説明

睡眠環境調整システム

【課題】無駄な電力の使用を防ぐ一方で、睡眠状態の変化に応じて快適な睡眠環境を提供する睡眠環境調整システムを提供することを目的とする。
【解決手段】居住者の睡眠状態の変化を検知し、睡眠状態の変化を示す検知信号を送信する睡眠状態検知手段20と、屋内および屋外の温度や湿度の環境情報を収集する環境情報収集手段11,12,13と、これらの環境情報に従って、前記居住者のいる室の温度や湿度の屋内環境の調整を行う環境調整手段5,6,7,8と、居住者が深い睡眠状態から浅い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記環境調整手段5,6,7,8の動作を制御する室内空調モードをオンにし、居住者が浅い睡眠状態から深い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記室内空調モードをオフにする制御手段10と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠環境調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寝室内に就寝する就寝者に体感されるパラメータを調整する所定の就寝環境調整装置と、該就寝環境調整装置の動作を制御する制御手段とを備える環境制御装置であって、前記制御手段が、就寝者の睡眠状態に依存する温度及び/ 又は湿度パラメータを計測する計測手段と、前記計測手段の計測値が所定の上昇傾向を示した場合に、予め定められた動作状態で前記就寝環境調整装置を制御するフィードフォワード制御部とを具備する環境制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
この環境制御装置によれば、就寝者の睡眠状態に依存する温度及び/ 又は湿度パラメータ、例えば就寝者の背中乃至は腹の温度、若しくは寝具の温度及び/ 又は湿度を計測し、フィードフォワード制御部により、所定の上昇傾向を示した場合に就寝環境調整装置を予め定められた動作状態、例えば就寝者の周囲温度を所定温度だけ下げる動作を行わせるようにしている。そして、このようなフィードフォワード制御により、体動発生の契機となる暑さ感は軽減され、就寝者の体動の発生を未然に防止でき、ひいては就寝者の睡眠段階を深い睡眠状態に維持できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−198653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、就寝者の背中乃至は腹の温度、若しくは寝具の温度及び/ 又は湿度を計測し、フィードフォワード制御部により、所定の上昇傾向を示した場合に就寝環境調整装置に予め定められた動作(例えば、就寝者の周囲温度を所定温度だけ下げる動作)を行わせるようにしているため、必ず電力を消費するという問題があった。
【0005】
そのため、無駄な電力の使用を防ぐ一方で、睡眠状態の変化に応じて快適な睡眠環境を提供することが望まれる。
【0006】
本発明は、無駄な電力の使用を防ぐ一方で、睡眠状態の変化に応じて快適な睡眠環境を提供する睡眠環境調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば、図2に示すように、睡眠環境調整システム100において、
居住者の睡眠状態の変化を検知し、この睡眠状態の変化を示す検知信号を送信する睡眠状態検知手段20と、
屋内および屋外の温度や湿度の環境情報を収集する環境情報収集手段11,12,13と、
これらの環境情報に従って、前記居住者のいる室1の温度や湿度の屋内環境の調整を行う環境調整手段5,6,7,8と、
居住者が深い睡眠状態から浅い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記環境調整手段5,6,7,8の動作を制御する室内空調モードをオンにし、居住者が浅い睡眠状態から深い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記室内空調モードをオフにする制御手段10と、
を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、居住者の睡眠状態の変化に合わせて、前記居住者のいる室の室内空調モードをオン・オフ制御できるので、居住者に対して快適な睡眠時間を提供することができる一方で、無駄な電力の使用を防ぐことができ、省エネ効果を高めることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば、図1,図2に示すように、
請求項1に記載の睡眠環境調整システム100において、
前記制御手段10は、前記室内空調モードがオンのとき、前記環境調整手段5,6,7,8が、前記環境情報収集手段11,12,13により収集された環境情報に従って、停止モードと、外気を取り入れる涼風制御モードと、屋内環境を調整するエアコン運転モードとのいずれかのモードで動作するように制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記室内空調モードがオンのときでも、前記環境情報収集手段により収集された環境情報に従って各モードで動作するので、各モードを組み合わせて環境調整を行うことで、エネルギーコストを低減しながら、居住者にとって快適な睡眠環境を形成できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば、図2に示すように、
請求項1または2に記載の睡眠環境調整システム100において、
前記制御手段10は、前記室内空調モードがオンのとき、建物の開口部5aの開閉を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記室内空調モードがオンのとき、制御手段10によって開口部5aの開閉を制御できるので、開口部5aを開放して外気を取り入れたり、開口部5aを閉塞して換気を止めたりでき、居住者にとって快適な睡眠環境を形成できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば、図2に示すように、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の睡眠環境調整システム100において、
前記制御手段10は、居住者の睡眠状態の変化に応じて、建物内に設けられていれる照明装置の調光を制御する調光制御手段21を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、照明装置の調光を制御できるので、居住者の睡眠状態に合わせて部屋を明るくしたり暗くしたりできる。これによって、快適な睡眠環境だけでなく、快適な起床環境も形成できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば、図2に示すように、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の睡眠環境調整システム100において、
前記制御手段10は、居住者の睡眠状態の変化に応じて、建物内への日射を遮蔽するための遮蔽装置の開閉を制御する遮蔽装置制御手段23を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、遮蔽装置を制御できるので、居住者の睡眠状態に合わせて日射を遮ったり取り込んだりできる。これによって、快適な睡眠環境だけでなく、快適な起床環境も形成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無駄な電力の使用を防ぐ一方で、睡眠状態変化に応じて快適な睡眠環境を提供する睡眠環境調整システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る建物内の睡眠環境調整睡眠環境調整システムの一例を示すもので、システムを構成する構成部材をその位置とともに示す概略図である。
【図2】同、システム構成を示すブロック図である。
【図3】同、外部空気取込手段を示す斜視図である。
【図4】同、空調システムのリモコンを示す正面図である。
【図5】同、温度条件による制御状態を示す表である。
【図6】同、居住者の睡眠状態の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る建物内の睡眠環境調整システムの一例について説明する。本実施の形態では、居住者が寝る室1に、受信手段17、調光制御手段21、遮蔽装置制御手段23が取り付けられている。居住者が他の室で寝る場合には、必要に応じて、その室に、受信手段17、調光制御手段21、遮蔽装置制御手段23を取り付ける。
【0020】
本実施の形態の建物内の睡眠環境調整システム100は、図1および図2に示すように、居住者に装着され、居住者の睡眠状態の変化を検知し、この睡眠状態の変化を示す検知信号を送信する睡眠状態検知手段20と、睡眠状態検知手段20から前記検知信号を受信する、室1に取り付けられている受信手段17と、室1に取り付けられた照明装置の調光を制御する調光制御手段21と、室1に取り付けられた建物内への日射を遮蔽するための遮蔽装置の開閉を制御する遮蔽装置制御手段23とを備えている。更に、睡眠環境調整システム100は、建物の各室1,2,3の室内空調をそれぞれ個別に制御するものであり、各室1,2,3にそれぞれ設けられて、それぞれ外部の空気を取り込む外部空気取込手段5と、室1,2,3のそれぞれの天井裏1a,2a,3aに室内の空気を引き込む空気引込手段6と、各部屋1,2,3の天井裏に引き込まれた空気を外部に排気する空気排気手段7と、室1,2,3のそれぞれに設けられたエアコン8と、外部空気取込手段5、空気引込手段6、エアコン8、調光制御手段21、遮蔽装置制御手段23を、各室1,2,3ごとに制御するともに空気排気手段7を制御する制御手段10と、各種設定情報を記憶している記憶手段25とを備えている。
【0021】
また、各室1,2,3には、室内1,2,3の温度を検出する室内温度検出手段11と、室1,2,3の天井付近の温度を検出する上方温度検出手段12とが設けられており、これら室内温度検出手段11と上方温度検出手段12とは前記制御手段10に接続されている。
また、建物の1階の床下には、外気温を検出する外気温度検出手段13が設けられており、この外気温度検出手段13は制御手段10に接続されている。
なお、図2において、制御手段10に、室1および室2の外部空気取込手段5、空気引込手段6、エアコン8等を接続しているが、実際には、室3の外部空気取込手段5、空気引込手段6、エアコン8等も接続されている。
【0022】
ここで、外部空気取込手段5と、空気引込手段6と、空気排気手段7と、エアコン8とが本発明の環境調整手段に相当し、室内温度検出手段11と、上方温度検出手段12と、外気温度検出手段13とが、本発明の環境情報収集手段に相当する。
【0023】
睡眠状態検知手段20は、居住者の手首に取り付けられているリストバンドタイプ、腕時計タイプ等の装着可能な装置であり、睡眠中の居住者の身体の動きをモニターするアクセロメーターを内蔵し、このアクセロメーターから出力された睡眠状態の変化を示す検知信号を受信手段17へ送信する。睡眠状態検知手段20は、図6に示すような、レム睡眠(第1段階)からノンレム睡眠(第4段階)の各段階の睡眠状態を検知し、睡眠状態の変化があると受信手段17に前記検知信号を送信する。一般的には、図6に示すように、90分のサイクルで、ノンレム睡眠、レム睡眠が繰り返され、サイクルが繰り返されるに従って、眠りが浅くなってくる。
【0024】
受信手段17は睡眠状態検知手段20から前記検知信号を受信し、制御手段10は受信手段17から前記検知信号を受信する。制御手段10は、居住者が深い睡眠状態から浅い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記環境調整手段5,6,7,8の動作を制御する室内空調モードをオン制御し、または、居住者が浅い睡眠状態から深い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記室内空調モードをオフ制御する。
例えば、制御手段10は、第1段階から第2段階になったとき、居住者が浅い睡眠状態から深い睡眠状態になったと判断し、前記環境調整手段5,6,7,8の動作を制御する室内空調モードをオフ制御する。また、制御手段10は、第3段階から第2段階になったとき、居住者が深い睡眠状態から浅い睡眠状態になったと判断し、前記室内空調モードをオン制御する。
つまり、居住者が浅い睡眠状態から深い睡眠状態になったと判断したとき、前記環境調整手段5,6,7,8の動作を停止し、節電を図り、居住者が深い睡眠状態から浅い睡眠状態になったと判断し、前記環境調整手段5,6,7,8の動作を開始し、居住者に快適な睡眠環境を提供する。
【0025】
また、前記制御手段10は、居住者の睡眠状態の変化に応じて、建物内に設けられていれる照明装置の調光を制御する調光制御手段21を制御する。例えば、制御部10は、居住者の睡眠時間に合わせて、調光を制御する。具体的には、記憶手段25は、居住者が、夜12時に寝て、朝の7時に起きることを照明装置の調光データとして予め記憶しておく。制御部10は、図6に示す睡眠モードボタン16eが押されて睡眠モードがセットされると、記憶手段25から調光データを読み出し、夜の12を過ぎると、居住者が夜の12時に寝始めて、第1段階から第2段階に睡眠状態が変化したことを示す検知信号を受信するまで待機状態になる。そして、制御部10は、睡眠状態検知手段20から検知信号を受信した場合、制御部10は、調光制御手段21を制御して、照明装置をオフにする。また、制御部10は、前記睡眠モードがセットされると、記憶手段25から調光データを読み出し、起床時間が朝7時に設定されている場合は、例えば、起床時間の20分前から、第2段階から第1段階に睡眠状態が変化したことを示す睡眠状態の検知信号を受信するまで待機状態になる。そして、制御部10は、睡眠状態検知手段20から検知信号を受信した場合、制御部10は、調光制御手段21を制御して、照明装置をオンにする。制御部10は、朝7時までに検知信号を受信しない場合は、朝7時に調光制御手段21を制御して、照明装置をオンにする。また、制御部10は、各睡眠の段階に応じて、照明装置を、徐々に暗くしたり、徐々に明るくしたり、調光制御手段21を制御してもよい。
【0026】
また、前記制御手段10は、居住者の睡眠状態の変化に応じて、建物内への日射を遮蔽するための電動シャッター、電動ブラインド、電動ブラインドシャッター等の遮蔽装置の開閉を制御する遮蔽装置制御手段23を制御する。例えば、制御部10は、居住者の睡眠時間に合わせて、遮蔽装置の開閉を制御する。具体的には、記憶手段25は、居住者が、夜12時に寝て、朝の7時に起きることを遮蔽装置の開閉データとして予め記憶しておく。制御部10は、図6に示す睡眠モードボタン16eが押されて睡眠モードがセットされると記憶手段25から開閉データを読み出し、夜の12を過ぎると、居住者が、夜の12時に寝始めて、第1段階から第2段階に睡眠状態が変化したことを示す睡眠状態の検知信号を受信するまで待機状態になる。そして、制御部10は、睡眠状態検知手段20から検知信号を受信した場合、制御部10は、遮蔽装置制御手段23を制御して、遮蔽装置を閉める。また、制御部10は、前記睡眠モードがセットされると記憶手段25から調光データを読み出し、起床時間が朝7時に設定されている場合は、例えば、起床時間の20分前から、第2段階から第1段階に睡眠状態が変化したことを示す検知信号を受信するまで待機状態になる。そして、制御部10は、睡眠状態検知手段20から検知信号を受信した場合、制御部10は、遮蔽装置制御手段23を制御して、遮蔽装置を開ける。制御部10は、朝7時までに検知信号を受信しない場合は、朝7時に遮蔽装置制御手段23を制御して、遮蔽装置を開ける。また、制御部10は、各睡眠の段階に応じて、遮蔽装置を、徐々に開けたり、徐々に閉めたり、遮蔽装置制御手段23を制御してもよい。
【0027】
前記外部空気取込手段5は、例えば、各部屋1,2,3の外部に面する外壁に設けられた送風換気窓枠5によって構成されている。この送風換気窓枠5は、図3に示すように、矩形の窓枠を構成する横枠または縦枠もしくは双方に、外部の空気を取り込んで、室内に送風する送風孔5aが所定間隔で複数設けられるとともに、窓枠内部にこの送風孔5aを開閉する図示しない開閉部材が設けられてなるものであり、この開閉部材が前記制御手段10によって開閉されるようになっている。また、窓枠内部に、外部の空気を送風孔5aに吸い込んで室内に吹き出すための、ファンを設けてもよく、この場合、当該ファンの回転・停止が前記開閉部材とともに制御手段10によって制御されるようになっている。
また、外部空気取込手段5としては、前記送風換気窓枠5に代えて、自動的に開閉可能な地窓を設けてもよい。この場合、この地窓の開閉が制御手段10によって制御されるようになっている。
【0028】
前記空気引込手段6は、図1に示すように、室1,2,3のそれぞれの天井裏1a,2a,3aに設けられたファン6aと、このファン6aに対向して天井板に形成された開口部6bとから構成されている。そして、このファン6aが前記制御手段10によって回転・停止されるようになっている。なお、前記開口部6bには図示しないルーバが設けられており、室内から天井裏のファン6aが見えないようになっている。
また、室2は1階に設けられているので、空気引込手段6によって室内2から天井裏2aに引き込まれた空気は、室1と室2とを仕切る壁に設けられた吹出口14から吹き出されて、室1内を上昇し、室1の空気引込手段6によって天井裏1aに引き込まれるようになっている。室1は2階の天井まで吹き抜ける高天井室であり、その天井裏1aは2階の室3の天井裏3aと連通している。
【0029】
前記空気排気手段7は、建物の屋根棟部に設けられるとともに、内部が前記天井裏1a、3aと連通している越屋根部15内に設けられた大型のファン7aと、越屋根部15の壁に設けられた開口部7bとから構成されており、この開口部7bには雨の侵入を防止する図示しないガラリが設けられている。そして、大型のファン7aの回転・停止が制御手段10によって制御されるようになっている。なお、大型のファン7aは前記ファン6aより低速度で回転するが、ファン7aが大型のため排気風量は大風量となっている。
また、空気排気手段7を運転し、かつ、空気引込手段6を停止した場合、室の空気は、空気排気手段7によって天井裏の空気が排気されるので、これに伴って、天井板に設けられた前記開口部6bから天井裏に自然と流入する。
【0030】
前記室内温度検出手段11は、例えば温度センサ11によって構成されており、この温度センサ11は睡眠環境調整システム用のリモコン16に内蔵されている。
リモコン16は制御手段10に信号線によって接続され、これに内蔵されている温度センサ11も信号線によって制御手段10に接続されている。
また、リモコン16は室内の壁面等に固定されている。例えば建物の室1,2,3の壁に、照明スイッチ等とほぼ同じ高さ(床面から1m〜1.5m程度の高さ)に固定されている。このリモコン16に温度センサ11が内蔵されているので、この温度センサ11によって室1,2,3の下部の温度を検出できるようになっている。
【0031】
上方温度検出手段12は、例えば温度センサ12によって構成されており、この温度センサ12は、図1に示すように、室1,2,3のそれぞれ天井板の下面に固定されている。したがって、この温度センサ12によって天井付近の温度を検出することができるようになっている。また、温度センサ12は、図2に示すように、信号線によって制御手段10に接続されている。
外気温度検出手段13は、例えば温度センサ13によって構成されており、この温度センサ13は、図1に示すように、1階の床下でかつ風通しのよい場所(換気台輪近く)に設置されている。したがって、この温度センサ13によって外気温度を検出することができるようになっている。なお、温度センサ13は、メンテナンス等を容易に行える床下収納庫付近に設置するのが望ましい。また、温度センサ13は信号線によって制御手段10に接続されている。
【0032】
前記リモコン16は、本実施の形態の建物内の睡眠環境調整システムの室内空調モードのオン・オフ、システム設定温度の設定・変更の際に使用されるもので、図4に示すように、室内空調モードのオン・オフを行う運転/停止ボタン16a、システム設定温度の設定・変更を行う温度ボタン16b、システム設定温度等を表示する液晶画面16c、睡眠モードのオン・オフを行う睡眠モードボタン16e等を備えている。
本実施の形態の建物内の睡眠環境調整システムを運転する場合、運転/停止ボタン16aを押し、運転/停止ボタン16aのランプ16dが点灯するようにし、液晶画面16cに現在の設定温度が表示され、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8の運転が温度状況に合わせて自動的に制御されるようになっている。
建物内の睡眠環境調整システムを停止させる場合、運転/停止ボタン16aを押し、運転/停止ボタン16aのランプ16dが消灯するようにし、これによって、液晶画面16cの表示が消え、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8を停止するようになっている。
なお、リモコン16は、室1,2,3にそれぞれ設置されているので、室1,2,3のいずれからも室内空調システムのオン・オフを行えるようになっている。
【0033】
なお、前記リモコン16の代わりに、温度センサを備えた携帯型のコンピュータを使用して、室内空調システムのオン・オフや、システム設定温度の設定・変更を行うようにしてもよい。
また、前記制御手段10による制御中において、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8は、それぞれの専用リモコンによってそれぞれ手動操作することができるが、すぐに制御状態に戻るようになっている。したがって、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8をそれぞれ手動で操作したい場合、前記リモコン16の運転/停止ボタン16aによって本システムを停止させてから、それぞれの専用リモコンによって手動操作する。
【0034】
次に、夏季において、本実施の形態の建物内の睡眠環境調整システムによって室1の空調を個別に制御する方法の一例について図5に示す表を参照しながら説明する。
初期状態では、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8は停止した状態となっている。
まず、室1のリモコン16の運転/停止ボタン16aによって、前記環境調整手段5,6,7,8の運転・停止(動作)を制御する室内空調モードをオンにする。室内空調モードでは、睡眠状態検知手段20から出力される検知信号の受信の有無に係らず、前記環境調整手段5,6,7,8を動作する空調モードである。これによって、本空調システムが運転開始されるとともに、エアコン8がオンとなる。これは、制御手段10から制御ユニット8aに信号が送信され、この制御ユニット8aからエアコン8にオン信号が送信されることによって行われる。
また、システムの設定温度Tsetをリモコン16の温度ボタン16bによって28℃に設定するとともに、エアコン8の設定温度を、設定温度より低い27℃に設定する。
【0035】
次に、リモコン16の睡眠モードボタン16eを押すと、前記睡眠状態検知手段20によって検知された睡眠状態の変化に従って、室内空調モードのオン・オフを切り替える睡眠モードに設定される。睡眠モードにおいて、制御手段10は、受信手段17で検知信号を受信すると、居住者が深い睡眠状態から浅い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記室内空調モードをオンにし、または、居住者が浅い睡眠状態から深い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記室内空調モードをオフにする。前記室内空調モードがオフのときは、環境情報収集手段11,12,13で収集された環境情報に従って、前記環境調整手段5,6,7,8が動作しないため、電力を消費することはない。
【0036】
以下、室内空調モードがオンのときの睡眠環境調整システムの動作例を説明する。室内空調モードがオンのとき、前記環境調整手段5,6,7,8は、前記環境情報収集手段11,12,13により収集された環境情報に従って、(1)停止モードと、(2)外気を取り入れる涼風制御モードと、(3)屋内環境を調整するエアコン運転モードとのいずれかのモードで動作する。
図5に示す例では、状態番号1,4,8,9が「停止モード」とであり、状態番号2,3,5,6,7,10,11が「涼風制御モード」であり、状態番号12がエアコン運転モードである。
【0037】
次に、夏季における室1の下部の温度と天井付近の温度をそれぞれ温度センサ11,12が検出し、これら検出値の差によって温度差(上下温度差)を求める。これは前記制御手段10に、温度センサ11,12による検出値が入力されるので、この制御手段10によってこれら検出値の差を求めることによって行われる。
まず、本実施の形態では、
(1)温度センサ12によって検出された天井付近の温度が、温度センサ11によって検出された室内温度より所定温度dt(例えば3℃)以上高い場合、つまり、天井付近に高温の空気が溜まっている場合に以下のような制御を行う。
【0038】
(1a)室内温度≧Tset(28℃)のとき、制御手段10が外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7を運転し、前記エアコン8を停止する。
外部空気取込手段5が送風換気窓枠5である場合、送風孔5aを開けるとともに、ファンが内蔵されている場合、ファンも作動させる。
また、外部空気取込手段5が自動的に開閉可能な地窓である場合、当該地窓を開ける。
このような制御は、外気温<Tset、外気温≧Tsetの双方の場合で行われる。
外気温<Tsetの場合、図5中、状態番号が「7」で「強制空冷」となる。つまり、外気温が設定温度より低いので、天井付近の高温の空気を空気引込手段6によって天井裏1aに引き込み、さらに、空気排気手段7によって外部に排気するとともに、外部空気取込手段5によって涼しい外気を室1に取り入れる。
外気温≧Tsetの場合、図5中、状態番号が「11」で「強制排熱」となる。つまり、外気温が設定温度以上であるが、天井付近の高温の空気を空気引込手段6によって天井裏1aに引き込み、さらに、空気排気手段7によって外部に強制的に排気する。一方、外部空気取込手段5によって設定温度以上の外気が室1に取り入れられるが、この外気によって、室内が撹拌されるので、高温の空気の淀みを防止できる。
【0039】
(1b)室内温度<Tset かつ 外気温<Tsetのとき、制御手段10が空気排気手段7と外部空気取込手段5を運転し、空気引込手段6とエアコン8を停止する。
このような制御は、図5中、状態番号が「5」で「自然空冷」となる。つまり、外気温が設定温度より低く、かつ、室内温度が設定温度より低いので、空気排気手段7と外部空気取込手段5を運転することによって、涼しい外気を外部空気取込手段5によって取り入れる。また、天井付近の高温の空気は開口部6bから天井裏3aに流入したうえで、空気排気手段7によって外部に排気される。
(1c)室内温度<Tset かつ 外気温≧Tsetのとき、制御手段10が外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8を停止する。
このような制御は、図5中、状態番号が「9」で「保冷」となる。つまり、室内温度が設定温度より低い一方、外気温が設定温度以上であるので、空気排気手段7と外部空気取込手段5を停止し、外気の侵入を防止して、保冷を行う。
(1d)室内温度≧Tsetかつ外気温<Tminのとき、制御手段10が空気排気手段7と外部空気取込手段5を運転し、空気引込手段6とエアコン8を停止する。
このような制御は、図5中、状態番号が「3」で「自然空冷」となる。つまり、室内温度が設定温度以上である一方、外気温が下限温度(例えば20℃)より低いので、空気排気手段7と外部空気取込手段5を運転することによって、涼しい外気を外部空気取込手段5によって穏やかに取り入れる。
ここで、Tminは、寒さ防止のための下限温度であり、デフォルト値は20℃に設定される。また、後述するTmaxは、高温防止のための上限温度であり、デフォルト値は30℃に設定される。また、Tmin<Tset<Tmaxとする。
【0040】
また、本実施の形態では、
(2)温度センサ12によって検出された天井付近の温度が、温度センサ11によって検出された室内温度より所定温度dt(例えば3℃)高い温度未満の場合において、つまり、トップライト付近に高温の空気があまり溜まっていない場合に以下のような制御を行う。
【0041】
(2a)室内温度≧Tsetのとき、制御手段10が空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6を運転し、エアコン8を停止する。
このような制御は、外気温<Tset、外気温≧Tsetの双方の場合で行われる。
外気温<Tsetの場合、図5中、状態番号が「6」で「強制空冷」となる。つまり、外気温が設定温度より低いので、天井付近の高温の空気を空気引込手段6によって天井裏1aに引き込み、さらに、空気排気手段7によって外部に排気するとともに、外部空気取込手段5によって涼しい外気を室1に取り入れる。
外気温≧Tsetの場合、図5中、状態番号が「10」で「強制排熱」となる。つまり、外気温が設定温度以上であるが、天井付近の高温の空気を空気引込手段6によって天井裏1aに引き込み、さらに、空気排気手段7によって外部に排気する。一方、外部空気取込手段5によって設定温度以上の外気が取り入れられるが、この外気によって、室内が撹拌されるので、高温の空気の淀みを防止できる。
(2b)室内温度<Tsetのとき、制御手段10が空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6、エアコン8を停止する
このような制御は、外気温<Tset、外気温≧Tsetの双方の場合で行われる。
外気温<Tsetの場合、図5中、状態番号が「4」で「保冷」となる。つまり、室内温度および外気温の双方が設定温度より低いので、空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6を停止して、外気の侵入を防止して、保冷を行う。
外気温≧Tsetの場合、図5中、状態番号が「8」で「保冷」となる。つまり、室内温度が設定温度より低い一方、外気温が設定温度以上であるので、空気排気手段7、外部空気取込手段5を閉鎖し、外気の侵入を防止して、保冷を行う。
(2c)室内温度≧Tsetかつ外気温<Tminのとき、制御手段10が空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6を運転し、エアコン8を停止する。
このような制御は、図5中、状態番号が「2」で「強制空冷」となる。つまり、外気温が下限温度より低いので、天井付近の高温の空気を空気引込手段6によって天井裏1aに引き込み、さらに、空気排気手段7によって外部に排気するとともに、外部空気取込手段5によって涼しい外気を取り入れる。
【0042】
さらに、本実施の形態では、
(3)室内温度<Tsetかつ外気温<Tminのとき、制御手段10が空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6、前記エアコン8を停止する。
このような制御は、図6中、状態番号が「1」で「過冷却防止」となる。つまり、室内温度が設定温度より低く、外気温が下限温度より低いので、空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6を停止し、外気の侵入を防止して、この室の過冷却を防止する。
【0043】
加えて、本実施の形態では、
(4)室内温度≧Tmaxかつ外気温≧Tsetのとき、制御手段10が空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6を停止し、前記エアコン8を運転する。
このような制御は、図5中、状態番号が「12」で「撹拌冷房」となる。つまり、室内温度が上限温度以上でかつ外気が設定温度以上であるので、制御手段10が空気排気手段7、外部空気取込手段5を停止、高温の外気の侵入を防止しつつ、エアコン8を下向き送風運転して、室1の空気を撹拌しながら冷房する。
【0044】
このような空調制御は、室2,3にも同様にして行われる。部屋2の空調制御の場合、空気引込手段6によって天井裏2aに引き込んだ空気は、吹出口14から吹き出されて、室1内を上昇し、室1の空気引込手段6によって天井裏1aに引き込まれる。したがって、制御手段10によって、室2の空気引込手段6を運転する場合、これに同期して室1の空気引込手段6を運転する。
【0045】
本実施の形態によれば、居住者の睡眠状態の変化に合わせて室内空調モードをオン・オフ制御できるので、居住者に対して快適な睡眠時間を提供することができる一方で、無駄な電力の使用を防ぐことができ、省エネ効果を高めることができる。
【0046】
また、前記環境情報収集手段により収集された環境情報に従って各モードで動作するので、各モードを組み合わせて環境調整を行うことで、エネルギーコストを低減しながら、居住者にとって快適な睡眠環境を形成できる。
【0047】
また、制御手段10によって開口部の開閉を制御できるので、居住者の睡眠状態に合わせて開口部を開放して外気を取り入れたり、開口部を閉塞して換気を止めたりでき、居住者にとって快適な睡眠環境を形成できる。
【0048】
また、照明装置の調光を制御できるので、居住者の睡眠状態に合わせて部屋を明るくしたり暗くしたりできる。これによって、快適な睡眠環境だけでなく、快適な起床環境も形成できる。
【0049】
また、遮蔽装置を制御できるので、居住者の睡眠状態に合わせて日射を遮ったり取り込んだりできる。これによって、快適な睡眠環境だけでなく、快適な起床環境も形成できる。
【0050】
また、設定温度、室内温度、外気温に基づいて、制御手段10が外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8の運転・停止を室1,2,3ごとに細かく14段階で制御できる。
また、室内空調モードがオフのときに加えて、室内空調モードがオンのときにも、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8の運転・停止を細かく制御するので、更に省エネとなる。
さらに、室内温度が設定温度以上で、かつ外気温が下限値未満で涼しい場合に、空気排気手段7と外部空気取込手段5を運転し、空気引込手段6とエアコン8を停止するので、室内が自然空冷となり、空気引込手段6とエアコン8が消費する電力を削減でき、省エネとなる。
加えて、室内温度が設定温度以上で、かつ、外気温が下限値未満で涼しい場合に、空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6を運転し、エアコン8を停止するので、室内が強制空冷となり、エアコンなしでも、室内温度を速やかに設定温度またはそれ以下に近付けることができる。
【0051】
また、室内温度が設定温度未満で、かつ外気温が下限値未満で涼しい場合に、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8を停止するので、室が過冷却されるのを防止できるともに、外部空気取込手段5、空気引込手段6、空気排気手段7、エアコン8が消費する電力を削減でき、省エネとなる。
また、室内温度が上限温度以上で、かつ外気温が設定温度以上のときに、空気排気手段7、外部空気取込手段5、空気引込手段6を停止して室内を密閉し、エアコン8を運転するので、室内を効果的に冷房できる。
さらに、温度センサ(室内温度検出手段)11がリモコン16に内蔵されているので、温度センサ専用の設置スペースが必要なく、しかも、温度センサ11をリモコン16の筺体によって保護できる。
また、外気温度検出手段13が1階の床下でかつ風通しのよい場所に設置されているので、正確な外気温度を検出できる。
【0052】
なお、本実施の形態では、夏季における建物内の睡眠環境調整システムについて説明したが、冬季の場合、天井裏1a,2a,3aや小屋裏に暖かい空気が存在しているので、空気引込手段6のファン6aを逆回転させることによって、天井裏1a,2a,3aや小屋裏の温かい空気を室1,2,3に開口部6bから吹き出すことができる。
また、室1,2,3の天井裏1a,2a,3aに設けられているファン6aの回転方向を制御部10によって切り替えることによって、室間の空気移動を行うことができる。例えば南側に位置する室から北側に位置する室に空気を移動させることによって、室間温度差を解消できる。
さらに、複数のファン6aのうちから運転するファン6aを適宜選択することによって、必要な経路のみ空気を移動させることができるので、室の空調を迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3 室
1a,2a,3a 天井裏
5 外部空気取込手段
6 空気引込手段
7 空気排気手段
8 エアコン
10 制御手段
11 室内温度検出手段
12 上方温度検出手段
13 外気温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住者の睡眠状態の変化を検知し、この睡眠状態の変化を示す検知信号を送信する睡眠状態検知手段と、
屋内および屋外の温度や湿度の環境情報を収集する環境情報収集手段と、
これらの環境情報に従って、前記居住者のいる室の温度や湿度の屋内環境の調整を行う環境調整手段と、
居住者が深い睡眠状態から浅い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記環境調整手段の動作を制御する室内空調モードをオンにし、または、居住者が浅い睡眠状態から深い睡眠状態になることを示す前記検知信号を受信したとき前記室内空調モードをオフにする制御手段と、
を備えていることを特徴とする睡眠環境調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の睡眠環境調整システムにおいて、
前記制御手段は、前記室内空調モードがオンのとき、前記環境調整手段が、前記環境情報収集手段により収集された環境情報に従って、停止モードと、外気を取り入れる涼風制御モードと、屋内環境を調整するエアコン運転モードとのいずれかのモードで動作するように制御することを特徴とする睡眠環境調整システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の睡眠環境調整システムにおいて、
前記制御手段は、前記室内空調モードがオンのとき、建物の開口部の開閉を制御する開閉制御手段を制御することを特徴とする睡眠環境調整システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の睡眠環境調整システムにおいて、
前記制御手段は、居住者の睡眠状態の変化に応じて、建物内に設けられている照明装置の調光を制御する調光制御手段を制御することを特徴とする睡眠環境調整システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の睡眠環境調整システムにおいて、
前記制御手段は、居住者の睡眠状態の変化に応じて、建物内への日射を遮蔽するための遮蔽装置の開閉を制御する遮蔽装置制御手段を制御することを特徴とする睡眠環境調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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