説明

眼科用超音波診断装置

【課題】 簡単な構成で超音波プローブを大型化せず、安価な構成で被検者眼を立体的に観察して画像診断を行う。
【解決手段】 超音波探触子を1方向に走査する超音波発信部を内部に有する超音波プローブを備え、超音波探触子の走査により眼球からの反射エコーデータを得る眼科用超音波診断装置は、プローブが持つ中心軸の軸回りにプローブが回転されたときの回転角を検知するセンサユニットと、超音波探触子の走査毎の反射エコーデータを取得すると共に超音波探触子の走査に同期してセンサユニットにより検知された回転角データを取得するデータ取得手段と、データ取得手段により取得された走査毎の反射エコーデータと回転角データとに基づいて立体画像を生成する画像生成手段と、立体画像を表示する表示手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼球の立体画像を得る眼科用超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を送波及び受波する超音波探触子(トランスデューサ)を扇状に走査又は並進走査する超音波プローブ(Bモードプローブ)を備え、この超音波プローブにより得られた眼球からの反射エコー信号を処理して眼球の断層像をディスプレイに表示する眼科用超音波診断装置が知られている(特許文献1、2参照)。この診断装置は、眼球内の硝子体及び網膜部の病変観察に利用されている。
【特許文献1】特開2008−29468号公報
【特許文献2】特開2006−136681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Bモードプローブでは奥行き方向への2次元断層画像が得られるのみである。このため、検者は、眼球内部の網膜部及び硝子体の病原部を詳細に観察したい場合、ディスプレイに表示される断層像を見ながら、プローブの位置及び回転方向を手動で合わせる必要がある。しかし、観察位置を予測しながらプローブを移動させることは難しい。特に、操作に不慣れな検者にとってはプローブを観察位置に正しく合わせることは困難である。
【0004】
近年ではトランスデューサをプローブの軸回りに回転させるモータ等の駆動源をBモードプローブ内部に設けたり、広範囲な領域をスキャンする電子エレメントを有するプローブを使用したりして、眼球の三次元画像を観察可能にした装置がある。しかし、内部にモータが設けられているプローブは、構成が複雑になり、そのサイズが大きくなる。広範囲な領域をスキャン可能な電子エレメントを有するプローブは、2次元断層を得るBモードプローブに比べて非常に高価である。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、簡単な構成で超音波プローブを大型化せずに、安価な構成で眼球の立体的な観察が可能な眼科用超音波診断装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 超音波探触子を1方向に走査する超音波発信部を内部に有する超音波プローブを備え、前記超音波探触子の走査により眼球からの反射エコーデータを得る眼科用超音波診断装置において、プローブが持つ中心軸の軸回りにプローブが回転されたときの回転角を検知するセンサユニットと、前記超音波探触子の走査毎の反射エコーデータを取得すると共に前記超音波探触子の走査に同期して前記センサユニットにより検知された回転角データを取得するデータ取得手段と、該データ取得手段により取得された走査毎の反射エコーデータと回転角データとに基づいて立体画像を生成する画像生成手段と、前記立体画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科用超音波診断装置において、前記センサユニットは、重力方向に対する超音波探触子の走査方向の回転角を検知する回転角検知センサであって,プローブが回転されたときに前記超音波探触子の走査方向の重力方向に対する回転角を検知可能に,プローブの内部又は外部に設けられた回転角検知センサであるか、又はプローブと一体的にプローブが持つ中心軸の軸回りに回転される回転部材と,該回転部材をプローブが持つ中心軸の軸回りに回転可能に保持する保持部材であって,前記回転部材の回転角を検知するエンコーダが取り付けられた保持部材と,を持つセンサユニットであることを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の眼科用超音波診断装置において、前記データ取得手段は1走査内で複数の検出ラインの反射エコーデータを取得すると共に、各検出ラインの反射エコーデータの取得に同期して前記センサユニットにより検知された回転角データを取得することを特徴とする。
(4) (1)〜(3)の何れかの眼科用超音波診断装置は、前記データ取得手段により取得された回転角データが所定の条件を満たすか否かに基づいて前記プローブの回転状態の適否を判定し、その判定結果を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で超音波プローブを大型化せずに、安価な構成で被検者眼を立体的に観察し、画像診断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は眼科用超音波診断装置の外観略図であり、図2は超音波プローブの断面図である。装置本体1にはトランスデューサ(超音波探触子)21を有するBモードの超音波プローブ2がケーブルを介して接続されており、カラー表示可能なモニタである液晶表示パネル3が装置本体1の前面に設けられている。液晶表示パネル3には、プローブ2によって取得された眼球の二次元断層像及び三次元画像が表示される。また、液晶表示パネル3はタッチパネル式であり、検者は表示パネル3に表示される設定項目を選択操作することにより各種条件を設定することができる。プローブ2により得られた測定・診断結果は図示なきプリンタによって出力される。また、プローブ2には、回転の基準位置を示すためのマーク2aが設けられている。マーク2aの方向は、後述するトランスデューサ21に走査方向に合わせて付されている。
【0010】
図2において、プローブ2の内部には超音波信号の送受信を行う超音波発信部20が設けられており、プローブ2の先端カバー2bと超音波発信部20が持つトランスデューサ21との間は、超音波媒体Fで満たされている。超音波発信部20において、超音波信号の送受信を行うトランスデューサ21は、回転軸22aを中心として矢印A方向に揺動する振動板22bに取り付けられている。振動板22bの後方には、トランスデューサ21を矢印A方向に揺動させる為の駆動機構25が配置されている。駆動機構25はソレノイド25a、ソレノイド25aの両端に配置されたバネ25b、25cとからなる。また、駆動機構25にはソレノイド25aの動作を振動板22bに伝達させるためのロッド26が、保持部材27を介して取り付けられている。また、ロッド26の前側は、回転軸22aから偏心した位置で振動板22bの軸29に取り付けられている。
【0011】
ソレノイド25aに一定周期の交流電流を流すと、ソレノイド25aはバネ25b、25cを介して矢印B方向(前後方向)へ往復振動される。ソレノイド25aの往復振動は、ロッド26を介して振動版22bに伝達され、振動版22bが回転軸22aを中心にして矢印A方向に揺動される。これにより、トランスデューサ21は矢印B方向と平行な1方向(紙面に平行な方向)に扇状の走査が行われる。なお、トランスデューサ21の走査は、図2上の縦方向に並進走査される構成であっても良い。
【0012】
超音波発信部20の後方には、プローブ2が持つ中心軸Oの軸回りの回転角度を検知するセンサユニットとしての加速度センサ30が配置されている。加速度センサ30は超音波発信部20の送受信の妨げとならない位置に取り付けられる。加速度センサ30は単位時間当たりの重力方向に対する速度変化を検出するセンサであり、重力方向に対する回転角度を検知する。プローブ2が中心軸Oの軸回り回転されると、加速度センサ30は単位時間当たりの速度変化を直交座標系の各軸に沿った直線成分の加速度として検出する。なお、加速度センサ30としては二軸加速度センサまたは三軸加速度センサが使用される。二軸加速度センサの場合には(X軸、Y軸)方向の速度変化が検出され、三軸加速度センサの場合には(X軸、Y軸、Z軸)方向の速度変化が検出される。ここでは、例えば、加速度センサ30のX軸及びY軸が成すXY平面をプローブ2の中心軸Oに対して垂直に位置させ、また、X軸及びY軸の原点を中心軸Oに一致させて配置することにより、中心軸Oの軸回りの重力方向に対する回転角度が検知される。また、トランスデューサ21の走査方向に対して、加速度センサ30のX軸及びY軸は所定の角度となるように配置する。例えば、トランスデューサ21の走査方向と加速度センサ30のX軸が一致するように、加速度センサ30が配置される。そして、プローブ2の中心軸Oの軸回りの回転角度は、加速度センサ30により検出された各軸の加速度に所定の演算を行うことにより得られる。
【0013】
加速度センサ30としてはブローブ2が持つ超音波発信部20の径より小さなものが市販されているので、これを使用することにより、ブローブ2の径を大型化させずにすむ。また、加速度センサ30は、ブローブ2の内部の設けられていることが好ましいが、ブローブ2の後端側の外部に装着可能に設けられていても良い。
【0014】
なお、重力方向に対するトランスデューサ21の走査方向の回転角を検出するセンサユニットとしては、角速度センサ(ジャイロセンサ)、重力センサ等を使用しても良い。
【0015】
図3は制御系の要部構成図である。制御部10は装置本体1に内蔵され、各種回路等を制御する。フットスイッチ19からの入力信号により測定が開始されると、制御部10はクロック発生回路11の駆動を制御し、送信器17を介してトランスデューサ21から超音波を発信(送波)させる。そして、各組織からの反射エコーは、トランスデューサ21で受信(受波)され、増幅器18を介してA/D変換器13でデジタル信号に変換される。デジタル信号化された反射エコー情報はサンプリングメモリ14に記憶される。また、トランスデューサ21の走査により反射エコー情報の二次元位置情報得られ、サンプリングメモリ14に記憶される。また、制御部10は加速度センサ30からの出力信号に基づいてプローブ2の回転角度を算出する。算出された回転角度はサンプリングメモリ14に記憶される。以上のようにして、反射エコー情報および反射エコーの三次元での位置情報(三次元位置情報)が得られる。制御部10は、サンプリングメモリ14に記憶された反射エコー情報と三次元位置情報に基づいて画像処理を行い表示パネル3に立体画像を表示する。
【0016】
図4はプローブ2を搭載させるプローブスタンドの構成例である。プローブスタンドは被検者眼の立体画像を得るときに、プローブ2を安定して保持するために好適に使用される。図4において、プローブスタンド50は、基台51と、被検者眼を固定するために被検者の顔を支持する顔支持ユニット52と、基台51上を摺動可能な移動台53と、移動台53を移動させるために検者が操作するジョイスティック54と、移動台53に取り付けられた上下移動ユニット55を介して搭載されたアーム56と、アーム56の上部に取り付けられ、プローブ2をその中心軸Oの軸回りに回転可能に保持する保持部材58と、を備える。アーム56は、ジョイスティック54に取り付けられた回転ノブ54aを回転することにより、上下移動ユニット55の上下移動機構により上下移動される
次に、トランスデューサ21の走査により得られる二次元断層像(反射エコー強度情報)と、加速度センサ30から得られる角度検知により、眼球の立体画像(三次元画像)を生成する方法を説明する。
【0017】
図5は、トランスデューサ21の走査とプローブ2の回転との関係を説明する図である。図5(a)はトランスデューサ21が走査されるときの横断面(y−z平面)であり、図5(b)はプローブ2の中心軸O方向から見たときの正面図(x−y平面)である。ここでは、立体画像を得るときの座標系として、トランスデューサ21の中心位置を原点として、プローブ2の中心軸Oをz軸とし、z軸に直交する横方向をx軸、縦方向をy軸として説明する。
【0018】
なお、トランスデューサ21は10Hz(1秒間に10回)で走査されるとする(トランスデューサ21の1往復によって1走査の反射エコー情報が得られる)。トランスデューサ21の走査角度αtは、中心軸Oを中心に60度であるとする。また、1走査中の反射エコー情報の検出ラインLmは200本(L1〜L200)であるとする。また、1つの検出ラインLmについて、反射エコー情報が200ポイントでサンプリングされるものとする。
【0019】
初めに、トランスデューサ21の走査方向がy軸に一致した状態から、プローブ2が図5(b)上の時計回り(矢印C方向)に回転されると、1走査の最後の検出ラインL200は角度θS1の位置S1となる。また、プローブ2が回転されながらトランスデューサ21が走査される場合、その走査軌跡SL1はカーブとなる。
【0020】
ここで、プローブ2(トランスデューサ21)が等速で回転され、その回転速度が既知であれば、角度θS1及び位置S1は演算により求められる。しかし、プローブ2が検者の手動操作により回転される場合、その回転速度は等速でなく、検者によって異なる。また、プローブ2を180度回転する途中の速度も変動しやすい。そこで、トランスデューサ21の走査に同期して加速度センサ30により検知されたプローブ2の回転角度を得ることにより、走査終了後の角度θS1が得られ、その位置S1の座標位置も得られる。また、検出ラインL1〜L200毎の反射エコーデータの取得に同期して加速度センサ30により検知された回転角度を得ることにより、検出ラインL1〜L200上の200ポイントの座標位置が求められる。
【0021】
図5(a)、(b)において、ある検出ラインLm(m=1,2,3,…、200)のポイントPn(n=1,2,3,…、200)について、z軸に対する検出ラインLmの角度をαmとし、原点oからの距離をLPnとすると、そのz軸の座標位置Δzmnは次の式で求められる。
【0022】
Δzmn=LPn×cosαm
また、検出ラインLmのサンプリングに同期して得られた回転角度をθmとし、原点oからの検出ラインLm上のポイントPnまでの距離をRmnとすると、そのx軸の座標位置Δxmn及びy軸の座標位置Δymnは、それぞれ以下にて求められる。なお、距離Rmnは、z軸からの検出ラインLm上のポイントPnまでの走査距離を直線と見なして得ることができる。
【0023】
Δxmn=Rmn×sinθm
Δymn=Rmn×cosθm
【0024】
これを、検出ラインL1〜L200がそれぞれ持つ200ポイントについて計算することにより、1走査における各ポイントの座標位置が得られる。そして、検者によりプローブ2が180度回転される間の各走査での反射エコー情報について、同様な計算を行うことにより、各走査での反射エコー情報の座標位置が求められる。最後に、全てのポイントを強度レベル毎につなぎ合わせる処理を施すことにより、図6(a)に示されるように、ほぼ円錐形の範囲Mの立体画像が生成される。
【0025】
なお、立体画像の生成に際して、上記のように検出ラインL1〜L200毎の回転角度を得ることが好ましいが、プロープの半回転で多数の走査(断層像)が得られる場合、走査軌跡SL1は直線に近似させることができる。したがって、検出ラインL1〜L200の反射エコー情報(断層像)は平面と見なし、トランスデューサ21の1走査に同期して得られるプローブ2の回転角度に基づいて立体画像の生成しても良い。
【0026】
次に、以上のような構成を持つ装置において動作を説明する。ここでは、図4に示されるプローブスタンド50を用いた動作を説明する。検者がプローブ2を手で保持しつつ回転操作しても良いが、プローブ2の位置ずれ及び回転ブレを防止するために、プローブスタンド50を用いることが好ましい。立体画像の観察を行うときは、表示パネル3上の検査モード選択スイッチ3aにより立体画像モードを選択する。なお、この選択スイッチ3aで断層像モードを選択することにより、プローブ2により通常の断層像も得られる。
【0027】
検査に先立ち、検者はプローブ2の先端にゼリー状の超音波媒体を塗布し、保持部材58にプローブ2を保持させる。被検者の顔を顔支持ユニット52に支持させた後、検者はプローブスタンド50のジョイスティック54等を操作して、プローブ2の先端を瞼が閉じた状態の被検者眼の眼球に接触させる。このとき、検者はプローブ2のマーク2aの方向を上方向に合わせる。
【0028】
プローブ2の先端を被検者眼に接触させると、表示パネル3に二次元断層像が表示される。検者はその断層像が正しく表示されているかを確認した後、フットスイッチ19を押して反射エコー情報のサンプリングデータの取り込みを開始させると共に、プローブ2をその軸Oを中心にして時計回り(矢印C方向)へ回転させる。プローブ2のトランスデューサ21の走査により得られた反射エコー情報は、サンプリングメモリ14に記憶される。このとき、加速度センサ30から出力されたプローブ2の回転角度検知情報も反射エコー情報とセットにしてサンプリングメモリ14に順次記憶される。
【0029】
検者はマーク2aの位置を確認してプローブ2を180度回転させたら、再びフットスイッチ19を押してデータの取り込みを終了する。フットスイッチ19からの2回目の信号が入力されると、制御部10は、サンプリングメモリ14に記憶された各走査の反射エコー情報を呼び出すと共に、これと同期したプローブ2の回転角度検知情報を呼び出す。さらに各走査における200本の検出ラインのサンプリングのタイミングに同期する回転角度情報を呼び出す。そして、前述の方法によりトランスデューサ21の各走査で得られた200本の検出ラインの反射エコー情報(断層像)について、その回転角度情報に基づいて各ポイントの強度データの座標位置を求め、断層像の立体画像を構築する。制御部10により得られた眼球の立体画像は、表示パネル3に表示される。これにより、検者は眼球内部の網膜部及び硝子体の病原部を詳細に観察でき、適切な診断が行える。以上のように、断層像を得るためのプローブ2に加速度センサ30等の小型の回転角検知センサを設けたのみであるため、プローブ2を大型化させることなく、安価に製造できるプローブ2によって眼球の立体的画像を生成できる。
【0030】
なお、上記のように検者が手動でプローブ2を回転させる場合、その回転速度は一定でなく、検者によっては回転速度及び回転状態が大きくばらつくことがある。プローブ2の回転速度が速すぎると、180度の回転で得られる断層像の数が少なくなり、立体画像が粗いデータとなる。また、回転の途中においても回転速度が変動し、途中で速くなりすぎると同種の問題が発生する。またさらに、プローブ2の回転角が180度に大きく満たないままデータの取得が終了してしまうと、データが欠損してしまう。
【0031】
そこで、制御部10は、フットスイッチ19からの2回目の入力信号によりデータの取り込みが終了された後、トランスデューサ21の各走査に同期して取得したプローブ2の回転角が所定の条件を満たすか否かに基づいてプローブ2の回転状態の適否を判定し、その結果を報知する。例えば、良好な立体画像を得るために180度の回転で必要な走査数(断面像の数)を30個以上とすると、回転角検知情報から求められる走査数(断面像の数)が30個未満の場合には、制御部10はプローブ2の回転が速すぎる旨を表示パネル3に表示し、再検査を促す。このとき、どの程度の回転速度にしたらよいか、不足分の断面像の数等を表示すると、検者は再検査時の対応が取りやすくなる。また、180度の回転で30個の断層像が得られたとしても、途中の回転速度が大きく変動している場合には、各断層像間の開き角度が大きいことになるので、各断層間の角度が10度以上の場合には、制御部10はその旨を表示パネル3に表示し、再検査を促す。同様に、プローブ2の回転角が180度未満で終わってしまった場合には、制御部10はその旨を表示パネル3に表示し、再検査を促す。
【0032】
このようにプローブ2の回転状態の適否を検者に知らせることにより、良好な立体画像が得られるように、検者を誘導することができる。
【0033】
本実施形態は様々な変容が可能である。前述の方法ではプローブ2の内部に設けられた加速度センサ30によって、プローブ2の軸方向の回転角度を検出しているが、回転角度を検出するセンサはプローブ2の外側に取り付けても良い。また、プローブ2の回転角度を検出する方法としては、プローブ2にセンサを取り付ける以外にも、図4に示されるプローブスタンド50にセンサユニットを設け、プローブ2の外部からプローブ2の回転角を検知する構成としても良い。
【0034】
図7は、プローブスタンド50を使用して、プローブ2の外部からプローブ2の回転角を検知する例を説明する図である。図7において、プローブ2の回転角を検知するセンサユニット60は、図4のプローブスタンド50が持つアーム56の上部に取り付けられている。センサユニット60のハウジング(保持部材)61には、プローブ2が挿入される孔を持ち、プローブ2と一体的にプローブ2の中心軸Oの軸回りに回転される回転ホルダ62が軸受け63を介して回転可能に保持されている。プローブ2を回転させる際には、回転ホルダ62の後端に形成された回転ノブ62a又はプローブ2の後端を持って回転させることができる。
【0035】
回転ホルダ62の中央部にはタイミングベルト66が掛けられるギヤが形成されている。タイミングベルト66はハウジング61内で回転可能に取り付けられた回転軸65のプーリー67にも掛けられている。また、回転軸65にはエンコーダ68の回転軸が結合されている。したがって、回転ホルダ62がプローブ2と一体的に回転されると、その回転角はタイミングベルト66、プーリー67等の回転伝達機構を介してエンコーダ68により検出される。エンコーダ68の回転角の検知信号は、信号線70を介して図3に示されるサンプリングメモリ14に記憶される。
【0036】
この図7の構成において、検査を開始する当り、プローブ2のマーク2aが図7上の上側(被検者眼に対して上側)に位置するように、プローブ2の軸部分を回転ホルダ63の穴に挿入しておく。プローブ2のマーク2aの方向とトランスデューサ21に走査方向とが一致されているので、プローブ2の回転角が検知されることにより、トランスデューサ21に走査方向の回転角が検知される。
【0037】
なお、プローブ2の軸部分の前側の径はその後端側に対してやや大きくなっており、回転ホルダ63の孔もプローブ2に合わせて前側が広がった径に形成されていることにより、プローブ2が図7の状態で回転ホルダ63の孔に挿入され、回転ホルダ63とプローブ2とが一体的に回転可能にされる。
【0038】
前述のように、検者は、プローブ2の先端を被検者眼に接触させた後、フットスイッチ19を押して反射エコー情報のサンプリングデータの取り込みを開始させると共に、エンコーダ68からの検知信号の取り込みを開始する。検者が、プローブ2をその軸Oを中心にして回転させると、プローブ2からの反射エコー情報と共にエンコーダ68からの回転角の検知情報がサンプリングメモリ14に順次記憶されていく。プローブ2が半回転(180度)回転された後、フットスイッチ19からの読み込み停止の信号が入力されると、サンプリングメモリ14へのデータの取り込みが終了される。そして、制御部10は、サンプリングメモリ14に記憶されたトランスデューサ21の各走査の反射エコー情報を呼び出すと共に、その走査に同期したプローブ2の回転角検知情報を呼び出し、前述のように、走査毎の検出ラインの反射エコー情報(断層像)とその角度情報とに基づいて立体画像を生成する。制御部10により得られた眼球の立体画像は、表示パネル3に表示される。
【0039】
なお、この例においても、前述と同様に、トランスデューサ21の各走査に同期して取得されたプローブ2の回転角が所定の条件を満たすか否かに基づいてプローブ2の回転状態の適否が判定され、その結果が報知される。これにより、良好な立体画像が得られるように、検者を誘導することができる。
【0040】
図7の例においては、超音波プローブ2として従来のBモードプローブをそのまま使用できるので、断層像を得るときのプローブを大型化させずに済み、センサユニット60も簡単に構成で安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】眼科用超音波診断装置の外観略図である。
【図2】超音波プローブの断面図である。
【図3】制御系の要部構成図である。
【図4】プローブスタンドの構成例である。
【図5】トランスデューサの走査とプローブの回転との関係の説明図である。
【図6】立体画像の例である。
【図7】プローブの外部からプローブの回転角を検知する例を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
2 超音波プローブ
3 表示パネル
10 制御部
21 トランスデューサ
30 加速度センサ
61 保持部材
62 回転ホルダ
60 センサユニット
68 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子を1方向に走査する超音波発信部を内部に有する超音波プローブを備え、前記超音波探触子の走査により眼球からの反射エコーデータを得る眼科用超音波診断装置において、
プローブが持つ中心軸の軸回りにプローブが回転されたときの回転角を検知するセンサユニットと、前記超音波探触子の走査毎の反射エコーデータを取得すると共に前記超音波探触子の走査に同期して前記センサユニットにより検知された回転角データを取得するデータ取得手段と、該データ取得手段により取得された走査毎の反射エコーデータと回転角データとに基づいて立体画像を生成する画像生成手段と、前記立体画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1の眼科用超音波診断装置において、前記センサユニットは、重力方向に対する超音波探触子の走査方向の回転角を検知する回転角検知センサであって,プローブが回転されたときに前記超音波探触子の走査方向の重力方向に対する回転角を検知可能に,プローブの内部又は外部に設けられた回転角検知センサであるか、又はプローブと一体的にプローブが持つ中心軸の軸回りに回転される回転部材と,該回転部材をプローブが持つ中心軸の軸回りに回転可能に保持する保持部材であって,前記回転部材の回転角を検知するエンコーダが取り付けられた保持部材と,を持つセンサユニットであることを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼科用超音波診断装置において、前記データ取得手段は1走査内で複数の検出ラインの反射エコーデータを取得すると共に、各検出ラインの反射エコーデータの取得に同期して前記センサユニットにより検知された回転角データを取得することを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの眼科用超音波診断装置は、前記データ取得手段により取得された回転角データが所定の条件を満たすか否かに基づいて前記プローブの回転状態の適否を判定し、その判定結果を報知する報知手段を備えることを特徴とする眼科用超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−11880(P2010−11880A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171775(P2008−171775)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】