説明

眼球位置計測方法及び眼球位置計測装置

【課題】計測対象者の身体の動きに制約を与えることなく、かつ視野を遮らない眼球位置計測装置を提供すること。
【解決手段】眼の周辺に貼り付けた少なくとも3点以上の複数の電極によって検出される電位を、適宜組み合わせてその差電圧を取り出す。そして、眼球を電池とみなしたモデルで眼球の網膜側から角膜側に流れる電流密度と、電流密度の推定と眼球位置の推定とを、複数の時間サイクルにわたって交互に繰り返すEMアルゴリズム手法を用いて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼球位置すなわち眼球位置の計測方法とその装置、特に、3点以上の電極を用いて眼の周辺電位の分布を測定し、眼球位置を推定する眼球位置計測方法及び眼球位置計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の眼球は、網膜神経細胞がもつイオンポンプの働きにより、その内部において網膜側から角膜側に電流が流れるため、角膜側がプラス極(+)で網膜側がマイナス極(−)の電池モデルとして考えられる。すなわち、眼球は、角膜側がプラスの電荷、網膜側がマイナスの電荷を帯びた電気双極子として振る舞い、そのため、眼球を左右上下に動かすと、それに応じて眼球周辺の電位分布に変化が生じる。例えば、眼が右側を向けば、眼の右側周辺の電位は左側周辺の電位に比べて高くなるため、眼の右側と左側の皮膚表面電位を比較すると右側の方が高くなる。
このように、眼球が電荷を帯びていることを利用して、眼の左右あるいは上下に貼付した一対の電極の電位差を用いて水平方向あるいは垂直方向の眼球の位置を推定する方法は、特に医学臨床分野において、眼電位図(EOG:Electro-oculogram)手法として、主に眼振の特性を調べる手段として多く用いられている。
【0003】
この眼球を電池とみなしたモデルから予測される電位と、観測した眼電位図から得られた電位とを比較し、電池モデルの有効性を検証した論文には、非特許文献1がある。この論文では、眼球をその正面を中心として左右交互に衝動運動をさせたときの、眼球の外側近傍の電位を測定している。そして、眼球を動かしたときの電位の変化分をEOG電位として導出し、眼球周辺の位置の違いによる電位変化を解析している。
【0004】
また、眼球の有効視野範囲を計測する装置であって、眼球の左右、上下に1個ずつ電極
をつけて眼球の電位を測る方法も提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載された眼球電位計測の手法は、眼球の水平方向及び垂直方向の各眼球位置変化分を電位差として測定し、これら水平及び垂直方向の変化分出力から高速眼球運動成分を抽出している。そして、この高速眼球運動の回数を計測して、視野位置別に計数比較を行い、高速眼球運動が1回以下で検出できる目標刺激の位置を求めることによって、有効視野範囲を計測するようにしている。
【0005】
【非特許文献1】伊月、久保、白石、西川、三村「眼球常存電位解析のための眼球の電池モデル」日眼学会 99巻 9号 1012頁〜1016頁
【特許文献1】特開平9−38037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般のEOG手法は、原理的には一対の電極間の電位差と眼球位置の間の相関関係(広い範囲で直線関係が成立する)を利用して、事前に数箇所の眼球位置に対応する電位差を測定して直線回帰式(キャリブレーション)を求めておき、そして、この回帰式を用いて電位差から眼球位置を推定する手法である。このEOG手法は、その簡便さ、有用性は認識されているものの、測定精度の問題、測定環境・条件、個人差などの不安定要素のために眼球位置を計測する手法として十分に活用できるところまでには至っていない。
【0007】
その原因は、この直線関係を示す回帰式が、時間とともに眼球の電流密度(あるいは電荷)が変化するドリフト現象によって時間的にその直線関係の傾きが変化するために、長期的に安定した眼球位置の推定ができない点にある。ドリフト現象の原因は、網膜神経細胞のイオンポンプの働きの変化によるもので、その大きさは眼に入る光の強度に依存していると考えられるが、その変化を事前に求めることは不可能であり、結果として、ドリフト現象を補償することが困難であった。
そのため、眼球位置計測手法としては、例えば眼の動きを観察できる位置にビデオカメラ等を配置し、これによって、眼の動きそのものや眼に移った光源の虚像の動きを観察する角膜反射法や眼球画像解析法などや、眼に光を当てその反射光の強度変化を観察する強膜反射法などの方法が採られる。
しかしながら、このような手法による場合、計測対象者の眼前に設置された光学系やビデオカメラが視野を遮ること、また、頭部に光学系や信号処理回路などを搭載する必要があることなど、計測対象者の物理的、心理的負担が大きい。また、通常は、これらの装置からケーブルを通じて外部の主体装置に接続して信号処理を行うが、この際に、信号伝送中にノイズの影響を受けることや、計測対象者の動きを束縛することなどの問題がある。したがって、これらの手法は、実験室以外での計測、例えば、長時間の計測、計測対象者の身体が動く環境や就寝時の計測では、頭部搭載の装置が邪魔になるなどから使い難いという問題があった。
【0008】
非特許文献1に記載のEOG手法は、従来の相関主義に基づくデータ解析法、一対の電極間の電位差と眼球位置の間の相関関係(広い範囲で直線関係が成立する)を土台としたものではなく、モデルベーストな考え方、すなわち眼球を電池モデルとして捉え、電極位置、眼球の大きさ、眼球位置、及び電流密度と眼の周辺の皮膚電位との間の因果関係に基づいて眼電位を解析するものであり、従来のEOG手法が系統的な形に改良されたものである。しかしながら、この方法においても、ドリフト現象に関する補償がなされていないという上述したものと同様の問題を有する。
【0009】
また、特許文献1に記載のものは、目標刺激を検出できる有効視野範囲を視野位置上で求めるものであり、この例においても、眼球の左右あるいは上下に電極をつけて電位測定を行う方法である点で、上述したEOG手法と同様に、時間とともに電位が変化するドリフト現象により、安定した測定ができないという問題がある。
【0010】
本発明は、電池モデルにおける電流密度の大きさを動的に推定することによりドリフト現象の影響を効果的に抑制し、高い精度をもって、更に、計測対象者の身体の動きに制約を与えることなく、かつ視野を遮ることがなく行なうことができるようにした眼球運動計測方法及び眼球計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するため、本発明の眼球位置計測方法は、眼(目)の周辺に装着した少なくとも3点以上の複数の電極によって検出される電位を、適宜組み合わせてその差電圧を取り出し、取り出された複数の差電位の情報を用いて、眼球を電池とみなしたモデルで眼球の網膜側から角膜側に流れる電流密度もしくは網膜と角膜に帯電しているとみなされる電荷の大きさと、眼球位置と、電極の貼付された位置と、眼球の大きさ(眼球半径)とを推定し、該推定した電極貼付位置と眼球半径を利用して、その後に取り出された電位差に基づき、前記眼球位置の推定と前記電流密度の推定とを、複数の時間サイクルにわたって交互に繰り返すEM(Expectation and Maximization)アルゴリズム手法を用いて、前記眼球位置と前記電流密度もしくは網膜と角膜に帯電しているとみなされる電荷の大きさの推定を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による眼球位置計測装置は、眼の周辺に装着した少なくとも3点以上の複数の電極と、該電極間の任意の組み合わせから複数の電極間の電位差を検出する信号変換回路と、前記信号変換回路から抽出される電位差から、電極貼付位置と眼球を電池とみなしたモデルで眼球の網膜側から角膜側に流れる電流密度もしくは網膜と角膜に帯電しているとみなされる電荷の大きさと眼球位置とを繰り返し計算によって推定するプロセッサ及びデータ処理回路とを備え、前記データ処理回路の計算において、EM(Expectation and Maximization)アルゴリズム手法によって、前記眼球位置の推定と、電流密度の推定とを複数サイクルにわたって計算して求めることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の好ましい形態の眼球計測装置は、前記計測された電位から求められた電位差をデジタル信号に変換して送信する送信回路と、該送信回路から有線または無線にて送られた信号を受信する受信回路とをさらに備える。
【0014】
本発明の眼球計測装置及び眼球運動計測方法によれば、眼の周辺に装着した3点以上の電極から得られた電位信号を元にして、眼球位置(眼の向き)と電流密度を推定し、EMアルゴリズムを用いてこれを所定時間の間、所定回数繰り返して行っているので、電流密度の時間的な変化に追従することが可能となり、その結果、正確な眼球位置を推定することが可能となっている。元来、EOG手法は眼球周辺に電極を貼付するだけで計測が可能であるため、計測対象者の視野を遮ったり頭部に光学系を搭載したりする必要がない。
また、好ましい眼球計測装置にあっては、観測された電位信号をデジタル無線等を用いて遠隔地の受信装置に送ってデータ処理を行うことができるので、計測対象者がどこにいても、また測定の時間に制約されることがなく測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の眼球位置計測方法及び眼球位置計測装置によれば、眼の周辺に装着した3点以上の電極から得られた電位信号を元にして、眼球位置(眼の向き)と電流密度を推定し、EMアルゴリズムを用いてこれを所定時間の間、所定回数繰り返して行っているので、電流密度の時間的な変化に追従することが可能となり、その結果、正確な眼球位置を推定することが可能となっている。
また、EOG手法は眼球周辺に電極を貼付するだけで計測が可能であるため、計測対象者の視野を遮ったり頭部に光学系を搭載したりする必要がないほか、観測された電位信号をデジタル無線等を用いて遠隔地の受信装置に送ってデータ処理を行うことができるので、計測対象者がどこにいても、また測定の時間に制約されることがなく測定することができる。
【0016】
また、本発明の好ましい形態の眼球運動計測装置は、遠隔地からの測定を可能とするため、計測された電位から求められた電位差をデジタル信号に変換して送信する送信回路とこの送信回路から有線または無線にて送られた信号を受信する受信回路とをさらに備えている。
【0017】
また、本発明によれば、眼の周囲に電極を貼り付けるなど装着するだけで眼球位置の測定ができるので、計測対象者に与える制約を最小限にすることができるとともに、EOG手法において問題とされていたドリフト現象による影響を抑制することが可能となる。
【0018】
また、本発明では、EMアルゴリズムが用いられているので、眼球電流密度ないしは眼球電荷量に加えて、電極貼付位置などの未知のパラメータをオンラインで推定することも可能であり、その結果計測時のキャリブレーション作業をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、人の眼球を電池モデルとみなして眼球を回転させたときに生じる眼の周辺の皮膚電位の変化によって眼球の回転位置、すなわち瞳位置を検出する眼球位置計測方法及び眼球位置計測装置であるが、まず、本発明の実施形態例の説明に先立って眼球の電池モデルについて説明する。
【0020】
図1は眼球の電池モデル図である。
人の眼球21を球形モデルとして、眼球回転中心をO、角膜中心点をA、網膜中心点をB、眼の周辺の皮膚上に配置した電極位置をMとし、電極位置Mから角膜中心位置Aまでの距離をr、電極位置Mから網膜中心位置Bまでの距離をr’とする。
図1に示すように、眼球内部では、電流Iが網膜から角膜側へ流れているとする。このとき、点Mの電位Vは、下記(数1)式で表すことができる。ここで、眼球は電気伝導度σの均質な周辺組織でみたされているものとする。
【0021】
【数1】

【0022】
図2は、各軸、各角度等の設定の説明図である。図2に示すように、半径aの眼球21の回転中心、すなわち瞳の回転中心をOとするとき、後頭部から顔面に突き抜ける軸をx、この軸xと直交する水平軸をy、垂直軸をzとする。更に、眼球がz軸に対して回転運動する角度を水平方向角度θdegとし、y軸に対して回転運動する角度を垂直方向角度ξdegとする。そのとき、点Mの座標をx=(x、y、z)、眼球の向きを(θ、ξ)とすると、距離r、r´は、下記(数2) と表すことができる。
【0023】
【数2】

【0024】
更に、電流密度(I/4πσ)を簡単にIとすると前記(数1)は、(数3)と表すことができる。
【0025】
【数3】

ここで、r、r’が、電極貼付位置x=(x、y、z)と眼球半径a及び眼球位置θ、ξの関数であることから、この電位は、電極位置、眼球半径、電流密度と眼球位置の関数であることがわかる。
【0026】
ここで、実際においては、上記電流密度Iが時々刻々と変化し、電位Vが変動するド
リフト現象が生じる。
本発明においては、上述した電池モデルを用いて、EM(Expectation and Maximization)アルゴリズムによって眼球位置を推定する。
【0027】
本発明においては、眼球位置を推定することが目的であるが、そのためには、これに先だって電極位置と眼球半径と電流密度とを推定する必要がある。しかし、これらはいずれも直接求めることができないため、以下に述べる方法により、これらの未知数を同時に推定する。
【0028】
未知数が1種類の場合と2種類の場合では推定方法が異なる。1種類の未知数を推定する場合、多点電極から得られた計測眼電位と眼球の電池モデルに基づく眼電位の二乗誤差を最小化する未知数を探索することにより、未知数を推定する(最小二乗推定)。一方、2種類の未知数を推定する場合、多点電極から得られた眼電位と眼球の電池モデルに基づく眼電位を用いて、EMアルゴリズムの原理に基づき、つまり最小自乗法を繰り返す反復計算により2種類の未知数の推定値を同時に求めるようにする。
【0029】
本発明のモデルでは推定する値を、眼球位置、電流密度と、電極位置、眼球半径に分類する。これらのうち後者の電極位置と眼球半径は、計測をいったん開始すればほとんど変化しない定数であり、したがって、計測開始時に一度だけ推定すればよい(ただし、これは計測中の再度の推定を否定するものではない)。一方、前者の眼球位置と電流密度はいずれも時間とともに変化するために、時々刻々と推定を繰り返す必要がある。
前者のうち、眼球位置はミリ秒単位で変化する変数であるのに対し(特に、サッカードと呼ばれる眼球運動の高速な眼球位置変位が起きると最大速度は500deg〜600deg/秒を超えることもある。例えば、特許文献1参照。)、電流密度の時間変化は秒オーダーの時間スケールで生じる(こちらは網膜のイオンポンプの変化が巨視的に現れたものと考えられる)ため、両者の推定方法は異なる。すなわち、眼球位置はミリ秒から十ミリ秒のオーダーで推定を更新する必要がある一方、電流密度は秒から十秒のオーダーで推定を更新すれはよい。そのため、実際に眼球位置を測定する場合、電流密度はその値がほぼ一定とみなせる時間区間に含まれる複数のデータに基づいて推定を行ない、その推定された電流密度を用いてその区間の眼球位置を推定する。
【0030】
最初に、電極貼付位置と眼球半径の推定方法について述べる。これらの未知数はキャリブレーション作業なしでオンラインによる推定をすることも可能であるが、ここでは、指標を用いてキャリブレーションを行なう場合の方法を説明する。図2及び図10(b)はその設定条件の説明図である。
いま、M個の電極の貼付位置をそれぞれX=(x、y、z)(m=1、…、M)とする。そして、多点電極の電極間のN個の電位差をK個所の参照点ごとに得た値、ΔVnk(n=1、2…、N、k=1、2…、K)と眼球の電池モデルで計算したΔVnk´の二乗誤差が最小になる値を求める。電池モデルから計算される電位差は、電極位置、眼球半径、電流密度、及び眼球位置の関数であるが、このうち、眼球位置は計測対象者が注視する参照点の位置から計算で求めることができるので、残りの、電極位置、眼球半径、及び電流密度が未知数である。そこで、最小二乗推定の考え方に基づき、下記(数4)式のE({X}、a、I)最小にする({X}、a、I)を求め、これを電極位置、眼球半径、及び電流密度の推定値とする。
【0031】
【数4】

なお、この推定を行なうためには、複数の参照点を注視することが必要である。また、複数の電極があらかじめ一つのパッケージ上に装着されていてそれらの相互位置が限定されている場合には、電極位置を表す変数を個々の電極に対して独立して定める必要はなく、電極の構造に応じて推定すべき未知数を適切に定めればよい。
【0032】
次に、眼球位置と電流密度の同時推定法について説明する。前述したように、電流密度の値は秒のオーダーで時間的に変化していくが、その変化のオーダーは眼球位置の変化(眼球運動)のオーダーに比べて十分に長い。眼球位置推定はミリ秒単位の周期で行なう必要があるが、この推定を行なう一定の時間区間において電流密度は一定であるとみなすことができる。本装置では、この時間区間をおよそ1秒から数十秒程度にとり、その区間ごとに電流密度の推定を行ないながら、その区間内での眼球位置推定に利用する。そして、この二種類の未知数を同時並行的に求めるためにEMアルゴリズムを利用する。
【0033】
いま、前段の操作により、電極位置と眼球半径はすでに正しく推定されているとする。
そして、繰り返し計算に用いる電流密度の初期値を適当に定め、これをIBUFと表す。
眼球の電池モデルの基づく電位差ΔV´は、電極位置、眼球半径、電流密度と眼球位置の関数であるが、電極位置と眼球半径の値はすでにわかっており、また、電流密度の値として先に定めた初期値を用いれば、電位差は眼球位置だけの関数になる。そこで、電極から観測された電位差ΔV(n=1、2…、N)と眼球の電池モデルで計算したΔV’の二乗誤差が最小になるような眼球位置θ、ξを探索することによって、眼球位置の推定値を得ることができる(数5)。すなわち、計測区間の中にN個の計測データがあれば、同じことを各データに対して繰り返すことにより、N組の眼球位置推定値(θ、ξ)(i=1、2、…、N)が得られる。
【0034】
【数5】

しかし、このようにして得られたN組の眼球位置推定値は、適当に定めた電流密度の初期値IBUFに依存したものであって、一般に真の眼球位置と一致しない。したがって、正しい眼球位置推定値を得るためには、正しい電流密度の値を知らなければならない。
EMアルゴリズムでは、電流密度の値を推定するために、先のステップで仮に推定されたN個の眼球位置推定値を利用する。
繰り返しになるが、眼球の電池モデルの基づく電位差ΔV´は、電極位置、眼球半径、電流密度と眼球位置の関数であり、電極位置と眼球半径の値はすでにわかっている。ここで、前のステップで得られた眼球位置推定値(θ、ξ)として、これを正しい眼球位置であるとみなせば、電位差ΔV´は電流密度だけの関数になる。そこで、今度は、電流密度が未知数であると考えて、電極から観測された電位差ΔVni(n=1、2…、N、i=1、2、…、N)と眼球の電池モデルで計算したΔVni’の2乗誤差が最小になるような電流密度Iを求め、これを電流密度の推定値とする(数6)。このとき、N個の観測区間では電流密度は一定であると仮定しているので、誤差の計算には、N個の観測データΔVniと眼球位置推定値(θ、ξ)をすべて利用する。
【0035】
【数6】

このようにして新しい電流密度の推定値Iを得ることができた。次のステップでは、こうして得られた推定値を再び電流密度の初期値IBUFとしてみなして、上記の計算を繰り返す。そして、電流密度の推定値や眼球位置の推定値の繰り返しによる変動が十分に小さくなった段階で繰り返し計算を打ち切り、その時点で得られた眼球位置推定値を最終的な眼球位置推定値として出力する。
このような繰り返し計算の結果得られる推定値が常に真の値と一致することは理論的には保証されていないが、十分な数のデータと真の値に近い初期値から計算を始めれば、多くの場合十分によい精度で未知数を推定することができる。特に、本装置の場合は、未知数である電流密度のおおよその値は経験的にわかっていることから、繰り返し計算は十分によい初期値から出発することができる。また、いったん計測がはじまれば、連続する計測区間のあいだで電流密度の変動は小さいと考えられるので、前計測区間で得られた電流推定値を当該計測区間の電流推定値の初期値として用いることにより、少ない繰り返し回数で正しい推定値が得られるものと期待される。
【0036】
上述したアルゴリズムによる眼球位置推定が原理的に可能であるかどうか、どの程度の誤差で眼球位置を推定できるのか、また、どのような電極配置が眼球位置推定に適しているのかを調べるために数値実験を行った。
【0037】
この数値実験では、眼球の半径12mmとし、簡単のため、この値はすでに推定されているものとした。また、図3(1)〜(6)に電極配置関係を模式的に示すように、眼(目)23の周辺に配置する電極21の数は3個、4個、5個とし、電極22の配置条件は眼23の下に水平に並べた場合とL字型に並べた場合との2パターンを用意した。これに加え、電極に加わる電気的ノイズや測定誤差を模すために、電極において測定される電位値には、眼球電池モデルから計算される値に平均0mVで、標準偏差0.01〜0.1mV(分散0.0001〜0.01mV)のガウス性ノイズを加えた値を用いた。
【0038】
最初の実験では、まず眼球位置以外の変数がすべてわかっている条件で眼球位置を推定した。実験では、水平方向の眼球位置(θ)は−20degから20degまで2degおきに、垂直方向の眼球位置(ξ)は−5degから5degまで0.5degおきに設定して、それぞれの位置における推定値を求めた。
【0039】
図4は図3の6種類の電極配置に対する平均推定誤差を示す図である。この結果からわかるように、水平方向、垂直方向ともに位置推定誤差は電極配置に依存して若干変わるものの、ノイズの標準偏差が0.03mV(分散が0.001mV)程度であるときには、水平、垂直いずれの方向においても推定誤差0.1deg程度で眼球位置を推定できる。
上述したように、眼球位置が原理的に推定できることわかった。
【0040】
次に、眼球位置がわかっている条件で、電流密度と電極位置とを同時に推定する実験を行なった(計測開始時の作業に相当する)。
【0041】
ここでは、電流密度の真の値を、I=25Am/Sとしたとして、視線方向(θ、ξ)が、(−15、0)、(0、0)、(0、15)、(−5、0)、(5、0)である5箇所の条件において電位を計測して、電流密度と電極位置の同時推定を行った。図5はその結果の推定誤差を示す図である。
この図からわかるように、ノイズの標準偏差が0.03mV程度の条件では、電極数が4の場合には、x、y、z座標それぞれについて0.1mm程度の推定誤差で推定できている。一方、電流密度については0.2Am/S程度の誤差で推定できている。
上述したように、眼球位置がわかっている条件で電極位置と電流密度を推定できることを原理的に示すことができた。
【0042】
最後に、電極位置がわかっている条件において、眼球位置と電流密度を同時に推定する実験を行なった。この実験においても、電流密度の真の値はI=25Am/Sとし、眼球位置は(θ、ξ)=(−15、0)、(0、0)、(0、15)、(−5、0)、(5、0)の5箇所の値をとったものとした。電流密度の初期値はI=20Am/SとI=30Am/Sの場合で行った。
図6は繰り返し計算における電流密度の推定値の変化を表わすグラフである。このグラフからわかるように、数回の繰り返し計算で、電流密度の推定値がいずれの初期値から出発しても真の値に向かって変化していることがわかる。今回の計算では、眼球位置の推定値を求める際に、眼球位置の刻み幅0.01degの離散値に設定したために、繰り返し計算の途中で電流密度の値が変化しなくなってしまい真の値に到達していないが、推定する眼球位置を連続値に変数として推定を行なうことにより、より良い推定値が得られるものと考えられる。
上述したように、電極位置がわかっている条件で、眼球位置と電流密度を推定できることを原理的に示すことができた。
【0043】
次に、本発明の実施の形態例を説明するが、本発明は、この実施の形態例に限定されるものではない。
まず、本発明による眼球位置計測方法を実施する眼球位置計測装置の一実施形態例を説明する。
図7は、本発明を実施する上で必要なハードウエアの構成要素の関係を示したブロック図である。本発明を実施する上では、3個以上の電極が必要であるが、図7に示す例では5個の電極2(2a〜2e)を用いている。電極2a〜2eは、計測対象者の一方の眼(目)1の付近、例えば下部または上部に配列して取り付けられる。
この電極2a〜2eは信号変換回路3に接続され、この信号変換回路3は、データ処理回路4と接続される。
【0044】
本発明の実施形態例の全体の演算及び制御は中央処理装置(CPU)5によって行われる。CPU5は電極2a〜2eで検出された信号を記憶するRAM7と、前述したEMアルゴリズムを実行するための種々のプログラムを記憶するROM8を備えている。また、本発明の計測を所定のサイクルで行うため時間を計測するタイマー6と、眼球電位の変化や推定電流を表示するための表示装置9を備えている。計測者は表示装置9を見て、計測対象者の眼球位置を推定することができる。
【0045】
図7に示すブロック図において、まず、眼球1が左右又は上下に移動すると、電極2a〜2eで検出される電位はさまざまに変化する。それぞれの電極2a〜2eから得られた電位信号は、信号変換回路3に送られ、ここで、各電極間の電位差(電圧)が取り出される。これらの電位差は、後述するようにデータ処理回路4において、CPU5の制御の下で、データ処理されてその結果が表示装置9に表示される。また、処理されたデータはRAM7に記憶される。
【0046】
図8は、本発明の他の実施形態例を示したブロック図である。図7と同じ構成部分については同一符号を付し、説明は省略する。この図8に示すように、本例においては、信号変換回路3からの各電極間の電圧信号は、送信回路11に送られ、例えば無線等の伝送手
段を通じて受信回路12に送られる。この図8では記載されていないが、受信回路は図7のコンピュータシステムに結合されており、同じくCPU5(図7参照)の制御下でデータ処理回路4において、同様なデータ処理が行われる。
【0047】
次に、本発明による眼球位置すなわち眼球位置の計測方法の一実施形態例を説明する。
[眼球位置計測方法の第1の実施形態例]
この計測はEMアルゴリズムによってなされる。図9は、この実施の形態例のフローチャートであり、図10(a)は、その初期値を得るキャリブレーション工程Aにおけるフローチャート、同図(b)はそのための説明図である。また、図11は、この眼球位置(眼球位置)計測の一連の工程を模式的に示したタイムチャートである。この眼球位置の計測は、前述したように複数の電極を計測対象者の眼の周囲に3個以上(図7及び図8においては5個の例が示されている)の電極が貼着等によって装着されてなされる。
【0048】
そして、この眼球位置の計測は、図11のタイムチャートで示すように、複数の計測区間E(E1、E2、E3……)においてなされるが、これら区間は、前述の電流密度がほぼ一定であると認め得る時間長の区間の例えば1秒〜数十秒程度に選定する。そして、この時間内でも眼球位置は変化するものである。
また、装着された電極位置X及び眼球半径aについては、全計測区間Eに関して変化しないものとする。
【0049】
本発明の第1の実施形態例の動作を図9のフローチャートに従って説明する。
最初に、初期化動作(キャリブレーション)として、電極位置と眼球半径を推定し(ステップS1)、電流密度の初期値IBUFを設定する(ステップS2)。このキャリブレーション工程の詳細について図10(a)に基づいて説明する。
図10(a)(8b)示されるように、先ず、計測対象者の周囲に上述したように3個以上の電極を装着する(ステップS20)。
一方、計測対象者の眼球正面に正対する座標面(x−y座標面とする)による参照面30を設け、この参照面30に直交し、計測対象者の眼球中心eを通る軸zと、x、y両軸の交叉点を原点として、この参照面30に×印をもって示す複数(K個)の参照点pを座標点(rxk、ryk)(kは参照点の番号)に配置する(ステップS21)。
そして、これらの参照点pを注視したときの眼球位置の、参照面30の原点を通るz軸に対するx軸方向成分の角度θと、y方向成分の角度ξを下記(数7)によって計算する(ステップS22)。
【0050】
【数7】

(ここで、Dは眼球中心eOから特定された参照面30までの距離である。)
【0051】
次に、計測対象者にK個の参照点pを順次注視させ(ステップS23)、参照点pごとに各電極から電位差ΔVnk(n=1、2…、N、k=1、2…、K)を取得する(ステップS24)。なお、この計測作業中の眼球内電流密度を一定に保つために、計測対象者の眼に入射する光の条件が一定に保たれるように配慮する。
続いて、このK個の計測中は電極位置、眼球半径、電流密度が一定であるという仮定の下で、最小二乗推定の考え方に基づき、評価関数E({X}、a、I)(数4)の値を最小にする電極位置x、眼球半径a、及び電流密度Iの値、すなわちargmin E({X}、a、I)を得る(ステップS25)。
このようにして、計測中一定であるみなせる電極位置、眼球半径の推定が行なわれる。また、以降の推定で利用する電流密度の初期値も同時に得られる(ステップS26)。
以上が図9におけるキャリブレーション工程、すなわち、電極位置、眼球半径推定(ステップS1)と電流密度推定値IBUFを電流初期値とする設定である。(ステップS2)。
【0052】
再び図9に戻り、次に、初期リセットすなわち演算がなされるタイマー6をリセットする。(ステップS3)。すなわち、タイマー6の時刻Tを‘0’とする。
そして、図11に示す第1の計測区間E1の眼球位置計測を行う。この眼球位置計測では、ステップS3で設定した時刻Tをタイマー時刻tにセットするとともに、不図示のカウンタを初期値1にセットする(ステップS4)。そして、時刻tにおける計測対象者に装着された各電極から電位差ΔVを取得し、これをΔVniとおく(ステップS5)。この取得した電位差ΔVと、前記工程Aのキャリブレーションで得た推定電流密度IBUFを用いて、評価関数E(θ、ξ;IBUF)を最小化する最小二乗推定値θ、ξ、すなわちargminE(θ、ξ;IBUF)を得る(数5)(ステップS6)。これにより時刻t(カウンタ値i)における眼球位置(θ、ξ)を推定する。また、得られたθ、ξをバッファのi番目にθBUF、ξBUFとして格納する(ステップS7)。これらステップを工程Bとする。
【0053】
次に、時刻tがt+Δtになるのを待って(ステップS8)、カウンタをインクリメントし(iに1を加えたi+1を代入する)(ステップS9)、測定回数iが所要数Nに達しているか否かを判断する(判断ステップS10)。このステップS5からステップS10までのステップが、計測回数iがNに達するまで繰り返される。
そして、計測回数iがi≧Nとなったとき、バッファに格納されていたN個の推定値θBUF、ξBUF(i=1、…N)を用いて、最小自乗法の考え方に基づき、評価関数E(I;{θBUF}、{ξBUF})を最小化する電流密度Iすなわち、argminE(I;{θBUF}、{ξBUF})が計算される(数6)(ステップS11)。この計算によって得られた電流密度の推定値IをIBUFとしてバッファに格納する(ステップ12)。この工程を工程Cとする。
【0054】
上記工程B及びCは、図11で破線によって模式的に示されている。上述したi<Nの間、ステップS5からステップS10の繰り返しが、図11で示す区間F1で行われる。
【0055】
続いて、カウンタ値iにおける眼球位置θ、ξの各推定値θBUF、ξBUFと、推定電流密度IBUFが収束したかどうかを判定し(ステップS13)、これらが収束したと判断されるまで、ステップS4からステップS13の工程Dが、図11に示される区間F2、F3……の間続けられる。ステップS13で、θBUF、ξBUF、IBUFの収束がなされたと判定されると、上述した図11における区間E1における眼球位置の計測が終了され、その際にバッファに残っていたθBUF、ξBUFが眼球位置の最終的な推定値として出力される。
そして、開始時刻T+ΔTが設定されて(ステップ14)、ステップS4に戻り、新たなΔT区間(図11の区間E2)の測定が開始される。なお、電流密度の初期値は、前述したキャリブレーションによる初期値ではなく、この区間E2の前段の区間E1において得られたIBUFが用いられる。電流密度の時間的変化が小さい状況では、前段区間において得られた推定値を初期値として用いることにより、繰り返し計算が収束するまでの繰り返し回数が大幅に低減されるものと期待される。このようにして、順次E3、E4……の計測が実行され、眼球位置の推定量が求められる。
【0056】
上述した本発明による眼球位置計測の第1の実施の形態例においては、図11で示したように、区間E1以降の区間E2、E3、……において、前段の区間で収束された推定量θBUF、ξBUF、IBUFを初期値として用いる構成としたものであるが、眼球位置の計測は、上記とは異なる変則的なEMアルゴリズムによってその計測を行うこともできる。この場合の実施の形態例を説明する。
【0057】
[眼球位置計測方法の第2の実施形態例]
図12は、この第2の実施形態例を説明するための変則的なEMアルゴリズムを示すフローチャートである。
この場合の、上述した第1の実施の形態例において図7と対応するステップには、同一符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態例においても、前述した同様のキャリ
ブレーション工程Aによって電極位置、眼球半径の推定、電流密度初期値IBUFの設定がなされる。
この第2の実施の形態例が第1の実施形態例と異なる点は、それぞれの眼球位置計測工程E(E1、E2、E3、……)において、その行程内で処理が閉じているのではなく、前段の工程Eで収束された電流推定値IBUFを利用して当該行程の眼球位置を推定する点である。このようなアルゴリズムの妥当性は、そもそも電流密度の変化はゆっくりとしたものであって、連続する2区間のあいだでは電流密度の大きさは大して変わらないことに依る。すなわち、前段の行程での電位を用いて推定された電流密度は、当該段の行程における電流密度とほぼ同じであるという前提の下で、当該段の眼球位置の推定に前段行程から推定された電流密度を利用するのである。
【0058】
キャリブレーションのA工程は、図9に示すものと同じであるが、時刻tには最初‘0’が導入され、ステップS5において電極で観測した電位差信号を取得し、ステップS6において、前段の区間から得られた電流推定値IBUFと計測された電位を組み合わせて、最小二乗推定の考えに基づき、評価関数E(θ、ξ;IBUF)を最小化するθ、ξを求め、それをバッファのi番目の値θBUF、ξBUFとして格納する(ステップS7)。この値が、その時刻における眼球位置推定値になる。そのあと、タイマーの出力に基づいてΔtだけ待ったあと(ステップS8)、カウンタ値をインクリメントし(ステップS9)、それが既定回数Nを越えていないかどうかを判断する(ステップS10)。カウンタ値iがN以下であるときは、ステップS5にもどり、ステップS5からステップS10が繰り返される。カウンタ値iがNを越えたときは、それまでに得られたN個の推定値θBUF、ξBUFと、そのときの電位差値を組み合わせて、評価関数E(I;{θBUF}、{ξBUF})を最小化する電流密度Iの最小二乗推定値が計算され(ステップS11)、電流密度の推定値IBUFが得られる(ステップ12)。このように電流密度の推定値が得られると、カウンタiをリセットし(‘0’とする)、再び、ステップS5に戻る。このことからわかるように、この繰り返し計算の中で得られた電流密度の推定値IBUFが、次のサイクルにおける眼球位置推定に利用される。この点が、電流密度、眼球位置のいずれもが同一区間のデータに基づいて推定される最初の実施例と異なる部分である。先にのべたように、第2の実施例の妥当性は、連続する区間のあいだで電流密度の大きさがほとんど変化しないという事実に立脚している。
【0059】
上述した本発明による眼球計測方法によれば、計測対象者は、参照点の注視のみを行い、その後は、電極が装着された状態のみで計測が可能であり、冒頭に述べたように、眼球を計測するためのビデオカメラや光学系の付帯等が回避されることによって、運動が阻害されたり視野が阻害されたりするなどの計測対象者の、肉体的、精神的負担が著しく軽減されるのみならず、多様の計測目的への適用が可能となる。
そして、このようにビデオカメラあるいは光照射装置などの眼球観測装置による計測がなされないEOG法によるにも関わらず、この場合の例えば眼球の電流密度の変動等によるセンサデータすなわち電極からの電位差におけるドリフトによる不安定性が回避される。
すなわち、本発明においては、ドリフトの変動の時間スケールが、眼球位置の変化に比して充分長いこと(100倍〜)大きいことを利用し、EMアルゴリズムを用いて、実測可能以外の量について、収束された推定量を取得して眼球位置(眼球位置)の計測を行なうものであることから精度の高い測定ができるものである。
【0060】
また、眼球付近に貼り付けた複数の電極で計測した電位差を、電気信号としてその場で増幅してデジタル信号に変換してから伝送できるので、ノイズの影響を受けにくい計測装置を提供することができる。そして、好ましい形態としては、無線伝送技術を利用することができるので、計測対象者の動きに全く制約されない眼球運動計測装置を提供することができる。
特に、信号伝送に無線を利用した場合には、計測対象者の動きは完全に自由であり、電源さえ供給できれば24時間対象者の眼球運動を計測することも可能である。したがって、眼球位置の移動によって得た電気的出力によって、例えば介護機械の制御など、多くの利用が可能となるものでその社会的、工業的貢献は多大である。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態例に限らず、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、種種の形態が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】眼球の電池モデルを示す図である。
【図2】眼球位置の設定条件を示す図である。
【図3】電極の配置条件の説明図である。
【図4】電極配置条件と視線方向推定の誤差との関係を示す図である。
【図5】電極配置パターンと電流密度及び電極位置の同時推定の誤差との関係を示す図である。
【図6】視線方向と電流密度同時推定の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態例を示すブロック構成図である。
【図8】本発明の他の実施の形態例(変形例)を示すブロック構成図である。
【図9】本発明の実施形態例のフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態例における初期値作業(キャリブレーション)を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態例の全体動作を説明するためのタイムチャートである。
【図12】本発明の他の実施形態例の作業を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1・・・眼、2、22・・・電極、3・・・信号変換回路、4・・・データ処理回路、5・・・中央処理装置(CPU)、6・・・タイマー、7・・・RAM、8・・・ROM、9・・・モニター、11・・・送信回路、12・・・受信回路、21・・・眼球、23・・・眼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の周辺に装着した少なくとも3点以上の複数の電極によって検出される電位を、適宜組み合わせてその差電圧を取り出し、
取り出された複数の差電位の情報を用いて、眼球を電池とみなしたモデルで眼球の網膜側から角膜側に流れる電流密度もしくは網膜と角膜に帯電しているとみなされる電荷の大きさと、眼球位置と、電極の貼付された位置と、眼球の大きさとを推定し、
該推定した電極貼付位置と眼球半径を利用して、その後に取り出された電位差に基づき、
前記眼球位置の推定と前記電流密度の推定とを、複数の時間サイクルにわたって交互に繰り返すEM(Expectation and Maximization)アルゴリズム手法を用いて、前記眼球位置と前記電流密度もしくは網膜と角膜に帯電しているとみなされる電荷の大きさの推定を行う
ことを特徴とする眼球位置計測方法。
【請求項2】
前記計測された電位から求められた電位差をデジタル信号として送信し、これを受信した受信回路に接続されたプロセッサ及びデータ処理回路において、前記眼球位置の推定と前記電流密度の推定のための計算が行われることを特徴とする請求項1に記載の眼球位置計測方法。
【請求項3】
眼の周辺に装着した少なくとも3点以上の複数の電極と、
該電極間の任意の組み合わせから複数の電極間の電位差を検出する信号変換回路と、
前記信号変換回路から抽出される電位差から、電極貼付位置と眼球を電池とみなしたモデルで眼球の網膜側から角膜側に流れる電流密度もしくは網膜と角膜に帯電しているとみなされる電荷の大きさと眼球位置とを繰り返し計算によって推定するプロセッサ及びデータ処理回路とを備え、
前記データ処理回路の計算において、EM(Expectation and Maximization)アルゴリズム手法によって、前記眼球位置の推定と、電流密度の推定とを複数サイクルにわたって計算して求める
ことを特徴とする眼球位置計測装置。
【請求項4】
前記計測された電位から求められた電位差をデジタル信号に変換して送信する送信回路と、該送信回路から有線または無線にて送られた信号を受信する受信回路とをさらに備えた請求項3に記載の眼球位置計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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