説明

眼内レンズ

【課題】優れた焦点調節力を発揮し得る、新規な構造の眼内レンズを提供すること。
【解決手段】中空のカプセル構造体として、内部に透明な液状又はゲル状の充填物32を充填した。また、カプセル構造体の前壁を、可撓性のレンズ前面膜16で構成する一方、カプセル構造体の後壁を、該レンズ前面膜16よりも大径の光学レンズ18で構成した。而して、水晶体嚢への挿入装着状態下で、硝子体の圧力変化が光学レンズ18に及ぼされることに伴い、レンズ前面膜16の膨出変形を利用して、焦点屈折力を調節可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶体嚢内に挿入される眼内レンズに係り、特に、焦点の調節機能を有する眼内レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、白内障等の手術では、角膜(鞏膜)や水晶体前嚢部分などの眼組織に設けた切開部を通じて、嚢内の水晶体を摘出、除去せしめた後、その水晶体に代替する眼内レンズを、前記切開部より眼内に挿入して、嚢内に配する手法が、採用されている。
【0003】
ところで、従来から用いられている眼内レンズは単焦点のものであり、焦点の調節機能を有していない。それ故、術後の視力は回復するものの、焦点の調節力の無い眼機能になってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、従来から、焦点の調節機能を有する眼内レンズとして、以下に示すような眼内レンズが考案され、提案されている。
【0005】
例えば、眼内レンズとしてバイフォーカルレンズやマルチフォーカルレンズ等の多焦点を有するレンズを用いて、疑似的な焦点調節力を得るようにしたものが提案されている。しかし、このような眼内レンズは、同時視力特性を有するものであることから、例えばコントラスト感度が低下してしまう等、見え方の質が悪く、十分な調節機能は得られていない。
【0006】
また、特許文献1(特表2004−528135号公報)には、伸縮性のあるエラストマーから形成されたバルーンを水晶体嚢内に挿入して、嚢の動きに追従して変形することによって焦点を調節する眼内レンズが提案されている。ところが、多様な圧力が作用する水晶体嚢内においてバルーンの変形およびそれに基づく光学特性の変化を精密に制御することは非常に困難であって、基本的な視力および安定した調節力を確保し難いことから実用性に乏しい。
【0007】
特に、特許文献1に記載の眼内レンズは、毛様体筋の収縮でレンズが径方向に圧縮されることにより、レンズの脆弱な部分が変形して焦点調節機能が発現されることが期待されている。しかし、レンズの変形による調節機能は水晶体嚢、チン氏帯、および毛様体などが正常に機能していることを前提とするものであり、白内障施術後に挿入される眼内レンズに毛様体筋の力が充分に及ぼされるとは考え難い。更に、水晶体は遠方視の時にはチン氏帯によって引っ張られることで扁平な形状とされる一方、近方視の時には毛様体筋の緊張によりチン氏帯が弛緩せしめられることによって元の形状である凸形状に復元せしめられる。即ち、毛様体筋が緊張によって収縮したとしても、毛様体筋と嚢を繋ぐチン氏帯が弛緩するだけで、特許文献1に記載の如きレンズを弓なりに変形させるような圧縮力がレンズに及ぼされるとは考え難い。
【0008】
また、特許文献2(特表2003−527898号公報)には、バルーン状の弾性部材に光学レンズを設けた眼内レンズを水晶体嚢内に挿入して、水晶体嚢の動きに基づく弾性部材の変形によって光学レンズを前後せしめることによって、焦点を調節するものが提案されている。ところが、このような眼内レンズにおいても、弾性部材の変形は水晶体嚢の変形に基づいて行われるものであることから、前述のバルーンと同様、光学特性の変化を高精度に制御し難いという問題がある。更に、光学レンズの微小な前後方向の変位のみでは、せいぜい1D程度の屈折力変化しか得ることは出来ず、十分な調節機能を得ることは出来ない。
【0009】
また、特許文献3(特表2001−525220号公報)には、光学レンズの支持部材にヒンジ部を設けて、焦点を合わせるときの硝子体の圧力変化を用いて光学レンズを光軸に対して前後移動せしめることによって調節力を得る眼内レンズが提案されている。しかし、本先行文献に記載の眼内レンズにおいても、光学レンズを微小な前後方向範囲で変位せしめるに過ぎない点で前述の特許文献2と同様であり、十分な調節機能を得ることは出来ない。更に、術後は水晶体嚢が収縮して眼内レンズに密着することから、光学レンズの動きが水晶体嚢で阻害されてしまい、充分な調節機能を発揮できなくなるおそれもあった。
【0010】
【特許文献1】特表2004−528135号公報
【特許文献2】特表2003−527898号公報
【特許文献3】特表2001−525220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた焦点調節力を発揮し得る、新規な構造の眼内レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面の記載、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
すなわち、本発明の特徴とするところは、水晶体嚢に挿入される眼内レンズであって、(a)透明な弾性膜によって形成されたレンズ前面膜と、(b)該レンズ前面膜に対して光軸方向で離隔して対向配置された、該レンズ前面膜よりも大径の透明な光学レンズと、(c)該光学レンズの外周側に広がる可撓性の環状後面膜と、(d)該レンズ前面膜および該環状後面膜の外周側に位置せしめられて、該レンズ前面膜の外周縁部と該環状後面膜の外周縁部をそれぞれ支持せしめることにより、該レンズ前面膜と前記光学レンズの対向面間を外部から遮断してカプセル構造とする外周連結部と、(e)前記レンズ前面膜と前記光学レンズの対向面間における前記カプセル構造の内部に充填された透明な液状又はゲル状の内部充填物と、(f)前記外周連結部から外周側に延び出して水晶体嚢の赤道部内面に接することにより該外周連結部を水晶体嚢に対して位置決めする位置決め部とを、有することにある。
【0014】
このような本発明に従う構造とされた眼内レンズにおいては、レンズ前面膜,光学レンズ,環状後面膜,外周連結部を含んで全体としてカプセル構造とされており、このカプセル構造に内部充填物が充填されることによって、全体として一体的な光学部品である眼内レンズが構成されている。そして、カプセル構造体の外周フレームを構成する外周連結部が、位置決め部により、水晶体嚢に対して位置決めされた状態で人眼に装用されるようになっている。かかる装用状態下において、レンズ前面膜は、その両面にカプセル内外の圧力差が作用せしめられることにより、レンズ前面膜自体の弾性に基づいて、膨出/収縮変形し得るようになっている。また、光学レンズは、その両面にカプセル内外の圧力差が作用せしめられることにより、環状後面膜の変形に基づいて、カプセル内外に変位し得るようになっている。
【0015】
これにより、光学レンズに対して外面に圧力が作用せしめられて、光学レンズがカプセル構造の内方に変位せしめられた場合には、内部充填物を介して圧力がレンズ前面膜の内面に及ぼされることとなり、以て、レンズ前面膜がカプセル構造の外方へ押し出されて膨出変形せしめられることとなる。このレンズ前面膜は、外周縁部を、レンズ前面膜よりも剛性の大きい外周連結部で支持されて拘束されていることから、カプセル構造の外方への膨出変形に際しては、中央部分が大きく膨らんで外方にドーム状に変形する。その膨出変形量が大きくなる程に、レンズ前面膜は、曲率半径が小さくなる略球殻形状とされる。そして、かかるレンズ前面膜が凸面形状とされる結果、レンズ前面膜と内部充填物および光学レンズを含んで構成された眼内レンズ全体の光学特性(屈折力)が変化せしめられる。これにより、焦点調節機能が発揮されることとなる。
【0016】
ここにおいて、本発明に従う構造とされた眼内レンズは、主としてレンズ前面膜の曲率を変化せしめることによってその屈折力を変化せしめるようにされている。これにより、レンズを前後方向に変位せしめることによって屈折力を変化せしめる従来構造の眼内レンズに比して、小型でも充分に大きい屈折力調節域、即ちディオプターの変化量を得ることが可能となる。しかも、眼内レンズの変位自体は、殆ど必要とされないことから、例えば水晶体嚢が収縮して眼内レンズに被着したとしても、目的とする屈折力調節機能が長期間に亘って安定して発揮され得る。特に、膨出変形によって屈折力調節機能を直接に発揮することになるレンズ前面膜は、前面中央に比較的に小さく形成されることから、例えば水晶体嚢の切開創の位置とあわせることで、水晶体嚢の収縮による悪影響を一層有利に回避することが出来る。
【0017】
加えて、特に本発明においては、ピストン的な作用によって内部充填物に圧力変形を生ぜしめる光学レンズの径寸法がレンズ前面膜の径寸法よりも大きくされていることから、光学レンズの変位量をレンズ前面膜の変位量に対して増幅させて伝達することが出来る。それ故、硝子体の圧力変化を、レンズ前面膜の膨出変形に対して効率的に変換せしめて、大きな屈折力の調節能力を得ることが可能となるのである。
【0018】
なお、本発明におけるレンズ前面膜、光学レンズ、外周連結部および内部充填物は何れも透明とされているが、かかる透明とは、無色透明のみならず、有色透明も含むものであり、少なくとも可視光線の透過率が80%以上であることが好ましい。一方、位置決め部は、透明であっても良いし、不透明であっても良い。例えば、不必要な反射や屈折を防止するために、不透明の部材を採用したり粗面加工を施すなどしても良い。
【0019】
また、位置決め部の具体的な形状は何等限定されるものではない。例えば、単に外周連結部が全周に亘って延び出された円環平板形状や、円環形状の外周連結部の外周面から複数本の支持脚部を径方向外方に突出形成したり、その他、従来の眼内レンズにおいて採用されている各種の支持部の構造を採用することも可能である。
【0020】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記レンズ前面膜における外側面の曲率と内側面の曲率が異ならされている構成が、好適に採用される。
【0021】
さらに、そのような構成として、本発明に係る眼内レンズでは、前記レンズ前面膜において、中央部分が外周部分よりも薄肉とされている構成が、好適に採用される。
【0022】
このような構成に従えば、レンズ前面膜自体にある程度の屈折力を持たせることも出来る。また、レンズ前面膜の肉厚寸法を変化させることにより強度乃至は変形剛性を異ならせることが出来ることから、圧力が作用した際の変形態様をコントロールすることも可能となる。具体的には、内部充填物から及ぼされる圧力変化に対するレンズ前面膜の形状変化を、例えば有限要素法等を利用して予測して、目的とするレンズ特性の調節機能が発揮されるように、膜厚分布を設計すること等も可能となる。ここにおいて、レンズ前面膜は、球面屈折力を調節するには球状面を保って変形せしめられるように設計しても良いし、例えばより大きいレンズ度数の調節力を持たせる場合に、収差等を考慮して、非球面で変形せしめられるようにしても良い。このような各種の目的とするレンズ前面膜の形状を得るためには、例えば、設計時において有限要素法等の解析によって、レンズ前面膜の各部の厚さ寸法を異ならせることによって最適値を求めることが出来る。
【0023】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記外周連結部における前記レンズ前面膜との接続部位が、その外側面において段差のない滑らかな面とされている構成が、好適に採用される。
【0024】
このような構成に従えば、眼内レンズの前面(角膜側の面)側の全体を、段差のない滑らかな面とすることが可能となる。これにより、例えば眼内レンズを通じて眼内に入射する光が眼内レンズの表面で乱反射や散乱等することに起因する光学特性への悪影響を回避することが出来る。
【0025】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、水晶体嚢内へ挿入された状態において、硝子体の圧力に基づいて、前記光学レンズが前記カプセル構造の内方へ変位せしめられ得るようになっている構成が、好適に採用される。
【0026】
このような構成に従えば、硝子体の圧力変化を巧く用いて、眼内レンズの屈折力を調節することが出来る。即ち、近方視の場合には、毛様体筋が収縮することに基づいて生ぜしめられる硝子体の圧力変化が、光学レンズをカプセル構造の内方へ変位せしめる。これにより、カプセル前面膜を膨らませて、水晶体が膨張せしめられると同様の焦点調節力を得ることが出来る。それ故、水晶体嚢内へ挿入された眼内レンズは、毛様体筋の弛緩状態下で、光学レンズがカプセル構造において充分に外方に位置せしめられた状態とされることが望ましい。なお、本発明に係る眼内レンズにおいて、好ましくは、水晶体嚢に挿入される前の単体状態に比して、水晶体嚢に挿入された状態下では、光学レンズがカプセル構造の内方に変位せしめられた状態に維持されるようにされる。これにより、光学レンズの位置安定性の向上が図られ得る。
【0027】
さらに、そのような構成として、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記光学レンズが、硝子体の圧力変化を受けても変形しない剛性をもって形成されている構成が、好適に採用される。
【0028】
このような構成に従えば、レンズ前面膜の形状変化を安定して生ぜしめることが出来る。即ち、硝子体の圧力変化は光学レンズに不均一に作用する場合があるが、そのような場合においても、本構成によれば、光学レンズの全体がその形状を保って変位せしめられることから、光学レンズの歪に起因する光学不良が防止され得る。
【0029】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記光学レンズの前記カプセル構造の内方への変位量が0.01mm〜1.0mmの範囲内で設定されている構成が、好適に採用される。
【0030】
なお、光学レンズの変位量は、眼内レンズを装用する個人や、光学レンズとレンズ前面膜の径寸法差等によっても異なるが、光学レンズの変位量が0.01mmに満たないと、必要とされる程の屈折力の調節機能を得ることが難しい。一方、光学レンズの変位量が1.0mmを超えると、必要以上に屈折力が変化してしまったり、レンズ前面膜や環状後面膜等の変形量が大きくなって耐久性が問題となるおそれもある。従って、硝子体の圧力変化に基づいて発現される光学レンズの変位量は、眼内への装用状態下で、設定上、0.01mm以上で且つ1.0mm以下の範囲において、適当な値に設定されることが望ましい。
【0031】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、水晶体嚢内に挿入された状態において、硝子体の圧力変化によって前記光学レンズが前記カプセル構造の内方に押し込まれることによって生ぜしめられた前記内部充填物の圧力変化により前記レンズ前面膜を該カプセル構造の外方に押し出し、該レンズ前面膜の曲率を変化せしめることで+1D(ディオプタ)以上の屈折力変化を生ぜしめる構成が、好適に採用される。
【0032】
特に、眼内レンズにおける屈折力が、少なくとも+1D〜+3Dの範囲を含んで変化せしめられるようにすることが望ましい。
【0033】
これにより、眼内レンズの装用により、近用から遠用まで、広い範囲に亘って良好な視力が実現可能となる。なお、かかる屈折力は、眼内レンズを大気中においた単体で得られるものでなく、水晶体嚢内に挿入して人眼に装用せしめた状態下での値である。
【0034】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記レンズ前面膜と前記内部充填物の屈折率の差が3%以内とされている構成が、好適に採用される。より好適には、前記レンズ前面膜と前記内部充填物の屈折率の差が1%以内、更に好適には、0.5%以内とされる。
【0035】
このような構成に従えば、眼内レンズの光学特性に生じる悪影響を軽減することが出来る。蓋し、レンズ前面膜と内部充填物との屈折率差が大きいと、レンズ前面膜と内部充填物との界面での反射が大きくなって、光量の損失やグレアの問題を生じ易いからである。また、レンズ前面膜と内部充填物の界面での反射を抑えることによって、レンズ前面膜の肉厚分布が屈折力に影響することを回避して、レンズ前面膜の前面(角膜側)の曲率のみに基づく安定した光学特性を得ることが出来る。なお、光学レンズも、レンズ前面膜と略同じ屈折率の材料で形成されることが望ましく、内部充填物との屈折率の差が3%以内とされることが望ましく、より好適には0.5%以内、更に好適には0.5%以内とされる。
【0036】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記内部充填物のポアソン比が0.46以上とされている構成が、好適に採用される。
【0037】
このような構成に従えば、光学レンズに及ぼされる硝子体の圧力が、内部部充填物を介して、レンズ前面膜に対して効率的に伝達されて作用せしめられる。
【0038】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方のヤング率が0.001MPa〜5MPaとされている構成が、好適に採用される。より好適には、該レンズ前面膜および該環状後面膜の少なくとも一方のヤング率が0.01MPa〜2MPaとされる。
【0039】
このような構成に従えば、レンズ前面膜の形状の変化とその復元、環状後面膜に支持された光学レンズの変位および復帰を有効に行なうことが出来る。なお、レンズ前面膜および環状後面膜のヤング率が互いに異ならされていても良いことは言うまでも無い。これらの値の調節は、例えば、レンズ前面膜および環状後面膜それぞれの部材厚を調節すること等によって行なうことが出来る。
【0040】
また、本発明に係るレンズ前面膜および環状後面膜の材料としては、透明で人体に無害なものであれば各種の材料が適宜に採用可能であるが、好適な材料を用いた構成としては、以下の構成が挙げられる。
【0041】
前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方がシリコーンゴムから形成されている構成。
【0042】
前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方がヒドロゲルから形成されている構成。
【0043】
前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方が架橋された(メタ)アクリレート共重合体から形成されている構成。
【0044】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記位置決め部および前記外周連結部の剛性が前記レンズ前面膜および前記環状後面膜よりも高くされている構成が、好適に採用される。
【0045】
このような構造に従えば、カプセル構造を水晶体嚢内で安定して位置決めしつつ、硝子体の圧力変化をカプセル構造に有効に伝達して、光学レンズの変位およびレンズ前面膜の変形を有効に生ぜしめることが出来る。
【0046】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記光学レンズが、前記環状後面膜から前記カプセル構造の外方に0.05mm以上突出せしめられている構成が、好適に採用される。
【0047】
さらに、そのような構造とされた眼内レンズにおいて、前記光学レンズの外周縁部における少なくとも前記カプセル構造の外方側が全周に亘ってシャープエッジ形状とされている構成が、好適に採用される。
【0048】
このような構造に従えば、光学レンズの後嚢側の外周縁部を、後嚢の内周面に食い込むように押さえつけることが出来て、水晶体上皮細胞の遊走を有効に防止することが出来る。これにより、白内障手術の最大の合併症である後発白内障の発生を有効に防止することが出来る。
【0049】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記カプセル構造の屈折力を調節する屈折力調節手段を備えた構造が、好適に採用される。
【0050】
そして、そのような屈折力調節手段としては、例えば、前記内部充填物の屈折率及び量の少なくとも一方を変化せしめることによって、前記屈折力調節手段を構成した構造が、好適に採用される。
【0051】
このような構造に従えば、使用者の個性に応じて屈折力を調節することが可能となって、より良好な視界を提供することが出来る。なお、かかる屈折力調節手段は、眼内レンズの製造過程において内部充填物の屈折率を変化せしめるものでも良いし、或いは、製造完了後において施術前や施術中又は施術後に変化せしめるものでも良い。このような屈折力調節手段の具体的な例としては例えば、カプセル構造とした眼内レンズの内部を眼内レンズの外部空間に連通する密閉可能な管路を設けて、かかる管路を通じて内部充填物を注入乃至は吸引可能な構造とすることによって実現され得る。
【0052】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記内部充填物の屈折率が1.34〜1.60とされている構造が、好適に採用される。
【0053】
このような構造に従えば、優れた光学特性を得ることが出来る。蓋し、屈折率が1.34より小さい場合には、眼内レンズとしての有効な屈折力や、焦点調節力が得られ難い。一方、屈折率が1.60より大きい場合には、表面反射が大きくなり過ぎると共に、僅かな形状変化で屈折力が大きく変化することから、制御が困難となるからである。
【0054】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記光学レンズの径寸法が3.0mm〜7.0mmとされている構造が、好適に採用される。
【0055】
蓋し、光学レンズは、人の水晶体としての機能を有効に果たし得るのに適当なサイズが必要とされる。それに加えて、眼内レンズが収容状態で挿入される人の嚢のサイズが略一定であることから、光学レンズの外径寸法が3.0mmより小さいと、支持部が長くなり過ぎて不安定な変形等が発生し易くなる一方、光学レンズの外径寸法が7.0mmより大きいと支持部が短くなり過ぎて、水晶体嚢の変形によって及ぼされる外力の緩衝作用が十分に得られなくなるおそれがあるからである。
【0056】
また、本発明に係る眼内レンズにおいては、前記環状後面膜の幅寸法が0.1〜2.0mmとされている構造が、好適に採用される。
【0057】
蓋し、環状後面膜の幅寸法が0.1mmよりも小さくされると、十分な可撓性が得られず、光学レンズの変位を有効に生ぜしめられなくなる一方、2.0mmよりも大きくされると、光学レンズを安定して支持することが出来ず、光学レンズのカプセル構造内方への変位が安定して生ぜしめられなくなるおそれがあるからである。
【発明の効果】
【0058】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた眼内レンズにおいては、人眼における硝子体の圧力変化を巧く利用して、レンズ前面膜を効率的に形状変化させることが出来る。そして、レンズ前面膜の曲率変化により、眼内レンズの屈折力を変化させて、有効な焦点調節力を得ることが可能となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0060】
先ず、図1および図2に、本発明の第一の実施形態としての眼内レンズ10を示す。なお、本実施形態における眼内レンズ10は、水晶体嚢への挿入状態において、図2における左側が角膜側、右側が後嚢側に位置せしめられるようにされており、以下の説明において、前方とは図2における左側を示し、後方とは図2における右側を示すものとする。また、図1は眼内レンズ10の背面(後嚢側の面)を示すものである。更に、図2においては、理解を容易とするために、後述する前面膜16および後面膜24の厚さ寸法を誇張して示す。
【0061】
眼内レンズ10は、カプセル構造とされた光学部12の外周部分の全周に亘って複数(本実施形態では6つ)の位置決め部としての支持脚部14が設けられた構造とされている。
【0062】
より詳細には、光学部12は、レンズ前面膜としての前面膜16および光学レンズ18が光軸方向で離隔して対向配置された構造とされている。
【0063】
前面膜16は、透明な弾性膜によって形成されており、容易に変形可能とされていると共に、光学レンズ18の径寸法よりも小さな径寸法を有する略円形状の膜とされている。特に本実施形態においては、図3にも示すように、前面膜16は、中央部分が最も薄肉とされており、外周側に行くに従って次第に厚肉とされている。即ち、前面膜16は、中心軸から半径方向外方に向かって連続して無段階に厚さ寸法が大きくなっており、中心軸回りの何れの円周上でも厚さが一定とされている。また、本実施形態における前面膜16は、前面(外面)16aが球状凸面とされている一方、後面(内面)16bが球状凹面とされている。そこにおいて、前面16aと後面16bの曲率が、相互に異ならされている。なお、かかる前面膜16の前後面16a,16bの曲率は、後述する充填物32の形状変化に応じて所望の曲率に変形するように、例えば設計時において有限要素法によるシュミレーションによって導き出された結果等に基づいて決定される。
【0064】
一方、光学レンズ18は、前面膜16よりも大きな外径寸法を有しており、外側面20および内側面22の何れもが球状凸面とされた凸レンズとされている。そして、光学レンズ18には、内側面22の外周縁部の全周に亘って、径方向外方に向かって広がる可撓性を有する環状後面膜としての後面膜24が一体的に形成されている。更に、特に本実施形態においては、光学レンズ18の外側面20は、後面膜24から後方に突出せしめられていると共に、後方に突出せしめられた外側面20の外周縁部には、全周に亘ってシャープエッジ形状とされたエッジ26が形成されている。シャープエッジ形状は、後述する後発白内障の抑制効果が得られる程度に充分な角部をもった断面形状とされる。
【0065】
なお、光学レンズ18の径寸法は、3.0mm〜7.0mmの範囲内で設定されていることが好ましい。蓋し、光学レンズ18は、人の水晶体としての機能を有効に果たし得るのに適当なサイズが必要とされる。それに加えて、眼内レンズ10が収容状態で挿入される人の嚢のサイズが略一定であることから、光学レンズ18の外径寸法が3.0mmより小さいと支持脚部14が長くなり過ぎて不安定な変形等が発生し易くなる一方、光学レンズ18の外径寸法が7.0mmより大きいと支持脚部14が短くなり過ぎて後述する外力の緩衝作用が十分に得られなくなるおそれがあるからである。
【0066】
また、外側面20の後面膜24からの突出量は、好ましくは0.05mm以上とされることが望ましい。蓋し、突出量が0.05mmより小さいと、後述する後嚢内周面への当接力を十分に得られ難いからである。また、エッジ26に形成されるシャープエッジ形状は、従来から眼内レンズに広く用いられるシャープエッジ形状が採用可能であって、必ずしも厳密な角部が形成されているものに限定されることは無く、加工上の都合等から、多少の曲面をもって形成されるものなども含む。
【0067】
また、後面膜24のレンズ径方向における幅寸法は、0.1mm〜2.0mmの範囲内で設定されることが望ましい。蓋し、後面膜24の幅寸法が0.1mmよりも小さくされると、十分な可撓性が得られ難く、光学レンズ18の変位を有効に生ぜしめられなくなるおそれがある。一方、2.0mmよりも大きくなると、光学レンズ18を安定して支持することが難しくなって、光学レンズ18の変位が安定して生ぜしめられなくなるおそれがあるからである。
【0068】
なお、これら前面膜16および光学レンズ18を形成する材料は、眼内レンズを与えるのに十分な可視光線の透過率を備えている人体に無害な部材であれば各種の材料が適宜に採用可能であるが、例えばポリジメチルシロキサンやポリジメチルジフェニルシロキサンなどのシリコーンゴム、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロゲル、または架橋された(メタ)アクリレート共重合体などが好適に採用される。その中でも、以下(i) に示す如き(メタ)アクリル酸エステルを、一種または二種以上含むモノマーを採用することが望ましい。また、以下(ii)に示す如き任意モノマーが適宜に配合される。更に、必要に応じて、以下(iii)に示す如き添加物が必要に応じて加えられる。
【0069】
(i) 含有モノマー
以下の如き、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル(メタ)アクリレート類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等
以下の如き、水酸基含有(メタ)アクリレート類;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等
以下の如き、芳香環含有(メタ)アクリレート類;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等
以下の如き、シリコーン含有(メタ)アクリレート類;
トリメチルシロキシジメチルシリルメチル (メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート等
なお、「(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」並びに「・・・メタクリレート」の二つの化合物を総称するものであり、後述するその他の(メタ)アクリル誘導体についても同様とする。
【0070】
(ii)任意モノマー
以下の如き、(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等
以下の如き、N−ビニルラクタム類;
N−ビニルピロリドン等
スチレンまたはその誘導体
以下の如き、架橋性モノマー;
ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート
【0071】
(iii)添加物
熱重合開始剤、光重合開始剤、光増感剤等
色素等
紫外線吸収剤等
【0072】
なお、前面膜16および光学レンズ18は、互いの部材間での予期せぬ屈折や乱反射等を防止したり、互いの固着を容易にするために、互いに同一の材料で形成されることが好ましいが、互いに異なる材料で形成することも可能である。
【0073】
また、このようなモノマー材料を用いて、前面膜16および光学レンズ18を形成するに際しては、従来から公知の各種手法が何れも採用可能であり、例えば切削加工成形法やモールド成形法によって目的とする前面膜16乃至は光学レンズ18を得ることが出来る。切削加工成形法によれば、上述の如きモノマー材料からなる所定の重合成分を重合して棒状やブロック状、板状等の適当な加工物を成形した後、旋盤等を用いて、かかる加工物に対して切削加工を施すことにより、前面膜16および光学レンズ18を得ることが出来る。また、モールド成形法によれば、目的とする前面膜16および光学レンズ18の形状に対応した成形キャビティを有する成形型を用いて、上述の如きモノマー材料からなる所定の重合成分を、その成形キャビティ内に導入し、そこで適当な重合操作を実施することによって、所望形状の前面膜16および光学レンズ18を得ることが出来る。なお、モノマー材料の重合方法としては、モノマー材料に応じて、従来から公知の熱重合方法や光重合方法、或いはそれらを組み合わせた重合方法等が適宜に採用される。
【0074】
なお、本実施形態における眼内レンズ10は、前面膜16および後面膜24のヤング率が、それぞれ、0.001MPa〜5MPaの範囲内で設定されており、より好ましくは、0.01MPa〜2MPaの範囲内で設定される。これにより、後述する前面膜16の形状の変形および復元や、光学レンズ18の変位および復帰を有効に行なうことが出来る。このような前面膜16および後面膜24の弾性力は、例えば、これらの部材厚を調節することなどによって調節される。かかる値は、前面膜16および後面膜24で互いに同じ値とされていても良いし、異ならされても良い。
【0075】
さらに、光学レンズ18は、後述する硝子体の圧力変化を均一に充填物32に及ぼし、前面膜16を安定して変形せしめるために、硝子体の圧力変化を受けても変形しない程度の剛性を備えるようにその厚み寸法が考慮されて形成される。
【0076】
このような構造とされた前面膜16および光学レンズ18が、光軸方向で重ね合わされて、前面膜16の外周縁部25に一体的に形成された外周連結部28の外周縁部の後端面に対して、後面膜24の外周縁部27が重ね合わされて接着や溶着等で互いに固定されている。これにより、前面膜16の外周縁部が外周連結部28で直接に支持されていると共に、光学レンズ18の外周縁部が後面膜24を介して外周連結部28で支持されている。而して、眼内レンズ10は、前面膜16と光学レンズ18との対向面間に外部から遮断された内部空間30を有するカプセル構造とされている。なお、本実施形態においては、外周連結部28の厚さ寸法が中央に向かって次第に小さくされていることによって、外周連結部28の内側面には内側凹面29が形成されており、かかる内側凹面29を含んで、内部空間30が形成されている。また、外周連結部28の外周縁部の後端面は、後面膜24の厚さ寸法と等しい深さ寸法だけ窪んで形成されており、これによって、後面膜24の外周縁部27が支持脚部14の後面35との間に段差を生じないようにされている。
【0077】
このようにして、光学レンズ18は、容易に変形可能な後面膜24を介して外周連結部28に連結されていることにより、前面膜16に対して光軸方向での位置が相対的に変位可能とされている。なお、光学レンズ18の光学部12の内方への変位量は、水晶体嚢内への挿入状態下において、0.01mm〜1.00mmの範囲内で設定されていることが望ましい。
【0078】
また、本実施形態においては、外周連結部28と前面膜16は一体的に形成されている。ここにおいて、外周連結部28の厚さ寸法は、内側凹面29の側が中央に行くにつれて次第に薄くされており、前面における前面膜16と外周連結部28との接続部分は、段差の無い平坦面とされている。これにより、眼内レンズ10の表面で乱反射が生じるようなことも回避されているのである。
【0079】
そして、前面膜16と光学レンズ18との対向面間に形成された内部空間30の全体には、内部充填物としての充填物32が充填されている。かかる充填物32は、光学レンズ18の変位に応じて容易に形状が変化せしめられるポアソン比0.46以上の透明な液体やゲル状の部材とされている。
【0080】
ここにおいて、充填物32の屈折率は、房水の屈折率よりも高く、1.34〜1.60とされていることが望ましい。蓋し、屈折率が1.34より小さい場合には、有効なパワーや、焦点調節力が得られない一方、屈折率が1.60より大きい場合には、表面反射が大きくなり過ぎる。
【0081】
また、屈折率が高すぎると、光学部12の僅かな形状変化によって屈折力が大きく変化してしまい、眼内挿入時(非調節時)の屈折力を制御することが困難となる。例えば、充填物32が1.4の屈折力を有する場合、硝子体圧の変化によって光学レンズ18が0.02mm押し込まれることで、+3D近い調節力を得ることが出来る。これは、従来提案されていた、光学レンズが単純に前後する構造における屈折力変化に比べて遥かに大きい。
【0082】
さらに、充填物32と前面膜16の屈折力差は、3.0%以下とされていることが望ましく、より好適には1.0%以下、更に好適には0.5%以下とされることが望ましい。蓋し、充填物32と前面膜16との屈折力差が大きいと、前面膜16と充填物32との界面での反射が大きくなって、光量の損失やグレアの問題を生じ易い。また、後述するように、充填物32の形状変化によって前面膜16を容易に変形せしめるためには、前面膜16の寸法は小さくされていることが好ましいのであるが、前面膜16の寸法を小さくすると、有効光学部が小さくなるという問題がある。そこで、前面膜16と充填物32の屈折率を殆ど同じにすることによって、前面膜16の肉厚分布に影響されることのない、前面膜16の前面16aの曲率のみに依存する光学性能を得ることが出来るからである。
【0083】
このような充填物32としては、上述の如き特性を有する物であれば何等限定されることはなく、液体または架橋されたゲルなどが好適に採用される。液体としては、塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの無機塩、デキストラン、グルコース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなどの糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの有機合成ポリマーの水溶液などが例示される。ゲルとしては、特開平2−109568号公報に記載のようなシリコン系のゲル、特開平2−255151号公報に記載の光重合が可能なゲル、或いは上記有機合成ポリマーの水溶液をγ線や電子線等の放射線で架橋したゲルなどが例示される。
【0084】
なお、このような充填物32を内部空間30に充填するに際しては、例えば、眼内レンズ10の製造段階において、予め前面膜16の内面に形成されている凹所に充填物32を満たしてから光学レンズ18で蓋をするように重ね合わせたり、或いは充填物32中に前面膜16および光学レンズ18を浸漬せしめて、充填物32中で重ね合わせるなどして充填することも可能である。
【0085】
また、充填物32の充填を、眼内レンズ10の製造後、例えば眼内への挿入後等に、行なうこと等も可能である。具体的には、例えば、図4に示されている如く、特開平1−227753号公報や特開平4−224746号公報に記載のように、内部空間30と眼内レンズ10の外部を連通せしめ得る管体31を設け、この管体31を通じて、充填物注入管33を挿し入れ可能とすることによって、実現され得る。なお、充填物注入管33を抜き取った後、管体31を通じての充填物32の漏れ出しは、例えば、特開平4−224746号公報に記載のように封止用ゲルを管体31内に充填しておいたり、管体31の先端部を接着や溶着等で封止することによって防止することが出来る。より好適には、かかる管体31は、外周連結部28を貫通して形成されて、眼内レンズ10の光学特性への悪影響が回避される。また、管体31は、前面側に向かって突出するようにして設けられ、眼内レンズ10の嚢内への装着状態下で眼の外方に向かって突出するようにされることが望ましい。これにより、施術中や施術後に、管体31を利用した充填物32の注入や排出が容易とされる。
【0086】
以上のような構造とされた光学部12の外周縁部には、複数(本実施形態においては6つ)の支持脚部14が設けられている。これら複数の支持脚部14は、互いに同一の形状とされており、光学部12の外周縁部から外周側に向かって径方向外方に向かって延び出すように形成されている。特に本実施形態においては、支持脚部14の角膜側に位置する前面34および後嚢側に位置する後面35は何れも平坦面とされており、外周連結部28の外周縁部と略同じ一定の厚さ寸法をもって外周連結部28と一体的に形成されている。このことから明らかなように、本実施形態における支持脚部14の厚さ寸法は、前面膜16および後面膜24に比して十分大きくされており、支持脚部14の剛性は、前面膜16および後面膜24の剛性よりも高くされている。
【0087】
かかる支持脚部14には切欠部36が形成されており、かかる切欠部36によって、支持脚部14は、外周側から内周側に向かって周方向にえぐり取られるような形態で、円弧状の湾曲した内面をもって形成されている。特に本実施形態においては、切欠部36が眼内レンズ10の径方向外方に向かって凹状の湾曲面として形成されており、光学部12からの延出方向の略中間部分が挟幅とされていると共に、先端部は光学部12の周方向に沿って僅かに広がる略楕円形状とされている。
【0088】
このような湾曲した複数の支持脚部14の外径寸法(複数の支持脚部14の外接円の直径寸法)は、光学部12の外径寸法を考慮して、一般的な人の嚢のサイズに適合するように設定される。これにより、支持脚部14の外周縁部を嚢の赤道部内面に接することによって、外周連結部28、延いては光学部12を嚢内に有利に位置決めすることが出来るようになっている。
【0089】
このような構造とされた眼内レンズ10は、良く知られているように、人の眼の嚢の一部を切開して、そこから水晶体を吸引等で除去せしめた後、かかる切開創を通じて折畳んで乃至は折畳まずに挿し入れられる。この挿し入れ操作は、必要に応じて適当な挿入具を利用して行なわれる。
【0090】
そして、図5に示すように、嚢38の内部に全体を収容するようにして埋植された眼内レンズ10は、嚢38内において、支持脚部14の弾性に基づいて、支持脚部14の外周縁部を嚢38の赤道部内周面に押し当てるようにして位置決めされる。また、必要に応じて適当な器具を用いて、嚢38内において、眼内レンズ10を位置調節することによって、眼光学の中心軸に対して光学部12の光軸が略一致するように、眼内レンズ10を嚢38に対して位置決めする。
【0091】
このように嚢38内に挿入された眼内レンズ10は、図6に示すように、近方視時には、毛様態筋40の緊張によって生ぜしめられる硝子体42の圧力変化によって、光学レンズ18を前方(角膜側)に押し出す力が作用せしめられる。そして、光学レンズ18は光学部12の内方に変位せしめられて、充填物32の形状変化を通じて、前面膜16が前方(角膜側)に膨らむように突出せしめられる。
【0092】
これにより、本実施形態においては、前面膜16が凸状の球状面をもってより前方に突出せしめられて、その曲率がより大きくされることによって、前面膜16が有する屈折力がプラス方向により高められる。而して、焦点位置を前方(角膜側)に接近せしめて、近方視時における焦点調節能力を発揮することが出来るのである。なお、眼内レンズ10は、水晶体嚢内への挿入状態において、+1Dの屈折力変化を生ぜしめるようにされており、かかる屈折力が、少なくとも+1D〜+3Dの範囲を含んで変化するように設定されていることが望ましい。
【0093】
このように、本実施形態における眼内レンズ10は、前面膜16の曲率を変化せしめることによって屈折力を変化せしめることから、レンズの位置を前後方向に変位せしめる構造に比して、より大きな屈折力変化を得ることが出来る。そして、そのような大きな屈折力変化を、前面膜16の僅かな突出量で得ることが出来ることから、例えば嚢38が収縮して眼内レンズ10に被着したとしても、前面膜16の変形が阻害されるおそれが少なく、屈折力調節機能を長期に亘って安定して得ることが可能となる。
【0094】
さらに、本実施形態における光学レンズ18は、硝子体42の圧力変化を受けても、その形状が変化しない程度の剛性をもって形成されている。これにより、光学レンズ18の一部に不均一に圧力変化が及ぼされたとしても、光学レンズ18はその形状を維持して変位せしめられて、前面膜16の屈折力を安定して、効率良く増加せしめることが可能とされている。
【0095】
加えて、本実施形態における眼内レンズ10においては、支持脚部14の剛性が、前面膜16および後面膜24の剛性よりも高くされている。これにより、硝子体42の圧力変化が支持脚部14の変形によって吸収されることを軽減して、硝子体42の圧力変化を光学部12に有効に及ぼすことが出来るのである。
【0096】
以上、図1乃至図6に示された本発明の第一の実施形態としての眼内レンズ10について詳述してきたが、本発明は、上述の眼内レンズ10についての具体的な説明によって限定的に解釈されるものでない。本発明をより正確に理解できるように、本発明の別の具体的な実施形態を、以下に、更に幾つか図示して、例示する。なお、以下の実施形態では、上述の第一の実施形態としての眼内レンズ10と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、第一の実施形態と同一の符号を図中に付することにより、その詳細な説明を省略する。
【0097】
図7および図8には、本発明の第二の実施形態としての眼内レンズ50が示されている。本実施形態では、支持脚部14に形成された切欠部36の形状が、各支持脚部14を、光学部12の中心軸回りの同じ周方向側からえぐり取るような形態で、円弧状の湾曲した内面をもって形成されている。そして、特に本実施形態においては、切欠部36が眼内レンズ50の径方向外方に向かって凸状の湾曲面として形成されており、これにより、光学部12からの延出方向の略中間部分が挟幅とされていると共に、先端部は前述の第一の実施形態における支持脚部に比して挟幅とされている。また、支持脚部14の先端縁部は、僅かに拡幅された略円形状とされている。更に、本実施形態における支持脚部14は、後嚢側に位置する後面35は前述の第一の実施形態と同様の平坦面とされている一方、角膜側に位置する前面34は、支持脚部14の基端部から先端に向かって次第に厚さ寸法が大きくなる湾曲面とされている。これにより、水晶体嚢の変形を吸収する緩衝作用をより有効に発揮せしめることが可能とされている。
【0098】
また、本実施形態における光学レンズ18の外側面20は、後面膜24から後方に突出せしめられておらず、後面膜24と外側面20との接続部分は略平坦面とされている。即ち、本実施形態における光学レンズ18の外側面20は、前述の第一の実施形態の如きシャープエッジ形状を有するエッジ26を備えないものである。
【0099】
更に、本実施形態における眼内レンズ50は、光学レンズ18に硝子体圧が作用していない非調節状態において、光学レンズ18がやや後方に突出せしめられるようにされている。これにより、後面膜24は、外周連結部28に固着される外周縁部27と光学レンズ18との間の部位が後方に向けて僅かに屈曲せしめられており、かかる外周縁部27が、外周連結部28に固着される取付縁部56とされている。そして、かかる取付縁部56は、外周連結部28に形成された内側凹面29よりも僅かに内方に突出せしめられており、本実施形態における内部空間30は、段差部58を有する形状とされている。
【0100】
次に、図9に、本発明の第三の実施形態としての眼内レンズ60を示す。本実施形態における眼内レンズ60および後述する第四の実施形態としての眼内レンズ70の背面形状は、図7に示した第二の実施形態としての眼内レンズ50と実質的に同一とされることから、その図示および説明を省略する。
【0101】
本実施形態における眼内レンズ60は、上述の第二の実施形態としての眼内レンズ50と略同様の形状とされており、眼内レンズ50に比して、内部空間30の容積が小さくされることによって、その前後方向の厚さ寸法が小さくされている。また、眼内レンズ60における後面膜24の取付縁部56の内方の端縁部が、内側凹面29の端縁部と略等しい位置に位置せしめられることによって、本実施形態における内部空間30は、前述の眼内レンズ50における段差部58を有しない形状とされている。
【0102】
また、前述の第二および第三の実施形態における眼内レンズ50,60における光学レンズ18の外側面20は、シャープエッジ形状を有さない平坦な形状とされていたが、これらの光学レンズ18の外側面20に、前述の第一の実施形態と同様のシャープエッジ形状を備えることも勿論可能であって、図10に、シャープエッジ形状を備えた第四の実施形態としての眼内レンズ70を示す。
【0103】
すなわち、図10に示す第四の実施形態としての眼内レンズ70は、上述の第三の実施形態としての眼内レンズ60の光学レンズ18を、前述の第一の実施形態としての眼内レンズ10と略同様の形状としたものである。
【0104】
次に、図11および図12に、本発明の第五の実施形態としての眼内レンズ80を示す。眼内レンズ80は、支持脚部14が、光学部12の外周の全周に亘って径方向外方に広がる略円環形状とされたものである。このようにすれば、水晶体嚢内における光学部12の位置決めを安定して行なうことが出来る。なお、本実施形態における支持脚部14においても、角膜側の前面34は、径方向外方にゆくにつれて次第に厚さ寸法が大きくされている。また、本実施形態における内部空間30は、前述の第二の実施形態としての眼内レンズ50と同様に、後面膜24の取付縁部56が、外周連結部28に形成された内側凹面29の外周縁部よりも内方に突出せしめられていることによって、段差部58を有する形状とされている。
【0105】
また、図13に、本発明の第六の実施形態としての眼内レンズ90を示す。なお、本実施形態における眼内レンズ90の背面形状は、図11に示した第五の実施形態としての眼内レンズ80と実質的に同一とされることから、その図示および説明を省略する。
【0106】
第六の実施形態としての眼内レンズ90は、上述の第五の実施形態としての眼内レンズ80における内部空間30の容積を小さくすると共に、光学レンズ18として、前述の第一の実施形態としての眼内レンズ10と同様のシャープエッジ形状を有するエッジ26を備えた光学レンズ18を設けたものである。また、本実施形態における眼内レンズ90は、支持脚部14の前面34の外周縁部が全周に亘って前方に突出する球状凸面とされている。
【0107】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0108】
例えば、前述の各実施形態におけるレンズ前面膜、光学レンズ、外周連結部、および内部充填物は無色透明に限らず、有色透明であっても良く、少なくとも可視光線の透過率が80%であることが好ましい。なお、位置決め部は、透明でも不透明でも良い。
【0109】
また、前述の実施形態において、眼内レンズの屈折力を調節する屈折力調節手段としては、内部充填物の充填量を異ならせることによって屈折力を変化せしめる態様を例示したが、例えば、前述の管体31を利用して屈折率の異なる内部充填物を補充したり、異なる屈折率を有する内部充填物に入れ替えることによって屈折力を変化せしめるなどしても良い。更にまた、管体31に代えて、例えば図14に示されているように、外周連結部28に小孔100を貫通形成すると共に、この小孔100に対して、高弾性のゴム材料等からなる弾性封止物102を嵌着させておくことで、注射器104を用い、注射針106を弾性封止物102に刺し通して、充填物32を注入/排出するようにしても良い。このような弾性封止物102の弾性復元力を利用することで、小径の注射針106の刺通孔は、注射針106を抜き取ったあとに密閉状態とされ得る。
【0110】
更に異なる態様としては、レンズ前面膜と光学レンズとの対向面間に所謂マイクロカプセルと呼ばれる微小容器を予め埋め込んでおいて、かかるマイクロカプセルをレーザー等で破壊して眼内レンズの屈折力を変化せしめることなども可能である。例えば、マイクロカプセルを破壊することで内部空間の実質的な容積を変化せしめて、前面膜の変形特性を変化せしめたり、芯物質として内部充填物と同じ充填物を収容したマイクロカプセルを破壊することによって内部充填物の実質的な充填量を変化せしめたり、芯物質として異なる屈折率を有する内部充填物を収容したマイクロカプセルを破壊して、内部充填物に異なる屈折率を有する充填物を混入することによって、内部充填物の屈折率を変化せしめる等して、眼内レンズの屈折力を調節することも可能である。更にまた、前面膜を環状部材で押さえつけて実質的な寸法を変更することによって変形特性を変化せしめる等しても良い。これらの態様によれば、眼内レンズに内部空間と外部空間を連通する穴などを開けること無しに、眼内レンズの屈折力を調節することが出来る。
【0111】
また、前述の各実施形態における光学レンズは、何れも前後両面が球状凸面とされた凸レンズ形状とされていたが、必ずしも凸レンズ形状に限定されることは無く、例えば凹レンズ形状とされていても良いし、或いは、所定の厚さ寸法を有する板形状とされているなどしても良い。
【0112】
更にまた、前面膜、外周連結部、および支持部のこれらの部材は、必ずしも一体的に形成されている必要はなく、互いに別体として形成されていても良い。例えば、支持部を前面膜および外周連結部と別体として構成して、カプセル構造と支持部を別体として構成することによって、本発明における眼内レンズを、水晶体嚢に別々に挿入して、嚢内で組み立てるなどしても良い。このようにすれば、小さな切開創で本発明における眼内レンズの挿入を行なうことが出来て、挿入作業を容易にすると共に、使用者の負担も小さくすることが出来る。
【0113】
その他、一々列挙はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第一の実施形態としての眼内レンズの背面図である。
【図2】図1に示した眼内レンズのII−II断面である。
【図3】図1に示した眼内レンズの要部拡大図である。
【図4】本発明の屈折力調節手段を示す説明図である。
【図5】図1に示した眼内レンズの埋植状態を示す縦断説明図である。
【図6】図5に示した眼内レンズに硝子体圧が及ぼされる様子を示す縦断説明図である。
【図7】本発明の第二の実施形態としての眼内レンズの背面図である。
【図8】図7に示した眼内レンズのVIII−VIII断面である。
【図9】本発明の第三の実施形態としての眼内レンズの断面図である。
【図10】本発明の第四の実施形態としての眼内レンズの断面図である。
【図11】本発明の第五の実施形態としての眼内レンズの背面図である。
【図12】図11に示した眼内レンズのXII−XII断面である。
【図13】本発明の第六の実施形態としての眼内レンズの断面図である。
【図14】図4とは別態様の屈折力調節手段を備えた本発明に従う眼内レンズの説明図である。
【符号の説明】
【0115】
10 眼内レンズ
12 光学部
14 支持脚部
16 前面膜
18 光学レンズ
24 後面膜
26 エッジ
28 外周連結部
30 内部空間
32 充填物
38 嚢
40 毛様態筋
42 硝子体






【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶体嚢に挿入される眼内レンズであって、
透明な弾性膜によって形成されたレンズ前面膜と、
該レンズ前面膜に対して光軸方向で離隔して対向配置された、該レンズ前面膜よりも大径の透明な光学レンズと、
該光学レンズの外周側に広がる可撓性の環状後面膜と、
該レンズ前面膜および該環状後面膜の外周側に位置せしめられて、該レンズ前面膜の外周縁部と該環状後面膜の外周縁部をそれぞれ支持せしめることにより、該レンズ前面膜と前記光学レンズの対向面間を外部から遮断してカプセル構造とする外周連結部と、
前記レンズ前面膜と前記光学レンズの対向面間における前記カプセル構造の内部に充填された透明な液状又はゲル状の内部充填物と、
前記外周連結部から外周側に延び出して水晶体嚢の赤道部内面に接することにより該外周連結部を水晶体嚢に対して位置決めする位置決め部と
を有することを特徴とする眼内レンズ。
【請求項2】
前記レンズ前面膜における外側面の曲率と内側面の曲率が異ならされている請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項3】
前記レンズ前面膜において、中央部分が外周部分よりも薄肉とされている請求項2に記載の眼内レンズ。
【請求項4】
前記外周連結部における前記レンズ前面膜との接続部位が、その外側面において段差のない滑らかな面とされている請求項1乃至3の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項5】
水晶体嚢内へ挿入された状態において、硝子体の圧力に基づいて、前記光学レンズが前記カプセル構造の内方へ変位せしめられ得るようになっている請求項1乃至4の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項6】
前記光学レンズが、硝子体の圧力変化を受けても変形しない剛性をもって形成されている請求項5に記載の眼内レンズ。
【請求項7】
前記光学レンズの前記カプセル構造の内方への変位量が0.01mm〜1.0mmの範囲内で設定されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項8】
水晶体嚢内に挿入された状態において、硝子体の圧力変化によって前記光学レンズが前記カプセル構造の内方に押し込まれることによって生ぜしめられた前記内部充填物の圧力変化により前記レンズ前面膜を該カプセル構造の外方に押し出し、該レンズ前面膜の曲率を変化せしめることで+1D以上の屈折力変化を生ぜしめる請求項1乃至7の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項9】
前記屈折力が、少なくとも+1D〜+3Dの範囲を含んで変化するように設定されている請求項8に記載の眼内レンズ。
【請求項10】
前記レンズ前面膜と前記内部充填物の屈折率の差が3%以内とされている請求項1乃至9の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項11】
前記内部充填物のポアソン比が0.46以上とされている請求項1乃至10の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項12】
前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方のヤング率が0.001MPa〜5MPaとされている請求項1乃至11の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項13】
前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方がシリコーンゴムから形成されている請求項1乃至12の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項14】
前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方がヒドロゲルから形成されている請求項1乃至13の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項15】
前記レンズ前面膜および前記環状後面膜の少なくとも一方が架橋された(メタ)アクリレート共重合体から形成されている請求項1乃至14の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項16】
前記位置決め部および前記外周連結部の剛性が前記レンズ前面膜および前記環状後面膜よりも高くされている請求項1乃至15の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項17】
前記光学レンズが、前記環状後面膜から前記カプセル構造の外方に0.05mm以上突出せしめられている請求項1乃至16の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項18】
前記光学レンズの外周縁部における少なくとも前記カプセル構造の外方側が全周に亘ってシャープエッジ形状とされている請求項1乃至17の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項19】
前記カプセル構造の屈折力を調節する屈折力調節手段を備えた請求項1乃至18の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項20】
前記内部充填物の屈折率及び量の少なくとも一方を変化せしめることによって、前記屈折力調節手段を構成した請求項19に記載の眼内レンズ。
【請求項21】
前記内部充填物の屈折率が1.34〜1.60とされている請求項1乃至20の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項22】
前記光学レンズの径寸法が3.0mm〜7.0mmとされている請求項1乃至21の何れか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項23】
前記環状後面膜の幅寸法が0.1〜2.0mmとされている請求項1乃至22の何れか一項に記載の眼内レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−89810(P2007−89810A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282748(P2005−282748)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】