol 1997; 9:24-34.
【非特許文献12】Biron CA et al., Annu Rev Immunol 1999; 17:189-220.
【非特許文献13】Robertson MJ, Ritz J. Blood 1990; 76:2421-38.
【非特許文献14】Garcia-Lora A et al., J Cell Physiol 2003; 195:346-55.
【非特許文献15】Kim R et al., Cancer 2004; 100:2281-91.
【非特許文献16】Marek Jakobisiak et al., Immunology Letters December 15, 2003 pp: 103-122
【非特許文献17】Eisenberg DM, et al., Jama 1998; 280(18):1569-1575.
【非特許文献18】Risberg T, et al., J Clin Oncol 1998; 16(1):6-12.
【非特許文献19】Wang SY, et al., Int J Cancer 1997; 70(6):699-705.
【非特許文献20】Zhu M, Chang Q, et al., Phytother Res 1999; 13(6):529-531.
【非特許文献21】Kim DH, et al., Biol Pharm Bull 1999; 22(2):162-164.
【非特許文献22】Kabir Y, et al., J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) 1988; 34(4):433-438.
【非特許文献23】Gan KH, et al., J Nat Prod 1998; 61(4):485-487
【非特許文献24】Greider CW, et al., Nature 1989; 337(6205):331-337.
【非特許文献25】Kim NW, et al., Science 1994; 266(5193):2011-2015.
【非特許文献26】Harley CB et al., Curr Opin Genet Dev 1995; 5(2):249-255.
【非特許文献27】Wu TC, et al., Lung Cancer 2003; 41(2):163-169.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、免疫治療または血中グルコースの減少のための、
配列番号1
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または
配列番号3
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のアミノ酸配列を有する真菌免疫調節タンパク質の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
他に規定されない限り、本明細書で使用されるいかなる技術用語及び科学用語も、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同一な意味を有する。本明細書で記載される物と類似または同等の任意の方法または物質が本発明の実施または試験において使用されて良いが、好ましい方法及び物質が記載される。本発明の目的のために、以下の用語を下に規定する。
【0019】
本発明は、免疫治療のための、
配列番号1
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配列番号3
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のアミノ酸配列を有する真菌免疫調節タンパク質の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
前記本発明の使用は、Ganoderma種、Flammulina velutipes、または組換え微生物(例えば、組換えEscherichia coli または酵母)より得られるであろう。Ganoderma種の好ましい実施態様はGanoderma tsugaeである。
【0021】
本発明の使用は、ガン患者の痛みまたは副作用を緩和するアジュバントとして適用され得るであろう。
【0022】
免疫治療のための本発明の使用は免疫学的機能の刺激または活性化に関する。
【0023】
したがって、本発明の免疫学的機能は、ナチュラルキラー細胞の活性化、マクロファージの活性化、及び血清の抗体の増殖からなる群より選択される機構によって作り出される。本発明の機能の好ましい実施態様は、ナチュラルキラー細胞の活性化及びテロメラーゼの阻害によって作り出される。
【0024】
本発明の真菌免疫調節タンパク質は経口投与される、経口用溶液、経口用サッシェ、経口用錠剤、または経口用ペレットからなる剤形として設計されて良い。
【0025】
本発明のFIP-gtsのcDNA配列は、抗ガン作用を示すLZ-8(配列番号1)と一致することを示した。FIP-gtsで処理されたガン細胞が生存度の減少を示すことも開示されており、FIP-gtsの抗ガン剤としての利用を示した。
【0026】
本発明のFIP-gtsで処理されたガン細胞がMMP-2発現の減少を示すことを明らかにした。MMP-2はガン細胞の転移に関与する重要な酵素である。MMP-2の抑制は、FIP-gtsがガン細胞の転移を抑制する指標である。
【0027】
用語「免疫治療」は免疫学的機能(例えば、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージの活性化、またはサイトカイン、血清のTgG若しくはIgM抗体の生産の増大)を刺激または活性化することであるが、それらに限らない。
【0028】
本発明の真菌免疫調節タンパク質が治療するであろうガンは、肺ガン、骨ガン、乳ガン、肝細胞ガン、非小肺細胞ガン、卵巣ガン、及び胃腸のガンからなる群より選択される。
【0029】
他の実施態様では、本発明に係るFIP-gtsは抗ガン剤または検出可能なラベルと融合されるであろう。このことによって、FIP-gtsが前記剤または検出可能なラベルの標的をガン細胞にすることができ、それによりガンを損傷/破壊または検出することができる。かくして、前記FIP-gtsは、化学療法または手術(例えば、放射免疫誘導手術、RIGS)によるヒトまたは動物の体の治療方法、またはヒトまたは動物の体に対して実施される診断方法における使用に適切である。特に、前記FIP-gtsはガンの手術または治療による処理、またはガンの診断における使用に適切である。
【0030】
前記FIP-gtsに結合された抗ガン剤は、FIP-gtsが結合するガンを破壊または損傷する、またはFIP-gtsが結合する細胞の環境においてガンを破壊または損傷する任意の剤であって良い。例えば、前記抗ガン剤は化学療法剤若しくは放射性同位体、プロドラッグを活性化する酵素、またはサイトカインのような毒性の剤であって良い。
【0031】
適切な化学療法剤は当業者に既知であり、アントラサイクリン(例えば、ダウノマイシン及びドクソルビシン)、メトトレクセート、ビンデシン、ネオカルジノスタチン、シスプラチン、クロラムブシル、サイトカインアラビノシド、5-フルオロウリジン、メルファラン、リシン、及びカリケアミシンを含む。
【0032】
抗ウイルス剤としての使用に適切な放射性同位体は当業者に既知である。
【0033】
前記FIP-gtsに結合される抗ガン剤はプロドラッグを活性化する酵素であっても良い。このことは、不活性のプロドラッグの活性化によりその活性な細胞傷害性の形態を標的とする部位で可能にする。医学的な実施において、前記FIP-gts-酵素複合体が患者に投与されて良く、治療されるガンの領域に集中させて良い。次いで、前記プロドラッグは患者に投与されて、細胞傷害性の薬剤への変化がガン細胞の領域に集中し、集中した酵素の作用下で治療される。
【0034】
したがって、本発明は、本発明の有効量のポリペプチドバリアントまたはフラグメントを患者に投与する工程を含む、その様な治療の必要がある患者の免疫治療における使用のための方法も提供する。
【0035】
前記FIP-gtsに結合される検出可能なラベルは単寿命な放射性同位体、例えば111In、125I、または99mTcのような部位を画像化するための造影剤であって良い。
【0036】
検出可能なラベルを含有する本発明に係るFIP-gtsは診断に有用であるのに加え、RIGSに有用である。RIGSはラベル化したタンパク質を患者に投与する工程、及びその後に前記タンパク質が結合した任意の組織を手術で除去する工程を含む。かくして、ラベル化FIP-gtsが組織に対する手術を誘導する。
【0037】
現在、テロメラーゼ阻害の研究は、(1) 核であるテロメラーゼの構成要素を直接標的とする (Kondo S, et al., Oncogene 1998; 16(25):3323-3330.; Hahn WC, et al., Nat Med 1999; 5(10):1164-1170.); (2) テロメラーゼの標的化 (Rezler EM, et al., Curr Opin Pharmacol 2002; 2(4):415-423.; Zhang RG, et al., Cell Res 2002; 12(1):55-62.); (3) テロメラーゼインヒビターとしての天然成分及び小分子 (Lyu SY, et al., Arch Pharm Res 2002; 25(1):93-101.; Naasani I, et al., Biochem Biophys Res Commun 1998; 249(2):391-396.) 及び(4) テロメラーゼの調節機構の妨害 (Kawagoe J, et al., J Biol Chem 2003;278(44):43363-43372.)に焦点を当てている。
【0038】
当業者は、本発明の方法の標的とされる対象または患者が任意の脊椎動物であって良く、最も好ましい患者はガンを有する、またはガンの危険を有するヒトであることを合理的に予測して良い。それにもかかわらず、任意の脊椎動物に対する前記方法の利用は、過度に実験することなく、FIP-gtsを含む組成物を問題の脊椎動物に特有の培養ガン細胞に投与すること、及び実施例に記載される単純な細胞侵襲アッセイである創傷治癒アッセイ(heal wounded assay)を実施することによって決定されて良い。
【0039】
前記FIP-gtsを含む組成物は当業者に既知の任意の適切な経路によって脊椎動物に投与されて良く、例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、筋肉内、経皮、鞘内、または大脳内を含む。投与は注射のように急速であって良く、または遅い輸液若しくは遅い放出性の製剤の投与のように長期間にわたって良い。
【0040】
FIP-gtsを含む組成物は通常製薬製剤の形態で使用されることが意図される。その様な製剤は製薬分野においてよく知られている方法で作製される。1つの好ましい製剤は生理食塩水溶液のビヒクルを利用する;他の製薬学的に許容される担体、例えば生理的な濃度の非毒性の塩若しくは化合物、5%の水性グルコース溶液、または滅菌水などが使用されても良いことが意図される。前記組成物において適切なバッファーが存在することも望ましい可能性がある。望まれる場合には、その様な溶液は凍結乾燥され、即時の注射のために滅菌水の添加によって即時に再構成される状態で滅菌アンプルに保存されて良い。主な溶媒は水性であって良く、代替的には非水性であって良い。
【0041】
前記担体は、前記組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、無菌性、安定性、溶解速度、臭いを修飾または維持するための他の製薬学的に許容される賦形剤も含有して良い。同様に、前記担体は放出若しくは吸着、または血液-脳の障壁を越える浸透を修飾または維持するための更に他の製薬学的に許容される賦形剤を含有して良い。その様な賦形剤は単回投与または複数回投与の形態、または連続的若しくは断続的な輸液による直接的な輸液のいずれかにおいて非経口投与のための投与形態に製剤するために通常及び従来使用される物質である。
【0042】
FIP-gtsを含む組成物を含む特定の製剤は経口的に投与されることも意図される。その様な製剤は、適切な担体、賦形剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤と共に好ましく製剤され、錠剤としてプレスされ、または硬カプセル若しくは軟カプセルにカプセル化される。または、その様な製剤は、経口用の溶液、若しくは経口用のサッシェ、若しくは経口用のペレットのいずれかのような剤形に設計されることが意図される。または、経口投与とは異なって、その様な製剤は浣腸剤、座剤、インプラント、パッチ、クリーム、または軟膏の投与形態として設計されることが意図される。適切な担体、賦形剤、及び希釈剤の幾つかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、カルシウムホスフェート、アルギネート、カルシウムシリケート、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチル及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウム、ステアレート、水、及び鉱物油などが含まれる。前記製剤は、潤滑剤、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、保存剤、甘味剤、または香味剤を更に含んで良い。前記組成物は、当業者によく知られた方法を使用して患者に投与した後に活性成分が急速放出、持続放出、または遅延放出するために製剤されて良い。前記製剤は、タンパク質分解、核酸及び他の分解を減少する物質、並びに/または例えば表面活性剤のような吸着を促進する物質を含有しても良い。組成物は、血流における安定度の促進を助けるために、ポリエチレングリコール(すなわち、PEGylated)またはアルブミンなどと複合体化されて良い。
【0043】
FTP-gtsを含む組成物は、脊椎動物内のガンの増殖または転移を減少するために有効な量で脊椎動物に投与される。特定の用量は、患者のおおよその体重若しくは体表面面積、または占める体の体積の量に従って算出される。前記用量は選択される投与の特定の経路にも依存して算出されるであろう。治療のための適当な用量を決定するために必要な前記算出のさらなる改善が当業者によって決まって作り出される。その様な計算は、過度な実験をせずに、本明細書で開示される活性、すなわちゼラチンザイモグラフィーアッセイを鑑みて当業者によって作製されて良い。実際に投与される前記組成物の量は、状態または治療される状態、投与される組成物の選択、年齢、体重、及び個々の患者の反応、患者の症状の重度、並びに選択された投与の経路を含む関連する事情を鑑みて熟練者によって決定されることが理解されるであろう。製剤及び使用される投与の経路の薬物動態学的パラメータに依存して、投与が繰り返されて良い。
【0044】
FTP-gtsを含む組成物はBALB/cマウスに供給されて、ナチュラルキラー活性、マクロファージ活性、サイトカインの生産、及び血清の抗体生産に対する作用が試験される。各種の用量の群と比較して、FIP-gtsがナチュラルキラー細胞の活性、マクロファージ活性、サイトカイン生産、及び血清の抗体生産の生産を促進することを示す。
【0045】
本発明は、患者の血中グルコースを減少するための、
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のアミノ酸配列を有する真菌免疫調節タンパク質の使用に関する。
【0046】
本発明では、前記患者はII型糖尿病に罹っている患者を意味する。
【0047】
以下の実施例は明細書に含まれて本発明を説明する助けとなるが、本発明の範囲を制限することを意味しない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
細胞形態の変化
ヒト肺上皮ガン細胞A549は、高い移動能力を有する非常に悪性の肺ガン細胞株であった。モデルシステムとして、FIP-gtsを使用するガン細胞の治療または防止の作用の試験にA549を適用した。
【0049】
まず、細胞をFIP-gtsで処理した後の細胞形態の変化を顕微鏡下で試験した。0、1、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを各々使用してA549細胞を処理し、異なる時間間隔で写真を撮った(図1)。
【0050】
細胞を2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して処理した後に、細胞の形態が6時間で明らかに変化した。細胞が、小さな触手で接着している状態から丸い、緩く接着した細胞に変化した。幾つかの細胞は培養皿を振った際に動く兆候が見られた。72時間FIP-gtsで処理した後に、処理されていない、または低濃度のFIP-gtsで処理されたA549細胞は拡大し、培養皿全体を覆ったが、一方で高濃度のFIP-gtsで処理された細胞は丸い形状を示し、多くのスペースは覆われないままであった(図2)。0、2、4、10μg/mlのFIP-gtsで処理された、正常な肺細胞株であるBEAS-2B細胞は形態変化を示さなかった。FIP-gtsで処理された、またはされていない細胞は24時間で同様の増殖速度を示し、培養皿をほぼ同時に満たした。対照であるBEAS 2B細胞はFIP-gtsによって影響を受けず、培養皿全体を24時間で満たした。
【0051】
ヒトメラノーマガン細胞株A375を使用すると、FIP-gtsで処理されたA375細胞は細胞から細胞への接着が損失しているようであり、細胞が互いに緊切に接着せずに広範に分散する(図2)。A375細胞を、0、4、及び16μg/mlのFIP-gtsで処理して、24、48、及び72時間後に観察した。より高濃度のFIP-gtsを使用した際に、より多くの細胞が丸い形状に変化することが認められた(図2)。16μg/mlのFIP-gtsは細胞接着及び細胞増殖を有意に阻害するであろうことが示された。上述の事項を考慮すると、FIP-gtsは細胞の構造を再配置することによって細胞の移動及び接着能力を変化したことが示される。
【0052】
(実施例2)
細胞生存度アッセイ
細胞生存度を試験するためにトリパンブルーを使用した。同一の濃度の実施例1のFIP-gtsを使用してA549細胞を処理した。48時間FIP-gtsで細胞を処理した後、トリパンブルーを添加した。生細胞はトリパンブルーに抵抗するため、トリパンブルーにラベルされない細胞数によって生細胞の数を測定した。
【0053】
2×105のヒト肺類表皮ガン細胞株H1355及びA549細胞を6cmの培養皿に播種した。H1355細胞株は転移の研究の一般的な細胞モデルであった。細胞を37℃で16時間増殖させた。培地を除去して、FIP-gtsを0、2、4、及び10μg/mlの濃度で処理した。
【0054】
FIP-gtsの処理後48時間で細胞を回収した。古い培養培地を15mlの遠心管に除去することによって細胞を回収した。細胞を1×PBSで二回洗浄した。1分間室温で遠心分離した後に0.5mlのTEバッファーに細胞を再懸濁した。その溶液を本来の培養培地を添加することによって中和した。細胞を15mlの遠心管に移し、800rpmで5分間遠心分離した。上清を廃棄して、細胞を0.5mlの1×PBSに分散させた。20μlの細胞培養物に5μlのトリパンブルー溶液を添加した。細胞数を細胞計測器で計測した。
【0055】
0μg/mlのFIP-gtsで48時間処理された細胞の生存率は100%であると考慮し、1、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsで48時間処理した細胞の生存率は各々、98.2%、94.8%、80.0%、及び60.3%であった(図3)。結果はMTSアッセイ(以下に記載)で認められた結果と一致した。これらの2つの実験はFIP-gtsがA549細胞に対して細胞傷害性を有し、細胞増殖を抑制または細胞の生存率の減少を誘導するであろうということを示す。
【0056】
(実施例3)
細胞数の計測---コロニー形成
この実験の目的はコロニー形成アッセイによってFIP-gtsの細胞傷害性を試験することであった。A549またはA375細胞を0、0.4、2、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して24時間処理した。次いで、400細胞/60mm培養皿を12日間増殖させた。
【0057】
2×105のA549またはA375細胞を60mm培養皿に播種した。細胞を37℃で16時間増殖させた。0.4、1、2、及び10μg/mlの濃度のFIP-gtsでA549を処理した(図4)。24時間増殖させた後、1×PBSで二回洗浄し、細胞を新しいプレートに継代培養した。1mlのTEを添加し、培養物を37℃に1分間放置し、細胞をはがした。細胞数を計測し、続いて細胞希釈を本来の培養培地で実施した。400細胞/プレートの細胞を6cmの培養プレートに播種した。細胞を37℃インキュベーターで12時間増殖させた。細胞を1×PBSで二回洗浄し、0℃の95%エタノール2mlを各プレートに添加した。培養物を室温で20分間放置した。次いでエタノールを廃棄して、2ml/プレートの10%ギムザ染色物(ddH2Oで希釈したギムザ染色物)を各プレートに添加した。反応は室温で30分間起こさせた。染色物を再回収し、水道水を使用して残存する染色物を穏やかに洗浄した。コロニーの数を乾燥後に測定した。
【0058】
0μg/mlのFIP-gtsで処理したA549細胞の生存率を100%であると考慮し、0.4、1、2、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して処理した細胞の生存率は各々、97.3%、91.5%、69.6%、及び39.0%であった(図4A及び4B)。1μg/mlのFIP-gtsを使用して処理した細胞を除く全ての実験の群が生存率の有意な減少を示した(スチューデントT試験によって分析、p<0.05)。FIP-gtsはA549細胞に対する細胞傷害性を示し、コロニー形成を抑制することが明らかになった。
【0059】
(実施例4)
フローサイトメトリー
FIP-gtsで処理した細胞が低い生存率を示すことを認めた。その作用は増殖の抑制またはアポトーシスの増大に由来するであろう。従来の抗ガン剤は細胞周期を調節、特に細胞をG1期で停止させてガンを抑制した。そのため、FIP-gtsで処理されたA549細胞が細胞周期を調節されているかどうか、及び正常な細胞株とガン細胞株とがFIP-gtsによって異なる影響を受けるかどうか試験した。
【0060】
細胞を60mm培養皿に5×105の細胞/培養皿、5mlの培養培地で分布させ、16時間37℃で増殖させた。古い培養培地を廃棄し、1×PBSで二回洗浄した。細胞を各種の濃度のFIP-gts(0、2、4、及び10μg/ml)、各種の時間(24時間及び48時間)で処理した。細胞を以下の手順で回収した:
a.古い培養培地を15ml遠心管に移した。
b.細胞を冷1×PBSで二回洗浄した。
c.細胞を1×トリプシン-EDTAで処理してはがした。
d.古い培養培地を添加して反応をとめ、培地を15ml遠心管に移した。
e.細胞を800rpmで5分間遠心分離した。上清を廃棄してペレットを1×PBSで二回洗浄した。
f.1mlの70%冷エタノールをゆっくりと培養物に添加した。細胞を4℃で一晩維持して安定させた。
g.培養物を800rpmで5分間遠心分離した。上清を廃棄した。
h.培養物を氷冷1×PBSで二回洗浄した。上清を廃棄して可能な限り乾燥させた。
i.各々1mlのヨウ化プロピジウム(PI)混合物を各管に添加した(遮光):
1×PBS 550μl
5% Triton X-100 200μl
250 μg/ml ヨウ化プロピジウム 200μl
0.5 mg/ml RNase A 50μl
j.サンプルを室温に30分間放置した。
k.培養物を40μmのナイロンメッシュで濾過して、フローサイトメーターの開口部を詰まらせる大きな細胞塊または破片を除いた。フローサイトメーター管の単一の細胞懸濁物を回収した。
【0061】
細胞中のDNAを測定するために、実験では、細胞を分取し、FACSCalibur(BECTON DICKINSON)で分析するための蛍光標示式細胞分取器(FACS)システムを使用した。617nmにおける赤色蛍光の吸収がPIで標識された細胞のDNA量を決定した。プログラムCELL Questを使用して測定を分析した。統計を計算し、細胞周期の異なる段階の細胞数をプログラムMod Fit 3.0を使用して表示した。
【0062】
フローサイトメーターを使用すると、FIP-gtsで処理された細胞はG1期における予期されたような停止を示すことが認められた。多くて30%より多い細胞がG1期にあることが認められた。G1期の停止がS期の細胞の割合を減少させた。つまり、細胞増殖がFIP-gtsによって抑制された。少ない細胞がsubG1期であることが認められた。最も高いsubG1期の細胞の割合(1.6%)は、細胞を高濃度のFIP-gtsで処理した後の2日目に認められた。この現象は、FIP-gtsがG1期停止及び軽度のアポトーシスを誘導することによって細胞の生存率を低くすることを示した。
【0063】
結果として、より高濃度のFIP-gtsで処理すると、より多くの細胞がG1期で停止することが示された。0、1、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsで24時間処理されたA549細胞は、各々、58.2%、59.1%、62.0%、64.0%、及び75.5%の割合の細胞がG1期であることを示した。G1期の増大がそれらのS期の細胞の減少も誘導した。上と同一の濃度のFIP-gtsで処理されたA549細胞は、各々、32.8%、30.9%、30.1%、27.2%、及び18.2%の割合がS期であることを示した(図5A及び5B)。FIP-gtsの処理時間を増加すると、G1期で停止した細胞が増加した。上述と同一の濃度のFIP-gtsで48時間処理されたA549細胞は、各々、60.2%、68.8%、72.6%、76.1%、及び82.1%の割合がG1期であることを示し、S期の細胞の更に低い割合、各々、31.8%、25.1%、23.0%、20.0%、及び13.8%を示した。かくして、前記実験によって、FIP-gtsがA549細胞のG1期の停止を誘導することが示された(図5A及び5B)。
【0064】
A549細胞が10μg/mlのFIP-gtsで処理された際に、少ない細胞がSubG1期であることが認められた。さらに、FIP-gtsで処理された際に、より少ない細胞がアポトーシスを起こした。10μg/mlのFIP-gtsで24時間及び48時間処理されたA549細胞の各々の0.9%及び1.6%が、SubG1期であった(図5B)。
【0065】
(実施例5)
ウエスタンブロット
外的なシグナル、例えばUV、シスプラチンはp53タンパク質を活性化及び安定化するであろう。p53はさらに、p21を含む他の下流の遺伝子を活性化した。p21は細胞周期におけるG1期の主なチェックポイントタンパク質であった(Zhong, X. et al, 2004, Int. J. Cancer)。ウエスタンブロットを使用して、48時間FIP-gtsで細胞を処理した後にp53タンパク質の発現が誘導されることが認められた。遺伝子p21も誘導され、FIP-gtsがp21の活性化によってG1期における停止を細胞に誘導することが示された。
【0066】
ER、デスレセプター、またはミトコンドリアを介するアポトーシスの3つの経路が存在した。3つの経路全てがプロカスパーゼ3(32kD)から活性型カスパーゼ3(17kD)への切断を誘導した。カスパーゼ3はカスパーゼの連鎖の最終的な実行者であった。それは細胞のアポトーシス、DNAの破壊、核濃縮、及び封入体の形成を誘導した(Di Pietro, R., et al. (2004) Int J Immunopathol Pharmacol 17 (2) 181-190)。細胞が高濃度のFIP-gtsで処理された際に、プロカスパーゼ3から活性型カスパーゼ3への切断の結果である、プロカスパーゼ3の僅かな減少が存在した。
【0067】
フローサイトメーターの結果から、高濃度において、FIP-gtsが細胞のG1期における停止を誘導し、軽度のアポトーシスを開始することが認められた。そのため、細胞をFIP-gtsで処理した際のタンパク質発現の変化を研究した。
【0068】
a.サンプル調製
5×105細胞/プレートのA549を60mm培養皿に播種した。細胞を37℃で16時間増殖させた。細胞を0、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsで処理して、37℃インキュベーターで48時間増殖させた。細胞をまずPBSで2回洗浄した。上清を廃棄し、100μlの細胞バッファー(10 mM EDTA, 10 mM EGTA, 5 mM NaF, 10 % グリセロール, 1 mM DTT, 400 mM KCl, 0.4 % Triton X-100, 20 mM β-グリセロリン酸ナトリウム, 0.1 mM Na3VO4, 1 mM PMSF/DMSO, 3 μg/ml アプロチニン, 2 μg/ml ペプスタチン A, 2 μg/ml ロイペプチン, 1× ホスファターゼインヒビターカクテル I(Sigma, P2850) を添加した;1X ホスファターゼインヒビターカクテル II(Sigma, P5726))を添加して細胞を溶解した。その反応物を氷上において、10分より大きい間隔で2回、4℃で超音波ホモジナイザーを使用して均質化した。細胞を12000rpm、4℃で20分間遠心分離した。上清を注意深く他の滅菌した1.5mlミクロン(micron)に移し、タンパク質量を定量した。FIP-gts処理、細胞の遠心分離、及び2×SDSサンプルバッファー(200mM Tris pH6.8, 8%SDS, 40%グリセロール, 2.86M 2-メルカプトエタノール、及び適量のブロモフェノールブルー)を添加し、95℃に過熱の過程全体を2時間内に終えなければならない。
【0069】
b.タンパク質定量
Bio-Rad溶液を適用して、タンパク質濃度を定量した。始めに、ddH2Oを使用して4:1にBio-Rad試薬を希釈し、これをBio-Radタンパク質検出試薬とした。サンプルである、細胞培養物の上清2μl及び希釈したBio-Radタンパク質検出試薬498μlを混合した。サンプルを1.5mlミクロンにおいて37℃で20分間反応させた。595nmで分光光度計によって吸収ピークを測定し、タンパク質量(μg/μl)を得るために標準サンプルであるウシ血清アルブミン(BSA)の吸収ピークと比較した。498μl、496μl、494μl、492μl、及び490μlの希釈したBio-Radタンパク質検出試薬の各々に2μg、4μg、6μg、8μg、及び10μgのBSAを添加して、標準のBSA量を測定した。1.5mlミクロンにおいて、37℃で20分間サンプルを反応させた。595nmにおけるサンプルの吸収ピークも測定した。吸収ピークとタンパク質量の標準的な相関関係を得るためにBSAを測定した。かくして、サンプルタンパク質のタンパク質量をサンプルの吸収ピークに当てはめて定量した。
【0070】
c.SDS-PAGE
表1 ランニングゲルを以下のように調製した。
【0071】
【表1】

【0072】
表2 3%スタッキングゲルを以下のように調製した。
【0073】
【表2】

【0074】
前記サンプルをSDS-PAGEにかけて、Hybond-P膜(Pharmacia)を電気泳動が終わる20分前に調製した。前記膜をメタノールで15秒間濡らして、ddH2Oで10分間洗浄し、次いで、前記膜を転写バッファー(20%メタノール、192mMグリシン、25mM Tris-HCl、pH9.2)に移して少なくとも10分間おいた。標準的なプロトコルに従って、電気泳動後にゲルを注意深くはがし、Hoefer Semiphorに移した。振とうしている5%無脂肪乳粉末を含むTTBSバッファー(50mM Tris, 0.2% Tween20, 150mM NaCl, pH7.5)中で1時間、転写された膜をブロッキングした。
【0075】
d.抗体検出
特異的な一次抗体をブロッキングしたHybond-P膜に添加した。3%BSAを含む1×TTBSバッファーを添加して、以下の一次ポリクローナル抗体:抗カスパーゼ3(1:500. Cayman)、抗COX2(1:1000, Cayman#160106)を希釈した。5%無脂肪乳粉末を含む1×TTBSバッファーを使用して以下の一次抗体:抗BAX(1:8000, R&D)、p53(1:500, DAKO)、p21(1:500, Zymed)を希釈した。サンプルを4℃で一晩振とうした(少なくとも16時間)。前記膜を他の日に取り出した。10分毎に2回、3%無脂肪乳粉末を含む100mlの1×TTBSバッファーを使用して前記膜を洗浄した。抗ウサギIgG-HRP(1:5000, Cell signaling #7074)または抗マウスIgG-HRP二次抗体(1:10000, Chemicon AP124P)を3%無脂肪乳粉末を含む1×TTBSで希釈した。サンプルを室温で1時間振とうした。洗浄工程を一度繰り返した。E.C.L発色試薬(NEN,NEL105)を増強ルミノール剤と酸化剤を使用して1:1に混合した。膜を容器に向き合うように発色剤と共に置いて、5分反応させ、HRP発色させた。蛍光をX線フィルムに3から5分間曝露して、現像し、定着した。
【0076】
最も重要なG1期のチェックポイントはp21であった。0、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsで48時間処理した後に、p21の発現が有意に増大することが認められた(図6)。p21は他のよく知られたガン遺伝子であるp53によって活性化されることも知られていた。ウエスタンブロットの結果は、p53の発現がFIP-gtsによって誘導されることも示した(図6)。そのため、FIP-gtsがp53の発現の誘導、p21量の増大、及びG1期の停止の誘導をすることが証明された。
【0077】
細胞を10μg/mlのFIP-gtsで処理した際にプロカスパーゼ3が減少することが認められた(図6)。かくして、細胞がFIP-gtsで処理された際に、プロカスパーゼ3はカスパーゼ3に活性化されて、細胞にアポトーシスを実行させた。さらに、細胞の減少はアポトーシスの促進の結果ではなく、増殖の抑制の結果であった。
【0078】
(実施例6)
創傷治癒アッセイ
創傷治癒アッセイを使用して、FIP-gtsが効果的に乳ガン細胞の移動を抑制することが認められた。
【0079】
2×105A549細胞を24ウェル培養皿で増殖させた。細胞を培養プレートを殆ど覆うまで増殖させ、0.5% FBSを含有する培養培地で24時間処理して細胞増殖を抑制した。前記プレートを青チップで乱切して、細胞を1×PBSで洗浄した。最後に1、2、4、及び10μg/mlという異なる濃度のFIP-gtsを添加した。24時間ごとに写真を撮って、細胞の移動をモニターした。
【0080】
通常、ガン細胞は転移を形成する前に移動性を得た。0、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用する細胞の処理が細胞の移動性を増大するか試験するために創傷治癒アッセイを適用した。48時間、FIP-gtsを使用して細胞を処理した際に、有意な移動性は認められないことが明らかになった。本発明は、0、1、及び2μg/mlのFIP-gtsを使用して72時間、細胞を処理した際に、線を覆う細胞移動を認めた。4及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して処理された細胞は、ほとんど移動性の兆候を示さなかった。FIP-gtsを96時間処理する、またはしない細胞で比較すると、FIP-gtsで処理されていない細胞は優位な移動性を示して、乱切した線の1/3を覆い、一方で低濃度のFIP-gtsで処理された細胞はある程度の移動性を示し、高濃度で処理された細胞は移動性を示さなかった(図7)。
【0081】
創傷治癒アッセイを使用して、FIP-gtsを使用して処理した際に細胞の移動性が抑制されることが認められた。4及び10μg/mlを超えてFIP-gtsで処理されたA549細胞は、ほとんど移動性を示さなかった。
【0082】
(実施例7)
ゼラチンザイモグラフィー
転移の間に、メタロプロテイナーゼが細胞外マトリックスを分解し、細胞と細胞外マトリックスとを解離させて、細胞に移動性を提供する。メタロプロテイナーゼMMP-2及びMMP-9は多くの悪性ガンにおいて高発現していることが既知であった(Johnsen, M., et al., Curr Opin Cell Biol, 1998. 10, 667-671)。そのため、MMP-2及びMMP-9の発現とガン細胞の転移とは高度に相関した(Curran, S. and Murray, G.I. Eur J Cancer, 2000.36, 1621-1630., Liavakk, N.B., et al., Cancer Res, 1996. 56, 190-196)
【0083】
血清中のMMP-2及びMMP-9の妨害を避けるために、細胞培養物に対する血清飢餓及びFIP-gtsを使用するA549細胞の処理を適用して、MMPの活性を分析した。ゼラチンザイモグラフィーアッセイの正確性をより高めるために、細胞密度の測定としてタンパク質濃度を定量するためにBio-Radも使用した。
【0084】
高濃度のFIP-gtsを使用して処理された細胞はMMP-2の発現を抑制できることが認められた。FIP-gtsの作用が用量依存的であることも認められた。
【0085】
A549細胞を1×105細胞/ウェル、24wellプレートで増殖させた。血清を含まない培地200μl/ウェルを他の日に添加して、細胞を0、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して24時間処理した。培地を除去して、細胞を1×PBSで洗浄した。CEバッファーを使用して細胞を回収し、タンパク質をBio-Radを使用して定量した。2gゼラチン/100ml ddH2Oを55℃で溶解することによって、2%のゼラチンを調製した。
【0086】
表3 0.1%ゼラチンを使用して8%SDS-PAGEゲルを調製した。
【0087】
【表3】

【0088】
ウエスタンブロット実験で記載したようにゲルを調製した。ゲルを電気泳動バッファーと共に電気泳動チャンバーに取り付けた。培養培地を5×染色液(0.1% SDS、104mM Tris-HCl pH 6.8, 50% グリセロール (または25g スクロース)、0.125% ブロモフェノールブルー)と共にゲルにロードして、電気泳動を実施した。次いで、洗浄バッファー(40mM Tris-HCl pH 8.5、0.2M NaCl、10mM CaCl2、2.5% Triton X-100)を使用して室温、30分間で2回ゲルを洗浄し、反応バッファー(40mM Tris-HCl pH8.5、0.2M NaCl、10mM CaCl2、0.01% NaN3)を添加した。反応物を37℃インキュベーターに12時間おいた。膜をクマシーブルー(0.2% クマシーブルーR-250、50%メタノール、10% 酢酸)を使用して30分間、染色した。ゲルを10% 酢酸及び20% メタノールを使用して脱染した。50% ddH2O、50% メタノール、及び0.33% グリセロール中で30分間、膜を乾燥させた。次いで、前記膜をガラスペーパーで封じた。
【0089】
細胞の移動性はMMPの発現と相関するために、ゼラチン-ザイモグラフィーを適用して、MMP-2の活性がFIP-gtsを使用する細胞の処理によって変化するか分析した。一定量のFIP-gtsで増大を処理した際に(スチューデントT試験、*p<0.05)、MMP-2の発現が有意に減少することが認められた。細胞がFIP-gtsで処理されていない際に、MMPの発現は100%であると解した。1、2、4、及び10μg/mlで処理されたMMPの発現は各々、95.7%、90.3%、73.6%、及び29.8%であることが認められた(図8)。かくして、FIP-gtsはMMP-2の発現の調節を介して細胞の移動性を調整すると判断した。
【0090】
(実施例8)
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応、RT-PCR
高濃度のFIP-gtsで短時間処理された細胞はメタロプロテイナーゼ発現の減少を誘導するであろうため、RT-PCRを適用して、FIP-gtsを使用する細胞の処理後のメタロプロテイナーゼインヒビターであるTIMP-1(メタロプロテイナーゼの組織阻害剤)のmRNA発現を測定した。0、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して24時間、細胞を処理した際に、TIMP-1及びPAIのmRNA発現の増大が認められた。MMP-2のmRNA発現は減少するが、一方でTIMP-2の発現は影響を受けないことも認められた。かくして、FIP-gtsを使用して処理された細胞はMMP-2のmRNA発現の減少を誘導し、MMP-9のような他のMMPの活性はTIMP-1の発現の増大によって抑制されるであろうと判断した。このように、細胞の転移はFIP-gtsを使用する細胞の処理によって阻害された。
【0091】
以下のようにPromega RT-PCRキットを使用してRT-PCRを実施した:
1μgのRNA全体を70℃に加熱した。10分後、加熱したRNAを氷浴中で冷却した。次いで、25mM MgCl2 4μl、5×MMLVバッファー 4μl、10mM dNTP混合物 2μl、Recombinant RNasin Ribonucleaseインヒビター 0.5μl、MMLV逆転写酵素 1μl、オリゴ(dT)15プライマー 1μl、及びヌクレアーゼを含まない水を終量20μlまで添加した。
【0092】
表4 RT-PCRを実施するためのプライマー
【0093】
【表4】

【0094】
(実施例9)
サイトカイン発現の増大
ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を0、1.25、2.5、5、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して処理した。48時間後、ヒトPBMCのサイトカイン発現をELISAによって測定した。処理されたFIP-gtsの濃度の増大に伴って、サイトカインIL-2、IFN-γ、TNF-α、及びIL-4の発現の増大が認められた(表5)。
【0095】
表5 FIP-gtsを使用して処理されたヒトPBMCのサイトカイン発現の増大。
【0096】
【表5】

【0097】
(実施例10)
3つの異なる細胞株に対するFIP-gtsの効果の比較
3つのガン細胞株:ヒト前立腺ガン細胞株PC3、ヒト乳ガン細胞株MDA231、及びヒトメラノーマがん細胞株A375に対するFIP-gtsの効果を評価した(表6)。実施例1に記載したプロトコルに従って、FIP-gtsを使用して処理された細胞の形態変化を観察することによって;実施例3に記載のプロトコルに従って細胞増殖の阻害の測定することによって;並びに実施例4に記載のプロトコルに従ってコロニー形成の阻害を測定することによってFIP-gtsの作用を評価した。
【0098】
表6 異なるガン細胞株に対するFIP-gtsの効果
【0099】
【表6】

【0100】
(実施例11)
原料及び方法
動物種
4から5週齢のBALB/cオスマウスを台湾のNational Laboratory Animal Centerより購入した。
【0101】
FIP-gtsの用量(経口投与)
低用量:200μg/kg/日;高用量:600μg/kg/日;ポジティブ用量(台湾で市販の霊芝粉末、Department of Health, Health Food Accredited No.A00003):300mg/kg/日。ネガティブコントロール:蒸留水。
【0102】
供給期間、経路、及び時間
始めに、高用量のFIP-gtsを製剤した。次いで、低用量の群を高用量の群より希釈した。試験の初日から、6週間に亘って、1日1回経口経路によって試験物質を使用して各群を供給した。
【0103】
アッセイ
1.ナチュラルキラー細胞活性(非特異的免疫調節機能の試験)
6週間に亘る実験動物へのFIP-gtsの供給後、脾細胞を動物より取り出した。フローサイトメトリーによるナチュラルキラー細胞活性のアッセイを作製して、ネガティブコントロールの群と各種の用量の群とを比較して、群の間に差があるか調べた。
【0104】
2.マクロファージ活性(非特異的免疫調節機能の試験)
6週に亘る実験動物のFIP-gtsの供給後、腹腔のマクロファージを動物より取り出した。E.coliを蛍光で標識した。次いで、マクロファージは標識されたE.coliを食作用させられる。フローサイトメトリーによるマクロファージ活性のアッセイを作製して、ネガティブコントロールと各種の用量群と比較して、群の間に差があるか調べた。
【0105】
3.血清抗体の生産(非特異的免疫調節機能試験)
FIP-gtsの提供の間、FIP-gtsの処理前と動物を屠殺した前に動物の血液を回収した。血清中の各種の免疫グロブリンの濃度を決定し、ネガティブコントロールの群と各種の用量の群とを比較して、群の間に差があるか調べた。
【0106】
4.サイトカイン分泌の分析(特異的免疫調節機能試験)
FIP-gtsの投与、及びオブアルブミン(OVA)を2回投与した10週後に、動物を屠殺した。コンカナバリンA(Con A)、リポポリサッカリド(LPS)、またはOVAによって脾細胞を刺激した。48から72時間のインキュベーション後、サイトカインをELISAによって測定した。ネガティブの群と各用量の群とを比較した際に、p<0.05が有意な差の指標であった。
【0107】
5.血清中の抗OVAイムノグロブリン生産の分析(特異的免疫調節機能の試験)
FIP-gtsの試験前、最初の免疫、二回目の追加免疫、及び屠殺前に、後部眼窩より血液を回収した。血清の抗OVAイムノグロブリン生産をELISAによって測定した。ネガティブの群に対して各用量群を比較した際に、p<0.05が有意な差の指標であった。
【0108】
結果
1.ナチュラルキラー細胞の活性(非特異的免疫調節試験)
屠殺後、マウスの脾細胞を取り出して、ナチュラルキラー細胞活性のアッセイを進めた。ネガティブコントロールの群と比較すると、各群は、エフェクター/標的(E/T比)が12.5である条件で統計的な有意性を示さなかった。ネガティブコントロールの群と比較すると、高用量の群及びポジティブコントロールの群はE/Tが25.0である条件で優位な差を示した。ネガティブコントロールと比較すると、低用量の群、高用量の群、及びポジティブコントロールの群が、E/Tが50である条件で優位な差を示した。FIP-gtsはナチュラルキラー細胞の活性を促進することが明らかになった(表7)。
【0109】
表7。
【0110】
【表7】

【0111】
この試験は、フローサイトメトリーによって同定されるナチュラルキラー細胞の細胞障害性アッセイに関する。
記号(*)は、ネガティブコントロールと比較した際の統計的優位性を示す。
Eはエフェクター細胞を意味する。Tは標的細胞を意味する。
Aはネガティブコントロールの群を意味する。Bは低用量の群を意味する。
Cは高用量の群を意味する。Dはポジティブコントロールを意味する。
【0112】
2.マクロファージ活性(非特異的免疫調節試験)
屠殺後、マウスの腹腔中のマクロファージを回収した。FITC-E.coliを添加して、マクロファージによって食作用させた。次いで、マクロファージの活性をフローサイトメトリーによって分析した。ネガティブコントロールの群と比較すると、低用量の群と高用量の群は感染効率(MOI)=30の条件で統計的優位性を示した。FIP-gtsは腹腔のマクロファージの活性を促進することが明らかになった(表8)。
【0113】
表8。
【0114】
【表8】

【0115】
この試験はフローサイトメトリーによって同定されるマクロファージ食作用に関する。
記号(*)は、ネガティブコントロールの群と比較した際の統計的優位性を示す。
MOIは感染効率を意味する。
Aはネガティブコントロールの群を意味する。Bは低用量の群を意味する。
Cは高用量の群を意味する。Dはポジティブコントロールの群を意味する。
【0116】
3.血清の抗体の生産(非特異的免疫調節試験)
FIP-gtsの供給の間、FIP-gtsの処理前及び動物の屠殺前に動物の血液を回収した。血清中の各種の免疫グロブリンの濃度を決定し、ネガティブコントロールの群と各種の用量の群とを比較して、群の間に差があるか調べた。処理前の血清中のイムノグロブリンの濃度は、高用量の群及びポジティブコントロールの群のイムノグロブリンG(IgG)が、ネガティブコントロールの群と比較すると統計的な優位性を示すことを表した。各種の用量群のIgMは、ネガティブコントロールの群と比較しても統計的優位性を示さなかった(表9)。
【0117】
表9 抗体生産。
【0118】
【表9】

【0119】
この試験はELISAによって同定される血清の抗体生産の状態に関する。
記号(*)は、ネガティブコントロールの群と比較した際の統計的優位性(p<0.05)を示す。
Aはネガティブコントロールの群を意味する。Bは高用量の群を意味する。
【0120】
4.サイトカイン分泌(特異的免疫調節試験)
脾細胞を刺激物質(Con AまたはLPSまたはOVA)によって刺激し、48から72時間のインキュベーション後、サイトカインをELISAによって測定した。Con A刺激後、FIP-gtsの低用量の群におけるインターロイキン2(IL2)分泌はネガティブコントロールよりも有意に高かった。OVA刺激後、各用量及びポジティブの群におけるインターロイキン2(IL2)分泌はネガティブコントロールの群よりも有意に高かった。
【0121】
Con A刺激後、各群及びポジティブの群における腫瘍壊死因子α(TNFα)の分泌は、ネガティブコントロールの群よりも有意に高かった。OVA刺激後、高用量のFIP-gts及びポジティブの群におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)分泌はネガティブコントロールよりも有意に高かった。
【0122】
結果を表10に示す。FIP-gtsはサイトカインの分泌を促進するであろう。
【0123】
表10 脾臓サイトカイン分泌
【0124】
【表10】

【0125】
脾臓サイトカイン分泌をELISAによって測定した。
*:ネガティブコントロールと比較した際の統計的優位性の指標
A:ネガティブコントロール B:低用量 C:高用量 D:ポジティブコントロール
【0126】
5.血清中の抗OVAイムノグロブリン生産(特異的免疫調節)
FIP-gtsの試験前、第1の免疫、第2の追加免疫、及び屠殺前に後部眼窩より血液を回収した。血清中の抗OVAイムノグロブリン生産をELISAによって測定した。
【0127】
試験前、第1の免疫、及び第2の追加免疫では、抗OVAイムノグロブリンG(IgG)、抗OVAイムノグロブリンM(IgM)、及び抗OVAイムノグロブリンE(IgE)において、各群の間に有意な差は存在しなかった。
【0128】
動物の屠殺前、各用量のFIP-gts及びポジティブの群における抗OVA IgG生産はネガティブコントロールの群よりも有意に高かった。高用量のFIP-gts及びポジティブの群における抗OVA IgM生産はネガティブコントロールの群よりも有意に高かった。抗OVA IgEにおいて各群の間の有意な差は存在しなかった。
【0129】
結果を表11に示す。FIP-gtsは血清中の抗OVAイムノグロブリン生産を促進するであろう。
【0130】
表11 血清中のイムノグロブリン生産(特異的免疫調節試験)
【0131】
【表11】

【0132】
血清中の抗OVAイムノグロブリン生産をELISAによって測定した。
*:ネガティブコントロールと比較した際の統計的優位性の指標
EU=(Asample-Ablank)/(Apositive-Ablank)
A:ネガティブコントロール B:低用量 C:高用量 D:ポジティブコントロール。
【0133】
(実施例12)
2型糖尿病のマウスの血中グルコースに対するFIP-gtsまたはFIP-fveの作用
以下の方法に従って、各群の6 Balv/cオスマウスを試験した。
群1:ストレプトゾトシンの注射なし(100 mg/kg)
群2:ストレプトゾトシンの注射(100mg/kg);及び
群3:ストレプトゾトシン (100mg/kg)及びFIP-gts 2μg/200μl/マウスの注射
群4:ストレプトゾトシン(100mg/kg)及びFIP-fve 50μg/200μl/マウスの注射。
【0134】
【表12】

【0135】
F:FIP-gts(2μg/200μl/マウス)またはFIP-fve(50μg/200μl/マウス)の提供
【0136】
試験結果の血中グルコース(mg/dl)を以下のように作製した:
【0137】
【表13】

【0138】
結果は、FIP-gtsまたはFIP-fveが化学的に誘導された2型糖尿病マウスの血中グルコースを優位に減少するであろうことを表した。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1はFIP-gtsを使用して処理されたA549の形態変化を開示する。異なる濃度のFIP-gts(0、1、2、4、及び10μg/ml)を使用して、異なる時間(6、12、24、及び72時間)でA549細胞を処理した。
【図2】図2はFIP-gtsを使用して処理した後のヒトメラノーマガン細胞株A375の形態変化を開示する。0、4、及び16μg/mlのFIP-gtsを使用して、0、24、及び48時間、細胞を処理して、位相差顕微鏡を使用して(100×)写真を撮った。
【図3】図3はFIP-gtsを使用して異なる時間処理したA549細胞の増殖速度を開示する。0、1、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用してA549細胞を処理し、48時間でトリパンブルー染色排除方法を使用して生細胞数を測定した。ここで示されるデータは、3回繰り返した実験の平均±標準偏差である(スチューデントT試験を使用して計算された優位性、*p<0.05)。
【図4】図4はA549細胞のコロニー形成に対するFIP-gtsの作用を示す。(A)0、0.4、1、及び2μg/mlのFIP-gtsを使用して処理されたA549細胞の足場から独立した増殖をコロニー形成アッセイによって評価した。(B)解剖顕微鏡の条件下でコロニー数を計数した。細胞数はコロニー毎50細胞であることを必要とする。ここで示されるデータは3回繰り返した実験の平均±標準偏差である(スチューデントT試験を使用して計算された優位性、*p<0.05)。
【図5】図5はFIP-gtsの異なる用量及び経時変化で処理されたA549細胞の細胞周期における段階を示す。2×106細胞/mlで10% DMEM培地に細胞を再懸濁した。(A)フローサイトメトリーによって細胞を検出し、Cellquestによって取得した。(B)取得したものをModFit LT 3.0によって分析及び定量した。ここで示されるデータは、3回繰り返した実験の平均±標準偏差である(スチューデントT試験を使用して計算された優位性、*p<0.05)。
【図6】図6は各々、0、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して処理されたA549細胞のp21及びプロカスパーゼ3の発現を示す。細胞溶解物を48時間で回収して、発現をウエスタンブロット分析で決定した。
【図7】図7は、FIP-gtsを使用して処理されたA549細胞の創傷への移動を示す。ピペットのチップによってコンフルエントなA549細胞を乱切することで創傷を作製した(矢頭は最初の創傷のサイズを示す)。72時間または96時間のインキュベーション後に、細胞を固定化し、ギムザ染色によって染色した。
【図8】図8はFIP-gtsを使用して処理されたMMP-2の活性を示す。(A) 0、1、2、4、及び10μg/mlのFIP-gtsを使用して24時間、A549細胞を処理した。馴化培地(conditioned media)を回収して、MMP-2活性をゼラチンザイモグラフィーによって決定した。(B)MMP-2の活性をデンシトメトリー分析によって定量した。ここで示されるデンシトメトリーのデータは3回繰り返した実験の平均±標準偏差である(スチューデントT試験を使用して計算された優位性、*p<0.05)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1
MSDTALIFRLAWDVKKLSFDYTPNWGRGNPNNFIDTVTFPKVLTDKAYTYRV
AVSGRNLGVKPSYAVESDGSQKVNFLEYNSGYGIADTNTIQVFVVDPDTNND
FIIAQWN
または
配列番号3
SATSLTFQLAYLVKKIDFDYTPNWGRGTPSSYIDNLTFPKVLTDKKYSYRVVV
NGSDLGVESNFAVTPSGGQTINFLQYNKGYGVADTKTIQVFVVIPDTGNSEEYI
IAEWKKT
のアミノ酸配列を有する真菌免疫調節タンパク質の免疫治療のための使用。
【請求項2】
前記タンパク質がGanoderma種またはFlammulina velutipesより得られる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記タンパク質が組換えEscherichia coliまたは酵母より提供される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ガン患者の痛みまたは副作用を緩和するためのアジュバントとして適用されるであろう、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記免疫治療が免疫学的な機能の刺激または活性化に関する、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記免疫学的機能が、ナチュラルキラー細胞の活性化、マクロファージの活性化、及び血清の抗体の増殖からなる群より選択される機構によって作り出される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記機能がナチュラルキラー細胞の活性化及びテロメラーゼの阻害によって作り出される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記タンパク質が経口投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
配列番号1
MSDTALIFRLAWDVKKLSFDYTPNWGRGNPNNFIDTVTFPKVLTDKAYTYRV
AVSGRNLGVKPSYAVESDGSQKVNFLEYNSGYGIADTNTIQVFVVDPDTNND
FIIAQWN
または
配列番号3
SATSLTFQLAYLVKKIDFDYTPNWGRGTPSSYIDNLTFPKVLTDKKYSYRVVV
NGSDLGVESNFAVTPSGGQTINFLQYNKGYGVADTKTIQVFVVIPDTGNSEEYI
IAEWKKT
のアミノ酸配列を有する真菌免疫調節タンパク質の患者における血中グルコースを減少させるための使用。
【請求項10】
前記患者が2型糖尿病に罹っている、請求項9に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−84547(P2007−84547A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−256232(P2006−256232)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(506090945)益生生抜▲開▼▲発▼股▲フン▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】