説明

睡眠改善用組成物

【課題】 本発明の目的は、人や動物の精神を鎮静させる作用に優れている鎮静用組成物、睡眠を改善して良好な睡眠状態を導くことができる睡眠改善用組成物を提供することである。
【解決手段】 一般式(1)で表される化合物[式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基又はメチル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、Aは、エチレン基又はビニレン基を示し、
nは、0〜10の整数を示す]を用いて、鎮静用組成物及び睡眠改善用組成物を製造する。
【化1】



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮静用組成物に関する。より詳細には、人や動物の精神を鎮静させる作用に優れている鎮静用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレス等による精神的な悪影響を軽減し、精神を鎮静化する手段として、近年、各種の植物由来の精油成分を利用したアロマセラピーが注目されている。特に、鎮静作用を示す精油の中でも、サンダルウッド油は、睡眠を改善する作用に優れており、鎮静用香料として有用であることが分かっている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかしながら、サンダルウッドは、近年、乱伐採によってその個体数が急激に減少しており、該植物から生産されるサンダルウッド油も減少の一途を辿っている。このようなサンダルウッド油の生産量の減少に伴って、今日では、サンダルウッド油と同質の香りを呈する合成化合物の開発が精力的に進められている。その一方、サンダルウッド油による鎮静作用は、嗅知されるサンダルウッド油の香りとは直接的な因果関係がないことが分かっており、サンダルウッドと同質又は近似する香りを呈する化合物であってもその鎮静作用の存否については全く類推できるものではない。そのため、サンダルウッドと同質又は近似する香りを呈する合成化合物の内、どのような構造の化合物を選択し使用すれば鎮静効果や睡眠改善効果が得られるかについては、全く分かっていないのが現状である。
【特許文献1】特開平7−316582号公報
【特許文献2】特公平7−57734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、人や動物の精神を鎮静させる作用に優れている鎮静用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、下記の一般式(1)で表される化合物は、サンダルウッドと同質又は近似する香りを呈すると共に、精神を鎮静する作用や、安眠を誘発する作用に優れていることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて、更に検討を重ねて開発されたものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供するものである:
項1. 一般式(1)で表される化合物
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基又はメチル基を示し、
及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、
Aは、エチレン基又はビニレン基を示し、
nは、0〜10の整数を示す]
を含有することを特徴とする、鎮静用組成物。
項2. 一般式(1)において、R〜Rの内、少なくとも3つがメチル基である、項1に記載の鎮静用組成物。
項3. 一般式(1)において、R〜Rが全てメチル基であってR〜Rが全て水素原子である、項1に記載の鎮静用組成物。
項4. 一般式(1)において、R及びRの内、何れか一方又は双方がメチル基である、項1に記載の鎮静用組成物。
項5. 一般式(1)において、nが0〜2である、項1に記載の鎮静用組成物。
項6. 一般式(1)において、R〜Rが全てメチル基であり、R〜Rが全て水素原子であり、R及びRの内、何れか一方又は双方がメチル基である、項1に記載の鎮静用組成物。
項7. 一般式(1)で表される化合物が、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがエチレン基、nが0である化合物、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがビニレン基、nが0である化合物、又は
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、R及びRがメチル基、Aがビニレン基で、nが0である化合物
である、項1に記載の鎮静用組成物。
項8. 鎮静用組成物中で、一般式(1)で表される化合物及び香料成分の総量に対して、一般式(1)で表される化合物が占める割合が10重量%以上である、項1乃至7のいずれかに記載の鎮静用組成物。
項9. 芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、又は食品の形態である、項1乃至8のいずれかに記載の鎮静用組成物。
項10. 一般式(1)で表される化合物
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基又はメチル基を示し、
及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、
Aは、エチレン基又はビニレン基を示し、
nは、0〜10の整数を示す]
を含有することを特徴とする、睡眠改善用組成物。
項11. 一般式(1)において、R〜Rの内、少なくとも3つがメチル基である、項10に記載の睡眠改善用組成物。
項12. 一般式(1)において、R〜Rが全てメチル基であってR〜Rが全て水素原子である、項10に記載の睡眠改善用組成物。
項13. 一般式(1)において、R及びRの内、何れか一方又は双方がメチル基である、項10に記載の睡眠改善用組成物。
項14. 一般式(1)において、nが0〜2である、項10に記載の睡眠改善用組成物。
項15. 一般式(1)において、R〜Rが全てメチル基であり、R〜Rが全て水素原子であり、R及びRの内、何れか一方又は双方がメチル基である、項10に記載の睡眠改善用組成物。
項16. 一般式(1)で表される化合物が、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがエチレン基、nが0である化合物、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがビニレン基、nが0である化合物、又は
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、R及びRがメチル基、Aがビニレン基で、nが0である化合物
である、項10に記載の睡眠改善用組成物。
項17. 睡眠改善用組成物中で、一般式(1)で表される化合物及び香料成分の総量に対して、一般式(1)で表される化合物が占める割合が10重量%以上である、項10乃至16のいずれかに記載の睡眠改善用組成物。
項18. 芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、又は食品の形態である、項10乃至17のいずれかに記載の睡眠改善用組成物。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明において、「鎮静用組成物」とは、人や動物の精神を鎮静させることにより、リラックスさせ、又は睡眠を改善させるために使用されるものである。また、本発明において、「睡眠改善用組成物」とは、起床時の眠気を改善する、入眠をスムーズにする、中途覚醒を減らす、等の作用によって、安眠を誘発して良好な睡眠状態を導くために使用されるものである。
【0012】
本発明の鎮静用組成物は、下記一般式(1)の化合物を含有することを特徴とするものである。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基又はメチル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。一般式(1)の化合物において、R〜Rの内、少なくとも3つがメチル基であることが好ましく、特にR〜Rが全てメチル基であってR〜Rが全て水素原子であることが好ましい。
【0015】
また、式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。一般式(1)の化合物において、R及びRの内、何れか一方又は双方がメチル基であることが望ましい。
【0016】
式中、Aは、エチレン基(CH2−CH2)又はビニレン基(CH=CH)である。
【0017】
また、式中、nは0〜10の整数である。一般式(1)の化合物において、好ましくはnが0〜2であり、更に好ましくはnが0又は1であり、特に好ましくはnが0である。
【0018】
本発明に使用される一般式(1)の化合物の内、好適な化合物の具体例として、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがエチレン基、及びnが0である化合物(即ち、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール);
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがビニレン基、及びnが0である化合物(即ち、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール);及び
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、R及びRがメチル基、Aがビニレン基、及びnが0である化合物(即ち、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール)
が例示される。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物は、公知化合物、又は公知化合物から容易に誘導される化合物である。一般式(1)で表される化合物は、基本骨格や置換基の種類等に応じて、種々の公知の合成方法により製造される。
【0020】
例えば、一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物(式中、R〜R及びnは前記と同じ)と、適当なアルデヒド又はケトンとを適当な条件でアルドール縮合させ、更に適当な条件で還元することによって得ることができる。
【0021】
【化4】

【0022】
また、一般式(1)で表される化合物の原料化合物として使用される一般式(2)で表される化合物は、公知化合物又は公知化合物から容易に誘導される化合物である。例えば、一般式(2)で表される化合物がカンフォレナール(campholenicaldehyde;一般式(2)中、R〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、nが0である化合物)の場合であれば、α−ピネン(α-pinene)をエポキシ化し、得られたエポキサイドをZnBr存在下で適当な条件で反応させることにより得ることができる。
【0023】
本発明の鎮静用組成物において、上記一般式(1)で表される化合物として、1種の化合物を単独で使用してもよく、また2種以上の化合物を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0024】
上記一般式(1)で表される化合物には、それ自体サンダルウッド系の芳香を呈するものも含まれる。本発明の鎮静用組成物には、上記一般式(1)で表される化合物以外に、天然の植物及び動物より既存の抽出方法により得られる精油成分や合成香料等の香気を呈する成分(以下、「香料成分」と表記する)が含有されていても良い。但し、このような場合、本発明の鎮静用組成物において、上記一般式(1)で表される化合物と香料成分(一般式(1)で表される化合物以外の香料成分)の合計量に対して、上記一般式(1)で表される化合物が10重量%以上、好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上であることが望ましい。このような割合で上記一般式(1)で表される化合物を使用することによって、本発明の効果を顕著ならしめることができる。
【0025】
本発明の鎮静用組成物は、上記一般式(1)で表される化合物のみから構成されていてもよいが、使用形態に応じて、担体、基材又は添加物等の他の成分を含有していてもよい。本発明の鎮静用組成物において、上記一般式(1)で表される化合物の配合割合としては、該組成物の使用形態、期待される効果の程度、使用者の性別や年齢等によって異なるが、一例として、該組成物の総重量に対して、一般式(1)で表される化合物が0.01〜100重量%、好ましくは0.05〜80重量%となる割合が挙げられる。
【0026】
本発明の鎮静用組成物は、上記一般式(1)で表される化合物が吸入又は吸収されるように調製されている限り、その形態については特に制限されない。本発明の鎮静用組成物の形態として、具体例には、芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、食品等が挙げられる。好ましくは、芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤であり、更に好ましくは、芳香剤、香粧品である。
【0027】
芳香剤としては、例えば、寝室用、リビング用、トイレ用、玄関用、浴室用、クローゼット用、タンス用等の従来から芳香剤として使用されているものが挙げられる。芳香剤の形態についても、制限されるものではなく、固体状、半固体状(ゼリー状、ゲル状等)、液体状、エアゾール状等の様々な形態が使用される。また、当該芳香剤は、上記一般式(1)で表される化合物を自然蒸散させることにより使用してもよく、また該化合物を加熱により蒸散させてもよい。特に、上記一般式(1)で表される化合物が揮発性に乏しい場合には、加熱により蒸散させることが望ましい。
【0028】
本発明の鎮静用組成物を芳香剤の形態にする場合、本発明の鎮静用組成物には、上記一般式(1)で表される化合物に加えて、従来芳香剤に使用されてきた基剤、担体、添加剤等の成分を含有させることができる。芳香剤に配合される基剤としては、例えば、水、エタノール、固体又は液体の陰イオン性、陽イオン性、非イオン性活性剤、高分子剤、油脂、グアガム、キサンタンガム、アラビアガム、ジェランガム、カラギーナン、ゼラチン、寒天、非水溶性溶剤、ろう、ワセリン、ラノリン等が挙げられる。
【0029】
本発明の鎮静用組成物を芳香剤形態にする場合、一般式(1)で表される化合物の特に好適な配合割合としては、該組成物中に一般式(1)で表される化合物が5〜80重量%、更に好ましくは40〜60重量%となる割合が挙げられる。
【0030】
香粧品には、化粧料に加えて、石鹸等の生体洗浄剤、入浴剤等も包含される。香粧品の具体例としては、クリーム、乳液、化粧パウダー、ボディーローション、整髪料、洗髪料、石鹸、ボディーソープ、制汗剤、シャンプー、リンス、香水、化粧水、練歯磨、液体歯磨、洗口剤、マウスペット、サンスクリーン、台所用洗剤、マッサージオイル、マッサージクリーム、スキンケアオイル、等が例示される。本発明の鎮静用組成物を香粧品の形態にする場合、本発明の鎮静用組成物には、上記一般式(1)で表される化合物に加えて、従来香粧品に使用されてきた基剤や添加剤等の成分を含有させることができる。基剤としては、特に制限されないが、例えば、水、エタノール、タルク、ゼラチン、ろう、ワセリン、ラノリン等が挙げられる。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、保湿剤、皮膚柔軟剤、防腐剤、溶解剤、香料等が挙げられる。
【0031】
本発明の鎮静用組成物を芳香剤形態にする場合、一般式(1)で表される化合物の特に好適な配合割合としては、該組成物中に一般式(1)で表される化合物が0.01〜50重量%、更に好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜1重量%となる割合が挙げられる。
【0032】
吸入投与剤とは、上記一般式(1)で表される化合物を鼻付近で揮散又は鼻腔に適用させて意図的に該化合物を吸入させる製剤のことであり、その具体例としては点鼻薬、噴霧剤、吸入液、該化合物を担持させたマスク等が挙げられる。本発明の鎮静用組成物を吸入投与剤の形態にする場合、本発明の鎮静用組成物には、上記一般式(1)で表される化合物に加えて、従来吸入投与剤に使用されてきた基剤や添加剤等の成分を含有させることができる。また、吸入用の気体を使用する場合も従来の吸入投与剤に使用されてきた気体を使用することができる。当該吸入投与剤の投与は、特に制限されないが、1回当たり5〜60秒で1日当たり1〜10回程度行なうのが好ましい。また制限されないが、当該吸入投与剤は、使用時に、吸入される気体中に上記一般式(1)で表される化合物が、通常0.000001ppm〜10ppm、好ましくは0.00001ppm〜0.1ppm、更に好ましくは0.0001ppm〜0.001ppm程度の濃度で揮散するように適宜設定しておくことが望ましい。
【0033】
繊維製品用洗剤としては、例えば、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性若しくは両性イオン性の洗剤、繊維製品柔軟剤、繊維製品柔軟用製品、ドライヤー用繊維柔軟剤製品等が挙げられる。本発明の鎮静用組成物が繊維製品用洗剤の形態の場合、繊維製品の洗浄によって、上記一般式(1)で表される化合物を繊維製品に付着させることができ、該化合物が付着した繊維製品の使用を通して優れた鎮静作用を得ることができる。本発明の鎮静用組成物を繊維製品用洗剤の形態にする場合、本発明の鎮静用組成物には、上記一般式(1)で表される化合物に加えて、従来から繊維製品用洗剤に使用されている他の成分を使用することができる。
【0034】
本発明の鎮静用組成物を繊維製品用洗剤形態にする場合、一般式(1)で表される化合物の特に好適な配合割合としては、該組成物中に一般式(1)で表される化合物が0.01〜10重量%、更に好ましくは0.05〜5重量%となる割合が挙げられる。
【0035】
食品としては、例えば、健康食品、病者用食品、特定保健用食品、栄養補助食品等が挙げられる。特に制限されないが、鎮静効果を効率よく得るためには、口中に比較的長い時間留まり口腔粘膜を経由して上記一般式(1)で表される化合物が吸入される形態のものや、茶、着香料等のように口に入れる前に上記一般式(1)で表される化合物が揮散して鼻腔粘膜を経由して吸入されるものが好ましい。このような食品として、具体的には、ガム、茶、飲料、飴、着香料、香辛料、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、可食フィルム等が挙げられる。本発明の鎮静用組成物を食品の形態にする場合、本発明の鎮静用組成物は、上記一般式(1)で表される化合物の内、食品衛生上許容されるものを選択して、食品の一成分として配合することにより調製される。食品形態に調製された本発明の鎮静用組成物は、鎮静用食品として、或いは鎮静のために使用される旨、安眠促進のために使用される旨、ストレス緩和のために使用される旨、又は睡眠を改善するために使用される旨が表示された食品として有用である。
【0036】
本発明の鎮静用組成物を食品形態にする場合、一般式(1)で表される化合物の特に好適な配合割合としては、該組成物中に一般式(1)で表される化合物が0.01〜10重量%なる割合が挙げられる。
【0037】
上記の他に、本発明の鎮静用組成物の形態として、例えば、布団、枕等の寝具;衣類;カーテン;ドア;網戸;内装材;ソファー等の生活用品や、ペット用品等に対して、上記一般式(1)で表される化合物を噴霧又は塗布させる態様で使用されるものが挙げられる。かかる形態の鎮静用組成物を使用することにより、上記一般式(1)で表される化合物が付着した各種用品から上記一般式(1)で表される化合物が揮散され、これによって優れた鎮静効果を得ることができる。このような形態のものとして、好適には、スプレー製剤、エアゾール製剤、液状、ジェル状又はクリーム状の製剤、またそれらを不織布等に含浸させたもの等が例示される。
【発明の効果】
【0038】
本発明の鎮静用組成物は、サンダルウッドと同質又は近似する香りを呈すると共に、人や動物に対して優れた精神鎮静作用を発揮することができる。
【0039】
また、本発明の鎮静用組成物は、優れた鎮静作用に加え、優れた睡眠改善作用、疲労回復作用、ストレス緩和作用又はリラックス作用をも有しているので、睡眠改善用組成物、疲労回復用組成物、ストレス緩和用組成物又はリラックス用組成物としても有用である。中でも特に、本発明の鎮静用組成物は、安眠を誘発して良好な睡眠状態を導くための睡眠改善用組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験例
軽度の不眠を自覚している健常成人5名(男性3名、女性2名)を被験者として、表1に示す組成物(実施例1−3及び比較例1−3)の鎮静作用の評価試験を、以下の方法に従って実施した。実施例1−3及び比較例1−3の組成物は、いずれもサンダルウッド系の芳香を呈するものである。
【0041】
【表1】

【0042】
各被験者に、表1に示す組成物に含まれる芳香化合物を揮散させた状態の寝室で就寝させた。なお、各被験者の就寝の1時間前から、加熱式芳香用ホットプレートに芳香剤組成物0.5gを含浸させたフェルト(縦35mm、横15mm、厚さ2mm;パルプ製)をおき、ホットプレートの温度を80℃に調整して芳香化合物を寝室内に揮散させておき、就寝中の寝室内に芳香化合物の濃度が5×10−4ppm程度で一定に保持されるように調整しておいた。被験者には、就寝時にマイクロミニR・R型アクティグラフ(米国AMI社製;サタニ商事株式会社より入手)を非利き腕に装着させて、就寝中の身体の微細な動きを測定し、数値化した。また、併せて「山本由華吏等、"中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠調査票(MA版)の開発と標準化"、脳と精神の医学、第10巻、第4号、1999年、第401-409」で報告されている方法に従って、被験者にOSA睡眠調査票の各項目について判定してもらい、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間の各因子について評価した。
【0043】
また、コントロールとして、表1に示す組成物の代わりに、プロピレングリコールのみ(コントロール1)又はサンダルウッド油(インドマイソール産)50重量%及びプロピレングリコール50重量%を含む組成物(コントロール2)を用いて、上記同様に評価を行った。
【0044】
得られた結果を図1〜6に示す。図1〜3には、ぞれぞれ実施例1〜3の組成物の結果を示し、;図4〜6には、ぞれぞれ比較例1〜3の組成物の結果を示す。また、図1〜6において、Aには、マイクロミニR・R型アクティグラフにより測定した就寝中の活動量(5人の被験者の平均値)(単位:アクチグラフカウント数)を示し;Bには、OSA睡眠調査票の各項目の判定結果に基づいて、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復及び睡眠時間の各因子について数値化した結果(5人の被験者の平均値)を示す。各図のAにおいて、就寝中の活動量が多い程、眠りが浅いことを示し、各図のBにおいて、各項目の判定数値が大きい程、睡眠状態が良好であることを示す。
【0045】
図1〜3に示すように、実施例1〜3の組成物を使用した場合、就寝中の活動量がサンダルウッド油の場合と同程度又はそれ以下であり、優れた精神鎮静作用、安眠誘発作用、或いはリラックス作用が発揮されていることが確認された。また、同様の傾向は、OSA睡眠調査の判定結果からも確認された。特に、OSA睡眠調査の判定結果から、実施例1〜3の組成物は疲労回復作用に優れていることが分かった。一方、図4〜6に示すように、比較例1〜3の組成物は、実施例1〜3の組成物と同様のサンダルウッド系の芳香を呈しても、精神を鎮静させる作用や睡眠を改善する作用は備えていないことが確認された。
【0046】
実施例4
下記組成の香粧品(クリーム剤)を常法に従って調製した。
単位:重量%
3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル
-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール 0.10
1,3-ブチレングリコール 3.00
カルボキシビニルポリマー(商品名「カーボポール980」、
BF Goodrich社製) 0.20
モノステアリン酸ポリオキシエチレン
(商品名「イオネットT-60C」、三洋化成製) 4.70
ステアリン酸 1.00
パルチミン酸セチル 2.00
ベヘニルアルコール 3.00
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5.00
スクワラン 10.00
水酸化ナトリウム 適量
メチルパラベン 適量
パラオキシ安息香酸エステル 適量
精製水 残部
合計 100.00重量%
【0047】
実施例5
3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オールの代わりに、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オールを使用すること以外は、上記実施例4と同様の組成で、香粧品(クリーム剤)を調製した。
【0048】
実施例6
3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オールの代わりに、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オールを使用すること以外は、上記実施例4と同様の組成で、香粧品(クリーム剤)を調製した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】試験例1において、実施例1の組成物の精神鎮静効果及び睡眠改善効果等について評価した結果である。Aには、マイクロミニR・R型アクティグラフにより測定した就寝中の活動量(縦軸;単位はアクチグラフカウント数)を示し;Bには、OSA睡眠調査票の各項目の判定結果に基づいて、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復及び睡眠時間の各因子について数値化した結果(縦軸;判定数値)を示す。
【図2】試験例1において、実施例2の組成物の精神鎮静効果及び睡眠改善効果等について評価した結果である。図中のA及びBが表示する項目は、図1の場合と同様である。
【図3】試験例1において、実施例3の組成物の精神鎮静効果及び睡眠改善効果等について評価した結果である。図中のA及びBが表示する項目は、図1の場合と同様である。
【図4】試験例1において、比較例1の組成物の精神鎮静効果及び睡眠改善効果等について評価した結果である。図中のA及びBが表示する項目は、図1の場合と同様である。
【図5】試験例1において、比較例2の組成物の精神鎮静効果及び睡眠改善効果等について評価した結果である。図中のA及びBが表示する項目は、図1の場合と同様である。
【図6】試験例1において、比較例3の組成物の精神鎮静効果及び睡眠改善効果等について評価した結果である。図中のA及びBが表示する項目は、図1の場合と同様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物
【化1】

[式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基又はメチル基を示し、
及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、
Aは、エチレン基又はビニレン基を示し、
nは、0〜10の整数を示す]
を含有することを特徴とする、鎮静用組成物。
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物が、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがエチレン基、nが0である化合物、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがビニレン基、nが0である化合物、又は
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、R及びRがメチル基、Aがビニレン基で、nが0である化合物
である、請求項1に記載の鎮静用組成物。
【請求項3】
芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、又は食品の形態である、請求項1又は2に記載の鎮静用組成物。
【請求項4】
一般式(1)で表される化合物
【化2】

[式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基又はメチル基を示し、
及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、
Aは、エチレン基又はビニレン基を示し、
nは、0〜10の整数を示す]
を含有することを特徴とする、睡眠改善用組成物。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物が、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがエチレン基、nが0である化合物、
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがビニレン基、nが0である化合物、又は
〜Rがメチル基、R〜Rが水素原子、R及びRがメチル基、Aがビニレン基で、nが0である化合物
である、請求項4に記載の睡眠改善用組成物。
【請求項6】
芳香剤、香粧品、吸入投与剤、繊維製品用洗剤、又は食品の形態である、請求項4又は5に記載の睡眠改善用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−31384(P2007−31384A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219377(P2005−219377)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】