眼科組成物
【課題】本発明の目的は、従来に無い新規な処方で、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物、或いはテルペノイドのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズへの吸着を抑制できるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物を提供することである。
【解決手段】(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体0.001〜2w/v%と、(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%を併用して眼科組成物を調製する。また、(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体と、(B-2)テルペノイドを併用して、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物を調製する。
【解決手段】(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体0.001〜2w/v%と、(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%を併用して眼科組成物を調製する。また、(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体と、(B-2)テルペノイドを併用して、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物を調製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物に関する。また、本発明は、テルペノイドのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズへの吸着を抑制できるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アレルギー患者の増加やアレルギー症状の重篤化が問題になっている。アレルギー患者の症状の多くは、I型アレルギー症状、即ちアレルゲンとの接触により肥満細胞や好塩基球からヒスタミン等の化学伝達物質が遊離されることにより引き起こされるアレルギー症状であることが知られている。このI型アレルギー症状の予防乃至改善には、ヒスタミンの遊離自体を抑制することが有効であり、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物の開発が望まれている。特に、従来、ヒスタミン遊離抑制作用が明らかにされていない成分を使用して、ヒタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物を開発できれば、新たな付加価値のある製剤の提供が可能になる。
【0003】
また近年、コンタクトレンズの装用者が増えており、中でも酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲルレンズの装用者が増えている。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、ハイドロゲルにシリコーンを配合させることにより、従来のハイドロゲルコンタクトレンズの数倍の酸素透過性を実現する。そのため、従来のソフトコンタクトレンズの弱点である酸素供給不足を改善することができ、酸素不足に伴う角膜に対する悪影響を大幅に抑制できるものとして、大きく期待されている。一般に、コンタクトレンズ装用者の眼に適用される点眼剤については、コンタクトレンズの種類や特性に応じて、安全性等の影響を十分に考慮して設計することが不可欠である。
【0004】
一方、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体は、生体適合性が高い化合物として知られている。また、当該重合体は、角質の保護や保湿等の作用も有しており、スキンケアにも有効であることが知られている(特許文献1参照)。更に、当該重合体は、眼科分野において、ドライアイの予防又は治療(特許文献2参照)、有効成分の滞留性の向上(特許文献3参照)にも有効であることが分かっている。このように、上記重合体は、生体適合性のみならず、様々な作用をも有しており、機能性素材として注目を浴びている。とりわけ、近年、眼科分野における当該重合体の利用が積極的に試みられており、当該重合体を配合した眼科組成物の処方も報告されている(特許文献4−5参照)。
【0005】
また、メントールを初めとするテルペノイドは、眼科分野において、清涼化剤として使用されている。更に、テルペノイドが有する清涼化作用は、眼の不快感を改善し、リラックス感、リフレッシュ感を付与する効果も期待されている。
【0006】
しかしながら、前述するホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びテルペノイドについては、ヒスタミン遊離に対して如何なる作用を及ぼすかについては殆ど知られておらず、これらを併用した場合にヒスタミン遊離に及ぼす影響については皆目見当できないのが現状である。また、これらを併用した場合のシリコーンハイドロゲルレンズに及ぼす影響についても、何ら検討されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−52848号公報
【特許文献2】特開平10−324634号公報
【特許文献3】特開平11−335301号公報
【特許文献4】特開2008−273959号公報
【特許文献5】特開平7−166154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術を背景として、従来に無い新規な処方で、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物の開発が望まれている。
【0009】
また、本発明者らは、意外なことに、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(以下、「SHCL」と表記することもある)はテルペノイドを吸着し易い性質があることを見出した。このようにコンタクトレンズに点眼剤の配合成分が吸着すると、コンタクトレンズの変形や、変質を招く恐れがあり、また吸着した成分がレンズに留まることによる影響も懸念される。とりわけ、SHCLは、シリコーンを素材として含有しないソフトコンタクトレンズに比べて材質が硬いため、レンズの変形や濡れ性低下などによる使用感の悪化を感じさせ易い傾向がある。更に、SHCLは、シリコーンを素材として含有しないソフトコンタクトレンズに比して比較的長期に亘って連続装用される場合が多いことを考慮すると、レンズが変形した状態で長期間にわたり連続装用されると、重大な眼疾患又は眼粘膜疾患を引き起こす一因にもなりかねない。このような背景の下、テルペノイドのSHCLへの吸着を抑制する手段の開発も求められている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、従来に無い新規な処方で、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、テルペノイドのSHCLへの吸着を抑制できるSHCL用眼科組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物の創出を試み、鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びメントールでは、各々単独ではヒスタミン遊離抑制作用が弱い或いは無いにも拘わらず、これらを特定の配合割合で併用すると、相乗作用によって格別優れたヒスタミン遊離抑制効果が奏されることを見出した。
【0013】
また、本発明者らは、SHCLはテルペノイドを吸着し易い性質があることを見出し、それを解決するための手段として、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びテルペノイドの併用が、SHCLへのテルペノイドの吸着抑制に有効であることをも見出した。更に、本発明者らは、SHCLの中でも、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(以下、「非イオン性SHCL」と表記することもある)は角膜上皮細胞の接着性が著しく高いことを見出し、それを解決するための手段として、意外にも、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びテルペノイドの併用が、非イオン性SHCL表面への角膜細胞の接着を効果的に抑制できることをも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0014】
即ち、本発明は、下記に掲げる眼科組成物を提供する。
項1-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%と
を含むことを特徴とする、眼科組成物。
項1-2.(A)成分が、一般式(I)で表されるモノマーの重合体、又は一般式(I)で表されるモノマーと下記一般式(II)で表されるモノマーの共重合体である、項1-1に記載の眼科組成物。
【0017】
【化2】
【0018】
[式中、R7は水素原子又はメチル基、R8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
項1-3.(A)成分が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体である、項1-1又は1-2に記載の眼科組成物。
項1-4.(A)成分の総量100重量部当たり、(B-1)成分を総量で0.02〜20000重量部含む、項1-1乃至1-3のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-5.点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-6.洗眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-7.コンタクトレンズ装着液である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-8.コンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-9.ソフトコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-10.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-11.イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-12.非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
【0019】
また、本発明は、下記に掲げるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物を提供する。
項2-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0020】
【化3】
【0021】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-2)テルペノイドと
を含むことを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-2.(A)成分が、一般式(I)で表されるモノマーの重合体、又は一般式(I)で表されるモノマーと下記一般式(II)で表されるモノマーの共重合体である、項2-1に記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【0022】
【化4】
【0023】
[式中、R7は水素原子又はメチル基、R8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
項2-3.(A)成分が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体である、項2-1又は2-2に記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-4.(B-2)成分としてメントールを含む項2-1乃至2-3のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-5.(A)成分の配合割合が0.0001〜5w/v%である、項2-1乃至2-4のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-6.(B-2)成分の配合割合が0.0001〜1w/v%である、項2-1乃至2-5のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-7.(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分を総量で0.0002〜50000重量部含む、項2-1乃至2-6のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-8.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項2-1乃至2-7のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-9.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用洗眼剤である、項2-1乃至2-7のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-10.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用コンタクトレンズ装着液である、項2-1乃至2-7のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-11.イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項2-1乃至2-8のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-12.非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項2-1乃至2-8のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【0024】
更に、本発明は、下記に掲げる方法を提供する。
項3.眼科組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%を併用することを特徴とする、眼科組成物にヒスタミン遊離抑制作用を付与する方法。
項4.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体及び(B-2)テルペノイドを含有する眼科組成物と、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとを接触させることを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対するテルペノイドの吸着を抑制する方法。
項5.眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対するテルペノイドの吸着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法。
項6.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体及び(B-2)テルペノイドを含有する眼科組成物と、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとを接触させることを特徴とする、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する方法。
項7.眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法。
【0025】
更に、本発明は、下記に掲げる使用を提供する。
項8-1.0.001〜2w/v%の(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0026】
【化5】
【0027】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
0.001〜0.02w/v%の(B-1)メントールとの、
眼科組成物の製造のための使用。
項8-2.眼科組成物が点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-3.眼科組成物が洗眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-4.眼科組成物がコンタクトレンズ装着液である、項8-1に記載の使用。
項8-5.眼科組成物がコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-6.眼科組成物がソフトコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-7.眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-8.眼科組成物がイオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-9.眼科組成物が非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-10.眼科組成物がヒスタミン遊離抑制剤である、項8-1に記載の使用。
項8-11.眼科組成物が抗アレルギー剤、眼のかゆみ抑制剤、又はコンタクトレンズ装用時の不快感抑制剤である、項8-1に記載の使用。
項9-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0028】
【化6】
【0029】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-2)テルペノイドとの、
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物の製造のための使用。
項9-2.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項9-1に記載の使用。
項9-3.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用洗眼剤である、項9-1に記載の使用。
項9-4.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用コンタクトレンズ装着液である、項9-1に記載の使用。
項9-5.眼科組成物がヒスタミン遊離抑制剤である、項9-1に記載の使用。
項9-6.眼科組成物が抗アレルギー剤、眼のかゆみ抑制剤、又はコンタクトレンズ装用時の不快感抑制剤である、項9-1に記載の使用。
【発明の効果】
【0030】
本発明の眼科組成物は、優れたヒスタミン遊離抑制作用を示すので、抗アレルギー、かゆみ抑制、コンタクトレンズ装用時の不快感抑制等の用途の眼科用製剤に有用である。
【0031】
また、SHCLには、テルペノイドを吸着し易い特性があることが本発明者らの研究により明らかとなったが、本発明のSHCL用眼科組成物によれば、SHCLへのテルペノイドの吸着を抑制することもでき、SHCLの使用上の安全性を十分に確保することができる。
【0032】
更に、非イオン性SHCLには、角膜細胞が著しく接着し易いという特有の性質があることが本発明者らの研究により明らかとなったが、本発明のSHCL用眼科組成物によれば、非イオン性SHCLへの角膜細胞接着を効果的に抑制することができる。従って、本発明のSHCL用眼科組成物によれば、レンズを眼から外す際等にも角膜表面の損傷を低減させることができ、高い安全性をもって非イオン性SHCLを装用することをも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】試験例1において、各種濃度の被験物質(実施例1-1〜1-6及び比較例1-1〜1-9)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図2】試験例1において、各種濃度の被験物質(実施例1-7〜1-10、並びに比較例1-3〜1-5、1-8及び1-10)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図3】試験例1において、各種濃度の被験物質(実施例1-11〜1-14、並びに比較例1-4〜1-6、1-8及び1-11)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図4】試験例1において、各種濃度の被験物質(比較例1-4〜1-5及び1-12〜1-14)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図5】参考試験例1において、塩酸ピリドキシン単独(参考例1)及び塩酸ピリドキシンとMPCポリマーの組み合わせ(参考例2)について、ヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図6】試験例2において、各処方液(実施例2-1及び比較例2-1)を用いて、SHCLへのメントールの吸着量を測定した結果を示す図である。
【図7】試験例2において、各処方液(実施例2-1及び比較例2-1)を用いて、SHCLへのカンフルの吸着量を測定した結果を示す図である。
【図8】参考試験例2において、各種ソフトコンタクトレンズへの角膜上皮細胞の接着性を評価した結果を示す図である。
【図9】試験例3において、各処方液(実施例3-1、比較例3-1、3-3)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図10】試験例3において、各処方液(実施例3-2、比較例3-2、3-4)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図11】試験例3において、各処方液(実施例3-3、比較例3-5、3-6)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図12】試験例3において、各処方液(実施例3-4、比較例3-1、3-7)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図13】参考試験例3において、塩酸テトラヒドロゾリン単独(参考例3)及び塩酸テトラヒドロゾリンとMPCポリマーの組み合わせ(参考例4)について、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、優れたヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物(以下、眼科組成物-1と表記することもある)、SHCLへのテルペノイドの吸着を抑制できるSHCL用眼科組成物(以下、眼科組成物-2と表記することもある)、及び各種方法を提供する。以下、これらの発明毎に具体的態様を詳述する。なお、本明細書において配合割合の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。
【0035】
1.眼科組成物-1
本発明の眼科組成物-1は、下記一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を0.001〜2w/v%の割合で含有する。
【0036】
【化7】
【0037】
一般式(I)中、n1は、2〜4の整数、好ましくは2又は3、更に好ましくは2を示す。
【0038】
一般式(I)中、R1は、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を示す。
【0039】
また、一般式(I)中、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基を示す。ここで、R6は、炭素数1〜4のアルキレン基を示す。このようなアルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示される。R6として、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基(エチレン基)が挙げられる。また、n2は、0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、更に好ましくは0を示す。
【0040】
また、一般式(I)中、R3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が例示される。R3〜R5として、好ましくは、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、更に好ましくは炭素数1のアルキル基(メチル基)が挙げられる。
【0041】
一般式(I)で表されるモノマーの好適な例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC;n1が2、R1がメチル基、R2がエチレン基、R3〜R5がメチル基)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン(MPE;n1が2、R1がメチル基、R2がエチレン基、R3〜R5が水素原子)、特に好ましくは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが例示される。
【0042】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分は、上記一般式(I)で表されるモノマー(以下、単に「モノマー(I)」と表記することもある)の重合体であってもよく、またモノマー(I)と他のモノマーとの共重合体であってもよく、更にはモノマー(I)の重合体とモノマー(I)と他のモノマーとの共重合体との混合物であってもよい。
【0043】
(A)成分として共重合体を使用する場合、モノマー(I)以外の他のモノマーとしては、最終的に得られる共重合体が、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り制限されないが、好適な一例として、下記一般式(II)で表されるモノマー(以下、単に「モノマー(II)」と表記することもある)が例示される。
【0044】
【化8】
【0045】
一般式(II)中、R7は、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を示す。
【0046】
また、一般式(II)中、R8は、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。このようなアルキル基については、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が例示される。R8として、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは炭素数4のアルキル基(n-ブチル基)が挙げられる。
【0047】
モノマー(II)の好適な例として、ブチルメタクリレート(BMA;R7がメチル基、R8がn-ブチル基)、メチルメタクリレート(MMA;R7がメチル基、R8がメチル基)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA;R7がメチル基、R8がヒドロキシエチル基);より好ましくは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート;特に好ましくはブチルメタクリレートが例示される。
【0048】
モノマー(II)が塩の形態をとれる場合(例えば、R7が水素原子の場合)には、モノマー(II)は塩であってもよい。モノマー(II)の塩の形態としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が例示される。
【0049】
(A)成分として共重合体を使用する場合、モノマー(I)と他のモノマーの構成比については、使用するモノマーの構造等によって異なるが、ドライアイに対する予防又は治療効果を有効に奏させるという観点から、通常、共重合体の全量に対して、モノマー(I)が50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%、更に好ましくは75〜85モル%が例示される。
【0050】
また、(A)成分として使用される重合体の分子量については、構成されるモノマーの種類等によって異なり、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り制限されないが、例えば、重量平均分子量が5千〜200万、好ましくは4万〜120万、更に好ましくは10万〜100万、特に好ましくは40万〜80万が挙げられる。重量平均分子量は、GPC分析によって測定される。
【0051】
モノマー(I)及びモノマー(II)は、公知の化合物であるか、又は公知の化合物から既知の方法(例えば、特開昭58-154591号公報、特開昭60-184093号公報、高分子論文集Vol.35, 423-427, 1978,社団法人高分子学会発行)で合成することができる。
【0052】
また、(A)成分として使用される重合体は、モノマー(I)及び必要に応じて他のモノマーを高分子化学の分野で公知の方法に従って重合反応することによって得ることができる。当該重合反応は、具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t-ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒等の適当な溶媒中で、重合開始剤の存在下、適当な温度条件下で一定時間重合させればよい。
【0053】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分の中で、好ましくは、モノマー(I)の重合体、モノマー(I)とモノマー(II)の共重合体;更に好ましくはMPC又はMPEの重合体、MPC又はMPEとHEMA又はBMAの共重合体;より更に好ましくは、MPCのホモ重合体、MPCとHEMAの共重合体、MPCとBMAの共重合体;特に好ましくはMPCとBMAの共重合体が例示される。尚、本明細書において、MPCのホモ重合体又はMPCとモノマー(II)の共重合体をMPCポリマーと称することもある。
【0054】
また、(A)成分として使用される重合体は、市販品を使用する事もでき、市販の(A)成分としては、日油株式会社製のLipidureシリーズ(商品名:「LIPIDURE-PMB(BG)」、「LIPIDURE-PMB(Ph10)」、「LIPIDURE-PMB」、「LIPIDURE-HM」、「LIPIDURE-HM-500」)等が挙げられる。
【0055】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分の配合割合は、眼科組成物-1の総量に対して、(A)成分が総量で0.001〜2w/v%の範囲内に設定されていればよいが、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、より好ましくは0.005〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜2w/v%、より更に好ましくは0.01〜1w/v%、特に好ましくは0.01〜0.5w/v%が例示される。ここで例示する(A)成分の配合割合は、SHCLへのメントールの吸着を抑制する、或いは非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制させるという観点からも、好適である。
【0056】
本発明の眼科組成物-1は、上記(A)成分に加えて、メントール(以下、単に(B-1)成分と表記することもある)を0.001〜0.02w/v%の割合で含有する。このように(A)成分と(B-1)成分を特定の割合で併用することによって、ヒスタミン遊離抑制作用を相乗的に増強して発揮させることが可能になる。また、このような(A)成分と(B-1)成分の併用は、SHCLへのメントール吸着抑制効果や非イオン性SHCLへの細胞接着抑制効果を得る上でも有効である。
【0057】
(B-1)成分として使用されるメントールについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されず、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、本発明において、(B-1)成分として、メントールを含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えばクールミント油、ペパーミント油、ハッカ油等が挙げられる。
【0058】
これらの(B-1)成分の内、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくは、l-メントール等が挙げられる。
【0059】
本発明の眼科組成物-1において、(B-1)成分の配合割合は、眼科組成物-1の総量に対して、(B-1)成分が総量で0.001〜0.02w/v%の範囲内に設定されていればよいが、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくは0.001〜0.015w/v%、更に好ましくは0.001〜0.01w/v%が例示される。ここで例示する(B-1)成分の配合割合は、SHCLへのメントールの吸着を抑制する、或いは非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制させる上でも有効である。なお、上記(B-1)成分として、メントールを含む精油を使用する場合は、配合される精油中のメントール含有量が上記配合割合を満たすように設定される。
【0060】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分に対する(B-1)成分の比率については、前述する配合割合を満たす限り特に制限されるものではないが、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-1)成分の総量が0.02〜20000重量部、好ましくは0.2〜2000重量部、更に好ましくは0.2〜200重量部となる比率を充足することが望ましい。ここで例示する(B-1)成分の配合割合は、SHCLへのメントールの吸着を抑制する、或いは非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制させる上でも有効であるが、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制作用を一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-1)成分の総量が0.4〜100重量部が好適である。なお、上記(B-1)成分として、メントールを含む精油を使用する場合は、配合される精油中のメントール含有量が上記比率を満たすように設定される。
【0061】
本発明の眼科組成物-1は、(A)及び(B-1)成分以外に、更に緩衝剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-1に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等が挙げられる。これらの緩衝剤は組み合わせて使用しても良い。好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤であり、特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、及びリン酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等)、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)、アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤は、本願発明の効果をより一層高める点から好適に使用される。ホウ酸緩衝剤の中でも、特に好ましくはホウ酸及び/又はホウ砂であり、最も好ましくはホウ酸及びホウ砂を組み合わせて使用する態様が挙げられる。
【0062】
本発明の眼科組成物-1に緩衝剤を配合する場合、緩衝剤の配合割合については、使用する緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、眼科組成物-1の総量に対して、緩衝剤が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.1〜5w/v%、更に好ましくは0.5〜2w/v%となる割合が例示される。特に、緩衝剤がホウ酸緩衝剤である場合、例えば、眼科組成物-1の総量に対して、ホウ酸緩衝剤が総量で0.1〜5w/v%、好ましくは0.1〜3w/v%、更に好ましくは0.2〜2w/v%、特に好ましくは0.5〜2w/v%となる割合が例示される。
【0063】
本発明の眼科組成物-1は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-1に配合可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0064】
本発明の眼科組成物-1に配合可能な非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類;POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。また、本発明の眼科組成物-1に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン等が例示される。また、本発明の眼科組成物-1に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。また、本発明の眼科組成物-1に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等が例示される。本発明の眼科組成物-1において、これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、好ましくは非イオン性界面活性剤であり、特に好ましい界面活性剤としては、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、ポロクサマー407、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)である。
【0065】
本発明の眼科組成物-1に界面活性剤を配合する場合、界面活性剤の配合割合については、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて適宜設定できる。界面活性剤の配合割合の一例として、眼科組成物-1の総量に対して、界面活性剤が総量で、0.001〜1.0w/v%、好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.3w/v%が例示される。
【0066】
本発明の眼科組成物-1は、更に等張化剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-1に配合できる等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる等張化剤の具体例として、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0067】
本発明の眼科組成物-1に等張化剤を配合する場合、等張化剤の配合割合については、使用する等張化剤の種類等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、眼科組成物-1の総量に対して、等張化剤が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜2w/v%となる割合が例示される。
【0068】
本発明の眼科組成物-1のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明の眼科組成物-1のpHの一例として、4.0〜9.5、好ましくは5.0〜8.5、更に好ましくは5.5〜8.0となる範囲が挙げられる。
【0069】
また、本発明の眼科組成物-1の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の眼科組成物-1の浸透圧比の一例として、好ましくは0.7〜5.0、更に好ましくは0.9〜3.0、特に好ましくは1.0〜2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。浸透圧比測定用標準液は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0070】
本発明の眼科組成物-1には、上記の成分に加えて、種々の有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)を組み合わせて適当量含有させることができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等が例示できる。本発明において好適な薬理活性成分及び生理活性成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0071】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0072】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピンなど。
【0073】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0074】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩など、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、レボカバスチン又はその塩酸塩など、アンレキサノクス、イブジラスト、タザノラスト、トラニラスト、オキサトミド、スプラタスト又はそのトシル酸塩など、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウムなど。
【0075】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ユビキノン誘導体など。
【0076】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム、イプシロン−アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0077】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、アシクロビルなど。
【0078】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0079】
高分子化合物又はその誘導体:例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、デキストラン、ペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、マクロゴールおよびその薬学上許容される塩類など。
【0080】
セルロース又はその誘導体:例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースなど。
【0081】
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど。
【0082】
眼科組成物の分野において各種成分の配合割合は既知であり、本発明の該眼科組成物-1中の上記成分の配合割合は、該眼科組成物-1の剤型、薬理活性成分又は生理活性成分の種類等に応じて適宜設定される。例えば、薬理活性成分又は生理活性成分の配合割合は、眼科組成物-1の総量に対して0.0001〜30w/v%、好ましくは0.001〜10w/v%程度の範囲から選択できる。
【0083】
また、本発明の眼科組成物-1には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させることができる。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性又は油性基剤など)、香料又は清涼化剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、キレート剤、安定化剤等の各種添加剤を挙げることができる。以下に本発明の眼科組成物-1に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0084】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
【0085】
香料又は清涼化剤:例えば、テルペン類(具体的には、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)など。
【0086】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩など)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0087】
pH調節剤:例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸など。
【0088】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸など。
【0089】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリンなど。
【0090】
本発明の眼科組成物-1は、所望量の上記(A)及び(B-1)成分、及び必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。例えば、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、洗眼剤又はコンタクトレンズケア用剤の場合、精製水で前記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。メントール(テルペノイド)等の疎水性の高い成分の溶解に関しては、予め界面活性剤などの溶解補助作用のある成分とあわせて攪拌を行なってから、さらに精製水を加えて溶解又は懸濁させてもよい。
【0091】
本発明の眼科組成物-1は、その剤型については、眼科分野で使用可能である限り特に制限されないが、例えば、液状、軟膏状等が挙げられる。これらの中でも、液状が好ましい。本発明の眼科組成物-1を液状にする場合、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を水性担体として使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。これらの定義は第十五改正日本薬局方に基づく。
【0092】
また、本発明の眼科組成物-1は、点眼剤(但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、眼軟膏剤、洗眼剤(但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等が含まれる)等として使用することができる。これらの中でも、点眼剤、洗眼剤及びコンタクトレンズ装着液、特に点眼剤は、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態である。なお、本明細書において、単にコンタクトレンズと表記する場合には、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルレンズを含むあらゆるコンタクトレンズを包含する。
【0093】
また、後記する試験例2に示すように、本発明者らの研究により、SHCLは、シリコーン素材を含有しない従来のソフトコンタクトレンズよりも、メントールが著しく吸着し易いことが明らかとなっている。これに対して、本発明の眼科組成物-1によれば、(A)及び(B-1)成分を併用することによって、SHCLへのメントールの吸着を抑制でき、高い安全性をもってSHCLを装用することが可能になっている。このメントールの吸着抑制効果を鑑みれば、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態の一例としてSHCL装用中に点眼可能な点眼剤(SHCL用点眼剤)を挙げることもできる。また、特に、SHCLの中でも、イオン性SHCLは、非イオン性SHCLに比してメントールが吸着し易く、より高度なメントールの吸着抑制効果が要求されるが、本発明の眼科組成物-1によれば、イオン性SHCLへのメントールの吸着も効果的に抑制することができる。かかる特性を鑑みれば、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態の一例として、イオン性SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(イオン性SHCL用点眼剤)が挙げられる。なお、本明細書において、単にSHCLと表示する場合には、イオン性及び非イオン性の双方のSHCLが包含される。ここでイオン性SHCLとは、米国FDA(米国食品医薬品局)基準に則り、SHCL素材中のイオン性成分含有率が1mol%以上であるSHCLを指し、非イオン性SHCLとは、米国FDA(米国食品医薬品局)基準に則り、コンタクトレンズ素材中のイオン性成分含有率が1mol%未満であるSHCLを指す。
【0094】
また、後記する参考試験例2に示すように、本発明者らの研究により、ソフトコンタクトレンズの中でも非イオン性SHCLは、角膜上皮細胞が著しく接着し易いことが明らかとなっている。更に、上記(A)成分が単独で存在する場合には、非イオン性SHCLへの角膜上皮細胞の接着を殆ど抑制できず、また上記(B-1)成分が単独で存在する場合でも、非イオン性SHCLへの角膜上皮細胞の接着を十分に抑制できないことも、本発明者によって明らかにされている。このように角膜細胞の接着性が高いコンタクトレンズは、コンタクトレンズの装用時に角膜上でレンズに角膜細胞が接着して、レンズが動く度に、又はレンズを外す際等に、眼組織から該細胞を剥離させて、角膜表面の損傷やそれに伴う痛みを発生させる恐れがあり、ひいてはコンタクトレンズ使用者のQOL(Quality of Life)を著しく低下させることにもなりかねない。これに対して、本発明の眼科組成物-1によれば、上記(A)及び(B-1)成分を併用することによって、非イオン性SHCLの高い角膜細胞接着性を相乗的に抑制でき、高い安全性をもって非イオン性SHCLを装用することが可能になっており、非イオン性SHCLに特有の上記課題を解決することができる。即ち、本発明の眼科組成物-1は、非イオン性SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(非イオン性SHCL用点眼剤)として供給される場合には、ヒスタミン遊離抑制効果及びSHCLへのテルペノイドの吸着抑制効果に加えて、非イオン性SHCLへの角膜細胞接着抑制効果をも具備することができる。このような効果に鑑みれば、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態の一例として非イオン性SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(非イオン性SHCL用点眼剤)を挙げることもできる。本発明の眼科組成物-1を用いて角膜上皮細胞接着抑制効果を発揮させる好適な適用対象の一例として、非イオン性SHCLの中でも、含水率が35%以下の非イオン性SHCLを挙げることができる。なお、SHCLはハイドロゲル素材を含むものであるため、少なくとも0%より多い水分を含む。
【0095】
ここでSHCLの含水率とは、SHCL中の水の割合を示し、具体的には以下の計算式により求められる。
【0096】
含水率(%)=(含水した水の重量/含水状態のSHCLの重量)×100
かかる含水率は、ISO18369-4:2006の記載に従って重量測定方法により測定され得る。
【0097】
本発明の眼科組成物-1が、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤(コンタクトレンズ用点眼剤)、コンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤(コンタクトレンズ用洗眼剤)、SHCL用点眼剤、イオン性SHCL用点眼剤、又は非イオン性SHCL用点眼剤の製剤形態である場合、各レンズを装着した眼にそのまま直接適用してもよく、また各レンズを装着する前に眼に適用してもよい。
【0098】
本発明の眼科組成物-1は、(A)及び(B-1)成分の相乗作用によってヒスタミン遊離抑制作用を発揮できるので、抗アレルギー(花粉用等)、かゆみ抑制、コンタクトレンズ装用時の不快感抑制等の用途で使用できる。また、本発明の眼科組成物-1は、上記(A)成分に基づいてドライアイや目の乾きの予防乃至治療に有効であり、ドライアイや目の乾きの改善にも有用である。
【0099】
本発明の眼科組成物-1を収容する容器は、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。本発明の眼科組成物-1を収容する容器として、プラスチック製を使用する場合、該プラスチック容器の構成材質については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体が挙げられる。また、上記共重合体としては、エチレン−2,6−ナフタレート単位、アリレート単位、エチレンテレフタレート単位、プロピレン単位、エチレン単位、イミド単位のいずれか1種を主体として、他のポリエステル単位、イミド単位を含む共重合体が挙げられる。
【0100】
2.眼科組成物-2
本発明の眼科組成物-2は、SHCL用として使用される眼科組成物である。
【0101】
本発明の眼科組成物-2は、一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を含有する。本発明の眼科組成物-2で使用される(A)成分の種類及び(A)成分の内の好適な例については、上記眼科組成物-1で使用される(A)成分と同様である。
【0102】
本発明の眼科組成物-2において、(A)成分の含有割合については、特に制限されないが、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を一層高めるという観点から、眼科組成物-2の総量に対して、(A)成分が総量で0.0001〜5w/v%、好ましくは0.001〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.01〜0.5w/v%、特に好ましくは0.02〜0.5w/v%が挙げられる。(A)成分の含有割合が上記範囲を充足すると、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を一層有効に抑制させる上でも有効であるが、特に0.05〜0.25w/v%である場合には非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制作用を格段に高めることが可能になる。
【0103】
本発明の眼科組成物-2は、(A)成分に加えて、テルペノイド(以下、(B-2)成分と表記することもある)を含有する。このように、(A)及び(B-2)成分を併用することによって、SHCLへのテルペノイドの吸着を有効に抑制することが可能になる。このような(A)成分と(B-2)成分の併用は、非イオン性SHCLへの細胞接着抑制効果を得る上でも有効である。
【0104】
(B-2)成分として使用されるテルペノイドについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。かかるテルペノイドとして、具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、本発明において、テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油等が挙げられる。これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0105】
これらの(B-2)成分の内、SHCLへのテルペノイドの吸着抑制作用又は非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくは、メントール、カンフル、ボルネオール等が挙げられ、これらを含有する好ましい精油としてクールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油等が例示される。より好ましくは、メントール、カンフル(d-カンフル、dl-カンフル等)が挙げられ、更に好ましくは、l-メントール、d-メントール、dl-メントール等のメントール類又はその誘導体が挙げられ、これらを含有する精油としては、クールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、が例示される。特に好ましくはl-メントールが挙げられる。
【0106】
本発明の眼科組成物-2において、(B-2)成分の含有割合については、特に制限されないが、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を一層高めるという観点から、眼科組成物-2の総量に対して、(B-2)成分が総量で0.0001〜1w/v%、好ましくは0.001〜0.08w/v%、更に好ましくは0.001〜0.05w/v%、特に好ましくは0.001〜0.02w/v%が挙げられる。(B-2)成分の含有割合が上記範囲を充足すると、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を一層有効に抑制させる上でも有効である。なお、上記(B-2)成分として、テルペノイドを含む精油を使用する場合は、配合される精油中のテルペノイド含有量の総量が上記含有割合を満たすように設定される。
【0107】
本発明の眼科組成物-2において、(A)成分に対する(B-2)成分の比率については、前述する含有割合を満たす限り特に制限されるものではないが、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が0.0002〜50000重量部、好ましくは0.02〜500重量部、更に好ましくは0.2〜500重量部となる比率を充足することが望ましい。また、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を備えつつ、非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用をも一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が0.2〜5000重量部、好ましくは0.2〜2000重量部、更に好ましくは0.4〜100重量部となる比率を充足することが望ましい。
【0108】
また、眼科組成物-2において、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用又は非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用を備えつつ、更に優れたヒスタミン遊離抑制作用をも備えさせるという観点からは、(B-2)成分としてメントールを使用し、且つ眼科組成物-2の総量に対して、(A)成分の含有割合が0.001〜2w/v%、好ましくは0.005〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜2w/v%、特に好ましくは0.01〜1w/v%、最も好ましくは0.01〜0.5w/v%であり、(B-2)成分の含有割合が0.001〜0.02w/v%、好ましくは0.001〜0.015w/v%、更に好ましくは0.001〜0.01w/v%を充足することが望ましい。更に、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用又は非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用を備えつつ、更に優れたヒスタミン遊離抑制作用をも備えさせるという観点からは、上記の(A)及び(B-2)成分の含有割合を具備しつつ、(A)成分と(B-2)成分の比率が、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が0.02〜20000重量部、好ましくは0.2〜2000重量部、更に好ましくは0.2〜200重量部となる比率を充足することが望ましい。
【0109】
本発明の眼科組成物-2は、(A)及び(B-2)成分以外に、更に緩衝剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-2で使用される緩衝剤の種類、緩衝剤の内の好適な例、緩衝剤の含有割合については、上記眼科組成物-1で使用される緩衝剤の場合と同様である。
【0110】
また、本発明の眼科組成物-2は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-2で使用される界面活性剤の種類、界面活性剤の内の好適な例、界面活性剤の含有割合については、上記眼科組成物-1で使用される界面活性剤の場合と同様である。
【0111】
更に、本発明の眼科組成物-2は、更に等張化剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-2で使用される等張化剤の種類、等張化剤の内の好適な例、等張化剤の含有割合については、上記眼科組成物-1で使用される等張化剤の場合と同様である。
【0112】
本発明の眼科組成物-2のpH及び浸透圧についても、上記眼科組成物-1と同様である。
【0113】
本発明の眼科組成物-2には、上記の成分に加えて、有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)、その他様々な成分や添加物等を配合することができる。これらの種類や含有割合等については、上記眼科組成物-1の場合と同様である。
【0114】
本発明の眼科組成物-2は、所望量の上記(A)及び(B-2)成分、及び必要に応じて他の含有成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。
【0115】
本発明の眼科組成物-2の剤型についても、上記眼科組成物-1の場合と同様である。
【0116】
本発明の眼科組成物-2は、SHCL用の眼科組成物として使用され、その製剤形態の具体例としては、SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(SHCL用点眼剤)、SHCL装用中に洗眼可能な洗眼剤(SHCL用洗眼剤)、SHCL装着液、SHCLケア用剤(SHCL消毒剤、SHCL用保存剤、SHCL用洗浄剤、SHCL用洗浄保存剤等が含まれる)等が例示される。なお、SHCL用点眼剤、SHCL用洗眼剤である場合、SHCLを装着した眼にそのまま直接適用してもよく、またSHCLを装着する前に眼に適用してもよい。
【0117】
これらの中でも、SHCL用点眼剤、SHCL用洗眼剤、SHCL用洗浄剤、SHCL装着液が好ましく、特にSHCL用点眼剤は、本発明の眼科組成物-2において好適な製剤形態である。
【0118】
また、SHCLの中でも、イオン性SHCLは、非イオン性SHCLに比してテルペノイドが吸着し易く、より高度なテルペノイドの吸着抑制効果が要求されるが、本発明の眼科組成物-2によれば、イオン性SHCLへのテルペノイドの吸着も効果的に抑制することができる。かかる特性を鑑みれば、本発明の眼科組成物-2の好適な製剤形態の一例として、好ましくはイオン性SHCL用眼科組成物、更に好ましくはイオン性SHCL用点眼剤、イオン性SHCL用洗眼剤、イオン性SHCL用洗浄剤、イオン性SHCL装着液、特に好ましくはイオン性SHCL用点眼剤が挙げられる。
【0119】
また、後記する参考試験例1に示すように、本発明者らの研究により、ソフトコンタクトレンズの中でも非イオン性SHCLは、角膜上皮細胞が著しく接着し易いことが明らかとなっている。そのため、非イオン性SHCLに対して適用される眼科組成物には、非イオン性SHCLへの角膜上皮細胞の接着抑制作用を備えていることが求められる。これに対して、本発明の眼科組成物-2によれば、上記(A)及び(B-2)成分を併用することによって、非イオン性SHCLの高い角膜細胞接着性を相乗的に抑制でき、高い安全性をもって非イオン性SHCLを装用することが可能になっている。かかる特性を鑑みれば、本発明の眼科組成物-2の好適な製剤形態の一例として、非イオン性SHCL用眼科組成物、更に好ましくは非イオン性SHCL用点眼剤、非イオン性SHCL用洗眼剤、非イオン性SHCL用洗浄剤、非イオン性SHCL装着液、特に好ましくは非イオン性SHCL用点眼剤が挙げられる。
【0120】
本発明の眼科組成物-2を非イオン性SHCL用眼科組成物として使用する場合、適用対象となる非イオン性SHCLの含水率については、特に制限されるものではないが、少なくとも0%より多く、且つ35%以下が例示される。ここで、用いる非イオン性SHCLの含水率の測定方法については、上記「眼科組成物-1」の欄に記載の方法が援用される。
【0121】
本発明の眼科組成物-2は、上記(A)成分に基づいてドライアイの予防乃至治療に有効であり、ドライアイの改善にも有用である。本発明の眼科組成物-2が、優れたヒスタミン遊離抑制作用を発現できる態様である場合には、抗アレルギー(花粉用等)、かゆみ抑制、コンタクトレンズ装用時の不快感抑制等の用途に使用できる。
【0122】
本発明の眼科組成物-2を収容する容器については、上記眼科組成物-1の場合と同様である。
【0123】
3.ヒスタミン遊離抑制作用の付与方法
前述するように、眼科組成物において、(A)及び(B-1)成分を特定の含有割合で併用することによって、相乗的に増強されたヒスタミン遊離抑制作用を備えさせることができる。
【0124】
従って、本発明は、更に別の観点から、眼科組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%を併用することを特徴とする、眼科組成物にヒスタミン抑制作用を付与する方法を提供する。
【0125】
この方法において、使用する(A)及び(B-1)成分の種類や含有割合や比率、その他に配合される成分の種類や含有割合、眼科組成物の製剤形態、眼科組成物を収容する容器の種類等については、前記「1.眼科組成物-1」と同様である。
【0126】
4.SHCLに対するテルペノイドの吸着抑制方法、SHCLに対するテルペノイドの吸着抑制作用を眼科組成物に付与する方法
前述するように、(A)及び(B-2)成分を組み合わせて使用することによって、SHCLに対するテルペノイドの吸着を抑制することができる。
【0127】
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-2)テルペノイドとを含有する眼科組成物と、SHCLとを接触させることを特徴とする、SHCLに対するテルペノイドの吸着を抑制する方法を提供する。また、本発明は、眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、SHCLに対するテルペノイドの吸着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法をも提供する。
【0128】
これらの方法において、使用する(A)及び(B-2)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、適用対象となるSHCLの種類等については、前記「2.眼科組成物-2」と同様である。
【0129】
5.非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制方法、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制作用を眼科組成物に付与する方法
前述するように、(A)及び(B-2)成分を組み合わせて使用することによって、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を相乗的に抑制することができる。
【0130】
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-2)テルペノイドとを含有する眼科組成物と、非イオン性SHCLとを接触させることを特徴とする、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する方法を提供する。また、本発明は、眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法をも提供する。
【0131】
これらの方法において、使用する(A)及び(B-2)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、適用対象となる非イオン性SHCLの種類等については、前記「2.眼科組成物-2」と同様である。
【実施例】
【0132】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
試験例1:ヒスタミン遊離抑制効果試験
10容量%ウシ胎児血清(インビトロジェン社製)を添加したDMEM培地(インビトロジェン社製)に懸濁したラット好塩基球細胞株(RBL-2H3)を1×105cells/cm2の密度で96ウェルマイクロタイタープレート(コーニング社製)に播種し、37℃、5%CO2下で24時間培養した。その後、培養上清を吸引除去し、表1乃至4に示す濃度となるよう被験物質を溶解したPIPES緩衝液を1ウェル当たり0.2mlずつ添加し、1時間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。PIPES緩衝液は、20mM PIPES(Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid;シグマ社製))及び0.1w/v%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を添加したハンクス平衡塩(インビトロジェン社製、組成:CaCl2 1.26 mM、MgCl2・6H2O 0.493mM、MgSO4・7H2O 0.407mM、KCl 5.33mM、KH2PO40.441mM、NaHCO3 4.17mM、NaCl 137.93mM、Na2HPO40.338mM)を用いた。その後1mM A23187(試薬:シグマ社製)を2μlずつ各ウェルに添加し、更に20分間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。各ウェルの上清を回収し、ヒスタミンの濃度をELISAキット(Oxford Biochemical Research社製)を用いて定量した。また、コントロールとして、被験物質を溶解しないPIPES緩衝液を1ウェル当たり0.2mlずつ添加し上記と同様に試験したものを用い、また、ブランクとして、A23187を添加しない以外はコントロールと同様に試験したものを用いて、同様にヒスタミン濃度を定量した。得られた各サンプルのヒスタミン濃度を用いて、下記の算出式に従ってヒスタミン遊離抑制率(%)を算出した。
【0134】
【数1】
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
得られた結果を図1〜図4に示す。MPCポリマー(0.0001〜2.0w/v%)単独の場合(比較例1-2〜1-8)では、ヒスタミン遊離抑制効果は認められなかった。また、メントール単独では、0.01 w/v%、0.001 w/v%又は0.02 w/v%の場合(比較例1-1、1-10及び1-11)にはヒスタミン遊離抑制効果が認められた。一方、MPCポリマー0.001〜2.0w/v%と、メントール0.001〜0.02w/v%をそれぞれ併用した場合(実施例1-1〜1-14)では相乗的にヒスタミンの遊離を抑制していることが確認された。なお、メントール濃度が0.05w/v%の場合、細胞毒性の為に正常なヒスタミン濃度の測定が不可能であった(測定不能)。
【0140】
参考試験例1:ヒスタミン遊離抑制効果試験
ヒスタミン遊離抑制作用が公知である塩酸ピリドキシンとMPCポリマーとの併用によるヒスタミン遊離抑制効果を評価するために、被験物質として、表5に示す濃度の塩酸ピリドキシン及びMPCポリマーを使用し、上記試験例1と同様の方法でヒスタミン遊離抑制率を求めた。
【0141】
【表5】
【0142】
得られた結果を図5に示す。図5に示されるように、塩酸ピリドキシンとMPCポリマーを併用しても、ヒスタミン遊離抑制効果の相乗的な向上は認められなかった。即ち、上記試験例1で認められたヒスタミン遊離抑制効果の相乗的な向上は、特定の含有割合でMPCポリマーとメントールを併用した場合に認められる特有の効果であることが明らかになった。
【0143】
試験例2:テルペノイドのSHCLへの吸着抑制試験
表6に示す2種類のSHCLを用いて以下の実験を実施し、SHCLへのテルペノイドの吸着性を評価した。なお、本試験に使用したSHCLは、いずれも市販品である。
【0144】
【表6】
【0145】
表6に示す2種のSHCLを72時間生理食塩液5mLに1枚を浸漬した(レンズの前処理)。また、表7に従って処方液を作成し、各処方液を6mL容量ヘッドスペースバイアルに5mLずつ充填した。この処方液に前処理済のSHCLを浸漬し、34℃で120回/minにて24時間振とうした。SHCLを引き上げ、100mL生理食塩液で軽くすすぐ事によりレンズ表面に付着した余分な溶液を除去した後、ヘッドスペースバイアルに5mLずつ充填した生理食塩水に移し、34℃で120回/minにて24時間振とうし、SHCLに吸着したテルペノイドを溶出させた。次いで、別のヘッドスペースバイアルに充填した生理食塩水にSHCLを移し、残った液を溶出液として回収した。溶出液に含まれるメントール及びカンフルをガスクロマトグラフィ法によって定量した(溶出1回目サンプル)。
【0146】
同様の操作を繰り返し、メントール及びカンフルが検出されなくなるまで溶出操作を繰り返した。溶出量を各成分毎に合計し、これをSHCLへのメントール及びカンフルの吸着量として算出した。
【0147】
【表7】
【0148】
得られた結果を図6及び7に示す。テルペノイド(メントール、カンフル)を含みMPCポリマーを含まない処方液(比較例2-1)では、両SHCLにおいて、メントール及びカンフルの吸着が確認された。また、イオン性SHCLと非イオン性SHCLとを比較すると、イオン性SHCLにおいてメントール及びカンフルは共に吸着量が多く、イオン性SHCLの方がテルペノイドの吸着という課題が大きいことが示された。
【0149】
一方、メントール及びカンフルと共にMPCポリマーを含む処方液(実施例2-1)では、SHCLへのメントール及びカンフルの吸着が顕著に抑制された。特に非イオン性SHCLでは、カンフルの吸着はほとんど見られなかった。
【0150】
参考試験例2:各種ソフトコンタクトレンズの角膜上皮細胞の接着性評価 表8に示す5種類のソフトコンタクトレンズを用いて以下の実験を実施し、ソフトコンタクトレンズ表面の角膜上皮細胞接着性を評価した。なお、本試験に使用したソフトコンタクトレンズは、いずれも市販品である。
【0151】
【表8】
【0152】
具体的に以下の方法により評価した。増殖用培地(10%ウシ胎児血清含有DMEM培地)を900μLずつ入れた24ウェルマイクロプレートに、各ソフトコンタクトレンズをそれぞれ凸面が上になるように一枚ずつ浸漬させた。各ウェルに、増殖用培地を用いて調整したウサギ角膜上皮細胞株SIRC(ATCC number:CCL-60)の細胞懸濁液(1×105cell/ml)を100μLずつ播種し、37℃、5%CO2条件下で48時間培養後、ソフトコンタクトレンズに接着した生存細胞数を計測した。なお、コントロールとして、いずれのレンズも浸漬させず、マイクロプレートの底面で細胞を培養し、ウェル中の生細胞数を計測した(コントロール群)。なお、生存細胞数の測定にはCell Counting Kit((株)同仁化学研究所製)を用いた。コントロール群のウェル中に含まれる生細胞の総数に対して、各ソフトコンタクトレンズ表面に接着している生細胞数の割合(コントロール群に対する生細胞数の割合;%)をそれぞれ算出した。
【0153】
得られた結果を図8に示す。図8から明らかなように、非イオン性SHCLであるレンズA及びBは、イオン性のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであるレンズCや非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであるレンズDまたはEと比較して、顕著な角膜上皮細胞接着性があることが確認された。また、細胞のソフトコンタクトレンズへの接着状況を顕微鏡で観察したところ、レンズC、D及びEには細胞接着が殆ど確認できなかったものの、レンズA及びBの表面には一面に角膜上皮細胞が接着していることが確認された。以上の結果より、非イオン性SHCLは、角膜上皮細胞の接着性が他の種類のレンズと比較して顕著に高いことが確認され、非イオン性SHCLの装用は角膜表面に損傷等の悪影響を与え得ることが明らかとなった。
【0154】
試験例3:角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制試験
上記表8に示すレンズBを用いて以下の実験を実施し、非イオン性SHCL表面への角膜上皮細胞接着性を評価した。具体的に以下の方法により評価した。増殖用培地(10%ウシ胎児血清含有DMEM培地)を用いて表9及び10に示す組成の処方液(実施例3-1〜3-4及び比較例3-1〜3-7)を無菌的に作製した。各処方液を24ウェルのマイクロプレートに1000μLずつ入れ、そこにSHCLを凸面を上にして浸漬させた。更に、増殖用培地を用いて調整したウサギ角膜上皮細胞株SIRC(ATCC number:CCL-60)の細胞懸濁液(1×105cell/ml)を100μLずつ播種し、37℃、5%CO2条件下で48時間培養後、非イオン性SHCLに接着した生存細胞数を計測した。なお、コントロールとして処方液の代わりにDMEM培地のみを用い、同様に非イオン性SHCLに接着した生存細胞数を計測した。コントロール群のウェル中でSHCL表面に接着した生細胞数と、各試験液中でSHCL表面に接着している生細胞数を比較し、下式に従い各試験液の角膜細胞接着抑制率をそれぞれ算出した(N=3)。なお、生存細胞数の測定にはCell Counting Kit((株)同仁化学研究所製)を用いた。
【0155】
【表9】
【0156】
【表10】
【0157】
ブランクとしては、SHCLと細胞を添加しないこと以外は、上記と同様に処理したものを用いた。
【0158】
【数2】
【0159】
得られた結果を図9〜12に示す。顕微鏡で観察したところ、コントロール群ではウェル中で非イオン性SHCL表面に角膜細胞が接着していることが確認された。
【0160】
また、図9〜12から明らかなように、MPCポリマー及びテルペノイドの双方を含む実施例3-1〜3-4の処方液では、MPCポリマー及びテルペノイドのいずれか一方のみを含む比較例3-1〜3-7処方液の場合と比較して、高い角膜上皮細胞接着抑制率が得られることが確認された。このことは、MPCポリマー及びテルペノイドを含有する眼科組成物を使用することにより、非イオン性SHCLが角膜表面に及ぼす損傷等の悪影響を抑制できることを実証している。
【0161】
参考試験例3:角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制試験
塩酸テトラヒドロゾリンとMPCポリマーとの併用による角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制効果を評価するために、被験物質として、表11に示す組成の試験液を使用し、上記試験例3と同様の方法で細胞接着抑制率を求めた。
【0162】
【表11】
【0163】
得られた結果を図13に示す。図13に示されるように、塩酸テトラヒドロゾリンとMPCポリマーを併用すると、塩酸テトラヒドロゾリン単独の場合に比して、却って非イオン性SHCL表面に角膜細胞が接着するのを促進する結果を招いた。即ち、上記試験例3で認められた角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制効果は、MPCポリマーとテルペノイドを併用した場合に認められる特有の効果であることが明らかになった。
【0164】
製剤例1
含有割合(w/v%)
MPCホ゜リマー#1 0.5
L-メントール 0.01
塩化ナトリウム 0.5
塩化カリウム 0.1
ホウ酸 0.8
ホウ砂 0.2
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量 100mL
pH 7.0
#1 MPCホ゜リマーは、表1で使用したものと同じ。
【0165】
上記の製剤例1の眼科用組成物処方を常法に従って調製し、15mL容量PET製容器に15mL充填し、点眼剤、SHCL用点眼剤をそれぞれ製した。
【0166】
製剤例2
含有割合(w/v%)
MPCホ゜リマー#1 0.05
L-メントール 0.002
D-カンフル 0.001
塩化ナトリウム 0.8
ホウ酸 0.4
ホウ砂 0.1
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量 100mL
pH 7.5
#1 MPCホ゜リマーは、表1で使用したものと同じ。
【0167】
上記の製剤例2の眼科用組成物処方を常法に従って調製し、10mL容量PET製容器に10mL充填し、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、SHCL用点眼剤、SHCL用コンタクトレンズ装着液をそれぞれ製した。また、上記の容器に代えて、500mL容量PET製容器に500mL充填し、洗眼剤、SHCL用洗眼剤をそれぞれ製した。
【0168】
製剤例3
表12に記載の処方で、点眼剤(ソフトコンタクトレンズ装用中にも点眼可能な点眼剤)(実施例4−8)、SHCL用点眼剤(実施例9−14)、SHCL装着液(実施例15)、並びに洗眼剤(実施例16)、コンタクトレンズ用マルチパーパスソリューション(実施例17)が調製される。
【0169】
これらの製剤例の内、実施例4−13及び15−17は、本発明の眼科組成物-1の実施態様例であり、実施例9−17は、本発明の眼科組成物-2の実施態様例である。なお、実施例4−7、実施例10−17において配合されているMPCポリマーは、表1で使用したものと同じものである。また、実施例8−9において配合されているMPCポリマーは、商品名「LIPIDURE-HM」(日油株式会社製)を用いて処方量のMPCポリマー濃度となるよう配合した。
【0170】
【表12】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物に関する。また、本発明は、テルペノイドのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズへの吸着を抑制できるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アレルギー患者の増加やアレルギー症状の重篤化が問題になっている。アレルギー患者の症状の多くは、I型アレルギー症状、即ちアレルゲンとの接触により肥満細胞や好塩基球からヒスタミン等の化学伝達物質が遊離されることにより引き起こされるアレルギー症状であることが知られている。このI型アレルギー症状の予防乃至改善には、ヒスタミンの遊離自体を抑制することが有効であり、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物の開発が望まれている。特に、従来、ヒスタミン遊離抑制作用が明らかにされていない成分を使用して、ヒタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物を開発できれば、新たな付加価値のある製剤の提供が可能になる。
【0003】
また近年、コンタクトレンズの装用者が増えており、中でも酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲルレンズの装用者が増えている。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、ハイドロゲルにシリコーンを配合させることにより、従来のハイドロゲルコンタクトレンズの数倍の酸素透過性を実現する。そのため、従来のソフトコンタクトレンズの弱点である酸素供給不足を改善することができ、酸素不足に伴う角膜に対する悪影響を大幅に抑制できるものとして、大きく期待されている。一般に、コンタクトレンズ装用者の眼に適用される点眼剤については、コンタクトレンズの種類や特性に応じて、安全性等の影響を十分に考慮して設計することが不可欠である。
【0004】
一方、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体は、生体適合性が高い化合物として知られている。また、当該重合体は、角質の保護や保湿等の作用も有しており、スキンケアにも有効であることが知られている(特許文献1参照)。更に、当該重合体は、眼科分野において、ドライアイの予防又は治療(特許文献2参照)、有効成分の滞留性の向上(特許文献3参照)にも有効であることが分かっている。このように、上記重合体は、生体適合性のみならず、様々な作用をも有しており、機能性素材として注目を浴びている。とりわけ、近年、眼科分野における当該重合体の利用が積極的に試みられており、当該重合体を配合した眼科組成物の処方も報告されている(特許文献4−5参照)。
【0005】
また、メントールを初めとするテルペノイドは、眼科分野において、清涼化剤として使用されている。更に、テルペノイドが有する清涼化作用は、眼の不快感を改善し、リラックス感、リフレッシュ感を付与する効果も期待されている。
【0006】
しかしながら、前述するホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びテルペノイドについては、ヒスタミン遊離に対して如何なる作用を及ぼすかについては殆ど知られておらず、これらを併用した場合にヒスタミン遊離に及ぼす影響については皆目見当できないのが現状である。また、これらを併用した場合のシリコーンハイドロゲルレンズに及ぼす影響についても、何ら検討されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−52848号公報
【特許文献2】特開平10−324634号公報
【特許文献3】特開平11−335301号公報
【特許文献4】特開2008−273959号公報
【特許文献5】特開平7−166154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術を背景として、従来に無い新規な処方で、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物の開発が望まれている。
【0009】
また、本発明者らは、意外なことに、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(以下、「SHCL」と表記することもある)はテルペノイドを吸着し易い性質があることを見出した。このようにコンタクトレンズに点眼剤の配合成分が吸着すると、コンタクトレンズの変形や、変質を招く恐れがあり、また吸着した成分がレンズに留まることによる影響も懸念される。とりわけ、SHCLは、シリコーンを素材として含有しないソフトコンタクトレンズに比べて材質が硬いため、レンズの変形や濡れ性低下などによる使用感の悪化を感じさせ易い傾向がある。更に、SHCLは、シリコーンを素材として含有しないソフトコンタクトレンズに比して比較的長期に亘って連続装用される場合が多いことを考慮すると、レンズが変形した状態で長期間にわたり連続装用されると、重大な眼疾患又は眼粘膜疾患を引き起こす一因にもなりかねない。このような背景の下、テルペノイドのSHCLへの吸着を抑制する手段の開発も求められている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、従来に無い新規な処方で、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、テルペノイドのSHCLへの吸着を抑制できるSHCL用眼科組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物の創出を試み、鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びメントールでは、各々単独ではヒスタミン遊離抑制作用が弱い或いは無いにも拘わらず、これらを特定の配合割合で併用すると、相乗作用によって格別優れたヒスタミン遊離抑制効果が奏されることを見出した。
【0013】
また、本発明者らは、SHCLはテルペノイドを吸着し易い性質があることを見出し、それを解決するための手段として、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びテルペノイドの併用が、SHCLへのテルペノイドの吸着抑制に有効であることをも見出した。更に、本発明者らは、SHCLの中でも、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(以下、「非イオン性SHCL」と表記することもある)は角膜上皮細胞の接着性が著しく高いことを見出し、それを解決するための手段として、意外にも、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体及びテルペノイドの併用が、非イオン性SHCL表面への角膜細胞の接着を効果的に抑制できることをも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0014】
即ち、本発明は、下記に掲げる眼科組成物を提供する。
項1-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%と
を含むことを特徴とする、眼科組成物。
項1-2.(A)成分が、一般式(I)で表されるモノマーの重合体、又は一般式(I)で表されるモノマーと下記一般式(II)で表されるモノマーの共重合体である、項1-1に記載の眼科組成物。
【0017】
【化2】
【0018】
[式中、R7は水素原子又はメチル基、R8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
項1-3.(A)成分が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体である、項1-1又は1-2に記載の眼科組成物。
項1-4.(A)成分の総量100重量部当たり、(B-1)成分を総量で0.02〜20000重量部含む、項1-1乃至1-3のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-5.点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-6.洗眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-7.コンタクトレンズ装着液である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-8.コンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-9.ソフトコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-10.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-11.イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
項1-12.非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科組成物。
【0019】
また、本発明は、下記に掲げるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物を提供する。
項2-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0020】
【化3】
【0021】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-2)テルペノイドと
を含むことを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-2.(A)成分が、一般式(I)で表されるモノマーの重合体、又は一般式(I)で表されるモノマーと下記一般式(II)で表されるモノマーの共重合体である、項2-1に記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【0022】
【化4】
【0023】
[式中、R7は水素原子又はメチル基、R8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
項2-3.(A)成分が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体である、項2-1又は2-2に記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-4.(B-2)成分としてメントールを含む項2-1乃至2-3のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-5.(A)成分の配合割合が0.0001〜5w/v%である、項2-1乃至2-4のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-6.(B-2)成分の配合割合が0.0001〜1w/v%である、項2-1乃至2-5のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-7.(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分を総量で0.0002〜50000重量部含む、項2-1乃至2-6のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-8.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項2-1乃至2-7のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-9.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用洗眼剤である、項2-1乃至2-7のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-10.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用コンタクトレンズ装着液である、項2-1乃至2-7のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-11.イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項2-1乃至2-8のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
項2-12.非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項2-1乃至2-8のいずれかに記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【0024】
更に、本発明は、下記に掲げる方法を提供する。
項3.眼科組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%を併用することを特徴とする、眼科組成物にヒスタミン遊離抑制作用を付与する方法。
項4.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体及び(B-2)テルペノイドを含有する眼科組成物と、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとを接触させることを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対するテルペノイドの吸着を抑制する方法。
項5.眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対するテルペノイドの吸着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法。
項6.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体及び(B-2)テルペノイドを含有する眼科組成物と、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとを接触させることを特徴とする、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する方法。
項7.眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法。
【0025】
更に、本発明は、下記に掲げる使用を提供する。
項8-1.0.001〜2w/v%の(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0026】
【化5】
【0027】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
0.001〜0.02w/v%の(B-1)メントールとの、
眼科組成物の製造のための使用。
項8-2.眼科組成物が点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-3.眼科組成物が洗眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-4.眼科組成物がコンタクトレンズ装着液である、項8-1に記載の使用。
項8-5.眼科組成物がコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-6.眼科組成物がソフトコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-7.眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-8.眼科組成物がイオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-9.眼科組成物が非イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項8-1に記載の使用。
項8-10.眼科組成物がヒスタミン遊離抑制剤である、項8-1に記載の使用。
項8-11.眼科組成物が抗アレルギー剤、眼のかゆみ抑制剤、又はコンタクトレンズ装用時の不快感抑制剤である、項8-1に記載の使用。
項9-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0028】
【化6】
【0029】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-2)テルペノイドとの、
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物の製造のための使用。
項9-2.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、項9-1に記載の使用。
項9-3.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用洗眼剤である、項9-1に記載の使用。
項9-4.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物がシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用コンタクトレンズ装着液である、項9-1に記載の使用。
項9-5.眼科組成物がヒスタミン遊離抑制剤である、項9-1に記載の使用。
項9-6.眼科組成物が抗アレルギー剤、眼のかゆみ抑制剤、又はコンタクトレンズ装用時の不快感抑制剤である、項9-1に記載の使用。
【発明の効果】
【0030】
本発明の眼科組成物は、優れたヒスタミン遊離抑制作用を示すので、抗アレルギー、かゆみ抑制、コンタクトレンズ装用時の不快感抑制等の用途の眼科用製剤に有用である。
【0031】
また、SHCLには、テルペノイドを吸着し易い特性があることが本発明者らの研究により明らかとなったが、本発明のSHCL用眼科組成物によれば、SHCLへのテルペノイドの吸着を抑制することもでき、SHCLの使用上の安全性を十分に確保することができる。
【0032】
更に、非イオン性SHCLには、角膜細胞が著しく接着し易いという特有の性質があることが本発明者らの研究により明らかとなったが、本発明のSHCL用眼科組成物によれば、非イオン性SHCLへの角膜細胞接着を効果的に抑制することができる。従って、本発明のSHCL用眼科組成物によれば、レンズを眼から外す際等にも角膜表面の損傷を低減させることができ、高い安全性をもって非イオン性SHCLを装用することをも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】試験例1において、各種濃度の被験物質(実施例1-1〜1-6及び比較例1-1〜1-9)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図2】試験例1において、各種濃度の被験物質(実施例1-7〜1-10、並びに比較例1-3〜1-5、1-8及び1-10)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図3】試験例1において、各種濃度の被験物質(実施例1-11〜1-14、並びに比較例1-4〜1-6、1-8及び1-11)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図4】試験例1において、各種濃度の被験物質(比較例1-4〜1-5及び1-12〜1-14)のヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図5】参考試験例1において、塩酸ピリドキシン単独(参考例1)及び塩酸ピリドキシンとMPCポリマーの組み合わせ(参考例2)について、ヒスタミン遊離抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図6】試験例2において、各処方液(実施例2-1及び比較例2-1)を用いて、SHCLへのメントールの吸着量を測定した結果を示す図である。
【図7】試験例2において、各処方液(実施例2-1及び比較例2-1)を用いて、SHCLへのカンフルの吸着量を測定した結果を示す図である。
【図8】参考試験例2において、各種ソフトコンタクトレンズへの角膜上皮細胞の接着性を評価した結果を示す図である。
【図9】試験例3において、各処方液(実施例3-1、比較例3-1、3-3)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図10】試験例3において、各処方液(実施例3-2、比較例3-2、3-4)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図11】試験例3において、各処方液(実施例3-3、比較例3-5、3-6)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図12】試験例3において、各処方液(実施例3-4、比較例3-1、3-7)の非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【図13】参考試験例3において、塩酸テトラヒドロゾリン単独(参考例3)及び塩酸テトラヒドロゾリンとMPCポリマーの組み合わせ(参考例4)について、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞接着抑制効果を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、優れたヒスタミン遊離抑制作用を示す眼科組成物(以下、眼科組成物-1と表記することもある)、SHCLへのテルペノイドの吸着を抑制できるSHCL用眼科組成物(以下、眼科組成物-2と表記することもある)、及び各種方法を提供する。以下、これらの発明毎に具体的態様を詳述する。なお、本明細書において配合割合の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。
【0035】
1.眼科組成物-1
本発明の眼科組成物-1は、下記一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を0.001〜2w/v%の割合で含有する。
【0036】
【化7】
【0037】
一般式(I)中、n1は、2〜4の整数、好ましくは2又は3、更に好ましくは2を示す。
【0038】
一般式(I)中、R1は、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を示す。
【0039】
また、一般式(I)中、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基を示す。ここで、R6は、炭素数1〜4のアルキレン基を示す。このようなアルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示される。R6として、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基(エチレン基)が挙げられる。また、n2は、0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、更に好ましくは0を示す。
【0040】
また、一般式(I)中、R3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が例示される。R3〜R5として、好ましくは、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、更に好ましくは炭素数1のアルキル基(メチル基)が挙げられる。
【0041】
一般式(I)で表されるモノマーの好適な例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC;n1が2、R1がメチル基、R2がエチレン基、R3〜R5がメチル基)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン(MPE;n1が2、R1がメチル基、R2がエチレン基、R3〜R5が水素原子)、特に好ましくは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが例示される。
【0042】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分は、上記一般式(I)で表されるモノマー(以下、単に「モノマー(I)」と表記することもある)の重合体であってもよく、またモノマー(I)と他のモノマーとの共重合体であってもよく、更にはモノマー(I)の重合体とモノマー(I)と他のモノマーとの共重合体との混合物であってもよい。
【0043】
(A)成分として共重合体を使用する場合、モノマー(I)以外の他のモノマーとしては、最終的に得られる共重合体が、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り制限されないが、好適な一例として、下記一般式(II)で表されるモノマー(以下、単に「モノマー(II)」と表記することもある)が例示される。
【0044】
【化8】
【0045】
一般式(II)中、R7は、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を示す。
【0046】
また、一般式(II)中、R8は、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。このようなアルキル基については、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が例示される。R8として、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは炭素数4のアルキル基(n-ブチル基)が挙げられる。
【0047】
モノマー(II)の好適な例として、ブチルメタクリレート(BMA;R7がメチル基、R8がn-ブチル基)、メチルメタクリレート(MMA;R7がメチル基、R8がメチル基)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA;R7がメチル基、R8がヒドロキシエチル基);より好ましくは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート;特に好ましくはブチルメタクリレートが例示される。
【0048】
モノマー(II)が塩の形態をとれる場合(例えば、R7が水素原子の場合)には、モノマー(II)は塩であってもよい。モノマー(II)の塩の形態としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が例示される。
【0049】
(A)成分として共重合体を使用する場合、モノマー(I)と他のモノマーの構成比については、使用するモノマーの構造等によって異なるが、ドライアイに対する予防又は治療効果を有効に奏させるという観点から、通常、共重合体の全量に対して、モノマー(I)が50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%、更に好ましくは75〜85モル%が例示される。
【0050】
また、(A)成分として使用される重合体の分子量については、構成されるモノマーの種類等によって異なり、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り制限されないが、例えば、重量平均分子量が5千〜200万、好ましくは4万〜120万、更に好ましくは10万〜100万、特に好ましくは40万〜80万が挙げられる。重量平均分子量は、GPC分析によって測定される。
【0051】
モノマー(I)及びモノマー(II)は、公知の化合物であるか、又は公知の化合物から既知の方法(例えば、特開昭58-154591号公報、特開昭60-184093号公報、高分子論文集Vol.35, 423-427, 1978,社団法人高分子学会発行)で合成することができる。
【0052】
また、(A)成分として使用される重合体は、モノマー(I)及び必要に応じて他のモノマーを高分子化学の分野で公知の方法に従って重合反応することによって得ることができる。当該重合反応は、具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t-ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒等の適当な溶媒中で、重合開始剤の存在下、適当な温度条件下で一定時間重合させればよい。
【0053】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分の中で、好ましくは、モノマー(I)の重合体、モノマー(I)とモノマー(II)の共重合体;更に好ましくはMPC又はMPEの重合体、MPC又はMPEとHEMA又はBMAの共重合体;より更に好ましくは、MPCのホモ重合体、MPCとHEMAの共重合体、MPCとBMAの共重合体;特に好ましくはMPCとBMAの共重合体が例示される。尚、本明細書において、MPCのホモ重合体又はMPCとモノマー(II)の共重合体をMPCポリマーと称することもある。
【0054】
また、(A)成分として使用される重合体は、市販品を使用する事もでき、市販の(A)成分としては、日油株式会社製のLipidureシリーズ(商品名:「LIPIDURE-PMB(BG)」、「LIPIDURE-PMB(Ph10)」、「LIPIDURE-PMB」、「LIPIDURE-HM」、「LIPIDURE-HM-500」)等が挙げられる。
【0055】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分の配合割合は、眼科組成物-1の総量に対して、(A)成分が総量で0.001〜2w/v%の範囲内に設定されていればよいが、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、より好ましくは0.005〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜2w/v%、より更に好ましくは0.01〜1w/v%、特に好ましくは0.01〜0.5w/v%が例示される。ここで例示する(A)成分の配合割合は、SHCLへのメントールの吸着を抑制する、或いは非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制させるという観点からも、好適である。
【0056】
本発明の眼科組成物-1は、上記(A)成分に加えて、メントール(以下、単に(B-1)成分と表記することもある)を0.001〜0.02w/v%の割合で含有する。このように(A)成分と(B-1)成分を特定の割合で併用することによって、ヒスタミン遊離抑制作用を相乗的に増強して発揮させることが可能になる。また、このような(A)成分と(B-1)成分の併用は、SHCLへのメントール吸着抑制効果や非イオン性SHCLへの細胞接着抑制効果を得る上でも有効である。
【0057】
(B-1)成分として使用されるメントールについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されず、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、本発明において、(B-1)成分として、メントールを含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えばクールミント油、ペパーミント油、ハッカ油等が挙げられる。
【0058】
これらの(B-1)成分の内、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくは、l-メントール等が挙げられる。
【0059】
本発明の眼科組成物-1において、(B-1)成分の配合割合は、眼科組成物-1の総量に対して、(B-1)成分が総量で0.001〜0.02w/v%の範囲内に設定されていればよいが、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくは0.001〜0.015w/v%、更に好ましくは0.001〜0.01w/v%が例示される。ここで例示する(B-1)成分の配合割合は、SHCLへのメントールの吸着を抑制する、或いは非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制させる上でも有効である。なお、上記(B-1)成分として、メントールを含む精油を使用する場合は、配合される精油中のメントール含有量が上記配合割合を満たすように設定される。
【0060】
本発明の眼科組成物-1において、(A)成分に対する(B-1)成分の比率については、前述する配合割合を満たす限り特に制限されるものではないが、ヒスタミン遊離抑制作用を一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-1)成分の総量が0.02〜20000重量部、好ましくは0.2〜2000重量部、更に好ましくは0.2〜200重量部となる比率を充足することが望ましい。ここで例示する(B-1)成分の配合割合は、SHCLへのメントールの吸着を抑制する、或いは非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制させる上でも有効であるが、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制作用を一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-1)成分の総量が0.4〜100重量部が好適である。なお、上記(B-1)成分として、メントールを含む精油を使用する場合は、配合される精油中のメントール含有量が上記比率を満たすように設定される。
【0061】
本発明の眼科組成物-1は、(A)及び(B-1)成分以外に、更に緩衝剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-1に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等が挙げられる。これらの緩衝剤は組み合わせて使用しても良い。好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤であり、特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、及びリン酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等)、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)、アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤は、本願発明の効果をより一層高める点から好適に使用される。ホウ酸緩衝剤の中でも、特に好ましくはホウ酸及び/又はホウ砂であり、最も好ましくはホウ酸及びホウ砂を組み合わせて使用する態様が挙げられる。
【0062】
本発明の眼科組成物-1に緩衝剤を配合する場合、緩衝剤の配合割合については、使用する緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、眼科組成物-1の総量に対して、緩衝剤が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.1〜5w/v%、更に好ましくは0.5〜2w/v%となる割合が例示される。特に、緩衝剤がホウ酸緩衝剤である場合、例えば、眼科組成物-1の総量に対して、ホウ酸緩衝剤が総量で0.1〜5w/v%、好ましくは0.1〜3w/v%、更に好ましくは0.2〜2w/v%、特に好ましくは0.5〜2w/v%となる割合が例示される。
【0063】
本発明の眼科組成物-1は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-1に配合可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0064】
本発明の眼科組成物-1に配合可能な非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類;POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。また、本発明の眼科組成物-1に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン等が例示される。また、本発明の眼科組成物-1に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。また、本発明の眼科組成物-1に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等が例示される。本発明の眼科組成物-1において、これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、好ましくは非イオン性界面活性剤であり、特に好ましい界面活性剤としては、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、ポロクサマー407、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)である。
【0065】
本発明の眼科組成物-1に界面活性剤を配合する場合、界面活性剤の配合割合については、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて適宜設定できる。界面活性剤の配合割合の一例として、眼科組成物-1の総量に対して、界面活性剤が総量で、0.001〜1.0w/v%、好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.3w/v%が例示される。
【0066】
本発明の眼科組成物-1は、更に等張化剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-1に配合できる等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる等張化剤の具体例として、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0067】
本発明の眼科組成物-1に等張化剤を配合する場合、等張化剤の配合割合については、使用する等張化剤の種類等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、眼科組成物-1の総量に対して、等張化剤が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜2w/v%となる割合が例示される。
【0068】
本発明の眼科組成物-1のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明の眼科組成物-1のpHの一例として、4.0〜9.5、好ましくは5.0〜8.5、更に好ましくは5.5〜8.0となる範囲が挙げられる。
【0069】
また、本発明の眼科組成物-1の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の眼科組成物-1の浸透圧比の一例として、好ましくは0.7〜5.0、更に好ましくは0.9〜3.0、特に好ましくは1.0〜2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。浸透圧比測定用標準液は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0070】
本発明の眼科組成物-1には、上記の成分に加えて、種々の有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)を組み合わせて適当量含有させることができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等が例示できる。本発明において好適な薬理活性成分及び生理活性成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0071】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0072】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピンなど。
【0073】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0074】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩など、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、レボカバスチン又はその塩酸塩など、アンレキサノクス、イブジラスト、タザノラスト、トラニラスト、オキサトミド、スプラタスト又はそのトシル酸塩など、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウムなど。
【0075】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ユビキノン誘導体など。
【0076】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム、イプシロン−アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0077】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、アシクロビルなど。
【0078】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0079】
高分子化合物又はその誘導体:例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、デキストラン、ペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、マクロゴールおよびその薬学上許容される塩類など。
【0080】
セルロース又はその誘導体:例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースなど。
【0081】
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど。
【0082】
眼科組成物の分野において各種成分の配合割合は既知であり、本発明の該眼科組成物-1中の上記成分の配合割合は、該眼科組成物-1の剤型、薬理活性成分又は生理活性成分の種類等に応じて適宜設定される。例えば、薬理活性成分又は生理活性成分の配合割合は、眼科組成物-1の総量に対して0.0001〜30w/v%、好ましくは0.001〜10w/v%程度の範囲から選択できる。
【0083】
また、本発明の眼科組成物-1には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させることができる。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性又は油性基剤など)、香料又は清涼化剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、キレート剤、安定化剤等の各種添加剤を挙げることができる。以下に本発明の眼科組成物-1に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0084】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
【0085】
香料又は清涼化剤:例えば、テルペン類(具体的には、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)など。
【0086】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩など)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0087】
pH調節剤:例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸など。
【0088】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸など。
【0089】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリンなど。
【0090】
本発明の眼科組成物-1は、所望量の上記(A)及び(B-1)成分、及び必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。例えば、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、洗眼剤又はコンタクトレンズケア用剤の場合、精製水で前記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。メントール(テルペノイド)等の疎水性の高い成分の溶解に関しては、予め界面活性剤などの溶解補助作用のある成分とあわせて攪拌を行なってから、さらに精製水を加えて溶解又は懸濁させてもよい。
【0091】
本発明の眼科組成物-1は、その剤型については、眼科分野で使用可能である限り特に制限されないが、例えば、液状、軟膏状等が挙げられる。これらの中でも、液状が好ましい。本発明の眼科組成物-1を液状にする場合、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を水性担体として使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。これらの定義は第十五改正日本薬局方に基づく。
【0092】
また、本発明の眼科組成物-1は、点眼剤(但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、眼軟膏剤、洗眼剤(但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等が含まれる)等として使用することができる。これらの中でも、点眼剤、洗眼剤及びコンタクトレンズ装着液、特に点眼剤は、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態である。なお、本明細書において、単にコンタクトレンズと表記する場合には、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルレンズを含むあらゆるコンタクトレンズを包含する。
【0093】
また、後記する試験例2に示すように、本発明者らの研究により、SHCLは、シリコーン素材を含有しない従来のソフトコンタクトレンズよりも、メントールが著しく吸着し易いことが明らかとなっている。これに対して、本発明の眼科組成物-1によれば、(A)及び(B-1)成分を併用することによって、SHCLへのメントールの吸着を抑制でき、高い安全性をもってSHCLを装用することが可能になっている。このメントールの吸着抑制効果を鑑みれば、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態の一例としてSHCL装用中に点眼可能な点眼剤(SHCL用点眼剤)を挙げることもできる。また、特に、SHCLの中でも、イオン性SHCLは、非イオン性SHCLに比してメントールが吸着し易く、より高度なメントールの吸着抑制効果が要求されるが、本発明の眼科組成物-1によれば、イオン性SHCLへのメントールの吸着も効果的に抑制することができる。かかる特性を鑑みれば、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態の一例として、イオン性SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(イオン性SHCL用点眼剤)が挙げられる。なお、本明細書において、単にSHCLと表示する場合には、イオン性及び非イオン性の双方のSHCLが包含される。ここでイオン性SHCLとは、米国FDA(米国食品医薬品局)基準に則り、SHCL素材中のイオン性成分含有率が1mol%以上であるSHCLを指し、非イオン性SHCLとは、米国FDA(米国食品医薬品局)基準に則り、コンタクトレンズ素材中のイオン性成分含有率が1mol%未満であるSHCLを指す。
【0094】
また、後記する参考試験例2に示すように、本発明者らの研究により、ソフトコンタクトレンズの中でも非イオン性SHCLは、角膜上皮細胞が著しく接着し易いことが明らかとなっている。更に、上記(A)成分が単独で存在する場合には、非イオン性SHCLへの角膜上皮細胞の接着を殆ど抑制できず、また上記(B-1)成分が単独で存在する場合でも、非イオン性SHCLへの角膜上皮細胞の接着を十分に抑制できないことも、本発明者によって明らかにされている。このように角膜細胞の接着性が高いコンタクトレンズは、コンタクトレンズの装用時に角膜上でレンズに角膜細胞が接着して、レンズが動く度に、又はレンズを外す際等に、眼組織から該細胞を剥離させて、角膜表面の損傷やそれに伴う痛みを発生させる恐れがあり、ひいてはコンタクトレンズ使用者のQOL(Quality of Life)を著しく低下させることにもなりかねない。これに対して、本発明の眼科組成物-1によれば、上記(A)及び(B-1)成分を併用することによって、非イオン性SHCLの高い角膜細胞接着性を相乗的に抑制でき、高い安全性をもって非イオン性SHCLを装用することが可能になっており、非イオン性SHCLに特有の上記課題を解決することができる。即ち、本発明の眼科組成物-1は、非イオン性SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(非イオン性SHCL用点眼剤)として供給される場合には、ヒスタミン遊離抑制効果及びSHCLへのテルペノイドの吸着抑制効果に加えて、非イオン性SHCLへの角膜細胞接着抑制効果をも具備することができる。このような効果に鑑みれば、本発明の眼科組成物-1の好適な製剤形態の一例として非イオン性SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(非イオン性SHCL用点眼剤)を挙げることもできる。本発明の眼科組成物-1を用いて角膜上皮細胞接着抑制効果を発揮させる好適な適用対象の一例として、非イオン性SHCLの中でも、含水率が35%以下の非イオン性SHCLを挙げることができる。なお、SHCLはハイドロゲル素材を含むものであるため、少なくとも0%より多い水分を含む。
【0095】
ここでSHCLの含水率とは、SHCL中の水の割合を示し、具体的には以下の計算式により求められる。
【0096】
含水率(%)=(含水した水の重量/含水状態のSHCLの重量)×100
かかる含水率は、ISO18369-4:2006の記載に従って重量測定方法により測定され得る。
【0097】
本発明の眼科組成物-1が、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤(コンタクトレンズ用点眼剤)、コンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤(コンタクトレンズ用洗眼剤)、SHCL用点眼剤、イオン性SHCL用点眼剤、又は非イオン性SHCL用点眼剤の製剤形態である場合、各レンズを装着した眼にそのまま直接適用してもよく、また各レンズを装着する前に眼に適用してもよい。
【0098】
本発明の眼科組成物-1は、(A)及び(B-1)成分の相乗作用によってヒスタミン遊離抑制作用を発揮できるので、抗アレルギー(花粉用等)、かゆみ抑制、コンタクトレンズ装用時の不快感抑制等の用途で使用できる。また、本発明の眼科組成物-1は、上記(A)成分に基づいてドライアイや目の乾きの予防乃至治療に有効であり、ドライアイや目の乾きの改善にも有用である。
【0099】
本発明の眼科組成物-1を収容する容器は、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。本発明の眼科組成物-1を収容する容器として、プラスチック製を使用する場合、該プラスチック容器の構成材質については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体が挙げられる。また、上記共重合体としては、エチレン−2,6−ナフタレート単位、アリレート単位、エチレンテレフタレート単位、プロピレン単位、エチレン単位、イミド単位のいずれか1種を主体として、他のポリエステル単位、イミド単位を含む共重合体が挙げられる。
【0100】
2.眼科組成物-2
本発明の眼科組成物-2は、SHCL用として使用される眼科組成物である。
【0101】
本発明の眼科組成物-2は、一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を含有する。本発明の眼科組成物-2で使用される(A)成分の種類及び(A)成分の内の好適な例については、上記眼科組成物-1で使用される(A)成分と同様である。
【0102】
本発明の眼科組成物-2において、(A)成分の含有割合については、特に制限されないが、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を一層高めるという観点から、眼科組成物-2の総量に対して、(A)成分が総量で0.0001〜5w/v%、好ましくは0.001〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.01〜0.5w/v%、特に好ましくは0.02〜0.5w/v%が挙げられる。(A)成分の含有割合が上記範囲を充足すると、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を一層有効に抑制させる上でも有効であるが、特に0.05〜0.25w/v%である場合には非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制作用を格段に高めることが可能になる。
【0103】
本発明の眼科組成物-2は、(A)成分に加えて、テルペノイド(以下、(B-2)成分と表記することもある)を含有する。このように、(A)及び(B-2)成分を併用することによって、SHCLへのテルペノイドの吸着を有効に抑制することが可能になる。このような(A)成分と(B-2)成分の併用は、非イオン性SHCLへの細胞接着抑制効果を得る上でも有効である。
【0104】
(B-2)成分として使用されるテルペノイドについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。かかるテルペノイドとして、具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、本発明において、テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油等が挙げられる。これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0105】
これらの(B-2)成分の内、SHCLへのテルペノイドの吸着抑制作用又は非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくは、メントール、カンフル、ボルネオール等が挙げられ、これらを含有する好ましい精油としてクールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油等が例示される。より好ましくは、メントール、カンフル(d-カンフル、dl-カンフル等)が挙げられ、更に好ましくは、l-メントール、d-メントール、dl-メントール等のメントール類又はその誘導体が挙げられ、これらを含有する精油としては、クールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、が例示される。特に好ましくはl-メントールが挙げられる。
【0106】
本発明の眼科組成物-2において、(B-2)成分の含有割合については、特に制限されないが、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を一層高めるという観点から、眼科組成物-2の総量に対して、(B-2)成分が総量で0.0001〜1w/v%、好ましくは0.001〜0.08w/v%、更に好ましくは0.001〜0.05w/v%、特に好ましくは0.001〜0.02w/v%が挙げられる。(B-2)成分の含有割合が上記範囲を充足すると、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を一層有効に抑制させる上でも有効である。なお、上記(B-2)成分として、テルペノイドを含む精油を使用する場合は、配合される精油中のテルペノイド含有量の総量が上記含有割合を満たすように設定される。
【0107】
本発明の眼科組成物-2において、(A)成分に対する(B-2)成分の比率については、前述する含有割合を満たす限り特に制限されるものではないが、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が0.0002〜50000重量部、好ましくは0.02〜500重量部、更に好ましくは0.2〜500重量部となる比率を充足することが望ましい。また、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用を備えつつ、非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用をも一層高めるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が0.2〜5000重量部、好ましくは0.2〜2000重量部、更に好ましくは0.4〜100重量部となる比率を充足することが望ましい。
【0108】
また、眼科組成物-2において、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用又は非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用を備えつつ、更に優れたヒスタミン遊離抑制作用をも備えさせるという観点からは、(B-2)成分としてメントールを使用し、且つ眼科組成物-2の総量に対して、(A)成分の含有割合が0.001〜2w/v%、好ましくは0.005〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜2w/v%、特に好ましくは0.01〜1w/v%、最も好ましくは0.01〜0.5w/v%であり、(B-2)成分の含有割合が0.001〜0.02w/v%、好ましくは0.001〜0.015w/v%、更に好ましくは0.001〜0.01w/v%を充足することが望ましい。更に、テルペノイドのSHCLへの吸着抑制作用又は非イオン性SHCLへの細胞接着抑制作用を備えつつ、更に優れたヒスタミン遊離抑制作用をも備えさせるという観点からは、上記の(A)及び(B-2)成分の含有割合を具備しつつ、(A)成分と(B-2)成分の比率が、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が0.02〜20000重量部、好ましくは0.2〜2000重量部、更に好ましくは0.2〜200重量部となる比率を充足することが望ましい。
【0109】
本発明の眼科組成物-2は、(A)及び(B-2)成分以外に、更に緩衝剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-2で使用される緩衝剤の種類、緩衝剤の内の好適な例、緩衝剤の含有割合については、上記眼科組成物-1で使用される緩衝剤の場合と同様である。
【0110】
また、本発明の眼科組成物-2は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-2で使用される界面活性剤の種類、界面活性剤の内の好適な例、界面活性剤の含有割合については、上記眼科組成物-1で使用される界面活性剤の場合と同様である。
【0111】
更に、本発明の眼科組成物-2は、更に等張化剤を含有することが好ましい。本発明の眼科組成物-2で使用される等張化剤の種類、等張化剤の内の好適な例、等張化剤の含有割合については、上記眼科組成物-1で使用される等張化剤の場合と同様である。
【0112】
本発明の眼科組成物-2のpH及び浸透圧についても、上記眼科組成物-1と同様である。
【0113】
本発明の眼科組成物-2には、上記の成分に加えて、有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)、その他様々な成分や添加物等を配合することができる。これらの種類や含有割合等については、上記眼科組成物-1の場合と同様である。
【0114】
本発明の眼科組成物-2は、所望量の上記(A)及び(B-2)成分、及び必要に応じて他の含有成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。
【0115】
本発明の眼科組成物-2の剤型についても、上記眼科組成物-1の場合と同様である。
【0116】
本発明の眼科組成物-2は、SHCL用の眼科組成物として使用され、その製剤形態の具体例としては、SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(SHCL用点眼剤)、SHCL装用中に洗眼可能な洗眼剤(SHCL用洗眼剤)、SHCL装着液、SHCLケア用剤(SHCL消毒剤、SHCL用保存剤、SHCL用洗浄剤、SHCL用洗浄保存剤等が含まれる)等が例示される。なお、SHCL用点眼剤、SHCL用洗眼剤である場合、SHCLを装着した眼にそのまま直接適用してもよく、またSHCLを装着する前に眼に適用してもよい。
【0117】
これらの中でも、SHCL用点眼剤、SHCL用洗眼剤、SHCL用洗浄剤、SHCL装着液が好ましく、特にSHCL用点眼剤は、本発明の眼科組成物-2において好適な製剤形態である。
【0118】
また、SHCLの中でも、イオン性SHCLは、非イオン性SHCLに比してテルペノイドが吸着し易く、より高度なテルペノイドの吸着抑制効果が要求されるが、本発明の眼科組成物-2によれば、イオン性SHCLへのテルペノイドの吸着も効果的に抑制することができる。かかる特性を鑑みれば、本発明の眼科組成物-2の好適な製剤形態の一例として、好ましくはイオン性SHCL用眼科組成物、更に好ましくはイオン性SHCL用点眼剤、イオン性SHCL用洗眼剤、イオン性SHCL用洗浄剤、イオン性SHCL装着液、特に好ましくはイオン性SHCL用点眼剤が挙げられる。
【0119】
また、後記する参考試験例1に示すように、本発明者らの研究により、ソフトコンタクトレンズの中でも非イオン性SHCLは、角膜上皮細胞が著しく接着し易いことが明らかとなっている。そのため、非イオン性SHCLに対して適用される眼科組成物には、非イオン性SHCLへの角膜上皮細胞の接着抑制作用を備えていることが求められる。これに対して、本発明の眼科組成物-2によれば、上記(A)及び(B-2)成分を併用することによって、非イオン性SHCLの高い角膜細胞接着性を相乗的に抑制でき、高い安全性をもって非イオン性SHCLを装用することが可能になっている。かかる特性を鑑みれば、本発明の眼科組成物-2の好適な製剤形態の一例として、非イオン性SHCL用眼科組成物、更に好ましくは非イオン性SHCL用点眼剤、非イオン性SHCL用洗眼剤、非イオン性SHCL用洗浄剤、非イオン性SHCL装着液、特に好ましくは非イオン性SHCL用点眼剤が挙げられる。
【0120】
本発明の眼科組成物-2を非イオン性SHCL用眼科組成物として使用する場合、適用対象となる非イオン性SHCLの含水率については、特に制限されるものではないが、少なくとも0%より多く、且つ35%以下が例示される。ここで、用いる非イオン性SHCLの含水率の測定方法については、上記「眼科組成物-1」の欄に記載の方法が援用される。
【0121】
本発明の眼科組成物-2は、上記(A)成分に基づいてドライアイの予防乃至治療に有効であり、ドライアイの改善にも有用である。本発明の眼科組成物-2が、優れたヒスタミン遊離抑制作用を発現できる態様である場合には、抗アレルギー(花粉用等)、かゆみ抑制、コンタクトレンズ装用時の不快感抑制等の用途に使用できる。
【0122】
本発明の眼科組成物-2を収容する容器については、上記眼科組成物-1の場合と同様である。
【0123】
3.ヒスタミン遊離抑制作用の付与方法
前述するように、眼科組成物において、(A)及び(B-1)成分を特定の含有割合で併用することによって、相乗的に増強されたヒスタミン遊離抑制作用を備えさせることができる。
【0124】
従って、本発明は、更に別の観点から、眼科組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%を併用することを特徴とする、眼科組成物にヒスタミン抑制作用を付与する方法を提供する。
【0125】
この方法において、使用する(A)及び(B-1)成分の種類や含有割合や比率、その他に配合される成分の種類や含有割合、眼科組成物の製剤形態、眼科組成物を収容する容器の種類等については、前記「1.眼科組成物-1」と同様である。
【0126】
4.SHCLに対するテルペノイドの吸着抑制方法、SHCLに対するテルペノイドの吸着抑制作用を眼科組成物に付与する方法
前述するように、(A)及び(B-2)成分を組み合わせて使用することによって、SHCLに対するテルペノイドの吸着を抑制することができる。
【0127】
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-2)テルペノイドとを含有する眼科組成物と、SHCLとを接触させることを特徴とする、SHCLに対するテルペノイドの吸着を抑制する方法を提供する。また、本発明は、眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、SHCLに対するテルペノイドの吸着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法をも提供する。
【0128】
これらの方法において、使用する(A)及び(B-2)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、適用対象となるSHCLの種類等については、前記「2.眼科組成物-2」と同様である。
【0129】
5.非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制方法、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着抑制作用を眼科組成物に付与する方法
前述するように、(A)及び(B-2)成分を組み合わせて使用することによって、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を相乗的に抑制することができる。
【0130】
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-2)テルペノイドとを含有する眼科組成物と、非イオン性SHCLとを接触させることを特徴とする、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する方法を提供する。また、本発明は、眼科組成物に、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と共に、(B-2)テルペノイドを配合することを特徴とする、非イオン性SHCLに対する角膜上皮細胞の接着を抑制する作用を該眼科組成物に付与する方法をも提供する。
【0131】
これらの方法において、使用する(A)及び(B-2)成分の種類や含有割合、その他に配合される成分の種類や含有割合、適用対象となる非イオン性SHCLの種類等については、前記「2.眼科組成物-2」と同様である。
【実施例】
【0132】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
試験例1:ヒスタミン遊離抑制効果試験
10容量%ウシ胎児血清(インビトロジェン社製)を添加したDMEM培地(インビトロジェン社製)に懸濁したラット好塩基球細胞株(RBL-2H3)を1×105cells/cm2の密度で96ウェルマイクロタイタープレート(コーニング社製)に播種し、37℃、5%CO2下で24時間培養した。その後、培養上清を吸引除去し、表1乃至4に示す濃度となるよう被験物質を溶解したPIPES緩衝液を1ウェル当たり0.2mlずつ添加し、1時間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。PIPES緩衝液は、20mM PIPES(Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid;シグマ社製))及び0.1w/v%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を添加したハンクス平衡塩(インビトロジェン社製、組成:CaCl2 1.26 mM、MgCl2・6H2O 0.493mM、MgSO4・7H2O 0.407mM、KCl 5.33mM、KH2PO40.441mM、NaHCO3 4.17mM、NaCl 137.93mM、Na2HPO40.338mM)を用いた。その後1mM A23187(試薬:シグマ社製)を2μlずつ各ウェルに添加し、更に20分間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。各ウェルの上清を回収し、ヒスタミンの濃度をELISAキット(Oxford Biochemical Research社製)を用いて定量した。また、コントロールとして、被験物質を溶解しないPIPES緩衝液を1ウェル当たり0.2mlずつ添加し上記と同様に試験したものを用い、また、ブランクとして、A23187を添加しない以外はコントロールと同様に試験したものを用いて、同様にヒスタミン濃度を定量した。得られた各サンプルのヒスタミン濃度を用いて、下記の算出式に従ってヒスタミン遊離抑制率(%)を算出した。
【0134】
【数1】
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
得られた結果を図1〜図4に示す。MPCポリマー(0.0001〜2.0w/v%)単独の場合(比較例1-2〜1-8)では、ヒスタミン遊離抑制効果は認められなかった。また、メントール単独では、0.01 w/v%、0.001 w/v%又は0.02 w/v%の場合(比較例1-1、1-10及び1-11)にはヒスタミン遊離抑制効果が認められた。一方、MPCポリマー0.001〜2.0w/v%と、メントール0.001〜0.02w/v%をそれぞれ併用した場合(実施例1-1〜1-14)では相乗的にヒスタミンの遊離を抑制していることが確認された。なお、メントール濃度が0.05w/v%の場合、細胞毒性の為に正常なヒスタミン濃度の測定が不可能であった(測定不能)。
【0140】
参考試験例1:ヒスタミン遊離抑制効果試験
ヒスタミン遊離抑制作用が公知である塩酸ピリドキシンとMPCポリマーとの併用によるヒスタミン遊離抑制効果を評価するために、被験物質として、表5に示す濃度の塩酸ピリドキシン及びMPCポリマーを使用し、上記試験例1と同様の方法でヒスタミン遊離抑制率を求めた。
【0141】
【表5】
【0142】
得られた結果を図5に示す。図5に示されるように、塩酸ピリドキシンとMPCポリマーを併用しても、ヒスタミン遊離抑制効果の相乗的な向上は認められなかった。即ち、上記試験例1で認められたヒスタミン遊離抑制効果の相乗的な向上は、特定の含有割合でMPCポリマーとメントールを併用した場合に認められる特有の効果であることが明らかになった。
【0143】
試験例2:テルペノイドのSHCLへの吸着抑制試験
表6に示す2種類のSHCLを用いて以下の実験を実施し、SHCLへのテルペノイドの吸着性を評価した。なお、本試験に使用したSHCLは、いずれも市販品である。
【0144】
【表6】
【0145】
表6に示す2種のSHCLを72時間生理食塩液5mLに1枚を浸漬した(レンズの前処理)。また、表7に従って処方液を作成し、各処方液を6mL容量ヘッドスペースバイアルに5mLずつ充填した。この処方液に前処理済のSHCLを浸漬し、34℃で120回/minにて24時間振とうした。SHCLを引き上げ、100mL生理食塩液で軽くすすぐ事によりレンズ表面に付着した余分な溶液を除去した後、ヘッドスペースバイアルに5mLずつ充填した生理食塩水に移し、34℃で120回/minにて24時間振とうし、SHCLに吸着したテルペノイドを溶出させた。次いで、別のヘッドスペースバイアルに充填した生理食塩水にSHCLを移し、残った液を溶出液として回収した。溶出液に含まれるメントール及びカンフルをガスクロマトグラフィ法によって定量した(溶出1回目サンプル)。
【0146】
同様の操作を繰り返し、メントール及びカンフルが検出されなくなるまで溶出操作を繰り返した。溶出量を各成分毎に合計し、これをSHCLへのメントール及びカンフルの吸着量として算出した。
【0147】
【表7】
【0148】
得られた結果を図6及び7に示す。テルペノイド(メントール、カンフル)を含みMPCポリマーを含まない処方液(比較例2-1)では、両SHCLにおいて、メントール及びカンフルの吸着が確認された。また、イオン性SHCLと非イオン性SHCLとを比較すると、イオン性SHCLにおいてメントール及びカンフルは共に吸着量が多く、イオン性SHCLの方がテルペノイドの吸着という課題が大きいことが示された。
【0149】
一方、メントール及びカンフルと共にMPCポリマーを含む処方液(実施例2-1)では、SHCLへのメントール及びカンフルの吸着が顕著に抑制された。特に非イオン性SHCLでは、カンフルの吸着はほとんど見られなかった。
【0150】
参考試験例2:各種ソフトコンタクトレンズの角膜上皮細胞の接着性評価 表8に示す5種類のソフトコンタクトレンズを用いて以下の実験を実施し、ソフトコンタクトレンズ表面の角膜上皮細胞接着性を評価した。なお、本試験に使用したソフトコンタクトレンズは、いずれも市販品である。
【0151】
【表8】
【0152】
具体的に以下の方法により評価した。増殖用培地(10%ウシ胎児血清含有DMEM培地)を900μLずつ入れた24ウェルマイクロプレートに、各ソフトコンタクトレンズをそれぞれ凸面が上になるように一枚ずつ浸漬させた。各ウェルに、増殖用培地を用いて調整したウサギ角膜上皮細胞株SIRC(ATCC number:CCL-60)の細胞懸濁液(1×105cell/ml)を100μLずつ播種し、37℃、5%CO2条件下で48時間培養後、ソフトコンタクトレンズに接着した生存細胞数を計測した。なお、コントロールとして、いずれのレンズも浸漬させず、マイクロプレートの底面で細胞を培養し、ウェル中の生細胞数を計測した(コントロール群)。なお、生存細胞数の測定にはCell Counting Kit((株)同仁化学研究所製)を用いた。コントロール群のウェル中に含まれる生細胞の総数に対して、各ソフトコンタクトレンズ表面に接着している生細胞数の割合(コントロール群に対する生細胞数の割合;%)をそれぞれ算出した。
【0153】
得られた結果を図8に示す。図8から明らかなように、非イオン性SHCLであるレンズA及びBは、イオン性のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであるレンズCや非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであるレンズDまたはEと比較して、顕著な角膜上皮細胞接着性があることが確認された。また、細胞のソフトコンタクトレンズへの接着状況を顕微鏡で観察したところ、レンズC、D及びEには細胞接着が殆ど確認できなかったものの、レンズA及びBの表面には一面に角膜上皮細胞が接着していることが確認された。以上の結果より、非イオン性SHCLは、角膜上皮細胞の接着性が他の種類のレンズと比較して顕著に高いことが確認され、非イオン性SHCLの装用は角膜表面に損傷等の悪影響を与え得ることが明らかとなった。
【0154】
試験例3:角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制試験
上記表8に示すレンズBを用いて以下の実験を実施し、非イオン性SHCL表面への角膜上皮細胞接着性を評価した。具体的に以下の方法により評価した。増殖用培地(10%ウシ胎児血清含有DMEM培地)を用いて表9及び10に示す組成の処方液(実施例3-1〜3-4及び比較例3-1〜3-7)を無菌的に作製した。各処方液を24ウェルのマイクロプレートに1000μLずつ入れ、そこにSHCLを凸面を上にして浸漬させた。更に、増殖用培地を用いて調整したウサギ角膜上皮細胞株SIRC(ATCC number:CCL-60)の細胞懸濁液(1×105cell/ml)を100μLずつ播種し、37℃、5%CO2条件下で48時間培養後、非イオン性SHCLに接着した生存細胞数を計測した。なお、コントロールとして処方液の代わりにDMEM培地のみを用い、同様に非イオン性SHCLに接着した生存細胞数を計測した。コントロール群のウェル中でSHCL表面に接着した生細胞数と、各試験液中でSHCL表面に接着している生細胞数を比較し、下式に従い各試験液の角膜細胞接着抑制率をそれぞれ算出した(N=3)。なお、生存細胞数の測定にはCell Counting Kit((株)同仁化学研究所製)を用いた。
【0155】
【表9】
【0156】
【表10】
【0157】
ブランクとしては、SHCLと細胞を添加しないこと以外は、上記と同様に処理したものを用いた。
【0158】
【数2】
【0159】
得られた結果を図9〜12に示す。顕微鏡で観察したところ、コントロール群ではウェル中で非イオン性SHCL表面に角膜細胞が接着していることが確認された。
【0160】
また、図9〜12から明らかなように、MPCポリマー及びテルペノイドの双方を含む実施例3-1〜3-4の処方液では、MPCポリマー及びテルペノイドのいずれか一方のみを含む比較例3-1〜3-7処方液の場合と比較して、高い角膜上皮細胞接着抑制率が得られることが確認された。このことは、MPCポリマー及びテルペノイドを含有する眼科組成物を使用することにより、非イオン性SHCLが角膜表面に及ぼす損傷等の悪影響を抑制できることを実証している。
【0161】
参考試験例3:角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制試験
塩酸テトラヒドロゾリンとMPCポリマーとの併用による角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制効果を評価するために、被験物質として、表11に示す組成の試験液を使用し、上記試験例3と同様の方法で細胞接着抑制率を求めた。
【0162】
【表11】
【0163】
得られた結果を図13に示す。図13に示されるように、塩酸テトラヒドロゾリンとMPCポリマーを併用すると、塩酸テトラヒドロゾリン単独の場合に比して、却って非イオン性SHCL表面に角膜細胞が接着するのを促進する結果を招いた。即ち、上記試験例3で認められた角膜上皮細胞の非イオン性SHCLへの接着抑制効果は、MPCポリマーとテルペノイドを併用した場合に認められる特有の効果であることが明らかになった。
【0164】
製剤例1
含有割合(w/v%)
MPCホ゜リマー#1 0.5
L-メントール 0.01
塩化ナトリウム 0.5
塩化カリウム 0.1
ホウ酸 0.8
ホウ砂 0.2
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量 100mL
pH 7.0
#1 MPCホ゜リマーは、表1で使用したものと同じ。
【0165】
上記の製剤例1の眼科用組成物処方を常法に従って調製し、15mL容量PET製容器に15mL充填し、点眼剤、SHCL用点眼剤をそれぞれ製した。
【0166】
製剤例2
含有割合(w/v%)
MPCホ゜リマー#1 0.05
L-メントール 0.002
D-カンフル 0.001
塩化ナトリウム 0.8
ホウ酸 0.4
ホウ砂 0.1
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量 100mL
pH 7.5
#1 MPCホ゜リマーは、表1で使用したものと同じ。
【0167】
上記の製剤例2の眼科用組成物処方を常法に従って調製し、10mL容量PET製容器に10mL充填し、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、SHCL用点眼剤、SHCL用コンタクトレンズ装着液をそれぞれ製した。また、上記の容器に代えて、500mL容量PET製容器に500mL充填し、洗眼剤、SHCL用洗眼剤をそれぞれ製した。
【0168】
製剤例3
表12に記載の処方で、点眼剤(ソフトコンタクトレンズ装用中にも点眼可能な点眼剤)(実施例4−8)、SHCL用点眼剤(実施例9−14)、SHCL装着液(実施例15)、並びに洗眼剤(実施例16)、コンタクトレンズ用マルチパーパスソリューション(実施例17)が調製される。
【0169】
これらの製剤例の内、実施例4−13及び15−17は、本発明の眼科組成物-1の実施態様例であり、実施例9−17は、本発明の眼科組成物-2の実施態様例である。なお、実施例4−7、実施例10−17において配合されているMPCポリマーは、表1で使用したものと同じものである。また、実施例8−9において配合されているMPCポリマーは、商品名「LIPIDURE-HM」(日油株式会社製)を用いて処方量のMPCポリマー濃度となるよう配合した。
【0170】
【表12】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、
【化1】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%と
を含むことを特徴とする、眼科組成物。
【請求項2】
コンタクトレンズ用点眼剤である、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項3】
かゆみ抑制用である、請求項1又は2に記載の眼科組成物。
【請求項4】
コンタクトレンズ装用時の不快感抑制用である、請求項1乃至3のいずれかに記載の眼科組成物。
【請求項5】
(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【化2】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-2)テルペノイドと
を含むことを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項6】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、請求項5に記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項1】
(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体0.001〜2w/v%と、
【化1】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-1)メントール0.001〜0.02w/v%と
を含むことを特徴とする、眼科組成物。
【請求項2】
コンタクトレンズ用点眼剤である、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項3】
かゆみ抑制用である、請求項1又は2に記載の眼科組成物。
【請求項4】
コンタクトレンズ装用時の不快感抑制用である、請求項1乃至3のいずれかに記載の眼科組成物。
【請求項5】
(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【化2】
[式中、n1は2〜4の整数、R1は水素原子又はメチル基、R2は、−(R6O)n2−R6−で表される基(R6は炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-2)テルペノイドと
を含むことを特徴とする、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項6】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用点眼剤である、請求項5に記載のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−93898(P2011−93898A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221899(P2010−221899)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]