眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の洗浄用ラック
【課題】眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する成形型1を充分に洗浄できる眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】成形型1を洗浄用ラック2にレンズ成形面5,7が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面5,7に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持させる装填ステップS1を有する。前記洗浄用ラック2を洗浄液51中に浸漬して前記成形型1を洗浄する洗浄ステップS2を有する。前記洗浄用ラック2から取出した前記成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップS3とを有する。
【解決手段】成形型1を洗浄用ラック2にレンズ成形面5,7が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面5,7に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持させる装填ステップS1を有する。前記洗浄用ラック2を洗浄液51中に浸漬して前記成形型1を洗浄する洗浄ステップS2を有する。前記洗浄用ラック2から取出した前記成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップS3とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管用ケースから取出されて洗浄された成形型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを成形する眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の洗浄用ラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用プラスチックレンズは、注型重合法によって形成されることが多い。この注型重合法とは、成形用の型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合法による従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に開示されている眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に用いる前記成形用の型は、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するための成形型となる第1、第2のモールド部材と、これらのモールド部材どうしの相対的な移動を規制する支持部材とを備えている。前記第1、第2のモールド部材は、それぞれ円板状に形成されている。前記支持部材は、第1、第2のモールド部材が嵌合する円筒状に形成されている。
【0004】
前記第1のモールド部材と前記第2のモールド部材は、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材の中に装着される。このように支持部材に両モールド部材を装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティが形成される。前記支持部材には、キャビティ内にレンズ材料を注入するために注入口が設けられている。
その2
【0005】
このように構成された成形用の型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを製造するためには、先ず、前記キャビティ内にレンズ材料を注入し、レンズ材料が充填された成形用の型を加熱炉に入れてレンズ材料を重合させる。その後、前記型を分解して円板状のプラスチックレンズを取り出し、レンズ面に研磨や表面処理を施す。
成形用の型の一部を構成する前記第1、第2のモールド部材は、ガラス材料によって形成されており、複数回にわたって繰り返して使用されるものである。このため、第1、第2のモールド部材は、成形用の型から取出された後に洗浄させられ、種類別に分類されて専用の保管用ケースに収納されている。
【0006】
成形型の洗浄は、第1、第2のモールド部材を洗浄用ラックに載せた状態で洗浄液中に浸漬させて行われる。
従来の洗浄用ラックとしては、第1、第2のモールド部材を複数の保持部材の上に載せる構造のものや、第1、第2のモールド部材をアームで把持する構造のものがある。
前記保持部材は、第1、第2のモールド部材の外周部が嵌るように形成されており、第1、第2のモールド部材の周方向に間隔をおいて複数備えられている。
前記アームは、第1、第2のモールド部材のコバ面(外周面)をばねのばね力で挟むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法では、洗浄ステップで第1、第2のモールド部材(以下、単に成形型という)を充分に洗浄することができないという問題があった。この理由は、洗浄用ラックの保持部材やアームと接触している成形型の被支持部を洗浄することができないからである。
また、洗浄用ラックとして成形型の外周部が嵌る保持部材を備えているものを使用する場合は、調整作業が必要であるという問題があった。この調整作業は、成形型の外径に合わせて保持部材の位置を調整する作業である。
さらに、成形型を挟むアームを有する洗浄用ラックを使用する場合は、ばねのばね力が経年劣化により低下し、成形型が洗浄槽内で脱落してしまうおそれがあった。しかも、アームの可動部から生じた塵埃が洗浄後の成形型に付着するおそれもあった。
【0009】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する成形型を充分に洗浄できる眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することを第1の目的とする。また、外径が異なる成形型を使用する場合であっても調整作業が不要で、しかも、支持能力が低下したり塵埃が発生することがない成形型の洗浄用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、洗浄用ラックにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持させる装填ステップと、前記洗浄用ラックを洗浄液中に浸漬して前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとによって実施する。
【0011】
本発明は、上記発明において、前記洗浄用ラックは、複数の成形型が厚み方向に所定の間隔をおいて並ぶ状態で支持するものであり、前記装填ステップは、成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する保管用ケースの上に、成形型が装填されていない前記洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下が逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケースから前記洗浄用ラックに移す移載ステップとを有する眼鏡用プラスチックレンズの製造方法である。
【0012】
本発明は、上記発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の洗浄用ラックであって、前記成形型を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持する複数の支持部を備え、各支持部は、成形型の外周部分を挿入可能な形状であって、成形型に向けて開くV字状の切り欠きを用いて成形型を支持するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、成形型が洗浄用ラックに載せられた状態で遊動することによって、洗浄用ラックと接触していた成形型の被支持部が洗浄液に晒されて洗浄される。
したがって、本発明によれば、成形型を充分に洗浄することが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
本発明に係る成形型の洗浄用ラックは、V字状の切り欠きを用いて成形型を支持するものであるから、成形型の外径に応じて調整する作業は不要である。また、切り欠きによって成形型の外周部分が支えられるから、長期間にわたって使用しても成形型を支持する能力が低下することはなく、しかも、可動部がないために塵埃が発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】洗浄用ラックの正面図である。
【図3】洗浄用ラックの一部の平面図である。
【図4】洗浄用ラックの側面図である。
【図5】成形ステップを説明するための断面図である。
【図6】保管庫の正面図である。
【図7】ケース本体の正面図である。
【図8】ケース本体の側面図である。
【図9】図7におけるケース本体のIX−IX線断面図である。
【図10】ケース本体の平面図である。
【図11】ケース本体の底面図である。
【図12】ケース本体の斜視図である。
【図13】保管用ケースの側面図である。
【図14】ハンドルを保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【図15】保管用ケースと成形型の正面図である。
【図16】保管用ケースにケース本体を取付けたり取外すときの状態を説明するための側面図である。
【図17】ガイド部材を保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【図18】ラック接続ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの正面図ずである。
【図19】移載ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの断面図である。
【図20】移載ステップにおいて反転作業が終了した後の状態の保管用ケースと洗浄用ラックの正面図である。
【図21】洗浄ステップを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の洗浄用ラックの一実施の形態を図1〜21によって詳細に説明する。
本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、図1のフローチャートに示すように、装填ステップS1と、洗浄ステップS2と、成形ステップS3とをこの順序で実施する方法である。
【0016】
[装填ステップS1]
前記装填ステップS1は、図1に示すように、成形型1を洗浄用ラック2に装填するステップである。前記成形型1は、図5に示すように、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための型3の一部として使用するものである。
図5に示す型3は、前記成形型1としての第1、第2の成形型1A,1Bと、これらの成形型どうしの相対的な移動を規制する支持部材4とを備えている。前記第1、第2の成形型1A,1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するためのもので、ガラス材料によってそれぞれ円板状に形成されている。第1の成形型1Aは、眼鏡用プラスチックレンズの凸面を成形するためのもので、凹面からなるレンズ成形面5と、レンズ成形面ではない凸面6とが形成されている。第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの凹面を成形するためのもので、凸面からなるレンズ成形面7と、レンズ成形面ではない凹面8とが形成されている。
前記支持部材4は、第1、第2の成形型1A,1Bが嵌合する円筒状に形成されている。
【0017】
前記第1の成形型1Aと前記第2の成形型1Bは、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材4の中に装着される。このように支持部材4に両成形型1A,1Bを装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティ9が形成される。前記支持部材4には、キャビティ9内にレンズ材料を注入するために注入口4aが形成されているとともに、レンズ材料注入用の注入補助部材4bが取付けられている。
前記第1の成形型1Aと第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの成形工程が終了した後に前記支持部材4から取外され、図2〜図4に示すように洗浄用ラック2に装填されて洗浄させられる。成形後の成形型を洗浄する場合は、「装填ステップS1」において、成形型が洗浄用ラック2に作業者によって1枚ずつ装填される。
【0018】
前記洗浄用ラック2は、成形型1をそのレンズ成形面が上下方向に延びるように立てた状態で洗浄液中に浸漬させるためのものである。この実施の形態による洗浄用ラック2は、図2〜図4に示すように、成形型1を支持する第1〜第5の支持部11〜15と、これらの第1〜第5の支持部11〜15を支持する支持用フレーム16とによって構成されている。支持用フレーム16は、前側支持板17と後側支持板18とを4本のロッド19〜22で連結することによって形成されている。この明細書においては、洗浄用ラック2に支持される成形型1の厚み方向を指向する水平方向を便宜上、前後方向として説明する。また、以下においては、前記前後方向において、成形型1の凸面が指向する方向(図3や図4においては左方)を前方といい、これとは反対方向を後方という。さらに、前記前後方向において、成形型1の凸面側を前側といい、これとは反対側を後側という。
【0019】
この実施の形態による前記第1〜第5の支持部11〜15は、それぞれ支持片23と、この支持片23を支持する支持用ロッド24とによって構成されている。前記支持片23は、プラスチック材料からなる板によって形成されている。この実施の形態による支持片23には、図3および図4に示すように、成形型1に向けて開くV字状を呈する切り欠き25が前後方向(成形型1の厚み方向)に等間隔に並ぶ状態で形成されている。
前記切り欠き25は、成形型1のレンズ成形面とは離間する状態で成形型1の外周部分を挿入可能な形状であって、かつ成形型1が前後方向に傾斜(遊動)できるような形状に形成されている。
【0020】
この切り欠き25を有する支持片23は、前後方向に延びる前記支持用ロッド24に沿わせて固定されている。支持用ロッド24の両端部は、支持用フレーム16の前側支持板17と後側支持板18とに取付けられて支持されている。
前記支持片23と前記支持用ロッド24とからなる第1〜第5の支持部11〜15は、成形型1の周方向に所定の間隔をおいて離間する状態で配置されている。第1〜第5の支持部11〜15のうち、第3の支持部13は、成形型1の下端と対応する位置に配置され、第1の支持部11と第5の支持部15は、成形型1の上下方向の中央部と対応する位置に設けられている。第2の支持部12と第4の支持部14は、前記成形型1の下端と上下方向の中央部との間の中間となる位置に設けられている。
【0021】
また、第1〜第5の支持部11〜15の支持片23は、切り欠き25が成形型1の周方向に並ぶように位置付けられている。第1、第5の支持部11,15の支持片23は、図2に示すように、前後方向から見て成形型の中心より僅か上方を指向するように傾斜している。第2〜第4の支持部12〜14の支持片23は、前記前後方向から見て上下方向に延びるように設けられている。
【0022】
このように構成された洗浄用ラック2は、成形型1を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持するものとなる。また、この洗浄用ラック2は、V字状の切り欠き25に成形型1の外周部を挿入して成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径が変わったとしても支持状態が変化するようなことはない。
【0023】
成形型1は、上述したように成形後に洗浄させられるだけでなく、新たにプラスチックレンズの成形を行うために保管庫26(図6参照)から取出された後にも洗浄させられる。成形型1は、保管庫26で保管されるときは、図6に示すような保管用ケース31に収納される。
この実施の形態で用いる保管用ケース31は、図7〜図12に示すケース本体32を所定の数だけ一列に並べて互いに連結することによって形成されている。この保管用ケース31は、詳細は後述するが、成形型1を保管庫26で保管するための機能と、上述した洗浄用ラック2に成形型1を移す治具としての機能とを有している。
【0024】
前記ケース本体32は、図7〜図13に示すように、成形型1(第1の成形型1Aまたは第2の成形型1B)をそのレンズ成形面5,7が上下方向に延びる状態で1枚だけ収納できるように形成されている。図7には、外径が相対的に大きい成形型と、外径が相対的に小さい成形型とを図示してあるが、ケース本体32に支持できる成形型1の数は1枚である。図7〜図10および図13中に示す成形型1は、第2の成形型1Bである。前記保管用ケース31は、複数のケース本体32を成形型1の厚み方向に重ねて互いに連結させることによって形成されている。
【0025】
この実施の形態によるケース本体32は、プラスチック材料によって所定の形状に形成されている。このケース本体32には、後述する複数の機能部分が一体成形によって一体に形成されている。
前記複数の機能部分とは、図7に示すように、ケース本体32の最下部に位置する底壁部33と、この底壁部33の両端部分から上方に延びる一対の側壁部34と、これらの底壁部33と側壁部34とによって囲まれた位置にある第1〜第3の支持部35〜37などである。前記底壁部33は、ケース本体32を保管庫26や作業台(図示せず)などに載せたときの載置の安定を図る機能を有している。この実施の形態による底壁部33は、上方から見て成形型1の径方向に長い長方形状に形成されている。底壁部33の下面は平坦に形成されている。また、底壁部33には、図10および図11に示すように、二つの貫通孔38が形成されている。底壁部33の前後方向の長さは、洗浄用ラック2の支持片23に形成されている複数の切り欠き25の間隔と等しい長さに形成されている。
【0026】
前記側壁部34は、前記底壁部33の長手方向の両端部分から上方に延びるように形成されている。すなわち、側壁部34は、ケース本体32に収納された成形型1の厚み方向(前後方向)とは直交する水平方向の両側から前記成形型1と対向している。これらの二つの側壁部34,34どうしの間隔は、最も外径が大きい成形型1の外径より大きくなるように形成されている。
この側壁部34は、成形型1がケース本体32内から前記水平方向の外側に脱落することを防ぐ機能と、他のケース本体32と連結する機能と、後述する搬送用ハンドル39(図14参照)を取付ける機能などを有している。
【0027】
これらの側壁部34の機能のうち、他のケース本体32と連結する機能は、図8および図9に示すように、側壁部34の外側部分に設けられた複数の突起40と複数の穴41とによって実現されている。複数の突起40は、各側壁部34において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられているとともに、前方へ突出するように設けられている。また、これらの突起40は、先端側が基端側より僅かに細い円柱状に形成されている。円柱の軸線方向は、前記前後方向と平行である。
【0028】
前記複数の穴41は、各側壁部34において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられている。また、これらの穴41は、他のケース本体32の突起40が嵌合するように形成されている。すなわち、各側壁部34に2つ設けられている突起40が他のケース本体32の穴41に嵌合することによって、2つのケース本体32どうしが互いに連結される。保管用ケース31は、図13に示すように、複数のケース本体32を互いに連結することによって構成されている。
【0029】
側壁部34の複数の機能のうち、搬送用ハンドル39を取付ける機能は、前記側壁部34の上端部に設けられた側面視U字状のリブ42によって実現されている。前記搬送用ハンドル39は、図14に示すように、パイプを所定の形状に折り曲げて形成されている。このハンドル39は、保管用ケース31の長手方向の両端側に位置する把持部39aと、これらの把持部39aどうしを接続する接続部39bとによって構成されている。前記接続部39bは、各ケース本体32の前記リブ42と、このリブ42の下方に位置する第1の凸部43との間に挿入されている。第1の凸部43は、前記側壁部34に前記リブ42の下方で側方に突出するように形成されている。第1の凸部43の前端部には、上側の前記突起40が形成され、後端部には上側の前記穴41が形成されている。この搬送用ハンドル39を保管用ケース31に取付けた状態においては、作業者が前記把持部39aを両手で把持して保管用ケース31を運ぶことができる。
【0030】
前記第1〜第3の支持部35〜37は、ケース本体32内で成形型1をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持するためのものである。
第1の支持部35は、図7、図9および図12に示すように、前記底壁部33から上方に延びる2枚の内側支持片44,44と2枚の外側支持片45,45とによって構成されている。これらの内側支持片44と外側支持片45は、それぞれ前記前後方向とは直交する水平方向の二箇所に対をなすように設けられている。
【0031】
前記内側支持片44は、外径が相対的に小さい成形型1を支持するためのものである。前記外側支持片45は、外径が相対的に大きい成形型1を支持するためのものである。
内側支持片44および外側支持片45の上端部には、それぞれ前記前後方向に延び、かつ上方に向かうにしたがって次第に前方に傾斜して延びる傾斜面44a,45aが形成されている。すなわち、傾斜面44a,45aは、いずれも前上がりに傾斜している。
【0032】
成形型1は、凸面が前方を指向する状態でケース本体32内に上方から挿入され、前記傾斜面44a,45aの上に載せられる。傾斜面44a,45aの傾斜角度は、成形型1の下端部後面が後述する第2の支持部36に接触している状態において、内側支持片44または外側支持片45が成形型1の凸面と接触することがない角度に設定されている。すなわち、成形型1が内側支持片44または外側支持片45に載せられたときに内側支持片44または外側支持片45と接触する部分は、成形型1の凸面と外周面とに挟まれた角部46(図9参照)である。言い換えれば、前記傾斜面44a,45aは、前記角部46のみが載せられるように前上がりに傾斜している。
【0033】
前記第2の支持部36は、図7、図9および図12に示すように、前記底壁部33から上方に延びる板によって形成されている。この第2の支持部36は、前記前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。また、この第2の支持部36は、図7に示すように、前記一対の内側支持片44どうしの間に形成されている。すなわち、第2の支持部36は、前後方向から見て前記一対の内側支持片44どうしの間で下方に延びる成形型1の下端部47に前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0034】
前記第3の支持部37は、前記側壁部34からケース本体32の内側に延びる板状に形成されている。第3の支持部37は、前後方向において前記第2の支持部36と同じ位置で、前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。第3の支持部37の前記水平方向の幅と上下方向の長さは、図7に示すように、前後方向から見て、前記第1の支持部35に載せられた成形型1における前記水平方向の両端部と重なるように形成されている。すなわち、第3の支持部37は、前記成形型1の外周縁部に第2の支持部36より高い位置で前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0035】
成形型1をケース本体32に収納させるためには、図15に示すように、上方からケース本体32内に挿入して行う。このようにケース本体32内に成形型1を挿入すると、成形型1の下端部に位置する前記角部46が内側支持片44または外側支持片45に接触する。成形型1が内側支持片44または外側支持片45の上部に接触した場合は、成形型1を前記傾斜面44a,45aに沿って後斜め下に向けて滑らせ、成形型1の下端後縁を前方から第2の支持部36に接触させる。成形型1は、このように前記角部46が内側支持片44または外側支持片45に載せられている状態で凹面側の下端後縁が第2の支持部36に接触することによって、前方への傾斜が規制された状態で第1、第2の支持部35,36に保持される。
【0036】
この保持状態においては、第3の支持部37が第1、第2の支持部35,36より上方において、成形型1における凹面側の後縁と対向する。すなわち、成形型1の後方への傾斜は、第3の支持部37によって規制される。
このため、成形型1は、前方と後方への傾斜が規制された状態であって、レンズ成形面がケース本体32と接触することがない状態でケース本体32に支持される。
【0037】
成形型1を収納したケース本体32は、図13に示すように、前後方向に並べられて互いに連結させられる。保管用ケース31は、このように複数のケース本体32を結合させたものである。ケース本体32に収納する成形型1は、眼鏡用プラスチックレンズの成形が終了して洗浄された後のものや、新品の成形型などである。保管庫26に収納する保管用ケース31には、同一種類の成形型1のみが収納される。すなわち、成形型1は、保管用ケース31毎に分類されて保管庫26に収容されている。この成形型1は、使用するときに保管庫26から保管用ケース31とともに取出される。
【0038】
この保管用ケース31に収納されている成形型1を使用してプラスチックレンズを成形するためには、後述するラック接続ステップS1A(図1参照)と移載ステップS1Bとを実施して成形型1を前記洗浄用ラック2に移し替え、その後、洗浄ステップS2で洗浄する。
大量生産を行う場合などで保管庫26から取り出した保管用ケース31内の全ての成形型1を使用するときは、この保管用ケース31を用いて後述するラック接続ステップS1Aを実施する。
【0039】
多くの種類の成形型1を比較的少数ずつ使用して多品種少量生産を行う場合は、後述するラック接続ステップS1Aを実施するために多品種少量生産用の保管用ケース31が作られる。多品種少量生産用の保管用ケース31を作るためには、先ず、保管庫26から取り出した保管用ケース31から必要な個数だけケース本体32を取出す。このように成形型1を保管用ケース31から取出すときは、図16に示すように、保管用ケース31の一端部31aに位置するケース本体32を保管用ケース31から分離させて行う。保管用ケース31から分離されたケース本体32は、新たに多品種少量生産用の保管用ケース31を形成するために、集めて互いに連結される。この新たな保管用ケース31は、後述するラック接続ステップS2で洗浄用ラック2を接続するために、例えば作業台の上に移される。
【0040】
一方、使用後の成形型1(眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型であって保管庫26に戻される予定の成形型)や、補充のための新品の成形型1は、それぞれケース本体32に収納された後、同じ種類の成形型1が収容された保管用ケース31に戻される。このとき、使用後の成形型1や新品の成形型1を収納したケース本体32は、前記保管庫26に収容される保管用ケース31の他端部31b(図16参照)に位置するケース本体32に連結される。保管用ケース31には、図17に示すように、上述したように保管用ケース31の一端部31aからケース本体32を取出したり、保管用ケース31の他端部31bにケース本体32を連結する作業を容易に行うことができるように、一対のガイド部材48を取付けることができる。
【0041】
これらのガイド部材48は、それぞれ保管用ケース31の一端部31aから他端部31bまで延びる断面C字状の棒状に形成されており、各ケース本体32の両側部に形成された第2の凸部49を移動自在に保持している。第2の凸部49は、図7示すように、前記側壁部34に前記第1の凸部43の下方で側方に突出するように形成されている。第2の凸部49の前端部には、下側の前記突起40が形成され、後端部には下側の前記穴41が形成されている。
【0042】
ガイド部材48を使用する場合、ケース本体32を保管用ケース31から取出すためには、各ケース本体32をガイド部材48に対して保管用ケース31の一端部31a側に移動させ、ガイド部材48から突出したケース本体32を分離させる。このようにすると、保管用ケース31の他端部31b側にガイド部材48が突出するようになり、2本のガイド部材48どうしの間に新たなケース本体32を挿入できるようにスペースが形成される。ケース本体32を保管用ケース31に取付ける場合は、ケース本体32を前記スペースに挿入して行う。
【0043】
[ラック接続ステップS1A]
ラック接続ステップS1Aは、図18に示すように、上述した洗浄用ラック2を前記保管用ケース31に接続するステップである。
ラック接続ステップS1Aにおいては、図18に示すように、前記洗浄用ラック2を前記保管用ケース31の上に重ねて載せる。洗浄用ラック2を保管用ケース31に重ねるにあたっては、洗浄用ラック2の上部(成形型1を挿入する部分)が下に位置するように、洗浄用ラック2を上下方向に反転させた倒立状態で行う。また、このときの作業は、保管用ケース31内の成形型1と洗浄用ラック2の切り欠き25とが上下方向に並ぶように行う。
【0044】
[移載ステップS1B]
移載ステップS1Bは、図19および図20に示すように、前記保管用ケース31に収納されている成形型1を前記洗浄用ラック2に移すステップである。この移載ステップS1Bにおいては、上述したラック接続ステップS1Aで保管用ケース31の上に洗浄用ラック2を重ねて載せた後、これらの保管用ケース31と洗浄用ラック2とを上と下とが逆に位置するように上下方向に反転させる。この反転作業は、図19に示すように、先ず、保管用ケース31の第2、第3の支持部36,37が下に位置するように保管用ケース31と洗浄用ラック2とを傾斜させ、成形型1を第2、第3の支持部36,37の上に載せる。
【0045】
そして、保管用ケース31と洗浄用ラック2とを洗浄用ラック2が下に位置するように更に傾斜させ、成形型1を第3の支持部37の上で滑らせて洗浄用ラック2の中に移動させる。その後、洗浄用ラック2の上に保管用ケース31が載るように洗浄用ラック2を起立させて正立の状態とし、この洗浄用ラック2の上から保管用ケース31を上方に外す。このように保管用ケース31が洗浄用ラック2から外されることによって、移載ステップS1Bが終了する。
【0046】
[洗浄ステップS2]
洗浄ステップS2は、図21に示すように、前記洗浄用ラック2に移された前記成形型1を洗浄液51中に浸漬させて洗浄するステップである。この洗浄ステップS2において、洗浄用ラック2は、洗浄装置52に支持されて洗浄槽53内に挿入される。洗浄槽53内には、予め所定の洗浄液51が溜められている。また、洗浄用ラック2は、洗浄装置52によって洗浄槽53内で前後方向または左右方向に揺動または水平移動させられる。なお、この洗浄槽53としては、超音波を発生させる装置を備えたものを用いることができる。
【0047】
成形型1は、洗浄液51中に浸漬された状態で洗浄用ラック2が揺れることによって、支持片23に支えられながら下端を支点として上部が前後方向に揺動するように遊動する。このため、成形型1と支持片23との接触点が一点に固定されることはなく、移り変わるようになる。このことは、成形型1の全ての部位を洗浄液51に晒すことができることを意味する。したがって、この洗浄ステップS2においては、洗浄液51で洗浄されることがない部位を残すことなく成形型1を洗浄することができる。
洗浄が終了した成形型1は、洗浄用ラック2に収納された状態で次の成形ステップS3を実施する成形装置(図示せず)に送られる。
【0048】
[成形ステップS3]
成形ステップS3は、前記洗浄用ラック2から取出した前記成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形するステップである。
この成形ステップS3は、図5に示すように、成形型1(第1の成形型1Aと第2の成形型1B)を支持部材4に組付け、支持部材4内に注入補助部材4bからレンズ材料(図示せず)を注入して実施する。
【0049】
この実施の形態による眼鏡用プラスチックレンズの製造方法においては、成形型1が遊動可能な状態で洗浄用ラック2に支持されており、洗浄ステップS2で洗浄用ラック2とともに洗浄槽53に漬けられて洗浄される。そして、成形型1は、洗浄ステップS2で洗浄用ラック2に載せられた状態で遊動することによって、洗浄用ラック2と接触していた成形型1の被支持部が洗浄液に晒されて洗浄される。
したがって、この実施の形態によれば、成形型1を充分に洗浄することが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0050】
この実施の形態による成形型1の洗浄用ラック2は、V字状の切り欠き25を用いて成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径に応じて調整する作業は不要である。また、切り欠き25によって成形型1の外周部分が支えられるから、長期間にわたって使用しても成形型1を支持する能力が低下することはなく、しかも、可動部がないために塵埃が発生することもない。
【0051】
また、この実施の形態による洗浄用ラック2は、複数の成形型1を、厚み方向に所定の間隔をおいて並ぶように、かつレンズ成形面に接触することがないように支持するものである。また、この実施の形態による前記装填ステップS1は、成形型1がレンズ成形面に非接触の状態で収納された保管用ケース31の上に洗浄用ラック2を上と下が逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップS1Aと、これらの保管用ケース31および洗浄用ラック2を上と下が逆に位置するように反転させる移載ステップS1Bとを有している。
【0052】
このため、成形型1を保管用ケース31から洗浄用ラック2に移すにあたって、成形型1を手で持つ必要がなく、保管用ケース31に洗浄用ラック2を載せて上下方向に反転させる簡単な作業で行うことができる。保管用ケース31と洗浄用ラック2は、成形型1をレンズ成形面5,7に接触することがないように支持できるものであるから、レンズ成形面5,7が傷つくこともない。
したがって、この実施の形態によれば、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型1を保管用ケース31から洗浄用ラック2に速くかつレンズ成形面5,7を傷つけることなく移すことができ、生産性の向上を図ることが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0053】
この実施の形態による成形型1の洗浄用ラック2は、成形型1を、レンズ成形面5,6が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面5,6に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持する第1〜第5の支持部11〜15を備えている。各支持部11〜15は、成形型1の外周部分を挿入可能な形状であって、成形型1に向けて開くV字状の切り欠き25を用いて成形型1を支持するものである。
このため、この洗浄用ラック2においては、V字状の切り欠き25を用いて成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径に応じて調整する作業は不要である。また、この洗浄用ラック2は、成形型1の外周部分が切り欠き25内に挿入されて支えられるものであり、ばねを使用していないから、成形型1を支持する能力が経年劣化で低下することはなく、しかも、可動部がないために塵埃が発生することもない。
【符号の説明】
【0054】
1…成形型、2…洗浄用ラック、5,7…レンズ成形面、11〜15…第1〜第5の支持部、23…支持片、25…切り欠き、31…保管用ケース、32…ケース本体、S1…装填ステップ、S1A…ラック接続ステップ、S1B…移載ステップ、S2…洗浄ステップ、S3…成形ステップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管用ケースから取出されて洗浄された成形型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを成形する眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の洗浄用ラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用プラスチックレンズは、注型重合法によって形成されることが多い。この注型重合法とは、成形用の型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合法による従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に開示されている眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に用いる前記成形用の型は、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するための成形型となる第1、第2のモールド部材と、これらのモールド部材どうしの相対的な移動を規制する支持部材とを備えている。前記第1、第2のモールド部材は、それぞれ円板状に形成されている。前記支持部材は、第1、第2のモールド部材が嵌合する円筒状に形成されている。
【0004】
前記第1のモールド部材と前記第2のモールド部材は、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材の中に装着される。このように支持部材に両モールド部材を装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティが形成される。前記支持部材には、キャビティ内にレンズ材料を注入するために注入口が設けられている。
その2
【0005】
このように構成された成形用の型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを製造するためには、先ず、前記キャビティ内にレンズ材料を注入し、レンズ材料が充填された成形用の型を加熱炉に入れてレンズ材料を重合させる。その後、前記型を分解して円板状のプラスチックレンズを取り出し、レンズ面に研磨や表面処理を施す。
成形用の型の一部を構成する前記第1、第2のモールド部材は、ガラス材料によって形成されており、複数回にわたって繰り返して使用されるものである。このため、第1、第2のモールド部材は、成形用の型から取出された後に洗浄させられ、種類別に分類されて専用の保管用ケースに収納されている。
【0006】
成形型の洗浄は、第1、第2のモールド部材を洗浄用ラックに載せた状態で洗浄液中に浸漬させて行われる。
従来の洗浄用ラックとしては、第1、第2のモールド部材を複数の保持部材の上に載せる構造のものや、第1、第2のモールド部材をアームで把持する構造のものがある。
前記保持部材は、第1、第2のモールド部材の外周部が嵌るように形成されており、第1、第2のモールド部材の周方向に間隔をおいて複数備えられている。
前記アームは、第1、第2のモールド部材のコバ面(外周面)をばねのばね力で挟むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法では、洗浄ステップで第1、第2のモールド部材(以下、単に成形型という)を充分に洗浄することができないという問題があった。この理由は、洗浄用ラックの保持部材やアームと接触している成形型の被支持部を洗浄することができないからである。
また、洗浄用ラックとして成形型の外周部が嵌る保持部材を備えているものを使用する場合は、調整作業が必要であるという問題があった。この調整作業は、成形型の外径に合わせて保持部材の位置を調整する作業である。
さらに、成形型を挟むアームを有する洗浄用ラックを使用する場合は、ばねのばね力が経年劣化により低下し、成形型が洗浄槽内で脱落してしまうおそれがあった。しかも、アームの可動部から生じた塵埃が洗浄後の成形型に付着するおそれもあった。
【0009】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する成形型を充分に洗浄できる眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することを第1の目的とする。また、外径が異なる成形型を使用する場合であっても調整作業が不要で、しかも、支持能力が低下したり塵埃が発生することがない成形型の洗浄用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、洗浄用ラックにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持させる装填ステップと、前記洗浄用ラックを洗浄液中に浸漬して前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとによって実施する。
【0011】
本発明は、上記発明において、前記洗浄用ラックは、複数の成形型が厚み方向に所定の間隔をおいて並ぶ状態で支持するものであり、前記装填ステップは、成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する保管用ケースの上に、成形型が装填されていない前記洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下が逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケースから前記洗浄用ラックに移す移載ステップとを有する眼鏡用プラスチックレンズの製造方法である。
【0012】
本発明は、上記発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の洗浄用ラックであって、前記成形型を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持する複数の支持部を備え、各支持部は、成形型の外周部分を挿入可能な形状であって、成形型に向けて開くV字状の切り欠きを用いて成形型を支持するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、成形型が洗浄用ラックに載せられた状態で遊動することによって、洗浄用ラックと接触していた成形型の被支持部が洗浄液に晒されて洗浄される。
したがって、本発明によれば、成形型を充分に洗浄することが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
本発明に係る成形型の洗浄用ラックは、V字状の切り欠きを用いて成形型を支持するものであるから、成形型の外径に応じて調整する作業は不要である。また、切り欠きによって成形型の外周部分が支えられるから、長期間にわたって使用しても成形型を支持する能力が低下することはなく、しかも、可動部がないために塵埃が発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】洗浄用ラックの正面図である。
【図3】洗浄用ラックの一部の平面図である。
【図4】洗浄用ラックの側面図である。
【図5】成形ステップを説明するための断面図である。
【図6】保管庫の正面図である。
【図7】ケース本体の正面図である。
【図8】ケース本体の側面図である。
【図9】図7におけるケース本体のIX−IX線断面図である。
【図10】ケース本体の平面図である。
【図11】ケース本体の底面図である。
【図12】ケース本体の斜視図である。
【図13】保管用ケースの側面図である。
【図14】ハンドルを保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【図15】保管用ケースと成形型の正面図である。
【図16】保管用ケースにケース本体を取付けたり取外すときの状態を説明するための側面図である。
【図17】ガイド部材を保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【図18】ラック接続ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの正面図ずである。
【図19】移載ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの断面図である。
【図20】移載ステップにおいて反転作業が終了した後の状態の保管用ケースと洗浄用ラックの正面図である。
【図21】洗浄ステップを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の洗浄用ラックの一実施の形態を図1〜21によって詳細に説明する。
本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、図1のフローチャートに示すように、装填ステップS1と、洗浄ステップS2と、成形ステップS3とをこの順序で実施する方法である。
【0016】
[装填ステップS1]
前記装填ステップS1は、図1に示すように、成形型1を洗浄用ラック2に装填するステップである。前記成形型1は、図5に示すように、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための型3の一部として使用するものである。
図5に示す型3は、前記成形型1としての第1、第2の成形型1A,1Bと、これらの成形型どうしの相対的な移動を規制する支持部材4とを備えている。前記第1、第2の成形型1A,1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するためのもので、ガラス材料によってそれぞれ円板状に形成されている。第1の成形型1Aは、眼鏡用プラスチックレンズの凸面を成形するためのもので、凹面からなるレンズ成形面5と、レンズ成形面ではない凸面6とが形成されている。第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの凹面を成形するためのもので、凸面からなるレンズ成形面7と、レンズ成形面ではない凹面8とが形成されている。
前記支持部材4は、第1、第2の成形型1A,1Bが嵌合する円筒状に形成されている。
【0017】
前記第1の成形型1Aと前記第2の成形型1Bは、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材4の中に装着される。このように支持部材4に両成形型1A,1Bを装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティ9が形成される。前記支持部材4には、キャビティ9内にレンズ材料を注入するために注入口4aが形成されているとともに、レンズ材料注入用の注入補助部材4bが取付けられている。
前記第1の成形型1Aと第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの成形工程が終了した後に前記支持部材4から取外され、図2〜図4に示すように洗浄用ラック2に装填されて洗浄させられる。成形後の成形型を洗浄する場合は、「装填ステップS1」において、成形型が洗浄用ラック2に作業者によって1枚ずつ装填される。
【0018】
前記洗浄用ラック2は、成形型1をそのレンズ成形面が上下方向に延びるように立てた状態で洗浄液中に浸漬させるためのものである。この実施の形態による洗浄用ラック2は、図2〜図4に示すように、成形型1を支持する第1〜第5の支持部11〜15と、これらの第1〜第5の支持部11〜15を支持する支持用フレーム16とによって構成されている。支持用フレーム16は、前側支持板17と後側支持板18とを4本のロッド19〜22で連結することによって形成されている。この明細書においては、洗浄用ラック2に支持される成形型1の厚み方向を指向する水平方向を便宜上、前後方向として説明する。また、以下においては、前記前後方向において、成形型1の凸面が指向する方向(図3や図4においては左方)を前方といい、これとは反対方向を後方という。さらに、前記前後方向において、成形型1の凸面側を前側といい、これとは反対側を後側という。
【0019】
この実施の形態による前記第1〜第5の支持部11〜15は、それぞれ支持片23と、この支持片23を支持する支持用ロッド24とによって構成されている。前記支持片23は、プラスチック材料からなる板によって形成されている。この実施の形態による支持片23には、図3および図4に示すように、成形型1に向けて開くV字状を呈する切り欠き25が前後方向(成形型1の厚み方向)に等間隔に並ぶ状態で形成されている。
前記切り欠き25は、成形型1のレンズ成形面とは離間する状態で成形型1の外周部分を挿入可能な形状であって、かつ成形型1が前後方向に傾斜(遊動)できるような形状に形成されている。
【0020】
この切り欠き25を有する支持片23は、前後方向に延びる前記支持用ロッド24に沿わせて固定されている。支持用ロッド24の両端部は、支持用フレーム16の前側支持板17と後側支持板18とに取付けられて支持されている。
前記支持片23と前記支持用ロッド24とからなる第1〜第5の支持部11〜15は、成形型1の周方向に所定の間隔をおいて離間する状態で配置されている。第1〜第5の支持部11〜15のうち、第3の支持部13は、成形型1の下端と対応する位置に配置され、第1の支持部11と第5の支持部15は、成形型1の上下方向の中央部と対応する位置に設けられている。第2の支持部12と第4の支持部14は、前記成形型1の下端と上下方向の中央部との間の中間となる位置に設けられている。
【0021】
また、第1〜第5の支持部11〜15の支持片23は、切り欠き25が成形型1の周方向に並ぶように位置付けられている。第1、第5の支持部11,15の支持片23は、図2に示すように、前後方向から見て成形型の中心より僅か上方を指向するように傾斜している。第2〜第4の支持部12〜14の支持片23は、前記前後方向から見て上下方向に延びるように設けられている。
【0022】
このように構成された洗浄用ラック2は、成形型1を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持するものとなる。また、この洗浄用ラック2は、V字状の切り欠き25に成形型1の外周部を挿入して成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径が変わったとしても支持状態が変化するようなことはない。
【0023】
成形型1は、上述したように成形後に洗浄させられるだけでなく、新たにプラスチックレンズの成形を行うために保管庫26(図6参照)から取出された後にも洗浄させられる。成形型1は、保管庫26で保管されるときは、図6に示すような保管用ケース31に収納される。
この実施の形態で用いる保管用ケース31は、図7〜図12に示すケース本体32を所定の数だけ一列に並べて互いに連結することによって形成されている。この保管用ケース31は、詳細は後述するが、成形型1を保管庫26で保管するための機能と、上述した洗浄用ラック2に成形型1を移す治具としての機能とを有している。
【0024】
前記ケース本体32は、図7〜図13に示すように、成形型1(第1の成形型1Aまたは第2の成形型1B)をそのレンズ成形面5,7が上下方向に延びる状態で1枚だけ収納できるように形成されている。図7には、外径が相対的に大きい成形型と、外径が相対的に小さい成形型とを図示してあるが、ケース本体32に支持できる成形型1の数は1枚である。図7〜図10および図13中に示す成形型1は、第2の成形型1Bである。前記保管用ケース31は、複数のケース本体32を成形型1の厚み方向に重ねて互いに連結させることによって形成されている。
【0025】
この実施の形態によるケース本体32は、プラスチック材料によって所定の形状に形成されている。このケース本体32には、後述する複数の機能部分が一体成形によって一体に形成されている。
前記複数の機能部分とは、図7に示すように、ケース本体32の最下部に位置する底壁部33と、この底壁部33の両端部分から上方に延びる一対の側壁部34と、これらの底壁部33と側壁部34とによって囲まれた位置にある第1〜第3の支持部35〜37などである。前記底壁部33は、ケース本体32を保管庫26や作業台(図示せず)などに載せたときの載置の安定を図る機能を有している。この実施の形態による底壁部33は、上方から見て成形型1の径方向に長い長方形状に形成されている。底壁部33の下面は平坦に形成されている。また、底壁部33には、図10および図11に示すように、二つの貫通孔38が形成されている。底壁部33の前後方向の長さは、洗浄用ラック2の支持片23に形成されている複数の切り欠き25の間隔と等しい長さに形成されている。
【0026】
前記側壁部34は、前記底壁部33の長手方向の両端部分から上方に延びるように形成されている。すなわち、側壁部34は、ケース本体32に収納された成形型1の厚み方向(前後方向)とは直交する水平方向の両側から前記成形型1と対向している。これらの二つの側壁部34,34どうしの間隔は、最も外径が大きい成形型1の外径より大きくなるように形成されている。
この側壁部34は、成形型1がケース本体32内から前記水平方向の外側に脱落することを防ぐ機能と、他のケース本体32と連結する機能と、後述する搬送用ハンドル39(図14参照)を取付ける機能などを有している。
【0027】
これらの側壁部34の機能のうち、他のケース本体32と連結する機能は、図8および図9に示すように、側壁部34の外側部分に設けられた複数の突起40と複数の穴41とによって実現されている。複数の突起40は、各側壁部34において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられているとともに、前方へ突出するように設けられている。また、これらの突起40は、先端側が基端側より僅かに細い円柱状に形成されている。円柱の軸線方向は、前記前後方向と平行である。
【0028】
前記複数の穴41は、各側壁部34において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられている。また、これらの穴41は、他のケース本体32の突起40が嵌合するように形成されている。すなわち、各側壁部34に2つ設けられている突起40が他のケース本体32の穴41に嵌合することによって、2つのケース本体32どうしが互いに連結される。保管用ケース31は、図13に示すように、複数のケース本体32を互いに連結することによって構成されている。
【0029】
側壁部34の複数の機能のうち、搬送用ハンドル39を取付ける機能は、前記側壁部34の上端部に設けられた側面視U字状のリブ42によって実現されている。前記搬送用ハンドル39は、図14に示すように、パイプを所定の形状に折り曲げて形成されている。このハンドル39は、保管用ケース31の長手方向の両端側に位置する把持部39aと、これらの把持部39aどうしを接続する接続部39bとによって構成されている。前記接続部39bは、各ケース本体32の前記リブ42と、このリブ42の下方に位置する第1の凸部43との間に挿入されている。第1の凸部43は、前記側壁部34に前記リブ42の下方で側方に突出するように形成されている。第1の凸部43の前端部には、上側の前記突起40が形成され、後端部には上側の前記穴41が形成されている。この搬送用ハンドル39を保管用ケース31に取付けた状態においては、作業者が前記把持部39aを両手で把持して保管用ケース31を運ぶことができる。
【0030】
前記第1〜第3の支持部35〜37は、ケース本体32内で成形型1をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持するためのものである。
第1の支持部35は、図7、図9および図12に示すように、前記底壁部33から上方に延びる2枚の内側支持片44,44と2枚の外側支持片45,45とによって構成されている。これらの内側支持片44と外側支持片45は、それぞれ前記前後方向とは直交する水平方向の二箇所に対をなすように設けられている。
【0031】
前記内側支持片44は、外径が相対的に小さい成形型1を支持するためのものである。前記外側支持片45は、外径が相対的に大きい成形型1を支持するためのものである。
内側支持片44および外側支持片45の上端部には、それぞれ前記前後方向に延び、かつ上方に向かうにしたがって次第に前方に傾斜して延びる傾斜面44a,45aが形成されている。すなわち、傾斜面44a,45aは、いずれも前上がりに傾斜している。
【0032】
成形型1は、凸面が前方を指向する状態でケース本体32内に上方から挿入され、前記傾斜面44a,45aの上に載せられる。傾斜面44a,45aの傾斜角度は、成形型1の下端部後面が後述する第2の支持部36に接触している状態において、内側支持片44または外側支持片45が成形型1の凸面と接触することがない角度に設定されている。すなわち、成形型1が内側支持片44または外側支持片45に載せられたときに内側支持片44または外側支持片45と接触する部分は、成形型1の凸面と外周面とに挟まれた角部46(図9参照)である。言い換えれば、前記傾斜面44a,45aは、前記角部46のみが載せられるように前上がりに傾斜している。
【0033】
前記第2の支持部36は、図7、図9および図12に示すように、前記底壁部33から上方に延びる板によって形成されている。この第2の支持部36は、前記前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。また、この第2の支持部36は、図7に示すように、前記一対の内側支持片44どうしの間に形成されている。すなわち、第2の支持部36は、前後方向から見て前記一対の内側支持片44どうしの間で下方に延びる成形型1の下端部47に前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0034】
前記第3の支持部37は、前記側壁部34からケース本体32の内側に延びる板状に形成されている。第3の支持部37は、前後方向において前記第2の支持部36と同じ位置で、前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。第3の支持部37の前記水平方向の幅と上下方向の長さは、図7に示すように、前後方向から見て、前記第1の支持部35に載せられた成形型1における前記水平方向の両端部と重なるように形成されている。すなわち、第3の支持部37は、前記成形型1の外周縁部に第2の支持部36より高い位置で前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0035】
成形型1をケース本体32に収納させるためには、図15に示すように、上方からケース本体32内に挿入して行う。このようにケース本体32内に成形型1を挿入すると、成形型1の下端部に位置する前記角部46が内側支持片44または外側支持片45に接触する。成形型1が内側支持片44または外側支持片45の上部に接触した場合は、成形型1を前記傾斜面44a,45aに沿って後斜め下に向けて滑らせ、成形型1の下端後縁を前方から第2の支持部36に接触させる。成形型1は、このように前記角部46が内側支持片44または外側支持片45に載せられている状態で凹面側の下端後縁が第2の支持部36に接触することによって、前方への傾斜が規制された状態で第1、第2の支持部35,36に保持される。
【0036】
この保持状態においては、第3の支持部37が第1、第2の支持部35,36より上方において、成形型1における凹面側の後縁と対向する。すなわち、成形型1の後方への傾斜は、第3の支持部37によって規制される。
このため、成形型1は、前方と後方への傾斜が規制された状態であって、レンズ成形面がケース本体32と接触することがない状態でケース本体32に支持される。
【0037】
成形型1を収納したケース本体32は、図13に示すように、前後方向に並べられて互いに連結させられる。保管用ケース31は、このように複数のケース本体32を結合させたものである。ケース本体32に収納する成形型1は、眼鏡用プラスチックレンズの成形が終了して洗浄された後のものや、新品の成形型などである。保管庫26に収納する保管用ケース31には、同一種類の成形型1のみが収納される。すなわち、成形型1は、保管用ケース31毎に分類されて保管庫26に収容されている。この成形型1は、使用するときに保管庫26から保管用ケース31とともに取出される。
【0038】
この保管用ケース31に収納されている成形型1を使用してプラスチックレンズを成形するためには、後述するラック接続ステップS1A(図1参照)と移載ステップS1Bとを実施して成形型1を前記洗浄用ラック2に移し替え、その後、洗浄ステップS2で洗浄する。
大量生産を行う場合などで保管庫26から取り出した保管用ケース31内の全ての成形型1を使用するときは、この保管用ケース31を用いて後述するラック接続ステップS1Aを実施する。
【0039】
多くの種類の成形型1を比較的少数ずつ使用して多品種少量生産を行う場合は、後述するラック接続ステップS1Aを実施するために多品種少量生産用の保管用ケース31が作られる。多品種少量生産用の保管用ケース31を作るためには、先ず、保管庫26から取り出した保管用ケース31から必要な個数だけケース本体32を取出す。このように成形型1を保管用ケース31から取出すときは、図16に示すように、保管用ケース31の一端部31aに位置するケース本体32を保管用ケース31から分離させて行う。保管用ケース31から分離されたケース本体32は、新たに多品種少量生産用の保管用ケース31を形成するために、集めて互いに連結される。この新たな保管用ケース31は、後述するラック接続ステップS2で洗浄用ラック2を接続するために、例えば作業台の上に移される。
【0040】
一方、使用後の成形型1(眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型であって保管庫26に戻される予定の成形型)や、補充のための新品の成形型1は、それぞれケース本体32に収納された後、同じ種類の成形型1が収容された保管用ケース31に戻される。このとき、使用後の成形型1や新品の成形型1を収納したケース本体32は、前記保管庫26に収容される保管用ケース31の他端部31b(図16参照)に位置するケース本体32に連結される。保管用ケース31には、図17に示すように、上述したように保管用ケース31の一端部31aからケース本体32を取出したり、保管用ケース31の他端部31bにケース本体32を連結する作業を容易に行うことができるように、一対のガイド部材48を取付けることができる。
【0041】
これらのガイド部材48は、それぞれ保管用ケース31の一端部31aから他端部31bまで延びる断面C字状の棒状に形成されており、各ケース本体32の両側部に形成された第2の凸部49を移動自在に保持している。第2の凸部49は、図7示すように、前記側壁部34に前記第1の凸部43の下方で側方に突出するように形成されている。第2の凸部49の前端部には、下側の前記突起40が形成され、後端部には下側の前記穴41が形成されている。
【0042】
ガイド部材48を使用する場合、ケース本体32を保管用ケース31から取出すためには、各ケース本体32をガイド部材48に対して保管用ケース31の一端部31a側に移動させ、ガイド部材48から突出したケース本体32を分離させる。このようにすると、保管用ケース31の他端部31b側にガイド部材48が突出するようになり、2本のガイド部材48どうしの間に新たなケース本体32を挿入できるようにスペースが形成される。ケース本体32を保管用ケース31に取付ける場合は、ケース本体32を前記スペースに挿入して行う。
【0043】
[ラック接続ステップS1A]
ラック接続ステップS1Aは、図18に示すように、上述した洗浄用ラック2を前記保管用ケース31に接続するステップである。
ラック接続ステップS1Aにおいては、図18に示すように、前記洗浄用ラック2を前記保管用ケース31の上に重ねて載せる。洗浄用ラック2を保管用ケース31に重ねるにあたっては、洗浄用ラック2の上部(成形型1を挿入する部分)が下に位置するように、洗浄用ラック2を上下方向に反転させた倒立状態で行う。また、このときの作業は、保管用ケース31内の成形型1と洗浄用ラック2の切り欠き25とが上下方向に並ぶように行う。
【0044】
[移載ステップS1B]
移載ステップS1Bは、図19および図20に示すように、前記保管用ケース31に収納されている成形型1を前記洗浄用ラック2に移すステップである。この移載ステップS1Bにおいては、上述したラック接続ステップS1Aで保管用ケース31の上に洗浄用ラック2を重ねて載せた後、これらの保管用ケース31と洗浄用ラック2とを上と下とが逆に位置するように上下方向に反転させる。この反転作業は、図19に示すように、先ず、保管用ケース31の第2、第3の支持部36,37が下に位置するように保管用ケース31と洗浄用ラック2とを傾斜させ、成形型1を第2、第3の支持部36,37の上に載せる。
【0045】
そして、保管用ケース31と洗浄用ラック2とを洗浄用ラック2が下に位置するように更に傾斜させ、成形型1を第3の支持部37の上で滑らせて洗浄用ラック2の中に移動させる。その後、洗浄用ラック2の上に保管用ケース31が載るように洗浄用ラック2を起立させて正立の状態とし、この洗浄用ラック2の上から保管用ケース31を上方に外す。このように保管用ケース31が洗浄用ラック2から外されることによって、移載ステップS1Bが終了する。
【0046】
[洗浄ステップS2]
洗浄ステップS2は、図21に示すように、前記洗浄用ラック2に移された前記成形型1を洗浄液51中に浸漬させて洗浄するステップである。この洗浄ステップS2において、洗浄用ラック2は、洗浄装置52に支持されて洗浄槽53内に挿入される。洗浄槽53内には、予め所定の洗浄液51が溜められている。また、洗浄用ラック2は、洗浄装置52によって洗浄槽53内で前後方向または左右方向に揺動または水平移動させられる。なお、この洗浄槽53としては、超音波を発生させる装置を備えたものを用いることができる。
【0047】
成形型1は、洗浄液51中に浸漬された状態で洗浄用ラック2が揺れることによって、支持片23に支えられながら下端を支点として上部が前後方向に揺動するように遊動する。このため、成形型1と支持片23との接触点が一点に固定されることはなく、移り変わるようになる。このことは、成形型1の全ての部位を洗浄液51に晒すことができることを意味する。したがって、この洗浄ステップS2においては、洗浄液51で洗浄されることがない部位を残すことなく成形型1を洗浄することができる。
洗浄が終了した成形型1は、洗浄用ラック2に収納された状態で次の成形ステップS3を実施する成形装置(図示せず)に送られる。
【0048】
[成形ステップS3]
成形ステップS3は、前記洗浄用ラック2から取出した前記成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形するステップである。
この成形ステップS3は、図5に示すように、成形型1(第1の成形型1Aと第2の成形型1B)を支持部材4に組付け、支持部材4内に注入補助部材4bからレンズ材料(図示せず)を注入して実施する。
【0049】
この実施の形態による眼鏡用プラスチックレンズの製造方法においては、成形型1が遊動可能な状態で洗浄用ラック2に支持されており、洗浄ステップS2で洗浄用ラック2とともに洗浄槽53に漬けられて洗浄される。そして、成形型1は、洗浄ステップS2で洗浄用ラック2に載せられた状態で遊動することによって、洗浄用ラック2と接触していた成形型1の被支持部が洗浄液に晒されて洗浄される。
したがって、この実施の形態によれば、成形型1を充分に洗浄することが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0050】
この実施の形態による成形型1の洗浄用ラック2は、V字状の切り欠き25を用いて成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径に応じて調整する作業は不要である。また、切り欠き25によって成形型1の外周部分が支えられるから、長期間にわたって使用しても成形型1を支持する能力が低下することはなく、しかも、可動部がないために塵埃が発生することもない。
【0051】
また、この実施の形態による洗浄用ラック2は、複数の成形型1を、厚み方向に所定の間隔をおいて並ぶように、かつレンズ成形面に接触することがないように支持するものである。また、この実施の形態による前記装填ステップS1は、成形型1がレンズ成形面に非接触の状態で収納された保管用ケース31の上に洗浄用ラック2を上と下が逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップS1Aと、これらの保管用ケース31および洗浄用ラック2を上と下が逆に位置するように反転させる移載ステップS1Bとを有している。
【0052】
このため、成形型1を保管用ケース31から洗浄用ラック2に移すにあたって、成形型1を手で持つ必要がなく、保管用ケース31に洗浄用ラック2を載せて上下方向に反転させる簡単な作業で行うことができる。保管用ケース31と洗浄用ラック2は、成形型1をレンズ成形面5,7に接触することがないように支持できるものであるから、レンズ成形面5,7が傷つくこともない。
したがって、この実施の形態によれば、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型1を保管用ケース31から洗浄用ラック2に速くかつレンズ成形面5,7を傷つけることなく移すことができ、生産性の向上を図ることが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0053】
この実施の形態による成形型1の洗浄用ラック2は、成形型1を、レンズ成形面5,6が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面5,6に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持する第1〜第5の支持部11〜15を備えている。各支持部11〜15は、成形型1の外周部分を挿入可能な形状であって、成形型1に向けて開くV字状の切り欠き25を用いて成形型1を支持するものである。
このため、この洗浄用ラック2においては、V字状の切り欠き25を用いて成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径に応じて調整する作業は不要である。また、この洗浄用ラック2は、成形型1の外周部分が切り欠き25内に挿入されて支えられるものであり、ばねを使用していないから、成形型1を支持する能力が経年劣化で低下することはなく、しかも、可動部がないために塵埃が発生することもない。
【符号の説明】
【0054】
1…成形型、2…洗浄用ラック、5,7…レンズ成形面、11〜15…第1〜第5の支持部、23…支持片、25…切り欠き、31…保管用ケース、32…ケース本体、S1…装填ステップ、S1A…ラック接続ステップ、S1B…移載ステップ、S2…洗浄ステップ、S3…成形ステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、洗浄用ラックにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持させる装填ステップと、
前記洗浄用ラックを洗浄液中に浸漬して前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法において、前記洗浄用ラックは、複数の成形型が厚み方向に所定の間隔をおいて並ぶ状態で支持するものであり、
前記装填ステップは、成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する保管用ケースの上に、成形型が装填されていない前記洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、
前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下が逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケースから前記洗浄用ラックに移す移載ステップとを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の洗浄用ラックであって、
前記成形型を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持する複数の支持部を備え、
各支持部は、成形型の外周部分を挿入可能な形状であって、成形型に向けて開くV字状の切り欠きを用いて成形型を支持するものであることを特徴とする成形型の洗浄用ラック。
【請求項1】
眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、洗浄用ラックにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持させる装填ステップと、
前記洗浄用ラックを洗浄液中に浸漬して前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法において、前記洗浄用ラックは、複数の成形型が厚み方向に所定の間隔をおいて並ぶ状態で支持するものであり、
前記装填ステップは、成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する保管用ケースの上に、成形型が装填されていない前記洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、
前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下が逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケースから前記洗浄用ラックに移す移載ステップとを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の洗浄用ラックであって、
前記成形型を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがない状態を保ちながら厚み方向に遊動可能に支持する複数の支持部を備え、
各支持部は、成形型の外周部分を挿入可能な形状であって、成形型に向けて開くV字状の切り欠きを用いて成形型を支持するものであることを特徴とする成形型の洗浄用ラック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−109137(P2013−109137A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253754(P2011−253754)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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