説明

睡眠健康改善剤

【課題】副作用の懸念のない飲食品等の睡眠健康改善剤を得る。
【解決手段】オリゴ糖等のプレバイオティクス、又は酪酸菌、納豆菌、有胞子性乳酸菌等のプロバイオティクスを有効成分とする睡眠健康改善剤、及びプレバイオティクス又はプロバイオティクスを有効成分として含有し、睡眠改善効果を有する旨の表示を付した飲食品。プレバイオティクスは1食あたり1g以上、プロバイオティクスは1食あたり菌原体として10mg(菌数にして約10個)以上とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副作用の懸念のない睡眠健康改善剤、及びこれを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プレバイオティクス及びプロバイオティクスは、便通状態及び腸内環境の改善に有用であることが知られている(非特許文献1、2)。また、おなかの調子を整える、あるいは血中コレステロールの上昇を抑える、等の効果を示す特定保健用食品の有効成分としても認知され、広く利用されている。しかしながら、これらプレバイオティクス及びプロバイオティクスが睡眠健康の改善に有効であるかどうかはわかっていなかった。
【0003】
一方、各種の薬剤が睡眠薬として用いられている。しかしながら、睡眠薬には、副作用の懸念があり、一般には医師の処方により服用するのが原則である。
【0004】
【非特許文献1】日高秀昌、坂野好幸編、「健康の科学シリーズ8、糖と健康」、p.66〜71、学会センター関西、1998年
【非特許文献2】光岡知足編、「ビフィズス菌の研究」、p.221〜228、日本ビフィズス菌センター、1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、安全で副作用の懸念がない睡眠健康改善剤を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プレバイオティクス及びプロバイオティクスから選ばれる成分を睡眠健康改善のために用いるものである。
【0007】
すなわち本発明は、プレバイオティクス又はプロバイオティクスを有効成分とする睡眠健康改善剤、及びプレバイオティクス又はプロバイオティクスを有効成分として含有し、睡眠健康改善効果を有する旨の表示を付した飲食品に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、便通改善と睡眠改善の効果が同時に得られ、かつ飲食品として摂取可能で副作用の懸念がないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
プレバイオティクスとは、結腸内に住み付いている有用菌だけの増殖を促進したり、あるいは、その活性を高めることによって宿主(人)の健康に有利に作用する難消化性食品成分をいう。また、プロバイオティクスとは、腸内微生物のバランスを改善することによって宿主に有益に働く生菌添加物をいう。これらプレバイオティクス及びプロバイオティクスは、腸内有用菌を増殖させることで腸内環境を改善し、その結果、糞便量が増加する等の作用により消化管運動を活性化する。
本発明者は、かかるプレバイオティクス及びプロバイオティクスの便通状態及び腸内環境改善効果に着目し、これらを摂取することでもたらされる生理学的な生体への作用を検討した結果、睡眠健康が改善されることを見出した。
【0010】
本発明に用いられるプレバイオティクスとしてはオリゴ糖が挙げられ、具体的には、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース等が挙げられる。
【0011】
オリゴ糖により睡眠健康改善効果を得るには、例えば形態が食品である場合、1食あたりの食品中に好ましくは1g以上、より好ましくは3g以上、さらに好ましくは5〜25gのオリゴ糖を配合する。
【0012】
本発明に用いられるプロバイオティクスとしては、酪酸菌(Clostridium butyricum)、納豆菌、有胞子性乳酸菌(Bacillus coagulance)、乳酸菌(Lactobacillus、 Bifidobacterium等)等が挙げられる。このうち、酪酸菌及び有胞子性乳酸菌は、胞子を形成しているので耐酸性を有し、経口で摂取した際、胃酸により死滅することなく効果的に目的臓器である大腸に到達することができることから特に好ましい。
【0013】
プロバイオティクスにより睡眠改善効果を得るには、例えば形態が食品であり有胞子性乳酸菌を利用する場合、1食あたり菌原体として好ましくは10mg以上(菌数にして約10個以上)、より好ましくは20mg以上、さらに好ましくは30〜50mgとなるよう配合する。
【0014】
プレバイオティクス及びプロバイオティクスは、それらに属する有効成分の単独使用のみに限定されず、2種類以上を組み合せても使用することができる。また、プレバイオティクスとプロバイオティクスとを組み合せて使用することもできる。
【0015】
本発明の睡眠健康改善剤の形態としては、プレバイオティクス及び/又はプロバイオティクスを経口で摂取できる形態であれば特に限定されず、機能性食品、健康食品、スナック食品等の飲食品や医薬品等とすることができる。飲食品としては、例えばクッキー状、フレーク状、ウェハー状、錠剤、顆粒剤、スナック菓子、調味料、テーブルシュガー、飲料等の形態が挙げられる。
【0016】
本発明の睡眠健康改善剤をこれら飲食品の形態にするには、前記プレバイオティクス及び/又はプロバイオティクス以外に、デンプン、デキストリン、ブドウ糖、果糖、砂糖、ソルビトール、エリスリトール等の糖類;カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク質、卵白等のタンパク質類;炭酸カルシウム、乳酸鉄等のミネラル類;ビタミンA、B、B、B12、C、E等のビタミン類;米、大麦、小麦、大豆、とうもろこし、各種野菜、肉類、食用油、調味料、乳化剤、糊料、賦形剤、酸味料、着色料、香料、水等を適宜単独または組み合せて配合することができる。
【0017】
なお、本発明で「睡眠健康改善効果」を示すとは、「睡眠健康危険度総得点」が減少することをいう。「睡眠健康危険度総得点」は、第1因子:睡眠維持障害関連因子、第2因子:睡眠随伴症(パラソムニア)関連因子、第3因子:睡眠時無呼吸関連因子、第4因子:起床困難関連因子および第5因子:入眠障害関連因子から構成される各因子について、所定の質問項目に付した評点を集計して求める[ジャーナル・オブ・サイコソマティック・リサーチ(Journal of Psychosomatic Research)、2004年、第56巻、 p.465-477]。睡眠健康危険度総得点は、得点が高い程、睡眠健康に問題がある(危険度が高い)ことを示している。
【0018】
本発明で「便通改善効果」を示すとは、消化器疾患の基準の一つであるローマ基準II[ガット(Gut)、 1999年、45: II3-II7、]で機能性便秘(functional constipation: FC)又は過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の症状が軽減することをいう。
【実施例】
【0019】
実施例1
以下の組成の飲料100mlを製造した。
【0020】
成分 質量%
乳果オリゴ糖 5
還元麦芽糖水あめ 3
エリスリトール 6
香料 0.2
クエン酸 0.3
水 残量
【0021】
この飲料を試験食として1日あたり1本、1ヵ月間、ローマ基準IIでFCと判定された被験者10名を対象に摂取させた。試験食を摂取することにより、睡眠健康危険度総得点は、摂取前の3.72(10名平均)から摂取終了後の2.01(10名平均)に改善した。
【0022】
一方、この飲料を試験食として1日あたり1本、1ヵ月間、毎日便通がありかつ排便に関する愁訴がなく、ローマ基準IIでFCに該当しない便通良好者9名を対象に摂取させたところ、睡眠健康危険度総得点は、摂取前の1.80(9名平均)から摂取終了後の1.74(9名平均)とほとんど変化しなかった。
【0023】
実施例2
以下の組成となるよう、各成分を攪拌混合して打錠し、直径9mm、300mgの錠剤を得た。本錠剤を1錠摂取することで、30mgの有胞子性乳酸菌を摂取することができる。
【0024】
成 分 配合量
有胞子性乳酸菌 30mg
含水結晶ブドウ糖 140mg
結晶セルロース 60mg
卵殻カルシウム 40mg
ショ糖脂肪酸エステル 30mg


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレバイオティクス又はプロバイオティクスを有効成分とする睡眠健康改善剤。
【請求項2】
プレバイオティクスがオリゴ糖である請求項1記載の睡眠健康改善剤。
【請求項3】
プロバイオティクスが酪酸菌、納豆菌及び有胞子性乳酸菌から選ばれるものである請求項1記載の睡眠健康改善剤。
【請求項4】
機能性便秘又は過敏性腸症候群の症状を有するヒトに適用される請求項1〜3のいずれかに記載の睡眠健康改善剤。
【請求項5】
プレバイオティクス又はプロバイオティクスを有効成分として含有し、睡眠健康改善効果を有する旨の表示を付した飲食品。
【請求項6】
プレバイオティクスがオリゴ糖である請求項5記載の飲食品。
【請求項7】
プロバイオティクスが酪酸菌、納豆菌及び有胞子性乳酸菌から選ばれるものである請求項5記載の飲食品。
【請求項8】
機能性便秘又は過敏性腸症候群の症状を有するヒトに適用される請求項5〜7のいずれかに記載の飲食品。

【公開番号】特開2006−160697(P2006−160697A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357469(P2004−357469)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】