説明

真菌感染を治療する方法

式R−(O−CH2−CH2n−OH(式中、Rは、飽和炭化水素またはアルキル基である)の殺真菌化合物の効果的な抗真菌量を、対象の爪に局所的に適用することを含む、治療を必要としている対象の爪の真菌感染症(特に爪真菌感染症)を治療する方法。本発明の方法を実行するための組成物も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2002年8月20日出願の米国仮特許出願番号第60/404,618号の(その開示内容を、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、爪の真菌感染を治療するための、特に、爪真菌感染症の治療のための、局所用製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
爪真菌感染症は、罹患者に、かなりの肉体的および精神的不快をしばしば引き起こす爪の一般的な真菌感染である。従来の治療法は、抗真菌薬、たとえばフルコナゾール、イトラコナゾール、およびテルビナフィンの経口投与による。しかし、全身投与は、費用がかかり、また有害な副作用および望ましくない副作用を招く可能性がある。したがって、爪真菌感染症の有効な局所治療法は、非常に望ましい。
【0004】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類は、他の有効な抗真菌剤用の媒体として、局所抗真菌組成物中に使用されてきた非イオン性界面活性剤である。たとえば、チャウドゥーリー(Chaudhuri)らに付与された米国特許第6,143,794号は、有効な抗真菌剤としてベンジルアミン化合物を含有する、爪真菌病治療用の組成物を提案している。該組成物は、爪板を通過して抗真菌剤が浸透するのを助けるために、0〜10重量%の量で存在する界面活性剤を、任意選択的に含有する。代表的な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン4ラウリルエーテル等が挙げられる。
【0005】
リヒター(Richter)らに付与された米国特許第6,319,509号は、アリルアミン化合物テルビナフィンを有効な抗真菌剤として含有する局所抗真菌製剤を提案している。該製剤は、任意選択的に、特に水を含有する媒体に該薬剤を可溶化するのを助けるために、およそ2重量%の量で、界面活性剤、たとえばポリエチレングルコールアルキルエーテルを含む。
【0006】
チョドッシュ(Chodosh)らに付与された米国特許第5,827,870号は、微生物感染の局所治療に有用な抗菌薬組成物を提案している。該組成物は、好ましくは、抗菌薬としての四級アンモニウム化合物、および抗菌薬の効力を高めるための、約0.05〜5重量%の量で角質溶解薬を含有する。該組成物で有用な角質溶解薬としては、アラントイン、トリアセチン、酢酸、サリチル酸、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0007】
スー(Su)らに付与された米国特許第4,775,678号は、イミダゾール誘導体クロトリマゾールを抗真菌化合物として含有する局所クリームまたはローション製剤を提案している。本発明の製剤は、およそ2.25重量%の量で非イオン性界面活性剤を含有し、これが、水中油型エマルジョンクリーム基剤を形成する。界面活性剤の例としては、セテス−20、ステアレス−2、ステアレス−20またはそれらの混合物、等が挙げられる。
【0008】
ターラー(Thaler)らに付与された米国特許第5,461,068号は、抗真菌イミダゾール誘導体用の安定した溶媒系を提案している。該溶媒系は、非イオン性または両性の界面活性剤、たとえばブリッジ(Brij)30またはブリッジ(Brij)96を、0〜5重量%の量で含有する。イミダゾール誘導体(たとえば、Cont.Derm.,33(4),282(1995)参照)、四級アンモニウム化合物(たとえば、Cont.Derm.,1(5),316(1975)参照)、およびターバニフィン(terbanifine)(たとえば、Pediatr.Infect.Dis.J.,16(6),545(1997)参照)を含む、爪真菌感染症の治療に使用される多くの局所抗真菌剤は、一部の患者で、接触アレルギーを誘発することが知られている。したがって、利用できる代替製剤を有することは、有益であろう。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、有効成分として、化粧品で広く使用される、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する組成物によって、爪真菌感染症を局所的に治療する方法に関する。
【0010】
本発明の第1の態様は、式R−(O−CH2−CH2n−OH(式中、Rは、飽和炭化水素またはアルキル基であり、好ましくは直鎖飽和炭化水素(たとえば、4、6または8個から、24、26または28個の炭素を有する)の殺真菌化合物の、効果的な抗真菌量を、対象の爪に局所的に適用することを含む、それを必要としている対象の爪の真菌感染(特に爪真菌感染症)を治療する方法である。
【0011】
換言すれば、本発明は、抗真菌組成物(該抗真菌組成物は、上述の式R−(O−CH2−CH2)n−OHの殺真菌化合物を含む、または式R−(O−CH2−CH2)n−OHの殺真菌化合物からなる、または式R−(O−CH2−CH2)n−OHの殺真菌化合物から本質的になる)を、薬学的に許容し得る局所用担体と組み合せて、対象の爪に局所的に適用することを含む、それを必要としている対象の爪の真菌感染(特に爪真菌感染症)を治療する方法を提供する。該組成物は、好ましくは、他の抗真菌化合物、たとえばイミダゾール誘導体化合物、四級アンモニウム化合物、アリルアミン化合物、およびベンジルアミン化合物を含まないか、または欠いている。
【0012】
本発明の前述および他の目的および態様を、以下に記載の明細書により詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本明細書に記載の好ましい実施形態に関して、本発明を説明する。しかし、当然のことながら、これらの実施形態は、本発明を例示するためであって、請求の範囲によって明確に規定される発明の範囲を制限すると解釈してはならない。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「爪」は、指の爪および足の爪を含む、あらゆるタイプの爪を指す。足の爪は、特に好ましい。「爪」は、本明細書では個々に言及されるが、当然のことながら、一つの爪の治療は、一つ以上の爪を含み、任意の爪の治療は、複数の爪の治療を包含する。用語「爪」は、明確に除外されていない限り、「蹄」を含めることを意図する。
【0015】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」は、患者の状態(たとえば、一つ以上の症状)の改善、疾患の進行の遅延等を含む、疾患に苦しむ患者に利益を与えるあらゆるタイプの治療を指す。
【0016】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容し得る」は、その化合物または組成物が、疾患の重症度および治療の必要性に照らして、過度に有害な副作用なしに、本明細書に記載の治療を達成するために、対象に投与するのに適することを意味する。
【0017】
本発明の有効な化合物は、任意選択的に、爪真菌感染症または他の真菌感染の治療で有用な他の化合物と併せて投与してもよい。該他の化合物は、任意選択的に、並行して(concurrently)投与してもよい。本明細書で使用するとき、用語「並行して(concurrently)」は、併用効果をもたらすことができるほど十分に時間が接近している(すなわち、並行(concurrently)には、同時に(simultaneously)であってもよく、互いに前または後の、短時間のうちに起こる2つ以上の事象であってもよい)ことを意味する。
【0018】
本明細書で使用されるとき、2つ以上の化合物の「組み合せ」投与は、一方の存在が他方の生物学的作用を変えることができるほど十分に接近した時間内に、2つの化合物が投与されることを意味する。該2つの化合物は、同時に(simultaneously)(すなわち、並行して(concurrently))投与してもよく、または順次投与してもよい。同時投与は、投与前に該化合物を混合することにより実行してもよく、または同じ時点(at the same point in time)ではあるが、異なる解剖学的部位に、または異なる投与経路を使用して、該化合物を投与することにより実行してもよい。
【0019】
本明細書で使用されるとき、語句「並行投与」、「組み合わせ」投与、「同時投与」または「同時に投与される」は、該化合物が同じ時点に、または互いに直後に、投与されることを同義的に意味する。後者の場合には、観察された結果が、該化合物が同じ時点に投与されるときに達成されるものと区別できないほど十分に近い時に、2つの化合物が投与される。
【0020】
ヒト対象は、男性であっても女性であってもよく、また、幼児、小児、青年および成人を含む、任意の適当な年齢であってもよい。
【0021】
本発明は、主としてヒト対象の治療に関するが、本発明はまた、動物対象、特に哺乳動物対象、たとえば獣医学用、ならびに薬剤スクリーニング用および薬剤開発用のマウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜およびウマに対しても実施される。
【0022】
本発明の方法および組成物によって治療することができるウマの蹄の真菌感染の例としては、鵞口瘡(thrush)、蹄壁菌状腫(hoof wall fungus)、および白線病(white line disease)等が挙げられるが、この限りではない。蹄壁菌状腫および白線病は、爪真菌感染に起因するため、特に好ましい。
【0023】
本発明の方法は、主として爪の真菌感染の治療に関するが、本発明は、皮膚および/または毛の真菌感染症、たとえば白癬および動物白癬の治療にも使用することができる。このような方法は、爪に関して本明細書に記載されているのと同様の方法および用量で、本明細書に記載の組成物を、皮膚および/または毛の感染領域に局所的に適用することにより、実行することが可能である。
【0024】
加えて、真菌がヒトまたは動物に広がる原因となる基体、たとえば地面、筆記用具、寝具類などに、本明細書に記載の組成物を、本明細書に記載されているのと同様の方法および濃度で、局所的に使用することにより、別の状況では、感染がヒトまたは動物宿主に広がる原因となるかもしれない領域における真菌と闘う(combat)/真菌の成長を遅くする、真菌を殺す、および/または滅菌する、などのために、本明細書に記載の組成物を使用して、真菌感染を処置したり、真菌感染と闘うことが可能である。
【0025】
[1.有効な化合物]
本発明の方法は、式Iの化合物の投与を含み、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物を含む。本明細書で使用されるとき、式Iの化合物は、以下の通りである。
R−(O−CH2−CH2n−OH(I)
(式中、Rは、飽和炭化水素、好ましくはC4、C6、C8またはC12〜C18、C24、C26またはC28アルキルであり、nは、1、2、4または6〜16、18または24(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24)である。)
【0026】
上記式(I)の化合物の具体例となる化合物としては以下のものがある。
【0027】
Rは、12であり、nは、4であって、CH3(CH211(OCH2CH24OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)30」の名称で市販されている(たとえば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号23,598−9)、ポリオキシエチレン4ラウリルエーテル。
【0028】
Rは、12であり、nは、23であって、CH3(CH211(OCH2CH223OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)35」の名称で市販されている(たとえば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号85,836−6)、ポリオキシエチレン23ラウリルエーテル。
【0029】
Rは、16であり、nは、2であって、CH3(CH215(OCH2CH22OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)52」の名称で市販されている(たとえば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号38,883−1)、ポリオキシエチレン2セチルエーテル。
【0030】
Rは、16であり、nは、10であって、CH3(CH215(OCH2CH210OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)56」の名称で市販されている(たとえば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号38,885−8)、ポリオキシエチレン10セチルエーテル。
【0031】
Rは、16であり、nは、20であって、CH3(CH215(OCH2CH220OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)58」の名称で市販されている(たとえば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号23,599−7)、ポリオキシエチレン20セチルエーテル。
【0032】
Rは、18であり、nは、2であって、CH3(CH217(OCH2CH22OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)72」の名称で市販されている(たとえばシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号38,888−2)、ポリオキシエチレン2ステアリルエーテル。
【0033】
Rは、18であり、nは、10であって、CH3(CH217(OCH2CH210OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)76」の名称で市販されている(たとえば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号38,889−0)、ポリオキシエチレン10ステアリルエーテル。
【0034】
Rは、18であり、nは、20であって、CH3(CH217(OCH2CH220OHという構造を与える、「ブリッジ(Brij)(登録商標)78」の名称で市販されている(たとえば、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)製品番号23,600−4)、ポリオキシエチレン20ステアリルエーテル。
【0035】
本発明を実施するために使用することが可能な化合物のさらなる例は、上述の情報に基づいて、当業者に明白になるであろう。
【0036】
[2.医薬製剤]
上述の有効な化合物は、既知の技術に準拠して、製薬用担体で、投与用に製剤化することが可能である。たとえば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(第9版、1995年)を参照されたい。本発明による医薬品製剤の製造において、該有効な化合物(生理学的に許容し得るその塩類を包含する)を、一般に、とりわけ許容し得る担体と混合する。該担体は、もちろん、製剤中のあらゆる他の成分と相容性であるという意味で許容できなくてはならず、また患者に有害であってはならない。一つ以上の有効な化合物を、本発明の製剤中に組み入れることが可能であり、これは、任意選択的に一つ以上の副成分を含む成分を混合することで本質的に構成される、周知の調剤技術のいずれかによって調製することができる。
【0037】
爪に局所適用するのに適当な製剤は、好ましくは、液剤(solution)、液剤(liquid)、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾール剤、および/またはオイル剤の形をとる。使用することが可能な、爪に局所適用するために許容し得る担体としては、ワセリン、水、ラノリン、ポリエチレングルコール類、アルコール類、経皮エンハンサー、およびこれらの組合せなどがある。
【0038】
式(I)の化合物またはそれらの塩類に加えて、該医薬組成物は、他の添加物、たとえばpH調節用添加物を含有してもよい。特に、有用なpH調節剤としては、塩酸等の酸類、塩基類もしくはバッファー類、たとえば乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、またはグルコン酸ナトリウムなどがある。さらに、該組成物は、抗菌保存料を含有してもよい。有用な抗菌保存料としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、およびベンジルアルコールなどがあるが、これらには限定されない。本発明の組成物が、他の抗真菌剤を欠いているまたは含まないと記述される場合、これは、組成物自体の中で微生物増殖を防止する薬剤ではなく、対象の爪を治療する他の薬剤を指すと理解される。抗菌保存料は、一般に、該製剤を多回投与用にデザインされたバイアルに入れるときに使用される。
【0039】
一実施形態において、治療を必要としている対象の爪における真菌感染を治療するのに有用な組成物は、
(a)上述した殺真菌化合物の、効果的な抗真菌量(一般に、約0.1、0.5または1〜5、10または15重量%の量で含まれる);
(b)爪保湿剤たとえばヒアルロン酸、αヒドロキシ酸、ワセリン、セラミド、ラノリンなど(一般に、約0.1、0.5または1〜2、3または5重量%の量で含まれる);
(c)水(バランスをとるため);および
(d)任意選択的に、爪硬化剤たとえばビオチンまたは亜鉛;
を含み、またはこれらから構成され、またはこれらから実質的に構成される。爪保湿剤を含むことは、界面活性剤の局所塗布により、爪の乾燥を防止するのに有利に役立つ。該組成物は、任意の適当な形態、たとえば、液剤、クリーム剤またはゲル剤で提供することが可能である。
【0040】
[3.投薬量および投与経路]
上述の通り、本発明は、薬学的に許容し得る局所用、すなわち、経皮投与用担体中に、有効な化合物(薬学的に許容し得るその塩類を包含する)を含む医薬製剤を提供する。
【0041】
いずれか一つの有効な薬剤(その使用は、本発明の範囲内である)の治療的に有効な投薬量は、化合物ごとに、また患者ごとに、幾らか異なり、患者の年齢および状態ならびに送達経路等の因子に左右される。このような投薬量は、当業者に周知の日常的な薬理学的手順に準拠して決定することが可能である。
【0042】
一実施形態において、本明細書に記載の有効な抗真菌組成物は、少なくとも5、8または10重量%の量で、局所送達用製剤中に含まれる。
【0043】
治療継続期間は、少なくとも2〜3週間、または状態が本質的に管理されるまで、1日1回であってもよい。一実施形態において、該継続期間は、冒された爪が伸びるまで、1日1回投与であり、最高2年を要することもある。感染の再発を防止または低減するために、より低頻度で、より低用量の投与を予防的に使用することができる。
【0044】
前述は、本発明の例証であり、本発明を制限するものと考えるべきではない。本発明は、請求の範囲によって明確に規定され、請求の範囲の等価物は、その中に包含される。
【実施例1】
【0045】
[抗真菌感受性テスト]
標準方法(Approved Standard M27−A,National Commitee for Clincal Laboratory Standards,1997年参照)に準拠して、in vitroで、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)培養に対する殺真菌活性について、多数のポリオキシエチレンアルキルエーテルをテストした。簡単に記載すると、紅色白癬菌由来の接種材料は、寒天培養から収穫し、0.85%食塩水中に懸濁し、1ml当たり103コロニー形成単位(CFU)の最終確認濃度に希釈した。次いで、懸濁液を、ある濃度範囲の様々なポリオキシエチレンアルキルエーテルで処理し、30℃で7日間、インキュベートした。最小阻止濃度(MIC)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含まない対照懸濁液と比較したとき、真菌増殖を100%阻止した、化合物の最低濃度として決定した。最適殺真菌濃度(MFC)は、確認された接種材料数と比較したとき、最初の接種材料の少なくとも97%を死滅させた、化合物の最低濃度として決定した。データを表1に示す。
【0046】
これらの結果から、該界面活性剤の化学的特異性は、殺真菌効果に重要であることが分かる。これらの界面活性剤で確認された殺真菌活性は、一般的な洗浄作用ではない。さらに、非イオン性界面活性剤または臨界ミセル含有物(CMC)の一般的な作用ではない。該殺真菌作用は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いたときに最も敏感であった。アルキル側鎖に二重結合を加えることにより、該作用が失われた。(セテス−2およびセテス−20と比較した、オレス(Oleth)−2およびオレス−20を参照)。
【0047】
【表1】

【実施例2】
【0048】
[さらなる真菌感受性テスト]
紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)は、爪真菌感染症治験の患者の68〜100%における原因菌である(Crawfordら(2002年)Archives Dermatol.138:811−816)。毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)は、残りの大部分における原因菌である。酵母および他の非皮膚糸状菌(determatophytes)が、爪真菌感染症を引き起こす可能性もあるが、発生率は低い。実施例1に記載の通りに、ラウレス(Laureth)−4による治療に対する感受性について、さらなる真菌種をテストした。これらのデータを、下記の表2に示す。これらの結果から、非白癬菌種は、ラウレス−4に対して特に敏感ではないこと、および紅色白癬菌に対するラウレス−4の殺真菌活性は、真菌に対する界面活性剤の一般的な作用ではないことが分かる。
【0049】
【表2】

【0050】
前述は本発明の例証であり、本発明を制限するものと考えるべきではない。本発明は請求の範囲によって明確に規定され、請求の範囲の等価物は、その中に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要としている対象の爪の真菌感染症を治療する方法であって、前記対象の爪に、式、
R−(O−CH2−CH2n−OH
(式中、Rは、C12〜C18アルキルであり、nは、1〜24である)
の殺真菌化合物の効果的な抗真菌量を局所的に適用するステップを含む方法。
【請求項2】
Rは、CH3(CH211であり、nは、4である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rは、CH3(CH211であり、nは、23である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Rは、CH3(CH215であり、nは、20である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Rは、CH3(CH217であり、nは、2である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Rは、CH3(CH217であり、nは、20である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Rは、直鎖飽和炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記真菌感染症は、爪真菌感染症である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、ヒト対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記爪は、指の爪および足の爪からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療を必要としている対象の爪の真菌感染症を治療する方法であって、式R−(O−CH2−CH2n−OH(式中、Rは、C12〜C18アルキルであり、nは、1〜24である)の殺真菌化合物から実質的に構成される抗真菌組成物を、薬学的に許容し得る局所用担体と組み合せて、前記対象の爪に局所的に適用するステップを含む方法。
【請求項12】
Rは、CH3(CH211であり、nは、4である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Rは、CH3(CH211であり、nは、23である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Rは、CH3(CH215であり、nは、20である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
Rは、CH3(CH217であり、nは、2である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
Rは、CH3(CH217であり、nは、20である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
Rは、直鎖飽和炭化水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記真菌感染症は、爪真菌感染症である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記対象は、ヒト対象である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記爪は、指の爪および足の爪からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
治療を必要としている対象の爪の真菌感染症を治療する方法であって、組成物の効果的な抗真菌量を前記対象の爪に局所的に適用するステップを含み、該組成物は、式:
R−(O−CH2−CH2n−OH
(式中、Rは、C12〜C18アルキルであり、nは、1〜24である)の殺真菌化合物を含み、かつ該組成物は、他の抗真菌化合物を欠いている方法。
【請求項22】
前記組成物は、イミダゾール誘導体化合物、四級アンモニウム化合物、アリルアミン化合物、およびベンジルアミン化合物からなる群から選択される他の抗真菌薬化合物を欠いている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
治療を必要としている対象の爪の真菌感染症を治療するために有用な組成物であって、
(a)式
R−(O−CH2−CH2n−OH
(式中、Rは、C12〜C18アルキルであり、nは、1〜24である)の殺真菌化合物の効果的な抗真菌量と、
(b)爪保湿剤と、
(c)水と
を含む組成物。
【請求項24】
前記爪保湿剤は、ヒアルロン酸、αヒドロキシ酸、ワセリン、セラミド、およびラノリンからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
(d)爪硬化剤
をさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記爪硬化剤は、ビオチンおよび亜鉛からなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−501223(P2006−501223A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−529789(P2004−529789)
【出願日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/026210
【国際公開番号】WO2004/017903
【国際公開日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(505063223)
【出願人】(505063234)
【Fターム(参考)】