説明

着色積層フィルム

【課題】光沢感が高く艶や深みのある黒色の着色積層フィルムを提供する。
【解決手段】黒色に着色されたオレフィン系樹脂フィルム層11を含む着色積層フィルム10であって、オレフィン系樹脂フィルム層11上面に接着剤層25を介して接合される透明PETフィルム層20と、透明PETフィルム層20上面に形成され、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に対して着色材料が混合量1〜10%で混練されてなる着色塗膜層30とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の外装部品等に使用される着色積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の外装部品等に使用される積層フィルムは、ポリ塩化ビニル樹脂やポリプロピレン等のオレフィン系樹脂材料等の合成樹脂材料からなる基体フィルム層の上面にPETフィルム層が積層されてなる(例えば、特許文献1参照。)。このような積層フィルムは、基体フィルム層に着色材料を加えたり、金属光沢を発現するために基体フィルム層とPETフィルム層との間にスパッタリング法等によって金属蒸着層を形成したりする等、種々の手法により着色積層フィルムが形成される。着色積層フィルムでは、環境上あるいは廃棄処理上の問題やフィルムのさらなる軽量化等の要請から基体フィルム層としてオレフィン系樹脂材料が好適に使用される。
【0003】
基体フィルム層としてオレフィン系樹脂材料を使用した着色積層フィルムは、金属光沢と異なる質感の黒色のフィルムを形成する場合、オレフィン系樹脂材料にカーボン等の着色材料を混練して黒着色されたオレフィン系樹脂フィルム層を形成し、その上面に透明なPETフィルム層を積層して構成するものが一般的であった。しかしながら、この着色積層フィルムでは、艶や深みのある発色が困難であり、オレフィン特有の光沢感のない濁った黒色しか得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−324398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、光沢感が高く艶や深みのある黒色の着色積層フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1の発明は、黒色に着色されたオレフィン系樹脂フィルム層を含む着色積層フィルムであって、前記オレフィン系樹脂フィルム層上面に接着剤層を介して接合される透明PETフィルム層と、前記透明PETフィルム層上面に形成され、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に対して着色材料が混合量1〜10%で混練されてなる着色塗膜層とを有することを特徴とする着色積層フィルムに係る。
【0007】
請求項2の発明は、前記着色材料の混合量が3〜5%である請求項1に記載の着色積層フィルムに係る。
【0008】
請求項3の発明は、前記着色塗膜層の厚みが3〜100μmである請求項1又は2に記載の着色積層フィルムに係る。
【0009】
請求項4の発明は、前記透明PETフィルム層の厚みが12〜100μmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の着色積層フィルムに係る。
【0010】
請求項5の発明は、前記着色塗膜層上面に保護フィルム層を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の着色積層フィルムに係る。
【0011】
請求項6の発明は、前記オレフィン系樹脂フィルム層の裏面にプライマー層または粘着層が施されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の着色積層フィルムに係る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係る着色積層フィルムは、黒色に着色されたオレフィン系樹脂フィルム層を含む着色積層フィルムであって、前記オレフィン系樹脂フィルム層上面に接着剤層を介して接合される透明PETフィルム層と、前記透明PETフィルム層上面に形成され、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に対して着色材料が混合量1〜10%で混練されてなる着色塗膜層とを有するため、従来に比して光沢感が高く艶や深みのある黒色の着色積層フィルムを得ることができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記着色材料の混合量が3〜5%であるため、より優れた色調の黒色の着色積層フィルムを得ることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記着色塗膜層の厚みが3〜100μmであるため、耐候性等の性能を十分に確保することができるとともに、外観的、製造的及び価格的に有利となる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし3において、前記透明PETフィルム層の厚みが12〜100μmであるため、耐久性等の性能や柔軟性を確保することができるとともに、経済的にも有利となる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし4において、前記着色塗膜層上面に保護フィルム層を有するため、当該着色積層フィルムの貼り合わせ工程及び該着色積層フィルムが貼着された材料の加工工程、あるいは輸送、保管中において、当該着色積層フィルムの傷つきを防止することができる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1ないし5において、前記オレフィン系樹脂フィルム層の裏面にプライマー層または粘着層が施されているため、オレフィン系樹脂フィルム層と当該着色積層フィルムが貼着される樹脂成形体との接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る着色積層フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す本発明の一実施例に係る着色積層フィルム10は、黒色に着色されたオレフィン系樹脂フィルム層11を含むものであって、透明PETフィルム層20と、着色塗膜層30とを有する。図において、符号MはPC、ABS、PVC、PP等の樹脂によって形成された自動車用モールディング等の自動車用外装部品等からなる樹脂成形体である。
【0020】
オレフィン系樹脂フィルム層11は、樹脂成形体M表面に貼着されるものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、サーモプラスチックオレフィン(TPO)等の公知のオレフィン系樹脂にカーボン等の顔料、染料、着色剤等の単独またはこれらの混合物からなる黒色系着色材料が混練されてなる。オレフィン系樹脂フィルム層11では、要求性能として、耐熱性、耐水性等が必要となるため、耐熱安定剤等が含まれていてもよいし、耐候性を向上させるために公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0021】
このオレフィン系樹脂フィルム層11は、樹脂成形体Mの材料の関係で厚み等が選択され、例えば、30〜500μmであることが好ましく、特には50〜300μmである。厚みが30μm未満では接着性能が満足できず、500μmを超えると製造的及び価格的な観点から不利となる。
【0022】
また、オレフィン系樹脂フィルム層11では、必要に応じてその裏面に公知のプライマー処理によってプライマー層40を施してもよい。これにより、オレフィン系樹脂フィルム層11と樹脂成形体Mとの接着性を向上させることができる。なお、オレフィン系樹脂フィルム層11の裏面には、プライマー層40の代わりに公知の粘着処理によって粘着層45を施すことも可能である。
【0023】
透明PETフィルム層20は、オレフィン系樹脂フィルム層11上面に接着剤層25を介して接合される。透明PETフィルム層の厚みとしては、12〜100μm、特には25〜75μmがより好ましい。厚みが12μmより薄い場合は耐久性等の性能が不十分となり、100μmより厚い場合は柔軟性及び価格的な観点等から問題となる。
【0024】
接着剤層25は、オレフィン系樹脂フィルム層11上面に2液硬化型ポリウレタン系接着剤等が公知のドライラミネータ等により塗布されて形成される。接着剤層25の厚みとしては、1〜25μm、特には5〜15μmがより好ましい。厚みが1μmより薄い場合は満足な接着強度が得られず、25μmより厚い場合は製造的及び価格的観点から不利となる。
【0025】
着色塗膜層30は、当該着色積層フィルム10に光沢感を付与するためのものであって、グラビアロールコーティング法等の公知の手法により透明PETフィルム層20上面に形成される。この着色塗膜層30は、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に対して着色材料が混合量1〜10%で混練されてなる。着色材料としては、顔料、染料、着色剤等の単独またはこれらの混合物が適宜使用され、特には黒、紺、茶等の暗色系の着色材料が好ましい。この着色材料の混合量が1%より小さい場合、着色塗膜層30の色合いが薄く、十分な光沢感を付与することができない。混合量が10%より大きい場合、着色塗膜層30の色合いが濃く、光沢感が損なわれる。また特に、より優れた光沢感を付与するためには、着色材料の混合量が3〜5%であることが好ましい。
【0026】
着色塗膜層30の厚みとしては、目的とする光沢感を得るとともに耐候性を確保するために、3〜100μm、特には10〜30μmがより好ましい。厚みが3μmより薄い場合、耐候性等の性能を十分に確保することが困難となる。一方、厚みが100μmより厚い場合、外観的、製造的及び価格的な観点から問題となる。
【0027】
また、当該着色積層フィルム10では、着色塗膜層30上面に保護フィルム層50を有することが好ましい。保護フィルム層50は、着色積層フィルム10が貼着されたり被覆されたりする樹脂成形体Mへの該フィルムの貼り合わせ工程及び該フィルムが貼着された材料の加工工程、あるいは輸送、保管中において、当該フィルムの傷つきを防止するものである。保護フィルム層50の材質としては、PET樹脂等を使用することができる。また、この保護フィルム層50は、着色塗膜層30がグラビアロールコーティング法等により形成された後にそのまま貼り合わされるものであるため、着色塗膜層30との積層に接着剤を用いることなく簡単かつ容易に形成することができる。この保護フィルム層50の厚みとしては、9〜100μm、さらに好ましくは12〜75μmである。該保護フィルム層50の厚みが9μmより薄い場合は保護性能を満足できず、100μmより厚い場合は価格的な観点から問題となる。なお、この保護フィルム層50は保護部分であり、最終的には剥離除去される。
【0028】
さらに、この着色積層フィルム10では、表面の傷付き防止や成形屈曲性の観点から、フィルム全体の鉛筆硬度をHB〜2Hとすることが好ましい。鉛筆硬度がHBより低い場合は表面の傷付きを十分に防止することが困難であり、2Hより高い場合は成形屈曲性が損なわれる問題がある。
【0029】
次に、本発明の着色積層フィルムの具体的な実施例について説明する。以下の実施例では、ポリプロピレンにカーボンを混練して厚さ150μmに形成されたオレフィン系樹脂フィルム層上面に、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いた厚さ12μmの接着剤層を介して厚さ50μmの透明PETフィルム層と、熱硬化型アクリル樹脂に黒、紺、茶のいずれかの顔料を混練または着色材料を加えずに厚さ12μmに形成した着色塗膜層と、PET樹脂を用いた厚さ50μmの保護フィルム層とを積層し、試作例1〜22を得た。
【0030】
試作例1は黒色顔料の混合量が0.5%、試作例2は黒色顔料の混合量が1.0%、試作例3は黒色顔料の混合量が3.0%、試作例4は黒色顔料の混合量が4.0%、試作例5は黒色顔料の混合量が5.0%、試作例6は黒色顔料の混合量が10.0%、試作例7は黒色顔料の混合量が12.0%である。また、試作例8は紺色顔料の混合量が0.5%、試作例9は紺色顔料の混合量が1.0%、試作例10は紺色顔料の混合量が3.0%、試作例11は紺色顔料の混合量が4.0%、試作例12は紺色顔料の混合量が5.0%、試作例13は紺色顔料の混合量が10.0%、試作例14は紺色顔料の混合量が12.0%である。さらに、試作例15は茶色顔料の混合量が0.5%、試作例16は茶色顔料の混合量が1.0%、試作例7は茶色顔料の混合量が3.0%、試作例18は茶色顔料の混合量が4.0%、試作例19は茶色顔料の混合量が5.0%、試作例20は茶色顔料の混合量が10.0%、試作例21は茶色顔料の混合量が12.0%である。なお、試作例22は着色材料を含まない。
【0031】
そこで、試作品1〜22について、JIS−Z−8741に準拠して60度光沢値を測定し、目視により艶・深み・光沢感の色調を総合的に評価した。なお、測定機器としては、日本電色工業社製PG−1を用いた。
◎ ・・・ 優れる
○ ・・・ 良好
△ ・・・ やや劣る
× ・・・ 劣る
【0032】
【表1】

【0033】
試作例1について、光沢値は70であった。試作例2について、光沢値は80であった。試作例3について、光沢値は88であった。試作例4について、光沢値は90であった。試作例5について、光沢値は88であった。試作例6について、光沢値は83であった。試作例7について、光沢値は73であった。試作例8について、光沢値は68であった。試作例9について、光沢値は80であった。試作例10について、光沢値は86であった。試作例11について、光沢値は88であった。試作例12について、光沢値は86であった。試作例13について、光沢値は82であった。試作例14について、光沢値は70であった。試作例15について、光沢値は68であった。試作例16について、光沢値は80であった。試作例17について、光沢値は86であった。試作例18について、光沢値は88であった。試作例19について、光沢値は86であった。試作例20について、光沢値は82であった。試作例21について、光沢値は70であった。試作例22について、光沢値は65であった。
【0034】
表1の結果に示したように、試作例2〜6,9〜13,16〜20では、艶・深み・光沢感がいずれも良好であった。特に、試作例3〜5,10〜12,17〜19では、より光沢感が高く艶や深みがある優れたフィルムが得られた。一方、試作例1,7,8,14,15,21では、艶・深み・光沢感のいずれもやや劣ったフィルムしか得られなかった。さらに、試作例22では、艶や深みが不十分で光沢感のない濁った黒色フィルムしか得られなかった。これらの結果から理解されるように、着色材料の混合量が1〜10%の場合に光沢値が80以上となって光沢感が高く艶や深みのある良好な評価が得られることがわかった。また特に、着色材料の混合量が3〜5%の場合には光沢値が86以上となり、より優れた評価が得られることがわかった。
【0035】
以上図示し説明したように、本発明の着色積層フィルムでは、黒色に着色されたオレフィン系樹脂フィルム層の上面に透明PETフィルム層と、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に対して着色材料が混合量1〜10%で混練されてなる着色塗膜層とが積層されているため、従来のオレフィン特有の光沢感のない濁った黒色フィルムに比して光沢感が高く艶や深みのある黒色(漆黒調)の着色積層フィルムを得ることができる。特に、着色材料の混合量を3〜5%とすれば、より優れた色調の黒色フィルムを得ることができる。
【0036】
なお、本発明の着色積層フィルムは、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 着色積層フィルム
11 オレフィン系樹脂フィルム層
20 透明PETフィルム層
25 接着剤層
30 着色塗膜層
40 プライマー層
50 保護フィルム層
M 樹脂成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色に着色されたオレフィン系樹脂フィルム層を含む着色積層フィルムであって、
前記オレフィン系樹脂フィルム層上面に接着剤層を介して接合される透明PETフィルム層と、
前記透明PETフィルム層上面に形成され、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に対して着色材料が混合量1〜10%で混練されてなる着色塗膜層
とを有することを特徴とする着色積層フィルム。
【請求項2】
前記着色材料の混合量が3〜5%である請求項1に記載の着色積層フィルム。
【請求項3】
前記着色塗膜層の厚みが3〜100μmである請求項1又は2に記載の着色積層フィルム。
【請求項4】
前記透明PETフィルム層の厚みが12〜100μmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の着色積層フィルム。
【請求項5】
前記着色塗膜層上面に保護フィルム層を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の着色積層フィルム。
【請求項6】
前記オレフィン系樹脂フィルム層の裏面にプライマー層または粘着層が施されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の着色積層フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−116053(P2012−116053A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266620(P2010−266620)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(593227981)日本プライ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】