説明

着露検出装置、着露検出方法および空調機

【課題】高温多湿時の冷房または除湿運転中に発生しやすい空調機吹き出し口からの水滴滴下を事前に検出可能な着露検出装置を提供する。
【解決手段】空調機の風路外壁面に着露検出電極21を貼り付け、風路内壁面に生じる結露を、着露検出電極21と接地部60の間の仮想コンデンサの静電容量として検出する。静電容量検出部30が検出した静電容量値に基づいて信号処理部40が結露の発生を判定し、伝送部50から空調機の制御部100へ報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調機(エアコン)の室内機、室外機に設置して結露を検出する着露検出装置および着露検出方法、ならびにこの着露検出装置を用いた空調機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調機を高温多湿かつ塵埃が多い環境で冷房運転すると、風路内で結露過多となり、冷風吹き出し口から結露水の滴下が発生することがある。この結露水発生を抑制する空調制御に必要な気体流路(風路)の結露センサが求められている。
【0003】
従来の結露センサとしては、例えば特許文献1〜3がある。特許文献1に係る結露状態検出センサは、一対の電極と、当該一対の電極のそれぞれから連設された一対の導体と、当該一対の導体に対応して形成された高分子被膜とを有し、高分子被膜の水分吸着による静電容量の変化に基づいて結露を検出する。
また、特許文献2に係る鏡面冷却式露点計は、第一の光源部およびその直進光を受ける第一の受光部と、測定対象内に設置した反射鏡と、当該反射鏡へ光を送る第二の光源部およびその反射光を受ける第二の受光部とを有し、反射鏡を冷却していき、その鏡面に付着する水滴による反射光の変化に基づいて露点を検出する。
さらに、特許文献3に係る露点測定装置も鏡面冷却式であり、湿度と鏡面温度から露点を算出することで露点検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−266809号公報
【特許文献2】特開2003−194756号公報
【特許文献3】特表平11−511242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜3の結露センサは測定対象内に設置する必要があるため、空調機の風路内部の結露状況を検出する結露センサとして利用する場合には風路内部に結露センサを設置して結露検出を行わなければならず、塵埃およびカビ等に汚損されるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1の結露センサは、高分子皮膜の水分吸着による静電容量の変化に基づいて結露を検出する構成であって、誘電体量、即ち結露水量の増加による静電容量の変化に基づいて結露を検出する構成ではない。また、特許文献2,3に係る鏡面冷却式の露点計も静電容量の変化に基づいて結露を検出する構成ではなく、さらに特許文献3の露点計では結露検出のために100%以上の湿度を計測する必要があり、実現不可能であった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、高温多湿時の冷房または除湿運転中に発生しやすい空調機吹き出し口からの水滴滴下を事前に検出可能な着露検出装置および着露検出方法、ならびに結露の発生を抑制して空調機吹き出し口からの水滴滴下および部材の腐食等を防止可能な空調機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る着露検出装置は、空調機を構成する部材の所定位置に設置される着露検出電極を有する着露検出部と、着露検出電極の周辺に結露した水滴の静電容量を検出する静電容量検出部と、静電容量検出部が検出した静電容量値に基づく着露の検出信号を生成する信号処理部と、信号処理部が生成した検出信号を空調機に伝送する伝送部とを備えるものである。
【0009】
この発明に係る着露検出方法は、空調機を構成する部材の所定位置に設置された着露検出電極の周辺に結露した水滴の静電容量を検出する静電容量検出ステップと、静電容量検出ステップで検出した静電容量値に基づく着露の検出信号を生成する信号処理ステップと、信号処理ステップで生成した検出信号を空調機に伝送する伝送ステップとを備えるものである。
【0010】
この発明に係る空調機は、上述の着露検出装置と、当該着露検出装置の伝送部が伝送する検出信号を受信して、当該検出信号に応じて空調機の運転を制御する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、空調機に設置された着露検出電極の周辺に結露した水滴の静電容量を検出して空調機に報知するようにしたので、着露検出電極を風路等に設置することによって、高温多湿時の冷房または除湿運転中に発生しやすい空調機吹き出し口からの水滴滴下および着露による空調機部材の腐食等を事前に検出可能な着露検出装置および着露検出方法を提供することができる。
【0012】
また、この発明によれば、着露検出装置の検出信号に応じて空調機の運転を制御するようにしたので、過剰な冷房または除湿運転による結露の発生を抑制することができ、空調機吹き出し口からの水滴滴下、および空調機部材の腐食等を防止可能な空調機を提供することができる。また、着露検出を観測することにより、風路内の結露を乾燥するための運転制御時間を着露状態に応じて制御できるので、運転時間の短縮に繋がり空調機の消費電力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る着露検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】着露検出部の構成例を示す図である。
【図3】着露検出部の別の構成例を示す図であり、図3(a)は単独の着露検出電極を有する場合、図3(b)は複数の着露検出電極を有する場合である。
【図4】着露検出部の別の構成例を示す図である。
【図5】静電容量検出部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】着露検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る着露検出装置を空調機の風路に設置した例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る着露検出装置を空調機の配管に設置した例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る着氷検出装置を冷凍機の配管に設置した例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る複数の着露検出装置を1次元配置した例を示す図であり、図10(a)は結露の流れ方向に対して直交方向に配置した場合、図10(b)は平行方向に配置した場合である。
【図11】実施の形態4に係る複数の着露検出装置を2次元配置した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1に示す着露検出装置10は、結露を検出する着露検出部20と、着露検出部20と接続し着露検出部20周辺に結露した水滴の静電容量を検出する静電容量検出部30と、静電容量検出部30で得たデータに対し平滑化、数値変換などの信号処理を行う信号処理部40と、信号処理部40でデータ処理した信号を制御部100に伝送する伝送部50と、着露検出部20の電極の一方を回路のグラウンド等に接地する接地部60とから構成される。
制御部100は、着露検出装置10と接続し、着露検出装置10から着露検出信号を受信すると結露防止動作を行う空調機の制御装置である。
【0015】
着露検出部20は接地部60との間で仮想のコンデンサを形成する。着露検出部20と接地部60との間に誘電体となる結露水滴が増加することにより、そのコンデンサの静電容量が増加する。着露検出部20の電極の面積をS、接地部60との距離をd、誘電体の比誘電率をεとすると、静電容量Cは式(1)となる。ここで、静電容量Cは浮遊容量であってもよい。


【0016】
図2に着露検出部20の構成例を示す。
図2の例では、着露検出部20を構成する着露検出電極21を任意の形状の検出対象物101に貼り付けて利用するため、着露検出電極21をフレキシブル基板、金属箔テープなどを用いた柔軟な電極として構成する。この着露検出電極21を検出対象物101の表面102に、両面テープなどの接着部材23を用いて貼り付けることで、検出対象物101の裏面103の結露を検出する。この着露検出電極21と静電容量検出部30とは配線22により接続する。なお、説明のため検出対象物101の表裏を呼び分けるが区別はなく、裏面103に着露検出電極21を貼り付けて表面102の結露を検出可能なことは言うまでもない。
【0017】
図3に着露検出部20の別の構成例を示す。
検出対象物101の貼付領域が平面であれば、着露検出部20を堅牢な素材で構成してもよく、例えば着露検出電極21を金属板にしたり、着露検出電極21の電極パターンが形成されたプリント基板24にしたりしてもよい。図3(a)の例では、着露検出電極21がプリント基板24上に形成されており、このプリント基板24上に静電容量検出部30も実装している。この構成の場合にも、プリント基板24の着露検出電極21を接着部材23により検出対象物101に貼り付けることで、結露を検出する。
【0018】
検出対象物101に発生する結露は、風などにより移動することがある。そこで、図3(b)に示すように着露検出電極21を流れ方向に複数並べて、結露の流れ方向を検出するようにしてもよい。図3(b)の例では2つの着露検出電極21−1,21−2を配線22−1,22−2によりそれぞれ静電容量検出部30に接続する。この構成の場合、それぞれの着露検出電極21−1,21−2付近の静電容量を検出することにより、結露分布を検出することができる。また、それぞれの着露検出電極21−1,21−2の静電容量値の差分から近接飛散を検出してもよいし、それぞれの着露検出電極21−1,21−2の静電容量値の総和を求めて着露検出結果としてもよい。
【0019】
静電容量の検出感度は、上式(1)より、着露検出電極21の表面積に比例するので、着露検出電極21を凹凸形状にして表面積を増加させて検出感度を高めてもよい。
【0020】
図4に着露検出部20の別の構成例を示す。
図4(a)に示す着露検出部20は、検出対象物101を間に挟んで非接触で裏面103の着露を検出できるだけでなく、着露検出電極21に水滴が付着することでも着露検出できる。この場合、結露が付着しやすい構造にすることで検出感度が高くなるので、水を含むことで誘電率が増加する素材、例えば高分子膜25を着露検出電極21に塗布または貼付してもよい。
また、着露検出部20は、検出対象物101に貼り付けずに、検出対象物101付近の空中に設置してもよい。この場合、着露検出電極21の周辺に結露が生じるか、または着露検出電極21に結露水が直接的に付着することで検出対象物101の着露検出ができる。
【0021】
ここで、例えば着露検出電極21を空調機の風路(即ち検出対象物101)の外壁面に取り付け、風路内壁面の着露を検出する場合を考える。この場合、風路外にも結露が生じることがあるため、着露検出電極21が風路外壁面の着露を検出しないように、この着露検出電極21を着露検出電極カバー26で覆う構成にしてもよい。構成例を図4(b)に示す。また、この着露検出電極カバー26の電位は、静電容量検出部30の接地電位と同電位とする。
【0022】
図5は、着露検出部20と静電容量検出部30のブロック図である。図5の例では、着露検出部20が複数の着露検出電極21−1〜21−n(nは2以上の整数)を有する。
静電容量検出部30は、着露検出電極21と接地部60との間に発生している静電容量により電荷を充電し、その静電容量の値を検出する回路であり、基準電圧印加部31、切り替え部32、CV変換部33、AD変換部34より構成される。また、着露検出装置10は所定の静電容量をもつ参照コンデンサ70を有するものとする。
基準電圧印加部31は、着露検出電極21−1〜21−nおよび参照コンデンサ70の各一端に接続し、基準電圧を印加して充電を行う。切り替え部32はスイッチであり、着露検出電極21−1〜21−nおよび参照コンデンサ70の各一端に接続して、着露検出電極と参照コンデンサとを切り替えることによって静電容量の出力を切り替える。なお、着露検出電極が複数ある場合には切り替え部32が各着露検出電極を切り替えるようにする。また、参照コンデンサ70についても、異なる静電容量を持つコンデンサを複数用意して、切り替え部32で出力を切り替えるようにしてもよい。
【0023】
CV変換部33は、静電容量/電圧変換(CV変換)して静電容量値を表す電圧データを得る。ただしCV変換以外の変換方法であってもよい。例えば、静電容量/周波数変換して静電容量値を表す周波数データを得る構成であってもよく、加えて周波数/電圧変換して電圧データを得る構成であってもよい。
【0024】
AD変換部34はアナログ/デジタルコンバータであり、CV変換部33の電圧出力をデジタルデータに変換して静電容量値を得る。静電容量値のデジタルデータは信号処理部40へ出力される。
【0025】
図6は、着露検出装置10の動作を示すフローチャートである。
信号処理部40は、電源起動時または制御部100からの指示により、初期化処理(ステップST1)を行う。初期処理では、信号処理部40内部に備えるメモリのクリアおよび初期値設定を行う。
【0026】
続く校正処理(ステップST2)において信号処理部40は、図5に示す切り替え部32が参照コンデンサ70と着露検出電極21とを切り替えて取得した静電容量値のデジタルデータを用い、参照コンデンサ70の静電容量と着露検出電極21の静電容量を比較して着露検出電極21の検出開始値を設定することにより、着露検出電極21を校正する。また、着露検出電極21の静電容量値が規定値(即ち、参照コンデンサ70の静電容量値)以内かを検定し、着露検出電極21の異常を検出する。なお、校正処理は割愛してもよい。
また、着露検出電極21を複数設けた場合には、切り替え部32が各着露検出電極21を切り替えて個別の静電容量値を順次、信号処理部40に出力するようにする。そして、信号処理部40は、個別の静電容量値それぞれについてステップST2〜ST7の処理を行うか、または静電容量値の総和についてステップST2〜ST7の処理を行う。
【0027】
校正処理が終了すると、信号処理部40は、静電容量検出部30より着露検出電極21の静電容量値のデジタルデータを取得開始し、着露検出を行う(ステップST3)。
続くトレンド処理(ステップST4)において信号処理部40は、校正処理時に設定した着露検出電極21の検出開始値をオフセット値とし、着露検出電極21の静電容量値からオフセット値を差し引く、即ち、着露検出電極21に着露がない場合、検出値0とする。なお、校正処理を割愛して検出開始値を設定していない場合にはトレンド処理も割愛してよい。
【0028】
続いて信号処理部40は、トレンド処理した着露検出値のデータに対してフィルタ処理(ステップST5)および平滑化処理(ステップST6)を行ってノイズを除去する。なお、検出値データの信号状態によりこれらの処理は割愛してもよい。
フィルタ処理(ステップST5)は、着露の高感度検出のために行う商用電源周波数成分除去処理であり、着露検出値データに混入した商用電源周波数などのノイズを、国内では50Hz/60Hzのノッチフィルタまたはコムフィルタを用いて除去する。従来ではアナログノッチフィルタにより実現している構成も見られるが、アナログフィルタであると、設置場所により回路変更しなくてはならず、コストアップにつながる。これを回避するために、例えばコムフィルタとしてデジタルフィルタを用い、リソースが比較的少なくてよいといわれるデジタルフィルタの1種であるIIR(Infinite Impulse Response)型コムフィルタとする。
【0029】
平滑化処理(ステップST6)は、短期的なノイズ成分を除去するために行う処理であり、移動平均または加算平均を用いる。着露検出値をx(t)とすると、平滑化後の出力値yは式(2)である。平均区間nは、初期化処理時に設定するが、それ以外にも、制御部100から随時設定してもよい。また、平均区間nは、短期間平均区間と長期間平均区間などと複数の平均区間を有してもよく、その場合には突発的なノイズの除去およびドリフトの影響を低減できる。


【0030】
続く検定処理(ステップST7)において信号処理部40は、着露検出値データの最大・最小値を設定し、その範囲を超えた場合は検出異常として、結露と判定する。異常時は、後述のステップST9において、例えば出力可能な最大値または最小値などの固定値を連続的に出力して制御部100側に報知してもよいし、異常を検出したフラグを立てたり、異常値を通知するコマンドを送信したりしてもよい。
【0031】
または、事前に求めていた多項式近似による着露検出モデルを用い、着露検出値から着露検出予測値を求め、その予測値を最終出力としてもよい。あるいは、着露検出値と着露検出予測値を比較し、その差分が規定範囲ならば正常とみなし、規定範囲外であれば異常(即ち、結露の可能性がある)として、上述のように検出異常とする処理を実施してもよい。
【0032】
例えば多項式近似による着露検出モデルを以下に仮定する。
ここでは、差分方程式モデルとして、ARXモデル(Auto Regressive with eXtrainput model)を用いた最小二乗法を用いる。ARXモデルは、時刻kのとき、入力をu(k)、出力をy(k)、雑音をw(k)として、下式(3)で与えられる。aおよびbは、事前にシミュレーションを行い、決定する。


【0033】
信号処理部40は、着露検出値を入力u(k)に用いて上式(3)より着露検出予測値y(k)を得て、着露検出値u(k)と比較して差分などを計算し、その計算値が規定以内であれば正常として着露検出値u(k)または着露検出予測値y(k)を伝送部50へ出力する。
【0034】
ここで、着露検出モデルはARXモデル以外にもARMAXモデル(Auto Regressive Moving Average eXtrainput model)など複数候補が挙げられるが、実機実験により最適なモデルを選択して、信号処理部40に設定するものとする。
【0035】
続く受信割込処理(ステップST8)および送信処理(ステップST9)は制御部100との間で行う伝送部50のデータ伝送処理に係る部分であって、例えば家電などで用いられているIICバス通信(Inter−IC bus)またはシリアル通信を用いる。
着露検出装置10からみた受信では、制御部100から送信されるデータおよびコマンドを伝送部50にて受信し(ステップST8)、その受信内容によっては(ステップST8“YES”)、ステップST1の初期化処理に移行する。
【0036】
着露検出装置10からみた送信では、所定のフォーマットで着露検出データ(上述した出力可能な最大値または最小値などの固定値、異常を検出したフラグ、異常値を通知するコマンド、着露検出値、着露検出予測値など)および着露検出装置10の状態を送信する(ステップST9)。この場合、送信データは通信路で誤りとなる可能性もあるため、送信パケットのチェックサムとして、送信パケットの総和の下位1バイトを最終パケットとして伝送してもよい。
【0037】
次に、着露検出装置10の適用例を説明する。
図7は、空調機200内に着露検出装置10を設置した例である。この空調機200は、空気吸込口側に熱交換機201が設置されており、この熱交換機201によって冷却された空気が風路202内のファン203によって空気吐出口側へ送風される。
着露検出装置10は、風路202内に直接設置してもよいが、図示例では塵埃およびカビの影響を避けるために風路202外に設置する。具体的には、風路202の外壁面204に着露検出部20の着露検出電極21を貼り付ける。外壁面204に貼付する場合には不図示の接地部60が必須であり、この接地部60を例えば空調機制御部206の回路に接地して回路接地電位にする。
【0038】
着露検出装置10を風路202の外壁面204に設置しても、静電容量検出のため、風路202およびファン203などの影響を受ける。しかし、信号処理部40において、静電容量値を検出開始値に対するDCオフセット値にするため、着露がない状態での静電容量値を測定して、校正処理およびトレンド処理により上記影響を除去できる。よって、風路202の内壁面205の着露を検出できる。なお、着露は、熱交換機201によって冷却された空気内の湿度が結露して発生するため、より温度が低い空気に曝される位置、即ち熱交換機201に近い位置に着露検出部20を設置することが好ましい。
【0039】
ここで、風路202内の空気はファン203により風流が発生しているため、この風流により内壁面205およびファン203から着露が剥離するなどして、空気吐出口から空調機200外へ飛散してしまうことがある。そこで、着露検出電極21をファン203の風流方向に複数設け、各着露検出電極21の着露を検出し、各着露検出電極21間の差分をとるなどして、着露分布を検出するようにしてもよい。
【0040】
空調機制御部206は、着露検出装置10から着露検出データを受信すると、結露防止動作として風路202内の結露を乾燥するための運転を空調機200に指示する。これにより、空調機200の空気吐出口からの水滴滴下を防止できる。
また、従来は、空調機の冷房運転終了時、電源遮断までにカビの発生等を予防するために、風路内、熱交換機、およびファンの結露を乾燥すべく乾燥運転を行うことが多かった。この結露乾燥運転は、決めうち制御である事例が多く、結露の状態に関係なく一定時間行いその後に電源を遮断する。これに対して、本実施の形態1の空調機200は着露検出装置10から着露検出データを受信するので風路202内の結露の状態を判断できる。このため、着露検出を観測することにより着露状態が把握できるため、状態に応じて乾燥運転時間を可変にする等して結露乾燥運転時間を抑制でき、結果として空調機200の消費電力の抑制を図ることができる。
【0041】
以上より、実施の形態1に係る着露検出装置10は、空調機を構成する部材の所定位置に設置される着露検出電極21を有する着露検出部20と、着露検出電極21の周辺に結露した水滴の静電容量を検出する静電容量検出部30と、静電容量検出部30が検出した静電容量値に基づき着露の検出信号を生成する信号処理部40と、信号処理部40が生成した検出信号を空調機の制御部100に伝送する伝送部50とを備えるように構成した。これにより、空調機部材の結露を空調機に報知することができ、空調機吹き出し口からの水滴滴下および空調機部材の腐食等を防止することができる。
【0042】
特に、着露検出電極21を空調機の風路に設置することにより、過剰な冷房または除湿運転による風路内の着露発生を検出できるようになる。これにより、空調機風路内の結露を空調機の制御部100に報知することができ、過剰な冷房および除湿運転による着露発生を抑制し、空調機吹き出し口からの水滴滴下を防止することができる。
また、着露検出装置10は、着露検出電極21との間に仮想のコンデンサを形成する、接地された接地部60を備え、静電容量検出部30は、誘電体となる結露の水滴の増加を仮想のコンデンサの静電容量として検出するように構成することにより、空調機の風路内に発生した着露を風路外から非接触で検出することができるようになる。この構成であれば、着露検出装置10が風路内の汚れ、カビ等の影響を受けず、耐汚損性を高めることができる。
【0043】
また、実施の形態1によれば、信号処理部40が、静電容量値に対してフィルタ処理および平滑化処理してノイズを除去するようにしたので、着露検出部20が商用電源、風路およびファン等の影響を受ける場合でも、それらの影響を除去して着露を検出することができる。
【0044】
また、実施の形態1によれば、着露検出部20が複数の着露検出電極21を有し、静電容量検出部30は、切り替え部32を用いて複数の着露検出電極21を切り替えて、各着露検出電極21の静電容量を個別に検出するか、または各着露検出電極21の静電容量の総和を検出するように構成した。このため、空調機部材の複数箇所に発生した着露を検出し、個別の検出結果または検出結果の総和を制御部100に報知することができる。よって、空調機部材の着露発生を抑制し、空調機部材の腐食等を防止することができる。
特に、複数の着露検出電極21を風路に、風流方向に並べて設置し、静電容量検出部30が切り替え部32を用いて複数の着露検出電極21を切り替えて、各着露検出電極21の静電容量値の総和を検出するように構成すれば、着露検出感度を向上することができる。また、この構成の場合に、静電容量検出部30が各着露検出電極21の静電容量を個別に検出し、信号処理部40が、各着露検出電極21の静電容量値の差分を求めて着露分布の状態を判定するように構成すれば、風路内で風流によって移動する結露の状況を把握することができる。
【0045】
また、実施の形態1によれば、着露検出装置10は所定の静電容量をもつ参照コンデンサ70を備え、静電容量検出部30は、切り替え部32を用いて着露検出電極21および参照コンデンサ70を切り替えてそれぞれの静電容量を検出し、信号処理部40は、参照コンデンサ70の静電容量値を用いて着露検出電極21の静電容量値を構成するか、または参照コンデンサ70と着露検出電極21の静電容量値を比較して着露検出電極21の検定を行うように構成した。このため、着露検出電極21の校正および検定を行うことができる。
【0046】
また、実施の形態1によれば、着露検出部20は水を吸収する誘電体である高分子膜25が設置された着露検出電極21を有するようにしたので、着露による静電容量が増加し、着露検出を増感することができる。
【0047】
実施の形態2.
本実施の形態2では、上記実施の形態1で説明した着露検出装置10の適用例を説明する。以下、図1および図7を援用して説明する。
図8は、空調機の配管210に着露検出装置10を設置した例である。この配管210には、気温より低温の冷却液(水、フロンなど)が流れている。例えば夏場に湿度が高くなるなど周囲の環境によっては、この配管210の周面にも着露することがある。また、この配管210は人目に触れない屋内設置場所(壁、天井、床など)に設置されることが多く、着露しても空調機利用者は判別することができない。
【0048】
そこで、配管210が空気に曝されている箇所に着露検出装置10を設置し、配管210周面の着露を検出して空調機制御部206に報知することにより、空調機制御部206が空調機を制御して冷却を抑制し、着露による屋内設備の腐食を防止することができる。なお、不図示の接地部60は例えば空調機制御部206の回路に接地して回路接地電位にする。
【0049】
以上より、実施の形態2によれば、着露検出部20が、空調機の配管210に設置される着露検出電極21を有する構成にしたので、配管210に生じる結露により配管周辺の構造物が腐食することを防止できる。
【0050】
また、実施の形態2の着露検出装置10についても、上記実施の形態1と同様に、着露検出電極21を複数設けて静電容量値の総和を用いることにより、検出感度を向上させてもよい。または、複数の着露検出電極21の静電容量値の差分から着露の分布状況を検出するようにしてもよい。さらに、着露検出電極21に高分子膜を設けて、着露による静電容量を増加させ、着露検出を増感させてもよい。
【0051】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2で説明した着露検出装置10は、誘電体の静電容量を検出できるため、水による着露だけでなく、氷の着氷または着霜を検出することもできる。そこで、本実施の形態3では着露検出装置10を、構成は変更せずに、着氷および着霜を検出可能な着氷検出装置10aとして利用する。
図9は、冷凍機の配管300に着氷検出装置10aを設置した例である。着氷検出装置10aは、着露検出部20に代えて着氷検出部20aを、着露検出電極21に代えて着氷検出電極21aを備えるが、名称を変更するのみで構成は変わらない。そのため、図9において図1〜図5に示す構成と同一または相当の部分に同一の符号を付し説明を省略する。
【0052】
図9の例では、冷凍機の配管300に着氷検出装置10aを設置する。着氷により配管300の周面が破損したり、腐食したりすることがある。そこで、配管300の周面に着氷検出装置10aを設置し、着氷を検出して冷凍機制御部301に報知することにより、配管300周面の破損・腐食を防止することができる。なお、不図示の接地部60は例えば冷凍機制御部301の回路に接地して回路接地電位にする。
【0053】
以上より、実施の形態3によれば、着氷検出部(着露検出部に相当する)20aが、冷凍機の配管300または熱交換機に設置される着氷検出電極(着露検出電極に相当する)21aを有し、静電容量検出部30は、着氷検出電極21aの周辺に結露した水滴または結氷した氷の静電容量を検出するように構成した。このため、冷凍機の配管300または熱交換機の着氷を検出することができるため、配管300または熱交換機が氷により腐食または破損することを防止できる。
【0054】
また、実施の形態3の着氷検出装置10aについても、上記実施の形態1と同様に、着氷検出電極21aを複数設けて静電容量値の総和を用いることにより、検出感度を向上させてもよい。または、複数の着氷検出電極21aの静電容量値の差分から着氷の分布状況を検出するようにしてもよい。さらに、着氷検出電極21aに高分子膜を設けて、着氷による静電容量を増加させ、着氷検出を増感させてもよい。
なお、冷凍機の配管だけでなく、冷蔵機の配管または熱交換機に着氷検出装置10aを設置して着氷および着霜を検出することも可能である。
【0055】
実施の形態4.
本実施の形態4では、上記実施の形態1〜3で説明した着露検出装置10(または着氷検出装置10a)の適用例を説明する。以下、図1〜図9を援用して説明する。
図10は、複数の着露検出装置10の配置例を示す。本実施の形態4では、複数の着露検出装置10(または着氷検出装置10a)が備える不図示の各伝送部50をバス接続し、広範囲の着露(または着氷)を検出する。
【0056】
図10(a)は、結露の流れ方向に対して直交する方向に、n(nは2以上の整数)個の着露検出装置10を1次元配置した例である。また、図10(b)は、結露の流れ方向と平行な方向に、n個の着露検出装置10を1次元配置した例である。着露検出装置10−1〜10−nにはそれぞれ固定のアドレス1〜nが割り振られており、空調機などの制御部400はそのアドレスを指定して着露検出データを受信する。これにより、結露の流れ方向に対して直交する方向または水平な方向の着露検出範囲を拡大できる。
【0057】
図11は、結露の流れ方向に対して直交する方向にn列、水平な方向にm(mは2以上の整数)列の着露検出装置10を2次元配置した例である。n×m個の着露検出装置10−1−1〜10−n−mには、上記同様にそれぞれ固定のアドレス1−1〜n−mが割り振られており、不図示の空調機などの制御部400はそのアドレスを指定して着露検出データを受信する。これにより、結露を面的に広く検出することができる。
【0058】
以上より、実施の形態4によれば、バス接続された複数の着露検出装置10−1〜10−nまたは着露検出装置10−1−1〜10−n−mが設置される場合に、各着露検出装置の伝送部50は、当該着露検出装置に割り振られた固定アドレスを有し、外部の制御部400から当該固定アドレスが指定されると着露の検出信号を伝送するように構成した。このため、より広範囲の着露検出を行うことができる。また、実施の形態4の構成を上記実施の形態3に係る着氷検出装置10aに適用した場合には、より広範囲の着氷検出を行うことができる。
【0059】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10,10−1−1〜10−n−m 着露検出装置、10a 着氷検出装置、20 着露検出部、20a 着氷検出部、21,21−1〜21−n 着露検出電極、21a 着氷検出電極、22,22−1,22−2 配線、23 接着部材、24 プリント基板、25 高分子膜、26 着露検出電極カバー、30 静電容量検出部、31 基準電圧印加部、32 切り替え部、33 CV変換部、34 AD変換部、40 信号処理部、50 伝送部、60 接地部、70 参照コンデンサ、100 制御部、101 検出対象物、102 表面、103 裏面、200 空調機、201 熱交換機、202 風路、203 ファン、204 外壁面、205 内壁面、206 空調機制御部、210 配管、300 配管、301 冷凍機制御部、400 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機を構成する部材の所定位置に設置される着露検出電極を有する着露検出部と、
前記着露検出電極の周辺に結露した水滴の静電容量を検出する静電容量検出部と、
前記静電容量検出部が検出した静電容量値に基づく着露の検出信号を生成する信号処理部と、
前記信号処理部が生成した検出信号を前記空調機に伝送する伝送部とを備える着露検出装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、静電容量値に対してフィルタ処理および平滑化処理してノイズを除去することを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項3】
前記着露検出部は、複数の着露検出電極を有し、
前記静電容量検出部は、前記複数の着露検出電極を切り替えて、各着露検出電極の静電容量を個別に検出するか、または各着露検出電極の静電容量の総和を検出することを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項4】
所定の静電容量をもつ参照コンデンサを備え、
前記静電容量検出部は、前記着露検出電極および前記参照コンデンサを切り替えてそれぞれの静電容量を検出し、
前記信号処理部は、前記参照コンデンサの静電容量値を用いて前記着露検出電極の静電容量値を校正するか、または前記参照コンデンサと前記着露検出電極の静電容量値を比較して前記着露検出電極の検定を行うことを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項5】
前記着露検出部は、水を吸収する誘電体が設置された着露検出電極を有することを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項6】
バス接続された複数の着露検出装置が設置される場合に、各着露検出装置の伝送部は、当該着露検出装置に割り振られた固定アドレスを有し、前記空調機から当該固定アドレスが指定されると検出信号を伝送することを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項7】
前記着露検出部は、空調機の風路に設置される着露検出電極を有することを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項8】
前記着露検出電極との間に仮想のコンデンサを形成する、接地された接地部を備え、
前記静電容量検出部は、誘電体となる結露の水滴の増加を前記仮想のコンデンサの静電容量として検出することを特徴とする請求項7記載の着露検出装置。
【請求項9】
前記着露検出部は、前記風路に、風流方向に並べて設置される複数の着露検出電極を有し、
前記静電容量検出部は、前記複数の着露検出電極を切り替えて、各着露検出電極の静電容量の総和を検出することを特徴とする請求項7記載の着露検出装置。
【請求項10】
前記着露検出部は、前記風路に、風流方向に並べて設置される複数の着露検出電極を有し、
前記静電容量検出部は、前記複数の着露検出電極を切り替えて、各着露検出電極の静電容量を個別に検出し、
前記信号処理部は、各着露検出電極の静電容量値の差分を求めて着露分布の状態を判定することを特徴とする請求項7記載の着露検出装置。
【請求項11】
前記着露検出部は、空調機の配管に設置される着露検出電極を有することを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項12】
前記着露検出部は、冷凍機の配管または熱交換機に設置される着露検出電極を有し、
前記静電容量検出部は、前記着露検出電極の周辺に結露した水滴または結氷した氷の静電容量を検出することを特徴とする請求項1記載の着露検出装置。
【請求項13】
空調機を構成する部材の所定位置に設置された着露検出電極の周辺に結露した水滴の静電容量を検出する静電容量検出ステップと、
前記静電容量検出ステップで検出した静電容量値に基づき着露の検出信号を生成する信号処理ステップと、
前記信号処理ステップで生成した検出信号を前記空調機に伝送する伝送ステップとを備えることを特徴とする着露検出方法。
【請求項14】
請求項1記載の着露検出装置と、
前記着露検出装置の伝送部が伝送する検出信号を受信して、当該検出信号に応じて空調機の運転を制御する制御部とを備えることを特徴とする空調機。
【請求項15】
複数の前記着露検出装置はバス接続され、伝送部は当該着露検出装置に割り振られた固定アドレスを有し、
前記制御部は、前記固定アドレスを指定して当該着露検出装置から検出信号を受信することを特徴とする請求項14記載の空調機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−98044(P2012−98044A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243347(P2010−243347)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】