説明

眼鏡用ダミーレンズ

【課題】光線透過率および耐熱性に優れたポリ乳酸系樹脂からなる眼鏡用ダミーレンズを提供すること。
【解決手段】荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃以上であり、1mm厚の全光線透過率が80%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物からなる眼鏡用ダミーレンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡用ダミーレンズに関する。さらに詳しくは、光線透過率が高く、耐熱性に優れたポリ乳酸系樹脂からなる眼鏡用ダミーレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡店で販売に供されている眼鏡フレームには、ダミーレンズと呼ばれる仮レンズが嵌められている。
【0003】
このダミーレンズは、店頭陳列、保管、輸送時における眼鏡フレームの変形を防止し、また、眼鏡としての質感を顧客に訴えるためのものであり、欠かすことはできない。しかし、このダミーレンズは顧客が眼鏡フレームを使用する際には不要となり、廃棄される製品寿命が短い製品である。
【0004】
また、近年では、地球環境保全の見地から、再生可能資源である植物由来材料が注目されており、様々なポリマーが開発されている。これらのうち溶融成形が可能でかつ生分解性を有するポリマーとしてポリ乳酸樹脂が知られている。
【0005】
ポリ乳酸樹脂は、モノマーである乳酸をとうもろこしなどのバイオマスを原料として、微生物を利用した発酵法により安価に製造できるようになり、また、透明性を有し、融点はおよそ170℃と高く、溶融成形可能なバイオポリマーとして期待されている。
【0006】
また、ポリ乳酸樹脂はその透明性によって光学部品への応用が期待されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、眼鏡成形体としてポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系生分解樹脂を使用することが提案されている。しかし、特許文献1に提案されている樹脂は、耐熱性が不十分であり、輸送時に変形するなどの問題を有している。すなわち、ポリ乳酸樹脂は、ガラス転移温度が60℃付近にあり、この温度近傍での熱変形や剛性低下が大きいため、各種成形品として用いる場合には、通常の使用条件においても熱変形しやすく、また輸送時の熱履歴でも変形し、使用することが困難になる場合があるという問題がある。
【0008】
したがって、耐熱性に優れたポリ乳酸系材料の眼鏡用ダミーレンズが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−43537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、光線透過率および耐熱性に優れたポリ乳酸系樹脂からなる眼鏡用ダミーレンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の眼鏡用ダミーレンズは、上述した課題を解決するために、下記(1)に記載の構成を有する。
(1)荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃以上であり、1mm厚の全光線透過率が80%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物からなる眼鏡用ダミーレンズ。
また、かかる本発明の眼鏡用ダミーレンズにおいて、より好ましくは、以下の(2)または(3)の構成を採用するとよい。
(2)前記ポリ乳酸系樹脂組成物が、ポリ乳酸樹脂およびポリメチルメタクリレート樹脂を含んでいる上記(1)記載の眼鏡用ダミーレンズ。
(3)前記ポリ乳酸樹脂と前記ポリメチルメタクリレート樹脂の重量比(ポリ乳酸樹脂/ポリメチルメタクリレート樹脂)が60/40〜20/80であり、溶融混練されて成形された上記(2)記載の眼鏡用ダミーレンズ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光線透過率が高く、耐熱性に優れたポリ乳酸系樹脂からなる眼鏡用ダミーレンズを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の眼鏡用ダミーレンズは、荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃以上であり、1mm厚の全光線透過率が80%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0014】
本発明の眼鏡用ダミーレンズは、荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃以上であるポリ乳酸系樹脂組成物からなることから、通常の使用条件で変形することがなく、また、輸送時の条件下においても変形することがない。荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃未満であると、通常の使用時や輸送時に変形するため、本発明の目的を達成することが難しい。荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃以上であるポリ乳酸系樹脂組成物からなることから、荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度はより好ましくは65℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上であり、その上限は120℃までが好ましい。また、本発明の眼鏡用ダミーレンズは、1mm厚の全光線透過率が80%以上であり、著しく透明性に優れる。1mm厚の全光線透過率はより好ましくは87%以上であり、さらに好ましくは90%以上98%以下である。
【0015】
本発明で用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。
【0016】
本発明においては、耐熱性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分のうち、L体が80%以上含まれるかまたはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかまたはD体が90%以上含まれることがさらに好ましく、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれることが特に好ましく、L体が98%以上含まれるかまたはD体が98%以上含まれることが最も好ましい。
【0017】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは4万以上、さらに好ましくは8万以上、特に好ましくは10万以上であるのがよい。その上限は、特に制限されないが、好ましくは50万以下、さらに好ましくは30万以下、より好ましくは25万以下であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0018】
ポリ乳酸樹脂の融点については、特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
【0019】
ポリ乳酸樹脂の製造をする際の重合法としては、従来から知られている重合法を使用することができ、例えば、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを用いることができる。
【0020】
本発明で用いられるメタクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル成分単位を主成分、好ましくは70%以上含むものであればよく、他のビニル系単量体成分単位を好ましくは30%以下共重合した共重合体でもよい。その他のビニル系単量体としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸無水物、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸ジシクロペンタニル、ジアクリル酸ブタンジオール、ジアクリル酸ノナンジオール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ペンタメチルピペリジル、メタクリル酸テトラメチルピペリジル、メタクリル酸ベンジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられ、これらのビニル系単量体は単独または2種以上を用いることができる。また、耐熱性、低吸湿性、表面硬度の点で、ラクトン環、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物などの環構造単位を主鎖に含有する共重合体が好ましい。さらに、環構造を主鎖に含有する共重合体を用いる場合には、環構造を含有しないメタクリル系樹脂を併用することがより好ましい。
【0021】
本発明で用いられるメタクリル系樹脂は、好ましくは、重量平均分子量が5万〜45万のメタクリル系樹脂を使用することがよい。さらに、耐熱性および成形性の点で、重量平均分子量は7万〜20万が好ましく、9万〜15万がより好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたGPCで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0022】
本発明において、メタクリル系樹脂のガラス転移温度は、特に限定されないが、耐熱性の点で80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましく、110℃以上が特に好ましく、120℃以上が最も好ましい。上限は特に限定されないが、成形性の点で150℃以下が好ましい。ここでいうガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)測定により求めたガラス転移温度であり、ガラス転移温度領域における比熱容量変化が半分の値となる温度である。本発明においては、メタクリル系樹脂として、ガラス転移温度が110℃以上であるメタクリル系樹脂を少なくとも1種含むものであることが好ましい。
【0023】
本発明で用いるメタクリル系樹脂は、温度230℃でかつ37.2Nの荷重でのメルトフローレート(MFR)が、0.1〜40g/10分であることが好ましく、成形加工性の点で、1〜30g/10分であることがより好ましく、2〜20g/10分であることがさらに好ましい。MFRが0.1g/10分未満では、成形加工性が低下する傾向にあり、40g/10分を越えると耐熱性向上効果が低下する傾向にある。
【0024】
本発明において、ポリ乳酸樹脂とメタクリル系樹脂の配合比は、耐熱性および成形性の点で、重量比(ポリ乳酸樹脂/メタクリル系樹脂)が60/40〜20/80であることが好ましく、55/45〜25/75であることがより好ましく、50/50〜30/70であることが最も好ましい。
【0025】
メタクリル系樹脂の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができる。重合時の温度条件は特に限定されないが、メタクリル酸系樹脂の耐熱性の点で、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、−10℃以下が特に好ましい。
【0026】
本発明のポリ乳酸系樹脂においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、核化剤、あるいは帯電防止剤などを添加することができる。中でも、機械特性、成形性、耐熱性および透明性などに優れた樹脂組成物が得られるという点から、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、熱可塑性樹脂の離型剤に通常用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。離型剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂とメタクリル系樹脂の合計100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
【0027】
また、本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂に対して、本発明の効果が損なわれない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂など)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに配合することができる。
【0028】
本発明のポリ乳酸系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸樹脂、メタクリル系樹脂および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが用いられるが、生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、耐熱性の点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。その上で、特に荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃以上のポリ乳酸系樹脂組成物を得るためには、ポリ乳酸樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂の重量比が60/40〜20/80とすることが好ましく、重量比を50/50〜20/80とすることで、荷重たわみ温度を65℃以上とすることができるのでさらに好ましい。
【0029】
また、1mm厚の全光線透過率が80%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物を得るためには、実質的にポリ乳酸樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂以外の樹脂を含まないようにすることが重要であり、特に、ポリ乳酸樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂の重量比が60/40〜20/80であり、他の熱可塑性樹脂を含まないポリ乳酸系樹脂組成物とすることにより、全光線透過率を87%以上とすることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂について、飽和吸水率は特に限定されないが、ASTM D570に準じて測定した飽和吸水率が、0.4重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.2重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましい。上記飽和吸水率が、0.4重量%よりも大きい場合には、吸湿による変形が発生しやすく使用できなくなる可能性が大きくなるため好ましくない。飽和吸水率の下限は、特に制限されないが、一般には0.1重量%程度である。
【0030】
本発明のダミーレンズを成形するには、ポリ乳酸系樹脂を射出成形する方法により行うことができる。また、押出成形などの方法によってシートを成形し、そのシートを切削、打ち抜きなどにより成形してもよい。成形加工条件は、特に制限されないが射出成形の場合、成形温度が150〜250℃であることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。ここで、実施例中の配合比は重量%を示す。また、使用した原料および表中の符号を以下に示す。
(A)ポリ乳酸樹脂
(A−1)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、Mw15万)
(B)メタクリル系樹脂
(B−1)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックスLG21”Tg105℃、Mw8万、MFR21g/10分(230℃、37.2N))
(B−2)メタクリル樹脂(クラレ製“パラペット”HR−L、Tg117℃、Mw9万、MFR2g/10分(230℃、37.2N))
(C)その他樹脂
(C−1)ポリスチレン樹脂(PSジャパン社製 HF77)
【0032】
また、本発明で用いた測定方法および判定方法は、以下に示した通りである。
(1)耐熱性(荷重たわみ温度)
ASTM D648(0.45MPa)に準じて測定した。
(2)全光線透過率評価
1mm厚の板状試験片をJIS K7105に準じて測定した。
(3)引張強度
ASTM D638に準じて測定した。
【0033】
実施例1〜5、比較例1〜4
表1に示すようにポリ乳酸樹脂およびメタクリル系樹脂を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度200℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行いペレット状の樹脂組成物を得た。
【0034】
得た樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃で射出成形を行い、引張試験用ASTM1号ダンベル成形品、荷重たわみ温度測定用6.4mm厚成形品および5cm×5cm×1mmの板状成形品を得た。
【0035】
得られた成形品を用いて、各種評価を行った結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の実施例1〜5と比較例1〜3とを比較すると明らかなように、ポリ乳酸、メタクリル系樹脂を配合してなる本発明にかかる樹脂組成物は、全光線透過率、耐熱性、強度に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重0.45MPaで測定した荷重たわみ温度が60℃以上であり、1mm厚の全光線透過率が80%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物からなる眼鏡用ダミーレンズ。
【請求項2】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物が、ポリ乳酸樹脂およびポリメチルメタクリレート樹脂を含んでいる請求項1記載の眼鏡用ダミーレンズ。
【請求項3】
前記ポリ乳酸樹脂と前記ポリメチルメタクリレート樹脂の重量比(ポリ乳酸樹脂/ポリメチルメタクリレート樹脂)が60/40〜20/80であり、溶融混練されて成形された請求項2記載の眼鏡用ダミーレンズ。

【公開番号】特開2010−197761(P2010−197761A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43299(P2009−43299)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(502425400)株式会社アルケー (3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】