説明

真贋判定型バーコード及びそれ用のスキャナー

【課題】バーコードの偽造、複写を防げるバーコード及びその読み取り用のスキャナーを提供する。
【解決手段】真贋判定型バーコード2は、可視光領域で色を呈しかつ赤外領域で無色に反応する顔料と、赤外領域で発光する検知用物質が用いられ、かつスクランブル用暗号鍵情報によりスクランブル処理をしたバーコード情報が包含されたインキ1で表示される。スキャナーはカメラボードと検出ボードを備えている。該カメラボードはスイッチの押印により該検出ボードに対して所定以上の押印パルス信号を出力する。該検出ボードはこの信号を受けて該バーコードの真贋判定を行い、真の場合は所定以上のHighを出力する。該カメラボードはこの出力を検知してスキャナー動作に移行し、USBやRS232Cインターフェースよりバーコード情報の出力を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定型バーコード及びそれ用のスキャナーにかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
バーコードのインクに核磁気共鳴(NMR)物質を含有させることにより、バーコードそのものの真贋性を判断するようにしたものが、特開2006−065822号公報(特許文献1)に開示されている。
【特許文献1】特開2006−065822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、バーコードは簡単に偽造、複製ができるので、特許文献1では核磁気共鳴物質をインキに包含させてバーコードを表示することにより、偽造防止を果たそうとしている。核磁気共鳴方式を採用する場合は磁場が必要で、装置が大型となり、コストも高くなる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、赤外領域での反応特性を持たせると共にスクランブル用暗号鍵情報によるスクランブル化バーコード情報を包含させたインキによりバーコードを表示し、真贋の判定を、バーコード自体の適否を判断してからスクランブル化バーコード情報の読み取りを行うという二段階工程とすることで、バーコードの真贋を確実に判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1)本発明にかかる真贋判定型バーコードは、可視光領域で色を呈しかつ赤外領域で無色に反応する顔料と、赤外領域で発光共鳴する物質が用いられ、かつスクランブル用暗号鍵情報によりスクランブル処理をしたバーコード情報が包含されているインキで表示されている。
この真贋判定型バーコードは可視光線領域では色を呈するので目視が可能である。一般的には汚れ防止や見やすさの点から黒色が採用される。このバーコードにスキャナーで赤外線を照射すると、ある波長になると先ず顔料が励起して無色となり、この状態で更に波長が長くなると検知用物質が発光共鳴を起こし、この発光がスキャナーの受光部に受光される。従って、この発光共鳴を検知すればインクが所定のものであることが判明する。スキャナーはこの受光により、引き続きスクランブル処理をしたバーコード情報を解読してバーコード情報を表示する。これらの両チェックにより、バーコードの真贋の判定が正確になされる。磁気共鳴のように磁場を用意する必要はなく、検出装置も簡単な構成で済む。
【0006】
(請求項2)該検知用物質は赤外線照射により、波長がそれぞれおよそ820nmで励起し980nmで発光するものであってもよい。
こうすると、該検知用物質の発光を受光することによりインキが真正なものであることが分かる。
【0007】
(請求項3)該バーコード情報には、生産者個人を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化した情報が包含されていてもよい。
こうすると、該バーコード情報を読み取ることによって、商品の生産者個人を特定でき、安心して商品の購入ができる。
【0008】
(請求項4)該バーコード情報には、家畜や魚介類を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化したデータが包含されていてもよい。
こうすると、特定の家畜や魚介類が間違いなく購入者の手元に届くことになり、流通過程で他品と差し替えられても簡単に見分けられる。
【0009】
(請求項5)該バーコード情報には、海産物、野菜、果実等の固体固有の情報がデータ化されて包含されていてもよい。
こうすると、特定の海産物、野菜、果実等が間違いなく購入者の手元に届くことになり、流通過程で他品と差し替えられても簡単に見分けられる。
【0010】
(請求項6)本発明にかかるスキャナーは請求項1から5の一つの項に記載の真贋判定型バーコードの読み取り用で、カメラボードと検出ボードを備えている。該カメラボードはスイッチの押印により該検出ボードに対して200msec以上の押印パルス信号を出力するものである。該検出ボードは該押印パルス信号の受信により該真贋判定型バーコードの真贋判定を行って500msec以内に真贋出力を行うと共に真の場合は同様にパルス幅200msec以上のHighを出力するものである。そして、該カメラボードは該真の出力を検知した場合にスキャナー動作に移行してUSBインターフェースやRS232Cインターフェースよりバーコードデータの出力を行うようになっている。
【0011】
このスキャナーによれば、真正の出力がない場合はスキャナー動作に移行しないので、インキの適否が容易に判明でき、その後にバーコード情報の解読工程に入るので、贋作や複写されたバーコードを簡単に判別できる。
【0012】
(請求項7)該スキャナーの場合、該バーコード情報は暗号解読処理をして読み取られてもよい。
こうすれば、スクランブル化バーコードに包含されている情報を正確に読みだすことができ、該バーコード情報の真贋の判定が確実となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる真贋判定型バーコードは可視光線領域では色を呈するので目視が可能である。一般の取扱者は普通のバーコードとしてしか認識できない。一般的には汚れ防止や見やすさの点から黒色が採用される。このバーコードにスキャナーで赤外線を照射すると、ある波長になると顔料が励起して無色に反応し、この状態で更に波長が長くなると検知用物質が発光共鳴を起こす。スキャナーの受光部がこの発光共鳴を検知すればインクが所定のものであることが判明する。次に、スクランブル処理をしたバーコード情報を解読してバーコード情報を表示する。これらの両チェックにより、バーコードの真贋の判定が正確になされる。磁気共鳴のように磁場を用意する必要はなく、検出装置も簡単な構成で済む。悪意の第三者がこのバーコードを偽造し、複写して商品等に付設しても、リーダーによる照射で簡単に贋作であることを判別できる。
【0014】
請求項2によれば、該検知用物質は赤外線照射により、波長がそれぞれおよそ820nmで励起し980nmで発光共鳴するので、この発光を受光することによりインキが真正なものであることが分かる。
【0015】
請求項3によれば、該バーコード情報には、生産者個人を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化した情報が包含されているので、該バーコード情報を読み取ることによって、商品の生産者個人を特定でき、安心して商品の購入ができる。
【0016】
請求項4によれば、該バーコード情報には、家畜や魚介類を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化した情報が包含されているので、特定の家畜や魚介類が間違いなく購入者の手元に届くことになり、流通過程で他品と差し替えられても簡単に見分けられる。
【0017】
請求項5によれば、該バーコード情報には、海産物、野菜、果実等の固体固有の情報がデータ化されて包含されているので、特定の海産物、野菜、果実等が間違いなく購入者の手元に届くことになり、流通過程で他品と差し替えられても簡単に見分けられる。
【0018】
請求項6のスキャナーによれば、該検出ボードから真正であるとしての出力がない限り、該カメラボードはスキャナー動作に移行しないので、インキの適否が容易に判明でき、その後にバーコード情報の解読工程に入るので、贋作や複写されたバーコードを簡単に判別できる。
【0019】
請求項7によれば、該スキャナーの場合、該バーコード情報は暗号解読処理をして読み取られるので、スクランブル化バーコードに包含されている情報を正確に読みだすことができ、該バーコード情報の真贋の判定が確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る真贋判定型バーコードの具体例をラベルに表示した状態で示す斜面図である。
【図2】スキャナーの受光センサー分光感度特性を示すグラフである。
【図3】顔料の励起分光を示すグラフである。
【図4】顔料の発光分光を示すグラフである。
【図5】インキの分光反射率を示すグラフである。
【図6】受光センサーの出力をオシロスコープにより測定した結果のグラフで、判定対象のない場合である。
【図7】同じく、判定対象をIRグリーンパウダーにした場合である。
【図8】スキャナーの概略構成を示す図である。
【図9】スキャナーのインターフェース動作概要の説明図である。
【図10】真贋判定型バーコードの処理手順を示すもので、(a)は前処理となるバーコードの生成で、(b)はバーコードの読み取り処理である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明にかかる真贋判定型バーコード及びこのバーコードを読み取るためのスキャナーの具体例を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1はラベルRの斜面図で、その一面にインキ1で真贋判定型バーコード2が印刷されたものである。このバーコード2は一次元、二次元及び三次元型式のものが採用可能であるが、ここでは一例として二次元型式のバーコードを採用している。このインキ1には顔料と、赤外領域で発行共鳴する検知用物質が包含されており、この顔料は可視光領域で黒色を呈し、赤外領域で励起して無色に反応する。そして、検知用物質は更に波長が長くなると発光共鳴するものである。
【0023】
このバーコード2の生成は図10の(a)に示したようになされる。ステップS1でバーコードの内容情報を用意する。ステップS2ではこの内容情報にスクランブル用暗号鍵情報Kを用いてスクランブル処理をする。ステップS3でスクランブル化バーコード情報を取得する。ステップS4でこのスクランブル化バーコード情報をDNAインキに包含させ、真贋判定型バーコード2を印刷する。印刷対象はラベルRや、シート、製品、製品の容器や包装等、適当に選べる。
【0024】
ラベルRの場合は商品等に貼り付けて出荷する。需要先でこの商品等の生産者、生産地、内容、流通過程等を確認したいときは、図8のスキャナー3を用いてバーコードの真贋判定をする。バーコード2の読み取り処理は図10の(b)に示したようにしてなされる。ステップS11でバーコード情報の読み取りを行う。ステップS12でDNAインキのインキ検出処理を行う。インキ1は赤外領域で励起して無色となり、更に波長が長くなると検知用物質が共鳴発光するので、スキャナー3はその検出ボード(受光部)32で反射光を受光し、このバーコード2が真正なものと判断する。ステップS13でDNAインキが検出されなかった場合はステップS14に移行し、バーコード情報の読み取りを終了する。
【0025】
検出された場合はステップS15に進み、カメラボード31がバーコード2の読込みを行う。カメラボード31はまたステップS16で読み込んだ情報に対しスクランブル用暗号鍵情報Kを用いてデスクランブル処理(暗号解読処理)を行う。そして、ステップS17でバーコード情報を取得する。
このように、バーコード2はそのインキと内容情報の二重のチェックを受けることになり、贋作や複写されたバーコードを簡単に判別できる。
【0026】
(請求項2)該検知用物質は赤外線照射により、波長がそれぞれおよそ820nmで励起し980nmで発光するものである。
この場合、該検知用物質の発光を受光することによりインキが真正なものであることが分かる。
【0027】
(請求項3)バーコード2には、生産者個人を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化した情報が包含されている。
この場合、バーコード2を読み取ることによって、商品の生産者個人を特定でき、安心して商品の購入ができる。
【0028】
(請求項4)バーコード2には、家畜や魚介類を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化した情報が包含されている。
この場合、特定の家畜や魚介類が間違いなく購入者の手元に届くことになり、流通過程で他品と差し替えられても簡単に見分けられる。
【0029】
(請求項5)バーコード2には、海産物、野菜、果実等の固体固有の情報がデータ化されて包含されている。
この場合、特定の海産物、野菜、果実等が間違いなく購入者の手元に届くことになり、流通過程で他品と差し替えられても簡単に見分けられる。
【0030】
(請求項6)本発明にかかるスキャナー3は真贋判定型バーコード2の読み取り用で、既記の図8に示すように、カメラボード31及び検出ボード32を備えている。そして、電源33を備えている場合もある。
【0031】
このカメラボード31と検出ボード32の関係は図9に例示されたようになっている。即ち、カメラボード31はスイッチ34の押印により検出ボード32に対して200msec以上の押印パルス信号を出力する。検出ボード32は押印パルス信号の受信により真贋判定型バーコード2の真贋判定を行って500msec以内に真贋出力を行うと共に真の場合は同様にパルス幅200msec以上のHighをカメラボード31へ出力する。そして、カメラボード31は真の出力を検知した場合にスキャナー動作に移行してUSBインターフェース35やRS232Cインターフェース36よりバーコード情報の出力をコンピュータ37等に対して行う。
【0032】
このスキャナー3によれば、真正の出力がない場合はスキャナー動作に移行しないので、インキ1の適否が容易に判明できる。しかも、その後にバーコード情報の解読工程に入るので、贋作や複写されたバーコードを簡単に判別できる。
【0033】
(請求項7)このスキャナー3の場合、バーコード情報は暗号解読処理をして読み取られる。
この場合、スクランブル化バーコードに包含されている情報を正確に読みだすことができ、バーコード情報の真贋の判定が確実となる。
【0034】
本発明において採用されるスキャナーの受光センサーの分光感度特性を分光光度計により測定した結果、図2に示すとおり、波長1000nm程度で、最大の0.025vを出力した。即ち、分光感度が赤外にあり、可視光領域の500〜700nmを利用していないことが分かる。
【0035】
インキに包含させた顔料IRS-F/Infrared の励起分光と検知用物質の発光分光を調べた結果はそれぞれ図3と4に示したグラフの通りである。励起分光は図3で分かる通り820nm付近で起きており、発光スペクトルは図4で分かる通り980nm付近で起きている。
【0036】
図5は本発明で使用された黒色インキの分光反射率を示す図である。
この測定は以下の条件でなされた。
測定機 U−3010形分光光度計
測定モード 波長スキャン
データモード 分光反射率 %T
開始 1000.00nm
終了 400.00nm
スキャンスピード 600.00 nm/min
サンプリング間隔 1.00nm
スリット 4nm
光源 WIランプのみ
セル長 10.0nm
サンプル名 ブラック 1
このグラフから分かるとおり、820nmあたりから分光反射が起きている。
【0037】
更に、受光センサーの出力をオシロスコープにより測定した結果は、判定対象がないか又はIRグリーンやREDパウダーが使用されていないものの場合が図6に示され、判定対象をIRグリーンパウダーにした場合が図7に示されている。
【0038】
図6では、赤外LEDの発光(4ms間隔で約75μs間)後に赤外光が数十μsしか検出されなかったのに対し、図7では赤外LED発光後にも赤外光が数百μsにわたり検出されている。
【0039】
従って、判定対象のない場合は赤外LEDの発光及び反射光を検出しているだけなのに対し、IRグリーンパウダーの場合は、それ以外の赤外光を赤外LEDの発光後にも検出していることがわかる。
即ち、本発明では、真贋判定の基準が、検出される光量のレベルではなく、検出される時間となっている。
【符号の説明】
【0040】
1 インキ
2 真贋判定型バーコード
3 スキャナー
31 カメラボード
32 検出ボード
33 電源
34 スイッチ
35 USBインターフェース
36 RS232Cインターフェース
37 パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域で色を呈しかつ赤外領域で無色に反応する顔料と、赤外領域で発光共鳴する検知用物質が用いられ、かつスクランブル用暗号鍵情報によりスクランブル処理をしたバーコード情報が包含されているインキ(1)で表示されていることを特徴とする真贋判定型バーコード(2)。

【請求項2】
該検知用物質は赤外線照射により、波長がそれぞれおよそ820nmで励起し980nmで発光するものである請求項1に記載の真贋判定型バーコード(2)。

【請求項3】
該バーコード情報には生産者個人を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化したデータが包含されている請求項1又は2に記載の真贋判定型バーコード(2)。

【請求項4】
該バーコード情報には家畜や魚介類を特定するDNA遺伝子の分子配列を解析して該DNA遺伝子のアミノ酸の分子配列をデジタル信号化したデータが包含されている請求項1又は2に記載の真贋判定型バーコード(2)。

【請求項5】
該バーコード情報には海産物、野菜、果実等の固体固有の情報がデータ化されて包含されている請求項1又は2に記載の真贋判定型バーコード(2)。

【請求項6】
請求項1から5の一つの項に記載の真贋判定型バーコード(2)の読み取り用のスキャナー(3)で、カメラボード(31)と検出ボード(32)を備え、該カメラボード(31)はスイッチ(34)の押印により該検出ボード(32)に対して200msec以上の押印パルス信号を出力するもので、該検出ボード(32)は該押印パルス信号の受信により該真贋判定型バーコード(2)の真贋判定を行って500msec以内に真贋出力を行うと共に真の場合は同様にパルス幅200msec以上のHighを出力するもので、該カメラボード(31)は該真の出力を検知した場合にスキャナー動作に移行してUSBインターフェース(35)やRS232Cインターフェース(36)よりバーコード情報の出力を行うようになっていることを特徴とするスキャナー(3)。

【請求項7】
該バーコード情報は暗号解読処理をして読み取られる請求項6に記載のスキャナー(3)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−18088(P2011−18088A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160342(P2009−160342)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(309016418)株式会社DNAソリューション (4)
【Fターム(参考)】