説明

眼科用画像処理装置およびその方法

【課題】 複数のボリュームデータそれぞれから医学的に比較する意味のある断層画像を表示部に表示すること。
【解決手段】 本発明に係る眼科用画像処理装置は、複数のボリュームデータそれぞれから所定の条件に基づいて少なくとも1つの断層画像を選択する。なお、所定の条件は、被検眼の所定領域に基づく箇所、あるいは該断層画像群に含まれる断層画像の枚数に基づく箇所などである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科診療などに用いられる眼科用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層計(Optical Coherence Tomogoraphy、以下、OCTと呼ぶ。)を用いた装置により、眼底の2次元断層画像を取得することができる。眼科の医療現場において、ユーザは、眼底のボリュームデータに基づく画像(複数の2次元断層画像)から眼底の層構造、病変部の状態や分布、眼底血管の3次元的な走行などを観察することができる。
【0003】
ここで、複数のボリュームデータそれぞれを2次元投影用レンダリング処理したサムネイル画像を一覧表示する医用画像用の3次元画像処理装置について、特許文献1に開示されている。これにより、ユーザが、複数のサムネイル画像の中から所望の画像を選択することができる。なお、サムネイル画像とは、絵柄が一目で分かるような縦横画素数を小さくした低解像度の画像のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−092201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の表示よりも複数のボリュームデータ(断層画像群とも呼ぶ。)に含まれる断層画像で表示させた方が、被検眼(特に眼底の網膜)の状態を認識し易い場合がある。そして、ボリュームデータそれぞれから選択される断層画像が、差異の識別し易い断層画像である、あるいは医学的に比較する意味のある断層画像であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る眼科用画像処理装置は、
被検眼に関する複数の断層画像から成る断層画像群が複数あり、所定の条件に基づいて該断層画像群それぞれから少なくとも1つの断層画像を選択する画像選択手段と、
前記選択手段で選択された断層画像をそれぞれ表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る眼科用画像処理装置によれば、複数のボリュームデータそれぞれから所定の条件に基づいて少なくとも1つの断層画像を選択することができる。これにより、差異の識別し易い断層画像である、あるいは医学的に比較する意味のある断層画像を表示部に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る眼科用画像処理装置の構成を示す図
【図2】第1の実施形態に係る眼科用画像処理装置の処理フロー図
【図3】第1の実施形態に係る眼科用画像処理装置で作成したサムネイル画像の一覧表示を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る眼科用画像処理装置は、複数のボリュームデータそれぞれから所定の条件に基づいて少なくとも1つの断層画像を選択することができる。これにより、差異の識別し易い断層画像である、あるいは医学的に比較する意味のある断層画像を表示手段に表示することができる。なお、表示部への表示を行う表示制御部が、断層画像群ごとに選択された断層画像をサムネイル画像として一覧表示させることが好ましい。
【0010】
ここで、所定の条件は、被検眼の所定領域に基づく箇所、あるいは該断層画像群に含まれる断層画像の枚数に基づく箇所(選択する断層画像を端から何枚目の断層画像にするのかに関する情報)であることが好ましい。ただし、一般的には、複数の断層画像群それぞれから断層画像を選択する場合、該断層画像群を撮像する際に最初に撮像した断層画像(1枚目の断層画像)を選択することが考えられる。これでは、撮像範囲の設定の仕方や被検眼の形状や大きさなどに個人差などにより、サムネイル画像として一覧表示された画像どうしにばらつきが生じる可能性がある。そこで、上記箇所(特徴箇所とも呼ぶ。)が、前記断層画像群の略中央、被検眼の病変部の略中心、被検眼の中心窩の略中心、被検眼の視神経乳頭部の略中心のうち少なくとも1つであることが好ましい。これにより、ボリュームデータごとに被検眼の略同一箇所をサムネイル画像として一覧表示することができるので、差異の識別し易い断層画像である、あるいは医学的に比較する意味のある断層画像を表示部に表示することができる。
【0011】
また、断層画像の選択を行う画像選択部が、複数の条件から少なくとも1つを前記所定の条件として選択する条件選択部(特徴箇所選択ボタンとも呼ぶ。)を有することが好ましい。
また、画像選択部が、断層画像群それぞれから複数の断層画像を選択することが好ましい。これにより、表示制御部が、所定の時間経過に従って該複数の断層画像を変更しながら表示部に表示させることができる。
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の記述は、本発明に係る好適な眼科用画像処理装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る眼科用画像処理装置について、図1を用いて説明する。眼科用画像処理装置10には、ストレージデバイス1、表示デバイス2、入力デバイス3が接続されている。ストレージデバイス1には、OCTによって撮像されたボリュームデータ群、眼科用画像処理装置が作成するサムネイル画像群が保存される。表示デバイス2には、ボリュームデータを選択するための、サムネイル画像の一覧が表示され、ボリュームデータを入力デバイス3によって選択すると、表示デバイス2の所定領域にボリュームデータが表示される。ここで、ユーザにサムネイル画像の一覧表示画面を提示する前にサムネイル画像を準備する。本実施形態では、ストレージデバイス1にボリュームデータを保存されると、表示対象に加えられるものとする。表示対象に加えられたボリュームデータは、サムネイル画像群が準備される。準備するタイミングは、表示対象に加えられた時やサムネイル画像表示要求が発行された直後など、いつでもよい。応答性の高さを考慮するならば、ユーザにサムネイル画像準備による待ち時間が発生しないタイミングが好ましい。準備ができた後、サムネイル画像表示要求が発行され次第、サムネイル画像の一覧表示を行う。
【0014】
次に、本実施形態に係る眼科用画像処理装置で作成したサムネイル画像の一覧表示画面について、図3を用いて説明する。複数のボリュームデータのサムネイル画像6は、表示デバイス2に所定の大きさでボリュームデータ情報表示部8に内包され、並べて表示される。なお、ボリュームデータ情報表示部8とは、サムネイル画像と文字列による患者情報を表示したGUIの一部のことである。また、ボリュームデータ情報表示部8はボリュームデータを選択するための手助けとなる情報を表示しており、患者情報以外にも他のモダリティで取得された画像やボリュームデータの投影像などを含むと効果的である。
【0015】
ここで、サムネイル画像全てが表示デバイス2の画面に表示しきれない場合に、現在表示されているサムネイル群より左右方向に配置されているサムネイル画像を見るために、スクロールバー4などをGUIとして表示することが好ましい。本実施形態では、押下により左右にスクロールする機能を有するGUIも表示させている。また、押下により特徴箇所に対応する位置の断層画像を選択する特徴箇所選択ボタン5をGUIとして表示することが好ましい。また、ユーザが、ポインティングデバイスやキーボードなどの入力デバイス3によって、ボリュームデータ情報表示部8のいずれかを選択すると、選択されたボリュームデータの2次元投影用レンダリング処理された画面などをボリュームデータ画像表示部7に表示しても良い。
【0016】
次に、本実施形態に係る眼科用画像処理装置で作成されたサムネイル画像の準備の方法について、図2(a)に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、S101において特徴箇所を含む断層像の選択を行う。本発明では、特徴箇所をボリュームデータの中心、ボリュームデータの端、病変部の中心、中心窩の中心、視神経乳頭部の中心とする。以下に、特徴箇所それぞれに対応する、断層像取得手段の動作を説明する。
【0017】
ボリュームデータの中心に位置する断層像の選択には、ボリュームデータを構成する断層像の枚数をN枚とすると、N/2+1(小数点以下切り捨て)枚目の断層像を選択すれば良い。中央に位置する断層像はボリュームデータの撮像中心であり、一般的に観察したい部位を撮像中心にすることから、ボリュームデータ中で最も観察したい箇所である可能性が高い。
【0018】
ボリュームデータの端に位置する断層像の選択には、ボリュームデータを構成する断層像の枚数をN枚とすると、1枚目、もしくはN枚目を選択すれば良い。端に位置する断層像の選択に要する計算量は少ない。そのため、従来のサムネイル画像には端に位置する断層像を利用していた。本実施形態では、従来の表示様態との互換性を保つため、端に位置する断層像も選択する。
【0019】
病変部を含む断層像の選択には、例えば特開2010−035607号のような方法によって病変部の位置を特定し、その病変部の重心を含む断層像を選択する。
中心窩を含む断層像の選択には、例えば特開平09−313447号のような方法によって中心窩の位置を特定し、その中心窩の重心を含む断層像を選択する。
視神経乳頭中心を含む断層像の選択には、例えば特開平09−313447号のような方法によって視神経乳頭中心の位置を特定し、その視神経乳頭中心を含む断層像を選択する。
なお、ボリュームデータの撮像領域内に病変部や中心窩、視神経乳頭中心が存在しない場合がある。その場合には、断層像の選択をしない。
【0020】
次に、S102においてサムネイル画像用の画像データとして、選択した断層像群それぞれの複製を作成し、ストレージデバイス1に保存する。なお、サムネイル画像用の画像データは、サムネイル画像の一覧表示における、各サムネイルの画面表示領域の大きさ応じて、特開2003−242497号のような方法で低解像度の画像データにしても良い。また、特開平05−276391号のような方法でサムネイル画像群の識別に有用な画質かつ低データ量の画像形式に変換しても良い。低解像度化と画像形式の変換によって低データ量のサムネイル画像を作成すると、サムネイル画像用の画像データの入力時間が短縮され、サムネイル画像の一覧表示の応答性が向上し好ましい。
【0021】
次に、本実施形態に係る眼科用画像処理装置で作成されたサムネイル画像の一覧表示の方法について、図2(b)に示すフローチャートを用いて説明する。まず、S201において一覧に表示する各ボリュームデータから作成された全てのサムネイル画像をストレージデバイス1から入力する。次に、S202において、サムネイル画像の表示を行う。各ボリュームデータには、少なくとも、ボリュームデータの中心に位置する断層画像のサムネイル画像とボリュームデータの端に位置する断層像のサムネイル画像が存在する。本実施形態の初期状態では、ボリュームデータの中心に位置する断層画像のサムネイル画像を表示デバイス2に並べて一覧表示する。
【0022】
ここで、特徴箇所選択ボタン5の押下により、サムネイル画像として表示中の断層画像の特徴箇所とは異なる特徴箇所を、選択された特徴箇所のサムネイル画像に切り替えることもできる。また、選択された特徴箇所のサムネイル画像が存在しない場合には、直前に表示していたサムネイル画像を維持することが好ましい。また、選択された特徴箇所のサムネイル画像が存在しないことを提示するために、サムネイル画像の明るさを落として表示することが好ましい。あるいはサムネイル画像部を包含するボリュームデータ情報表示部8の外枠を点線などに変更することが好ましい。
【0023】
以上によって、本実施形態に係る眼科用画像処理装置は、各ボリュームデータの同じ特徴箇所のサムネイル画像を並べて表示する。このことによって、ユーザは同じ特徴箇所のサムネイルを見比べることができるため、サムネイル画像の識別能を向上させることができる。
【0024】
(第2の実施形態)
本実施形態に係る眼科用画像処理装置は、サムネイル画像は時間経過に合わせて切り替えられ、複数の断層画像に存在する特徴箇所をアニメーションによって確認することができる。
【0025】
ここで、サムネイル画像に用いる断層画像として、選択された断層画像と、その断層画像の周辺の位置にある任意の枚数(例えば、4枚)の断層画像を選択する。そして、これらをストレージデバイス7に保存し、任意の時間間隔(例えば、0.5秒間隔)で切り替えながら連続的に表示する。なお、任意の枚数や任意の時間間隔を設定する設定手段を有することが好ましい。もちろん、任意の枚数は、断層画像群に含まれる全ての断層画像でも良い。
【0026】
まず、サムネイル画像一覧に表示する各ボリュームデータから作成された全てのサムネイル画像をストレージデバイス1から入力する。次に、サムネイル画像のアニメーション表示を行う。各ボリュームデータに対応する1枚以上のサムネイル画像を断層画像群に含まれる断層画像の並びに従う順番に、任意の時間間隔で切り替えて表示するアニメーションを表示デバイス8に並べて一覧表示する。サムネイル画像の表示を順に切り替えて、全てのサムネイルを表示し終わると、再び1枚目に表示したサムネイル画像を表示する。
【0027】
以上の手法によって、本実施形態に係る眼科用画像処理装置は、各ボリュームデータの同じ特徴箇所のサムネイル画像を並べて表示する。このことによって、ユーザは同じ特徴箇所のサムネイルを見比べることができ、また、複数の断層画像にまたがって存在する特徴箇所をアニメーションで確認でき、サムネイル画像の識別能が向上する。
【0028】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0029】
1 ストレージデバイス
2 表示デバイス
3 入力デバイス
4 スクロールバー
5 特徴箇所選択ボタン
6 サムネイル画像
7 ボリュームデータ画像表示部
8 ボリュームデータ情報表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に関する複数の断層画像から成る断層画像群が複数あり、所定の条件に基づいて該断層画像群それぞれから少なくとも1つの断層画像を選択する画像選択手段と、
前記選択手段で選択された断層画像をそれぞれ表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする眼科用画像処理装置。
【請求項2】
前記所定の条件が、被検眼の所定領域に基づく箇所、あるいは該断層画像群に含まれる断層画像の枚数に基づく箇所であり、
前記画像選択手段が、前記複数の断層画像群それぞれから前記箇所に基づいて断層画像を選択することを特徴とする請求項1に記載の眼科用画像処理装置。
【請求項3】
前記箇所が、前記断層画像群の略中央、被検眼の病変部の略中心、被検眼の中心窩の略中心、被検眼の視神経乳頭部の略中心のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の眼科用画像処理装置。
【請求項4】
前記画像選択手段が、複数の条件から少なくとも1つを前記所定の条件として選択する条件選択手段を有し、
前記所定の条件に基づいて前記断層画像群それぞれから少なくとも1つの断層画像を選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の眼科用画像処理装置。
【請求項5】
前記画像選択手段が、前記断層画像群それぞれから複数の断層画像を選択し、
前記表示制御手段が、所定の時間経過に従って該複数の断層画像を変更しながら前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の眼科用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示制御手段が、前記断層画像群ごとに選択された断層画像をサムネイル画像として前記表示手段に一覧表示させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼科用画像処理装置。
【請求項7】
被検眼に関する複数の断層画像から成る断層画像群が複数あり、所定の条件に基づいて該断層画像群それぞれから少なくとも1つの断層画像を選択する画像選択工程と、
前記選択手段で選択された断層画像をそれぞれ表示手段に表示する表示工程と、
を含むことを特徴とする眼科用画像処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の眼科用画像処理方法をコンピュータで実行するプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−45225(P2012−45225A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191214(P2010−191214)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】