説明

眼用光学構造物

【課題】外的要因により無機膜がレンズから剥離しにくい眼用光学構造物を提供することを課題とする。
【解決手段】 外レンズと内レンズとを平行に対置し、前記外・内レンズ相互の周縁又はその近傍を全周シールして外・内レンズ相互間に空室を形成して成る眼用光学構造物において、空室を構成する外レンズの後面側と内レンズの前面側のうち少なくとも内レンズの前面側に無機膜を形成してあり、前記内レンズの前面側に形成される無機膜は金属膜であり、前記外・内レンズは、それぞれ中央部が両端部よりも突出する凸形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼鏡、スキー用ゴーグル、乗り物用ゴーグル、遮光ゴーグル、防災面、遮光面等の眼用光学構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼用光学構造物には、ダブルレンズやトリプルレンズで構成され、外レンズの前面に無機膜加工(例えばミラー加工、反射防止膜加工等)して成るものがある。
【0003】
しかしながら、上記無機膜は、(1) 飛来物、拭きキズ、転倒時の外的接触、(2) 雪や雨等の水分に直接曝される、(3) 紫外線に直接さらされる、という外的要因により剥離する恐れがある。
【0004】
上記問題を解決する一手段として、無機膜の表面にフッ素やシリコン等の摩擦力の低い物質をコーティングすることにより、傷、水分の侵入の低減する方法が知られているが、フッ素やシリコンコーティングは剥離し易くその効果は半永久的というものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−233701公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明では、外的要因により無機膜がレンズから剥離しにくい眼用光学構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、外レンズと内レンズとを平行に対置し、前記外・内レンズ相互の周縁又はその近傍を全周シールして外・内レンズ相互間に空室を形成して成る眼用光学構造物において、空室を構成する外レンズの後面側と内レンズの前面側のうち少なくとも内レンズの前面側に無機膜を形成してあり、前記内レンズの前面側に形成される無機膜は金属膜であり、前記外・内レンズは、それぞれ中央部が両端部よりも突出する凸形状に形成されている。
【0008】
「外・内レンズ」
レンズは、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、環状オレフィン系、繊維基系、ポリスルフォン系、ポリフェニレンスルフィッド系、塩化ビニル系、ポリスチレン系の樹脂等と、それらの透明アロイ樹脂等により構成でき、また、ウレタン系、ポリエポキシ系、アクリル系、アリル系等の熱硬化性樹脂より構成できる。なお、強靱性からすると、ポリカーボネート系熱可塑性樹脂とウレタン系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0009】
レンズの厚みは、強度及び加工性を考慮すると、厚みは0.3〜10mm、好ましくは0.5〜7mmである。
【0010】
「全周シール」
外・内レンズ相互の周縁又はその近傍を全周シールするのは、外・内レンズ相互間にできる空室内に、水が侵入しないように密閉するためである。
【0011】
「無機膜」
無機膜は、金属、珪素を含む金属酸化物、珪素を含む金属窒化物などの薄膜である。通常は、真空蒸着法、スパッター法等の高度の真空化で形成する1層当たり0.5mm以下の薄膜である。打ち抜く前のレンズ、或いは打ち抜いた後のレンズ、曲げる前のレンズ、或いは曲げた後のレンズに付与する。
【0012】
無機膜が、空室を構成するレンズ面側に設けられるのは、水の接触による剥離や、手の接触による磨耗やエッチングを受けにくくして、レンズの本来の性能や美観を損なわないようにするためである。
【0013】
ここで、従来は外レンズの前面側に無機膜を蒸着加工し、場合によって無機膜の剥離を防止するためシリコン又はフッ素コーティングを施しているが、前記コーティング面には印刷加工ができないという欠点がある。しかしこの発明では、無機膜は外レンズの後面側と内レンズの前面側のうち少なくとも一方に形成するものであるから、無機膜の剥離を防止するという観点からは外レンズの前面側にシリコン又はフッ素コーティングを施す必要が全くなくなり、外レンズの前面側に印刷加工ができることになる。
【0014】
「金属膜」
金属膜は、明るい側から見るとメタル光沢膜(ミラー膜)になり、暗い方から見ると半透明膜になるので、遮光性能上好ましい光学加工方法である。
【0015】
この発明では、金属膜は内レンズの前面側に形成してあるから、水分での剥離や、手等との接触による磨耗やエッチングを受けることがなくなるので、本来の性能や美観を損なわないことになる。レンズに付けられる金属膜は通常、真空蒸着法やスパッター法で、金、銀、クロム、ニッケル、錫、アルミニウムなどである。
【0016】
一般に、レンズ形状に打ち抜く前、或いは打ち抜いた後の基材に、例えば真空蒸着機により金属膜を付けるが、ハードコート膜等他の機能膜の上に金属膜の上に金属膜を付与することもある。
【0017】
「レンズが凸形状の場合」
特に、平板状のレンズに金属膜を付与してから曲げる方法をとる場合、金属膜を内側にして曲げると、金属膜にシワが寄ったり、剥離しやすいため、金属膜を外側にして曲げる場合は内レンズの前面側(凸面側)に付与することが好ましい。
【0018】
(請求項2記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、上記請求項1記載の発明に関し、外レンズの後面側に形成される無機膜は、反射防止膜である。
【0019】
「反射防止膜」
反射防止膜により、外側から見ればレンズのギラツキを防止し、内側から見ればレンズの透過光量を増し、明るくみえる。平板状のレンズに金属膜を付与してから曲げる方法をとる場合、金属膜を内レンズの凸面に付与するのが好ましいので、反射防止膜は外レンズの凹面側に付与するのが好ましい。
【0020】
この反射防止膜は、通常、真空蒸着法やスパッターにより、無機酸化物の多層膜をつけるようにして形成される。レンズ基材との密着性、レンズ基材と無機酸化物の屈折率、反射防止性能によって、層構成と膜厚を理論的に決めることができる。
【0021】
外レンズはハードコート液に浸漬し、両面がハードコート処理されている場合は、ハードコートされた外レンズの凹面側に反射防止膜を付与することがある。
【0022】
(請求項3記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、上記請求項1又は2記載の発明に関し、外レンズと内レンズのうち、少なくとも外レンズに紫外線吸収機能又は紫外線反射機能を有するものとしてある。
【0023】
「紫外線吸収機能又は紫外線反射機能」
波長400nm以下の紫外光をほぼ100%カットすることが好ましい。レンズを吸収する樹脂の中に、紫外線吸収剤を配合する方法、色素を配合する方法、外レンズの前面側に、紫外線を反射する無機膜を付与する等の方法、及びこれらの組み合わせるもできる。
【0024】
(請求項4記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の発明に関し、外レンズの前面側にハードコートを施してある。
【0025】
「ハードコート膜」
ハードコート膜は、一番外傷を受けやすい外レンズの前面側に付与するのが好ましい。ハードコート膜の素材はアクリル系やシラン系があるが、一般的には得られる表面硬度や塗布のしやすさなどから、シラン系化合物の加水分解物とシリカゾルなど無機ゾル粒子を主成分にするものが好ましい。
【0026】
ハードコート膜を付与する方法としては、フィルム状或いは平板状のシートの片面にロールコータ等でハードコート液を塗布し、硬化する片面ハードコート膜の付与方法と、平板状レンズ或いは曲げたレンズの状態でハードコート液に浸漬し、硬化する両面ハードコート膜の付与方法がある。外レンズの前面側のハードコート膜に、フッ素系或いはシリコーン系等の撥水、撥油処理を行うと、水滴や雪、氷が付着しにくく、かつ手垢や油汚れを簡単にふき取れるようになる。撥水、撥油処理剤はフッ素系シラン化合物を真空蒸着法或いは浸漬法でハードコート膜の上に付与するのが、耐久性から好ましい。
【0027】
(請求項5記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の発明に関し、内レンズの後面側に防曇膜を設けてある。
【0028】
眼の方と対向する内レンズの後面側が、水分によって曇りやすいが、防曇膜により前記曇りが阻止される。
【0029】
「防曇膜」
防曇膜は親水性ポリマーや界面活性剤が主成分になる。フィルム状或いは平板状のシートの片面にロールコータ等で防曇液を片面塗布するか、レンズの状態で防曇液に浸漬し、両面塗布する方法がある。防曇膜と金属膜の密着性がわるい場合は、内レンズの前面側に金属膜を付与した後に防曇膜を付与する方が好ましいことがある。
【0030】
(請求項6記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、上記請求項1乃至5のいずれかに記載の発明に関し、全周シールは、止水性緩衝材により行われている。
【0031】
「止水性緩衝材」
止水性緩衝材は、弾性力と可撓性、及び耐水性を有する樹脂により構成されている。耐水性とは、水に溶けたり膨潤したり、水を通したりしない性質をいう。
【0032】
止水性緩衝材は、天然ゴム系、合成ゴム系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスルフォン系、ポリフェニレンスルフィッド系、塩化ビニル系、ポリスチレン系、繊維素系等と、それらのポリマーアロイ樹脂で構成される。なお、いずれも独立気泡を含んでいてもよいが、独立気泡を含む場合はポリオレフィン系、或いはポリウレタン系樹脂が、弾力性と可撓性、および耐水性において特に好ましい。
【0033】
止水性緩衝材の厚さは、0.4〜10mm、好ましくは1〜6mmとしてある。このような厚さに設定してあるのは、0.4mm以下では外レンズと内レンズが接触する可能性が高くなり、10mmを超えると、眼用光学曲面構造物の厚みが大きくなり見栄えを損なう傾向があるからである。
【0034】
レンズへの止水性緩衝材の接着は、適度の耐水性のある樹脂用接着剤を緩衝材とレンズの間に塗布し、接着するか、適度の耐水性のある両面粘着テープまたはシートを緩衝材とレンズの間に用いて接着する。
【0035】
(請求項7記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の発明に関し、外レンズ又は/及び内レンズ又は/及び止水性緩衝材に気圧調整孔を設け、空室の内圧と外気圧に差が生じないようにしてある。
【0036】
「気圧調整孔」
気圧調整孔は、空室が、気圧の変動で膨れたり、縮んだりすることを防ぐために、空室の内圧を外圧と同じにするものである。外レンズと内レンズ、緩衝材の少なくともいずれかに、直径0.1〜5mm程度の孔を開けるようにして構成される。気圧調整孔は直径0.1mmでは効果が弱く、5mm以上では見栄えが悪い。
【0037】
(請求項8記載の発明)
この発明の眼用光学構造物は、上記請求項7記載の発明に関し、気圧調整孔を、通気性を有する防水フィルターで塞いでいる。
【0038】
「防水フィルター」
防水フィルターは、気圧調整孔から空室内に水、雪、氷が侵入せず且つ、室内の内圧と外圧とを同じにするため通気性を有するものとしている。このような性質をもつものとしては、ゴアテックス(登録商標)と呼ばれるフッ素樹脂の延伸膜やポリウレタン膜等がある。それらの膜をラミネートあるいは塗布した布をフィルターとして空気調整孔の上に貼付する。
【0039】
防水フィルターのレンズへの貼付には、耐水性のある両面粘着テープまたはシートを用いる方法が簡便である。その場合、空気調整孔の部分には、両面粘着テープまたはシートの粘着剤が位置しないようにする。
【発明の効果】
【0040】
この発明の眼用光学構造物によると、外的要因により無機膜がレンズから剥離しにくいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施例の眼用光学構造物であるダブルレンズ式のスキー用ゴーグルの外観斜視図。
【図2】前記ゴーグルの上面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】前記ゴーグルを構成する防水フィルターが貼着された部分を縦に断面した断面図。
【図5】前記ゴーグルに使用されているゴーグルレンズを内レンズから見た図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下にこの発明の眼用光学構造物を実施するための最良の形態としての実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0043】
図1はこの発明の実施例の眼用光学構造物であるダブルレンズ式のスキー用ゴーグルの外観斜視図、図2はは前記ゴーグルの上面図、図3は図2のA−A断面図、図4は前記ゴーグルを構成する防水フィルターが貼着された部分の縦断面図、図5は前記ゴーグルに使用されているゴーグルレンズを内レンズ側から見た図である。
【0044】
(このスキー用ゴーグルの基本構成について)
このスキー用ゴーグルGは、図1や図2に示すように、ゴーグル枠1と、グル枠1に連結された伸縮弾性バンド2と、ゴーグル枠1に着脱自在に嵌着されたゴーグルレンズ3と、ゴーグルレンズ3に付設された防水フィルター4とを具備している。
【0045】
以下に、このスキー用ゴーグルGの各構成について詳述する。
【0046】
(ゴーグル枠1について)
ゴーグル枠1は弾性合成樹脂、ゴム等の軟質材から成り、図1や図3に示すように、レンズ嵌込縁10と、顔面当座11と、前記レンズ嵌込縁10と顔面当座11とを連絡する周壁部12とから成り、レンズ嵌込縁10にはゴーグルレンズ3が着脱自在に嵌め込まれている。
【0047】
顔面当座11には、図2や図3に示すように、その左右部分に伸縮弾性ゴムバンド2を連結するための連結部11aが穿孔されており、また、顔面との密接を良好なものとするためのスポンジ、モントプレーン等の密接用材11bが貼着されている。
【0048】
周壁部12には、図1や図3に示すように、その上下部構成壁及び左右部構成壁に孔を設けてベンチレーション12aを形成してあり、前記ベンチレーション12aを厚みが薄いスポンジ板S1等により閉蓋するようにしてある。なお、ベンチレーション部12aをスポンジ板S1等により閉蓋してあるのは空気以外の雪やゴミがゴーグル内部に侵入しないようにするためである。
【0049】
(伸縮弾性バンド2について)
伸縮弾性バンド2は、図1に示すように、バンド主体20,20は伸縮自在に構成したものを使用しており、上記連結部11a,11aに取り付けたバンド主体20,20相互をバックル21を介して連結できるようにしてある。
【0050】
(ゴーグルレンズ3について)
ゴーグルレンズ3は、図3や図5に示すように、透明性のある樹脂から成る
二枚の外・内レンズ30,31と、前記外・内レンズ30,31のうち隣り合うレンズの周縁を全周シールすべく設けられた止水性緩衝材33とから構成されており、前記止水性緩衝材33とこれらを挟み込むレンズとを両面テープにより接着してある。ここで、このゴーグルレンズ3では、外・内レンズ30,31相互間距離をそれぞれ2mmに設定してあり、外・内レンズ30,31相互間側に形成される空室Rを断熱層としてある。また、これら外・内レンズ30,31はそれぞれ0.6mm程度に設定してあり、中央部が両端部よりも突出する凸形状に形成されている。
【0051】
外レンズ30は、図3や図5に示すように、上縁部近傍部分にベンチレーション部3aを構成する孔30aを形成してあり、その外周縁をレンズ嵌込縁10への嵌り込み部分としてある。
【0052】
内レンズ31は、図3や図5に示すように、上記外レンズ30と比べて一回り小さい形状としてあると共に、その上縁部近傍部分にベンチレーション部3aを構成する孔31aを形成してある。
【0053】
ここで、上記外レンズ30には紫外線がほぼカットされるように紫外線吸収機能又は紫外線反射機能を持たせてあり、その前面側にハードコート8を施してある。
【0054】
また、内レンズ31には、その前面側に銀やクロム等の金属膜5(無機膜)を形成してあり、これにより、明るい側から見るとミラー膜となり、暗い側から見ると半透明となるようにしてある。そして、前記内レンズ31の後面側には防曇膜7を形成してある。
【0055】
上記した孔30a,31aに相当する外レンズ30と内レンズ31との間にはスポンジ板S2を挟み込ませてある。理由はスポンジ板S1を施した場合と同様である。
【0056】
また、このゴーグルレンズ3では、図4や図5に示すように、内レンズ31における視界から外れた外縁付近に気圧調整孔hを形成してあり、図4に示すように気圧調整孔hを防水フィルター4で塞いである。
【0057】
(防水フィルター4について)
防水フィルター4としては、水分の通過を阻止し且つ空気の通過を許容する撥水性通気シートを採用してある。なお、この撥水性通気シートは、ナイロン布等の通気性を持ったシート状の通気性基材に、連続気孔性多孔室材、例えば4フッ化エチレン樹脂繊維層を貼着したものである。この4フッ化エチレン樹脂繊維層は、延伸されて非常に強靱でしなやかな細かい繊維構造のもので、多くの連続気孔を有すると共に強い撥水性を持っており、その平均孔径0.2〜5.0μm,気孔率25〜95%、空気流量0.1〜3000(488inH2 O)cc/sin/in2 としてある。
【0058】
したがって、滑降等により外部気圧が変化した場合、防水フィルター4を介してゴーグルレンズ3内外の圧力が平衡状態になるので、外・内レンズ30,31は何ら変形することはなく、視界の歪みを防止できる。
【0059】
また、外部気圧が上昇した場合においては、撥水性通気シートを介して気圧調整孔h1より外部空気を吸い込むこととなるが、上記の構成の撥水性通気シートを採用していることから、外部空気に多量の水分が含まれていた場合、或いは通気性基材の前面に雪等が付着していても、ゴーグルレンズ3の内部への水分の侵入は阻止される。したがって、圧力平衡用の気圧調整孔h1があるにもかかわらず、ゴーグルレンズ3内での曇りの発生を防止できる。
【0060】
(このゴーグルの優れた効果について)
(1) 無機膜である金属膜5は内レンズ31の前面側に形成されている。つまり、飛来物、拭きキズ、転倒時の外的接触という外的接触が生じる外レンズ30の前面には無機膜は存在しない。したがって、このゴーグルによれば、無機膜が前記外的要因により剥離することはない。
(2) 外レンズ30には紫外線がほぼカットされるように紫外線吸収機能又は紫外線反射機能を持たせてあるため、内レンズ31の前面側に形成された無機膜である金属膜5には、紫外線があたらないものとなる。したがって、このゴーグルによれば、無機膜が前記外的要因により剥離することはない。
(3) 上述した如く無機膜である金属膜5は内レンズ31の前面側に形成されている。ここで、外レンズ30後面側と内レンズ31の前面側とにより構成される空室R内には、防水フィルター4の存在により雪や雨等の水分は侵入しないようになっている。したがって、このゴーグルによれば、無機膜が水分に直接曝されるようなことがないから、水分により無機膜が剥離するようなことがない。
(4) 外レンズ30がカラーレンズである場合、当該外レンズ30の後面側にミラー加工を施すとミラーの色目が変わってしまうが、このゴーグルの如く内レンズ31の前面側にミラー加工を施した場合には、カラーレンズの色目は変わらない。
【0061】
(実施例の変形例について)
ゴーグルとしての基本的構成は上記実施例と同じであるが、他の変形例を以下に説明する。
(1) 上記実施例の如く外レンズ30後面側に無機膜である反射防止膜が形成することができる。この無機膜である反射防止膜においても外的要因により剥離しないことが明らかである。
(2) 実施例において外レンズ30を紫外線吸収偏光レンズとすることができる。
(3) 上記実施例にかえて、無機膜である金属膜5を内レンズ31の前面側ではなく外レンズ30の後面側に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
G スキー用ゴーグル
h1 気圧調整孔
h2 気圧調整孔
R1 前空室
R2 後空室
R3 空室
1 ゴーグル枠
2 伸縮弾性バンド
3 ゴーグルレンズ
4 防水フィルター
5 金属膜
7 防曇処理膜
8 ハードコート
30 外レンズ
31 内レンズ
33 止水性緩衝材
34 止水性緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外レンズと内レンズとを平行に対置し、前記外・内レンズ相互の周縁又はその近傍を全周シールして外・内レンズ相互間に空室を形成して成る眼用光学構造物において、空室を構成する外レンズの後面側と内レンズの前面側のうち少なくとも内レンズの前面側に無機膜を形成してあり、前記内レンズの前面側に形成される無機膜は金属膜であり、前記外・内レンズは、それぞれ中央部が両端部よりも突出する凸形状に形成されていることを特徴とする眼用光学構造物。
【請求項2】
外レンズの後面側に形成される無機膜は、反射防止膜であることを特徴とする請求項1記載の眼用光学構造物。
【請求項3】
外レンズと内レンズのうち、少なくとも外レンズに紫外線吸収機能又は紫外線反射機能を有するものとしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の眼用光学構造物。
【請求項4】
外レンズの前面側にハードコートを施してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の眼用光学構造物。
【請求項5】
内レンズの後面側に防曇膜を設けてあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の眼用光学構造物。
【請求項6】
全周シールは、止水性緩衝材により行われていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の眼用光学構造物。
【請求項7】
外レンズ又は/及び内レンズ又は/及び止水性緩衝材に気圧調整孔を設け、空室の内圧と外気圧に差が生じないようにしてあることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の眼用光学構造物。
【請求項8】
気圧調整孔を、通気性を有する防水フィルターで塞いでいることを特徴とする請求項7記載の眼用光学構造物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−49281(P2010−49281A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271048(P2009−271048)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2004−347776(P2004−347776)の分割
【原出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)
【Fターム(参考)】