説明

睡眠時無呼吸症候群の検査器具

【課題】呼吸センサとパルスオキシメータとを組み合わせることで、測定する人に嫌悪感を与えることなく、簡易に装着することができ、かつ無呼吸又は低呼吸の回数を正確に測定する。
【解決手段】鼻呼吸センサ2と、口呼吸センサ3と、顔面の任意の部位における経皮的動脈血酸素飽和度及び脈拍数を計測するパルスオキシメータ7と、鼻呼吸センサ2及び口呼吸センサ3による検出結果と前記パルスオキシメータ7による計測結果とに基づいて無呼吸状態又は低呼吸状態の有無を検出し、検出された無呼吸状態又は低呼吸状態の回数に基づいて算出した無呼吸低呼吸指数を出力する制御部13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が睡眠中に10秒以上の無呼吸又は低呼吸が何回あるかを測定する検査技術に係り、特に家庭において簡単に検査することができる簡易型の睡眠時無呼吸症候群の検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、一晩(7時間程度)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこること、又は、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上おこることと定義されており、睡眠中に呼吸が止まった状態(無呼吸)が断続的に繰り返される病気である。その結果十分に睡眠がとれず、日中の眠気、集中力、活力に欠け、居眠りがちになり、居眠り運転で事故や重大な事故などを起こしやすくなる。
【0003】
この睡眠時無呼吸症候群の治療をせずに放置しておくと生命に危険が及ぶ場合もある。そこで適正な症状分析と診断、治療、予防などの対策が必要になる。睡眠時に呼吸が数十回、ときには数百回と止まるようであれば、体内の酸素不足が深刻になってくる。
【0004】
このような睡眠時無呼吸症候群の有無を検査する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の特開2006−320732号公報「睡眠時無呼吸検査装置」に示すように、睡眠時無呼吸症候群の診断のために同時に使用される複数の睡眠時無呼吸検査用センサを備える睡眠時無呼吸検査装置であって、複数の睡眠時無呼吸検査用センサが、それぞれ、センシング部と、時計部と、センシング部のセンシングデータを格納する記憶部と、時計部の刻時動作に応答し、予め定めるサンプリング周波数で前記センシング部にセンシングを行わせ、センシングデータを記憶部に格納してゆくとともに、外部入出力端から入出力される同期信号に応答して、時計部の時刻合せを行う制御部とを含み、複数の睡眠時無呼吸検査用センサにおけるサンプリング周波数が、複数の睡眠時無呼吸検査用センサのうちの一の睡眠時無呼吸検査用センサにおけるサンプリング周波数の整数倍となるようになっている睡眠時無呼吸検査装置が提案されている。
【0005】
被験者は病院に検査入院し、特許文献1のような睡眠時無呼吸検査装置を用いて、脳波、眼電図、頤筋筋電図による睡眠ステージ、口・鼻の気流、胸・腹部の動きによる呼吸パターン、パルスオキメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)のデータを計測される。
各種センサが顔面・頭部・胸部などに包帯やネットで固定された不自由な状態で、更に寝慣れない検査施設において終夜を過し、且つ検査翌日の診察を受ける必要があるため、あまり自覚症状が無い有職者は、ほぼ一昼夜を要するこの検査を嫌う傾向にある。
【0006】
そこで、図9に示すような簡易型の検査器具も提案されている。この簡易型の検査器具51は、鼻と唇の周囲に貼り付けて使用するものであり、ベルト52を挟んで、上下に2個の鼻用温度センサ53と、1個の口用温度センサ54を設け、このベルト52の両側に電池55と、ディスプレー部56を配置したものである。この検査器具51は、鼻や口で呼吸した息を各温度センサ53,54に当て、息による温度変化を感知し、温度変化がない又は乏しい場合を無呼吸状態又は低呼吸状態にあると認識するようになっている。
【0007】
この検査器具51は、図10(a)に示すように、就寝前に、2個の鼻用温度センサ53と、1個の口用温度センサ54を鼻又は口の息がかかりやすいように折り曲げ、電池55とディスプレー部56との粘着面を利用して、図10(b)に示すように、両頬に貼り付けて装着が完了する。そのまま、一晩5時間以上装着して測定する。この検査器具51では、ディスプレー部56に無呼吸の回数がそのまま表示されるのではなく、表1の「睡眠時1時間当たりの無呼吸と低呼吸の回数の一覧表」に示すように、4段階表示になっている。例えば「0」は無呼吸と低呼吸の回数15回未満、「1」は15〜24回、「2」は25〜39回、「3」は40回以上を表している。なお、表示「E」は検査器具51を5時間以上継続して装着していない状態、又は各温度センサ53,54が正しい位置になかったことを表1に示している。
【0008】
【表1】

【0009】
パルスオキシメータは、動脈血の酸素飽和度を赤色光と近赤外光を用いて無侵襲でリアルタイムに測定する医療機器であり、広範囲にわたり使用されている。例えば、現在広く用いられているパルスオキシメータは主に透過型と呼ばれるもので、特許文献1に示されているように、指などを軽く挟み、圧迫して測定を行うようになっている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−320732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した簡易型の検査器具51は、簡単な器具を顔に貼り付けるだけで簡易に測定できるという特徴があるが、人が横向きに寝返りをしたときに、検査器具51の鼻用温度センサ53又は口用温度センサ54に、鼻や口で呼吸した息を正確に当てることができないことや、布団を被るなどして呼吸気と鼻や口周辺の温度差が少なくなった場合には、正確に呼吸と判断できなくなることがあり、冬場や寝相の悪い人にとっては正確に無呼吸の回数を測定できないという問題を有していた。
この簡易型の検査器具51は、評価パラメータのみの測定であり、口と鼻の呼吸の有無のみを判断する方法で、無呼吸又は低呼吸であると断定できない場合がある。
【0012】
また、上述した検査器具51では、ディスプレー部56に無呼吸の回数がそのまま表示されるのではなく、表1に示したように、4段階表示になっている。例えば「0」は無呼吸と低呼吸の回数15回未満、「1」は15〜24回、「2」は25〜39回、「3」は40回以上のレベルを表している。このような段階表示だけで数値としての信頼性が低いという問題を有しており、さらに現在の診断基準はまだ統一されておらず、無呼吸低呼吸指数を提示しなければ、各診療現場に対応できない。
【0013】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、温度センサとパルスオキシメータとを組み合わせることで、測定する人に嫌悪感を与えることなく、簡易に装着することができ、かつ無呼吸又は低呼吸の回数を正確に測定することができる睡眠時無呼吸症候群の検査器具及びこれを用いた検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者は、呼吸流のセンサにより評価パラメータを検出すると共に、無呼吸、低呼吸に伴う経皮的動脈血酸素飽和度の低下回数と脈拍数を計測するパルスオキシメータとを組み合わせて、この簡易型の検査器具であっても、測定の信頼度を高めることができることに着目した。
【0015】
本発明の検査器具によれば、人の睡眠時に、その人の顔に装着して無呼吸状態又は低呼吸状態を測定する睡眠時無呼吸症候群の検査器具(1)であって、鼻下に配置され、鼻からの呼吸流を感知して呼吸の有無を検出する鼻呼吸センサ(2)と、口の前に配置され、口からの呼吸流を感知して呼吸の有無を検出する口呼吸センサ(3)と、顔面の任意の部位に取り付けられ、当該部位における経皮的動脈血酸素飽和度を計測するパルスオキシメータ(7)と、前記鼻呼吸センサ(2)及び前記口呼吸センサ(3)による検出結果と前記パルスオキシメータ(7)による計測結果とに基づいて無呼吸状態又は低呼吸状態の有無を検出し、検出された無呼吸状態又は低呼吸状態の回数に基づいて算出した無呼吸低呼吸指数を出力する制御部(13)と、を備えたことを特徴とする睡眠時無呼吸症候群の検査器具が提供される。
【0016】
例えば、前記制御部(13)は、無呼吸状態又は低呼吸状態を判断するために、前記鼻呼吸センサ(2)及び前記口呼吸センサ(3)によって無呼吸又は低呼吸が検出され、前記パルスオキシメータ(7)により計測された経皮的動脈血酸素飽和度が予め定められた値以下に低下したときに、無呼吸低呼吸指数を演算部(14)で演算して出力するものである。
【0017】
前記鼻呼吸センサ(2)及び前記口呼吸センサ(3)は、鼻又は口周辺の空気の温度を測定し、呼吸流の変化による空気の温度変化を感知することにより、呼吸の有無を検出するものである。
前記鼻呼吸センサ(2)、口呼吸センサ(3)、制御部(13)及びディスプレー部(6)は一つの支持体に取り付けられてセンサ組立体(4)を形成しており、前記センサ組立体(4)は、該センサ組立体(4)をマスク状に人の耳に掛け止めるための一対の耳掛け輪(8)を更に備えたものである。
【0018】
前記パルスオキシメータ(7)は、前記ディスプレー部(6)又は一対の耳掛け輪(8)に取り付けることができる。
前記制御部(13)から出力した無呼吸低呼吸指数等を表示するディスプレー部を、前記センサ組立体(4)とは別の機器に設けることができる。
【発明の効果】
【0019】
上記構成の本発明では、センサ組立体(4)に取り付けた鼻呼吸センサ(2)と口呼吸センサ(3)に、鼻や口による呼吸気を当て、呼吸気による温度変化等を感知し、呼吸をしていることを認識する。各呼吸センサ(2,3)が温度変化を感知しないときは、無呼吸状態又は低呼吸状態であると認識してその回数を計測して、鼻呼吸と口呼吸に関する評価パラメータを検出する。パルスオキシメータ(7)は、動脈血の酸素飽和度を赤色光と近赤外光を用いて測定する。そこで、このパルスオキシメータ(7)により、温度センサ(2,3)と共に無呼吸状態又は低呼吸状態の回数を正確に測定することができる。
【0020】
特に、鼻呼吸センサ(2)及び口呼吸センサ(3)による検出結果とパルスオキシメータ(7)による計測結果とに基づいて、無呼吸状態又は低呼吸状態の回数から制御部(13)で算出した無呼吸低呼吸指数等をディスプレー部(6)に出力表示して測定するので、簡易な器具でも正確な測定が可能である。従来の簡易な検査器具では測定が困難であった低呼吸状態も正確に測定することができる。
【0021】
また、本発明の検査器具(1)を顔面に装着する手段が、マスク形状の一対の耳掛け輪(8)を人の耳に掛け止めるだけであり、寝相の悪い人でも、睡眠時に検査器具(1)が外れるという不具合を解消することができる。
更に、パルスオキシメータ(7)によって経皮的動脈血酸素飽和度と同時計測した脈拍数の結果を用いることにより、検査器具(1)の被験者への装着状態の適否を判断することにより、正確に検査できたかどうかを判断ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の睡眠時無呼吸症候群の検査器具と検査方法は、評価パラメータを検出するために、鼻と口による呼吸気を感知する呼吸センサと、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を計測するパルスオキシメータとを備えたものであり、人の睡眠時に、その人の顔に装着して無呼吸状態又は低呼吸状態について、無呼吸指数、無呼吸低呼吸指数等を用いて測定する。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を示す正面図である。図2は実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を示す一部切欠いた拡大側面図である。
実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具1は、評価パラメータを検出するために、鼻呼吸センサ2と、口呼吸センサ3をそれぞれ上下方向に取り付けたベルト状のセンサ組立体4と、このセンサ組立体4の両端にそれぞれ接続した電池5及び計測結果を表示するディスプレー部6と、無呼吸状態又は低呼吸状態に伴う経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下回数と脈拍数を計測する反射型のパルスオキシメータ7とを備えた簡易型の検査器具である。さらに、電池5とディスプレー部6には、人の耳に掛け止めるマスク形状になるように、一対の耳掛け輪8がそれぞれに取り付けられている。
【0024】
鼻呼吸センサ2は鼻からの呼吸流を感知して呼吸の有無を検出し、口呼吸センサ3は口の前に配置され、口からの呼吸流を感知して呼吸の有無を検出する。各呼吸センサ2,3は、例えばサーミスタをセンサ組立体4に形成した板状部材の先端に取り付けたものである。即ち、口呼吸センサ3は、口からの呼吸気を感知する温度センサである。これら呼吸センサ2,3は呼吸気による温度変化を感知し、呼吸をしていることを認識するようになっている。例えば、各呼吸センサ2,3が温度変化を感知しないときは、無呼吸状態又は低呼吸状態であると認識してその回数を計測する。なお、ここでいう無呼吸とは、10秒以上呼吸が休止している状態で、呼吸停止とは異なる。低呼吸とは、通常の半分以下の1回換気量状態でSpOが4%以上低下した状態である。
【0025】
センサ組立体4は、可撓性を有するプラスチックの部材から成り、本発明の検査器具1を顔面に装着したときに、鼻の穴と唇の間に位置し、このセンサ組立体4を挟んで鼻の穴の前に鼻呼吸センサ2が、口の前に口呼吸センサ3が位置するように配置する。なお、口呼吸センサ3は口を開いたときに息が当たりやすいように、板状部材を鼻呼吸センサ2の板状部材より長く形成し、その先端にサーミスタを設けている。
【0026】
このセンサ組立体4の両端に、小形電池5と、計測結果を表示する液晶のディスプレー部6とをそれぞれに接続している。ベルト4の両端の電池5又はディスプレー部6に接続する部分には顔面への密着性を良好にするために、じゃばら部4aが形成されている。
【0027】
更に、電池5とディスプレー部6には、人の耳に掛け止められるようにマスク形状になる一対の耳掛け輪8をそれぞれに取り付けられている。ディスプレー部6は、鼻呼吸センサ2、口呼吸センサ3と後述する反射型パルスオキシメータ7で測定した計測結果を表示する部材である。
【0028】
本発明では、このように検査器具1を顔面に装着する際に、マスク形状の一対の耳掛け輪8を人の耳に掛け止めるだけで、寝相の悪い人でも、睡眠時に検査器具1が外れるという不具合を解消することができる。耳掛け輪8は、例えば伸縮性を有するゴム状の部材からなる。
【0029】
実施例1では、電池5に反射型のパルスオキシメータ7が取り付けられている。この反射型のパルスオキシメータ7により、無呼吸状態又は低呼吸状態に伴う経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下回数と脈拍数を計測する。なお、図示例では反射型のパルスオキシメータ7を電池5側に取り付けた状態を示しているが、反対にディスプレー部6側に取り付けることも勿論可能である。
【0030】
図3は反射型のパルスオキシメータの基本原理を示す説明断面図である。
本発明で利用するパルスオキシメータは、圧迫を伴わない反射型で小型のパルスオキシメータ7である。この反射型パルスオキシメータ7を用いて酸素飽和度を測定する。パルスオキシメータ7では一般に赤色光と近赤外光の2波長を用いる。例えば、波長660nm付近の赤色光と波長880nm付近の近赤外光を用いることができる。
動脈血の酸素蝕和度の測定には、動脈血は血管内で拍動しているという性質を利用する。動脈の拍動により光の吸収は脈動成分を持つことになる。この動脈拍動による吸光度の脈動成分を波形変動幅(VAC値)として,動脈血以外の組織による変動しない吸光度を波形平均値(VDC値)とし次の数1と数2の数式によって酸素飽和度を算出する。ここで、関数f(r)は透過型のパルスオキシメータ7を用いて実測することによって作成された関数である。
【0031】
【数1】

【0032】
【数2】

【0033】
図4は透過型のパルスオキシメータの基本原理を示す説明断面図である。
本発明の睡眠時無呼吸症候群の検査器具1には、透過型のパルスオキシメータ7を用いることも可能である。例えば透過型のパルスオキシメータ7を耳たぶに軽く挟んで使用することができる。
【0034】
図5は実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を顔面に装着した状態の平面図、図6は実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を顔面に装着した状態の側面図である。
本発明の検査器具1は、使用の際、図示するように、就寝前に、2個の鼻呼吸センサ2と1個の口呼吸センサ3を、鼻又は口の呼吸気がかかりやすいように、センサ組立体4を鼻の下に当てるようにして耳掛け輪8を人の耳に掛け止める。更に、パルスオキシメータ7を頬に貼り付ける。本発明のパルスオキシメータ7はその一部が電池5に接続しており、この電池5は耳掛け輪8で顔面から外れないので、このパルスオキシメータ7も睡眠中に外れにくい。
【0035】
このような状態で、一晩5時間以上装着して測定する。本発明の検査器具1では、鼻呼吸センサ2が鼻からの呼吸気による温度変化を感知し、口呼吸センサ3が口からの呼吸気による温度変化を感知するだけではなく、パルスオキシメータ7により血中酸素飽和度の時間変化を求めることができる。更に、パルスオキシメータ7により脈拍数も計測することができる。その結果、簡易な検査器具1であっても、無呼吸に伴う血中酸素飽和度の低下ピーク回数を積算することで、睡眠時無呼吸症候群を正確に判定することができる。
【0036】
図7は睡眠時無呼吸症候群の検査器具の機能構成を示すブロック図である。
本発明の検査器具1は、上述したパルスオキシメータ7(プローブ)、鼻呼吸センサ2、口呼吸センサ3、ディスプレー部6に加え、制御部13、演算部14とメモリ部15を備えている。パルスオキシメータ7は、発光部11(検出器LED)及び受光部12(検出器PD)を備え、被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する。
【0037】
演算部14は、パルスオキシメータ7の受光部12、鼻呼吸センサ2と口呼吸センサ3から得られた計測信号から無呼吸低呼吸指数を求める機能部である。詳細にはパルスオキシメータ7の受光部12からの計測信号については、演算部14のSpO2・心拍数演算部、無呼吸低呼吸演算部、装着状態演算部で演算処理する。鼻呼吸センサ2と口呼吸センサ3からの計測信号については、演算部14の呼吸状態演算部、無呼吸低呼吸演算部で演算処理する。この演算部14には、このように得られた数値を元に指数演算する無呼吸低呼吸指数演算部を備えている。メモリ部15では、これらの計測時系列データを格納する。
【0038】
制御部13は、パルスオキシメータ7(発光部11及び受光部12)のセンシング動作、演算部14によるカウント値を求める演算動作及びメモリ部15へのカウント値書き込み動作等を制御する。すなわち制御部13は、パルスオキシメータ7から被験者についてSpO2に関する計測データを取得し、ディスプレー部6に表示し、その計測データについてのそれぞれのカウント値を求める演算を演算部14に行わせ、さらにメモリ部15にそのカウント値を格納させる制御を行うものである。
【0039】
このように本発明の検査器具1では、制御部13で鼻呼吸センサ2及び口呼吸センサ3による検出結果とパルスオキシメータ7による計測結果とに基づいて無呼吸状態又は低呼吸状態の有無を検出する。この検出された無呼吸状態又は低呼吸状態の回数に基づいて演算部14で算出した無呼吸低呼吸指数等を出力表示して測定する、例えば、無呼吸指数(Apnea Index)は1時間当たりの無呼吸の回数を示す。無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index)は睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数を示す。睡眠時無呼吸の重症度については、例えば、表2に示す通りである。
【0040】
【表2】

【0041】
また、パルスオキシメータ7によって経皮的動脈血酸素飽和度と同時計測した脈拍結果を用いることにより、検査器具1の被験者への装着状態の適否を判断することにより、正確に検査できたかどうかを判断ができる。例えば鼻呼吸センサ2及び口呼吸センサ3による検出は位置がずれると感知できなくなり、それが無呼吸であったのか、装着状態に不具合があったのかが区別できないことがある。一方、パルスオキシメータ7は顔面又は耳たぶに貼り付け、又は挟んで取り付けているので、装着状態に不具合が生じづらい。したがって、パルスオキシメータによる脈拍結果を用いれば、無呼吸状態か鼻呼吸センサ2又は口呼吸センサ3の位置ずれかの区別が可能である。
【実施例2】
【0042】
図8は実施例2の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を示す部分正面図である。
実施例2の睡眠時無呼吸症候群の検査器具21は、反射型のパルスオキシメータ7が片方の耳掛け輪8に取り付けられている点において実施例1と異なっており、その他の点は実施例1と同様である。このように反射型のパルスオキシメータ7を耳の後方位置に装着することにより、表皮が薄い部分で血中酸素飽和度を反射型パルスオキシメータ7でより正確に測定しやすくなる。
【0043】
なお、本発明は、鼻呼吸センサ2と、口呼吸センサ3とパルスオキシメータ7とを組み合わせることで、測定する人に嫌悪感を与えることなく、簡易に装着することができ、かつ無呼吸又は低呼吸の回数を正確に測定することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0044】
本発明の睡眠時無呼吸症候群の検査器具は、簡易型で家庭用として利用することができるが、勿論病院内の検査器具としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を示す正面図である。
【図2】実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を示す一部切欠いた拡大側面図である。
【図3】パルスオキシメータの基本原理を示す説明断面図である。
【図4】透過型パルスオキシメータの基本原理を示す説明断面図である。
【図5】実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を顔面に装着した状態の平面図である。
【図6】実施例1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を顔面に装着した状態の側面図である。
【図7】睡眠時無呼吸症候群の検査器具の機能構成を示すブロック図である。
【図8】実施例2の睡眠時無呼吸症候群の検査器具を示す部分正面図である。
【図9】従来の簡易型の検査器具を示す正面図である。
【図10】従来の検査器具の使用法を示す説明図であり、(a)は鼻用温度センサを折り曲げる状態であり、(b)は顔面に装着した状態である。
【符号の説明】
【0046】
1 睡眠時無呼吸症候群の検査器具
2 鼻呼吸センサ
3 口呼吸センサ
4 センサ組立体
5 電池
6 ディスプレー部
7 パルスオキシメータ
8 耳掛け輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の睡眠時に、その人の顔に装着して無呼吸状態又は低呼吸状態を測定する睡眠時無呼吸症候群の検査器具(1)であって、
鼻下に配置され、鼻からの呼吸流を感知して呼吸の有無を検出する鼻呼吸センサ(2)と、
口の前に配置され、口からの呼吸流を感知して呼吸の有無を検出する口呼吸センサ(3)と、
顔面の任意の部位に取り付けられ、当該部位における経皮的動脈血酸素飽和度を計測するパルスオキシメータ(7)と、
前記鼻呼吸センサ(2)及び前記口呼吸センサ(3)による検出結果と前記パルスオキシメータ(7)による計測結果とに基づいて無呼吸状態又は低呼吸状態の有無を検出し、検出された無呼吸状態又は低呼吸状態の回数に基づいて算出した無呼吸低呼吸指数を出力する制御部(13)と、
を備えたことを特徴とする睡眠時無呼吸症候群の検査器具。
【請求項2】
前記制御部(13)は、前記鼻呼吸センサ(2)及び前記口呼吸センサ(3)によって無呼吸又は低呼吸が検出され且つ前記パルスオキシメータ(7)により計測された経皮的動脈血酸素飽和度が予め定められた値以下に低下したときに、無呼吸状態又は低呼吸状態と判断することを特徴とする請求項1の睡眠時無呼吸症候群の検査器具。
【請求項3】
前記パルスオキシメータ(7)は脈拍数をさらに計測するようになっており、前記制御部(13)は、前記パルスオキシメータ(7)によって経皮的動脈血酸素飽和度と同時計測される脈拍数を用い、常時又は定期的に装着状態を診断する機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2の睡眠時無呼吸症候群の検査器具。
【請求項4】
前記鼻呼吸センサ(2)及び前記口呼吸センサ(3)の各々は、鼻又は口周辺の空気の温度を測定し、呼吸流の変化による空気の温度変化を感知することにより、呼吸の有無を検出することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項の睡眠時無呼吸症候群の検査器具。
【請求項5】
前記鼻呼吸センサ(2)、前記口呼吸センサ(3)、前記制御部(13)及び前記ディスプレー部(6)は一つの支持体に取り付けられて、センサ組立体(4)を形成しており、
前記センサ組立体(4)は、該センサ組立体(4)をマスク状に人の耳に掛け止めるための一対の耳掛け輪(8)をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項の睡眠時無呼吸症候群の検査器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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