説明

眼科用レーザ治療装置

【課題】 用意された走査パターンを有効利用して、適切な治療ができる装置を提供する。
【解決手段】 治療レーザ光のスポットを患者眼の組織上で2次元的に走査する走査光学系を含む照射光学系と、スポットが並べられた所定の走査パターンを複数個記憶するメモリと、所望の走査パターンの一つを選択するパターン選択手段と、を備え、選択された走査パターンに基づいてスポットを複数のスポット位置に順次照射する眼科用レーザ治療装置において、選択された走査パターンを変更するパターン変更手段であって、選択された走査パターンを基礎として一部のスポットの配列に変更を加える信号を入力する変更信号入力手段を有し、入力信号に基づいて走査パターンを変更するパターン変更手段と、変更された走査パターンに基づいて走査光学系の駆動を制御してスポットを順次照射する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者眼にレーザ光を照射し、治療を行う眼科用レーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用レーザ治療装置の1つとして、光凝固装置が知られている。光凝固治療(例えば、汎網膜光凝固治療)では、治療レーザ光を患者眼の眼底組織に1スポットずつ照射し、組織を熱凝固させる。治療レーザ光の照射に際しては、治療レーザ光の照準を合わせるための可視のエイミング光(照準光)が照射される(例えば、特許文献1参照)。近年では、ガルバノミラー等を備えた走査ユニットをレーザ光のデリバリユニットに組み込み、予め設定された複数のスポット位置の走査パターンに基づいて治療レーザ光のスポットを眼底組織上で走査する装置が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。この装置においては、例えば、スポットが3×3や5×5等の正方行列上に配列されたパターン、スポットが円弧状(扇形の場合も含む)に配列されたパターン等の複数の所定の走査パターンがメモリに予め記憶されており、術者が組織の状態に応じて所望の走査パターンを選択可能に構成されている。また、エイミング光も走査パターンに基づいて照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−224154号公報
【特許文献2】特表2006−524515号公報
【特許文献3】特表2009−514564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メモリに記憶されている走査パターンは、代表的なスポットの配列パターンであり、全ての組み合わせのパターンが予め用意されているわけではない。仮に、あらゆる組み合わせのパターンがメモリに記憶されていると、所望する走査パターンを選択する場合の手続きが複雑になり、操作性が悪くなる。しかし、予め用意された走査パターンのみでは、治療部位の状態によっては、レーザ照射を避けるべき部位にスポットが掛かる場合がある。
【0005】
例えば、眼底の広範囲にレーザ光のスポットを照射するために、5×5のスポット数の走査パターンが選択されていた場合で、図4のように、領域T1へのレーザ照射終了後に、その横の領域T2に5×5の走査パターンのレーザ光を照射しようとすると、一部のスポットS14、S25が血管Vに掛かってしまう。血管Vへのレーザ照射を避けるために、4×4のパターンを選択し、領域T2aのレーザ照射を行うようにすると、領域T2に対する残りの領域には、別のパターン又は1スポット毎のレーザ照射になり、術者の手間が掛かり、治療効率が低下してしまう。また、治療部位に合わせて、スポットの位置を自由に設計できる機能が装置にある場合でも、全てのスポットを始めから設計するには手間が掛かりすぎる。
【0006】
また、眼底を所定の径の円状(例えば、黄斑を中心としたドーナツ円状)に光凝固を行う場合、メモリに記憶された走査パターンの中から円弧パターン(スポットが所定のカーブを持つ円弧に並べられた円弧状の走査パターン)を選択し、この円弧パターンのスポットを繋げて、円状となるように複数回照射する。しかしながら、患者眼の眼底の状態や曲率によっては、選択された円弧パターンのみでは、複数回照射しても円状とならない場合がある。例えば、眼底の曲率と円弧パターンの曲率が合わず、歪んだ走査パターンにて眼底の広い範囲を光凝固すると、眼底に均等な間隔でスポットが照射されない。仮に、種々の曲率を持つ円弧パターンをメモリに記憶しておくと、所望する曲率の円弧パターンを選択する場合の手続きが複雑になり、操作性が悪くなる。スポットの位置を自由に設計できる機能が装置にある場合でも、全てのスポットを始めから所望する曲率の円弧状に設計するには手間が掛かりすぎる。
【0007】
本件発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、予め用意された走査パターンを有効利用して、効率的で適切な治療ができる眼科用レーザ治療装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 治療レーザ光源からの治療レーザ光のスポットを患者眼の組織上で2次元的に走査する走査光学系を含む照射光学系と、治療レーザ光のスポットが所定の配列で並べられた所定の走査パターンを複数個記憶するメモリと、該メモリに記憶された走査パターンの中から所望の走査パターンの一つを選択するパターン選択手段と、を備え、選択された走査パターンに基づいて治療レーザ光のスポットを複数のスポット位置に順次照射する眼科用レーザ治療装置において、
前記パターン選択手段により選択された走査パターンを変更するパターン変更手段であって、前記パターン選択手段により選択された走査パターンを基礎として一部のスポットの配列に変更を加える信号を入力する変更信号入力手段を有し、入力信号に基づいて走査パターンを変更するパターン変更手段と、
該パターン変更手段により変更された走査パターンに基づいて前記走査光学系の駆動を制御して治療レーザ光のスポットを順次照射する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科用レーザ治療装置において、前記パターン変更手段は、前記変更信号手段として、選択された走査パターンの各スポットに対して一部のスポットを削除及び/又は追加するスポット位置の指定信号を入力する位置指定信号入力手段を有する、ことを特徴とする。
(3) (2)の眼科用レーザ治療装置は、選択された走査パターンのスポット間隔を設定する間隔設定手段を備え、前記パターン変更手段は、スポットを追加した走査パターンに変更するときに、設定されたスポット間隔と前記位置指定信号入力手段のスポット位置の指定に基づき、選択された走査パターンのスポットの配列規則に従った位置にスポット位置を決定することを特徴とする。
(4) (1)〜(3)の何れかの眼科用レーザ治療装置において、前記パターン変更手段により変更された走査パターンを前記選択手段により選択可能な走査パターンとして前記メモリに追加して記憶させる追加記憶手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予め用意された走査パターンを有効利用して、効率的で適切な治療が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は眼底の光凝固治療等を行う眼科用レーザ治療装置の光学系及び制御系を示す概略構成図である。
【0011】
眼科用レーザ治療装置1は、大別して、レーザ光源ユニット10、レーザ照射光学系40、観察光学系30、照明光学系60、制御部70、操作ユニット80、を備える。レーザ光源ユニット10には、治療レーザ光を出射する治療レーザ光源11、可視の照準レーザ光(エイミング光)を出射するエイミング光源12、治療レーザ光とエイミング光とを合波するビームスプリッタ(コンバイナ)13、集光レンズ14を備える。ビームスプリッタ13は、治療レーザ光の大部分を反射しエイミング光の一部を透過する。合波されたレーザ光は、集光レンズ14により集光され、レーザ照射光学系40へと導光する光ファイバ20の入射端面に入射される。また、治療レーザ光源11とビームスプリッタ13との間には、治療レーザ光を遮断するシャッタ15が設けられている。また、エイミング光源12からエイミング光及び治療レーザ光が導光される光路には第2のシャッタ16が設けられている。シャッタ16は、異常時に閉じられる安全シャッタであるが、エイミング光が走査されるときに、エイミング光の照射と遮断を行うために使用しても良い。シャッタ15も、治療レーザ光の照射と遮断を行うために使用しても良い。なお、各シャッタは、光路を切換える機能を有するガルバノミラーに置き換えてもよい。
【0012】
レーザ照射光学系40は、本実施形態では、スリットランプ(図示を略す)に装着されるデリバリとされる。光ファイバ20を出射したレーザ光(治療レーザ光及びエイミング光)は、リレーレンズ41、レーザ光のスポットサイズを変更するために光軸方向に移動可能なズームレンズ42、ミラー43、コリメータレンズ44を介した後、走査部50、対物レンズ45、反射ミラー49を経て患者眼Eの眼底に照射される。走査部50は、レーザ光の照射方向(照射位置)を2次元的に移動させるスキャナミラーを持つ走査光学系で構成されている。走査部50は、第1のガルバノミラー(ガルバノスキャナ)51及び第2のガルバノミラー55を備える。ガルバノミラー51は、レーザ光を反射する第1のミラー52と、ミラー52を駆動(回転)する駆動部であるアクチュエータ52を備える。同様に、ガルバノミラー55は、第2ミラー56及びアクチュエータ57を備える。レーザ照射光学系40の各光学素子を通ったレーザ光は、反射ミラー49にて反射され、コンタクトレンズCLを介して患者眼Eのターゲット面(患者眼の組織上)である眼底に照射される。
【0013】
ズームレンズ42は図示を略すレンズカムに保持されており、術者の操作によりレンズカムが回転されることで、各ズームレンズ42が光軸方向に移動される。ズームレンズ42の位置は、レンズカムに取り付けられたエンコーダ42aにより検出される。制御部70は、各レンズの位置情報(検出信号)をエンコーダ42aより受け取り、レーザ光のスポットサイズを得る。レーザ光(スポット)がターゲット面で2次元のパターンとして形成されるように、走査部50は制御部70からの指令信号に基づいて制御される。また、図示は略すが、反射ミラー49は、術者の操作により、レーザ光の光軸を2次元的に傾斜させる機構(手動マニュピュレータ)が接続されている。
【0014】
走査部50の構成を説明する。図2は、走査部50の斜視図である。ミラー52は、反射面をx方向に揺動可能となるようにアクチュエータ53に取り付けられる。一方、ミラー56は、反射面をy方向に揺動可能となるようにアクチュエータ57に取り付けられる。本実施形態では、ミラー52の回転軸はy軸と一致し、ミラー56の回転軸はz軸と一致する。また、アクチュエータ53、57は制御部70に接続され、個別に駆動される。アクチュエータ53、57には、モータ及びポテンショメータが内蔵されており(共に図示せず)、ミラー52、56は、制御部70の指令信号に基づき独立に回転(揺動)される。このとき、アクチュエータ53、57のポテンショメータにより、ミラー52、56がどれだけ回転したかの位置情報が制御部70に送られ、制御部70は、指令信号に対するミラー52,56の回転位置を把握できる。
【0015】
観察光学系30、照明光学系60はスリットランプに搭載されている。観察光学系30は、対物レンズを初め、変倍光学系、保護フィルタ、正立プリズム群、視野絞り、接眼レンズ等を備える。患者眼をスリット光により照明可能な照明光学系60は、照明光源、コンデンサーレンズ、スリット、投影レンズ等を有する。
【0016】
装置1の制御部70には、メモリ71、光源11、12、エンコーダ42a、アクチュエータ53、57、操作ユニット80、レーザ光を照射するトリガ入力手段であるフットスイッチ81が接続されている。操作ユニット80は、レーザ照射条件の設定、走査パターンの変更及び入力を兼ねるタッチパネル式のディスプレイ82を備える。ディスプレイ82には、各種のパネルスイッチが設けられており、レーザ光照射の照射条件のパラメータが設定可能とされる。ディスプレイ82は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースの機能を有し、ユーザが視覚的に数値等の確認、設定を行うことができる構成とされる。照射条件の項目としては、治療レーザ光の出力設定部83、照射時間(パルス幅)設定部84、休止時間(治療レーザ光の照射時間間隔)設定部85、治療レーザ光の走査パターン(ターゲット面に形成する治療レーザ光のスポット位置の配列パターン)の設定部86、エイミングのモードを設定するモード設定部(モード選択手段)87、詳細設定スイッチ88、その他の設定部等を呼び出すためのメニュースイッチ82a等が用意されている。モード設定部87では、複数のエイミングモードを切換えて設定できる。
【0017】
ディスプレイ82上の各項目をタッチすることにより数値を設定できる。例えば、術者が、スイッチ86aをタッチすることによりプルダウンメニューで設定可能な候補が表示され、術者が候補から数値を選択することにより項目における設定値が決定される。走査パターンは、予め複数用意され、術者がディスプレイ82上で選択可能に構成されている。走査パターンは、例えば、スポット位置を2×2、3×3、4×4、等の正方行列状に並べるパターン(正方パターン)、スポット位置を円弧状に並べるパターン(円弧パターン)、円弧を外径方向や内径方向に並べ扇形を形成するパターン(扇形パターン)、スポット位置を円状に並べるパターン(円パターン)、この円パターンを分割するパターン(円分割パターン)、スポットを直線状に並べた直線パターン等が装置メーカによって用意され、メモリ71に記憶されている。走査パターンは、設定部86が持つスイッチ86aにより、メモリ71に記憶されている複数の走査パターンの中から選択でき、設定部86の画面に表示される。また、ズームレンズ42の移動によって変えられるレーザ光のスポットサイズの情報は、ディスプレイ82に表示される。
【0018】
フットスイッチ81が術者により踏まれると、制御部70は各種パラメータの設定に基づき、治療レーザ光のパターンをターゲット面に形成するようにレーザ光を照射させる。制御部70は、光源11を制御すると共に設定されたパターンに基づいて走査部50を制御し、ターゲット面(眼底)に治療レーザ光のパターンを形成する。
【0019】
図3は、スポット位置のパターンの一例を示す図である。図示するようにスポットSが、3×3の正方行列状に並べられてパターンが形成される。ここで、スポットSは、エイミング光、治療レーザ光のいずれも指す。このようなパターンに基づいて、治療レーザ光及びエイミング光が走査部50により走査され、ターゲット面にパターンが形成されることとなる。スタート位置SPからスポットSの照射が開始され、終了位置GPへ向かってスポットSが2次元的に走査される。本実施形態では、図中の矢印が示すように、スポットSはできるだけスポットS間の移動を効率的に行うように、隣接するスポットSへと順番に走査される構成とする。
【0020】
スポットSの間隔は、ディスプレイ82に設けられえたスポット間隔設定部89により、スポット径の0.5倍〜2倍の範囲で任意に設定可能にされている。図3のように、スポットの配列が方形パターンの場合、スポットSの間隔は上下左右方向で等間隔になるように形成される。
【0021】
以上のような構成を備える装置において、治療レーザ光の照射による治療動作を説明する。本装置には、スイッチ86aにより選択された走査パターンを基礎として一部のスポットの配列に変更を加え、又はスポットの配列の形状に変更を加えるパターン変更機能が設けられている。初めに、本装置が持つパターン変更機能の中で、走査パターンを基礎として一部のスポットの配列に変更を加える例として、選択された走査パターンの各スポットに対してその一部のスポットを削除又は追加するパターン変更機能を説明する。手術に先立ち、手術条件が設定される。汎網膜光凝固治療のために、治療レーザ光のスポットサイズが200μmに設定され、走査パターンは5×5の正方パターンが選択されているものとする。
【0022】
術者は、照明光学系60からの照明光によって照らされた眼底を観察光学系30により観察すると共に、エイミング光が照射されるスポット位置を観察し、レーザ照射光学系40が搭載されたスリットランプ(観察光学系30、照明光学系60にて構成される)を患者眼に対して移動し、治療部位への照準合わせを行う。照準時には、走査パターンのスポット位置がエイミング光の残像で術者に観察されるように、走査パターンに基づいてエイミング光源12及び走査部50の駆動が制御される。すなわち、各スポット位置では走査部60のガルバノミラー51、55の駆動が停止されると共に、一定時間のパルス幅でエイミング光が照射される。次のスポット位置にスポットが移動されるときには、エイミング光の照射が停止される。各スポット位置への1スキャンの速度(周期)が人眼の残像時間より短ければ、術者に各スポットが同時に観察される。1スキャンの速度を人眼の残像時間より遅くすれば、各スポットが同時に観察されず、術者は各スポットの照射順序を認識できるようになる。
【0023】
術者がエイミング光を観察することにより治療部位に照準が合わせられた後、フットスイッチ81からのトリガ信号が入力されると、治療レーザ光の照射が開始される。各スポット位置では、ガルバノミラー51、55の駆動が停止されると共に、治療レーザ光源11が駆動され、設定された照射時間で治療レーザ光が照射される。スポットの移動時には、治療レーザ光源11からのレーザ光の出射が停止される。走査パターンに基づいて走査部50の駆動及び治療レーザ光源11の駆動が制御されることにより、各スポット位置へ治療レーザ光が順次照射される。
【0024】
術者は、レーザ照射光学系40が搭載されたスリットランプ又は反射ミラー49を移動することにより、眼底の治療対象部位に対して5×5のスポットの照射領域を順次移動し、レーザ照射を行う。この治療過程において、比較的大きな5×5のスポットの照射領域ではレーザ照射を避けなければならない部位(太い血管等)に掛かる場合がある。図4(a)はその例であり、領域T1へのレーザ照射終了後に、その横の領域T2にエイミング光の照準を合わせたときに、一部のスポットS14、S25が血管Vに掛かってしまっている。この対応として、メモリ71に記憶された走査パターンの中から4×4等の走査パターンを選択し、領域T2aのレーザ照射を行うようにしても良いが、これでは領域T2に対する残りの領域へのレーザ照射が手間であり、効率が悪い。
【0025】
そこで、この場合には、選択された走査パターンの各スポットに対してその一部のスポットを削除又は追加するパターン変更機能を使用する。ディスプレイ82の「Menu」スイッチ82aによりスポットの削除/追加モードが選択されると、ディスプレイ82の表示が図5の画面90に切換えられる。表示部91には、現在選択されている走査パターンのスポットPがグラフィック表示されている。表示部91の画面上で、各スポット位置がタッチされることにより、スポットを削除又は追加する位置が指定される。すなわち、本装置では、スポット位置の位置指定手段(変更信号入力手段)としてディスプレイ82に設けられたタッチパネル機能が使用される。タッチパネル機能に代えて、画面上に表示されるカーソルを移動させ、カーソルが移動した位置を指定するスイッチにより、位置指定手段を構成することもできる。
【0026】
図5の例において、図4(a)のスポットS14、S25に対応するスポット位置P14、P25が指定されると、そのスポット表示が消去される。これにより走査パターンが変更され、スポットの表示が消された位置にエイミング光及び治療レーザ光が照射されないようになる。変更された走査パターンは、メモリ71の一時記憶領域に記憶される。なお、スポット表示が消去された状態で、再び、スポット位置P14、P25が指定されることにより、再び、画面上のスポット表示が復活される。
【0027】
変更された走査パターンに基づいて走査部50及びエイミング光源12が駆動され、図4(b)のように、変更された走査パターンによるエイミング光のスポットが照射される。そして、フットスイッチ81によりトリガ信号が入力されると、治療レーザ光源11から治療レーザ光が出射されると共に、変更された走査パターンに基づいて走査部50が駆動され、治療レーザ光が眼底に順次照射される。すなわち、図4(a)にスポットS14、S25でのレーザ照射をスキップするように、治療レーザ光源11及び走査部50の駆動が制御される。
【0028】
なお、図5において、「Clear」スイッチ92の信号が入力されると、表示部91で変更された走査パターンはクリアされ、元の5×5の走査パターンに戻される。これにより、次の領域にレーザ照射するときに、簡単に元の選択パターンでレーザ照射を行える。また、トリガ信号の入力によりレーザ照射が実施されることにより、メモリ71の一時記憶された走査パターンがクリアされ、元の5×5の走査パターンに戻されるようにしても良い。
【0029】
次に、選択された走査パターンに対してスポットを追加する例を説明する。例えば、メモリ71に記憶された中から選択された走査パターンが3×3のスポットのパターンであったとする。図6(a)のように、血管Vの近傍領域T3に3×3のスポットのパターンに照準を合わせたとき、血管Vの状況を見ると、領域T3の隣の領域T4には3×3のスポットのままでは血管Vに掛かってしまう。この場合、領域T4のスポット位置S35、S45に1スポット毎のレーザ照射を行う対応では手間が掛かる。そこで、スポットを追加するパターン変更機能を使用する。
【0030】
図7は、走査パターンが3×3のスポットである場合において、走査パターン変更モードに切換えられた場合の画面例である。表示部91には、現在選択されている3×3の走査パターンを示す円形のスポットPがグラフィック表示されている。3×3のスポットPの外側には、スポットを追加可能な位置を示す十字マークMが表示されている。各十字マークMは、選択された走査パターンのスポットの配列規則に従った位置に表示されている。この例では、5×5の正方向配列までスポットを追加できる。なお、スポットを追加できる最大数は、ズームレンズ42の移動によりスポットサイズの設定情報、スポット間隔設定部89によるスポット間隔の設定情報、及びスキャン可能な最大範囲の関係により決定される。
【0031】
図7の表示部91の画面上で、位置M35と位置M45がタッチによりスポット位置が指定されると、その位置のマークMがスポットPの表示に変えられる。これにより、スポット位置の走査パターンが変更される(変更信号が入力される)。変更された走査パターンはメモリ71の一時記憶領域に記憶される。追加されたスポットPは、始めに選択されている3×3の走査パターンの配列規則に従って決定される。すなわち、この例では、3×3を延長した格子配列で追加のスポットの位置が決定されている。なお、「Clear」スイッチ92の信号が入力されると、表示部91で変更された走査パターンはクリアされ、元の選択パターンに戻される。
【0032】
変更された走査パターンに基づいて走査部50及びエイミング光源12が駆動され、図6(b)にように、領域T3の3×3のスポットに加え、スポット位置S35、S45にもスポットが観察されるようになる。そして、トリガ信号が入力されると、治療レーザ光源11から治療レーザ光が出射されると共に、変更された走査パターンに基づいて走査部50が駆動され、図6(b)のスポット位置に治療レーザ光が順次照射される。これにより、治療部位に合わせて効率よく治療を行える。なお、
以上のようにして予め用意された走査パターンに対して、一部のスポットを削除又は追加した走査パターンに変更することにより、効率的に治療が行え、手術時間を短縮できる。また、予め用意されたパターンを利用することで、全てのスポット位置を初めから設計する場合に対して効率よく走査パターンを設定できる。選択されたパターンに対して、スポットの削除と追加の両方を行うこともできる。
【0033】
また、このように変更された走査パターンは、スイッチ93が押されることにより、スイッチ86aによって選択可能な走査パターンとしてメモリ71に追加して記憶させることができる。これにより、変更された走査パターンを再び利用することがある場合には、前述のようにスポットを削除及び/又は追加した走査パターンを作る手間が省ける。 次に、選択された走査パターンに対してスポットを追加する例を説明する。例えば、メモリ71に記憶された中から選択された走査パターンが3×3のスポットのパターンであったとする。図6(a)のように、血管Vの近傍領域T3に3×3のスポットのパターンに照準を合わせたとき、血管Vの状況を見ると、領域T3の隣の領域T4には3×3のスポットのままでは血管Vに掛かってしまう。この場合、領域T4のスポット位置S35、S45に1スポット毎のレーザ照射を行う対応では手間が掛かる。そこで、スポットを追加するパターン変更機能を使用する。
【0034】
図7は、走査パターンが3×3のスポットである場合において、走査パターン変更モードに切換えられた場合の画面例である。表示部91には、現在選択されている3×3の走査パターンを示す円形のスポットPがグラフィック表示されている。3×3のスポットPの外側には、スポットを追加可能な位置を示す十字マークMが表示されている。各十字マークMは、選択された走査パターンのスポットの配列規則に従った位置に表示されている。この例では、5×5の正方配列までスポットを追加できる。なお、スポットを追加できる最大数は、ズームレンズ42の移動によりスポットサイズの設定情報、スポット間隔設定部89によるスポット間隔の設定情報、及びスキャン可能な最大範囲の関係により決定される。
【0035】
図7の表示部91の画面上で、位置M35と位置M45がタッチにより指定されると、その位置のマークMがスポットPの表示に変えられる。これにより、スポット位置の走査パターンが変更される。変更された走査パターンはメモリ71の一時記憶領域に記憶される。追加されたスポットPは、始めに選択されている3×3の走査パターンの配列規則に従って決定される。すなわち、この例では、3×3を延長した格子配列で追加のスポットの位置が決定されている。なお、「Clear」スイッチ92の信号が入力されると、表示部91で変更された走査パターンはクリアされ、元の選択パターンに戻される。
【0036】
変更された走査パターンに基づいて走査部50及びエイミング光源12が駆動され、図6(b)にように、領域T3の3×3のスポットに加え、スポット位置S35、S45にもスポットが観察されるようになる。そして、トリガ信号が入力されると、治療レーザ光源11から治療レーザ光が出射されると共に、変更された走査パターンに基づいて走査部50が駆動され、図6(b)のスポット位置に治療レーザ光が順次照射される。これにより、治療部位に合わせて効率よく治療を行える。
【0037】
以上のようにして予め用意された走査パターンに対して、一部のスポットを削除又は追加した走査パターンに変更することにより、効率的に治療が行え、手術時間を短縮できる。また、予め用意されたパターンを利用することで、全てのスポット位置を初めから設計する場合に対して効率よく走査パターンを設定できる。選択されたパターンに対して、スポットの削除と追加の両方を行うこともできる。
【0038】
また、このように変更された走査パターンは、スイッチ93が押されることにより、スイッチ86aによって選択可能な走査パターンとしてメモリ71に追加して記憶させることができる。これにより、変更された走査パターンを再び利用することがある場合には、前述のようにスポットを削除及び/又は追加した走査パターンを作る手間が省ける。
【0039】
次に、スイッチ86aにより選択された走査パターンに対してスポットの配列の形状に変更を加えるパターン変更機能の例として、選択された円弧パターンに対して円弧のカーブ(曲率)を変更するパターン変更機能を説明する。手術に先立ち、手術条件が設定される。汎網膜光凝固治療のために、治療レーザ光のスポットサイズが200μmに設定されているものとする。また、走査パターンとして、スポットが円弧に沿って並べられた円弧パターンが選択されているものとする。
【0040】
図8は、スイッチ86aにより円弧パターンが選択され、「Menu」スイッチ82aにより円弧パターンの変更モードが選択されたときに、ディスプレイ82に表示される画面例である。表示部100には現在選択されている円弧パターンのスポットPがグラフィック表示されている。円弧パターンのスポットを回転した走査パターンに変更したいときには、スイッチ101a、101bによって回転角の信号を入力することができる。スイッチ101aにより円弧パターンが時計回りに回転され、スイッチ101bにより円弧パターンが反時計回りに回転される。なお、円弧パターンを回転させる信号入力として、タッチ機能を利用することもできる。例えば、術者が表示部100に表示された走査パターンのスポットPをタッチしたまま回転させたい方向にドラッグすることにより、スポットPが円弧カーブの中心を基準に回転され、回転角の信号が入力される。
【0041】
図9(a)は、円弧パターンのスポット(エイミング光)が、眼底に照射されている図である。光凝固治療として、眼底Fの中心CO1(例えば、中心窩)を中心にした円にスポットを並べて照射すものとする。図9(a)において、円弧パターンAr1はスイッチ86aにより選択されたものであり、円弧パターンAr1のカーブは、中心CO1を中心にした半径r1に沿っている。円弧パターンAr1を回転したいときには、スイッチ101a、101bに回転角の信号を入力することにより、円弧パターンを円弧カーブの中心に回転させることができる。図において、円弧パターンAr1のカーブは、中心CO1を中心にした半径r1に沿っているため、円弧パターンAr1を回転させることにより、半径r1の円R1上にスポットを並べたレーザ光の照射が可能になる。
【0042】
しかし、半径r1より大きな半径r2の円R2に沿ってスポットを並べた治療を行う場合、選択された円弧パターンAr1のままでは、この治療を行うことができない。このような場合、円弧パターンAr1を回転させても、各スポットが円R2上に並ぶことはない。このため、円弧パターンAr1のままでレーザ光を照射しても、均等な間隔でのスポットを並べた治療が行えない。汎網膜光凝固治療(PRT)等の、周辺部にわたって広く光凝固を行う場合、好ましくは、スポット(凝固斑)が均等に並べられるように治療レーザ光が照射される。
【0043】
そこで、このような場合には、選択された円弧パターンに対して円弧のカーブを変更するパターン変更機能を使用する。図8において、スイッチ102a,102bが操作されることにより、表示部100のスポットPが並べられた円弧Arのカーブが変えられる。言い換えると、スイッチ102a、102bの操作により、走査パターンの変更信号である円弧パターンのカーブ変更信号が入力される。スイッチ102aにより円弧Arのカーブが小さな径に変えられ、スイッチ102bにより円弧Arのカーブが大きな径に変えられる。このとき、円弧Arのカーブが変えられても、スポット間隔Dが予め設定された値と略同一となるように制御部70により設定される。これにより、均等な間隔で並べられたスポットのレーザ照射が可能にされる。
【0044】
術者は、カーブ変更用のスイッチ102a,102bを操作し、走査パターンに従って走査されるエイミング光(眼底上でのパターン)を確認しながら円弧パターンのカーブを調整し、図9(b)に示すように、眼底のカーブ(曲率)に合わせ、治療部位の円R2に沿うように円弧パターンAr2に変更する。これにより、術者はリアルタイムにエイミング光を確認しながら簡単に走査パターンを設定できる。また、円弧パターンAr2の回転角をスイッチ101a、101bによって設定することにより、円弧パターンAr2のスポットを治療部位の円R2に沿って並べることができる。円弧パターンAr2の左右上下の位置合わせは、光学系が配置されたスリットランプを移動するか、又は反射ミラー49をマニュピレータで2次元的に傾斜させることにより行うことができる。
【0045】
なお、円弧パターンのカーブの変更は、スイッチ102a,102bによらず、ディスプレイ82が持つタッチパネル機能により、表示部100上で行うことができる。例えば、図10(a)のように、初めに選択された円弧パターンのスポットの表示に対して、中央のスポットS3がタッチされたまま上方向又は下方向にドラッグされることにより、円弧パターンのカーブ(曲率)Ac1が変えられる。カーブの変化に伴って、各スポットの配列形状が変化する。スポットS3が下方向にドラッグされた場合には、図10(b)に示すように、カーブAc1に対してカーブが緩くされたカーブAc2に変えられる。スポットS3が上方向にドラッグされた場合には、図10(c)のように、カーブAc1に対してカーブが急になったカーブAc3に変えられる。なお、ドラッグによって円弧パターンのカーブを楕円形状としてもよい。また、図10(a)の左端のスポットS1又は右端のスポットS5をタッチしてドラッグすることによってもカーブを自由に変更できる。このように、ディスプレイ82が持つタッチ機能を使用することにより、円弧パターンのカーブ(曲率)を自由に変更できる。なお、これらのように円弧パターンのカーブが変更された場合にも、スポットSのスポット間隔Dは、スポット間隔設定部89により設定された値を維持(略同一に)するように、制御部70によりスポットSの配列が設定される。これにより、均等なスポットの配列によるレーザ光の照射を行える。
【0046】
また、円弧パターンのカーブの変更機能に加えて、先に説明したスポットを削除又は追加するパターン変更機能を合わせて使用すると都合が良い。例えば、図9(b)で示したように、円弧パターンAr2を回転させて、スポットを円R2に沿って並べるとき、初めにレーザ光を照射した部分に対して円弧パターンAr2の回転により繋ぎあわせるとき、一部のスポットが重なる場合は、その重なり部分のスポットを削除したパターンに変更する。また、円弧パターンAr2の回転により繋ぎあわせるとき、僅かにスポットが不足するときは、スポットを追加したパターンに変更する。これにより、円状に並べるスポットのレーザ照射を効率よく行える。
【0047】
また、変更された円弧パターンは、先のスポットの削除/追加の場合と同様に、スイッチ93が押されることにより、スイッチ86aによって選択可能な走査パターンとしてメモリ71に追加して記憶させることができる。これにより、変更された走査パターンを再び利用することがある場合には、変更された走査パターンを作る手間が省ける。
【0048】
以上のように、曲面を持つターゲット面(ここでは、眼底F)のカーブに合わせた円弧パターンを設定して治療できる。これにより、眼底の広い範囲にわたって均等に治療レーザ光のスポットを並べることができ、光凝固等の治療が効果的に実施できる。また、予め用意された円弧パターンのカーブを変更する構成とすることにより、患者眼毎に円弧パターンを設計する必要がなく、手術の効率が向上できる。なお、上記の実施形態では、円弧パターンとして、スポットが一列に並べられた例で説明したが、スポットが複数段で円弧状に並べられたパターン(扇形パターン、分割円パターン)も含まれ、これらにも上記の円弧パターンを変更する機能が効果的に適用できる。
【0049】
以上説明した実施形態は種々の変容が可能である。例えば、走査部50の構成においては、1つのミラーをxy方向に傾斜等させる構成の部材を用いてもよい。また、レーザ光等の走査をレンズの傾斜により実現する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】眼科用レーザ治療装置の光学系及び制御系の概略構成図である。
【図2】走査部の斜視図である。
【図3】パターンの一例を示す図である。
【図4】5×5の走査パターンのレーザ照射を説明する図である。
【図5】走査パターンが5×5の場合の走査パターン変更モードの画面例である。
【図6】3×3の走査パターンのレーザ照射を説明する図である。
【図7】走査パターンが3×3の場合の走査パターン変更モードの画面例である。
【図8】円弧パターンの変更モードの画面例である。
【図9】円弧パターンのスポットを眼底に照射した状態を説明する模式図である。
【図10】円弧パターンのカーブを偏光する例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 眼科用レーザ治療装置
10 レーザ光源ユニット
20 光ファイバ
30 観察光学系
40 レーザ照射光学系
50 走査部
60 照明光学系
70 制御部
80 操作ユニット
90 画面
100 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療レーザ光源からの治療レーザ光のスポットを患者眼の組織上で2次元的に走査する走査光学系を含む照射光学系と、治療レーザ光のスポットが所定の配列で並べられた所定の走査パターンを複数個記憶するメモリと、該メモリに記憶された走査パターンの中から所望の走査パターンの一つを選択するパターン選択手段と、を備え、選択された走査パターンに基づいて治療レーザ光のスポットを複数のスポット位置に順次照射する眼科用レーザ治療装置において、
前記パターン選択手段により選択された走査パターンを変更するパターン変更手段であって、前記パターン選択手段により選択された走査パターンを基礎として一部のスポットの配列に変更を加える信号を入力する変更信号入力手段を有し、入力信号に基づいて走査パターンを変更するパターン変更手段と、
該パターン変更手段により変更された走査パターンに基づいて前記走査光学系の駆動を制御して治療レーザ光のスポットを順次照射する制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項2】
請求項1の眼科用レーザ治療装置において、
前記パターン変更手段は、前記変更信号手段として、選択された走査パターンの各スポットに対して一部のスポットを削除及び/又は追加するスポット位置の指定信号を入力する位置指定信号入力手段を有する、
ことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項3】
請求項2の眼科用レーザ治療装置は、選択された走査パターンのスポット間隔を設定する間隔設定手段を備え、前記パターン変更手段は、スポットを追加した走査パターンに変更するときに、設定されたスポット間隔と前記位置指定信号入力手段のスポット位置の指定に基づき、選択された走査パターンのスポットの配列規則に従った位置にスポット位置を決定することを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの眼科用レーザ治療装置において、前記パターン変更手段により変更された走査パターンを前記選択手段により選択可能な走査パターンとして前記メモリに追加して記憶させる追加記憶手段を備えることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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